【実施例】
【0039】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
図1に示すプラズマ発生装置を用いて、実施例1の粉末を製造した。
図1に示すプラズマ発生装置において黒塗り矢印は冷却水を表す。
【0041】
Li源として炭酸リチウム、M
xMn
y源として二酸化マンガンを準備し、これらをモル比1:4で混合して混合粉体とした。そして、混合粉体を粉体供給器に配置した。なお、当該混合粉体におけるリチウムとマンガンの元素モル比は1:2である。
【0042】
プラズマ発生装置内に、プロセスガスとしてアルゴンと酸素の体積比59:1の混合ガスを60L/min.で供給し、インナーガスとしてアルゴンを5L/min.で供給し、キャリヤーガスとしてアルゴンを3L/min.で供給した。電力供給装置から電力を供給し、周波数4MHzの磁場をコイルに印加して、出力20kWのプラズマを発生させた。なお、プラズマ発生装置内の圧力は大気圧とした。
【0043】
プラズマの安定後、粉体供給器を作動させ、混合粉体を400mg/min.の供給量で、キャリヤーガスとともに、プラズマ内へ導入した。プラズマ内を通過した後の通過流とともに放出された粉末を収集し、実施例1の粉末とした。
【0044】
なお、実施例1においては、冷却ガスを使用しなかった。
【0045】
(実施例2)
プロセスガスとしてアルゴンと酸素の体積比57.5:2.5の混合ガスを60L/min.で供給した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例2の粉末を製造した。
【0046】
(実施例3)
プロセスガスとしてアルゴンと酸素の体積比55:5の混合ガスを60L/min.で供給した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例3の粉末を製造した。
【0047】
(実施例4)
プロセスガスとしてアルゴンと酸素の体積比52.5:7.5の混合ガスを60L/min.で供給した以外は、実施例1と同様の方法で、実施例4の粉末を製造した。
【0048】
(実施例5)
導入流がプラズマ内を通過した後の通過流を当該通過流に対向する冷却ガス流で冷却する工程を実施するために、冷却ガスとして室温のアルゴンを10L/min.で供給した以外は、実施例3と同様の方法で、実施例5の粉末を製造した。
【0049】
(実施例6)
冷却ガスとして室温のアルゴンを20L/min.で供給した以外は、実施例5と同様の方法で、実施例6の粉末を製造した。
【0050】
(実施例7)
プラズマの出力を25kWとした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例7の粉末を製造した。
【0051】
(実施例8)
プラズマの出力を30kWとした以外は、実施例3と同様の方法で、実施例8の粉末を製造した。
【0052】
(比較例1)
プロセスガスとしてアルゴンを60L/min.で供給した以外は、実施例1と同様の方法で、比較例1の粉末を製造した。
【0053】
実施例1〜8、比較例1の粉末の製造方法の一覧表を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
(評価例1)
粉末X線回折装置にて、実施例1〜8の粉末及び比較例1の粉末のX線回折を測定した。実施例1〜8の粉末から得られたX線回折チャートにおいては、いずれもスピネル型結晶構造のLiMn
2O
4及び(Li
0.91Mn
0.09)Mn
2O
4に特有の回折パターンが観察された。また、実施例1〜8の粉末から得られたX線回折チャートにおいては、不純物であるMn
3O
4に該当する回折ピークも観察された。ここで、各X線回折チャートの比較から、プロセスガスにおける酸素量が増加するに従い、Mn
3O
4が減少することが確認できた。さらに、冷却ガスの存在により、Mn
3O
4が減少することも確認できた。実施例1、実施例3、実施例6の粉末のX線回折チャートを
図2に示し、これらのX線回折チャートから算出された各粉末に含まれる成分の質量%を、表2に示す。
【0056】
【表2】
【0057】
他方、比較例1の粉末から得られたX線回折チャートにおいては、主にMn
3O
4とスピネル型結晶構造ではないLiMnO
2に特有の回折パターンが観察された。
【0058】
本発明の製造方法においては、酸素ガスの存在に因り、好適にスピネル型結晶構造のLi
aM
xMn
yO
4(Mは金属、0.8≦a≦1.1、0≦x≦1、1≦y≦2.2、1.8≦x+y≦2.2)粉末が製造されることが裏付けられた。
【0059】
(評価例2)
実施例1〜8の粉末を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。得られた各TEM像において、粒子200個につき、各粒子像の外接円の直径を測定し、その算術平均値である平均粒子径を算出した。結果を表3に示す。また、実施例1、実施例3、実施例6の粉末のTEM像を
図3〜5に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例1〜4の結果から、酸素ガス量を増加することで、本発明の粉末の平均粒子径は大きくなる傾向にあるといえる。実施例3、実施例5〜6の結果から、冷却ガス量を増加することで、本発明の粉末の平均粒子径は小さくなるといえる。また、実施例3、実施例7〜8の結果から、プラズマ出力を増加することで、本発明の粉末の平均粒子径は小さくなるといえる。
【0062】
また、実施例1及び実施例6の粉末を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。実施例1、実施例6の粉末のSEM像を
図6〜7に示す。
図6〜7のSEM像から、本発明の粉末には、針状などではなく、多面体形状の粒子が存在することがわかる。
図6〜7のSEM像には、切頂八面体形状の粒子も観察された。観察された切頂八面体は六角形の{111面}×8面、四角形の{100面}×6面で構成されている。{100面}があることによって、八面体の頂点の応力集中(ヤーン・テラー効果)を緩和することが出来、Liの出入りがしやすくなり、二次電池の入出力特性が向上すると考えられる。切頂八面体形状の粒子につき、四角形と六角形とで共有する辺の長さaと、該六角形と他の六角形とで共有する辺の長さbとを測定した。実施例1及び実施例6の粉末について、切頂八面体形状の粒子の200箇所につき測定したaとbの算術平均値を表4に示す。なお、各六角形それぞれのaとbの関係は、いずれもb≦1.5aを満足していた。
【0063】
【表4】
【0064】
参考として、市販のスピネル型結晶構造のLiMn
2O
4粉末(株式会社豊島製作所)を走査型電子顕微鏡で観察したSEM像を
図8に示す。
【0065】
(実施例9)
図1に示すプラズマ発生装置を用いて、実施例9の粉末を製造した。
【0066】
Li源として炭酸リチウム、M
xMn
y源として二酸化マンガン及びNi粉末を準備し、これらをモル比1:3:1で混合して混合粉体とした。そして、混合粉体を粉体供給器に配置した。なお、当該混合粉体におけるリチウム、マンガン、ニッケルの元素モル比は2:3:1であり、リチウムと、マンガン及びニッケルとの元素モル比は1:2である。
【0067】
プラズマ発生装置内に、プロセスガスとしてアルゴンと酸素の体積比57.5:2.5の混合ガスを60L/min.で供給し、インナーガスとしてアルゴンを5L/min.で供給し、キャリヤーガスとしてアルゴンを3L/min.で供給した。電力供給装置から電力を供給し、周波数4MHzの磁場をコイルに印加して、出力20kWのプラズマを発生させた。なお、プラズマ発生装置内の圧力は大気圧とした。
【0068】
プラズマの安定後、粉体供給器を作動させ、混合粉体を400mg/min.の供給量で、キャリヤーガスとともに、プラズマ内へ導入した。プラズマ内を通過した後の通過流とともに放出された粉末を収集し、実施例9の粉末とした。
【0069】
なお、実施例9においては、冷却ガスを使用しなかった。
【0070】
(実施例10)
プロセスガスとしてアルゴンと酸素の体積比55:5の混合ガスを60L/min.で供給した以外は、実施例9と同様の方法で、実施例10の粉末を製造した。
【0071】
(実施例11)
導入流がプラズマ内を通過した後の通過流を当該通過流に対向する冷却ガス流で冷却する工程を実施するために、冷却ガスとして室温のアルゴンを10L/min.で供給した以外は、実施例9と同様の方法で、実施例11の粉末を製造した。
【0072】
(実施例12)
冷却ガスとして室温のアルゴンを20L/min.で供給した以外は、実施例11と同様の方法で、実施例12の粉末を製造した。
【0073】
(評価例3)
粉末X線回折装置にて、実施例9〜12の粉末のX線回折を測定した。実施例9〜12の粉末から得られたX線回折チャートにおいては、いずれもスピネル型結晶構造のLiNi
0.5Mn
1.5O
4に特有の回折パターンが観察された。
【0074】
(評価例4)
実施例10の粉末をTEMで観察した。実施例10の粉末のTEM像を
図9に示す。TEM像から微細な粒径の粒子が観察された。