(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351591
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】医療用挿入補助器
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20180625BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B1/00 653
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-523478(P2015-523478)
(86)(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公表番号】特表2015-524693(P2015-524693A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】EP2013064614
(87)【国際公開番号】WO2014016123
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年6月15日
(31)【優先権主張番号】102012213205.8
(32)【優先日】2012年7月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】ザウター,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】ドゥヴォルシャーク,マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットマー,アクセル
【審査官】
後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−189893(JP,A)
【文献】
特開平02−239832(JP,A)
【文献】
特開2009−273891(JP,A)
【文献】
特表2006−514561(JP,A)
【文献】
特開2012−045328(JP,A)
【文献】
特表2007−522837(JP,A)
【文献】
特表2010−532703(JP,A)
【文献】
特開2004−430(JP,A)
【文献】
特開2010−5398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入ダクトを形成するシャンクを備え、少なくともひとつの溝が前記挿入ダクトの長手方向に伸長し、または、前記挿入ダクトの内壁において長手方向に向いて形成され、
前記シャンクはその軸線中央部および/または遠位端部において、前記シャンクの外周で半径方向外側に伸長した少なくともひとつの流れ止めエッジを有し、前記少なくともひとつの流れ止めエッジは、円形チャネルまたは溝を有し、前記円形チャネルまたは溝は、前記シャンクの外周を流れる流体の流れを妨げるべく毛細管効果により前記流体を吸引するよう軸線方向に沿って遠位方向および/または近位方向に開口した少なくともひとつの開口部を有することを特徴とする、手術用器具および/または光学システム用の医療用挿入補助器。
【請求項2】
前記少なくともひとつの流れ止めエッジの前記円形チャネルまたは溝の前記少なくともひとつの開口部は閉止されている、ことを特徴とする請求項1に記載の医療用挿入補助器。
【請求項3】
複数の溝が、前記挿入ダクトの前記内壁に形成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の医療用挿入補助器。
【請求項4】
前記複数の溝は、前記挿入ダクトの前記内壁において互いから外周方向に等距離の位置に形成される、ことを特徴とする請求項3に記載の医療用挿入補助器。
【請求項5】
前記複数の溝は、前記シャンクの前記遠位端部に達する前に途切れる、ことを特徴とする請求項3または4に記載の医療用挿入補助器。
【請求項6】
前記シャンクの前記遠位端部において、半径方向圧縮または収縮部は、外周部全体にわたって挿入通路を狭くし、前記複数の溝は、前記半径方向圧縮または収縮部または前記軸線中央部の近位端で途切れている、ことを特徴とする請求項5に記載の医療用挿入補助器。
【請求項7】
前記挿入ダクトを前記シャンクの局所的な環境に対して半径方向に結合するべく、前記複数の溝が途切れる位置またはその手前に、多くの半径方向のスルーボアをさらに備える、ことを特徴とする請求項6に記載の医療用挿入補助器。
【請求項8】
前記多くの半径方向のスルーボアは、前記半径方向圧縮または収縮部から近位方向の距離に設けられている、ことを特徴とする請求項7に記載の医療用挿入補助器。
【請求項9】
前記多くの半径方向のスルーボアは、前記外周方向において、互いに等間隔に離隔されている、ことを特徴とする請求項7または8に記載の医療用挿入補助器。
【請求項10】
前記多くの半径方向のスルーボアは、前記挿入ダクトの前記内壁においてまたはその交差部において、前記溝内で開放されるように方向付けられおよび/または配置されている、ことを特徴とする請求項9に記載の医療用挿入補助器。
【請求項11】
前記多くの半径方向のスルーボアは、前記軸線方向において、互いから交互にオフセットされている、ことを特徴とする請求項7から10のいずれか一項に記載の医療用挿入補助器。
【請求項12】
前記軸線方向にオフセットされた前記スルーボアは、前記外周方向において重なっている、ことを特徴とする請求項11に記載の医療用挿入補助器。
【請求項13】
前記少なくともひとつの流れ止めエッジは、遠位方向に開口された前記開口部を有する溝である場合には、外周自由流出エッジを形成し、および/または、近位方向に開口された前記開口部を有する溝である場合には、外周自由流入エッジを形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の医療用挿入補助器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、請求項1の前文に記載のように、トロカールスリーブなどの手術器具(トロカール、内視鏡等)の挿入補助器に関する。特に、本願発明は、少なくとも部分的に引き抜く挿入または作用ダクトを有する医療用挿入補助器に関する。
【背景技術】
【0002】
手術器具用の挿入補助器は、人体空洞(可能であれば人工的に作成された)内に手術器具および/または内視鏡を挿入するべく、患者の体内に最小の侵襲的介入を与えるために特に使用される。挿入補助器の利点は、使用する場所および目的に応じて、適当な組織切除による小さいアクセスオリフィスが患者の体内へ適当な器具を導入するために要求されるか、コロスコピック(coloscopic)またはガストロスコピック(gastroscopic)応用の場合に生じるものを外部から傷つけないという事実にある。この点で、挿入補助器に対して、硬くかつ柔軟なチューブまたは柔軟なチューブまたはホースエレメントが設けられ、その内部に、手術器具/内視鏡を通じて押すための所定の直径の少なくとも一つの挿入ダクトが形成される。
【0003】
そのような挿入補助器の特定の形式はトロカールである。これは、その補助器によって、腹部または胸部空洞などの人体空洞へのアクセスが鋭敏または鈍感な方法で与えられ、トロカールスリーブ(チューブ)によって開かれたまま維持される器具である。トロカールスリーブ内に最初に導入される閉鎖器はピンまたはロッドであり、それはチューブ内で軸方向に移動可能に保持され、その点でチューブアパーチャを閉止する。閉鎖器トロカールユニットを人体空洞内に導入した後、外科医はトロカールから閉鎖器を除去した後に、例えばトロカールを通じて光学システム(内視鏡)によって人体空洞を検査するか、手術用クリップおよび/または切除器具によってトロカールを通じて人体空洞内で手術を行う。
【0004】
人体空洞の検査(腹腔鏡検査、胸腔鏡検査、関節鏡検査など)用の特別のチューブ/トロカールは、バルブ機構、気体を吹き込む(流し込む)ためのコネクション、または、それぞれの体外近位端における他の補助器具を有する。
【0005】
周知のように従来の腹腔鏡検査において、しばしば、外径が10mmの内視鏡が対応する(硬い)トロカールスリーブ(チューブ)と結合されている。気腹を腹部壁の下部に生成しおよび/または維持するために、必要に応じて、ガス吹き込みが、光学トロカールを介して実行される。光学システム(内視鏡)の外径とトロカールスリーブの内径との間に管状ギャップを与えるためのトレランスは、気腹からのガス漏れを少なくとも補償するために、かつ、人体空洞の拡張を維持する(ガス圧力の元で)ためにそれを通じて十分なガス通路が設けられるような寸法をしばしば有する。
【0006】
アクセスの最小化、特に、内視鏡を含む腹腔検査または内視鏡検査で使用される手術および光学器具の直径の最小化は、どんどん進歩している。しかしながら、いわゆる単一開口または単一切開治療がこれらの最小化された器具の使用のオプションとしてより広く使用されている。しばしば、臍帯窩において、約2cmの長さの皮膚切開が行われる。この切開によって、3つの5mmトロカール(トロカールスリーブ/チューブ)が個々の切開窩を通じて導入される。
【0007】
この技術は5mmの光学システム(内視鏡)の使用により容易になる。それは、初期の基本的な技術的な問題を構成しない。これらの光学システムのほとんどは、画像および解像度並びに光感度に関して、10mmモデルとほとんど対応している。また、最近の発光体(LED)の光強度は非常に高く、従って、発熱は比較的低い。そのため、最近の光学システムおよび光感度センサ(CMOSチップ)は極端な熱に曝されることはない。
【0008】
しかし、最小化のために、上述した挿入補助器具の他の部分で今まで知られていなかった新しい問題が生じている。その問題は、これまで少なくとも、手術サイクルに弊害を及ぼしてこなかった。これは、とりわけ以下に説明する問題を含む。
【0009】
1.不十分なガス吹き込み
例えば対応する5mmトロカール(チューブ)と組み合わせて5mmの光学システム(内視鏡)を使用する場合の最大遠位ガス流路は、低いボーダーラインとなり、気腹の生成/維持をかなり制限する。気腹が完全に新しく形成されなければならないと、かなりの時間が無駄になるか、または、それは不可能である。この理由は基本的に、トロカールスリーブと光学システムの内部に挿入される器具との間の管状ギャップの断面が5mmの器具直径(トロカールスリーブ側の対応する大きさ)に関して小さすぎるという事実からなる。その結果、ガス漏れ流量を少なくとも補償する十分なガス体積を確保することができない。すなわち、この場合、挿入補助機器システムの最小化の限界は、光学システム(内視鏡)に関する最小化の技術的/構成上の問題にあるのではなく、単純に流体の機械的条件による。
【0010】
この点において、既存の設計はその遠位端部においてトロカールスリーブを形成し、内部において閉鎖器または器具直径と一致する半径方向の圧縮(収縮)を有する。そのため、ガス流用のスロットルを生成し、同時に、トロカールスリーブ(チューブ)内に挿入される器具の改良された遠位端ガイドに達する。内部の半径方向(近位方向)の収縮に対して、チューブ内の流路の内腔は数十mmだけ半径方向に拡張されるが、その結果、管状ギャップは挿入された器具とトロカールスリーブとの間に形成される。
【0011】
トロカールスリーブの遠位端部での上記半径方向の構成上の制限にも拘わらず、十分なガスがトロカールを介して人体空洞内に排気されるように、多くの横方向の排気口が部分的収縮部の手前のトロカールスリーブ内に導入される。その排気口からガスが横方向(半径方向)に気腹内に逃げる。しかし、ガスは半径方向の出口オリフィスに比較的近いさらに狭い管状ギャップと通じて流れなければならないので、既存の最大ガス流体積は基本的に抑制されたままである。
【0012】
2.光学システムの比較的濃い染色
上述した2cmの切開に対して、しばしばより小さい血管が傷つけられる。それは、トロカールを導入後に少なくとも一時的に浸出出血を生じさせる。徐々に、一つ以上の血液の液滴および組織流体がトロカールスリーブの遠位部(遠位前縁端部)に蓄積する。遠位トロカールスリーブにおいて突起する光学システム(内視鏡)が引き抜かれるか、例えば、視界を遮る沈殿物(HFまたは超音波を使って特定のOP間隔の後に形成される)を除去するためにときどき行われる、レンズを洗浄するためにトロカールスリーブから引き出される場合、前縁部に付着した血液/組織流体の液滴はまたトロカールスリーブ内にも吸引され、そのダクト壁の内側を染色/カバーする。洗浄された光学システム(内視鏡)はトロカールスリーブ(小さい寸法の管状ギャップを有する)内に再挿入される場合、内側に付着した流体は少なくも部分的に剥がれ落ち、少なくともレンズの境界面を再び染色する。
【0013】
これまでの通常の10mm光学システム(内視鏡)において、この問題は基本的に生じていたが、以下の理由であまり影響はなかった。
【0014】
光学システム(内視鏡)が前方に再び押される場合、光学システム(内視鏡)とトロカールスリーブとの間のより大きな管状ギャップ幅のために、より多くの流体が管状ギャップ内に維持され、光学システム(またはレンズ)上に付着することはなかった。
【0015】
より大きな光学システム(レンズ)のために、光学システムまたはレンズの相対的により小さい領域(境界面)が染色される。この染色は光学システムの性能に対してほとんど影響を及ぼさなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記問題に鑑み、本願発明の目的は、十分なガス流量を保証することである。好適には、光学システムの染色を減少させる手段が取られるべきである。トロカールスリーブの外径を実質的に(または全く)増加させることなく、かつ、スリーブの遠位内腔を拡張することなく、上記目的を達成することがさらなる目的である。後者は、特に重要である。さもなければ閉鎖器(または挿入された器具)とトロカールスリーブの内径との間にギャップ幅が生じ、例えば臍帯組織がトロカール/器具を導入する際に管状ギャップ内に引き込まれるかもしれないからである。
【0017】
本願発明に従うさらなる目的は、請求項1の特徴を含む挿入補助器によって達成される。有利な構成およびさらなる改良は従属項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明の第1の態様(独立項に記載)に従う、手術器具および/または光学システム(内視鏡)用の医療挿入補助器は、挿入ダクト(作用ダクト)を形成または有するシャンク(トロカールスリーブ/チューブ)を有し、その内壁には、ダクトの長手方向に向いた(伸長する)少なくともひとつの溝が形成されている。少なくともひとつの溝はシャンクの軸線方向に直線的に伸長するか、または、螺旋、ジグザグ(少なくとも部分的に)などの形状で長手方向に伸長する。
【0019】
少なくともひとつの溝により、ガス/流体を導入および/または放出するための局所的に半径方向に拡張した流体ダクトが設けられ、その断面は実質的にフィードダクト、したがって、環状ギャップ幅の直径とは実質的に独立である。こうして、十分なガス流量が保証される。少なくともひとつの溝のみが部分的にシャンクにおいて薄い材料を要求するため、その堅固さは溝無しシャンクと比べて大きく維持される。シャンク壁の厚さは溝無しシャンクに比べ必要ないか、ある程度必要である。最後に、少なくともひとつの溝は、導入された手術器具/光学システム(内視鏡)に関してシャンクのガイド機能に影響を与えない。
【0020】
本願発明の他の態様(独立項に記載)に従い、複数の溝が好適には互いに等間隔で挿入ダクトの内壁に形成される。したがって、各溝断面は減少し、全体として十分な体積の流量が生成される。また、シャンク壁の弱さはさらに減少する。
【0021】
少なくともひとつの溝または複数の溝がシャンクの遠位端の手前で途切れている。この場合、特に、トロカール/挿入補助器が患者の空洞内に導入されるとき、筋膜組織が少なくともひとつの溝内に引き込まれるのが防止される。シャンクの遠位端で半径方向の圧縮または収縮が挿入ダクトをその外周全体にわたって狭くする場合に、これが付加的な改良を与える。この場合、少なくともひとつの溝または複数の溝は(連続または唐突に)圧縮/収縮部に対して、または圧縮/収縮部の軸線中央部において近位で途切れる。
【0022】
本願発明の他の態様に従い、特に半径方向の圧縮/収縮部が挿入ダクトの遠位端部(それに限定されない)に設けられる場合、多くの半径方向のスルーボア(少なくともひとつ)がシャンクの遠位端部に設けられてよい。また、好適には、半径方向収縮部から近位のある距離に設けられる。スルーボアは挿入ダクトを局所的なシャンク環境と半径方向で(流体的に)結合させる。こうして、気体体積流は、シャンクの遠位端部で排気されないかわずかに排気され、その後シャンクの側面でフィード流路(環状ギャップおよび少なくともひとつの溝を含む)外へ排気するように、半径方向のスルーボア内に偏向される。
【0023】
好適に、多くの半径方向のスルーボアが、互いに等間隔に離隔されて外周方向に配置される。さらに好適には、スルーボアが挿入ダクトの内壁および交差部において溝内に開口するように方向付けられ、および/または、配置される。したがって、溝を通じて案内されたガス体積流は妨げられずにスルーボア内にほとんど案内される。その結果、圧力損失は減少する。
【0024】
この文脈において、スルーボアが軸線方向に交互にオフセットされ、2つ以上の外周列(軸線方向に離隔された)を形成する場合に、特に有利である。この場合、互いに関して軸線方向にオフセットされるように配置されたスルーボアが外周方向で重なる場合、さらに有利である。特に、スルーボアの軸線方向オフセット配列の理由により、外周方向に実質的に閉止され、かつ、半径方向すべての側面に向けられたフラットな放出ガスジェットが形成され、それはガス排気速度に従い(したがって、スルーボアの断面積に従い)、シャンクの外側に沿って流れる液体(液滴)に対して空気バリアまたはシールドのように作用する。こうして、シャンクの遠位前縁に液滴が形成されるのを前もって避けることができる。その後、その液滴は少なくともひとつの溝内に吸引される。
【0025】
本願発明の他の態様(上述したいずれかの態様と組み合わせるかまたは独立して)に従い手術用器具および/または光学システム(内視鏡)用の医療用挿入補助器は、挿入ダクト(作用ダクト)を形成または有するシャンク(トロカールスリーブ/チューブ)を有してよい。シャンクの軸線方向中央部において、好適には遠位端の領域において、シャンクはその外周部において、半径方向外側に突出する流れ止めエッジを有し、それは好適にはシャンクの周りにリング形状で(さらに好適には、閉止されたリングまたはリングの部分的に分割されたセグメントとして)伸長する。この流れ止めエッジにおいて、シャンクの外部に流出した液体が蓄積し(個別の液滴を形成する)かつ、シャンクの遠位端の方向にさらに流れることが妨げられる。
【0026】
好適には、流れ止めエッジは少なくともひとつの溝またはアンダーカットされて形成されたチャネルを形成する。それは近位および/または遠位方向に軸線方向で開放される。言い換えれば、流れ止めエッジはL、U、V、XまたはH形状の断面を有し、それにより、好適には外周のシャンク壁とともに、少なくともひとつの(または2つの)チャネルが形成される。それは、遠位方向または近位方向のいずれかに、または、軸線方向で両方に同時に開放されてよい(XまたはH形状の場合)。
【0027】
近位方向に開放されたチャネルは、流出する液体が蓄積する液体集合チャネルを形成する。チャネルギャップに毛細管現象が生じるように、チャネル幅は好適に選択される。それにより、流出液体(遠位方向での)はチャネルギャップ内に吸引される。一方、遠位方向に開放されたチャネルは、半径方向外側の(自由)エッジが主に流出エッジを形成する。そこから流出する液体は液滴を形成し、自由に落ちる。後者の効果は、半径方向に開口するガス出口オリフィス(好適には上記説明に従う)が流れ止めエッジの領域内に配置される。すなわち、流れ止めエッジに関して直接遠位であるが、流出ガスの流体フィールド内である。上記オリフィスは液体のドリップを助けるように適応される。
【0028】
遠位方向に開放された外周溝を有する流れ止めエッジのオーバーフローを促進するために、流れ止めエッジは連続して近位方向でシャンクの外側へ連続して(段差なく)変形され、この軸線方向位置で流れの障害物を構成しない。
【0029】
本発明は、添付する図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、本願発明の第1実施形態に従う医療/手術用の挿入補助器の側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の線A−Aに沿って切断した挿入補助器の長手方向断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の線B−Bに沿って切断した挿入補助器の断面図である。
【
図4】
図4は、本願発明の第2実施形態に従う手術用の挿入補助器の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本文脈において、以下に説明する第1実施形態の技術的特徴(
図3には示さず)は第2実施形態の挿入補助器内で実現されてもよい。
【0032】
本願発明に従う挿入補助器は、その遠位端面がトロカールの軸線に関して傾斜したシャンク状のトロカールスリーブ1、および、その近位端部において、少なくともひとつの吹き込みデバイス(詳細は図示せず)のようなさまざまな補助的エクイップメントを結合するための部品が配置された硬いトロカールである。また、
図2に従う、結合部品2は、シャンク1へ軸線方向に伸長する挿入オリフィス4を形成する。それを通じて内視鏡のような手術および/または光学器具(詳細は図示せず)がシャンク1に挿入され、シャンク1に形成されたダクト6から除去される。本例において、結合部品2はシャンク1に取付け/ねじ止めされている。すなわち、シャンク1に堅固に結合されている。しかし、シャンク1および結合部品2が同じ材料により一体的に形成されてもよい。また、シャンク1と結合部品2との結合は脱着可能であってもよく、異なる結合部品を異なるシャンク(等しいシャンク外径を有する)に結合することができる。
【0033】
本実施形態において、挿入補助器は具体的にトロカールであるか、または、チューブ(トロカールスリーブ)である。しかし、図示したシャンク1はガストロスコピーまたはコロスコピーの場合に使用されるように、柔軟なチューブ材料から形成されてもよい。
図1に従い、シャンク1はさらに多くの軸線方向に離隔された(くさび形)の外周ショルダ8または(くさび形)の外周レッジを有する。各々は、近位端方向に停止面を形成し、遠位端方向にテーパー形状を有する。この例において、外周ショルダ8にわたってスライドしながら、チューブは患者の人体空洞内に導入される。外周ショルダは、近位端方向に作用する停止面により人体空洞から剥がれ落ちた物体をブロックおよび遮る。
【0034】
最終的に、シャンク/チューブ1はその遠位端部分において多くのスルーボア/ホール10を提示する、外周方向に等しく離隔され、かつ、局所的なシャンク環境を有するシャンク1の内部に形成された挿入ダクト6と流体結合するシャンク壁を通じて半径方向に伸長する。特に、
図1に示すように、半径方向スルーボア10は好適には、軸線方向に交互にオフセットされ、軸線方向に離隔した少なくとも2つ以上の外周ボア列を形成する。スルーボア/ホール10は本例において、各々は、2つの軸線方向に離隔した列のボア10がオーバーラップしない直径を有する円形ボアである。その結果、同じ列の隣接するボア10の間隔は、異なる列の隣接する2つのボア10の間隔と同じであり、常に、所定のウエブ幅のシャンク材料ウエブが残る。こうして、この領域においてシャンク1の材料の弱さが低く維持され、かつ、シャンクの安定性が大きく維持される。代替的に、2つの列のスルーホール10が軸線方向にオーバーラップしてもよい。
【0035】
図2からわかるように、挿入ダクト6は、半径方向の構成12または半径方向に内側に突出した構成、および、シャンクの遠位端と半径方向スルーホール10との間の軸線部分において閉止した外周構成部を有する。それにより、この領域において挿入ダクトの直径は減少し、その結果、挿入ダクト6内に挿入された器具(または閉鎖器)はこの遠位端の収縮/圧縮部12においてほぼスライド方式でガイドされる。収縮部12は遠位端面までトロカールのシャンク1の軸線方向に伸長する。
【0036】
最後に、シャンク1は、ガイドダクトの内壁に、少なくとも一つの、
図3に従い好適には長手方向に伸長し外周方向に等間隔に離隔された複数の溝14を有する。本例において、それは軸線方向に直線的に伸長し、シャンク1の遠位端面に達する前に好適に終了するか、または、収縮部12の領域で途切れる(遠位シャンク地点から約2―3mm前方)。溝14の終端により、スムースな移行が生成され、その結果、器具/閉鎖器はからむことなく挿入ダクト6を通じて押される。溝14は、それらが半径方向のスルーホール10と交差するように配置される。こうして、スルーホール10を介して直接的な流体連通が実現される。代替的に、直線的にではなく、螺旋形状またはジグザグ形状で、シャンク軸線に関して傾斜する溝を形成することも可能である。この文脈において、シャンク壁はこの領域において溝14によって極端に弱くなる事はない。その結果、シャンクの安定性は標準的なシャンク(図示せず)において最終的に変更されない。また、溝の深さは、本願発明に従うシャンクの外径が標準的なシャンクの外径とほぼ対応するように選択される。
【0037】
本願発明に従う挿入補助器の機能は以下に説明される。
【0038】
すでに挿入された閉鎖器または手術器具(光学システム)を有する図示したトロカールスリーブが人体空洞内に挿入されるとき、血液および/または組織流体が遠位端方向でシャフトの外側において流れだし、シャンクの遠位端部/エッジにおいて液滴形状で蓄積することが可能である。しかし、人体空洞の吹き込みのために、器具/閉鎖器とトロカールシャンク1との間の管状ギャップ(詳細には図示せず)をガスが連続的に通過するとともに、少なくともひとつの溝14を十分なガス流(十分に高いガス流量)がスルーホール10まで通過し、そこから半径方向外側に排出され(排気速度、および、隣接する排気オリフィス10の間隔に応じて)、ガス噴射カーテン/壁(好適に実質的に外周方向に閉止された)が形成され、それは軸線方向の血液/組織流体に対する流体バリア/ブレークとして作用するように適応される。この例において、前もって、遠位シャンク部での血液/組織流体の液滴の形成は少なくともある程度妨げられる。
【0039】
閉鎖器または手術器具(光学システム、内視鏡)は、挿入補助器、すなわち、トロカールのシャンク1から引き抜かれる場合、閉鎖器/器具/光学システムとトロカールスリーブとの間の環状ギャップ内に残留流体の液滴がまだ存在しうる。しかし、この場合、流体液滴は内側ダクト壁の全体にわたって移動せず、好適には長手方向溝14に実質的に付着する。結果的に手術/光学システムが遠位方向に再び移動する場合、溝14の内部に大量の流体を保持することが可能となり、その結果、光学システムは染色されないか、大きく染色されることはない。しかし、これはまた、遠位に蓄積した流体液滴が環状ギャップ内に入らないか、わずかの量しか入らないのならば、半径方向ガス排気オリフィスの液滴バリア/ブレークとしての上記付加的機能は、必ずしも必要ではないことを意味する。
【0040】
基本的に半径方向排気オリフィス14との関係において挿入ダクト6の内側の少なくともひとつの長手方向溝14の好適な設計は、製造するのが容易である。したがって、例えばプラスチック材料から製造された使い捨てトロカールに対して特に有利である。ガス流の効果的な改良が同様に達成され、外径は実質的に変更されないままである。
【0041】
図4は、本願発明に従う挿入補助器の第2実施形態を示す。上述した第1実施形態と異なる特徴のみが以下で説明される。よって、基本的に第1実施形態のすべてまたは選択した特徴を備えることが可能であり、
図4に従う挿入補助器は、例えば、内側長手方向溝および/または半径方向ガス排気オリフィスを有する。
【0042】
図4に従う医療器具挿入補助器は、シャンク1およびその遠位端に接続/形成された結合部品2を同様に有する。医療器具(図示せず)用の挿入または作用ダクト6がシャンク1内に示されている(長手方向溝の適当な場所に取付けられた状態)。ダクトはシャンク1の遠位端部において大気方向に開放されている。より詳細には説明しないが、シャンク1は、第1実施形態に従う半径方向放出オリフィス/ボアおよび/または内側長手方向ダクト溝を含むように形成されてもよい。
【0043】
シャンク1の軸線中心部、好適には遠位端の領域、閉止した外周部、および外周部において、半径方向に突出した流れ止めエッジ20が配置/形成されている。それは、その形状および/または半径方向延長部(
図4に示すように)に関して、互いに軸線方向に離隔されて好適に形成された(片状)突出エッジ8と異なる。それは患者の空洞内でシャンク1をサポートする機能のみを有するが、流体の流出を効果的に止めるために適応されるものではない。
【0044】
本例の流れ止めエッジ20は断面がL、U、V、またはH字形状を有する。したがって、流れ止めエッジ20はそれとシャンクの外側の間に、遠位および/または近位方向において軸線方向に開放された、少なくともひとつの外周溝またはチャネル22を形成する。外周溝/チャネルの選択した開口方向により、以下に説明するような異なる禁止効果が得られる。
【0045】
1.遠位方向にアパーチャを有する外周チャネル
この場合、流れ止めエッジ20は、自由な外周(分離)エッジを形成し、シャンクの遠位端の方向において溝開口部を有する軸線外周溝22が形成される。この自由な(分流)エッジ24はエッジにおいて液滴を蓄積させるように機能する。それは、好適には液滴形状で蓄積した流体を流し、かつ、特定の液滴サイズ(液滴重量)に達すると個々にドリップする。このドリップ機能は、必要により半径方向ガス放出オリフィス10によってアシストされる。それは、好適には、流れ止めエッジ20に関して遠位方向に直接軸結合して配置される(流れ止めエッジ20および特に分離エッジ24は放出オリフィス10の排気フィールド内にまだ存在するように)。
【0046】
また、付加的に、ある程度流体をその流れ方向と反対に溝内で吸引し、その結果流れを妨げるべく、流体の毛細管効果が生成されるよう、溝22のギャップ幅を選択することが可能である。
【0047】
2.近位方向にアパーチャを有する外周チャネル
この場合、流れ止めエッジ20は、シャンクの近位端の方向に溝アパーチャを有する軸線方向の外周溝22を形成しつつ、自由な外周(導入)エッジ26を構成する。結果として、この溝/チャネル22は流体の流れる方向と反対方向に(外周で)開放され、したがって、流出流体用の一種の集合チャネルとして機能する。近位端方向に開放されたこの溝22の深さは、十分な流体がそこから流入されるように選択される。それは、経験に従い、患者の処置の態様に応じて形成される。
【0048】
この場合も、ある程度流体をその流れ方向と反対に溝内で吸引し、その結果流れを妨げるべく、流体の毛細管効果が生成されるよう、溝22のギャップ幅を選択することが可能である。こうして、特に最大の溝充満レベルに達したとき、不注意な流出が妨げられる。
【0049】
最終的に、ひとつのチャネル(この例で、L、UまたはV字形状)または、異なる軸線方向にチャネル(この例で、XまたはH字形状)を有する2つのチャネルが与えられる。互いから軸線方向に離隔した同じ方向のアパーチャを有する2つ(またはそれ以上)のチャネルを配置することも可能である。
【0050】
以上説明したように、ダクトの長手方向に伸長し、または、長手方向に向けられている、少なくともひとつの溝14が形成された内側壁に、挿入ダクト6を形成するシャンク1を有する手術器具および/または光学システム用の医療用挿入補助器具が開示される。付加的、または、代替的に、シャンクの遠位端部において(好適に、遠位端内の軸線中央部)半径方向の外側に伸長し、好適に閉止された外周流れ止めエッジを有する医療用挿入補助器が開示される。また、この流れ止めエッジは好適に少なくともひとつの軸線方向開口円形チャネル、遠位および/または近位開放方向を有する溝を形成する。