(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなブラシ付DCモータにおいて、ブラシアームは端子に締結される。ブラシアームは整流子に接触するので、ブラシアームは可撓性を有するように(片持ち梁のように)端子に保持されている必要がある。すなわち、ブラシアームは、その一部が端子に締結された状態のまま、他の部材には接触せず、振動し得る状態で保持される。この場合、端子のブラシアームとの締結部は、他の部材には接触しない、自由端となる。
【0007】
ブラシアームで振動が発生すると、モータの振動や騒音の発生が引き起こされることがある。これを防止するため、ブラシアームの柔軟性が保たれた状態で振動が吸収されるように、例えば防振材等の振動吸収材が用いられる。
【0008】
しかしながら、振動吸収材が用いられている場合でも、ブラシアームで発生した振動は、完全には吸収されない。ブラシアームで吸収されきらなかった振動は、端子の自由端に伝達される。これにより端子の自由端の振動が大きくなると、モータのブラケットに振動が伝達され、モータ全体の振動が引き起こされることがある。
【0009】
このような問題点に関し、上記特許文献1,2には、有効な解決策は開示されていない。
【0010】
特許文献1に記載されている構造では、粘着材料を準備したり、ブラシアームの基部に粘着材料の塗布工程や乾燥工程に要する工数や時間が必要になるという問題がある。また、粘着材料が経時変化し、振動を吸収する効果が薄れる可能性があるという問題がある。
【0011】
特許文献2に記載されている構造は、樹脂製のケース蓋と突起とで端子を挟み込んで端子を完全に固定するものであり、上述のような、ブラシアームを柔軟性を有するように端子に保持させる構造には適用できない。
【0012】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、振動の発生が抑えられるブラシ付DCモータ及びブラシ付DCモータの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、
モータは、
整流子と、整流子に接触する
表面と裏面とを有するブラシと、取付部及び取付部に繋がっている固定部を有する端子と、
取付部の裏面に対向する内壁面を有するブラケットとを備え、端子の固定部は
、ブラケットに固定されており、ブラシ
の裏面が、端子の取付部に、可撓性を有するように取り付けられており、ブラケット
の内壁面は、取付部の一部に接触して取付部を支持する支持部を有する。
【0014】
好ましくは、ブラケットは、樹脂製であり、支持部は、隆起した突起形状を有し、取付部の一部に接触している。
【0015】
好ましくは、支持部は、端子に干渉する形状を有し、支持部の一部が
、塑性変形または弾性変形し
て、取付部の一部に接触している。
【0016】
好ましくは、取付部は、板状であり、ブラシは、板状であり、ブラシは、整流子に接触する部位が設けられている側とは反対側の
表面の一部が取付部の第1の
表面に接触した状態で取付部に取り付けられており、支持部は、第1の
表面の裏側の取付部の第2の
表面に接触する。
【0017】
好ましくは、ブラシアームは、端子にかしめられ
て取付部に取り付けられている。
好ましくは、取付部は固定部に対して折れ曲がっており、支持部は取付部によって押さえつけられている。
【0018】
この発明の他の局面に従うと
、モータは、整流子と、当該整流子に接触する表面と裏面とを有するブラシと、取付部と当該取付部に繋がっている固定部とを有する端子と、当該取付部の裏面に対向する内壁面を有するブラケットとを備え、モータの製造方法は、端子の取付部にブラシを取り付ける第1のステップと、第1のステップの後
、固定部を、ブラケットに形成された溝部に圧入する第2のステップとを備え、
内壁面の一部は、第2のステップにおいて、取付部の一部に押さえつけられ
ている。
【発明の効果】
【0019】
これらの発明に従うと、ブラケットの支持部が、ブラシアームが取り付けられている取付部の一部に接触して取付部を支持する。したがって、振動の発生が抑えられるブラシ付DCモータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態におけるブラシ付DCモータについて説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態におけるブラシ付DCモータ1を示す側断面図である。
【0024】
図1に示されるように、ブラシ付DCモータ(以下、単にモータということがある)1は、大まかに、フレーム組立体1aと、フレーム組立体1aに対して回転可能に軸支されたアマチュア組立体(以下、単にアマチュアということがある)1bとを有している。
【0025】
アマチュア組立体1bは、回転軸(シャフト)2、アマチュア部4、及び整流子部6などを有している。アマチュア部4は、回転軸2に取り付けられている。アマチュア部4は、ラジアル方向に複数突出する突極を有するアマチュアコア5及び各突極に巻回された巻線(図示せず)などを有している。整流子部6は、回転軸2の基端部(
図1において右側の端部)近傍に設けられており、回転軸2と共に回転する。整流子部6は、後述のようにしてフレーム組立体1aに取り付けられているブラシ20に接触する整流子7などを有している。
【0026】
フレーム組立体1aは、フレーム10、ブラケット30、プレート41、マグネット50などで構成されている。
【0027】
フレーム10は、一端部が回転軸2の先端部(
図1において左側の端部)が突出するようにしてふさがれた筒形状を有している。フレーム10の他端部(
図1において右側の端部)の開口部は、プレート41によりふさがれている。フレーム10及びプレート41により構成されるフレーム内に、アマチュア1bが収納されている。アマチュア1bは、その回転軸2の一端部がフレーム10から突出するようにして収納されている。フレーム10の一端部及びプレート41のそれぞれの中央部には、軸受18,19が保持されている。回転軸2は、2箇所の軸受18,19により、フレーム10に対して回転可能に保持されている。
【0028】
プレート41、ブラケット30、端子28、ブラシ20、及び軸受19で、ブラケットユニット40が構成されている。すなわち、プレート41の内側には、ブラケット30が取り付けられている。ブラケット30は、樹脂製である。ブラケット30には、外部からの電流が供給される端子28が保持されている。端子28には、後述のようにしてブラシ20が取り付けられている。端子28及びブラシ20は、一対が設けられている。
【0029】
図2は、ブラケットユニット40の構造を部分的に示す斜視図である。
【0030】
図2において、ブラケットユニット40のうち、一方のブラシ20の支持構造が示されている。整流子7は、軸受19が設けられている近傍に位置する。
【0031】
図2に示されるように、本実施の形態において、ブラシ20は、板状のブラシアーム21を有している。ブラシアーム21は、金属板製である。ブラシ20は、ブラシアーム21の先端部近傍に設けられた接触部25が整流子7に接触するようにして、端子28を介して、ブラケット30に保持されている。ブラシアーム21は、大まかに、回転軸2に垂直な面内の一方向が長手方向となり回転軸2に平行な方向が幅方向となる矩形板形状を有している。
【0032】
ブラシアーム21のうち、接触部25が設けられている側(すなわち、整流子7側)の板表面21b(以下、表面21bということがある)には、1枚のシート状の防振材27が貼付されている。ブラシアーム21は、各々が可撓性を有するように形成された複数のブラシ片を有しており、防振材27は、各ブラシ片にわたって貼付されている。
【0033】
ブラシ20は、接触部25が整流子7に接触し、自然状態から若干撓んだ状態で用いられる。ブラシアーム21は、可撓性を有するように(片持ち梁のように)端子28に保持されている。
【0034】
すなわち、端子28は、ブラシアーム21が取り付けられる取付部28aと、取付部28aに繋がっている固定部28bとを有している。本実施の形態において、端子28は、1つの金属板を曲げることにより形成されており、取付部28a及び固定部28bは、板状である。なお、取付部28aは、固定部28bに対して折れ曲がっており、取付部28aから整流子7までの距離、すなわちブラシ20の長さが長く確保されている。
【0035】
ブラケット30は、端子28の固定部28bを保持するように形成された溝部32を有している。溝部32は、回転軸2の軸方向が深さ方向となるように形成されている。端子28は、固定部28bが溝部32に圧入された状態でブラケット30に固定されている。
【0036】
図3は、ブラケットユニット40の構造を部分的に示す断面図である。
【0037】
図3においては、ブラケット30について、回転軸2に垂直で端子28が設けられている部位を通る断面が示されている。
【0038】
図3に示されるように、ブラシアーム21は、接触部25が設けられている側とは長手方向反対側の端部近傍の連結部21aにおいて、端子28の取付部28aに取り付けられている。ブラシアーム21は、接触部25が設けられている表面21bとは反対側の板表面21c(以下、裏面21cということがある)の一部が、取付部28aの第1の板表面28d(以下、表面28dということがある)に接触した状態で、取付部28aに取り付けられている。
【0039】
ブラシアーム21は、端子28にかしめられた状態で、取付部28aに取り付けられている。例えば、ブラシアーム21の連結部21aに形成された穴部(図示せず)を取付部28a側に形成されたかしめ突起22が貫通した状態で、ブラシアーム21の表面21b側からかしめ突起22が潰されることで、ブラシアーム21が端子28にかしめられて固定されている。なお、かしめ突起22が形成されておらず、連結部21aと取付部28aとを貫通するように配置されたリベット等の金具を用いて両者がかしめられていてもよい。
【0040】
このような取り付け構造により、ブラシアーム21は、長手方向の一端部である連結部21aが取付部28aに支持された固定端となり、接触部25が設けられた長手方向の他端部が自由端となる、片持ち梁となっている。すなわち、ブラシアーム21は、可撓性を有するように、取付部28aに取り付けられている。したがって、回転軸2の回転に伴って整流子7が回転したとき、接触部25が整流子7に接触したままの状態が適切に保たれる。
【0041】
ここで、本実施の形態において、
図2に示されるように、ブラケット30には、支持部37が形成されている。支持部37は、取付部28aのうちブラシアーム21がかしめられている部位の近傍に当接するように、近傍の部位から取付部28aに向けて隆起する突起形状を有している。本実施の形態において、取付部28aの表面28dの裏側の第2の板表面28c(以下、裏面28cということがある)は、ブラケット30の内壁面30dの一部分に面している。支持部37は、その内壁面30dから、取付部28aに向けて突出している。
【0042】
図4は、端子28が圧入されていない状態のブラケット30の断面図である。
図5は、端子28が圧入されていない状態のブラケットユニット40を部分的に示す斜視図である。
【0043】
図4においては、
図3で示された断面と同じ断面が示されている。
図5は、
図2で示される斜視図に対応する角度から見た斜視図である。
【0044】
図4に示されるように、支持部37は、回転軸2に平行な方向から見て略三角形形状をなすように、内壁面30dから突出している。
図5に示されるように、支持部37は、回転軸2に平行な方向に内壁面30dの略全域にわたって内壁面30dから突出している。
【0045】
なお、支持部37のうち、回転軸2の先端部に近い部位の端部には、面取り部37aが形成されている。面取り部37aは、内壁面30dから離れて突出端部37bに近づくほど回転軸2の基端部に近づくように、ブラケット30の回転軸2の先端部側の端面に対して傾斜した部位である。
【0046】
図4に示されるように、支持部37は、ブラケット30の成形時において、突出端部37bを有している。本実施の形態において、突出端部37bは、ブラケット30に固定されている状態の端子28に干渉する形状を有している。
図3に示されるように、ブラケット30に端子28が固定されている状態において、支持部37は、突出端部37bを含む突出先端部近傍が、ブラケット30の成形時の状態から、塑性変形した状態で、取付部28aの裏面28cに当接している。
【0047】
図6は、端子28のブラケット30への取り付け構造を説明する断面図である。
【0048】
図6に示される断面は、
図4のA−A線断面に対応する。
図6において、プレート41の図示は省略されている。
図6において左右方向は、回転軸2の長手方向を示し、右側が回転軸2の先端部側である。
【0049】
モータ1の製造時において、ブラシ20及び端子28は、ブラケット30に、次のような2つの手順で取り付けられる。
【0050】
すなわち、第1に、端子28の取付部28aに、ブラシアーム21の連結部21aが取り付けられる。このとき、連結部21aを貫通するように配置されたかしめ突起22がブラシアーム21の表面21b側から潰されて、ブラシアーム21が取付部28aにかしめられる(第1のステップ)。
【0051】
第2に、端子28の固定部28bを、ブラケット30に形成された溝部32に圧入する(第2のステップ)。これにより、固定部28bがブラケット30に固定される。取付部28aに取り付けられているブラシ20は、端子28を介して、ブラケット30に支持された状態となる。
【0052】
ここで、
図6に示されるように、ブラケット30の形成時の状態で、ブラケット30に形成されている支持部37のうち突出端部37bを含む部位近傍は、取付部28aに干渉する位置にある。したがって、上述の第2のステップにおいて、固定部28bが圧入されるのに伴って、支持部37の先端部近傍が取付部28aの裏面28cによって図の下方に押さえつけられる。そのため、固定部28bが圧入された状態で、支持部37の先端部近傍は、圧入前の状態から塑性変形し、つぶれた状態となる。このとき、取付部28aも自然状態から若干弾性変形した状態となる。そのため、取付部28aが取付部28aの復元力により変形した状態の支持部37に押さえつけられ、支持部37が取付部28aに当接した状態が維持される。
【0053】
なお、本実施の形態において、支持部37には面取り部37aが設けられているので、固定部28bが圧入されるとき、取付部28aが面取り部37aに沿うようにして、支持部37の突出端部37bに達する。したがって、上述の第2のステップをスムーズに行うことができる。
【0054】
以上のように構成されたブラシ付DCモータ1では、ブラケット30の支持部37が、ブラシアーム21が取り付けられている取付部28aの裏面28cに当接し、取付部28aを支持する。すなわち、固定部28bに対して自由端となる端子28の取付部28aは、本実施の形態においては、支持部37に当接することにより支持されている。そのため、ブラシ20の振動は、ブラシアーム21から取付部28aに伝達されても、取付部28aでの振動は、大きくならないように抑制される。したがって、端子28の振動を抑え、モータ1の振動が発生するのを抑制することができる。
【0055】
本実施の形態においては、ブラケット30に端子28が圧入されることで支持部37が塑性変形した状態で、支持部37が取付部28aに当接している。これにより、取付部28aが付勢されて自然状態から比較的大きく弾性変形した状態が確実に維持され、取付部28aと支持部37とが押し付け合う力が大きくなる。したがって、取付部28aがさらに振動しにくくなり、モータ1の振動の発生が抑制される。
【0056】
支持部37には面取り部37aが設けられているので、容易に、ブラケット30に端子28を圧入することができる。したがって、モータ1の製造コストを低く抑えることができる。
【0058】
上記の実施の形態では、支持部が、ブラケットに固定部が圧入される前後で塑性変形するが、これに限られるものではない。支持部は、端子がブラケットに取り付けられている状態で、支持部が取付部に接触するように形成されていればよい。例えば、支持部が、端子がブラケットに取り付けられたときに取付部に当接して端子を弾性変形させた状態のまま維持するように構成されていてもよい。このような場合であっても、上述と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、支持部の数や形状は、上述のものに限られない。支持部は、取付部に当接して取付部を支持するように2つ以上が設けられていてもよいし、取付部の幅方向全域にわたって形成されていなくてもよい。例えば取付部の長手方向の長さが長い場合には、支持部を複数個所に配置してもよい。
【0060】
支持部は、ブラケットとは別に成形された部材がブラケットに取り付けられることによりブラケットに形成されていてもよい。
【0061】
端子やブラシの形状は、上述のものに限られない。端子は、固定部に対して取付部が折曲げられている形状に限られず、固定部から取付部にかけてゆるやかに湾曲していたり、直線状に形成されていたりしてもよい。ブラシアームの端子への取り付け構造は、かしめによるものに限られず、溶接や溶着等、他の方法であってもよい。
【0062】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。