(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351543
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】エレベーターの注意喚起システム
(51)【国際特許分類】
B66B 13/24 20060101AFI20180625BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
B66B13/24
B66B3/00 G
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-110244(P2015-110244)
(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公開番号】特開2016-222408(P2016-222408A)
(43)【公開日】2016年12月28日
【審査請求日】2017年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 康之
(72)【発明者】
【氏名】境谷 恭子
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−345762(JP,A)
【文献】
特開2013−113824(JP,A)
【文献】
特開平11−130351(JP,A)
【文献】
特開平04−193666(JP,A)
【文献】
実開昭51−013270(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00 − 13/30
B66B 3/00 − 3/02
B61B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーター乗り場でエレベーターの到着を待つエレベーター利用者に待機場所について注意を喚起するエレベーター注意喚起システムであって、
前記エレベーター利用者とエレベータードアとの距離を計測する距離計測手段と、
前記エレベータードアが閉状態であって、前記距離計測手段によって計測された前記距離から前記エレベーター利用者が前記エレベーター乗り場に近付いてきていると判断したとき、前記エレベーター利用者に前記エレベーター乗り場における待機場所を指示する待機場所指示手段と、
前記待機場所指示手段によって指示され、前記エレベーター乗り場の床面に前記待機場所を示す画像を含む予め設定された画像を投射する投射手段と、
を備えたエレベーターの注意喚起システム。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベーターの注意喚起システムであって、
前記画像が、前記待機場所を示すライン画像と、注意を喚起するためのメッセージとを含むエレベーターの注意喚起システム。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベーターの注意喚起システムであって、
前記メッセージが前記ライン画像に沿って投射されるエレベーターの注意喚起システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のエレベーターの注意喚起システムであって、
前記待機場所指示手段は、前記エレベータードアと前記エレベーター利用者との距離を、前記エレベータードアから十分に離れ、安全な待機場所である第1の距離、危険ではないが、安全な距離まで下がってもらう必要がある第2の距離、これ以上前記エレベータードアに近付くと開く当該エレベータードアに引き込まれる、あるいは閉じるドアに挟まれるおそれがある第3の距離に分けて注意喚起の度合いを判断し、当該注意喚起の度合いに応じて前記ライン画像と前記メッセージを変更するエレベーターの注意喚起システム。
【請求項5】
請求項4に記載のエレベーターの注意喚起システムであって、
前記投射手段は、前記第2の距離の場合に黄色のライン画像を、前記第3の距離の場合に赤色のライン画像をそれぞれ前記床面に投射するエレベーターの注意喚起システム。
【請求項6】
請求項4に記載のエレベーターの注意喚起システムであって、
前記待機場所指示手段は、前記第1、第2及び第3の距離に分けて前記注意喚起の度合いを判断し、前記距離に応じて前記投射手段が投射する位置を設定するエレベーターの注意喚起システム。
【請求項7】
請求項2ないし6のいずれか1項に記載の注意喚起システムであって、
前記画像が、前記エレベータードアから離れる方向を示す矢印を含むエレベーターの注意喚起システム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のエレベーターの注意喚起システムであって、
前記エレベータードアの閉状態を検出するエレベータードア閉信号取得手段を備えたエレベーターの注意喚起システム。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載のエレベーターの注意喚起システムであって、
前記待機場所指示手段からの指示に基づいて音声で注意を喚起するための音声アナウンス手段を備えたエレベーターの注意喚起システム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載のエレベーターの注意喚起システムであって、
前記距離計測手段が前記エレベーター乗り場に面したエレベータードア枠に設置され、
前記投射手段が前記エレベータードアの上部壁面又はエレベータードアに近接したエレベーター乗り場の天井に設置されたエレベーターの注意喚起システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの注意喚起システムに係り、さらに詳しくは、エレベーター利用者がエレベーターを待つ際、エレベーターのドアの開閉に伴う事故を防止するためのエレベーターの注意喚起システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば特許文献1に開示された技術が公知である。この技術は、エレベーターの出入口に設けられ、エレベーターの出入口の幅方向に渡って、開閉動作を行うドアの面から所定距離離れた領域に可視光を照射する発光部と、前記ドアの開閉制御を行うドアコントローラから受信するドア開閉動作情報に基づいて前記発光部を制御することにより、開閉動作に応じた所望のタイミングで前記可視光を照射させ、前記可視光の照射領域内に物体が存在する場合には、利用客に対して前記物体からの反射光を視覚的に認識させる制御部と、を備えたエレベーターの戸開閉時注意喚起システムを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−084196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の技術では、可視光の照射領域内に物体が存在する場合、前記物体からの反射光を利用客に対して視覚的に認識させ、注意喚起を行うようになっている。この技術では、可視光の照射領域内に物体が存在する場合に注意喚起を行うことができるが、その物体とエレベーターのドアとの距離だけを見ており、ドアに対するその物体の位置変化については特に考慮されていない。
【0005】
前記照射領域内に物体が存在するケースとして、例えば、エレベーター利用者がエレベーターに向かっている状態、エレベーターから離れていく状態、エレベーターを利用することなくドアの前を通り過ぎるだけの状態、当該領域内に特に動くことなく留まっている状態などがあり、特許文献1記載の技術では、これらの状態の全てにおいて前記照射領域内に物体が存在すれば、注意喚起を行うため前記発光部から可視光を照射するようになっている。
【0006】
すなわち、エレベーターからまだ距離がある場合、エレベーターから遠ざかっている場合、エレベーターを利用することなく単にドアの前を通り過ぎる場合でも、注意喚起のために発光部が可視光を照射している。また、単に留まっている場合でも、前記物体が前記照射領域内に存在している限り発光部の可視光の照射は継続される。
【0007】
このように、特許文献1記載の技術では、特に注意喚起を行う必要がない場合でも、可視光の照射が継続的に行われており、その間、無駄な電力が消費されている。また、発光部の発光時間も長くなり、その分、発光部の光源の交換間隔が短くなる。交換間隔が短くなるということは交換頻度が上がることになり、維持管理費用の増大に繋がる。
【0008】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、維持管理費用を低減した上で、エレベーターの利用客への注意喚起を確実に行うことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、エレベーター乗り場でエレベーターの到着を待つエレベーター利用者に待機場所について注意を喚起するエレベーター注意喚起システムであって、前記エレベーター利用者とエレベータードアとの距離を計測する距離計測装置と、前記エレベータードアが閉状態であって、前記距離計測装置によって計測された前記距離から前記エレベーター利用者が前記エレベーター乗り場に近付いてきていると判断したとき、前記エレベーター利用者に前記エレベーター乗り場における待機場所を指示する待機場所指示装置と、前記待機場所指示装置によって指示され、前記エレベーター乗り場の床面に前記待機場所を示す画像を含む予め設定された画像を投射する投射装置と、を備えたことを特徴とする。なお、前記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明によって明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、維持管理費用を低減した上で、エレベーターの利用客への注意喚起を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態におけるエレベーターの乗り場におけるエレベータードア回りの構成を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るエレベーターの注意喚起システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示した注意喚起システムの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るエレベーターの注意喚起システムについて説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係るエレベーターの乗り場におけるエレベータードア回りの構成を示す概略構成図である。同図において、エレベーターホールの乗り場30には、一対の出入口の柱1と枠2が設けられ、枠2は当該柱1の上方で両柱1間に掛け渡されている。前記柱1及び枠2によって形成される開口部にエレベータードア3が設置されている。前記一対の柱1のそれぞれの反ドア側の部分にはエレベータードア枠4が配置され、図において右側のエレベータードア枠4には、乗り場釦5、インジケーター6及び距離計測装置7が設置されている。エレベータードア3の中央部の上方の乗り場30の壁部分31には、投射装置8が配置されている。また、投射装置8は、エレベータードア3の前面近傍のエレベーター乗り場天井に設置してもよい。
【0014】
乗り場30は、一般的に建物のビル設備においてエレベーターに乗降する場所であり、各階床の図示しないエレベーター昇降路に面した部分に設けられている。柱1はエレベータードア3の開閉方向に垂直な方向に設置され、枠2は前記開閉方向と平行な方向に設置されている。そして、柱1と枠2とによってエレベーターの出入口が構成されている。
【0015】
乗り場釦5、インジケーター6及び距離計測装置7は、図において右側の柱1のさらに右側に設けられたエレベータードア枠4の前面側(乗り場30側)に、前二者は乗り場30からエレベーター利用者9が操作可能に、後一者はエレベーター利用者9に距離計測用光線10を照射可能にそれぞれ配置されている。乗り場釦5はエレベーター利用者9が操作して乗りかごを自身が位置する階床に呼ぶためのものである。
【0016】
インジケーター6はエレベーターの乗りかごの現在の位置や行先の方向を示す。距離計測装置7は乗り場30において、エレベータードア3とエレベーター利用者9との距離を計測するためのもので、エレベーター利用者9との距離を計測する際、距離計測光線10を照射し、エレベーター利用者9からの反射光を検出する。
【0017】
投射装置8は、距離計測装置7で計測したエレベータードア3とエレベーター利用者9との距離に応じて投射光線11を投射し、乗り場30の床面32に注意喚起ライン12及び注意喚起メッセージ13を映像として描く。
【0018】
図2は、本実施形態に係るエレベーターの注意喚起システム(以下、単に注意喚起システムと称する。)の概略構成を示すブロック図である。
【0019】
注意喚起システム100は、距離計測装置7、エレベータードア閉信号取得部21、待機場所指示装置20、投射装置8及び音声アナウンス部22を備え、投射装置8を除いて、例えば右側ドア枠4の距離計測装置7の裏面側に設けられている。
【0020】
距離計測装置7は、乗り場30におけるエレベータードア3と利用者9との距離を計測し、計測した距離に対応する距離信号23を待機場所指示装置20に出力する。距離計測装置7は、本実施形態では、光学式センサを使用している。光学センサによる測定は、三角測距式やタイム・オブ・フライト方式等によって行われる。三角測距式は、例えば受光素子にPSDやC−MOSを用いて距離変化による受光素子結像位置を距離に換算する方式であり、タイム・オブ・フライト方式は、光が照射されてから受光されるまでのわずかな時間を測定し、その時間差を換算する方式である。ここでは、距離計測装置7として上記2つの例を挙げているが、その他、公知の方式の測距センサあるいは撮像装置とこの撮像装置から距離や位置を検出する画像監視装置等を使用することができる。
【0021】
エレベータードア閉信号取得部21は、エレベータードア3の閉状態を検出するセンサを含み、このセンサによってエレベータードア3が閉状態であることを検知すると、ドア閉信号24を待機場所指示装置20に出力する。
【0022】
待機場所指示装置20は、ドア閉信号24を受信し、エレベータードア3が閉じた状態で、前記距離計測装置7から距離信号23を受信したとき、受信した距離信号23に対応した距離に応じ、待機場所指示信号25を投射装置8に、また、音声注意信号26を音声アナウンス部22に出力する。音声アナウンス部22のスピーカーは、乗り場30で待つエレベーター利用者9に音声アナウンスが届く位置、例えば投射装置8の近傍あるいは距離計測装置7の近傍等に設けられる。
【0023】
投射装置8は、待機場所指示装置20から入力される待機場所指示信号25に応じた注意喚起ライン12を乗り場30の床面32に投射して描き、さらに注意喚起メッセージ13、例えば「危険です!下がってお待ちください。」などのメッセージを前記注意喚起ライン12の近傍に投射し、乗り場30の床面32に映像として描く。
【0024】
待機場所指示装置20及び投射装置8は、それぞれ各装置を制御する図示しないCPU(Central Processing Unit)を備えている。当該CPUは、制御部と演算部を含み、制御部が命令の解釈とプログラムの制御の流れを制御し、演算部が演算を実行する。また、プログラムは図示しないメモリに格納され、実行すべき命令(ある数値または数値の並び)を前記プログラムの置かれたメモリから取り出し、前記プログラムを実行する。なお、CPUに代えてASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いた制御回路を使用することもできる。
【0025】
音声アナウンス部22は、待機場所指示信号25に対応させて注意喚起を行うための音声注意信号26に応じた注意喚起の音声アナウンスを乗り場30に流し、エレベーター利用者9に聴覚的に注意を促す。
【0026】
図3は、
図2に示した注意喚起システム100の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0027】
注意喚起システム100では、エレベータードア3が閉じているかどうかをチェックし、エレベータードアが閉じている場合(ステップS1)、距離計測装置7はエレベーター乗り場(エレベーターホール)30にエレベーター利用者9がいるかどうかを判定する(ステップ2)。エレベーター利用者3の存在の有無は、例えば、距離計測装置7から照射された距離計測光線10の反射光の検出結果に基づいて判断される。計測若しくは検出原理は前述の通りである。
【0028】
ステップS2でエレベーター乗り場30にエレベーター利用者9が存在すると判定された場合は、エレベーター利用者9がエレベーター乗り場30に向かっているかどうかを判定する(ステップS3)。この判定も、距離計測装置7でエレベーター利用者9から反射される距離計測光線10の検出結果に基づいて判定する(ステップS3)。すなわち、検出結果の計時的変化からエレベーター利用者9がエレベータードア3の方向に向かっているのか、離れているのか、あるいは留まっているのかが判断される。画像監視装置を用いた場合には、画像の変化の状態から前記判断は可能である。
【0029】
エレベーター利用者9がエレベーター乗り場30に向かっている場合は、エレベータードア3とエレベーター利用者9との距離lを計測する(ステップS4)。ここでは、エレベータードア3とエレベーター利用者9と距離lについて、安全性を考慮して3つの場合を設定する。設定される距離lは、予め設定した3つの閾値1,2,3により定義する。
【0030】
閾値1は、エレベータードア3とエレベーター利用者9との距離lが、エレベータードア3から十分に離れているため、安全な待機場所である距離である。閾値2は、危険ではないが、安全な距離まで下がってもらう必要がある距離である。閾値3は、これ以上近付くと開くドアに引き込まれる、あるいは閉じるドアに挟まれるといった災害が起こりかねない距離である。
【0031】
次に、ステップS4で計測したエレベータードア3とエレベーター利用者9との距離lが閾値1以上か否か(距離l≧閾値1?)を判定する(ステップS5)。距離lが閾値1以上でなければ、距離lが閾値1より小さく、閾値2以上か(閾値1>距離l≧閾値2?)を判定する(ステップS6)。距離lが閾値1より小さく閾値2以上の場合(ステップS6:Yes)、安全な待機場所であることを示す青色の注意喚起ライン12を、エレベーター乗り場30の床面32の予め設定した位置に投射装置8から投射し(ステップS7)、さらに「こちらでエレベーターをお待ちください」といったメッセージ13を投射装置8から床面32に投射する(ステップS8)。さらに「まもなくエレベーターが到着します」や「あと1分程度でエレベーターが到着します」といった予想待ち時間を投射装置8にて床面32の前記ライン照射位置に隣接した位置に投射して表示し(ステップS9)、この処理を終了する。
【0032】
また、ステップS6で、エレベーター乗り場とエレベーター利用者9との距離が閾値2より小さい場合(ステップS6:No)、さらにエレベータードア3とエレベーター利用者9との距離lが閾値2より小さく閾値3以上か(閾値2>距離l≧閾値3?)を判定する(ステップS10)。この判定で、距離lが閾値2より小さく閾値3以上であれば、注意喚起を促すための黄色の注意喚起ライン12を投射装置8からエレベーター乗り場3の床面32の予め設定した位置に投射する(ステップS11)。そしてさらに、例えば「エレベーターをお待ちの場合は、もう少し下がってお待ちください」といったメッセージ13を投射装置8から床面32の予め設定した位置に投射する(ステップS12)。その際、エレベータードア3から離れるよう促すため、エレベータードア3から離れる方向の矢印14を投射装置8から注意喚起ライン12あるいは注意喚起メッセージ13の近傍の床面32に投射し(ステップS13)、この処理を終了する。
【0033】
ステップS10で、エレベータードア3とエレベーター利用者9との距離lが閾値3より小さい場合は(距離l<閾値3)、危険を知らせる赤色の注意喚起ライン12を投射装置8からエレベーター乗り場3の床面32の予め設定した位置に投射する(ステップS14)。次いで、例えば「危険です、下がってください」といったメッセージ13を投射装置8から床面の予め設定した位置に投射する(ステップS15)。さらに、エレベータードア3から離れる方向の矢印14を投射装置8から床面32の予め設定した位置に投射し(ステップS16)、エレベータードア3から離れるように促す。さらに例えば「危険です、エレベーターアから離れてください」といった注意音声案内を音声アナウンス部22から流して危険を知らせた後(ステップS17)、この処理を終了する。
【0034】
また、ステップS1でエレベータードア3が開いている場合、ステップS2でエレベーター乗り場3の近くに人がいない場合、ステップS3でエレベーター利用者9がエレベーター乗り場3に向かっていない場合には、この処理をそれぞれ終了する。
【0035】
なお、本実施形態では、注意喚起ライン12及び注意喚起メッセージ13は、床面32の予め設定された位置に照射されるが、予め設定した位置は、固定した位置でも、ステップS6、S10の判定結果に応じてそれぞれ変更してもよい。照射位置は、エレベーター利用者9がエレベータードア3に向かう方向、すなわち、エレベーター利用者9とエレベータードア3との間にあれば、自ずと視界に入るので、そのような位置に設定することが好ましい。
【0036】
この場合、例えばステップS6の判定がYesの場合には、閾値2に対応する距離lの位置の床面に投射装置8から青色のライン映像を投射し、青色の注意喚起ライン12を形成する。また、ステップS10の判定がYesの場合には、閾値3に対応する距離lの位置の床面に投射装置8から黄色のライン映像を投射し、黄色の注意喚起ライン12を形成する。さらに、ステップS10の判定がNoの場合には、エレベータードア3の直前の位置の床面に投射装置8から赤色のライン映像を投射し、赤色の注意喚起ライン12を形成する。合わせて、前記各位置の近傍でエレベーター利用者9が読める位置に投射装置8からメッセージ13と矢印14を投射して、床面32にメッセージ13と矢印14の投射画像を形成する。
【0037】
また、本実施形態では、
図1の注意喚起メッセージ13に示すメッセージを例にとって説明したが、メッセージの内容若しくは種類を追加し、あるいは表示コンテンツ種別を増やしても減らしても良い。
【0038】
なお、距離計測装置7の設置場所は前述のエレベータードア枠4に代えて、エレベーター乗り場30において距離計測装置7から照射される距離計測光線10がエレベーター利用者9に届く位置であれば、どこに設置しても良い。同様に、投射装置8も床面32に注意喚起ライン12及び注意喚起メッセージ13を画像として投射できる位置であれば、乗り場30の天井部分も含め、どこに設置しても良い。なお、注意喚起メッセージ13は、例えばエレベータードア3に投射して画像を映すようにすることもできる。
【0039】
さらに、本発明の技術思想は、エレベーターの注意喚起システムに関するものであるが、エレベーターに限らず、建物内外に設置した出入囗や区画など一般的なエリアでの出入りに注意を喚起する必要がある場合にも適用可能である。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、次のような効果を奏する。なお、以下の効果の説明では、特許請求の範囲における各構成要素と本実施形態の各部を対応させ、後者をかっこ書き若しくは参照符号で示す。
【0041】
(1)本実施形態では、エレベーター乗り場30でエレベーターの到着を待つエレベーター利用者9に待機場所について注意を喚起するエレベーター注意喚起システム100において、エレベーター利用者9とエレベータードア3との距離lを計測する距離計測手段(距離計測装置7)と、エレベータードア3が閉状態であって、距離計測手段によって計測された距離lからエレベーター利用者9がエレベーター乗り場30に近付いてきていると判断したとき、エレベーター利用者9にエレベーター乗り場30における待機場所を指示する待機場所指示手段(待機場所指示装置20)と、待機場所指示手段によって指示され、エレベーター乗り場30の床面32に待機場所を示す画像を含む予め設定された画像を投射する投射手段(投射装置8)と、を備えている。これにより、投射手段は、エレベーター利用者9がエレベーター乗り場30に向かっているときのみ稼働する。そのため、エレベーターの近くを通りかかった人など、注意喚起が不要な場合は投射することがなく、無駄な投射を防ぐことができる。その結果、光源の消費電力の抑制が可能となり、投射手段の稼働時間の短縮化及び光源の交換期間の長期化を図ることが可能となり、維持管理費用を低減することができる。さらに、投射手段は、エレベーター乗り場30の床面32に待機場所を示す画像を含む予め設定された画像を投射するので、エレベーター利用客9へ確実に注意喚起を行うことができる。
【0042】
(2)前記画像が、待機場所を示すライン画像(注意喚起ライン12)と、注意を喚起するための注意喚起メッセージ13とを含むので、エレベーター利用客9へ待機場所と危険の度合いを画像により知らせることができる。
【0043】
(3)前記注意喚起メッセージ13がライン画像(注意喚起ライン12)に沿って投射されるので、ライン画像を見たときにライン画像とともにメッセージが目に入り、ライン画像の意味とメッセージの内容をすぐに理解することができる。
【0044】
(4)前記待機場所指示手段(待機場所指示装置20)は、エレベータードア3とエレベーター利用者9との距離lを、エレベータードア3から十分に離れ、安全な待機場所である第1の距離、危険ではないが、安全な距離まで下がってもらう必要がある第2の距離、これ以上エレベータードア3に近付くと開くエレベータードア3に引き込まれる、あるいは閉じるエレベータードア3に挟まれるおそれがある第3の距離に分けて注意喚起の度合いを判断し、当該注意喚起の度合いに応じてライン画像(注意喚起ライン12)と注意喚起メッセージ13を変更するので、エレベーター利用者9に、エレベーター乗り場30における自身の待ち位置の安全性あるいは危険性を、視覚を通じて直感的に認識させることができる。
【0045】
(5)前記投射手段(投射装置8)は、第2の距離の場合に黄色のライン画像(注意喚起ライン12)を、第3の距離の場合に赤色のライン画像(注意喚起ライン12)をそれぞれ床面32に投射するので、エレベーター利用者9に色によって注意喚起の度合いを理解させることができる。
【0046】
(6)前記待機場所指示手段(待機場所指示装置20)は、第1、第2及び第3の距離に分けて注意喚起の度合いを判断し、前記距離に応じて投射装置8が投射する位置を設定するので、常にエレベーター利用者9の視界に入るように設定することが可能となり、注意喚起を確実に行うことができる。
【0047】
(7)前記画像が、エレベータードア3から離れる方向を示す矢印14を含むので、エレベーター利用者9は安全性を確保するために移動する方向を視覚から直感的に理解することができる。
【0048】
(8)前記エレベータードア3の閉状態を検出するエレベータードア閉信号取得手段(エレベータードア閉信号取得装置21)を備えているので、待機場所指示手段はエレベータードア3の閉状態を確実に把握することができる。
【0049】
(9)前記待機場所指示手段(待機場所指示装置20)からの指示に基づいて音声で注意を喚起するための音声アナウンス手段(音声アナウンス装置22)を備えているので、エレベーター利用者9の注意を聴覚によって喚起することができる。
【0050】
(10)前記距離計測手段(距離計測装置7)がエレベーター乗り場30に面したエレベータードア枠4に設置され、前記投射手段がエレベータードア3の上部壁面31又はエレベータードア3に近接したエレベーター乗り場30の天井に設置されているので、エレベーター利用者9がエレベータードア3に対向する方向から確実に注意を喚起することができる。
【0051】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 柱
3 エレベータードア
4 エレベータードア枠
7 距離計測装置
8 投射装置
9 エレベーター利用者
12 注意喚起ライン
13 注意喚起メッセージ
14 矢印
20 待機場所指示装置
21 エレベータードア閉信号取得装置
22 音声アナウンス装置
30 エレベーター乗り場、
31 壁面
32 床面
100 エレベーター注意喚起システム
l 距離