特許第6351615号(P6351615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351615
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】電動モータ用のロータを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20180625BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20180625BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   H02K1/27
   H02K15/02 A
   B29C39/10
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-548275(P2015-548275)
(86)(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公表番号】特表2016-502395(P2016-502395A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013003774
(87)【国際公開番号】WO2014095014
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月17日
(31)【優先権主張番号】12008423.1
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515168835
【氏名又は名称】リーンテック モーター ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】LEANTEC Motor GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ シュネル
【審査官】 樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−501474(JP,A)
【文献】 特開2011−151877(JP,A)
【文献】 特開2007−215291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
B29C 39/10
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータボディを製造する方法であって、
繊維材料から、螺旋状のつの繊維ストリップを製織により製作し、前記つの繊維ストリップ複数の空隙を製織により設け、前記複数の空隙のうちの1つの空隙が別の1つの空隙の上又は下に位置し、互いに上下に重なって位置する前記複数の空隙が三次元的な収容部を形成するように、1つの繊維ストリップを位置合わせし、前記三次元的な収容部は、磁石を収容するためのものである、ことを特徴とする、ロータボディを製造する方法。
【請求項2】
前記つの繊維ストリップをキャビティに導入する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記キャビティに位置ホルダ及び/又は磁石を設け、該位置ホルダ及び/又は磁石が収容部に位置するように、前記つの繊維ストリップを前記キャビティに導入する、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記ロータボディは、円形の横断面を有し、収容部は、前記ロータボディの円の中心から等間隔に設けられている、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
繊維ストリップの製織後に、繊維ストリップの繊維材料の一部をシフトさせて、繊維ストリップに前記複数の空隙を製織により形成する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
繊維ストリップの縁領域では、体積あたり繊維数が、平均の、繊維ストリップの体積あたり繊維数よりも高い、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記つの繊維ストリップを、位置合わせ後に、ポリマー、エラストマ又は熱可塑性樹脂に接触させる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ポリマーを、圧力上昇及び/又は温度上昇により硬化させる、請求項記載の方法。
【請求項9】
硬化後に、磁石を、前記ロータボディの収容部に導入する、請求項記載の方法。
【請求項10】
前記ロータボディを、炭素繊維強化プラスチック(CFK)から製造する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータボディを製造する方法、この方法に従って製造されるロータボディ、並びにそのようなロータボディを備えるロータに関する。
【0002】
独国特許第102006036707号明細書において、永久磁石を支持するロータボディを備える慣性の小さな電気駆動装置が公知である。ロータボディは、例えば繊維補強プラスチックから製造されていて、永久磁石を嵌め込むための収容部又は空隙を備える。永久磁石の固定は、例えば接着により行うことができる。
【0003】
上述の、ロータボディを製作する方法の欠点は、ロータボディが先ず全面的に製作され、永久磁石用の収容部が後から初めて切削加工、例えば穿孔、フライス加工又は水ジェット切削により形成されることにある。従って、ロータボディは、連続的な1つのプロセスで製造できない。
【0004】
本発明の課題は、改善された、磁石用の収容部を備えるロータボディを製造する方法を提案することである。特に、収容部を製作するためのロータボディの後加工が不要となるべきである。
【0005】
この課題は、ロータボディを製造する方法であって、繊維材料から1つ又は複数の繊維ストリップを製作し、1つ又は複数の繊維ストリップに空隙を設け、空隙のうちの少なくとも1つの空隙が別の1つの空隙の上に載って、上下に重なって位置する空隙が三次元的な収容部を形成するように、1つの繊維ストリップ又は複数の繊維ストリップを互いに位置合わせすることを特徴とする、ロータボディを製造する方法により解決される。
【0006】
本発明によれば、ロータボディは、1つ又は複数の繊維ストリップから構成される。そのために、繊維材料から先ず1つ又は複数の繊維ストリップが製作され、1つ又は複数の繊維ストリップは、1つ又は複数の空隙、つまり開口部、切込み又は孔を有する。この場合、1つ又は複数の繊維ストリップは、空隙の一部が上下に位置するように、互いに位置合わせされ、特に上下に重ねてかつ/又は相並んで置かれるかつ/又は畳まれる。1つ又は複数の繊維ストリップに設けられる上下に重ねて位置する複数の空隙は、磁石用の収容部として用いられる三次元的な中空室を形成する。
【0007】
本発明により使用される繊維ストリップは、好適には製織により製作される。好適には、繊維ストリップを製作するために、テキスタイル製造において知られた反転緯糸技術が用いられる。繊維材料の少なくとも2本の繊維が互いに交錯される。通常、複数の繊維(経繊維)が支持体を形成し、支持体に、別の繊維(緯繊維)が経繊維に対して横向きに通される。この場合、経繊維及び緯繊維は、互いにほぼ任意の角度、例えば90°、60°、45°又は30°の角度を取ることができる。
【0008】
ロータボディの様々な領域は、ロータボディから製造されるロータの使用時に、様々な負荷に曝される。従って、繊維ストリップの様々な領域において経繊維と緯繊維とを、互いに多様に織る、特に相互の角度配向又は織り密度を変更することが好適であり、これにより、製造すべきロータボディの様々な負荷を考慮することができる。例えば、繊維ストリップの縁領域では、繊維ストリップの平均の繊維密度よりも大きな繊維密度、つまりより高い体積あたり繊維数を設定することが好適である。
【0009】
繊維ストリップにおける空隙は、直接に製織により製作することができる。繊維材料は、所望の箇所に空隙が生じるように互いに織られる。
【0010】
本発明の別の態様では、先ず空隙を有しない繊維ストリップが製織される。続いて、繊維ストリップに所望の空隙が生じるように、繊維ストリップの繊維が互いに対してシフトさせられる。そのために、例えば空隙を生じさせたい繊維ストリップの領域では、繊維材料は、より緩く織られていてよく、これにより、製織後に繊維をより簡単に互いに対して動かすことができる。
【0011】
繊維ストリップは、製織によってだけではなく、編成や組成によって製作することもできる。繊維材料として、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、バサルト繊維、他の化学繊維や天然繊維、合成ポリマーから成る繊維、又は工業的に製造される無機繊維を使用してよい。
【0012】
好適には、1つ又は複数の繊維ストリップは、予め空隙を有するように製作される。繊維ストリップの製織時に、製織は、例えば緯繊維が経繊維の一部だけを通されることによって行うことができる。従って、製作された繊維ストリップは、多数の空隙、孔、開口部又は切込みを有する。
【0013】
本発明の1つの態様では、環セグメント状の、円環状の、セグメント状の、又は円状の複数の繊維ストリップは、それぞれ1つ又は複数の空隙を有して製作される。繊維ストリップは、相並んでかつ/又は上下に重ねて置かれる、もしくは適切な形で互いに位置合わせされるので、それぞれ繊維ストリップに設けられた空隙の一部が相俟って磁石用の収容部を形成する。環セグメント状の、円環状の、セグメント状のかつ/又は円状の繊維ストリップの使用によって、簡単に丸いロータボディを製造できる。
【0014】
別の1つの態様では、複数の空隙を有する螺旋状の1つの繊維ストリップが製作される。用語「螺旋状の繊維ストリップ」とは、弦巻、ねじ又は円筒形の渦巻きの形で、仮想円筒の側面の周りに巻き付く繊維ストリップと解される。ねじ状の繊維ストリップの複数の層が上下に重ねて置かれ、この場合、繊維ストリップを上下に置くときに少なくともそれぞれ2つの空隙がほとんど上下に重なり合って位置するように、空隙が繊維ストリップに設けられている。従って、ねじ状の繊維ストリップの製作時に、それぞれ少なくとも2つの空隙が互いに360°の角度を成して配置されるので、1つの空隙は、繊維ストリップを丸1周した後で別の空隙の上に位置する。
【0015】
本発明に基づいて製造されるロータボディは、好適には、電動モータのロータに使用され、均等に分配された多数の磁石を有するものである。従って、繊維ストリップに、これに対応して多くの空隙が設けられる。例えばそれぞれ10°毎に1つの空隙が繊維ストリップに形成される、又は、繊維ストリップが10°置きに1つの空隙を有するように繊維ストリップが製作される。この場合、円環状の繊維ストリップは、36個の空隙を有する。そのような複数の繊維ストリップが、空隙が直接に上下に重ねて位置するように、上下に置かれると、所望の収容部が形成される。螺旋状の繊維ストリップを有する上述の態様の場合、空隙は、360°ずらされた空隙と重なる。
【0016】
螺旋状の繊維ストリップの使用は、ロータボディが所望の厚さを有するまで繊維ストリップが上下に置かれることにより、ロータボディを1つのプロセスステップで製造できるという利点を有する。そうすると、1つの作業工程で、ロータボディを所望の厚さで製造できる。空隙が繊維ストリップに適切に形成された場合、空隙は、繊維ストリップを上下に置く際に自動的に直接に上下に重なって位置する。
【0017】
最終製品の所望厚さは、通常、上下に置かれた繊維ストリップの厚さと同一ではない、ということを考慮しなければならない。つまり、上下に置かれた繊維ストリップが別の1つの方法ステップで圧縮されると、厚さが大幅に低減する。そこで、繊維ストリップは、完成したロータボディの所望の厚さよりも例えば約30%だけ高い厚さになるように設けなければならず、これにより、圧縮後に所望の最終寸法を得ることができる。
【0018】
ロータボディを螺旋状の複数の繊維ストリップから製造することも可能である。この場合、螺旋状の繊維ストリップの各々は、単に、ロータボディの所望の厚さの一部が得られるように上下に置かれる。この場合、それぞれ1つの繊維ストリップから形成される複数の構成要素が組み合わされて、最終的なロータボディが形成される。
【0019】
例えば、空隙を有しないそれぞれ1つの螺旋状の繊維ストリップから2つの薄い円筒形のカバーを製作してよい。空隙を有する別の繊維ストリップから、ロータボディの中央部分が製作され、この場合、空隙は、部分的に互いに上下に位置し、磁石用の収容部を形成するように設けられている。これらの収容部に磁石が挿入される。両方の薄い円筒形のカバーは、磁石を備えるロータボディの中央部分の両側に配置され、中央部分に結合されるので、磁石は、不動に、所定の位置でそれぞれの収容部内で位置固定されている。換言すると、繊維ストリップから空隙を有しない2つのカバー層並びに空隙を有する中央のロータボディ部分が製作される。この場合、両方のカバー層と中央のロータボディ部分とから、サンドウィッチ構造でロータボディが形成される。この場合、両方のカバー層は、全面的に、空隙を有する中央のロータボディ部分を覆い、これにより、ロータボディ全体の剛性が高められる。
【0020】
ロータボディを製作するために螺旋状の繊維ストリップを位置合わせする際に、繊維ストリップの一部における空隙のうちの1つが、繊維ストリップの別の一部における空隙のうちの1つの上に位置する。螺旋状の1つの繊維ストリップの代わりに、例えば円環セグメント状又は環状の複数の繊維ストリップが用いられるとき、これらの繊維ストリップは、1つの繊維ストリップにおける空隙の1つが別の繊維ストリップにおける1つの空隙の上に位置するように、位置合わせされる。
【0021】
好適には、1つ又は複数の繊維ストリップは、キャビティに導入される。キャビティは、所望のロータボディのネガ形状を成している。キャビティにより、1つ又は複数の繊維ストリップの配置及び位置合わせにより形成されるロータボディが所望の大きさや形状をも有することが確保される。キャビティにより、ロータボディの製造は大幅に容易化される。
【0022】
1つ又は複数の繊維ストリップにおける空隙の相互の位置合わせ、例えば2つの空隙の重なり合った上下の積み重ねは、本発明の好適な態様によれば、キャビティ内に位置ホルダを設けて、位置ホルダが収容部に位置するように1つ又は複数の繊維ストリップをキャビティに導入することにより、容易化される。1つ又は複数の繊維ストリップにおける空隙は、例えば位置ホルダの上に被せられる又は下ろされる。好適には、位置ホルダの大きさ及び形状は、ロータボディの収容部に配置されるべき磁石の大きさ及び/又は形状に相当する。
【0023】
別の態様では、磁石は、キャビティ内で位置決めされ、1つ又は複数の繊維ストリップは、磁石が収容部内に位置するように、キャビティに導入される。磁石は、初めに、キャビティ内の、磁石が後でロータの製造後にも位置すべき箇所に位置決めされる。この場合、1つ又は複数の繊維ストリップは、磁石をめぐるようにキャビティに導入される。このために、繊維ストリップに、本発明に基づく空隙が設けられている。
【0024】
別の態様では、上述の位置ホルダがキャビティ内で、射出成形金型製造で使用されるようなプッシャとして構成されている。これにより、磁石は、繊維/樹脂混合物の圧縮及び硬化後に初めて空隙にシフトさせることができる。この方法は、特に、磁石が耐性を有しない高温、例えば120℃を超える温度で硬化する樹脂の場合に必要である。
【0025】
本発明による方法は、特に電動モータ用のロータ及びロータボディを製造するために用いられる。そのようなロータは、大抵、多数の磁石を有する。磁石は、その全てがロータの中心、つまり回転中心から正確に離れた距離で位置し、隣り合う磁石に対してそれぞれ同一の間隔を有する。従って、磁石用の多数の収容部が形成されるように、繊維ストリップを製作して位置合わせすることも好適である。これに応じて、ロータボディは、好適には円形の横断面を有し、収容部は、ロータボディの円の中心から等間隔に設けられている。
【0026】
本発明は、磁石が2つ以上の円環上に配置されているロータの製造にも適している。例えば、磁石は、ロータボディの回転軸を中心に同心的な2つの円、つまり内側の円及び外側の円上に配置されていてよい。これに応じて空隙もしくは収容部が設けられる。この場合、好適には、収容部を相互に角度をずらして配置することが好適であり、つまり、ロータボディの半径が、最大で、内側の円の収容部又は外側の円の収容部と交差するが、両方の収容部と交差しない。
【0027】
1つ又は複数の繊維ストリップの位置合わせ後に、繊維ストリップは、好適には母材に埋入される。母材として、ポリマー、特に熱硬化物(熱硬化性樹脂、合成樹脂)、エラストマ又は熱可塑性樹脂が用いられる。同様にセラミック母材を用いることも可能である。
【0028】
ポリマーは、好適には圧力上昇及び/又は温度上昇により硬化させられ、この場合、硬化後に繊維材料と相俟って、引張り負荷、圧縮負荷だけではなく曲げ負荷に関しても極めて大きな強度のロータボディを形成する。
【0029】
別の態様では、ロータボディは、炭素繊維強化プラスチック(CFK)から製造される。そのために複数の層の炭素繊維が、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂、特にエポキシ樹脂から成るプラスチック母材に導入される。
【0030】
本発明の別の態様では、繊維体積含有量、つまり体積あたり繊維数が、繊維ストリップの外側縁部で高くされる。そのために、例えば外側縁部で、経繊維は、繊維ストリップの残りの領域よりも密に置かれる。とりわけ、繊維ストリップの、空隙に接する領域における繊維体積含有量及び/又は空隙の間の帯状部における繊維含有量を高くすることが好適である。これにより、総じて、空隙もしくは収容部に導入すべき磁石に作用する遠心力の吸収に関して高められた強度、並びにロータボディの剛性の改善が得られる。
【0031】
以下に、概略的な図面につき、本発明、本発明の更なる詳細及び態様を詳説する。その際、図面は、本発明によるロータボディの製造に対する様々な方法ステップを示している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】繊維ストリップの織物を示す図である。
図2】製織された螺旋状の繊維ストリップを示す図である。
図3】キャビティへの繊維ストリップの導入を示す図である。
図4】キャビティ内に配置された位置ホルダを示す図である。
図5】母材と繊維ストリップとの接触動作及びロータボディの硬化を示す図である。
図6】本発明に従って製造されるロータを示す図である。
【0033】
図1図6には、本発明による、電動モータ用、特に独国特許第102006036707号明細書に記載されたような電動モータ用のロータの製造プロセスが略示されている。ロータは、繊維複合材料から製造されていて、多数の磁石を備える。磁石は、均等にかつロータ軸線から等距離に配置されている。
【0034】
ロータは、ディスク状のロータボディを備え、ロータボディは、炭素繊維−プラスチック−複合材料から成っている。炭素繊維の代わりに、ガラス繊維、アラミド繊維、バサルト繊維、他の化学繊維や天然繊維、合成ポリマーから成る繊維もしくは工業的に製造される無機繊維、又は記載の繊維の組み合わせを使用してもよい。
【0035】
ロータを製造するために、先ず、炭素繊維が織られて螺旋状の繊維ストリップが形成される。複数のいわゆる経繊維1が、支持体を形成し、支持体に、緯繊維2が通される(図1参照)。繊維1,2は、いわゆる反転緯糸法に基づいて織られる。緯繊維2は、経繊維1に対して好適には直角に通される。最も外側の経繊維3,4の交錯の後で、緯繊維2は、逆向きに経繊維1の間を通される。製造すべき繊維ストリップの縁における緯繊維2の反転により、繊維ストリップの縁領域が補強され、安定した縁部5が形成される。更に、縁領域で、経繊維1は、より密に配置され、これにより、縁領域は、追加的に補強される。
【0036】
特定の箇所で、緯繊維2は、製造すべき繊維ストリップの全幅にわたって通されず、つまり最も外側の経繊維3から反対側の最も外側の経繊維4に向けて通されない。緯繊維2の指向は、最も外側の経繊維の間に位置する経繊維6で反転される(「半分の反転緯入れ」)。複数回のそのような半分の反転緯入れの後で、完全な緯入れが行われる、つまり、緯繊維2は、最も外側の経繊維3から別の最も外側の経繊維4まで通される。このようにして空隙又は開口部7が形成され、空隙又は開口部7には、交錯する経繊維及び緯繊維が存在しない。
【0037】
上述のようにして、長い螺旋状の繊維ストリップ8(図2参照)が製作される。繊維ストリップ8は、所定の箇所で空隙7を有する。螺旋状の繊維ストリップ8は、例えば50mm〜100mmの内径9と250mm〜300mmの外径10とを有する。
【0038】
上述の繊維ストリップへの空隙7の直接的な製織による形成の代わりに、経繊維1及び緯繊維2を繊維ストリップの全幅及び全長にわたって織り込み、続いて経繊維1及び緯繊維2をシフトさせることも可能であるので、所望の空隙7が生じる。
【0039】
繊維ストリップの寸法、特に繊維ストリップの内径9及び外径10は、製造すべきロータの大きさに応じて選択される。通常の電動モータ及び発電機に対して、外径10は、例えば150mm〜600mmにある。より大きな寸法を有する電気機械のロータを製造するために本発明を利用することも十分可能である。例えば、本発明による方法により、風力設備用の発電機で使用されるような、1000mm〜3000mmの外径を有するロータボディを製造することができる。
【0040】
繊維ストリップ8の長さは、螺旋状に上下に置かれた繊維ストリップ8が圧縮及び硬化の後で製造すべきロータボディの厚さに相当するように設計される。繊維ストリップの圧縮時に生じる圧密化に基づいて、繊維ストリップの特定の過剰長さを算定しなければならない、つまり上下に置かれた繊維ストリップ8は、圧縮前に、最終的なロータボディよりも大きな厚さを有するべきである。
【0041】
次の方法ステップで、繊維ストリップ8は、図3に示されているように、キャビティ11に挿入される。キャビティ11は、所望のロータボディのネガ形状に対応している。
【0042】
図4には、キャビティ11の断面図が示されている。キャビティ11の底部には、多数の位置ホルダ12が円状に配置されている。位置ホルダ12は、例えば残りのキャビティ11と同一の材料から成っていてよく、キャビティ11に不動に結合されている。キャビティ11との不動の結合の代わりに、位置ホルダ12は、可動に、特にシフト可能に、好適にはキャビティ11の対称軸線に対して平行で、製造すべきロータボディの回転軸線(以下にz軸と云われる)に対して平行の方向にシフト可能に設けてもよい。位置ホルダ12は、ロータボディの製造後に磁石が設けられる箇所に位置する。
【0043】
繊維ストリップ8は、キャビティ11に導入され、その際、位置ホルダ12は、それぞれ繊維ストリップ8に設けられた空隙7に係合する。
【0044】
繊維ストリップ8が所望の厚さ13までキャビティに挿入された後で、繊維補強されたロータボディ用の母材として用いられるポリマー14がキャビティ11に導入される。ポリマー14は、好適には熱硬化性樹脂、エラストマ又は熱可塑性樹脂、例えば合成樹脂もしくはエポキシ樹脂、又はセラミック材料である。択一的に、前製作された繊維ストリップは、既にポリマーに含浸されていてよい。
【0045】
繊維ストリップ8は、このようにしてポリマー母材14に埋入される。この場合、ポリマー14が、温度及び/又は圧力上昇により硬化される。キャビティ11は、そのために加熱され、キャビティ11内にある繊維ストリップ8は例えば雄型15により圧縮される(図5)。
【0046】
繊維ストリップ−ポリマー−複合体の硬化後に、形成されたロータボディ16がキャビティ11から取り出される。製造されたロータボディ16は、環状かつディスク状であり、円状に配置された多数の収容部17を有する。収容部17は、位置ホルダ12により空けておいた箇所に位置する。
【0047】
収容部17には最終的に磁石が導入され、磁石は、収容部内で位置固定され、例えば収容部17に接着される。
【0048】
本発明により、連続する1つの製造プロセスにおいて収容部17を有するロータボディ16を製造することが可能になる。ロータボディ16に磁石用の収容部17を穿孔する、切削する、フライス加工する、水ジェットを行う又はその他の方式で形成する、従来必要であった方法ステップは、省略される。
【0049】
本発明の別の態様では、図4に示された方法ステップにおいて、完成したロータボディ16に配置すべき磁石が位置ホルダ12として使用される。磁石は、上述の態様のように、キャビティ11内で所望の位置に位置固定される、又はシフトシステムにより、z軸の方向で空隙内にシフトさせられる。この場合、可動の位置ホルダは、キャビティ11の下半部に又は雄型15にシフトさせることができる。
【0050】
キャビティ11へのポリマー14、例えば合成樹脂の充填/注入後に、もしくは真空注入により、繊維ストリップ8とポリマー14とから成る複合材料の圧縮及び硬化後に、磁石は、不動にロータボディ16に埋入されていて、繊維ストリップ8と共に封入されている。本発明のこの態様では、ロータボディ16と磁石とから成る完全なロータは、連続的な1つのプロセスで製造することができる。
【0051】
本発明に基づいて製造されるロータボディ16は、好適には、ロータとして、電動モータ又は発電機、例えば横方向磁束機械に使用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6