特許第6351575号(P6351575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6351575-高純度フッ化リチウムの製造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351575
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】高純度フッ化リチウムの製造
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/04 20060101AFI20180625BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALN20180625BHJP
【FI】
   C01D15/04
   !H01M10/0568
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-513187(P2015-513187)
(86)(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公表番号】特表2015-518811(P2015-518811A)
(43)【公表日】2015年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2013060652
(87)【国際公開番号】WO2013174938
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年5月20日
(31)【優先権主張番号】12169563.9
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ボル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング・エーベンベック
(72)【発明者】
【氏名】エーベルハルト・クッカート
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−156190(JP,A)
【文献】 特表2002−505248(JP,A)
【文献】 特開2010−155774(JP,A)
【文献】 特開2000−128522(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0200508(US,A1)
【文献】 特開2010−265142(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101723413(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体を準備する工程と、
b)a)で準備された前記水性媒体をガス状フッ化水素と反応させて固体フッ化リチウムの水性懸濁液を得る工程と、
c)前記固体フッ化リチウムを前記水性懸濁液から分離する工程と、
d)前記分離されたフッ化リチウムを乾燥させる工程と
を少なくとも含む、フッ化リチウムの製造方法。
【請求項2】
溶解した炭酸リチウムを含む前記水性媒体が、2.0g/Lの炭酸リチウムを含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶解した炭酸リチウムを含む前記水性媒体が、前記水性媒体の総重量を基準として、少なくとも50重量%の重量割合の水を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
溶解した炭酸リチウムを含む前記水性媒体が、溶解した炭酸リチウムを含む前記水性媒体の総重量を基準として、0.001〜1重量%の量で、錯化剤をさらなる成分として含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
溶解した炭酸リチウムを含む前記水性媒体が、固体炭酸リチウムを、前記固体炭酸リチウムが少なくとも部分的に溶液に溶けていくように、炭酸リチウムを含まないかまたは1.0g/L以下の炭酸リチウム含有量を有する水性媒体と接触させることによって準備されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記固体炭酸リチウムが、無水製品を基準として、95.0〜99.9重量%の純度レベルを有し
1)200〜5000ppmのイオン形態のナトリウムの含有量および/または
2)5〜1000ppmの、イオン形態のカリウムの含有量および/または
3)50〜1000ppmのイオン形態のカルシウムの含有量および/または
4)20〜500ppmのイオン形態のマグネシウムの含有量
で異質のイオンを含有し、
ここで、炭酸リチウムと前記異質のイオン1)〜4)との合計が、前記無水製品に基づく工業用グレードの炭酸リチウムの総重量を基準として、1,000,000ppm以下であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
準備される溶解した炭酸リチウムを含む前記水性媒体が、20℃および1013hPaで測定されるかまたは計算される、8.5〜12.0のpHを有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a)で準備される溶解した炭酸リチウムを含む前記水性媒体を、工程b)で使用する前に、イオン交換体上に通して、特にカルシウムおよびマグネシウムイオンを少なくとも部分的に除去することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)での前記反応が、ガス状フッ化水素を含むガス流を、溶解した炭酸リチウムを含む前記水性媒体中へもしくは上に導入するかもしくは通すことによって、またはガス状フッ化水素を含むガス中へもしくはガスの中を通して、溶解した炭酸リチウムを含む前記水性媒体を噴霧するか、もしくは霧状にするか、もしくはそれを流すことによって達成されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)での前記反応を、得られる固体フッ化リチウムの水性懸濁液が3.5〜8.0のpHに達するような方法で行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)〜d)が1回または2回以上繰り返され、炭酸リチウムを含まないかまたは1.0g/L以下の炭酸リチウム含有量を有する、溶解した炭酸リチウムを含む前記水性媒体を準備するために使用される水性媒体が、前記水性懸濁液からの前記固体フッ化リチウムの分離において先行する工程c)で得られた水性媒体であることを特徴とする、請求項5〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
95%以上の転化率レベルに達するように行われることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸リチウムから進む高純度フッ化リチウムの製造方法に、および好ましいモルフォロジーを有するフッ化リチウムに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム化合物、たとえばヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、およびテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)は、高性能アキュムレーターの製造で導電性塩として特に高い工業的重要性を獲得している。さらなるリチウム化合物、たとえばヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF)、フルオロパーフルオロアルキルホスフィン酸リチウム(LiPF(R)およびジフルオロリン酸リチウム(LiPO)は現在、同じ目的への適格性について熱心な試験の対象である。
【0003】
そのようなアキュムレーターの機能する能力および寿命ならびに、したがってそれらの品質を確実なものにするために、使用されるリチウム化合物が高純度のものである、より具体的には、最小割合の他の金属イオン、より具体的には、ナトリウムまたはカリウムイオンなどおよび最小量の腐食性クロリドを含有することが特に重要である。異質の金属イオンは、沈澱物形成のせいで電池短絡の原因となる(特許文献1)。
【0004】
所要の純度でのヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、フルオロパーフルオロアルキルホスフィン酸リチウム(LiPF(R)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF)およびテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)または類似のフッ素含有導電性塩の製造のためには、非常に高い純度を既に有するフッ化リチウムが典型的には使用される。文献はそれ故頻繁にまた、非常に純粋なフッ化リチウムを「バッテリーグレード」と規定している。
【0005】
この要件のために、先行技術は、非常に純粋なフッ化リチウムを得るための多数の方法を既に記載している。
【0006】
(特許文献2)は、工業用グレードの炭酸リチウムからのフッ化リチウムの製造および精製方法であって、
a)難水溶性炭酸リチウムが先ず、二酸化炭素を使用して炭酸水素リチウムへ転化され、同時に溶解させられ、
b)このようにして得られた炭酸水素リチウムの溶液が次に、異質の金属イオンを除去するために、イオン交換体(Lewatit(登録商標)TP 207)を通してポンプ送液され、
c)精製炭酸リチウムが、二酸化炭素を除去することによって炭酸水素リチウム溶液から沈澱させられ、このようにして精製され、
d)精製炭酸リチウムが最後に、純粋なフッ化リチウムを得るために水性フッ化水素酸と混ぜ合わせられる
方法を開示している。
【0007】
この方法によるフッ化リチウムの収率は、使用された炭酸リチウムの量を基準として66.4%である。
【0008】
(特許文献3)は、工業用グレードの炭酸リチウムからのフッ化リチウムの製造方法であって、純粋な炭酸リチウムが、最初に二酸化炭素との反応、得られた炭酸水素リチウム溶液のイオン交換体での精製および二酸化炭素の除去によって同様に得られる方法を開示している。炭酸リチウムは次に、炭酸水素リチウムへ再び転化され、水性フッ化水素酸の添加によってフッ化リチウムへ転化される。
【0009】
フッ化リチウムが、容易に入手可能な工業用グレードの炭酸リチウムから進んで、炭酸水素リチウムまたは前もって精製された炭酸リチウムとフッ化水素酸、無水フッ化水素またはフッ化アンモニウムとの反応によって得られるさらなる方法がまた、たとえば、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)、(特許文献7)、(特許文献8)、(特許文献9)および(特許文献10)から公知である。
【0010】
前述の方法での共通因子は、使用される炭酸リチウムに対して別個の精製工程が必要とされるか、より良好な水溶解性である、炭酸水素リチウムへの完全な転化後にのみフッ化リチウムへの転化が達成されるかのどちらかであることである。
【0011】
先行技術は、高純度を達成することが技術的に非常に複雑であること、およびその結果として、すべての純度要件を、今まで知られているフッ化リチウムの製造または精製方法によって満たすことはできないことを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第7,981,388号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第198 09 420 A1号明細書
【特許文献3】ロシア特許出願公開第2 330 811 A号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0200508 A号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第102030344 A号明細書
【特許文献6】中国特許出願公開第10198022 A号明細書
【特許文献7】中国特許出願公開第101723413 A号明細書
【特許文献8】中国特許出願公開第101723414 A号明細書
【特許文献9】中国特許出願公開第101723415 A号明細書
【特許文献10】中国特許出願公開第101570337 A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明によって取り組まれる課題は、いかなる複雑な精製操作も必要とせず、常に高収率を与え、その後の反応でその問題のない使用を可能にするモルフォロジーのフッ化リチウムを製造することが可能である高純度フッ化リチウムの効率的な製造方法を提供するというものであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
課題の解決法および本発明の主題は、
a)溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体を準備する工程と、
b)a)で準備された水性媒体をガス状フッ化水素と反応させて固体フッ化リチウムの水性懸濁液を得る工程と、
c)固体フッ化リチウムを水性懸濁液から分離する工程と、
d)分離されたフッ化リチウムを乾燥させる工程と
を少なくとも含むフッ化リチウムの製造方法である。
【0015】
本発明の範囲は、一般用語でまたは好みの領域内で、上述のおよび本明細書で以下に引用される構成要素、値および/またはプロセスパラメーターの範囲の任意のおよびすべての可能な組み合わせを包含することが現時点で指摘されるべきである。
【0016】
工程a)で、炭酸リチウムを含む水溶液が準備される。
【0017】
本発明との関連で、用語「溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体」は、
i)好ましくは少なくとも2.0g/L、より好ましくは5.0g/Lから選択された温度での水性媒体への最大溶解度まで、最も好ましくは7.0g/Lから選択された温度での水性媒体への最大溶解度までの量で、溶解した炭酸リチウムを含有する。より具体的には、炭酸リチウム含有量は、7.2〜15.4g/Lである。当業者は、純水への炭酸リチウムの溶解度が、0℃で15.4g/L、20℃で13.3g/L、60℃で10.1g/L、100℃で7.2g/Lであり、その結果としてある特定濃度は特定の温度でのみ得ることができることを知っている。
ii)液体媒体の総重量を基準として、少なくとも50%、好ましくは80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%の重量割合の水を含有する、および
iii)好ましくはまた固形分を含まないかまたは0.0超から0.5重量%までの固形分を有する、好ましくは固形分を含まないかまたは0.0超から0.1重量%までの固形分を有する、より好ましくは固形分を含まないかまたは0.0超から0.005重量%までの固形分を有する、より好ましくは固形分を含まない、
ここで、成分i)、ii)および好ましくはiii)の合計は、溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体の総重量を基準として、100重量%以下、好ましくは98〜100重量%、より好ましくは99〜100重量%である
液体媒体を意味すると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、フッ化リチウムの製造装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体は、本発明のさらなる実施形態では、さらなる成分として、
iv)少なくとも1つの水混和性の有機溶媒
を含んでもよい。好適な水混和性の有機溶媒は、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロパン−1,3−ジオールまたはグリセロールなどの一価もしくは多価アルコール、アセトンまたはエチルメチルケトンなどのケトンである。
【0020】
溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体が少なくとも1つの水混和性の有機溶媒を含む場合には、その割合は、たとえば、0.0重量%超〜20重量%、好ましくは2〜10重量%であってもよく、ここで、各場合に成分i)、ii)、iii)およびiv)の合計は、溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体の総重量を基準として、100重量%以下、好ましくは95〜100重量%、より好ましくは98〜100重量%である。
【0021】
しかし、好ましくは、溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体は、水混和性の有機溶媒を含まない。
【0022】
溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体は、本発明のさらなる実施形態において、さらなる成分として、
v)溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体の総重量を基準として、好ましくは0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.2重量%の量で、錯化剤を含有してもよい。
【0023】
錯化剤は好ましくは、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンとのその錯体が8のpHおよび20℃で0.02モル/L超の溶解度を有するものである。好適な錯化剤の例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびそのアルカリ金属またはアンモニウム塩であり、エチレンジアミン四酢酸が好ましい。
【0024】
しかし、本発明の一実施形態では、溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体は錯化剤を含まない。
【0025】
炭酸リチウムを含む水溶液の提供手順は好ましくは、固体炭酸リチウムを、固体炭酸リチウムが少なくとも部分的に溶液に溶けていくように、炭酸リチウムを含まないかまたは炭酸リチウムが少ない水性媒体と接触させることである。炭酸リチウムが少ない水性媒体は、1.0g/L以下の、好ましくは0.5g/L以下の炭酸リチウム含有量を有するが、炭酸リチウムを含まないわけではない水性媒体を意味すると理解される。
【0026】
この提供のために使用される水性媒体は、ii)およびiii)の下で上述の条件を満たし、任意選択的に成分iv)およびv)を含む。
【0027】
最も簡単な場合には、水性媒体は水、好ましくは25℃で5MΩ・cm以上の比電気抵抗率を有する水である。
【0028】
好ましい実施形態では、工程a)〜d)は、1回または2回以上繰り返される。この場合には、溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体の提供のための繰り返しにおいて、使用される炭酸リチウムを含まないかまたは炭酸リチウムが少ない水性媒体は、先行する工程c)でフッ化リチウムの水性懸濁液からの固体フッ化リチウムの分離で得られる水性媒体である。この場合には、炭酸リチウムを含まないかまたは炭酸リチウムが少ない水性媒体は、典型的には特定温度での飽和限界以下の、溶解したフッ化リチウムを含む。
【0029】
一実施形態では、炭酸リチウムを含まないかまたは炭酸リチウムが少ない水性媒体は、攪拌反応器、流通反応器または固体物質と液体物質との接触のための当業者に公知の任意の他の装置で固体炭酸リチウムと接触させることができる。好ましくは、短い滞留時間および使用される水性媒体での飽和点に非常に近い炭酸リチウム濃度の到達の目的のためには、過剰の、すなわち、固体炭酸リチウムの完全な溶解が可能ではない十分な量の炭酸リチウムが使用される。この場合にii)に従って固形分を制限するために、濾過、沈降、遠心分離または液体から外へのもしくは液体からの固形分の分離のための当業者に公知である任意の他の方法に従うが、濾過が好ましい。
【0030】
プロセス工程a)〜c)が繰り返しておよび/または連続的に行われる場合には、クロスフローフィルターによる濾過が好ましい。
【0031】
接触温度は、たとえば、使用される水性媒体の凝固点から沸点まで、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜60℃、より好ましくは10〜35℃、とりわけ16〜24℃であってもよい。
【0032】
接触圧力は、たとえば、100hPa〜2MPa、好ましくは900hPa〜1200hPaであってもよく;とりわけ周囲圧力が特に好ましい。
【0033】
本発明との関連で、工業用グレードの炭酸リチウムは、無水製品を基準として、95.0〜99.9重量%、好ましくは98.0〜99.8重量%、より好ましくは98.5〜99.8重量%の純度レベルを有する炭酸リチウムを意味すると理解される。
【0034】
好ましくは、工業用グレードの炭酸リチウムはさらに、
1)200〜5000ppm、好ましくは300〜2000ppm、より好ましくは500〜1200ppmのイオン形態のナトリウムの含有量および/または
2)5〜1000ppm、好ましくは10〜600ppmの、イオン形態のカリウムの含有量および/または
3)50〜1000ppm、好ましくは100〜500ppm、より好ましくは100〜400ppmのイオン形態のカルシウムの含有量および/または
4)20〜500ppm、好ましくは20〜200ppm、より好ましくは50〜100ppmのイオン形態のマグネシウムの含有量
で、異質のイオン、すなわち、リチウムまたは炭酸イオンではないイオンを含む。
【0035】
さらに、工業用グレードの炭酸リチウムはさらに、同様に無水製品を基準として、
i)50〜1000ppm、好ましくは100〜800ppmの、サルフェートの含有量および/または
ii)10〜1000ppm、好ましくは100〜500ppmの、クロリドの含有量
で、異質のイオン、すなわち、リチウムまたは炭酸イオンではないイオンを含む。
【0036】
炭酸リチウムと前述の異質のイオン1)〜4)ならびに任意のi)およびii)との合計が、無水製品をベースとする工業用グレードの炭酸リチウムの総重量を基準として、1,000,000ppm以下であることは一般に事実である。
【0037】
さらなる実施形態では、工業用グレードの炭酸リチウムは、98.5〜99.5重量%の純度および500〜2000ppmの異質の金属イオン、すなわち、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムの含有量を有する。
【0038】
さらなる実施形態では、工業用グレードの炭酸リチウムはさらに、無水製品を基準として、100〜800ppmの異質のアニオン、すなわち、サルフェートまたはクロリドシウムの含有量を有する。
【0039】
ここで与えられるppm数字は、特に明記しない限り、重量部を基準とし;述べられるカチオンおよびアニオンの含有量は、特に明記しない限り実験の部での詳述に従って、イオンクロマトグラフィーによって測定される。
【0040】
本発明による方法の一実施形態では、炭酸リチウムを含む水性媒体の提供および炭酸リチウムを含まないまたは炭酸リチウム少ない水性媒体との接触は、回分式にまたは連続的に達成され、連続的遂行が好ましい。
【0041】
工程a)で準備される溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体は典型的には、20℃および1013hPaで測定されるかまたは計算される、8.5〜12.0、好ましくは9.0〜11.5のpHを有する。
【0042】
工程a)で準備される溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体が工程b)で使用される前に、それは、特にカルシウムおよびマグネシウムイオンを少なくとも部分的に除去するために、イオン交換体を通過させることができる。この目的のために、たとえば、弱あるいは強酸性カチオン交換体を使用することが可能である。本発明による方法での使用のために、イオン交換体は、たとえば粉末、ビーズまたは顆粒の形態の、上記のカチオン交換体を、たとえば、充填された流塔などのデバイスで使用することができる。
【0043】
特に好適なイオン交換体は、たとえば、アミノアルキレンホスホン酸基またはイミノ二酢酸基をさらに含有する、少なくともスチレンとジビニルベンゼンとのコポリマーを含むものである。
【0044】
この種のイオン交換体は、たとえば、Lewatit TM型のもの、たとえばLewatit TM OC 1060(AMP型)、Lewatit TM TP 208(IDA型)、Lewatit TM E 304/88、Lewatit TM S 108、Lewatit TP 207、Lewatit TM S 100;Amberlite TM型のもの、たとえばAmberlite TM IR 120、Amberlite TM IRA 743;Dowex TM型のもの、たとえばDowex TM HCR;Duolite型のもの、たとえばDuolite TM C 20、Duolite TM C 467、Duolite TM FS 346;およびImac TM型のもの、たとえばImac TM TMRであり、Lewatit TM型が好ましい。
【0045】
最小限のナトリウムレベルを有するそれらのイオン交換体を使用することが好ましい。
【0046】
本発明による方法の一実施形態では、イオン交換体での処理はまったく行われない。
【0047】
工程b)で、工程a)で準備された溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体は、固体フッ化リチウムの水性懸濁液を与えるためにガス状フッ化水素と反応させられる。
【0048】
この反応は、ガス状フッ化水素を含むガス流を、炭酸リチウムを含む水性媒体中へもしくは上に導入するかもしくは通すことによって、またはガス状フッ化水素を含むガス中へもしくはガスの中を通して、溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体を噴霧するか、もしくは霧状にするか、もしくはそれを流すことによって達成する(引き起こす)ことができる。
【0049】
水性媒体へのガス状フッ化水素の非常に高い溶解性のために、それを上に通すこと、それを噴霧すること、それを霧状にすることまたは通すことが好ましく、さらにより好ましくはそれを上に通すことが好ましい。
【0050】
ガス状フッ化水素を含むガス流または使用されるガス状フッ化水素を含むガスは、ガス状フッ化水素それ自体か、ガス状フッ化水素および不活性ガスを含むガスかのどちらかであってもよく、不活性ガスは、慣習的な反応条件下にフッ化リチウムまたはフッ化水素または水と反応しないガスを意味すると理解される。例は、空気、窒素、アルゴンおよび他の希ガスまたは二酸化炭素であり、空気が好ましく、窒素がさらにより好ましい。
【0051】
不活性ガスの割合は、要望に応じて変わってもよく、たとえば、0.01〜99容積%、好ましくは1〜20容積%である。
【0052】
好ましい実施形態では、使用されるガス状フッ化水素は、50ppm以下、好ましくは10ppm以下のヒ素化合物の形態でのヒ素を含有する。述べられたヒ素含有量は、ヒ化水素への転化および赤色錯体を与えるためのそれと銀ジエチルジチオカルバメートとの反応後に、530nmで光度的に測定される(分光光度計、たとえばLKB Biochrom,Ultrospec)。
【0053】
同様に好ましい実施形態では、使用されるガス状フッ化水素は、100ppm以下、好ましくは50ppm以下のヘキサフロオロケイ酸を含有する。報告されたヘキサフルオロケイ酸含有量は、ケイモリブデン酸と青色錯体を与えるためのアスコルビン酸でのその還元とのように光度的に測定される(分光光度計、たとえばLKB Biochrom,Ultrospec)。フルオリドによる破壊的な影響は、ホウ酸によって、そしてホスフェートとヒ素との破壊的な反応は、酒石酸の添加によって抑えられる。
【0054】
工程b)での反応はフッ化リチウムを形成し、フッ化リチウムは、それが炭酸リチウムよりも水性媒体により難溶性であるという事実のために沈澱し、その結果として固体フッ化リチウムの水性懸濁液を形成する。当業者は、フッ化リチウムが20℃で約2.7g/Lの溶解度を有することを知っている。
【0055】
反応は好ましくは、得られる固体フッ化リチウムの水性懸濁液が3.5〜8.0、好ましくは4.0〜7.5、より好ましくは5.0〜7.2のpHに達するような方法で行われる。二酸化炭素は、これらのpH値で放出される。懸濁液からのその放出を可能にするために、たとえば、懸濁液を攪拌すること、またはそれを、静的混合要素を通過させることが有利である。
【0056】
本出願人は、いかなる決定的な科学的発言も行うことを望まないが、ガス状フッ化水素との反応が、水性フッ化水素酸が特に使用される、先行技術でとは違って、フルオリドおよび炭酸水素リチウムなどのリチウム化合物のいかなる高い局所濃度の発生ももたらさず、その結果が、そもそも著しく純粋なフッ化リチウムの沈澱を可能にすることに気付いている。さらに、フッ化リチウムは、下流プロセスで、とりわけヘキサフルオロリン酸リチウムなどの錯塩の製造で特に有利である形態学的形で得られることが観察される。
【0057】
それ故、本発明はまた、15〜1000μm、好ましくは15〜300μm、より好ましくは15〜200μm、さらにより好ましくは20〜200μmのD50を有するフッ化リチウムを包含する。
【0058】
フッ化リチウムはまた好ましくは、5μm以上、好ましくは10μm以上のD10を有する。別の実施形態では、フッ化リチウムは、15μm以上のD10を有する。
【0059】
D50およびD10は、それぞれ、フッ化リチウムの10容積%および50容積%がそれ以下で存在する粒度を意味する。
【0060】
フッ化リチウムはさらに好ましくは、0.8g/cm以上、好ましくは0.9g/cm以上の、より好ましくは0.9g/cm〜1.2g/cmの嵩密度を有する。
【0061】
フッ化リチウムはさらに好ましくは、無水製品を基準として、99.9000〜99.9995重量%、好ましくは99.9500〜99.9995重量%、より好ましくは99.9700〜99.9995重量%の純度レベルを有する。
【0062】
フッ化リチウムはさらに好ましくは、
1)0.1〜75ppm、好ましくは0.1〜50ppm、より好ましくは0.5〜10ppm、より好ましくは0.5〜5ppmのイオン形態のナトリウムの含有量および/または
2)0.01〜10ppm、好ましくは0.5〜5ppm、より好ましくは0.1〜1ppmのイオン形態のカリウムの含有量
で異質のイオンを含有する。
【0063】
フッ化リチウムはさらに好ましくは、
3)0.05〜300ppm、好ましくは0.1〜250ppm、より好ましくは0.5〜100ppmのイオン形態のカルシウムの含有量および/または
4)0.05〜300ppm、好ましくは0.1〜250ppm、より好ましくは0.5〜50ppmのイオン形態のマグネシウムの含有量
で異質のイオンを含有する。
【0064】
フッ化リチウムはさらに、同様に無水製品を基準として、
5)0.1〜100ppm、好ましくは0.5〜10ppmの、サルフェートの含有量および/または
6)0.1〜1000ppm、好ましくは0.5〜500ppmの、クロリドの含有量
で異質のイオンを、たとえば、含有し、ここで、フッ化リチウムと前述の異質のイオンとの合計は、無水製品をベースとする工業用グレードの炭酸リチウムの総重量を基準として、1,000,000ppm以下である。
【0065】
一実施形態では、フッ化リチウムは、合計して300ppm以下、好ましくは20ppm以下、より好ましくは10ppm以下の含有量の異質の金属イオンを含有する。
【0066】
本発明のフッ化リチウム、および本発明に従って製造されたものは、リチウムイオンアキュムレーター用のフッ素含有導電性塩、より具体的には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、フルオロパーフルオロアルキルホスフィン酸リチウム(LiPF(R)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF)およびテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)などの製造のための使用にとりわけ好適である。
【0067】
本発明はそれ故また、リチウムイオンアキュムレーター用のフッ素含有導電性塩、より具体的には、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、フルオロパーフルオロアルキルホスフィン酸リチウム(LiPF(R)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF)、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム(LiSbF)およびテトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF)などの製造方法であって、本発明のフッ化リチウムまたは本発明に従って製造されたものが使用されることを特徴とする方法に関する。
【0068】
工程b)での反応温度は、たとえば、使用される溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体の凝固点から沸点まで、好ましくは0〜65℃、より好ましくは15〜45℃、より好ましくは15〜35℃、とりわけ16〜24℃であってもよい。
【0069】
工程b)での反応圧力は、たとえば、100hPa〜2MPa、好ましくは900hPa〜1200hPaであってもよく;とりわけ周囲圧力が特に好ましい。
【0070】
工程c)では、固体フッ化リチウムが水性懸濁液から分離される。
【0071】
この分離は、たとえば、濾過、沈降、遠心分離または液体から外へのもしくは液体からの固形分の分離のための当業者に公知である任意の他の方法によって達成され、濾過が好ましい。
【0072】
濾液が工程a)のために再使用され、プロセス工程a)〜c)が繰り返して行われる場合には、クロスフローフィルターによる濾過が好ましい。
【0073】
このようにして得られた固体フッ化リチウムは典型的には、1〜40重量%、好ましくは5〜30重量%の残留含水量を有する。
【0074】
工程c)で分離されたフッ化リチウムが工程d)で乾燥させられる前に、それは、水または水を含む媒体で、および水混和性の有機溶媒で1回または2回以上洗浄することができる。水が好ましい。25℃で15MΩ・cm以上の電気抵抗率を有する水が特に好ましい。これにより、極めて実質的に工程c)からの固体フッ化リチウムに付着している異質のイオンを含有する水が除去される。
【0075】
工程d)では、フッ化リチウムが乾燥させられる。この乾燥は、乾燥用の当業者に公知の任意の装置で行うことができる。乾燥は、好ましくは100〜800℃、より好ましくは200〜500℃に、フッ化リチウムを加熱することによって好ましくは達成される。
【0076】
0.2重量%以下、好ましくは0.1%以下の含水量まで乾燥させることが好ましい。
【0077】
本発明は、図1によって詳細に例示される。
【0078】
フッ化リチウムを製造するための装置1において、固体炭酸リチウム(LiCO(s))は、タンク3中で水(HO)および、装置1が最初に満たされていない場合、濾過ユニット19からの濾液で懸濁させられ、炭酸リチウムは少なくとも部分的に溶液に溶ける。このようにして得られた懸濁液は、ここではクロスフローフィルターの形態をとる、濾過ユニット6を通してポンプ5によってライン4を通って搬送され、未溶解炭酸リチウムは、ライン7を通ってタンク3へリサイクルされ、そして濾液、溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体は、ライン8を通って反応器9へ導入される。反応器9で、ライン10を通って、ガス状フッ化水素およびここでは窒素を含む、ガス状フッ化水素を含むガス流が、反応器の液体空間12の上方にある、反応器のガス空間11へ導入される。ポンプ13は、最初は本質的に、溶解した炭酸リチウムを含む水性媒体からなり、そして反応によって固体フッ化リチウムを含む懸濁液に変換される、液体空間12の内容物を、ライン14を通ってランダムパッキングを有するカラム15に導き、カラム15で懸濁液から反応中に形成された二酸化炭素の放出が促進される。二酸化炭素および希釈剤として利用された窒素は、出口16を通って放出される。ランダムパッキングを有するカラムを通過した後、反応器9から導かれた液体空間12の内容物は、ガス空間11を通して流れて液体空間12へ戻る。ガス空間11を通してのリサイクリングは、その上受動的な噴霧化によって部分的に、液体表面積が増加し、それはガス状フッ化水素との反応を促進するという利点を有する。目標pHが達せられたかまたは十分なフッ化リチウムが形成された後に、生じた固体フッ化リチウムの懸濁液は、ここではクロスフローフィルターの形態をとる、濾過ユニット19にライン18を通ってポンプ17を用いて搬送される。固体フッ化リチウム(LiF(s))が得られ;濾液、炭酸リチウムを含まないかまたは炭酸リチウムが少ない水性媒体は、ライン20を通ってタンク3へリサイクルされる。得られたフッ化リチウムは残留含水量を有し、そして水は、二酸化炭素と一緒に出口16を通ってまた放出されるので、タンク3への水(HO)の供給は、装置1の最初の充填後に、さらなるサイクルでの上記の水損失を補うのに本質的に役立つ。
【0079】
良好な水溶解度の炭酸塩およびフルオリドを形成する、異質の金属イオン、より具体的には、ナトリウムおよびカリウムなどが水性媒体の循環流に富化されることは当業者に明らかであろう。しかし、10〜500サイクルという高いサイクル数の場合でさえも、かつ濾過ユニット19からの濾液の放出がない場合でさえも、常に高品質のフッ化リチウムを得ることが可能であることが分かった。濾過ユニット19からの濾液の一部を、例として三方弁のようにここでは配置構成されている、弁21で出口20を通って放出することは任意選択的に可能である。
【0080】
濾過ユニット19からの濾液のタンク3へのリサイクリングは、たとえば、30以上の、高いサイクル数の場合に95%以上、とりわけさらには97%以上の転化率レベルを達成することを、フッ化リチウム製造の場合に、可能にし、「転化率レベル」は、使用される炭酸リチウムを基準とする高純度フッ化リチウムの収率を意味すると理解される。
【0081】
さらなる実施形態は、実施例から明らかであろう。
【実施例】
【0082】
以下の実施例で報告される粒度分布は、レーザー回折法によってエタノール中でCoulter LS230粒子分析計を用いて測定した。3つの測定を1試料当たり行い、傾向がまったく明らかではないという条件で、平均した。各測定は90秒を要した。本明細書で以下に報告される結果は、上に説明されたような、「D10」および「D50」値である。
【0083】
存在するアニオンおよびカチオンについての分析は、イオンクロマトグラフィーによって行う。この目的のために、以下の機器およびセッティングが用いられる:
カチオン(Dionex ICS 2100):
カラム: ガードデバイス付きのIonPac CS16 3×250mm分析カラム
試料容積: 1μL
溶離液: 一定濃度の36mMメタンスルホン酸
溶離液流量: 0.5mL/分
温度: 60℃
SRS: CSRS 300(2mm)
アニオン(Dionex ICS 2100):
カラム: ガードデバイス付きのIonPac AS20 2×250mm分析カラム
試料容積: 1μL
溶離液: KOHグラジエント:0分/15mM、10分/15mM、13分/80mM、27分/100mM、27.1分/15mM、34分/15mM
溶離液流量: 0.25mL/分
温度: 30℃
SRS: ASRS 300(2mm)
【0084】
実施例1:高純度フッ化リチウムの製造
図1による装置で、タンク3に最初に工業用グレードの品質(純度:>98重量%;Na:231ppm、K:98ppm、Mg:66ppm、Ca:239ppm)の500gの固体炭酸リチウムおよび20Lの水を装入し、懸濁液を20℃で調製した。約5分後に、懸濁液を、クロスフローフィルターの形態をとる、濾過ユニット6を通して導き、溶解した炭酸リチウムを含む得られた媒体、ここでは1.32重量%の炭酸リチウムの含有量を有する水溶液を、ライン8を通して反応器9へ導いた。
【0085】
合計4kgの媒体を反応器9へポンプ送液した後、濾過ユニット6からの供給を停止し、反応器9において、ガス空間11へのガス状フッ化水素の供給を、ポンプ13、ライン14およびランダムパッキングを有するカラム15を通して媒体を連続的にポンプ送液循環させながら、開始した。この計量供給添加は、循環してポンプ送液される溶液のpHが7.0であるときに終了させた。
【0086】
反応器9から得られた懸濁液を、加圧吸引フィルターとしてここでは設計されている、濾過ユニット19にポンプ17を用いて、ライン18を通して搬送し、そこで濾過し、濾液、ここでは炭酸リチウムを含まない水性媒体をタンク3に、ライン20を通して搬送して戻した。炭酸リチウムを含まない水性媒体は、約0.05重量%のフッ化リチウム含有量を有した。
【0087】
上記の操作を5回繰り返した。
【0088】
濾過ユニット19で分離された水で湿ったフッ化リチウム(合計148g)を除去し、さらなる加圧吸引フィルターで、25℃で5MΩ・cmの導電率を有する水(各回30mL)で3回洗浄した。
【0089】
このようにして得られたフッ化リチウムを、90℃および100ミリバールで真空乾燥キャビネット中で乾燥させた。
【0090】
収量:120gの微細白色粉末。
【0091】
得られた生成物は、0.5ppmのカリウム含有量および2.5ppmのナトリウム含有量を有し;生成物のマグネシウム含有量は99ppm、カルシウム含有量は256ppmであった。クロリド含有率は10ppm未満であった。
【0092】
粒度分布の測定は、45μmのD50および22μmのD10を与えた。嵩密度は1.00g/cmであった。
【0093】
50サイクル(繰り返し)の遂行の過程にわたって、使用されたリチウムの合計97%が、高純度フッ化リチウムの形態で得られた。
【0094】
実施例2(本発明)
ライン8に、イオン交換体Lewatit TP 207(イミノ二酢酸基を含有するスチレンとジビニルベンゼンとのコポリマー)の床を有する流塔を有したことを除いて図1による装置で、タンク3に最初に工業用グレードの品質(純度:>98重量%;Na:231ppm、K:98ppm、Mg:66ppm、Ca:239ppm)の500gの固体炭酸リチウムおよび20リットルの水を装入し、懸濁液を20℃で調製した。約5分後に、懸濁液を、クロスフローフィルターの形態をとる、濾過ユニット6を通して導き、溶解した炭酸リチウムを含む得られた媒体、ここでは1.32重量%の炭酸リチウムの含有量を有する水溶液を、ライン8および上記の流塔を通して反応器9へ導いた。さらなる転化を実施例1に従って達成した。
【0095】
使用されるイオン交換体は、そこから出る水が1ppm未満のナトリウム含有量を有するまで約1%炭酸リチウム溶液でリンスすることによってあらかじめ洗浄した。
【0096】
収量:149.8gの微細白色粉末。
【0097】
得られた生成物は、0.5ppmのカリウム含有量および1ppmのナトリウム含有量を有し;生成物のマグネシウム含有量は13ppm、カルシウム含有量は30ppmであった。クロリド含有率は10ppm未満であった。
【0098】
粒度分布の測定は、36μmのD50および14μmのD10を与えた。嵩密度は0.91g/cmであった。
【0099】
実施例3:
ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する電解質溶液の製造
約1.03モル/hのガス状フッ化水素と0.21モル/hのガス状三塩化リンとの混合物を、450℃に加熱した、長さ約6mおよび8mmの内径を有する金属管を通過させた。8L/hの塩素をこの反応混合物へ導入し、反応混合物を、250℃に加熱した長さ約4mのさらなる金属管を通過させた。
【0100】
ガス状反応生成物を室温に冷却し、次にTeflon(登録商標)フリットを介して、実施例1に従って製造された、フッ化リチウム粉末(300.0g)を190mmの充填高さまで装入した45mmの内径を有するTeflon(登録商標)内管を有するステンレス鋼管に通過させた。反応の間、フッ化リチウム粉末を攪拌機で攪拌した。流量は、約40L/hであった。
【0101】
反応器を出たガス混合物を、水酸化カリウム水溶液(15重量%)に集めた。
【0102】
合計して7時間の反応時間後に、反応剤の計量供給添加を不活性ガスの計量供給添加に置き換え、反応性の高いガスをシステムから追い出した。
【0103】
固体反応残渣を無水アセトニトリルで洗浄することによって、合計76.9gのヘキサフルオロリン酸リチウムを単離し、検出できた。残りの、未反応フッ化リチウムは、さらなる実験のために再使用した。
【0104】
アセトニトリルを、水および酸素の除去とともに蒸発させ、十分な量の得られた残留物をジメチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合物(1:1 w/w)中に移し、ヘキサフルオロリン酸リチウムの11.8重量%溶液を得た。この溶液は、とりわけ、次の通り特徴づけられた:
Na <3ppm
K <1ppm
Ca <1ppm
Mg <1ppm
サルフェート <1ppm
クロリド <1ppm
【0105】
実施例3a:ヘキサフルオロリン酸リチウムを含有する電解質溶液の製造
約1.03モル/hのガス状フッ化水素と0.21モル/hのガス状三塩化リンとの混合物を、280℃に加熱した、長さ約6mおよび8mmの内径を有する金属管に通した。8L/hの塩素をこの反応混合物へ導入し、反応混合物を、5℃に冷却させた長さ約12mのさらなる金属管に通した。
【0106】
ガス状反応生成物を室温に冷却し、次にTeflon(登録商標)フリットを介して、実施例1に従って製造された、フッ化リチウム粉末(300.0g)を110mmの充填高さまで装入された65mmの内径を有するTeflon(登録商標)内管を持ったステンレス鋼管に通過させた。反応の間、フッ化リチウム粉末を攪拌機で攪拌した。流量は約40L/hであった。
【0107】
反応器を出たガス混合物を、水酸化カリウム水溶液(15重量%)に集めた。
【0108】
合計して7時間の反応時間後に、反応剤の計量供給添加を不活性ガスの計量供給添加に置き換え、反応性の高いガスをシステムから追い出した。
【0109】
固体反応残渣を無水アセトニトリルで洗浄することによって、合計76.9gのヘキサフルオロリン酸リチウムを単離し、検出できた。残りの、未反応フッ化リチウムは、さらなる実験のために再使用した。
【0110】
アセトニトリルを、水および酸素の除去とともに蒸発させ、200nmのTeflon(登録商標)膜を通しての濾過後に、十分な量の得られた残留物をジメチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合物(1:1 w/w)に移し、ヘキサフルオロリン酸リチウムの11.8重量%溶液を得た。この溶液は、とりわけ、次の通り特徴づけられた。
Na <3ppm
K <1ppm
Ca <1ppm
Mg <1ppm
サルフェート <1ppm
クロリド <1ppm
【0111】
例4(比較用)
実施例2と同様に、Alfa Aesar製の商業的に入手可能な98重量%フッ化リチウムを使用した。このフッ化リチウムは、0.43μmのD10および4.9μmのD50を有した。嵩密度は0.65g/cmであった。実験は、流れ方向にラインをますます閉塞しつつある、フッ化リチウムの大量流出が観察されたので、2、3分後に停止した。
【0112】
例5(比較用)
実施例3と同様に、Sigma−Aldrich製の商業的に入手可能な99重量%フッ化リチウムを使用した。このフッ化リチウムは、2.3μmのD10および370μmのD50を有した。嵩密度は0.65g/cmであった。実験は、流れ方向にラインをますます閉塞しつつある、フッ化リチウムの大量流出が観察されたので、2、3分後に同様に停止した。
図1