(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凝集剤が、(i)アクリル酸のホモポリマー、(ii)アクリル酸とアクリルアミドとのコポリマー、(iii)ヒドロキサム酸部分を含むように変性された、アクリル酸とアクリルアミドとのコポリマー、および(iv)アクリル酸アンモニウムを含むように変性された、アクリル酸とアクリルアミドとのコポリマー、および(v)それらの任意の組み合わせ、からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
以下の定義は、本出願で用いられる用語、特に特許請求の範囲が、どのように解釈されるかを決定するために示される。この定義の組織化は、利便の目的のみであって、いかなる特定の範疇に対するいかなる定義を限定するものではない。
【0008】
「浄化槽」とは、赤泥浄化のために用いられる分離デバイスを意味し、これには、濃縮槽、沈降槽、または洗浄槽が挙げられる。
【0009】
「本質的に〜からなる」とは、この方法および組成物が、追加のステップ、構成要素、成分などを包含し得るが、ただしこの追加のステップ、構成要素および/または成分が、この特許請求された方法および組成物の基本的かつ新規な特徴を本質的に変更しない場合のみであることを意味する。
【0010】
「デキストラン」とは、多糖類の骨格単位に連結された側鎖1−3を有するα−D−1,6グルコース−連結グルカンであるとして特徴付けられる多糖類である。
【0011】
「遠位(の)」とは、「近位(の)」の反対であって、連続的なプロセスにおいては特定のステップの後に続くことを意味する。
【0012】
「凝集剤」とは、微細に分割された懸濁粒子を含有する液体に添加された場合、粒子間の架橋の機構を通じて固体を不安定にしかつ凝集させる物質の組成物を意味し、これは低い電荷密度および高い分子量(1,000,000を超える)を有する場合がある。
【0013】
「グリーン液(Green Liquor)」とは、安全濾過(Security Filtration)段階を通過して、もはや赤泥を含まないアルミナ含有溶液を意味する。
【0014】
「溶液」または「バイヤー液(Bayer liquor)」とは、産業上の施設においてバイヤー法のプロセスを通り流れた、腐食性で液状の媒体を意味する。
【0015】
「多糖類」とは、単糖からなる複数の反復性の単位を有している多量体の炭水化物を意味し、多糖鎖中の2つの結合した単糖単位の間で形成されたC−O−C結合は、グリコシド結合と呼ばれ、単糖の連続した縮合は、多糖類を生じる。一般的な多糖類はアミロースおよびセルロースであり、両方ともグルコースの単量体からできている。多糖類は、直鎖を有しても、または分岐したポリマー骨格を有してもよく、これは1つ以上の糖の単量体を有している。多糖類中の一般的な糖の単量体としては、グルコース、ガラクトース、アラビノース、マンノース、フルクトース、ラムノース、およびキシロースが挙げられる。
【0016】
「一次沈降槽供給物(Primary Settler Feed)」とは、第一の固体/液体分離段階に充填されたバイヤー法の温浸されたスラリーを意味し、これは、温浸されたスラリーに希釈液を加えた混合物であってもよく、この希釈液は、慣用的には、赤泥洗浄段階からの向流技術の洗浄水である。一次沈降槽供給物は、固体内容物、溶解アルミン酸ナトリウム内容物および総アルカリ度に関する組成の点で、その後の浄化段階または赤泥洗浄段階で浄化および/または分離に供される溶液またはスラリーと異なっている。さらに、この一次沈降槽供給物はまた、その不溶性画分が初期の凝集処理を受けなかったという点でも、その後の浄化段階または赤泥洗浄段階で浄化および/または分離に供された溶液またはスラリーと異なっている。
【0017】
「近位(の)」とは、「遠位(の)」の反対であって、連続的なプロセスにおいては特定のステップの前を意味する。
【0018】
「赤泥(Red Mud)」とは、不溶性の固体物質であって、温浸段階の間に自由に溶解しない、バイヤー液からの残留生成物であるか、または温浸プロセスの一部として沈殿する、固体物質を意味する。赤泥は、酸化鉄(この泥は通常、これに由来して赤褐色となる)、アルミナ、シリカ、酸化ケイ素、酸化カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウムおよび/または酸化チタン(バイヤー法へ投入される鉱石に特有の組成に基づく)、並びに、バイヤー法の赤泥スラリーの液相の一部であり得る、温浸溶液からの腐食剤および他の物質を、含んでもよい。
【0019】
「流動性」とは、流動する物質の流速と、弾性、粘性および/または可塑性の特性との相互の関係を意味する。
【0020】
「スラリー」とは、微細な固体粒子がその中に分散または懸濁されている液体媒体を含む混合物を意味する。
【0021】
「濃縮槽(thickener)」または「沈降槽(settler)」とは、スラリーの固体−液体の分離を果たすために用いられる容器を意味し、これには凝集剤が添加される場合が多い。この容器は、スラリーを受容し、スラリーの固体部分を下向きに沈降させて(アンダーフロー)、スラリーのより液状の部分(オーバーフロー)から離すことを可能にするのに十分な時間スラリーを保持し、このオーバーフローをデカントし、アンダーフローを取り除くように、構築されかつ配置されている。濃縮槽のアンダーフローおよび濃縮槽のオーバーフローを、フィルター上に通過させて、固体を液体からさらに分離する場合が多い。
【0022】
「洗浄槽(washer)」とは、向流式デカンテーションを利用して、物質をアンダーフロー(典型的には洗浄槽の底部で高度に濃縮された懸濁物)と、オーバーフロー(典型的にはこの装備の頂部での浄化された液状流れ)とに分離することによって、液体からの赤泥の固体−液体分離を果たすために用いられる容器を意味する。向流を達成するために用いられる液体は、水であっても、溶液であっても、水と溶液との混合物であっても、またはバイヤー法の他のいずれかのプロセスからのオーバーフローであってもよい。
【0023】
上記の定義または本出願のいずれかに述べた説明が、通常用いられるか、辞書にあるか、または本出願中に引用により援用されている情報源に述べられている意味(明示的な意味または黙示的な意味)と一致しない場合は、本出願および特許請求の範囲の用語は、具体的には、本出願の定義または説明によるものであり、一般的な定義、辞書の定義または参照によって援用された定義には従わないと解釈されることが理解される。上記に照らせば、ある用語がある辞書によってのみ解釈されると理解され得る場合、その用語がKirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology, 第5版(2005), (Wiley, John & Sons, Inc.が出版)に定義されるならば、この定義が、特許請求の範囲におけるその用語の定義を支配するものとする。
【0024】
本発明の少なくとも1つの実施形態は、腐食剤およびアルミナの回収を向上するためにバイヤー法の赤泥スラリーを処理するという方法に関する。この処理は、沈降槽内で、およびウオッシュ回路内で生じ得る。この方法は、一次沈降槽供給物または洗浄槽供給スラリーを凝集剤と共に変性多糖類と組み合わせて接触させるステップを包含する。この方法は、濃縮された赤泥の流動性を調整して、洗浄回路の各々の容器中での、または一次沈降槽中での目標とされるべき、より高いアンダーフロー密度を可能にする。
【0025】
浄化段階における赤泥スラリーの流れは、多数の矛盾する特性に悩まされる。理想的には、沈降槽または洗浄槽のアンダーフローは、極めて高密度を有するべきである。このような高密度は、赤泥アンダーフローからの可溶性の腐食剤およびアルミナの極めて効果的な除去から生じ、そのため実際、赤泥が不溶性の物質しか含んでいない場合、有効である。しかし、アンダーフローの中の固体密度が増大するにつれて、スラリーの降伏応力もまた増大して、それによって実際にアンダーフローが浄化プロセスで用いられる設備を通って流れる能力は低減される。結果として、実際には、アンダーフローの密度は、それが有用なアルミナおよび腐食剤がそのアンダーフロー内に残っていることを意味するものであったとしても、濃度をある程度以下に低く維持しなければならない。これは費用のかさむ作業であって、所定の鉱石のサンプルから回収され得る実際のアルミナの量を、その理論的収量未満まで有意に下げる。
【0026】
さらに、一次沈降槽溶液中で形成された凝集スラリーの上にある上清中に残っている懸濁固体のレベルを低下することによって、オーバーフローのその後の浄化の間に濾過によって除去されるべき固体は、減少する。
【0027】
少なくとも1つの実施形態では、この方法は、アンダーフローが、固体密度の低いアンダーフロースラリーに関連する特性を有するように、洗浄槽(単数または複数)および/または沈降槽(単数または複数)を通過するアンダーフローの流動性(粘度、弾性および/または可塑性)を変更する。これによって、操作者は、回路の容器のうちの1つ、いくつかまたは全てにおけるアンダーフロー密度を増大することが可能になり、結果として、アルミナおよび腐食剤の抽出の効率が向上し、処理能力が増大する。
【0028】
少なくとも1つの実施形態では、回路の少なくとも一部を通過するアンダーフローは、この方法以外では、洗浄槽(単数または複数)および/または沈降槽(単数または複数)を通過できないか、または有意な量のエネルギー、労力および/または費用の投入によってしか通過できないような、顕著に高い密度を有する。
【0029】
適切な凝集剤は一般には、1,000,000を超え、および5,000,000を超える場合も多い分子量を有する。凝集剤は、陰イオン性であっても、陽イオン性であっても、および/または双性イオン性であってもよい。凝集剤の用量は、処理されているスラリーの特性次第であって、当業者によって経験的に決定され得る。一般には、必要な凝集剤ポリマーの用量は、供給スラリー(沈降槽または洗浄槽)の性質、および用いられる凝集剤の種類の両方に依存する。しかし、典型的には、用量の比率は一般に、赤泥1トンあたり、ポリマー固体に基づいて10〜500g/T、さらに好ましくは30−400g/Tの範囲内である。
【0030】
少なくとも1つの実施形態では、凝集剤は、(i)アクリル酸のホモポリマー、(ii)アクリル酸とアクリルアミドとのコポリマー、(iii)アクリル酸とヒドロキサム酸部分を含むように変性されたアクリルアミドとのコポリマー、および(iv)アクリル酸とアクリル酸アンモニウムを含みかつ包含するように変性されたアクリルアミドとのコポリマーからなる群より選択される。少なくとも1つの実施形態では、この凝集剤は、一千万を超える分子量を有する。
【0031】
同様に、陰イオン性の高分子凝集剤は、陰イオン性の単量体を用いて形成され得るが、特定の非イオン性ビニル添加ポリマーを変性して、陰イオンで荷電されたポリマーを形成することも可能である。この種類のポリマーとしては、例えば、ポリアクリルアミドの加水分解によって調製されるポリマーが挙げられる。
【0032】
凝集剤は、固体型で調製されても、水溶液として調製されても、油中水型エマルジョンとして調製されても、または水中の分散液として調製されてもよい。代表的な陰イオン性ポリマーとしては、アクリルアミドと、アクリル酸ナトリウムおよび/もしくは2−アクリルアミド2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)とのコポリマー、またはアクリルアミド基の一部をアクリル酸に変換するために加水分解されたアクリルアミドホモポリマーが挙げられる。
【0033】
少なくとも1つの実施形態では、多糖類は架橋されている。この架橋は、架橋剤で達成されてもよい。少なくとも1つの実施形態では、架橋は、少なくとも2つの部位のエチレン型不飽和を含んでいるか、または1部位のエチレン型不飽和および1部位の反応基、例えば、エポキシドまたはアルデヒドを含んでいるかのいずれかであるエチレン型不飽和モノマーに対する架橋剤の相互作用によって達成される。代表的な架橋剤としては、N,N−メチレンビスアクリルアミド、N,N−メチレンビスメタクリルアミド、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、N−ビニルアクリルアミド、ジビニルベンゼン、トリアリルアンモニウム塩、N−メチルアリルアクリルアミド、グリシジルアクリレート、アクロレイン、メチロールアクリルアミド、グリオキサール、エピハロヒドリン、ジアルデヒド、ジグリシジルエーテルなど、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。少なくとも1つの実施形態では、架橋剤は、ポリマーの重量に基づいて、約0.0001〜約10重量パーセント、好ましくは約0.0001〜約0.2重量パーセントの用量で架橋ポリマーに添加される。
【0034】
少なくとも1つの実施形態では、一次沈降槽供給物の凝集の際に、透明な溶液/泥の境界が形成され、徐々に沈降して、泥の層に積層する透明な溶液の上清の層が得られる。下部の泥の層は、凝集された物質を含む。積層している上清は、溶液であって、これはその後の濾過で分離される溶液であって、最小量の泥の固体しか含まない。本発明は、このような上清中の懸濁固体の量を減らし、それによって所定の純度のアルミン酸ナトリウム溶液を得るのに必要な濾過の程度を低減する。
【0035】
少なくとも1つの実施形態では、凝集剤および変性多糖類の組み合わせによって捕獲される固体は、シリカとカリウムとから構成される鉱物および固体をより多く含み、浄化槽のオーバーフローに出てくる固体はこのような物質を含む量が少なく、その結果、このような物質の選択的な凝集および沈降が生じる。
【0036】
少なくとも1つの実施形態では、高分子凝集剤および多糖類を両方とも一次沈降槽供給物に対して、水溶液として添加して、その一次沈降槽供給物内の各々の剤の迅速な分散を容易にする。
【0037】
少なくとも1つの実施形態では、この方法は、米国特許第6,365,116号、同第6,726,845号、同第5,217,620号、同第5,478,477号、同第5,387,405号、国際公開第99/29626号、並びに科学論文である「Step change improvements in underflow rheology by Berger A. et al., Proceedings of the 14th International Seminar on Paste and Thickened Tailings, pp. 135-141 (2011)」、および、「Effect of Surfactants on Bauxite Residues Suspensions Viscosity by Frost, R, et al. Colloids and Surfaces A: Physicochemical and Engineering Aspects, 292(1), pp. 21-26 (2007)」のうちの1つ以上に記載の、バイヤー法で用いられる組成物、装置および方法のうちの1つ以上のいくつかまたは全てに従って、および/またはそれらと組み合わせて、行われる。
【実施例1】
【0038】
前述は、以下の実施例を参照することによって、さらによく理解され得るが、以下の実施例は、例示の目的のために示すのであって、本発明の範囲を限定する意図ではない。
【0039】
赤泥沈降試験を行って、標準的な陰イオン性の凝集処理に対する架橋多糖類の添加の有無によってオーバーフロー液の透明度および沈降速度に対する効果を評価した。これらの試験は、既知量の凝集剤溶液(および必要に応じて多糖類)を、バイヤー法の赤泥スラリーを含んでいるシリンダー中に混合するステップを包含した。混合の後、このシリンダーを沈降させて、所定の期間後、シリンダーの表面の溶液を採取し、濾過して、その濾過された残渣を秤量した。その溶液の透明度を、オーバーフロー固体に関して、1リットルあたりのグラム数によって記述する(本質的に、オーバーフロー固体が低いほど、化学的な処理の方法は有効になる)。
【0040】
[実施例1]
プラントの沈降槽供給物のスラリーのサンプルを、市販の100%の陰イオン性ラテックス凝集剤の0.1%溶液と、変性(架橋)多糖類の13%溶液とを用いて処理した。この場合、変性多糖類はデキストランであった。表1は、(i)陰イオン性凝集剤および(ii)陰イオン性凝集剤および架橋多糖類の組み合わせによって凝集された赤泥スラリーについてのオーバーフロー固体を詳述している。スラリーに対する変性多糖類の添加は、30ppm程度の用量の比率であって、オーバーフロー固体における約50%の低下を生じた。オーバーフロー固体の実質的な低減は、40〜130g/Tという凝集剤の用量範囲に渡って達成された。
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例2]
変性多糖類の適用の方法を、凝集剤添加の前、凝集剤添加と一緒に、または凝集剤添加の後に変性多糖類を添加することによって評価した。この陰イオン性凝集剤および変性多糖類は、試験された方法として実施例1で用いられたものと同じであった。用いたスラリーはここでも、プラントの沈降槽供給物であった。表2は、オーバーフロー固体であって、試験の第一の設定として、変性多糖類が事前投与された場合および陰イオン性凝集剤と同時投与された場合のオーバーフロー固体を、また、試験の第二の設定として、陰イオン性凝集剤と同時投与された場合および事後投与された場合のオーバーフロー固体を、詳述している。この変性多糖類は、適用した全方法で有効であり、変性多糖類を追加することなく同じ用量の陰イオン性凝集剤を適用した場合と比較して、オーバーフロー固体を減少させた。
【0043】
【表2】
【0044】
[実施例3]
デキストランのような多糖類の使用は、以前に特定されており、赤泥沈降槽における透明性の助剤として陰イオン性凝集剤と組み合わせて用いられている(例えば、米国特許第3,085,853号に記載のとおり)。赤泥沈降試験を、上記のとおり行って、変性(架橋)多糖類の相対的な有効性を、同じ未変性の多糖類と比較して評価した。陰イオン性凝集剤および変性多糖類は、実施例1で用いたものと同じであった。この変性されたおよび未変性の多糖類の溶液は、各々の処理に同じ量の多糖類を含んでいた。表3は、(i)陰イオン性凝集剤および架橋デキストラン、および、(ii)陰イオン性凝集剤とデキストランの組み合わせで処理した赤泥のオーバーフロー固体を詳述している。この実施例では、市販の100%の陰イオン性凝集剤をやはり用いたが、これは実施例1および2で用いたものとは異なる製品であった。
【0045】
【表3】
【0046】
このデータによって、変性多糖類を添加することは、未変性の多糖類の使用と比較してオーバーフロー固体の減少にとって驚くほど有効であることが実証される。
【0047】
[実施例4]
前の実施例で記載されたとおり行った沈降試験から得られた固体の分析を完了して、変性多糖類の適用によって除去された固体の性質を決定した。赤泥沈降試験は、市販のヒドロキサム酸化された陰イオン性凝集剤と、架橋多糖類の追加の適用の有無の両方との組み合わせを用いて完了した。処理および得られたオーバーフロー固体を表4に列挙する。
【0048】
【表4】
【0049】
さらに、オーバーフロー固体のサンプルを収集し、乾燥して、X線蛍光分光法(XRF)に供して、オーバーフロー中に存在する元素組成を決定した。表5は、処理されたサンプル中で分析した元素の量および相対的な変化をある範囲で示す。驚くべきことに、架橋多糖類での処理によって、オーバーフロー固体に現れてくるシリカおよびカリウムを含む鉱物が有意に減少する。鉄、チタンおよびカルシウムのような他の元素の相対量の減少と比較した場合、処理されたサンプル中のシリカおよびカリウムは大きく低下する。これによって、変性多糖類は、シリカおよびカリウムの含量が高い場合もある、不溶性の鉱物を除去するのに選択的であることが示される。このような鉱物の例は、白雲母または雲母である。
【0050】
【表5】
【0051】
[実施例5]
Imhoff(インホフ)コーンを用いるレーキ集泥(raked)沈降試験を行って、凝集された赤泥の流動特徴および流動性に対する凝集剤/変性多糖類の組み合わせの効果を評価した。これらの試験は、バイヤープラントの最終洗浄槽の供給物の赤泥スラリー1リットルを、既知量の従来の凝集剤溶液および変性多糖類溶液とシリンダー中で一緒に混合するステップを包含した。混合後、スラリーを直ちに、Imhoffコーンに移し、次いでそのスラリーを、特定の泥のベッド容積にレーキにより集泥した(ベッドのアンダーフロー密度を、ベッド容積および既知の供給物の固体濃度から算出した)。次いで、Imhoffコーンプラグを解放して、濃縮スラリーをコーンから排出するためにかかる時間を測定した。スラリー全体の解放に必要な時間は、泥の流れの能力(または流動性)の指標である。この排出時間を、凝集剤単独で処理した供給スラリー(沈降槽および洗浄槽の回路についての「標準」プロセス)と比較した。排出の速度が速いほど、泥のアンダーフローの流動性および最終的には濃縮槽のアンダーフローからのポンピングの特性が良好になる。
【0052】
表6は、凝集剤を用いた処理後、および凝集剤と変性多糖類との組み合わせを用いた処理後に、レーキ集泥Imhoffコーンからの濃縮赤泥スラリーの平均排出速度を詳述する。凝集剤用量は、100g/Tで一定に保持されるが、変性多糖類の用量(適用された場合)は3.75ppmであった。この場合、用いられる変性多糖類は、架橋デキストランであった。用いられた凝集剤は、市販されており、かつ洗浄槽中の赤泥沈降のために通常用いられる従来のポリアクリレート/ポリアクリルアミド凝集剤であった。
【0053】
【表6】
【0054】
従来の凝集剤を用いて処理されたスラリーを、21%を超える平均アンダーフロー密度までレーキ集泥した結果、プラグが取り外されたときに有効な流れが生じなかった。コーンの基部で、レーキ集泥された、圧密された泥の流動特徴が劣るせいで、Imhoffコーンからスラリーが効率的に排出することはなかった。
【0055】
これを、同じ用量の従来の凝集剤と一緒に、変性多糖類(3.75ppm)を用いて処理されたスラリーを、レーキ集泥した後に得られた結果と比較した。高い平均アンダーフロー密度の同様の範囲にまたがって、スラリーは制限なくコーンから排出された(約100mL/秒)。これは、対照の試験(凝集剤のみでの処理)と比較した場合、赤泥の流動特性における有意な増大である。
【0056】
別の試験では、泥を同様の方式(同じ凝集剤を同じ用量)で処理したが、変性多糖類の用量を、0.75ppmに低下した。23.8g/100mLという平均のアンダーフロー密度まで圧密された場合、19秒という排出時間(53ml/秒の平均排出速度)が記録された。これを表1のデータと比較すると、変性多糖類の添加なしでこの濃度までの泥の圧密は、フローを生じないと予測されるが、より高用量の変性多糖類(3.75)では明らかに、実質的に高い流速が生じる。
【0057】
これらの試験の結果、凝集剤と多糖類を組み合わせた、赤泥洗浄槽回路または一次沈降槽への添加によって、目的とするアンダーフロー密度を実質的に増大することが可能になり、さらに、アンダーフロー固体の流動特性を維持または増強できる。
【0058】
本発明は、多くの異なる形態で具現化され得るが、本発明の特定の好ましい実施形態が本明細書に詳細に記載されている。本開示は、本発明の原理の例証であって、例示される特定の実施形態に対して本発明を限定する意図ではない。本明細書に言及される全ての特許、特許出願、科学論文、および任意の他の引用物は、その全体が参照によって援用される。さらに、本発明は、本明細書に記載されるか、および/または本明細書に援用される種々の実施形態のうちいくつかまたは全ての任意の可能な組み合わせを包含する。さらに、本発明は、任意の可能な組み合わせを包含するが、この組み合わせはまた、本明細書に記載されるか、および/または本明細書に援用される種々の実施形態のうち任意の1つまたはいくつかは特に除外する。
【0059】
上記の開示は、例示的であるものとし、かつ網羅的ではない。この詳細な説明は、当業者に対して多くの変形および変更を示唆する。これらの全ての変更および変形は、特許請求の範囲内に包含されるものとし、ここでは「含んでいる」という用語は、「限定するものではないが、包含している」を意味する。当業者は、本明細書に記載される特定の実施形態に対して他の等価物を認識し得、この等価物はまた特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0060】
本明細書に開示される全ての範囲およびパラメーターは、そこに包含される任意のかつ全ての部分的範囲、および終末点の間のあらゆる数を包含することが理解される。例えば、「1〜10」という述べられた範囲は、1という最小値と10という最大値との間の(かつ包括的な)任意のかつ全ての部分的範囲、すなわち、1以上(例えば、1〜6.1)という最小値で開始し、かつ10未満(例えば、2.3〜9.4、3〜8、4〜7)という最大値で終わる全ての部分的範囲を含み、並びに最終的にはその範囲内に含まれる各々の数、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10を包含すると解釈されるべきである。本明細書における全てのパーセンテージ、比および割合は、別段特定されない限り重量によるものである。
【0061】
ここに本発明の好ましい実施形態および別の実施形態の詳細な説明を完結する。当業者は、本明細書に記載の特定の実施形態に対する他の等価物を認識し得、この等価物は、本明細書に添付の特許請求の範囲によって包含されるものとする。