【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風力発電装置は、
風力エネルギーにより電力を生成するための風力発電装置であって、
少なくとも一本のブレードを含む風車ロータと、
前記ブレードのピッチ角を変化させるためのピッチ駆動部と、
前記風車ロータの回転エネルギーによって駆動されるように構成された発電機と、
前記発電機の系統に対する連系状態を切り替えるための遮断器と、
前記風力発電装置を制御するためのコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記発電機の併入回転数に対応した目標回転数に前記風車ロータの回転数が到達する前に、前記ピッチ角の変化速度を上限値以下に収めるとともに前記風車ロータの回転数を前記目標回転数に維持する一定回転数制御モードにて前記ピッチ駆動部を制御するためのピッチ制御部と、
前記風車ロータの回転数が前記目標回転数に維持された状態で、前記発電機を前記系統に併入するよう前記遮断器に併入指令を与えるように構成された併入指令生成部と、
を含む。
【0011】
上記(1)の構成では、ピッチ制御部において、発電機の併入前に、風車ロータの回転数を目標回転数に維持する一定回転数制御モードにてピッチ駆動部を制御するようになっている。
これにより、風車ロータの回転数が過度にオーバーシュートすることを回避し、風車ロータの回転数を発電機の併入に適した目標回転数に迅速に調整できる。さらに、回転数上昇過程で併入する場合に比べて、一定回転数に制御された状態での併入は比較的容易であり、併入失敗のリスクを低減できる。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記ピッチ制御部は、前記風車ロータの停止時から前記一定回転数制御モードによる前記ピッチ駆動部の制御を開始するように構成される。
【0013】
上記(2)の構成によれば、風車ロータの起動時から併入時まで一定回転数制御モードによってピッチ駆動部の制御を行うようになっているので、簡素化された制御によって、風車ロータを目標回転数まで迅速に上昇させることができる。
【0014】
(3)他の幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記ピッチ制御部は、
前記風車ロータの停止時から前記回転数が前記目標回転数よりも低い第1回転数閾値に到達するまでの間、規定のピッチスケジュールに従って前記ピッチ角が変化するように前記ピッチ駆動部を制御するとともに、
前記回転数が前記第1回転数閾値以上になったとき前記一定回転数制御モードにより前記ピッチ駆動部を制御するように構成される。
【0015】
上記(3)の構成によれば、風車ロータの起動時から風車ロータの回転数が第1回転数閾値に到達するまでの間は規定のピッチスケジュールに従ってピッチ駆動部を制御するようになっているので、風力発電装置の風速条件等に応じて適切なピッチスケジュールを設定することによって、風車ロータの回転数を確実に上昇させることができる。
【0016】
(4)一実施形態では、上記(3)の構成において、
前記ピッチスケジュールは、前記ピッチ角をファイン側に向けて待機ピッチ角まで前記ピッチ角を1以上のピッチレートにて変化させ、該待機ピッチ角に前記ピッチ角が到達したら、前記風車ロータの回転数が前記第1回転数閾値よりも低い第2回転数閾値に到達するまでの間、前記ピッチ角を待機ピッチ角にて一定に維持するように構成される。
【0017】
上記(4)の構成によれば、待機ピッチ角においてピッチ角を維持し、風車ロータの回転数が確実に追従していることを確認するようになっているので、ピッチ角の変化に対して風車ロータの追従遅れが生じることを防止でき、より確実に風車ロータの回転数を目標回転数まで上昇させることができる。
【0018】
(5)他の実施形態では、上記(4)の構成において、
前記ピッチスケジュールは、前記風車ロータの回転数が前記第2回転数閾値に到達したら、前記ピッチ角を前記待機ピッチ角からファイン側に向けて1以上のピッチレートにて変化させるように構成される。
【0019】
上記(5)の構成では、風車ロータの回転数が確実に追従していることを確認した後、さらにピッチレートに沿ってピッチ角を変化させるようになっているので、風車ロータの回転数を確実に且つ迅速に目標回転数まで上昇させることができる。
【0020】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記コントローラは、前記風力発電装置に作用する風の風速を示すパラメータが第1風速閾値以上であることを含む前記風力発電装置の起動条件が満たされたか否かを判定するように構成された起動条件判定部をさらに含む。
【0021】
上記(6)の構成によれば、風力発電装置に作用する風の風速を示すパラメータが第1風速閾値以上であることを含む風力発電装置の起動条件が満たされた場合に、風車ロータの制御を開始するようにしている。これにより、風力発電装置を適切なタイミングで起動させることができる。
【0022】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、
前記ピッチ制御部は、
前記パラメータが前記第1風速閾値未満の第2風速閾値以上である場合、前記一定回転数制御モードによる前記ピッチ駆動部の制御を行い、
前記ピッチ角がファイン側のリミット値に達しており、且つ、前記パラメータが前記第2風速閾値未満である場合、前記ピッチ角をフェザー側に変化させるか、または、前記ピッチ角をフェザー側に変化させた後、フルフェザーピッチ角とフルファインピッチ角の間の待機ピッチ角に前記ピッチ角を維持するかの少なくとも一方を実行する
ように構成される。
【0023】
上記(7)の構成によれば、風速が小さい場合であっても僅かな風力エネルギーを用いて風車ロータを回転させ続けるようにしたので、風車ロータの慣性エネルギーの消失を防ぐことができる。そのため、十分な風速が得られるようになったとき、迅速且つ効率的に風車ロータを目標回転数まで上昇させることができる。
【0024】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記コントローラは、前記併入指令生成部からの前記併入指令を受けたとき、前記発電機側の電圧、位相および周波数と、前記系統側の電圧、位相および周波数との差が同期可能範囲内に収まったか否かを判定するように構成された同期判定部をさらに含み、
前記遮断器は、前記同期判定部により前記差が前記同期可能範囲内に収まったと判定されたときに閉じられるように構成される。
【0025】
上記(8)の構成によれば、発電機側の電圧、位相および周波数が適正な値のときに発電機を併入するようにしたので、発電機の併入によって系統側へ悪影響を及ぼすことを防止でき、風力発電装置の円滑な連系が可能となる。
【0026】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、
前記コントローラは、前記風力発電装置の暖気運転モードで稼働中、前記併入指令生成部からの前記併入指令を出力せず、前記風車ロータを無負荷で回転させる暖気運転モードにて前記風力発電装置を制御するように構成される。
【0027】
上記(9)の構成によれば、風力発電装置の暖気運転モードにおいては発電機を系統に併入せず、風車ロータを無負荷で回転させて風車ロータの回転エネルギーを暖気運転に用いるようになっている。これにより、風力発電装置の暖気運転を円滑に行うことが可能となる。
【0028】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、
前記風車ロータの回転を前記発電機に伝えるためのドライブトレインをさらに備え、
前記ドライブトレインは、
前記風車ロータの回転により駆動され、作動油を昇圧して圧油を生成するように構成された油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから供給された前記圧油を用いて前記発電機を駆動するように構成された油圧モータと、
前記油圧ポンプと前記油圧モータとの間に設けられる高圧ライン及び低圧ラインと、
前記油圧モータをバイパスするように前記高圧ラインと前記低圧ラインとに接続されたバイパスラインと、
前記バイパスラインにおける前記作動油の流れを制御するためのバイパス弁と、を含み、
前記コントローラは、前記風力発電装置の前記暖気運転モードでの稼働中、前記バイパス弁を開いて、前記油圧モータを介さずに前記高圧ラインの前記作動油を前記低圧ラインに導くように構成される。
【0029】
上記(10)の構成によれば、風力発電装置の暖気運転において、風車ロータの回転エネルギーを油圧ポンプで圧力エネルギーに変換した後、油圧ポンプで生成された高圧ラインの作動油を、油圧モータを介さずに低圧ラインに導くようになっている。そのため、高圧の圧油の圧力エネルギーを、油圧モータでの仕事に用いることなく、温熱エネルギーとして暖気運転に用いることができる。またこの構成においては、既存の設備を用いて、風車ロータの回転エネルギーを温熱エネルギーに変換することができる。
【0030】
(11)本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る風力発電装置の起動方法は、
少なくとも一本のブレードを含む風車ロータと、前記ブレードのピッチ角を変化させるためのピッチ駆動部と、前記風車ロータの回転エネルギーによって駆動されるように構成された発電機と、前記発電機の系統に対する連系状態を切り替えるための遮断器と、を備えた風力発電装置の起動方法であって、
前記発電機の併入回転数に対応した目標回転数に前記風車ロータの回転数が到達する前に、前記ピッチ角の変化速度を上限値以下に収めるとともに前記風車ロータの回転数を前記目標回転数に維持する一定回転数制御モードにて前記ピッチ駆動部を制御するピッチ制御ステップと、
前記風車ロータの回転数が前記目標回転数に維持された状態で、前記発電機を前記系統に併入するよう前記遮断器に併入指令を与える併入指令生成ステップと、
を備える。
【0031】
上記(11)の方法によれば、風車ロータの回転数が過度にオーバーシュートすることを回避し、風車ロータの回転数を発電機の併入に適した目標回転数に迅速に調整できる。さらに、回転数上昇過程で併入する場合に比べて、一定回転数に制御された状態での併入は比較的容易であり、併入失敗のリスクを低減できる。
【0032】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の方法において、
前記ピッチ制御ステップでは、前記風車ロータの停止時から前記一定回転数制御モードによる前記ピッチ駆動部の制御を開始する。
【0033】
上記(12)の方法によれば、風車ロータの起動時から併入時まで一定回転数制御モードによってピッチ駆動部の制御を行うようになっているので、簡素化された制御によって、風車ロータを目標回転数まで迅速に上昇させることができる。
【0034】
(13)幾つかの実施形態では、上記(11)の方法において、
前記ピッチ制御ステップでは、
前記風車ロータの停止時から前記回転数が前記目標回転数よりも低い第1回転数閾値に到達するまでの間、規定のピッチスケジュールに従って前記ピッチ角が変化するように前記ピッチ駆動部を制御するとともに、
前記回転数が前記第1回転数閾値以上になったとき前記一定回転数制御モードにより前記ピッチ駆動部を制御する。
【0035】
上記(13)の方法によれば、風車ロータの起動時から風車ロータの回転数が第1回転数閾値に到達するまでの間は規定のピッチスケジュールに従ってピッチ駆動部を制御するようになっているので、風力発電装置の風速条件等に応じて適切なピッチスケジュールを設定することによって、風車ロータの回転数を確実に上昇させることができる。
【0036】
(14)幾つかの実施形態では、上記(13)の方法において、
前記風力発電装置に作用する風の風速を示すパラメータが第1風速閾値以上であることを含む前記風力発電装置の起動条件が満たされたか否かを判定する起動条件判定ステップをさらに備える。
【0037】
上記(14)の方法によれば、風力発電装置に作用する風の風速を示すパラメータが第1風速閾値以上であることを含む風力発電装置の起動条件が満たされた場合に、風車ロータの制御を開始するようにしている。これにより、風力発電装置を適切なタイミングで起動させることができる。
【0038】
(15)他の幾つかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記ピッチ制御ステップは、
前記パラメータが前記第1風速閾値未満の第2風速閾値以上である場合、前記一定回転数制御モードによる前記ピッチ駆動部の制御を行い、
前記ピッチ角がファイン側のリミット値に達しており、且つ、前記パラメータが前記第2風速閾値未満である場合、前記ピッチ角をフェザー側に変化させるか、または、前記ピッチ角をフェザー側に変化させた後、フルフェザーピッチ角とフルファインピッチ角の間の待機ピッチ角に前記ピッチ角を維持するかの少なくとも一方を実行する。
【0039】
上記(15)の方法によれば、風速が小さい場合であっても僅かな風力エネルギーを用いて風車ロータを回転させ続けるようにしたので、風車ロータの慣性エネルギーの消失を防ぐことができる。そのため、十分な風速が得られるようになったとき、迅速且つ効率的に風車ロータを目標回転数まで上昇させることができる。