(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351601
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】電気めっき金属グリッドを用いた光起電力装置
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20180625BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20180625BHJP
H01L 31/0747 20120101ALI20180625BHJP
【FI】
H01L31/04 262
H01L31/06 300
H01L31/06 455
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-535787(P2015-535787)
(86)(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公表番号】特表2015-532535(P2015-532535A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】US2013063303
(87)【国際公開番号】WO2014055781
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年6月15日
(31)【優先権主張番号】61/709,798
(32)【優先日】2012年10月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/045,163
(32)【優先日】2013年10月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515273483
【氏名又は名称】ソーラーシティ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フー,ジェンミン
(72)【発明者】
【氏名】ヘン,ジウン ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ベイテル,クリストファー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シュ,ジェン
【審査官】
佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0277825(US,A1)
【文献】
特表2006−523025(JP,A)
【文献】
特開2011−181966(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0192932(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0031480(US,A1)
【文献】
特開2006−324504(JP,A)
【文献】
特開2012−119393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−10/40、30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光起電力構造と、
前記光起電力構造上に位置する前面金属グリッドであって、1つ又は複数の電気めっき金属層を含む前面金属グリッドと、
を含む太陽電池であって、
前記前面金属グリッドは、第1のフィンガーライン及び前記第1のフィンガーラインに隣接する第2のフィンガーラインを含む複数のフィンガーラインを含み、
前記第1のフィンガーラインの両端部が2つの追加の金属ラインを介して前記第2のフィンガーラインの両端部に連結され、
前記第1のフィンガーライン、前記第2のフィンガーライン及び前記2つの追加の金属ラインは、一つのループを形成し、
前記第1又は第2のフィンガーラインの部分であって、前記第1又は第2のフィンガーラインと前記追加の金属ラインとの間の交差部の近くにある部分は、当該第1又は第2のフィンガーラインの中心部分よりも幅が大きく、
前記2つの追加の金属ラインは、当該第1又は第2のフィンガーラインの中心部分よりも幅が大きい、太陽電池。
【請求項2】
前記2つの追加の金属ラインと前記第1及び第2のフィンガーラインとの交差部は、丸みが付けられる又は面取りがされる、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記前面金属グリッドは、前記電気めっき金属層と前記光起電力構造との間に位置する金属接着層を含み、
前記金属接着層は、Cu、Al、Co、W、Cr、Mo、Ni、Ti、Ta、窒化チタン(TiNx)、チタンタングステン(TiWx)、ケイ化チタン(TiSix)、ケイ化窒化チタン(TiSiN)、窒化タンタル(TaNx)、ケイ化窒化タンタル(TaSiNx)、ニッケルバナジウム(NiV)、窒化タングステン(WNx)、及びこれらの組み合わせの内の1つ又は複数を含む、請求項1又は2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記光起電力構造は、透明導電酸化物(TCO)層を含み、前記金属接着層は、直接前記TCO層と接している、請求項3に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記電気めっき金属層は、
Cu層、
Ag層、及び
Sn層
の内の1つ又は複数を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記前面金属グリッドは、前記電気めっき金属層と前記光起電力構造との間に金属シード層を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記金属シード層は、蒸着及びスパッタリング堆積の一方を含む物理的気相成長(PVD)技術を用いて形成される、請求項6に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記光起電力構造は、
Siを含むベース層と、
前記ベース層の一方の面上に位置するエミッタ層と、
を含み、
前記エミッタ層は、
前記ベース層の前記一方の面上に位置するドーパントを拡散させたポリSi層、及び
前記ベース層の前記一方の面上に位置するドープされたアモルファスSi(a−Si)層
の内の少なくとも1つを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記ドーパントは、
リン、及び
ホウ素
の一方を含む、請求項8に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記光起電力構造の下に位置する裏面金属グリッドであって、1つ又は複数の電気めっき金属層を含む裏面金属グリッドをさらに含み、
前記裏面金属グリッドは、第3のフィンガーライン及び前記第3のフィンガーラインに隣接する第4のフィンガーラインを含み、
前記第3のフィンガーラインの両端部は、第2の2つの追加の金属ラインを介して前記第4のフィンガーラインの両端部に連結され、
前記第3のフィンガーライン、前記第4のフィンガーライン及び前記第2の2つの追加の金属ラインは、一つのループを形成する、請求項1から9のいずれか一項に記載の太陽電池。
【請求項11】
半導体構造の上に透明導電酸化物(TCO)層を堆積させて、光起電力構造を形成するステップと、
前記光起電力構造の上に前面金属グリッドを形成するステップと、
を含む太陽電池の製造方法であって、
前記前面金属グリッドは、1つ又は複数の電気めっき金属層を含み、
前記前面金属グリッドは、第1のフィンガーライン及び前記第1のフィンガーラインに隣接する第2のフィンガーラインを含む複数のフィンガーラインを含み、
前記第1のフィンガーラインの両端部が2つの追加の金属ラインを介して前記第2のフィンガーラインの両端部に連結され、
前記第1のフィンガーライン、前記第2のフィンガーライン及び前記2つの追加の金属ラインは、一つのループを形成し、
前記第1又は第2のフィンガーラインの部分であって、前記第1又は第2のフィンガーラインと前記追加の金属ラインとの間の交差部の近くにある部分は、当該第1又は第2のフィンガーラインの中心部分よりも幅が大きく、
前記2つの追加の金属ラインは、当該第1又は第2のフィンガーラインの中心部分よりも幅が大きい、太陽電池の製造方法。
【請求項12】
前記2つの追加の金属ラインと前記第1及び第2のフィンガーラインとの交差部は、丸みが付けられる又は面取りがされる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記前面金属グリッドは、前記電気めっき金属層と前記光起電力構造との間に位置する金属接着層を含み、
前記金属接着層は、Cu、Al、Co、W、Cr、Mo、Ni、Ti、Ta、窒化チタン(TiNx)、チタンタングステン(TiWx)、ケイ化チタン(TiSix)、ケイ化窒化チタン(TiSiN)、窒化タンタル(TaNx)、ケイ化窒化タンタル(TaSiNx)、ニッケルバナジウム(NiV)、窒化タングステン(WNx)、及びこれらの組み合わせの内の1つ又は複数を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記電気めっき金属層は、
Cu層、
Ag層、及び
Sn層
の内の1つ又は複数を含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記前面金属グリッドは、前記電気めっき金属層と前記光起電力構造との間に金属シード層を有する、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記前面金属グリッドの形成ステップは、
前記金属シード層の上にパターニングされたマスキング層を堆積させるステップであって、前記マスキング層の開口部は、前記前面金属グリッドの位置に対応し、前記マスキング層は電気絶縁性である、ステップと、
前記太陽電池を電解質溶液中に沈めることによって、前記パターニングされたマスキング層を覆って1つ又は複数の金属層を電気めっきするステップと、
前記パターニングされたマスキング層を除去するステップと、
エッチングプロセスを行うことによって、前記電気めっき金属層によって覆われていない前記金属シード層の部分を除去するステップと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記光起電力構造の形成ステップは、低濃度ドープベース層の一方の面上にエミッタ層を形成するステップをさらに含み、
前記エミッタ層の形成ステップは、
前記ベース層の前記一方の面上に位置するポリSi層にドーパントを拡散させるステップ、及び
ドープされたアモルファスSi層を堆積させるステップ
の内の少なくとも1つを含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ドーパントは、
リン、及び
ホウ素
の一方を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記光起電力構造の下に位置する裏面金属グリッドであって、1つ又は複数の電気めっき金属層を含む裏面金属グリッドを形成するステップをさらに含み、
前記裏面金属グリッドは、第3のフィンガーライン及び前記第3のフィンガーラインに隣接する第4のフィンガーラインを含み、
前記第3のフィンガーラインの両端部は、第2の2つの追加の金属ラインを介して前記第4のフィンガーラインの両端部に連結され、
前記第3のフィンガーライン、前記第4のフィンガーライン及び前記第2の2つの追加の金属ラインは、一つのループを形成する、請求項11から18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
[0001]本開示は、概して太陽電池に関する。より具体的には、本開示は、電気めっき技術によって製造された金属グリッドを含む太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
[0002]化石燃料の使用によって引き起こされた環境への悪影響及びそれらのコストの上昇により、よりクリーンで、安価な代替エネルギー源の緊急の必要性が生じた。異なる形態の代替エネルギー源の中でも、太陽光発電は、そのクリーンさ及び幅広い可用性により好まれてきた。
【0003】
[0003]太陽電池は、光起電力効果を利用して、光を電気に変換する。単一p−n接合太陽電池、p−i−n/n−i−p太陽電池、及び多接合太陽電池を含む幾つかの基本太陽電池構造が存在する。一般的な単一p−n接合構造は、p型ドープ層及びn型ドープ層を含む。単一p−n接合を用いた太陽電池は、ホモ接合太陽電池又はヘテロ接合太陽電池となり得る。pドープ層及びnドープ層が共に類似の材料(等しいバンドギャップを有する材料)から作られる場合、太陽電池は、ホモ接合太陽電池と呼ばれる。対照的に、ヘテロ接合太陽電池は、異なるバンドギャップの材料からなる少なくとも2つの層を含む。p−i−n/n−i−p構造は、p型ドープ層、n型ドープ層、及びp層とn層との間に挟持された真性(ドープされていない)半導体層(i層)を含む。多接合構造は、互いに積み重ねられた異なるバンドギャップの複数の単一接合構造を含む。
【0004】
[0004]太陽電池では、光はp−n接合付近で吸収され、キャリアが生成される。キャリアは、p−n接合中に拡散し、固有の電場によって分離され、その結果、装置及び外付け回路の全域で電流を生成する。太陽電池の品質を決定する重要な測定基準は、そのエネルギー変換効率であり、これは、変換された電力(吸収された光から電気エネルギーへ)と、太陽電池が電気回路に接続された時に収集された電力との比率として定義される。
【0005】
[0005]
図1は、結晶性Si(c−Si)基板をベースとしたホモ接合太陽電池例(先行技術)を示す図である。太陽電池100は、前面Ag電極グリッド102、反射防止層104、エミッタ層106、基板108、及びアルミニウム(Al)裏面電極110を含む。
図1の矢印は、入射太陽光を示す。
【0006】
[0006]従来のc−Siベースの太陽電池では、電流は、前面Agグリッド102によって収集される。Agグリッド102を形成するために、従来の方法は、Agペースト(これは、多くの場合、Ag粒子、有機バインダ、及びガラスフリットを含む)をウエハ上に印刷し、次に、700℃〜800℃の温度でAgペーストを焼成することを伴う。Agペーストの高温焼成により、AgとSiとの良好な接触が確実となり、Agラインの抵抗率を下げる。焼成されたAgペーストの抵抗率は、一般に、5×10
-6〜8×10
-6オームcmであり、これは、バルク銀の抵抗率よりもはるかに高い。
【0007】
[0007]高直列抵抗に加えて、Agペーストのスクリーン印刷によって得られる電極グリッドは、より高い材料費、より広いライン幅、及び制限されたライン高さを含む他の欠点も有する。銀の価格が上昇するにつれて、銀電極の材料費は、太陽電池を製造するための加工費の半分を超えている。最先端の印刷技術を用いた場合、Agラインは、一般的に、100〜120ミクロンのライン幅を有し、さらにライン幅を減少させることは難しい。インクジェット印刷により、より狭いラインが得られ得るが、インクジェット印刷には、低生産性といった他の問題がある。Agラインの高さは、印刷方法によっても制限される。一回の印刷で、25ミクロン未満の高さを有するAgラインを製造することができる。マルチ印刷は、高さを増加させたラインを製造できるが、それはライン幅も増加させ、このことは、高効率太陽電池のためには望ましくない。同様に、印刷されたAgライン上へのAg又はCuの電気めっきは、ライン幅の増加を犠牲にしてライン高さを増加させることができる。さらに、このようなAgラインの抵抗は、高効率太陽電池の要件を満たすには依然として高すぎる。
【0008】
[0008]別の解決策は、Siエミッタ上に直接Ni/Cu/Sn金属スタックを電気めっきすることである。この方法により、低抵抗(めっきCuの抵抗率は、一般に、2×10
-6〜3×10
-6オームcmである)の金属グリッドを製造できる。しかしながら、SiへのNiの接着は、とうてい理想的とは言えず、金属スタックからの応力により、金属ライン全体の剥離が生じ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
[0009]本発明の一実施形態は、太陽電池を提供する。太陽電池は、光起電力構造と、光起電力構造の上方に位置する前面金属グリッドとを含む。前面金属グリッドは、1つ又は複数の電気めっき金属層も含む。前面金属グリッドは、1つ又は複数のフィンガーラインも含み、各フィンガーラインの各端部が追加の金属ラインを介して隣接するフィンガーラインの対応する端部に連結されることによって、各フィンガーラインが開放端を有さないことを確実にする。
【0010】
[0010]本実施形態の変形形態では、追加の金属ラインは、太陽電池の縁端付近に位置し、各フィンガーラインの幅よりも大きな幅を有する。
【0011】
[0011]本実施形態の変形形態では、追加の金属ラインと各フィンガーラインとの交差部は、丸みが付けられる又は面取りがされる。
【0012】
[0012]本実施形態の変形形態では、金属グリッドは、電気めっき金属層と光起電力構造との間に位置する金属接着層をさらに含む。金属接着層は、Cu、Al、Co、W、Cr、Mo、Ni、Ti、Ta、窒化チタン(TiN
x)、チタンタングステン(TiW
x)、ケイ化チタン(TiSi
x)、ケイ化窒化チタン(TiSiN)、窒化タンタル(TaN
x)、ケイ化窒化タンタル(TaSiN
x)、ニッケルバナジウム(NiV)、窒化タングステン(WN
x)、及びこれらの組み合わせの内の1つ又は複数をさらに含む。
【0013】
[0013]さらなる変形形態では、光起電力構造は、透明導電酸化物(TCO)層を含み、金属接着層は、直接TCO層と接している。
【0014】
[0014]本実施形態の変形形態では、電気めっき金属層は、Cu層、Ag層、及びSn層の内の1つ又は複数を含む。
【0015】
[0015]本実施形態の変形形態では、金属グリッドは、電気めっき金属層と光起電力構造との間に位置する金属シード層をさらに含む。
【0016】
[0016]さらなる変形形態では、金属シード層は、蒸着及びスパッタリング堆積の一方を含む物理的気相成長(PVD)技術を用いて形成される。
【0017】
[0017]本実施形態の変形形態では、各フィンガーラインの所定の縁端部分は、各フィンガーラインの中心部分の幅よりも大きな幅を有する。
【0018】
[0018]本実施形態の変形形態では、光起電力構造は、ベース層と、ベース層の上方に位置するエミッタ層とを含む。エミッタ層は、ベース層内に位置するドーパントを拡散させた領域、ベース層の上方に位置するドーパントを拡散させたポリシリコン層、及びベース層の上方に位置するドープされたアモルファスシリコン(a−Si)層の内の少なくとも1つを含む。
【0019】
[0019]さらなる変形形態では、ドーパントは、リン及びホウ素の一方を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】太陽電池の前面に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である(先行技術)。
【
図3A】本発明の一実施形態による、太陽電池の表面上に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である。
【
図3B】本発明の一実施形態による、太陽電池の表面上に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である。
【
図3C】本発明の一実施形態による、太陽電池の表面上に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である。
【
図3D】本発明の一実施形態による、太陽電池の表面上に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、太陽電池の表面上に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、太陽電池の製造プロセス例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0028]図面では、同様の参照符号は、同じ図面の要素を指す。
【0022】
詳細な説明
[0029]以下の説明は、当業者が実施形態を製造及び使用できるように示したものであり、ある具体的な用途及びその要件に関連して提供される。開示された実施形態に対する様々な変更形態が当業者には容易に明白となり、本明細書に定義される一般的原理は、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び用途に適用され得る。従って、本発明は、示された実施形態に限定されず、本明細書に開示された原理及び特徴に一致する最も広い範囲に合致するものである。
【0023】
概説
[0030]本発明の実施形態は、電気めっき金属グリッドを含む太陽電池の金属剥離を回避するための解決策を提供する。太陽電池は、結晶性Si(c−Si)基板、エミッタ層、パッシベーション層、金属接着層、及び前面及び裏面電極金属グリッドを含む。金属接着層は、スパッタリング又は蒸着等の物理的気相成長(PVD)技術を用いて形成される。前面金属グリッドは、金属接着層上に、単一層又は多層構造でもよい金属スタックを選択的に電気めっきすることによって形成される。金属ラインの剥離の原因となり得る応力を軽減するために、グリッドパターンは、開放端又は不連続点が存在しないことを確実にするように特別に設計される。裏面電極金属グリッドは、前面電極金属グリッドの形成に使用されたのと同じ方法を用いて形成することができる。さらに、金属グリッドのスクリーン印刷、電気めっき、又はエアロゾルジェット印刷による裏面電極の形成が可能である。
【0024】
電気めっき金属グリッド
[0031]太陽電池電極として使用される電気めっき金属グリッドは、印刷されたAlグリッドよりも低い抵抗を示した。しかしながら、電気めっき金属ラインと、その下地の透明導電酸化物(TCO)層又は半導体層との接着が問題点となり得る。たとえ接着層を導入したとしても、電気めっき金属ラインの厚さが増加することから(低抵抗を確実にするため)、応力が高すぎる場合には、金属ラインの剥離がやはり生じ得る。金属ラインの剥離は、電気めっき金属と、その下地構造(これは、TCO層又は半導体構造でもよい)との界面に蓄積された応力の結果の場合がある。金属とシリコン基板との熱膨張係数の差及び太陽電池が置かれた環境の熱サイクルは、このような応力の原因となることが多い。応力の量が接着層によってもたらされた接着強さを上回ると、金属と下地層との結合が壊れる。
【0025】
[0032]
図2は、太陽電池の前面に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である(先行技術)。
図2では、金属グリッド200は、フィンガーストリップ202及び204等の複数のフィンガーストリップと、母線206及び208とを含む。なお、母線は、外部リード線に直接接続される比較的太い金属ストリップであり、フィンガーは、母線へ送出するための光電流を収集する比較的細い金属ストリップである。
【0026】
[0033]太陽電池を設計する際に、エミッタの抵抗及び影による損失を低減するために、高い金属高さ対幅アスペクト比を設計することが望ましい。しかしながら、フィンガーラインの高さ対幅アスペクト比は、金属グリッドの形成に用いられる製造技術によって制限されることが多い。スクリーン印刷等の従来の印刷技術は、比較的低い高さ対幅アスペクト比を有する金属ラインをもたらすことが多い。電気めっき技術は、より高い高さ対幅アスペクト比を有する金属ラインを製造することができる。しかしながら、電気めっき金属ラインは、温度が変化する環境に置かれた場合に剥離を経験し得る。上述のように、金属とシリコン基板との熱膨張係数の差及び温度変化は、応力の蓄積及び金属と下地層との接着の最終的な破壊の原因となり得る。この破壊は、単一の場所で生じ得るが、めっきCu等のめっき金属の良好な可鍛性が、金属ライン全体の剥離の原因となり得る。
【0027】
[0034]なお、応力の量は、金属ラインの高さ対幅アスペクト比に関係し、アスペクト比が大きくなるほど、応力が大きくなる。従って、金属ラインが均一な幅(これは、製造時に上手く制御できる)を有すると仮定すると、ラインのより厚みのある部分は、より大きな応力を経験する。電気めっきされた金属グリッドの場合、ウエハの縁端で生じる電流集中効果により、ウエハ縁端に堆積された金属は、ウエハの中心に堆積された金属よりも厚い傾向がある。
図2に示される例では、領域210及び212等の縁端領域に位置する電気めっき金属は、より大きな厚さを有する傾向がある。
図2から分かるように、従来の金属グリッド200は、縁端領域210及び212において開放端を有するフィンガーストリップを含む。これらの端部は、より大きな厚さを有する傾向があり、従って、より大きな量の熱応力を経験し得る。
【0028】
[0035]さらに悪いことに、熱応力に加えて、保管、タブ付け、及び架線等のソーラーモジュールの製造時の装置のさらなる取り扱いもまた、金属グリッドの剥離の原因となり得る。例えば、太陽電池が機械又は人によって取り扱われる際に、別のウエハの端部又は上に積み重ねられたウエハ上の金属ライン等の他の物体によってフィンガーラインが左右に押され得る可能性がある。同時に、フィンガーストリップの縁端は、外力に抵抗することに関して最弱点であることが多い。
図2から分かるように、フィンガーストリップの端部は、金属ラインの他の部分に接続されておらず、従って、支持が少ない。左右に押されている間に、フィンガーストリップの端部は、フィンガーストリップの中心よりも簡単に、下地層から分離される。端部が一旦分離すると、金属の良好な可鍛性により、金属ライン全体の剥離に至ることが多い。なお、金属剥離は、その高い高さ対幅アスペクト比により、フィンガーストリップに発生することが多い。一方、母線は、はるかに幅が広く、通常、剥離を経験しない。
【0029】
[0036]従って、金属ラインの剥離を防止するために、フィンガーストリップの端部と下地層との結合を強化することが重要である。前の分析に基づいて、ライン端部における金属と下地層との結合を強化するために、端部の高さを減少させて、ラインの残りの部分と同じにすることができる。これを行うための1つの方法は、端部領域におけるラインの幅を増加させることである。ライン幅の増加は、収集された電流が今度はより広い面積に広がり、従って、ライン端部における電流集中が軽減されることを意味する。しかしながら、影損失を回避するために、ライン幅の増加は小さくなければならず、全体的な効果が制限される。さらに、これもやはり外力によって引き起こされる端部の剥離を防止できない。
【0030】
[0037]本発明の実施形態は、グリッドパターンを再設計することにより、剥離に対してより耐性のあるフィンガーストリップを作製するという解決策を提供する。
図3Aは、本発明の一実施形態による、太陽電池の表面上に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である。
図3Aでは、金属グリッド300は、フィンガーストリップ302及び304等の複数の水平に配向されたフィンガーストリップと、母線310及び312とを含む。しかしながら、各フィンガーストリップが他のフィンガーストリップから分離された線分である金属グリッド200とは異なり、
図3Aでは、各フィンガーストリップの両端点は、隣接するフィンガーストリップの端点と接続される。例えば、フィンガーストリップ302の端点は、2つの短いライン306及び308を介してフィンガーストリップ304の端点に接続される。
【0031】
[0038]なお、2つの隣接するフィンガーストリップの橋渡しをする短いラインを追加することによって、2つの目標を同時に達成できる。第1の目標は、電気めっき中にウエハ縁端において電流を方向転換させ、従って、フィンガーストリップの端部に堆積される金属の厚さを減少させることである。
図2に示される例と比較して、フィンガーパターンのみが導電性である電気めっきプロセス中に、ライン306及び308等の追加された短いラインにより、元々はフィンガーストリップ302及び304等のフィンガーストリップの先端に集中していた電流に、これらの追加された短いラインを通って方向転換させることができる。その結果、フィンガーストリップの先端における電流密度が減少する。これはさらに、堆積金属のより均一な高さを生じさせることができる。金属ラインの高さの均一性の向上は、温度が変化した際にフィンガーストリップの端部において蓄積される追加の応力が少なくなることを意味する。
【0032】
[0039]追加の短いラインによって達成される第2の目標は、開放端の存在を排除すことである。1つのフィンガーストリップ上の開放端点を隣接するフィンガーストリップ上の端点に橋渡しすることによって、元々は中断されたフィンガーストリップが、開放端なしに連続したラインとなる。なお、上述のように、開放又は中断端部は、構造的支持の欠如により外力が加えられた際に折れる場合がある。対照的に、
図3Aに示される例では、フィンガーストリップ302が左右に押されるなど、外力がフィンガーストリップ302に加えられた場合に、端部が今度は追加のライン306及び308によって接続及び支持されるため、フィンガーストリップ302の端部が下地層から分離される可能性は低い。なお、端部への支持は、それら追加のラインと下地層との接着力によって提供される。開放端の排除は、外力に抵抗することに関する最弱点も排除する。なお、金属剥離は、母線にとって懸念事項ではないため、母線上の開放端を排除する必要はない。ある実施形態では、母線の端部は、
図3Aに示されるように、ウエハの上端及び下端におけるフィンガーストリップと位置合わせされるように構成される。つまり、母線の端部は、端のフィンガーストリップと一体化でき、これにより、母線もまた開放端を有さない結果となる。
【0033】
[0040]厚さの均一性の向上及び開放端の排除を同時に行うことによって、本発明の実施形態は、フィンガーストリップの剥離の可能性を効果的に減少させる。
図3Aに示した例に加えて、ウエハ縁端に追加の金属ラインを追加し、かつフィンガーが開放端なしに連続したラインで構成される限り、他のグリッドパターンも使用して、剥離の可能性を減少させることができる。
図3Bは、本発明の一実施形態による、太陽電池の表面上に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である。
図3Bに示される例では、単に2つの隣接するフィンガーストリップ間の接続を生じさせる代わりに、3つ以上のフィンガーストリップの端点を接続するように短いラインが追加される。
図3Bでは、ライン314及び316等の複数の短いラインがウエハ縁端に追加されて、3つ以上のフィンガーストリップを連結する。
図3Aに示されるもののように、その結果生じるグリッドパターンは、開放端を有さない連続したフィンガーラインを含む。
【0034】
[0041]
図3Cは、本発明の一実施形態による、太陽電池の表面上に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である。
図3Cでは、ウエハの各縁端上に、ライン318及び320等の垂直に配向された長いラインが追加されて、全ての水平に配向されたフィンガーストリップの端点をつなぐ。
図3Dは、本発明の一実施形態による、太陽電池の表面上に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である。
図3Dでは、隣接する2つのフィンガーストリップ間にウエハの左縁端及び右縁部において交互に(上縁端及び下縁端を除く)短いラインが追加されることにより、1つのフィンガーストリップの各端点が短い金属ラインを介して隣接するフィンガーストリップの端点に少なくとも連結されることが確実となる。なお、
図3A〜3Dに示されるフィンガーパターンは単なる例であり、これらは、包括的であること又はこれらの図に開示されたフィンガーパターンに本発明を限定することを意図したものではない。本発明の実施形態は、ウエハ縁端に金属ラインを追加することにより、そうでなければ個別のフィンガーストリップを接続するフィンガーパターンを含み得る。このような追加のラインは、フィンガーストリップの端部から電流を方向転換させ、フィンガーストリップの端部に構造的支持を提供する助けとなるため、電気めっき金属グリッドが直面する金属剥離の問題の軽減に重要な役割を果たす。
【0035】
[0042]なお、ウエハ縁端における追加のラインは影を増やし得るが、そのような影響は、ほとんどの場合、無視できるほど小さくなり得る。例えば、
図3Aでは、追加のラインの総合的影響は、1つのフィンガーストリップの追加に等しくなり得る。125×125mm
2のサイズのウエハの場合、約75μmの幅の1つの追加のフィンガーストリップは、約0.05%の影を追加するだけで、これは無視できるほど小さい。さらに、追加の影は、これら追加のラインによって収集される追加の電流によっても相殺され得る。
【0036】
[0043]
図3A〜3Dに示された例では、追加の垂直ラインが水平フィンガーストリップに接続される位置で尖った角が形成される。これらの尖った角はまた、金属破壊を引き起こし得る横応力を蓄積し得る。金属ラインの接着をさらに向上させるために、ある実施形態では、フィンガーストリップは、丸い角を有したラインによって接続される。
図4は、本発明の一実施形態による、太陽電池の表面上に位置する電気めっき金属グリッド例を示す図である。
図4では、金属グリッド400は、連続した切れ目のないラインを含むフィンガーストリップを含む。より具体的には、全ての隣接する2つの平行フィンガーストリップが、追加の短いラインによって端部において結合され、連続ループを形成する。応力をさらに減少させるために、フィンガーパターンを設計する際に、直線の角又は急な曲がり目が避けられる。例えば、直線の角は、弧で丸みを付ける又は直線で面取りをされてもよい。
図4では、領域402及び404は、フィンガーストリップの転向位置の詳細図例を示す。
【0037】
[0044]領域402に示される詳細図は、2つの直角をなす金属ライン(一方は、水平のフィンガーストリップで、他方は、2つの隣接するフィンガーの橋渡しをする垂直の短いラインである)を接続するために弧が使用されていることを示す。これにより、丸い角が得られる。ある実施形態では、弧の半径は、0.05mm〜フィンガー間隔の2分の1でもよい。なお、フィンガー間隔は、2〜3mmでもよい。領域404に示される詳細図は、2つの直角をなす金属ラインによって形成される直角を排除するために、曲がり角において面取りが形成されていることを示す。
【0038】
[0045]ある実施形態では、2つの隣接するフィンガーストリップを接続する短いライン(丸みを付けた又は面取り部分を含む)等のウエハ縁端における金属ラインは、これらの位置における電流密度をさらに減少させるために、僅かに拡幅される。その結果、電気めっき中にこれらの縁端位置に堆積される金属の厚さが減少し、接触面積の増加により、電気めっき金属と下地層とのより良好な接着も確実となる。
図4では、領域406は、縁端の幅がフィンガーストリップの中心部分の幅よりも大きいことを示す、フィンガーストリップの縁端部の詳細図例を示す。ある実施形態では、フィンガーの縁端部の幅は、中心部分の幅よりも少なくとも20%〜30%大きくてもよい。さらなる実施形態では、フィンガーの縁端部の幅は、最大0.2mmでもよい。この拡幅部分の長さ(
図4ではLとして示される)は、1〜30mmでもよい。なお、拡幅されたフィンガー縁端が長いほど、接着がより良好となり、影の影響がより大きくなる。一部の実施形態では、フィンガーの中心部分と、フィンガーの拡幅された縁端部との界面は、テーパー状でもよい。
【0039】
[0046]
図5は、本発明の一実施形態による、太陽電池の製造プロセス例を示す図である。
【0040】
[0047]工程5Aでは、基板500が準備される。ある実施形態では、基板500は、結晶性Si(c−Si)ウエハでもよい。さらなる実施形態では、c−Si基板500の準備は、標準的なソーダメージエッチング(これは、Siのダメージを受けた外層を除去する)及び表面テクスチャリングを含む。c−Si基板500は、n型又はp型ドーパントのいずれかを用いて軽くドープされてもよい。ある実施形態では、c−Si基板500は、p型ドーパントを用いて軽くドープされる。なお、c−Siに加えて、他の材料(冶金Si等)を用いて基板500を形成してもよい。
【0041】
[0048]工程5Bにおいて、ドープされたエミッタ層502がc−Si基板500の上に形成される。c−Si基板500のドーピングの型に応じて、エミッタ層502は、n型ドープ又はp型ドープのいずれかをされてもよい。ある実施形態では、エミッタ層502は、n型ドーパントを用いてドープされる。さらなる実施形態では、エミッタ層502は、リン拡散によって形成される。なお、エミッタ層502の形成にリン拡散が使用される場合、リンケイ酸ガラス(PSG)エッチング及びエッジアイソレーションが必要となる。エミッタ層502の形成に他の方法を使用することもできる。例えば、最初に基板500の上にポリSi層を形成し、次に、ポリSi層内にドーパントを拡散させてもよい。ドーパントは、リン又はホウ素のいずれかを含んでもよい。さらに、エミッタ層502は、基板500の上にドープされたアモルファスSi(a−Si)層を堆積させることによって形成されてもよい。
【0042】
[0049]工程5Cでは、反射防止層504がエミッタ層502の上に形成される。ある実施形態では、反射防止層504は、窒化ケイ素(SiN
x)、酸化ケイ素(SiO
x)、酸化チタン(TiO
x)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。ある実施形態では、反射防止層504は、インジウムスズ酸化物(ITO)、アルミニウム酸化亜鉛(AZO)、ガリウム酸化亜鉛(GZO)、タングステンドープ酸化インジウム(IWO)、及びこれらの組み合わせ等の透明導電酸化物(TCO)材料の層を含む。
【0043】
[0050]工程5Dでは、裏面電極506が、Si基板500の裏面上に形成される。ある実施形態では、裏面電極506の形成は、完全Al層の印刷及び後続の焼成による合金化を含む。ある実施形態では、裏面電極506の形成は、Ag/Alグリッドの印刷及び後続の炉焼成を含む。
【0044】
[0051]工程5Eでは、窓508及び510を含む複数のコンタクト窓が反射防止層504に形成される。ある実施形態では、領域512及び514等の高濃度ドープ領域が、エミッタ層502において、コンタクト窓508及び510の真下にそれぞれ形成される。さらなる実施形態では、コンタクト窓508及び510と、高濃度ドープ領域512及び514とは、反射防止層504上にリンを噴霧し、次に、レーザ溝局所拡散プロセスによって形成される。なお、工程5Eは任意選択的であり、反射防止層504が電気絶縁性である場合に必要とされる。反射防止層504が導電性である場合(例えば、反射防止層504がTCO材料を用いて形成される場合)、コンタクト窓を形成する必要はない。
【0045】
[0052]工程5Fでは、金属接着層516を反射防止層504上に形成する。ある実施形態では、接着層516の形成に使用される材料は、Ti、窒化チタン(TiN
x)、チタンタングステン(TiW
x)、ケイ化チタン(TiSi
x)、ケイ化窒化チタン(TiSiN)、Ta、窒化タンタル(TaN
x)、ケイ化窒化タンタル(TaSiN
x)、ニッケルバナジウム(NiV)、窒化タングステン(WN
x)、Cu、Al、Co、W、Cr、Mo、Ni、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、金属接着層516は、スパッタリング又は蒸着等の物理的気相成長(PVD)技術を用いて形成される。接着層516の厚さは、数ナノメートルから最大100nmに及び得る。なお、Ti及びその合金は、Si材料と非常に良好な接着を形成する傾向があり、これらは、高濃度ドープ領域512及び514と良好なオーミックコンタクトを形成することができる。電気めっきプロセスの前に、反射防止層504の上に金属接着層514を形成することにより、後に形成される層の反射防止層504へのより良好な接着が確実となる。
【0046】
[0053]工程5Gでは、金属シード層518が接着層516上に形成される。金属シード層518は、Cu又はAgを含み得る。金属シード層518の厚さは、5nm〜500nmでもよい。ある実施形態では、金属シード層518は、100nmの厚さを有する。金属接着層516と同様に、金属シード層518は、PVD技術を用いて形成されてもよい。ある実施形態では、金属シード層518の形成に使用される金属は、電気めっき金属の第1の層の形成に使用された金属と同じである。金属シード層は、後にめっきされる金属層のより良好な接着をもたらす。例えば、Cu上にめっきされたCuは、他の材料上にめっきされたCuよりも良好な接着を有することが多い。
【0047】
[0054]工程5Hでは、パターニングされたマスキング層520が金属シード層518の上に堆積される。開口部522及び524等のマスキング層520の開口部は、コンタクト窓508及び510の位置に対応し、従って、高濃度ドープ領域512及び514の上に位置する。なお、開口部522及び524は、コンタクト窓508及び510よりも僅かに大きい。マスキング層520は、パターニングされたフォトレジスト層を含んでもよく、これは、フォトリソグラフィー技術を用いて形成されてもよい。ある実施形態では、フォトレジスト層は、ウエハの上にフォトレジストをスクリーン印刷することによって形成される。フォトレジストは、その後、溶剤を除去するために焼成される。マスクをフォトレジスト上に置き、ウエハを紫外線光に曝露させる。紫外線曝露後に、マスクを除去し、フォトレジストをフォトレジスト現像液中で現像する。開口部522及び524は、現像後に形成される。フォトレジストは、噴霧、ディップコーティング、又はカーテンコーティングによって塗布されてもよい。ドライフィルムフォトレジストが使用されてもよい。あるいは、マスキング層520は、パターニングされた酸化ケイ素(SiO
2)の層を含んでもよい。ある実施形態では、マスキング層520は、低温プラズマ化学気相成長(PECVD)技術を用いて、まずSiO
2層を堆積することによって形成される。さらなる実施形態では、マスキング層520は、シリカスラリーを用いてウエハの前面をディップコーティングし、次に、フッ化水素酸又はフッ化物を含むエッチング液をスクリーン印刷することによって形成される。マスキング材料が電気絶縁性である限り、他のマスキング材料も可能である。
【0048】
[0055]なお、マスキング層520は、後の電気めっき中に、マスキング層520によって定義された開口部522及び524等の開口部の上方の領域上にのみ金属材料を堆積させることができるため、前面金属グリッドのパターンを定義する。より良好な厚さの均一性及びより良好な接着を確実にするために、マスキング層520によって定義されるパターンは、連続した切れ目のないラインで形成されたフィンガーストリップを含む。マスキング層520によって形成されるパターン例は、
図3A〜3Dに示されるパターンを含む。さらなる実施形態では、ウエハ縁端近くに位置するラインを定義する開口部は拡幅される。ウエハ縁端におけるパターン例は、
図4に示されるパターンを含む。
図5Gは、本発明の一実施形態によるパターニングされたマスキング層の上面図を示す。
図5Gから分かるように、ウエハの表面上の影領域は、マスキング層520によって覆われ、従って、導電性ではない。開口部は、導電性である下地金属シード層518を露出させる。
図5Iに示されるパターン例では、より小さい幅を有する開口部がフィンガーパターンを定義し、これは、開放端を有さない連続したラインを含む。一方、より大きな幅を有する開口部が母線を定義し、これは、母線にとって金属剥離は懸念事項ではないため、開放端を有する線分を含み得る。
【0049】
[0056]工程5Jでは、1つ又は複数の金属層が、マスキング層520の開口部に堆積されることにより、前面金属グリッド526が形成される。前面金属グリッド526は、電着、光誘起めっき、及び/又は無電解析出を含み得る電気めっき技術を用いて形成され得る。ある実施形態では、金属シード層518及び/又は接着層516は、電極を介して、めっき電源(直流(DC)電源でもよい)のカソードに連結される。金属シード層518及び開口部を含むマスキング層520は、電気の流れを許可する電解質溶液に沈められる。なお、マスキング層520は電気絶縁性であるため、金属が選択的に開口部に堆積され、それによって、これらの開口部によって定義されたパターンに対応するパターンを有する金属グリッドが形成される。金属シード層518を形成する材料に応じて、前面金属グリッド526は、Cu又はAgを用いて形成され得る。例えば、金属シード層518がCuを用いて形成される場合、前面金属グリッド526もまた、Cuを用いて形成される。さらに、前面金属グリッド526は、Cu/Sn二層構造又はCu/Ag二層構造等の多層構造を含み得る。Sn又はAg最上層が堆積され、後続のはんだ付けプロセスを助ける。Cuを堆積させる際に、アノードにおいてCuめっきを用い、太陽電池をCuめっきに適した電解質中に沈める。Cuめっきに使用される電流は、125mm×125mmの寸法のウエハの場合、0.1アンペア〜2アンペアであり、Cu層の厚さは、約数十ミクロンである。ある実施形態では、電気めっき金属層の厚さは、30μm〜50μmである。
【0050】
[0057]工程5Kでは、マスキング層520が除去される。
【0051】
[0058]工程5Lでは、前面金属グリッド526の下方の部分のみを残して、元々マスキング層520によって覆われていた接着層516及び金属シード層518の部分がエッチング除去される。ある実施形態では、湿式化学エッチングプロセスが使用される。なお、前面金属グリッド526が接着層516及び金属シード層518よりもはるかに厚い(数倍分)ため、前面金属グリッド526に対するエッチングの影響は、無視できるほど小さい。ある実施形態では、得られる金属グリッドの厚さは、30μm〜50μmに及び得る。フィンガーストリップの幅は、10μm〜100μmでもよく、母線の幅は、0.5〜2mmでもよい。また、フィンガーストリップ間の間隔は、2mm〜3mmでもよい。
【0052】
[0059]製造中に、金属接着層及びシード金属層の形成後に、コンタクト窓及び高濃度ドープ領域の位置に対応する領域を覆うパターニングされたマスキング層を形成し、パターニングされたマスキング層によって覆われていない金属接着層及び金属シード層の部分をエッチング除去することも可能である。ある実施形態では、金属接着層及び金属シード層の残りの部分は、
図3A〜3D及び
図4に示されたパターンと類似したパターンを形成する。なお、このようなパターンは、連続した切れ目のないラインからなるフィンガーストリップを含む。パターニングされたマスキング層が除去されると、太陽電池の表面に対して1つ又は複数の金属層が電気めっきされ得る。太陽電池の表面上では、金属シード層の残りの部分の場所のみが導電性であり、めっきプロセスにより、金属シード層の残りの部分の上に選択的に金属を堆積させることができる。
【0053】
[0060]
図5に示される例では、裏面電極が従来の印刷技術を用いて形成される(工程5D)。実際には、裏面電極は、太陽電池の裏面上に1つ又は複数の金属層を電気めっきすることによっても形成することができる。ある実施形態では、裏面電極は、基板の裏面上に、金属接着層、金属シード層、及びパターニングされたマスキング層を形成することを含む、工程5F〜5Lに類似した工程を用いて形成され得る。なお、裏面上のパターニングされたマスキング層は、裏面金属グリッドのパターンを定義する。ある実施形態では、裏面金属グリッドは、連続した切れ目のないラインで形成されたフィンガーストリップを含む。さらなる実施形態では、裏面金属グリッドは、
図3A〜3D及び
図4に示されたパターン例を含み得る。
【0054】
[0061]様々な実施形態の上記の説明は、単なる例示及び説明目的で提示されたものである。これらは、網羅的であること又は本発明を開示した形態に限定することを意図したものではない。従って、多くの変更形態及び変形形態が当業者には明白となるであろう。加えて、上記の開示は、本発明を限定することを意図していない。