(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
グリセリンと炭素数8〜22の直鎖脂肪酸とがエステル結合した構造を有し、かつ該直鎖脂肪酸全体に占める炭素数16〜18の直鎖脂肪酸の割合が90重量%以上である、グリセリンエステル化合物(A)と、
アルコールと炭素数8〜20の脂肪酸とがエステル結合した構造を有し、かつ該アルコールと該脂肪酸のうち少なくとも一方が炭素骨格に分岐構造を有する、分岐エステル化合物(B)とを含有し、
該グリセリンエステル化合物(A)と該分岐エステル化合物(B)との重量比(A/B)が75/25〜15/85であり、
前記グリセリンエステル化合物(A)のヨウ素価が30〜80である、
合成繊維用処理剤。
前記分岐エステル化合物(B)が、直鎖アルコールと炭素数8〜20の分岐脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物、分岐アルコールと炭素数8〜20の直鎖脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物、及び分岐アルコールと炭素数8〜20の分岐脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
処理剤の不揮発分に占める前記グリセリンエステル化合物(A)と前記分岐エステル化合物(B)の合計の重量割合が30〜80重量%である、請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の合成繊維用処理剤は、合成繊維を製造する際に用いられ、特定のグリセリンエステル化合物(A)と特定の分岐エステル化合物(B)を所定の割合で含有するものである。以下、詳細に説明する。
【0016】
[グリセリンエステル化合物(A)]
グリセリンエステル化合物(A)は、グリセリンと炭素数8〜22の直鎖脂肪酸とがエステル結合した構造を有し、かつ当該直鎖脂肪酸全体に占める炭素数16〜18の直鎖脂肪酸の割合が90重量%以上である、エステルである。グリセリンエステル化合物(A)は、1種又は2種以上を使用してもよい。グリセリンエステル化合物(A)は、天然エステル又は天然エステルより得られるエステル化合物を想定していることから、エステルを構成する脂肪酸は、直鎖脂肪酸となる。また、直鎖脂肪酸は、単一の脂肪酸で構成されることはなく、炭素数8〜22であって2つ以上の脂肪酸によって構成される。
【0017】
本発明で使用するグリセリンエステル化合物(A)は、天然エステル又は天然エステルから得られるエステルであって、エステル交換していない化合物を想定している。グリセリンエステル化合物(A)としては、天然の果実、種子又は花など天然より得られる天然エステルをそのまま用いたり、必要に応じて天然エステルを分離、精製等して得られるエステル化合物を用いたりすることができる。従って、グリセリンエステル化合物(A)としては、脂肪酸とグリセリンとを反応させて得られる合成エステルや、2種以上の天然エステル(油脂)をエステル交換して得られたエステルや、天然エステルと脂肪酸とグリセリンとを混合し、ランダムにエステル交換して得られるエステルを除くものを想定している。
【0018】
グリセリンエステル化合物(A)を構成する直鎖脂肪酸は、炭素骨格が直鎖構造である脂肪族モノカルボン酸をいう。直鎖脂肪酸には、ヒドロキシ脂肪酸も含まれてもよいが、ヒドロキシ脂肪酸が含まれると該処理剤の平滑剤としての役割が不足することから、ヒドロキシ脂肪酸は含まれないことが好ましい。直鎖脂肪酸は、飽和、不飽和のいずれであってもよい。
【0019】
直鎖脂肪酸の炭素数は、8〜22であり、12〜18が好ましく、16〜18がさらに好ましい。該炭素数が8未満の場合、油膜が弱くなり毛羽が発生する場合がある。一方、該炭素数が22超の場合、摩擦が高く、平滑性が劣り毛羽が発生する場合がある。
【0020】
炭素数8〜22の直鎖脂肪酸としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、セトレイン酸、エルカ酸、リシノール酸等が挙げられる。これらの中でも、直鎖脂肪酸としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が好ましく、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸がさらに好ましい。
【0021】
油膜強度と平滑性の点から、直鎖脂肪酸全体に占める炭素数16〜18の直鎖脂肪酸の割合は、90重量%以上であり、93重量%以上が好ましく、95重量%以上がさらに好ましい。
また、直鎖脂肪酸全体に占めるリノレン酸の重量割合は、2重量%以下が好ましく、1重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましい。該重量割合が2重量%超の場合、処理剤の耐熱性が悪化し、ローラー汚れが発生し、その結果、毛羽、断糸が発生するおそれがある。
なお、各脂肪酸の重量割合は、ガスクロマトグラフィー(SHIMADZU社製ガスクロマトグラフィーGC−2010、カラム:Agilent Technologies社製のDB−WAXETR)を用いて、定量することができる。
【0022】
本発明の効果をより発揮させる点から、グリセリンエステル化合物(A)の融点は、−5℃以上が好ましく、−5〜15℃が好ましく、−5〜10℃がさらに好ましい。該融点が−5℃未満の場合、分岐エステル化合物(B)の併用の必要がない場合がある。なお、本発明でいう融点とは、示差走査熱量計(DSC)を用い、試料を50℃まで昇温し1分間等温し、次に10℃/分で−60℃まで冷却し8分間等温して固化し、その後10℃/分で50℃まで昇温した時に得られるDSC曲線の吸熱ピークのうち、最も吸熱が大きいピークの温度をいう。
【0023】
グリセリンエステル化合物(A)のヨウ素価は、30〜80であり、35〜75がより好ましく、40〜75がさらに好ましい。該ヨウ素価が30未満の場合、グリセリンエステル化合物(A)の融点が低く、分岐エステル化合物(B)を使用しても、室温で液状に復元しない場合があり、本発明の効果が得られにくい。一方、該ヨウ素価が80超の場合、耐熱性が悪化し、その結果、毛羽、断糸も悪化する場合がある。なお、本発明でのヨウ素価は、JIS K−0070に基づき測定した値をいう。
【0024】
グリセリンエステル化合物(A)の酸価は、7以下が好ましく、5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましい。該酸価が7超の場合、熱処理時に多量の発煙が発生したり、臭気が発生したりして、使用環境を悪化する場合がある。なお、本発明での酸価は、JIS K−0070に基づき測定した値をいう。
【0025】
グリセリンエステル化合物(A)の水酸基価は、0.1〜25が好ましく、0.5〜20がより好ましく、1.0〜15がさらに好ましい。該水酸基価が0.1未満の場合、エステルを得るのは困難な場合がある。一方、該水酸基価が25超の場合、該処理剤の平滑剤としての役割が不足し、毛羽が増加する場合がある。なお、本発明での水酸基価は、JIS K−0070に基づき測定した値をいう。
【0026】
グリセリンエステル化合物(A)の重量平均分子量は、500〜1200が好ましく、600〜1000がより好ましく、700〜1000がさらに好ましい。該重量平均分子量が500未満の場合、油膜強度が不足し、毛羽が増加したり、熱処理時の発煙が増加したりする場合がある。一方、該重量平均分子量が1200超の場合、平滑性が不足して毛羽が多発し、高品位の繊維が得られないだけでなく、製織や編み工程での品位が劣る場合がある。なお、本発明における重量平均分子量は、東ソー(株)製高速ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、試料濃度3mg/ccで、昭和電工(株)製分離カラムKF−402HQ、KF−403HQに注入し、示差屈折率検出器で測定されたピークより算出した。
【0027】
グリセリンエステル化合物(A)は、天然の果実、種子又は花など天然より得られる天然エステルを公知の方法で精製したり、更に精製したエステルを公知の方法で融点差を利用して分離、再精製をしたりして得ることができる。天然エステルとしては、あまに油、ひまわり油、大豆油、菜種油、胡麻油、オリーブ油、パーム核油、パーム油、ヤシ油等が挙げられる。これらの中でも、目的のグリセリンエステル化合物を収率良く得るためには、オリーブ油、パーム油が好ましく、パーム油がさらに好ましい。
【0028】
[分岐エステル化合物(B)]
分岐エステル化合物(B)は、アルコールと炭素数8〜20の脂肪酸とがエステル結合した構造を有し、該アルコールと該脂肪酸のうち少なくとも一方が炭素骨格に分岐構造を有するエステル化合物である。上記のグリセリンエステル化合物(A)を潤滑剤として単独で用いると、ハンドリング性に劣り、加工工程でスカムや糸切れを引き起こすことがあったが、グリセリンエステル化合物(A)と分岐エステル化合物(B)とを特定の割合で併用することにより、処理剤を40℃以上に加温する必要がなく、室温(20℃)に静置することで溶解させることができる。そのため、ハンドリング性に優れる。また、加温の必要がないため経済的である。さらに、本発明の処理剤は、凝固し難い又は凝固しないことにより、スカムや糸切れの発生を抑制することができる。そのため、高品位な布帛を生産するのに適している。
【0029】
分岐エステル化合物(B)は、詳細には、直鎖アルコールと炭素数8〜20の分岐脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(B1)、分岐アルコールと炭素数8〜20の直鎖脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(B2)、及び分岐アルコールと炭素数8〜20の分岐脂肪酸とがエステル結合した構造を有するエステル化合物(B3)より選ばれる少なくとも1種と表現することができる。分岐エステル化合物(B)は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0030】
エステル化合物(B1)を構成する直鎖アルコールは、炭素骨格が直鎖構造である、一価アルコール及び/又は多価アルコールをいう。直鎖アルコールは、1種で構成されていてもよく、2種以上で構成されていてもよい。直鎖アルコールは、分子量が大きくなりすぎると平滑性が悪化することから、四価以下の直鎖アルコールが好ましい。直鎖アルコールは飽和、不飽和のいずれでもあってもよい。
【0031】
一価アルコールの場合、直鎖アルコールの炭素数は4〜30が好ましく、6〜24がより好ましく、8〜24がさらに好ましい。多価アルコールの場合、直鎖アルコールの炭素数は2〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。
【0032】
直鎖アルコールとしては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、オレイルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中でも、オクタノール、デカノール、ドデカノール、オレイルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましく、オクタノール、デカノール、ドデカノール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオールがさらに好ましい。
【0033】
エステル化合物(B2)、エステル化合物(B3)を構成する分岐アルコールは、炭素骨格に分岐構造を有する、一価アルコール及び/又は多価アルコールをいう。分岐アルコールは、1種で構成されていてもよく、2種以上で構成されていてもよい。分岐アルコールは、分子量が大きくなりすぎると平滑性が悪化することから、四価以下の分岐アルコールが好ましい。分岐アルコールは、脂肪族分岐アルコールであり、飽和、不飽和のいずれでもあってもよい。
【0034】
一価アルコールの場合、分岐アルコールの炭素数は4〜30が好ましく、6〜24がより好ましく、8〜24がさらに好ましい。多価アルコールの場合、分岐アルコールの炭素数は2〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6がさらに好ましい。
【0035】
分岐アルコールとしては、例えば、イソプロパノール、2−エチルヘキサノール、イソトリデシルアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、イソC24アルコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらの中でも、2−エチルヘキサノール、イソトリデシルアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、イソC24アルコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましく、2―エチルヘキサノール、イソトリデシルアルコール、イソC24アルコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールがさらに好ましい。
【0036】
エステル化合物(B2)を構成する直鎖脂肪酸は、炭素骨格が直鎖構造である脂肪族モノカルボン酸をいう。直鎖脂肪酸には、ヒドロキシ脂肪酸も含まれてもいいが、ヒドロキシ脂肪酸が含まれると該処理剤の平滑剤としての役割が不足することから、ヒドロキシ脂肪酸が含まれないことが好ましい。直鎖脂肪酸は、飽和、不飽和のいずれであってもよい。また、直鎖脂肪酸は、1種で構成されていてもよく、2種以上で構成されていてもよい。
【0037】
直鎖脂肪酸の炭素数は、8〜20であり、10〜20が好ましく、12〜18がさらに好ましい。該炭素数が8未満の場合、油膜が弱くなり毛羽が発生する場合がある。一方、該炭素数が20超の場合、摩擦が高く、平滑性が劣り毛羽が発生する場合がある。
【0038】
炭素数8〜20の直鎖脂肪酸としては、例えば、オクチル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エイコセン酸、ベヘン酸、エルカ酸等が挙げられる。これらの中でも、オクチル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸が好ましく、オクチル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸がさらに好ましい。
【0039】
エステル化合物(B1)、エステル化合物(B3)を構成する分岐脂肪酸は、炭素骨格に分岐構造を有する脂肪族モノカルボン酸をいう。分岐脂肪酸には、ヒドロキシ脂肪酸も含まれてもいいが、ヒドロキシ脂肪酸が含まれると該処理剤の平滑剤としての役割が不足することから、ヒドロキシ脂肪酸は含まれないことが好ましい。分岐脂肪酸は、飽和、不飽和のいずれであってもよい。また、分岐脂肪酸は、1種で構成されていてもよく、2種以上で構成されていてもよい。
【0040】
分岐脂肪酸の炭素数は、8〜20であり、10〜20が好ましく、12〜18がさらに好ましい。該炭素数が8未満の場合、油膜が弱くなり毛羽が発生する場合がある。一方、該炭素数が20超の場合、摩擦が高く、平滑性が劣り毛羽が発生する場合がある。
【0041】
炭素数8〜22の分岐脂肪酸としては、例えば、イソオクチル酸、イソノナン酸、イソデシル酸、イソトリデシル酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。これらの中でも、イソノナン酸、イソデシル酸、イソトリデシル酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸が好ましく、イソノナン酸、イソトリデシル酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸がさらに好ましい。
【0042】
分岐エステル化合物(B)の重量平均分子量は、200〜1500が好ましく、200〜1200がより好ましく、300〜1200がさらに好ましい。該重量平均分子量が200未満の場合、油膜が弱くなり毛羽が発生する場合がある。一方、該重量平均分子量が1500超の場合、摩擦が高く、平滑性が劣り毛羽が発生する場合がある。
【0043】
分岐エステル化合物(B)としては、例えば、イソプロピルパルミテート、イソオクチルラウレート、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、イソトリデシルオレエート、イソトリデシルステアレート、イソC24オレエート、トリメチロールプロパントリオクタネート、トリメチロールプロパントリデカネート、トリメチロールプロパントリラウレート、トリメチロールプロパントリパーム核脂肪酸エステル、グリセリントリイソステアレート、ペンタエリスリトールオクタネート、ペンタエリスリトールデカネート、ペンタエリスリトールラウレート、トリメチロールプロパントリイソステアレート等が挙げられる。これらの中でも、イソオクチルラウレート、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、イソトリデシルオレエート、イソトリデシルステアレート、イソC24オレエート、トリメチロールプロパントリデカネート、トリメチロールプロパントリラウレート、トリメチロールプロパントリパーム核脂肪酸エステル、グリセリントリイソステアレート、ペンタエリスリトールオクタネート、ペンタエリスリトールデカネート、ペンタエリスリトールラウレート、トリメチロールプロパントリイソステアレートが好ましく、イソオクチルラウレート、イソオクチルパルミテート、イソオクチルステアレート、イソトリデシルステアレート、トリメチロールプロパントリデカネート、トリメチロールプロパントリラウレート、グリセリントリイソステアレート、トリメチロールプロパントリイソステアレート、トリメチロールプロパントリパーム核脂肪酸エステル、がさらに好ましい。
【0044】
分岐エステル化合物(B)の製造方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。例えば、トリメチロールプロパントリパーム核脂肪酸エステルを合成する場合、トリメチロールプロパンとパーム核脂肪酸をモル比1:2.9で混合し、反応触媒としてパラトルエンスルホン酸を用い、窒素気流下210℃に昇温し、1時間反応させた。続けて、250℃に昇温後8時間反応させた。反応後のエステルより反応触媒、未反応脂肪酸を除去して得ることができる。
【0045】
[ノニオン界面活性剤]
本発明の処理剤は、さらにノニオン界面活性剤を含有することが好ましい。ノニオン界面活性剤を用いることにより、水系付与するための乳化性を与えることができる。また、油膜強度の向上、集束性の向上を図ることでき、高い製糸性が得られる。ノニオン界面活性剤は、1種又は2種以上を使用してもよい。
【0046】
処理剤の油膜強度を向上させ、高い製糸性を得ることができる点から、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル及びポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルの少なくとも一つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルから選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤(1)を含むことが好ましい。
【0047】
ノニオン界面活性剤全体に占めるノニオン界面活性剤(1)の重量割合は、5〜95重量%が好ましく、8〜93重量%がより好ましく、10〜91重量%がさらに好ましい。該重量割合が5重量%未満の場合、処理剤の油膜強度が低下し毛羽が増加したり、本処理剤をエマルションで使用する場合の安定性が不足したりすることがある。一方、該重量割合が95重量%超の場合、処理剤の平滑性が不足し、毛羽が増加することがある。
【0048】
ノニオン界面活性剤(1)の一つであるポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステル(以下、ポリヒドロキシエステルということがある)は、構造上、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステルであり、多価アルコールの水酸基のうち、2個以上の水酸基がエステル化されている。したがって、ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸多価アルコールエステルは、複数の水酸基を有するエステルである。
【0049】
ポリオキシアルキレン基含有ヒドロキシ脂肪酸は、脂肪酸の炭化水素基に酸素原子を介してポリオキシアルキレン基が結合した構造を有し、ポリオキシアルキレン基の脂肪酸の炭化水素基と結合していない片末端が水酸基となっている。
ポリヒドロキシエステルとしては、例えば、炭素数6〜22(好ましくは16〜20)のヒドロキシ脂肪酸と多価アルコールとのエステル化物のアルキレンオキシド付加物を挙げることができる。
【0050】
炭素数6〜22のヒドロキシ脂肪酸としては、例えば、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシカプリン酸、ヒドロキシラウリン酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸挙げられ、ヒドロキシオクタデカン酸、リシノール酸が好ましい。多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、グリセリンが好ましい。アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドが挙げられる。
【0051】
アルキレンオキシドの付加モル数は、3〜60が好ましく、8〜50がさらに好ましい。アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
2種類以上のアルキレンオキシドを付加する場合、それらの付加順序は特に限定されるものでなく、付加形態はブロック状、ランダム状のいずれでもよい。アルキレンオキシドの付加は公知の方法により行うことができるが、塩基性触媒の存在下にて行うことが一般的である。
【0052】
ポリヒドロキシエステルは、例えば、多価アルコールとヒドロキシ脂肪酸(ヒドロキシモノカルボン酸)を通常の条件でエステル化してエステル化物を得て、次いでこのエステル化物にアルキレンオキシドを付加反応させることによって製造できる。ポリヒドロキシエステルは、ひまし油などの天然から得られる油脂やこれに水素を添加した硬化ひまし油を用い、さらにアルキレンオキシドを付加反応させることによっても、好適に製造できる。
【0053】
ノニオン界面活性剤(1)には、上述のポリヒドロキシエステルの少なくとも1つの水酸基を脂肪酸で封鎖したエステルも含まれる。封鎖する脂肪酸の炭素数は6〜24が好ましく、12〜18がさらに好ましい。脂肪酸中の炭化水素基の炭素数は分布があってもよく、炭化水素基は直鎖状であっても分岐を有していてもよく、飽和であっても不飽和であってもよく、多環構造を有していてもよい。このような脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等が挙げられる。エステル化の方法、反応条件等については特に限定はなく、公知の方法、通常の条件を採用できる。
【0054】
ノニオン界面活性剤(1)としては、例えば、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物、ヒマシ油エチレンオキシド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物モノオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物ジオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレート、ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレート、これらのなかでも処理剤の相溶性、油膜強度、毛羽減少の点から、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリオレエート、硬化ヒマシ油エチレンオキシド付加物トリステアレートが好ましい。
【0055】
ノニオン界面活性剤(1)以外のノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル(2)、ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル(3)、ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル(4)、ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル(5)、多価アルコール脂肪酸エステル(6)等が挙げられる。
【0056】
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル(2)とは、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加した構造を持つ化合物である。
【0057】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでもグリセリン、トリメチロールプロパン、ショ糖、が好ましい。
【0058】
アルキレンオキシドの付加モル数としては、3〜100が好ましく、4〜70がより好ましく、5〜50がさらに好ましい。また、アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテルの重量平均分子量は、300〜10000が好ましく、400〜8000がより好ましく、500〜5000がさらに好ましい。
【0059】
ポリオキシアルキレン多価アルコールエーテル(2)としては、ポリエチレングリコール、グリセリンエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジグリセリンエチレンオキシド付加物、ソルビタンエチレンオキシド付加物、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ソルビトールエチレンオキシド付加物、ソルビトールエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物、ジトリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ショ糖エチレンオキシド付加物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0060】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル(3)は、多価アルコールに対して、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドが付加した化合物と、脂肪酸とがエステル結合した構造を持つ化合物である。
【0061】
多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでも、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトールが好ましい。
【0062】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸、イソテトラドコサン酸等が挙げられる。
【0063】
アルキレンオキシドの付加モル数としては、3〜100が好ましく、5〜70がより好ましく、10〜50がさらに好ましい。また、アルキレンオキシドに占めるエチレンオキシドの割合は、50モル%以上が好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。
【0064】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル(3)の重量平均分子量は、300〜7000が好ましく、500〜5000がより好ましく、700〜3000がさらに好ましい。
【0065】
ポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル(3)としては、グリセリンエチレンオキシド付加物モノラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物ジラウレート、グリセリンエチレンオキシド付加物トリラウレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド付加物トリラウレート、ソルビタンエチレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物モノオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物ジオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリオレエート、ソルビタンエチレンオキシドプロピレンオキシド付加物トリラウレート、ショ糖エチレンオキシド付加物トリラウレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0066】
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル(4)とは、脂肪族一価アルコールに対し、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した構造を持つ化合物である。
【0067】
ポリオキシアルキレン脂肪族アルコールエーテル(4)としては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族アルコールのアルキレンオキシド付加物が挙げられる。
【0068】
アルキレンオキシドの付加モル数としては、1〜100モルが好ましく、2〜70モルがより好ましく、3〜50モルがさらに好ましい。また、アルキレンオキシド全体に対するエチレンンオキシドの割合は、20モル%以上が好ましく、30モル%以上がより好ましく、40モル%以上がさらに好ましい。
【0069】
ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル(5)とはポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールと、脂肪酸とがエステル結合した構造を持つ化合物である。ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、100〜1000が好ましく、150〜800がより好ましく、200〜700がさらに好ましい。
【0070】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル(5)としては、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールジオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジラウレート、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノオレエート、ポリエチレンポリプロピレングリコールジオレエート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0071】
多価アルコール脂肪酸エステル(6)は、多価アルコールと脂肪酸がエステル結合した構造を持ち、かつ少なくとも1つ又は2つ以上の水酸基を有し、さらに上記のグリセリンエステル化合物(A)を除く化合物である。
【0072】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、エリスリトール、ジエチレングリコール、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトール、ジトリメチロールプロパン、ショ糖等が挙げられる。これらのなかでも、エチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビタン、ソルビトールが好ましい。
【0073】
脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、イソイコサン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ベヘン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、リグノセリン酸等が挙げられる。
【0074】
多価アルコール脂肪酸エステル(6)の重量平均分子量は、100〜1000が好ましく、200〜800がより好ましく、300〜600がさらに好ましい。
【0075】
多価アルコール脂肪酸エステル(6)としては、グリセリンモノラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンジオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンジオレエート、ショ糖モノラウレート、ショ糖ジラウレート等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0076】
[合成繊維用処理剤]
本発明の合成繊維用処理剤は、上記のグリセリンエステル化合物(A)と分岐エステル化合物(B)とを含有し、グリセリンエステル化合物(A)と分岐エステル化合物(B)との重量比が(A/B)が75/25〜15/85である。該重量比は70/30〜17/83が好ましく、65/35〜20/80がさらに好ましい。該重量比が75/25超の場合、分岐エステル化合物(B)の比率が少なく、融点の改善が出来ず本発明の効果は得られず、良好なハンドリング性は得られない。一方、該重量比が15/85未満の場合も、良好なハンドリング性は得られない。
【0077】
処理剤の不揮発分に占めるグリセリンエステル化合物(A)と前記分岐エステル化合物(B)の合計の重量割合は、30〜80重量%が好ましく、35〜80重量%がより好ましく、40〜80重量%がさらに好ましい。該重量割合が30重量%未満の場合、処理剤の平滑性が不足し毛羽が増加する場合がある。一方、該重量割合が80重量%超の場合、ノニオン活性剤の使用量が少なくなり油膜強度や集束性が低下し毛羽が増加する場合がある。なお、本発明における不揮発分とは、処理剤を105℃で熱処理等して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
【0078】
処理剤がノニオン界面活性剤を含有する場合、処理剤に占めるノニオン界面活性剤の重量割合は、15〜65重量%が好ましく、20〜63重量%がより好ましく、25〜60重量%がさらに好ましい。該重量割合が15重量%未満の場合、処理剤の油膜強度が低下し、毛羽が増加したりすることがある。一方、該重量割合が65重量%超の場合、エステル成分の使用量が減少して平滑性が不足し、毛羽が増加することがある。
【0079】
(その他成分)
本発明の合成繊維用処理剤は、処理剤のエマルション化、繊維への付着性補助、繊維からの処理剤の水洗、繊維への制電性、潤滑性、集束性の付与等のために、上記のノニオン界面活性剤以外の界面活性剤を含有してもよい。このような界面活性剤としては、アルキルホスフェートの金属塩又はアミン塩、ポリオキシエチレンアルキルホスフェートの金属塩又はアミン塩、アルカンスルホン酸塩、脂肪酸石鹸等のアニオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキルイミダゾリニウム塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン等の両性界面活性剤等が挙げられる。これら界面活性剤は、1種又は2種以上で併用してもよい。これら界面活性剤を含有する場合の処理剤の不揮発分に占める界面活性剤の重量割合は、特に限定はないが、0.01〜15重量%が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましい。なお、ここでいう界面活性剤は、重量平均分子量が1000未満のものをいう。
【0080】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、上記のグリセリンエステル化合物(A)と分岐エステル化合物(B)以外の平滑剤として、鉱物油を含有してもよい。ここでいう鉱物油は処理剤を希釈するために用いる低粘度希釈剤ではなく、不揮発分に含まれる。不揮発分に占める鉱物油の重量割合は、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%が好ましい。
鉱物油としては、特に限定はないが、マシン油、スピンドル油、流動パラフィン等を挙げることができる。鉱物油は、1種又は2種以上を使用してもよい。鉱物油の30℃における粘度は、100〜500秒が好ましい。
【0081】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、耐熱性を付与するため、さらに酸化防止剤や変成シリコーンを含有してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系、チオ系、ホスファイト系等の公知のものが挙げられる。酸化防止剤は1種または2種以上を使用してもよい。酸化防止剤を含有する場合の処理剤の不揮発分に占める酸化防止剤の重量割合は、特に限定はないが、0.1〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%が好ましい。
【0082】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、更に原液安定剤(例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール)を含有してもよい。原液安定剤を含有する場合の処理剤に占める原液安定剤の重量割合は、0.1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がさらに好ましい。
【0083】
また、本発明の合成繊維用処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのジエステル化合物を含有してもよい。
チオジプロピオン酸と脂肪族アルコールとのジエステル化合物は、抗酸化能を有する成分である。該ジエステル化合物を使用することで、処理剤の耐熱性を高めることができる。1種または2種以上を使用してもよい。該ジエステル化合物を構成するチオジプロピオン酸の分子量は、400〜1000が好ましく、500〜900がより好ましく、600〜800がさらに好ましい。該ジエステル化合物を構成する脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪族アルコールの炭素数は8〜24が好ましく、12〜24がより好ましく、16〜24がさらに好ましい。脂肪族アルコールとしては、例えば、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソセチルアルコール、オレイルアルコールおよびイソステアリルアルコールなどが挙げられ、これらの中でもオレイルアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコールが好ましい。
【0084】
本発明の合成繊維用処理剤は、不揮発分のみからなる前述の成分で構成されていてもよく、不揮発分と原液安定剤とから構成されてもよく、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈したものでもよく、水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョンであってもよい。本発明の合成繊維用処理剤が水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョンの場合、不揮発分の濃度は5〜35重量%が好ましく、6〜30重量%がより好ましい。不揮発分を低粘度鉱物油で希釈した処理剤の粘度(30℃)は、繊維材料に均一に付与させる点から、3〜120mm
2/sが好ましく、5〜100mm
2/sがさらに好ましい。
【0085】
本発明の合成繊維用処理剤の製造方法については、特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。合成繊維用処理剤は、構成する前記の各成分を任意又は特定の順番で添加混合することによって製造される。
【0086】
[合成繊維フィラメント糸条の製造方法及び繊維構造物]
本発明の合成繊維フィラメント糸条の製造方法は、原料合成繊維フィラメント糸条に、本発明の合成繊維用処理剤を付与する工程を含むものである。発明の製造方法によれば、スカムや糸切れの発生を低減することができ、糸品位に優れた合成繊維フィラメント糸条得ることができる。なお、本発明における原料合成繊維フィラメント糸条とは、処理剤が付与されていない合成繊維フィラメント糸条をいう。
【0087】
合成繊維用処理剤を付与する工程としては、特に限定はなく、公知の方法を採用することできる。通常、原料合成繊維フィラメント糸条の紡糸工程で合成繊維用処理剤を付与する。処理剤が付与された後、熱ローラーにより延伸、熱セットが行われ、巻き取られる。このように、処理剤を付与した後、一旦巻き取れられることなく熱延伸する工程を有する場合に、本発明の合成繊維用処理剤は好適に使用することができる。熱延伸する際の温度として一例をあげると、ポリエステル、ナイロンでは、産業資材用であれば210〜260℃、衣料用であれば110〜180℃が想定される。
【0088】
原料合成繊維フィラメント糸条に付与する際の合成繊維処理剤は、前述したように、不揮発分のみからなる処理剤、不揮発分を低粘度鉱物油で希釈した処理剤、又は水中に不揮発分を乳化した水系エマルジョン処理剤等が挙げられる。付与方法としては、特に限定されるものではないが、ガイド給油、ローラー給油、ディップ給油、スプレー給油等が挙げられる。これらの中ででも、付与量の管理のしやすさから、ガイド給油、ローラー給油が好ましい。
【0089】
合成繊維用処理剤の不揮発分の付与量は、原料合成繊維フィラメント糸条に対して、0.05〜5重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましく、0.1〜2重量%がさらに好ましい。0.05重量%未満の場合、本発明の効果を発揮することができない場合がある。一方、5重量%超の場合、処理剤の不揮発分が糸道に脱落しやすく、熱ローラー上のタールが著しく増加し、毛羽、断糸に繋がる場合がある。
【0090】
合成繊維フィラメント糸条としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維のフィラメント糸条が挙げられる。本発明の合成繊維用処理剤は、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリオレフィン繊維等の合成繊維に適している。ポリエステル繊維としては、エチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PET)、トリメチレンエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PTT)、ブチレンエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステル(PBT)、乳酸を主たる構成単位とするポリエステル(PLA)等が挙げられ、ポリアミド繊維としては、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられ、ポリオレフィン繊維としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。合成繊維フィラメント糸条の製造方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。
【0091】
本発明の繊維構造物は、上記の本発明の製造方法で得られた合成繊維フィラメント糸条を含むものである。具体的には、本発明の合成繊維用処理剤が付与された合成繊維フィラメント糸条を用いてウォータージェット織機、エアジェット織機、または、レピア織機で織られた織物、および丸編み機、経編み機、または、緯編み機で編まれた編物である。また繊維構造物の用途としては、タイヤコード、シートベルト、エアバッグ、魚網、ロープ等の産業資材、衣料用等が挙げられる。織物、編物を製造する方法としては、特に限定はなく、公知の手法を採用できる。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例により本発明を説明する、本発明はここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、文中及び表中の「%」は「重量%」を、意味する。
【0093】
[実施例1〜8、比較例1〜8]
(実施例3、7、比較例2の処理剤)
表1に記載の成分を混合し、均一になるまで攪拌し、処理剤Iを調製した。調製した処理剤Iを炭素数11〜15の低粘度鉱物油で希釈して、不揮発分濃度が80重量%である処理剤IIを調製した。
(実施例1、2、4〜6、8、比較例1、3〜8の処理剤)
表1に記載の成分を混合して、均一になるまで攪拌し、処理剤Iを調製した。調製した処理剤Iを攪拌下のイオン交換水に徐々に投入した。投入後、均一な状態になるまで60分攪拌し、不揮発分濃度が18重量%である処理剤II(O/W型エマルション状態)を調製した。
【0094】
上記で調製した各処理剤Iを用いて、下記の方法で凝固性及び溶解性を評価した。また、上記で調製した各処理剤IIを用いて、下記の方法で走行安定性を評価した。その結果を表1に示す。
なお、表1の処理剤成分の数字は、処理剤の不揮発分の重量部を示す。また、表1の処理剤成分の詳細は、以下に示す。
【0095】
(凝固性)
50℃まで加温し、撹拌均一化させた処理剤Iを容量180mLのふた付きガラス瓶中に100mL入れ、容器を密閉し、所定温度(5℃)に設定したエスペック株式会社製環境試験機(PL−3KP)に処理剤Iを封入したガラス瓶を72時間静置した。その後処理剤Iの外観を目視判定し、以下の基準により凝固性を評価した。ここで言う流動性とは処理剤Iを入れた容器を横に傾け、処理剤Iが流れた場合、流動性ありと判断した。
◎:凝固しておらず、流動性がある。
○:外観に曇り、濁りがあり、一部固化している。
△:外観に曇り、濁りがあり、大半が固化している。
×:完全に固化しており、流動性がない。
【0096】
(溶解性)
凝固性評価で用いた処理剤Iの入ったガラス瓶を、所定温度(20℃)に設定したエスペック株式会社製環境試験機(PL−3KP)に2時間静置した。その後の処理剤Iの外観を目視判定し、以下の基準により溶解性を評価した。
○:凝固しておらず、流動性がある。
△:外観に曇り、濁りがあり、一部固化している。
×:完全に固化しており、流動性がない。
【0097】
(走行安定性)
75d/36fポリエステル繊維に処理剤IIを不揮発分として1.5重量%となるように付与し、105℃の環境下で2時間の乾燥を行った。乾燥した原糸を所定温度(5℃)に設定したエスペック株式会社製環境試験機(PL−3KP)に72時間静置した。その後、温度20℃、湿度50%RHに設定した恒温室に1時間静置した後、同室内に設置した走糸法摩擦試験機(東レエンジニアリング製)を用い、200m/minで回転するセパレートローラー付きの第1ローラーに5周巻きつけた後に、201m/minで回転するセパレートローラー付きの第2ローラーに5周巻きつけた後にサクションガンにより吸引した。30分間走行させた時のローラー出口の糸揺れ回数を目視で測定し、以下の条件で走行安定性を評価した。
○:糸揺れ回数 0回
△:糸揺れ回数 1〜5回
×:糸揺れ回数 5回以上
【0098】
[グリセリンエステル化合物]
A−1:パームハイオレイン(グリセリンとC12−18の直鎖脂肪酸とのエステル、直鎖脂肪酸全体に占めるC16−C18の直鎖脂肪酸の割合99重量%、直鎖脂肪酸全体に占めるリノレン酸の割合0.4重量%、ヨウ素価67、水酸基価5.5、融点1.2℃、重量平均分子量 860)
A−2:パームオレイン(グリセリンとC12−18の直鎖脂肪酸とのエステル、直鎖脂肪酸全体に占めるC16−C18の直鎖脂肪酸の割合99重量%、直鎖脂肪酸全体に占めるリノレン酸の割合0.3重量%、ヨウ素価63、水酸基価5.2、融点2.2℃、重量平均分子量 860)
a−1:椰子油(グリセリンとC8−18の直鎖脂肪酸とのエステル、直鎖脂肪酸全体に占めるC16−C18の直鎖脂肪酸の割合12重量%、ヨウ素価7、水酸基価10.5、融点23.5℃、重量平均分子量720)
[分岐エステル化合物]
B−1:トリメチロールプロパントリパーム核脂肪酸(C12−18の直鎖脂肪酸)エステル
B−2:トリメチロールプロパントリイソステアリン酸エステル
B−3:トリメチロールプロパン脂肪酸(C8,C10)エステル
B−4:ペンタエリスリトール脂肪酸(C8,C10)エステル
B−5:2−エチルヘキシルアルコールステアリン酸エステル
B−6:イソトリデシルアルコールステアリン酸エステル
【0099】
[その他エステル化合物]
D−1:ラウリルオレエート
D−2:ノルマルブタノールステアリン酸エステル
[ノニオン界面活性剤]
E−1:硬化ひまし油1モルにEO20モル付加したノニオン界面活性剤
E−2:硬化ひまし油1モルにEO20モル付加したエーテル型ノニオン活性剤とオレイン酸3モルとのエステル化物
E−3:ポリエチレングリコール(分子量600)とオレイン酸2モルとのエステル化物
E−4:ポリエチレングリコール(分子量200)とオレイン酸2モルとのエステル化物
E−5:ラウリルアルコール1モルにEO7モル付加したエーテル型ノニオン界面活性剤
[制電剤]
F−1:イソセチルホスフェートアミン塩
F−2:ラウリルスルフォネートNa塩
F−3:ジオクチルスルホサクシネートNa塩
F−4:オレイン酸K塩
【0100】
【表1】
【0101】
表1からわかるように、実施例の処理剤は、凝固し難く溶解性に優れている。さらに、溶解性に優れる実施例の処理剤を用いた場合、糸揺れが少なく、走行安定性に優れていることがわかる。そのため、高品位な布帛を得ることができる。一方、比較例の処理剤は、溶解性が劣り、使用前に加温用が必要となり、ハンドリング性に劣る。さらに、溶解性が悪い比較例の処理剤を用いた場合、走行安定性が劣る。走行安定性が悪い処理剤は、後工程での糸揺れに繋がり、加工性に劣る。このように、溶解性と走行安定性に相関がある結果となった。
【0102】
[実施例9〜24、比較例9〜15]
表2、3に記載の成分を混合し、均一になるまで攪拌し、処理剤Iを調製した。調製した各処理剤Iを用いて、上記と同じ方法で、凝固性、溶解性を評価した。なお、表2、3の処理剤成分の数字は、処理剤の不揮発分の重量部を示す。また、表2、3の処理剤成分の詳細は、上記に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
表2、3からわかるように、実施例の処理剤は凝固し難く、溶解性に優れる。一方、比較例の処理剤は溶解性が劣り、使用前に加温が必要となり、ハンドリング性に劣る。実施例1〜7・比較例1〜6の結果から、溶解性と走行安定性に相関があることが判明したので、溶解性に優れる実施例の処理剤を用いた場合、走行安定性に優れること、溶解性に劣る比較例の処理剤を用いた場合、走行安定性に劣ることが予測される。