特許第6351570号(P6351570)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6351570-剥離フィルム 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351570
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】剥離フィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20180625BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180625BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20180625BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20180625BHJP
   C09D 171/02 20060101ALI20180625BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20180625BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20180625BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20180625BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B32B27/00 L
   B32B27/30 A
   B32B27/16 101
   C09D4/00
   C09D171/02
   C09D4/02
   C08J7/04 ZCFD
   C08F290/06
   B28B1/30
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-508275(P2015-508275)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(86)【国際出願番号】JP2014056556
(87)【国際公開番号】WO2014156662
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2016年12月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-69512(P2013-69512)
(32)【優先日】2013年3月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】市川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】深谷 知巳
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−302645(JP,A)
【文献】 特開2012−224011(JP,A)
【文献】 特開2003−291291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08J 7/04−7/06
C09D 1/00−10/00、101/00−201/10
B28B 1/00−1/54
C08F 290/00−290/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と第2の面とを有する基材と、
(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を1分子中に2つ以上有し、分子内にフッ素原子を有さない活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、反応性官能基としての(メタ)アクリロイル基を有し、分子内にフッ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)と、を含有する剥離剤層形成用材料を、前記基材の第1の面側に塗布して形成された塗布層に、活性エネルギー線を照射して硬化することにより形成された剥離剤層と、を有し、
前記剥離剤層の外表面の算術平均粗さRa1が8nm以下であり、かつ、前記剥離剤層の前記外表面の最大突起高さRp1が50nm以下であり、
前記基材の前記第2の面の算術平均粗さRa2が5〜40nmであり、かつ、前記基材の前記第2の面の最大突起高さRp2は、60〜500nmであることを特徴とする剥離フィルム。
【請求項2】
前記剥離剤層形成用材料中における前記活性エネルギー線硬化性化合物(B)の固形分換算の含有量は、0.1〜5質量%である請求項1に記載の剥離フィルム。
【請求項3】
前記剥離剤層の平均厚さは、0.3〜2μmである請求項1または2に記載の剥離フィルム。
【請求項4】
グリーンシートの製造に用いられる請求項1ないしのいずれか1項に記載の剥離フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、積層セラミックコンデンサの製造において、グリーンシートを形成するために剥離フィルムが用いられている。
【0003】
剥離フィルムは、一般に基材と剥離剤層とから構成される。この剥離フィルム上に、セラミックス粒子とバインダー樹脂とが有機溶剤に分散、溶解したセラミックスラリーを塗工し、塗工物を得、それを乾燥することにより、グリーンシートは製造される。このような方法により、均一な厚みのグリーンシートを効率よく製造することができる。また、こうして製造されたグリーンシートは、剥離フィルムから剥離して、積層セラミックコンデンサの製造に用いられる。
【0004】
上記のようなグリーンシートの製造において、グリーンシートが形成された剥離フィルムは、一般に、ロール状に巻かれた状態で保管、輸送される。
【0005】
ところで、従来、上記のような剥離フィルムにおいては、基材の剥離剤層が設けられている面とは反対の面(背面)の表面粗度(平均粗さ)を比較的高くし、剥離フィルムが巻かれた剥離フィルムの接した面どうしが貼り付く(ブロッキング)等の不具合を解消しようとする試みがなされていた(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の剥離フィルムを用いた場合、グリーンシートが形成された剥離フィルムを巻き取って保管する際に、剥離フィルムの背面の比較的粗い表面形状が、グリーンシートに転写してしまい、グリーンシートが部分的に薄くなり、グリーンシートを積層してコンデンサを作製したときに、短絡による不具合を生じてしまう場合があった。
【0007】
一方、基材の剥離剤層が設けられている面とは反対の面の表面粗度(平均粗さ)を比較的小さいものにすると、表面粗さが著しく平坦となり、剥離フィルムの接した面どうしの滑りが悪くなるため、巻き取り不良やブロッキング等の不具合を生じてしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−203822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、例えば、グリーンシートのような薄膜を形成する際に、薄膜にピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するのを防止するとともに、優れた剥離性、耐ブロッキング性を備えた剥離フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1)第1の面と第2の面とを有する基材と、
(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を1分子中に2つ以上有し、分子内にフッ素原子を有さない活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、反応性官能基としての(メタ)アクリロイル基を有し、分子内にフッ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)と、を含有する剥離剤層形成用材料を、前記基材の第1の面側に塗布して形成された塗布層に、活性エネルギー線を照射して硬化することにより形成された剥離剤層と、を有し、
前記剥離剤層の外表面の算術平均粗さRa1が8nm以下であり、かつ、前記剥離剤層の前記外表面の最大突起高さRp1が50nm以下であり、
前記基材の前記第2の面の算術平均粗さRa2が5〜40nmであり、かつ、前記基材の前記第2の面の最大突起高さRp2は、60〜500nmであることを特徴とする剥離フィルム。
【0012】
) 前記剥離剤層形成用材料中における前記活性エネルギー線硬化性化合物(B)の固形分換算の含有量は、0.1〜5質量%である上記(1)に記載の剥離フィルム。
【0013】
) 前記剥離剤層の平均厚さは、0.3〜2μmである上記(1)または(2)に記載の剥離フィルム。
【0014】
) グリーンシートの製造に用いられる上記(1)ないし()のいずれかに記載の剥離フィルム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、例えば、グリーンシートのような薄膜を形成する際に、薄膜にピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するのを防止するとともに、優れた剥離性、耐ブロッキング性を備えた剥離フィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の剥離フィルムの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
《剥離フィルム》
本発明の剥離フィルムは、例えば、グリーンシートのような薄膜の製造に用いられる。特に、本発明の剥離フィルムは、グリーンシートの製造に用いることで、より高い効果を発揮する。
【0018】
図1は、本発明の剥離フィルム1の横断面図である。
図1に示すように、剥離フィルム1は、第1の面111と第2の面112とを有する基材11と、基材11の第1の面111上に設けられた剥離剤層12とを有している。
【0019】
本発明の剥離フィルム1は、第2の面112の算術平均粗さRa2が5〜40nmであり、かつ、その最大突起高さRp2が、60〜500nmである基材11と、所定の成分を含む剥離剤層形成用材料で形成された剥離剤層12とを有しており、剥離剤層12の外表面121の算術平均粗さRa1が8nm以下であり、かつ、その最大突起高さRp1が50nm以下である点に特徴を有している。
【0020】
このように剥離剤層12の外表面121を基材11の第2の面112より高平滑化することにより、剥離剤層12の外表面121の突起により形成されうるグリーンシート(薄膜)の凹みと、基材11の第2の面112の突起により形成されうるグリーンシート(薄膜)の凹みとが部分的に一致して、グリーンシートにピンホールが生じることを防止できる。
【0021】
このような特徴を有する、本発明の剥離フィルム1を用いることにより、グリーンシート(薄膜)にピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するのを防止できる。その結果、信頼性の高いグリーンシート(薄膜)を形成できる。
【0022】
特に、グリーンシートの厚さが極薄(例えば厚さ5μm以下、特に厚さ0.5μm〜2μm)であっても、上記欠点のない良好なグリーンシート(薄膜)を形成できる。また、剥離剤層12の外表面121の高平滑化が得られるとともに、前記剥離フィルム1は、優れた剥離性を備えることができる。
【0023】
以下、本実施形態に係る剥離フィルム1を構成する各層について詳細に説明する。
<基材>
基材11は、第1の面111と第2の面112とを有する。
【0024】
基材11は、剥離フィルム1に、剛性、柔軟性等の物理的強度を付与する機能を有している。
【0025】
基材11としては、特に制限はなく、従来公知の材料の中から任意の材料を適宜選択して用いることができる。このような基材11としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネートなどのプラスチックからなるフィルムが挙げられる。基材11は、単層で構成されていてもよいし、同種または異種の2層以上の多層で構成されていてもよい。これらの中でも、基材11の構成材料は、ポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、さらには二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。このようなプラスチックからなるフィルムは、その加工時、使用時等において、埃等が発生しにくいため、例えば、埃等によるセラミックスラリー塗工不良等を効果的に防止することができる。
【0026】
上述したような、基材11の第2の面112の算術平均粗さRa2は、5〜40nmである。これにより、剥離剤層12の外表面121が高平滑である剥離フィルム1を、紙製、プラスチック製または金属製等のコア材にロール状に巻き取る際に、空気抜けが良好になり、巻きずれを効果的に抑制することができる。そのため、巻き取り張力を高める必要が無く、巻き取り張力に起因する巻き芯部の変形も抑制することが可能となる。また、ロール状に巻かれた剥離フィルム1の接した面どうしでブロッキングが発生することを防止できる。さらに、グリーンシート(薄膜)が形成された剥離フィルム1を巻き取って保管する際に、グリーンシート(薄膜)に接する基材11の第2の面112の表面形状が、グリーンシート(薄膜)に転写することを防止でき、グリーンシート(薄膜)にピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するのを防止できる。その結果、信頼性の高いグリーンシート(薄膜)を形成できる。
【0027】
これに対して、算術平均粗さRa2が前記下限値未満であると、グリーンシート形成前の剥離フィルム1の保管時において、グリーンシート形成前の剥離フィルム1を巻き取る際に、空気を巻き込みやすく、巻きずれが生じやすい。そのため、剥離フィルム1の取り扱いが困難となる。また、巻かれた剥離フィルム1の表裏(基材11の第2の面112と剥離剤層12)が密着してしまい、ブロッキングを十分に防止するのが困難となる。一方、算術平均粗さRa2が前記上限値を超えると、グリーンシート形成後の剥離フィルム1を巻き取る際に、グリーンシートに接する基材11の第2の面112の突起形状がグリーンシートに転写されてしまう。そのため、グリーンシートにピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するおそれがあり、グリーンシートの平滑性を十分に保持することが困難となる。
【0028】
このように、基材11の第2の面112における算術平均粗さRa2は、5〜40nmであるが、特に10〜30nmであることが好ましい。これにより、上述の効果がより顕著になる。
【0029】
また、基材11の第2の面112の最大突起高さRp2は、60〜500nmである。これにより、剥離剤層12の外表面121が高平滑である剥離フィルム1を、紙製、プラスチック製または金属製等のコア材にロール状に巻き取る際に、空気抜けが良好になり、巻きずれを効果的に抑制することができる。そのため、巻き取り張力を高める必要が無く、巻き取り張力に起因する巻き芯部の変形も抑制することが可能となる。また、ロール状の剥離フィルム1を繰り出す際に、巻かれた剥離フィルム1の接した面どうしでブロッキングが発生することを防止できる。さらに、グリーンシートが形成された剥離フィルム1を巻き取って保管する際に、グリーンシートに接する基材11の第2の面112の表面形状が、グリーンシートに転写することを防止でき、グリーンシートにピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するのを防止できる。その結果、信頼性の高いグリーンシートを形成できる。
【0030】
これに対して、最大突起高さRp2が前記下限値未満であると、グリーンシート(薄膜)形成前の剥離フィルム1の保管時において、グリーンシート形成前の剥離フィルム1を巻き取る際に、空気を巻き込みやすく、巻きずれが生じやすい。そのため、剥離フィルム1の取り扱いが困難となる。また、剥離フィルム1を巻き取ることで接した基材11の第2の面112と剥離剤層12の外表面121とが密着してしまい、ブロッキングを十分に防止するのが困難となる。一方、最大突起高さRp2が前記上限値を超えると、グリーンシート形成後の剥離フィルム1を巻き取る際に、グリーンシートに接する基材11の第2の面112の突起形状がグリーンシートに転写されてしまう。そのため、グリーンシートにピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するおそれがあり、グリーンシートの平滑性を十分に保持することが困難となる。
【0031】
このように、基材11の第2の面112における最大突起高さRp2は、60〜500nmであるが、80〜400nmであることがより好ましく、100〜300nmであることが特に好ましい。これにより、上述の効果がより顕著になる。
【0032】
基材11の第1の面111の算術平均粗さRa0は2〜80nmであることが好ましく、5〜50nmであることがより好ましい。後述するように、基材11の第1の面111上には、第1の面111の凹凸を埋めて平滑化された剥離剤層12が形成されるため、算術平均粗さRa0が上記の範囲内であれば、平滑化作用が特に顕著となる。
【0033】
また、基材11の第1の面111の最大突起高さRp0は、10〜700nmであることが好ましく、20〜500nmであることがより好ましい。後述するように、基材11の第1の面111上には、第1の面111の凹凸を埋めて平滑化された剥離剤層12が形成されるため、最大突起高さRp0が上記の範囲内であれば、平滑化作用が特に顕著となる。
【0034】
基材11の平均厚さは、10〜300μmであるのが好ましく、15〜200μmであるのがより好ましい。これにより、剥離フィルム1の、適度な柔軟性を維持したまま、引裂きや破断に対する耐性を特に優れたものとすることができる。
【0035】
<剥離剤層>
剥離剤層12は、基材11の第1の面111上に設けられている。
剥離剤層12は、剥離フィルム1に剥離性を付与する機能を有している。
【0036】
剥離剤層12は、所定の成分を含む剥離剤層形成用材料に活性エネルギー線を照射して硬化することにより形成された層である。
【0037】
剥離剤形成用材料は、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、分子内にフッ素原子を有さない活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、分子内にフッ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)とを含有している。このような剥離剤層形成用材料を用いることにより、剥離剤層12形成時の硬化性やグリーンシートに対する剥離性を特に優れたものとすることができる。また、基材11上での成膜性が高くなり、グリーンシートのような薄膜を形成する際に、薄膜にピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するのをより効果的に防止することができる。
【0038】
以下、各成分について詳細に説明する。
[活性エネルギー線硬化性化合物(A)]
活性エネルギー線硬化性化合物(A)は、硬化することにより剥離剤層12の形成に寄与する成分である。これにより、剥離剤層12の機械的強度をより適度にすることができる。
【0039】
活性エネルギー線硬化性化合物(A)は、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基よりなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、分子内にフッ素原子を有さない。なお、上記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基など炭素数2〜10のアルケニル基が例示される。特に、活性エネルギー線硬化性化合物(A)は、上記反応性官能基を、1分子中に2つ以上有しているのが好ましく、1分子中に3つ以上有しているのがより好ましい。これにより、剥離剤層12は、優れた硬化性や、耐溶剤性、および剥離性を得ることができる。また、かかる活性エネルギー線硬化性化合物(A)は、適度な流動性と形状保持性とを有する。このため、基材11上の第1の面111上に、かかる活性エネルギー線硬化性化合物(A)を含む剥離剤層形成用材料を塗布すると、剥離剤層形成用材料により基材11の第1の面111の凹凸を的確に埋め込むことができ、その埋め込んだ状態を確実に保持することができる。その結果、剥離剤層12の外表面121を平滑にすることができる。
【0040】
また、活性エネルギー線硬化性化合物(A)における前記反応性官能基の含有量は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)1kg当たり10当量以上であることが好ましい。これにより、基材11の第1の面111上に薄く塗布された場合においても、活性エネルギー線硬化性化合物(A)の硬化性を特に優れたものとすることができる。
【0041】
活性エネルギー線硬化性化合物(A)としては、前記反応性官能基が、(メタ)アクリロイル基であるのが好ましい。具体的には、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種の多官能アクリレートを用いることが好ましい。これにより、基材11の第1の面111上に薄く塗布された場合においても活性エネルギー線硬化性化合物(A)の硬化性を特に優れたものとすることができる。
【0042】
剥離剤層形成用材料における活性エネルギー線硬化性化合物(A)の固形分換算の含有量(溶剤を除いた全固形分中における含有割合)は、65〜98.5質量%が好ましく、71〜96.3質量%であることがより好ましい。
【0043】
[活性エネルギー線硬化性化合物(B)]
活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、剥離剤層12に剥離性を発現させる成分である。
【0044】
活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、分子内にフッ素原子を有している。なお、上記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基など炭素数2〜10のアルケニル基が例示される。また、活性エネルギー線硬化性化合物(B)における前記反応性官能基は、(メタ)アクリロイル基であるのが好ましい。
【0045】
活性エネルギー線硬化性化合物(B)としては、例えば、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(b1)を含む分子鎖を有しており、該分子鎖の末端および/または側鎖に、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基よりなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基が、直接または2価の連結基を介して結合した化合物が好ましい。なお、その化合物は、上記反応性官能基を1分子中に少なくとも1個有していればよい。
【0046】
上記ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は、具体的には、炭素原子数1〜3の2価のフッ化炭素基と酸素原子とが交互に連結した構造を有する分子鎖が挙げられる。炭素原子数1〜3の2価のフッ化炭素基は、一種類であっても良いし複数種の混合であってもよい。具体的には、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖は、下記構造式(1)で表される。
【0047】
【化1】
(上記構造式(1)中、Xは下記構造(a)〜(d)である。構造式(1)中の全てのXが同一構造であってもよい。また、互いに異なる構造がランダムに又はブロック状に構造式(1)に存在していてもよい。また、nは繰り返し単位を表す1以上の数である。)
【0048】
【化2】
【0049】
また、前記2価の連結基としては、例えば、アルキレン基、アルキレンオキシ基、オキシ基、イミノ基、カルボニル基およびそれらを組み合わせた2価の連結基等が挙げられる。2価の連結基の炭素数は、1〜30であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。
【0050】
また、活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0051】
また、活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、水酸基、イソシアネート基、グリシジル基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有していてもよい。
【0052】
また、活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、その分子鎖末端または側鎖に、水酸基、イソシアネート基、グリシジル基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する単量体に由来する構成単位(b2)を有してもよい。
【0053】
水酸基、イソシアネート基、グリシジル基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート等の水酸基含有不飽和単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート等のイソシアネート基含有不飽和単量体;グリシジルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル等のグリシジル基含有不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体が挙げられる。
【0054】
また、活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、その分子鎖末端または側鎖に、その他の不飽和単量体に由来する構成単位(b3)を有するものでもよい。
【0055】
その他の不飽和単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘプチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸n−ヘプチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニルなどのアクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどの芳香族ビニル類;等が挙げられる。
【0056】
また、活性エネルギー線硬化性化合物(B)に(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を導入するには、まず、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖(b1)および構成単位(b2)を有する化合物を合成する。次に、当該化合物の構成単位(b2)に存在する官能基と反応性を有し、かつ水酸基、イソシアネート基、グリシジル基およびカルボキシル基よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基と、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基とを有する化合物(b4)を当該化合物と反応させる方法が挙げられる。
【0057】
このような化合物(b4)としては、具体的には、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アクリル酸などが挙げられる。
【0058】
また、活性エネルギー線硬化性化合物(B)のGPC測定による質量平均分子量は、300〜30000であることが好ましく、1500〜10000であることがより好ましい。
【0059】
このような活性エネルギー線硬化性化合物(B)は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)が活性エネルギー照射により硬化する際に、活性エネルギー線硬化性化合物(A)の硬化物の架橋構造に組み込まれて固定される。これにより、剥離剤層12の外表面121側に形成されるグリーンシートへ、剥離剤層12の成分である活性エネルギー線硬化性化合物(B)の移行転着を抑制することができる。
【0060】
剥離剤層形成用材料における活性エネルギー線硬化性化合物(B)の固形分換算の含有量は、0.1〜5質量%が好ましく、0.3〜4.5質量%であることがより好ましい。これにより、セラミックスラリー(薄膜形成材料)をはじくことなく、剥離フィルム1に塗布することがより可能となるとともに、剥離フィルム1の剥離性を特に優れたものとすることができる。
【0061】
これに対して、剥離剤層形成用材料における活性エネルギー線硬化性化合物(B)の固形分換算の含有量が前記下限値未満であると、形成される剥離剤層12が十分な剥離性を発揮できないおそれがある。一方、剥離剤層形成用材料における活性エネルギー線硬化性化合物(B)の固形分換算の含有量が前記上限値を超えると、形成される剥離剤層12の表面にセラミックスラリーを塗布したときに、セラミックスラリーをはじき易くなるおそれがある。また、剥離剤層12が硬化し難くなり、十分な剥離性が得られない場合がある。
【0062】
さらに、活性エネルギー線硬化性化合物(A)の配合量をA質量部とし、活性エネルギー線硬化性化合物(B)の配合量をB質量部としたとき、質量比B/Aが、0.1/99.9〜5/95の範囲であることがより好ましく、0.3/99.7〜4.5/95.5の範囲であることが特に好ましい。これにより、上記効果がさらに顕著となる。
【0063】
このような活性エネルギー線硬化性化合物(A)と活性エネルギー線硬化性化合物(B)とを含む剥離剤層形成用材料を用いて形成された剥離剤層12を備える剥離フィルム1では、剥離剤層12の外表面121付近に、活性エネルギー線硬化性化合物(B)に由来する成分が偏析した状態となっている。このような偏析が生じる理由は、以下のように考えられている。すなわち、活性エネルギー線硬化性化合物(A)と分子構造、極性、分子量等の異なる活性エネルギー線硬化性化合物(B)を用いることにより、剥離剤層形成用材料の塗布層が硬化される間に活性エネルギー線硬化性化合物(B)が塗布層の表面付近に押し上げられることにより偏析が生じる。
【0064】
[光重合開始剤(C)]
剥離剤層形成用材料を硬化させるために、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、剥離剤層形成用材料は、光重合開始剤(C)を含んでいてもよい。光重合開始剤(C)を用いることで、紫外線の照射により剥離剤層形成用材料をより容易かつ確実に硬化させることができる。
【0065】
光重合開始剤(C)としては、特に限定されないが、例えば、α−アミノアルキルフェノン系の光重合開始剤を用いることがより好ましい。このようなα−アミノアルキルフェノン系の光重合開始剤は、硬化の際に酸素阻害を受けにくくする化合物である。そのため、大気雰囲気下での剥離フィルム1の製造においても、特に優れた硬化性を得ることができる。
【0066】
α−アミノアルキルフェノン系の光重合開始剤としては、例えば、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル] −2−モリフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ) −2−[(4-メチルフェニル)メチル] −1−[4−(4-モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられる。これにより、特に優れた硬化性や、耐溶剤性、および剥離性を得ることができる。
【0067】
剥離剤層形成用材料における光重合開始剤(C)の固形分換算の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、3〜15質量%であることがより好ましい。これにより、剥離剤層12の厚さが、酸素阻害により硬化性が得られ難い範囲の厚さであっても、特に優れた硬化性や、耐溶剤性、および剥離性を得ることができる。
【0068】
また、剥離剤層形成用材料は、上途したような成分に加え、他の成分を含んでいてもよい。例えば、増感剤、帯電防止剤、硬化剤、反応性モノマー等を含んでいてもよい。
【0069】
増感剤として、例えば、2,4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンを用いてもよい。これにより、反応性をより高めることができる。
【0070】
剥離剤層形成用材料における、他の成分の固形分換算の含有量は、0〜10質量%であることが好ましい。
【0071】
剥離剤層12の外表面121の算術表面粗さRa1は8nm以下である。これにより、グリーンシートを剥離剤層12の外表面121側に成型したときに、グリーンシートにピンホールや部分的な厚みのばらつきを発生させることをより確実に防止でき、グリーンシートの表面をより高平滑なにすることができる。
【0072】
剥離剤層12の外表面121の最大突起高さRp1は、50nm以下である。これにより、グリーンシートを剥離剤層12の外表面121側に成型したときに、グリーンシートにピンホールや部分的な厚みのばらつきを発生させることをより確実に防止でき、グリーンシートの表面をより高平滑にすることができる。
【0073】
剥離剤層12の平均厚さは、0.3〜2μmであることが好ましく、0.5〜1.5μmであることがより好ましい。剥離剤層12の厚さが前記下限値未満であると、剥離剤層12の外表面121の平滑性が不十分となる。その結果、グリーンシートを剥離剤層12の外表面121側に成型したときに、グリーンシートにピンホールや部分的な厚みのばらつき等が発生するおそれがある。一方、剥離剤層12の厚さが前記上限値を超えると、剥離剤層12の硬化収縮により剥離フィルム1にカールが発生し易くなる。また、剥離フィルム1を巻き取った場合に、剥離剤層12は接する剥離フィルム1の第2の面112の間でブロッキングが発生しやすくなる。そのため、剥離フィルム1の巻き取り不良が生じたり、剥離フィルム1の巻き出し時の帯電量が増大するおそれがある。
【0074】
《剥離フィルムの製造方法》
次に、上述したような剥離フィルム1の製造方法の好適な実施形態について説明する。
【0075】
本実施形態の製造方法は、基材11を準備する第1の工程と、剥離剤層形成用材料を調製する第2の工程と、基材11の第1の面111に、剥離剤層形成用材料を塗布して乾燥させることで塗布層を形成し、当該塗布層に紫外線を照射してそれを硬化させることにより、剥離剤層12を形成する第3の工程とを有している。
【0076】
以下、各工程について詳細に説明する。
<第1の工程>
まず、基材11を準備する。
【0077】
基材11の第1の面111に、酸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。これにより、基材11と基材11の第1の面111に設けられる剥離剤層12との密着性を特に優れたものとすることができる。
【0078】
また、酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、これらの表面処理法は、基材11の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果および操作性の面から好ましく用いられる。
【0079】
<第2の工程>
次に、活性エネルギー線硬化性化合物(A)、活性エネルギー線硬化性化合物(B)、および、その他の成分を、溶剤に溶解または分散させることにより、剥離剤層形成用材料を得る。
【0080】
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、キシレン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0081】
<第3の工程>
次に、基材11の第1の面111に、剥離剤層形成用材料を塗布して乾燥させることで塗布層を得る。剥離剤層形成用材料が塗布されてから乾燥される間に、剥離剤層形成用材料は第1の面111の凹凸を埋めて、平滑化された塗布層を形成する。
【0082】
その後、このようにして得られた塗布層に、活性エネルギー線を照射して、塗布層を硬化させることにより、平滑化された剥離剤層12を形成する。活性エネルギー線が紫外線である場合、紫外線の照射量は、積算光量が50〜1000mJ/cm2であるのが好ましく、100〜500mJ/cm2であるのがより好ましい。また、活性エネルギー線が電子線である場合には、電子線の照射量は、0.1〜50kGy程度であるのが好ましい。
これにより、剥離フィルム1が得られる。
【0083】
剥離剤層形成用材料の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法などが使用できる。
剥離剤層形成用材料の乾燥条件としては、特に限定されない。乾燥温度は、50〜100℃であるのが好ましく、乾燥時間は5秒間〜1分間であるのが好ましい。これにより、塗布層の不本意な変質を防ぐことができるとともに、塗布層を特に効率よく形成することができる。その結果、最終的に得られる剥離フィルム1の生産性を向上させることができる。
【0084】
以上のような工程によれば、ピンホールや部分的な厚みのばらつきの発生が抑制されたグリーンシート(薄膜)を製造できる剥離フィルム1を容易に製造することができる。また、剥離性、硬化性の良好な剥離フィルム1を製造することができる。
【0085】
以上、本発明を好適実施形態に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0086】
例えば、上述した実施形態では、基材11の第1の面111に剥離剤層12を設けた剥離フィルム1について説明した。しかし、剥離フィルム1は、これに限定されず、基材11と剥離剤層12との間には、中間層を設けてもよい。このような中間層は、基材11と剥離剤層12との密着性を向上させる目的の層であってもよく、また、グリーンシート形成前の剥離フィルム1を巻き取る際の帯電の発生をより抑制させる目的の層であってもよい。
【0087】
また、例えば、前述した実施形態では、基材11が1層で構成されるとして説明した。しかし、基材11は、これに限定されず、例えば、1層でなく、積層体で構成されていてもよい。基材11が2層で構成される場合、例えば、剥離剤層12側の層が剥離剤層12を支持する機能を有し、他側の層が帯電防止機能を有していてもよい。これにより、より優れた剥離剤層12への密着性と、帯電防止性とを有することができる。
【0088】
また、本発明の剥離フィルムの製造方法は、上述した方法に限定されなく、必要に応じて任意の工程が追加されてもよい。
【実施例】
【0089】
次に、本発明の剥離フィルムの具体的実施例について説明する。
[1]剥離フィルムの作製
(実施例1)
まず、基材としての二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム[厚み:31μm、第1の面の算術平均粗さRa0:16nm、第1の面の最大突起高さRp0:196nm、第2の面の算術平均粗さRa2:16nm、第2の面の最大突起高さRp2:196nm]を用意した。
【0090】
次に、以下のようにして、剥離剤層形成用材料の調製を行った。
活性エネルギー線硬化性化合物(A)として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート[固形分100質量%]、活性エネルギー線硬化性化合物(B)として、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とメタクリロイルオキシ基とを有する化合物を含む溶液[DIC株式会社製、商品名「RS−75」、固形分40質量%]と、光重合開始剤(C)としてのα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤[BASF社製、商品名「IRGACURE907」、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン、固形分100質量%]を用意した。活性エネルギー線硬化性化合物(A)を94質量部、活性エネルギー線硬化性化合物(B)を固形分として1質量部および光重合開始剤(C)を5質量部とを混合した。この混合液をイソプロピルアルコール/メチルエチルケトン混合溶剤(質量比3/1)で希釈することにより、固形分20質量%の剥離剤層形成用材料を得た。
【0091】
得られた剥離剤層形成用材料をバーコーターで上記基材の第1の面上に塗布した。剥離剤層形成用材料を80℃、1分間で乾燥させ塗布層を得た。このようにして得られた塗布層に、紫外線を照射(積算光量:250mJ/cm2)して剥離剤層(厚み:1μm)を形成し、剥離フィルムを得た。
【0092】
(実施例2)
活性エネルギー線硬化性化合物(A)を、ペンタエリスリトールテトラアクリレート[固形分100質量%]94質量部に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0093】
(実施例3)
活性エネルギー線硬化性化合物(A)を、ペンタエリスリトールトリアクリレート[固形分100質量%]94質量部に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0094】
(実施例4)
剥離剤層の厚みを、0.5μmに変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0095】
(実施例5)
剥離剤層の厚みを、1.9μmに変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0096】
(実施例6)
活性エネルギー線硬化性化合物(B)を、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とメタクリロイルオキシ基とを有する化合物を含む溶液[DIC株式会社製、商品名「RS−76E」、固形分40質量%]を固形分として1質量部に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0097】
(実施例7)
活性エネルギー線硬化性化合物(A)94質量部を91質量部に変更し、活性エネルギー線硬化性化合物(B)の固形分を1質量部から4質量部に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0098】
(実施例8)
活性エネルギー線硬化性化合物(A)94質量部を93質量部に変更し、活性エネルギー線硬化性化合物(B)の固形分を1質量部から2質量部に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0099】
(実施例9)
活性エネルギー線硬化性化合物(A)94質量部を94.3質量部に変更し、活性エネルギー線硬化性化合物(B)の固形分を1質量部から0.7質量部に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0100】
(実施例10)
活性エネルギー線硬化性化合物(A)94質量部を94.7質量部に変更し、活性エネルギー線硬化性化合物(B)の固形分を1質量部から0.3質量部に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0101】
(実施例11)
基材の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム[厚み:38μm、第1の面の算術平均粗さRa0:15nm、第1の面の最大突起高さRp0:98nm、第2の面の算術平均粗さRa2:15nm、第2の面の最大突起高さRp2:98nm]に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0102】
(実施例12)
基材の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム[厚み:38μm、第1の面の算術平均粗さRa0:35nm、第1の面の最大突起高さRp0:471nm、第2の面の算術平均粗さRa2:35nm、第2の面の最大突起高さRp2:471nm]に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0103】
(比較例1)
活性エネルギー線硬化性化合物(A)94質量部を95質量部に変更し、活性エネルギー線硬化性化合物(B)を添加しなかった以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0104】
(比較例2)
剥離剤層の厚みを、0.2μmに変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0105】
(比較例3)
基材の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム[厚み:38μm、第1の面の算術平均粗さRa0:42nm、第1の面の最大突起高さRp0:619nm、第2の面の算術平均粗さRa2:42nm、第2の面の最大突起高さRp2:619nm]に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0106】
(比較例4)
基材の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム[厚み:38μm、第1の面の算術平均粗さRa0:15nm、第1の面の最大突起高さRp0:105nm、第2の面の算術平均粗さRa2:3nm、第2の面の最大突起高さRp2:15nm]に変更した以外は、前記実施例1と同様にして剥離フィルムを作製した。
【0107】
なお、各実施例および比較例で得られた剥離フィルムの剥離剤層の厚さは、反射式膜厚計(製品名「F20」、フィルメトリックス株式会社製)にて測定した。
【0108】
また、各実施例および比較例で得られた剥離フィルムの剥離剤層の外表面の算術平均粗さRa1、剥離剤層の外表面の最大突起高さRp1、基材の第2の面の算術平均粗さRa2、および基材の第2の面の最大突起高さRp2は、次のように測定された。まず、ガラス板に両面テープを貼付した。次に、両面テープ上に算術平均粗さおよび最大突起を測定する面が上になるようにして、各実施例および各比較例で得られた剥離フィルムを固定した。続いて、ミツトヨ社製表面粗さ測定機SV3000S4(触針式)を用いて前記算術平均粗さRa1、Ra2、前記最大突起高さRp1、Rp2を、JIS B0601−1994に準拠して測定した。
【0109】
また、表中、活性エネルギー線硬化性化合物(A)としての、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートをA1、ペンタエリスリトールテトラアクリレートをA2、ペンタエリスリトールトリアクリレートをA3、活性エネルギー線硬化性化合物(B)としての、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とメタクリロイルオキシ基とを有する化合物を含む溶液[DIC株式会社製、商品名「RS−75」、固形分40質量%]をB1、ポリ(パーフルオロアルキレンエーテル)鎖とメタクリロイルオキシ基とを有する化合物を含む溶液[DIC株式会社製、商品名「RS−76E」、固形分40質量%]をB2、光重合開始剤としての、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤[BASF社製、商品名「IRGACURE907」、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル] −2−モリフォリノプロパン−1−オン]をC1と示した。
【0110】
【表1】
【0111】
[2]評価
以上のようにして得られた剥離フィルムに関して、以下のような評価を行った。
【0112】
[2.1]硬化性評価
各実施例および各比較例で得られた剥離フィルムについて、MEKを3ml含ませたウエス(小津産業社製,BEMCOT AP−2)で剥離剤層表面を荷重1kg/cm2で往復10回研磨した。その後、剥離剤層の表面を目視で観察し、以下の判断基準で剥離剤層の硬化性を評価した。
【0113】
A:剥離剤層の溶解・脱落が無い。
B:剥離剤層の一部に溶解が見られた。
C:剥離剤層が完全に溶解し、脱落した。
【0114】
[2.2]セラミックスラリー塗工性評価
チタン酸バリウム粉末[堺化学工業社製、商品名「BT−03」、BaTiO3]100質量部、バインダーとしてのポリビニルブチラール[積水化学工業社製,商品名「エスレックB・K BM−2」]8質量部、および可塑剤としてのフタル酸ジオクチル[関東化学社製、商品名「フタル酸ジオクチル 鹿1級」]4質量部に、トルエン/エタノール混合溶剤(質量比6/4)135質量部を加えた。これらの物質をボールミルにて混合分散させて、セラミックスラリーを調製した。各実施例および各比較例で得られた剥離フィルムの剥離剤層表面に、上記セラミックスラリーをダイコーターにて、乾燥後の膜厚が1μm、幅250mm、長さ10mになるように、塗布し塗工物を得た。その後、塗工物を80℃で1分間乾燥させ、グリーンシートを得た。その後、グリーンシートが成型された剥離フィルムについて、蛍光灯下でグリーンシート面を剥離フィルム側から目視で観察した。
【0115】
A:グリーンシートにピンホールがなかった。
B:グリーンシートに1〜5個のピンホールが発生した。
C:グリーンシートに6個以上のピンホールが発生した。
【0116】
[2.3]グリーンシート剥離性評価
上記[2.2]で形成したグリーンシートを、剥離フィルムから剥離した。このとき、グリーンシートが正常に剥離できるか評価した。
【0117】
A:グリーンシートが破れることなく、剥離フィルムからスムーズに剥離でき、剥離剤層上にグリーンシートが残らなかった。
B:グリーンシートが破れることなく、ややスムーズさに欠けるが、剥離フィルムから剥離でき、剥離剤層上にグリーンシートが残らなかった。
C:グリーンシートを剥離フィルムから剥離するときに、グリーンシートが破れてしまうか、または剥離できなかった。
【0118】
[2.4]グリーンシートの欠陥評価(凹部数評価)1
ポリビニルブチラール樹脂をトルエン/エタノール混合溶剤(質量比6/4)にて溶解した塗工液を、各実施例および各比較例で得られた剥離フィルムの剥離剤層の上(外表面)に、乾燥後の厚さが3μmとなるように塗布して塗工物を得た。塗工物を80℃で1分間乾燥させて、ポリビニルブチラール樹脂層を成形した。次いで、そのポリビニルブチラール樹脂層の表面にポリエステルテープを貼付した。次いで、剥離フィルムをポリビニルブチラール樹脂層から剥離し、ポリビニルブチラール樹脂層をポリエステルテープに転写した。次いで、剥離フィルムの剥離剤層に接触していたポリビニルブチラール樹脂層の面における凹部の数を数えた。具体的には、ポリビニルブチラール樹脂層の面が、光干渉式表面形状観察装置「WYKO−1100」[株式会社Veeco社製]を用いて、PSIモード、50倍率にて観察された。ポリビニルブチラール樹脂層の面の91.2×119.8μmの範囲における表面形状画像に基づいて、150nm以上の深さを有する凹部の数をカウントした。凹部の数をグリーンシートの欠陥1として以下の判断基準で評価した。なお、下記評価基準「C」であった剥離フィルムを有するグリーンシートでコンデンサを作製した場合、耐電圧低下によるショートが発生し易い傾向があった。
ただし、上記[2.3]で評価基準「C」の剥離フィルムの場合には、本評価を行わなかった。
【0119】
A:凹部の数が0個である。
B:凹部の数が1〜5個である。
C:凹部の数が6個以上である。
【0120】
[2.5]グリーンシートの欠陥評価(凹部数評価)2
ポリビニルブチラール樹脂をトルエン/エタノール混合溶剤(質量比6/4)にて溶解した塗工液を、厚さ50μmのPETフィルム上に、乾燥後の厚さが3μmとなるように塗布して塗工物を得た。塗工物を80℃で1分間乾燥させてポリビニルブチラール樹脂層を成形した。各実施例および各比較例で得られた剥離フィルムを、当該剥離フィルムの基材の第2の面が上記ポリビニルブチラール樹脂層と接するように、当該ポリビニルブチラール樹脂層に貼り合わせて、積層体を得た。この積層体を100mm×100mmに裁断した。その後、裁断した積層体を荷重5kg/cm2でプレスし、剥離フィルムの基材の第2の面の突起形状をポリビニルブチラール樹脂層に転写させた。次いで、剥離フィルムをポリビニルブチラール樹脂層から剥離し、剥離フィルムの基材の第2の面に接触していたポリビニルブチラール樹脂フィルムの面における深さ300nm以上の凹みを数えた。具体的には、ポリビニルブチラール樹脂層の面が、光干渉式表面形状観察装置「WYKO−1100」[株式会社Veeco社製]を用いて、PSIモード、50倍率にて観察された。ポリビニルブチラール樹脂層の面の91.2×119.8μmの範囲における表面形状画像に基づいて、凹部の数をカウントした。凹部の数をグリーンシートの欠陥2として以下の判断基準で評価した。なお、下記評価基準「C」であった剥離フィルムを有するグリーンシートでコンデンサを作製した場合、耐電圧低下によるショートが発生し易い傾向があった。
【0121】
A:300nm以上の深さを有する凹部の数が0個である。
B:300nm以上500nm未満の深さを有する凹部の数が1個以上であり、500nm以上の深さを有する凹部の数が0個である。
C:500nm以上の深さを有する凹部の数が1個以上である。
【0122】
[2.6]ハンドリング性評価
各実施例および各比較例の剥離フィルムをロール状にする際の、ハンドリング性について評価した。
【0123】
A:剥離フィルムの滑り性が良く、かつ剥離フィルムをロール状にするときの空気抜けが良く、剥離フィルムの巻きズレを防止できた。
B:剥離フィルムの滑り性が若干悪く、かつ剥離フィルムをロール状に巻いたときの空気の抜けが若干悪く、剥離フィルムの巻きズレが若干生じるが、ロールに巻き取ることに支障がなかった。
C:剥離フィルムの滑り性が悪く、かつ剥離フィルムをロール状に巻いたときの空気の抜けが悪く、剥離フィルムの巻きズレが顕著に生じた。
【0124】
[2.7]ブロッキング性評価
各実施例および各比較例で得られた剥離フィルムの幅400mm、長さ5000mをロール状に巻き上げ、剥離フィルムのロールを得た。この剥離フィルムのロールを40℃、湿度50%以下の環境下に30日間保管した。その後、剥離フィルムのロールの外観を目視にて観察し、以下の判断基準でブロッキング性を評価した。
【0125】
A:保管前の剥離フィルムのロールの外観と比較して、保管後の剥離フィルムのロールの外観に変化がなかった(ブロッキング無し)
B:保管後の剥離フィルムのロールに部分的に色目が異なる領域があった(ブロッキング傾向にあるが使用可能)
C:保管後の剥離フィルムのロールの広範な領域にわたって色目が異なった(ブロッキング有り)
これらの結果を表2に示す。
【0126】
【表2】
【0127】
表2から明らかなように、本発明の剥離フィルムは、スラリーの塗工性、成膜されたグリーンシート(薄膜)の剥離性およびグリーンシートの表裏の平滑性に優れていた。また本発明の剥離フィルムは、グリーンシート(薄膜)にピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生することを抑制させる効果があった。また、本発明の剥離フィルムは、ロール状にする際に、ハンドリング性がよく、さらに、ロール状にした際のブロッキングが生じにくかった。また、本発明の剥離フィルムは、剥離剤層形成用材料の硬化性が優れており、大気雰囲気中においても剥離剤層の形成が可能であった。
これに対して、比較例ではいずれかの評価において満足な結果が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の剥離フィルムは、基材と、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、(メタ)アクリロイル基、アルケニル基およびマレイミド基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有し、分子内にフッ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物(B)とを含有する材料で形成された剥離剤層とを有し、剥離剤層の外表面の算術平均粗さが8nm以下であり、かつ、剥離剤層の外表面の最大突起高さが50nm以下であり、基材の第2の面の算術平均粗さが5〜40nmであり、かつ、基材の第2の面の最大突起高さは、60〜500nmである。本発明によれば、グリーンシートや粘着材料などのような薄膜を形成する際に、薄膜にピンホールや部分的な厚みのばらつきが発生するのを防止するとともに、優れた剥離性、耐ブロッキング性を備えた剥離フィルムを提供することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0129】
1 剥離フィルム
11 基材
111 基材の第1の面
112 基材の第2の面
12 剥離剤層
121 剥離剤層の外表面
図1