(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記血糖値処理プログラムは、コントロールグリッドを視覚的に提示するよう前記ディスプレイを制御するように前記プロセッサを更にプログラムし、前記コントロールグリッド上に、低血糖リスク曲線及び血糖値変動曲線が示されるとともに、低血糖及び血糖値変動のリスク低減距離も示すことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
前記血糖値処理プログラムは、前記コントロールグリッド上に不確実性境界を視覚的に提示するよう前記ディスプレイを制御するように前記プロセッサを更にプログラムすることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
前記血糖値処理プログラムは、前記コントロールグリッド上に、高血糖曲線及び高血糖のリスク低減距離を視覚的に提示するよう前記ディスプレイを制御するように前記プロセッサを更にプログラムすることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
前記血糖値処理プログラムは、糖血症リスクを特定するに当たり、前記血糖値データに確率分布分析を行うように前記プロセッサを更にプログラムすることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
前記血糖値処理プログラムは、低血糖リスク曲線及び血糖値変動を時間スケールで視覚的に提示するよう前記ディスプレイを制御するように前記プロセッサを更にプログラムし、
それにより、前記時間スケールでの視覚的提示は、更なる所望の血糖値データを取得するために、SMBGテストスケジュールをいかに調整し得るかを示すことを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0029】
これより、同様の参照符号が全体を通して同様の要素を指す図面をより詳細に参照する。一態様では、本発明は、糖血症リスクを計算し視覚化するシステム及び方法を提供する。特に、本発明は、患者の異なる日時での低血糖、変動、及び高血糖の糖血症リスクを特定するシステム及び方法を提供し、血糖値レベルの変化がそれらのリスクにいかに影響を及ぼし得るかを調べ、表示できるようにする。本発明により、高血糖の低減、低血糖の低減、及び/又は血糖変動の低減が必要な1日のうちの期間を高速で識別することができる。
【0030】
本発明は、患者固有の基準に合うようにカスタマイズ可能な閾値に基づいて糖血症リスクを計算することにより、現状技術を改善する。開示される視覚化システム及び方法は、問題の高速表示を可能にし、血糖コントロールの評価及び治療介入についての選択肢において、患者及び非専門家介護者のトレーニングをサポートする。インタラクティブなコントロールは、日中の糖血症リスクへの異なる介入戦略の効果の表示を強化する。
【0031】
本発明は、血糖コントロールの3つの異なるパラメータに関連付けられた臨床リスクを計算することにより、糖尿病治療介入をガイドする手段を提供する:
1)低血糖リスク、
2)血糖値変動リスク、及び
3)高血糖リスク。
全てのケースで、臨床目標は、全てのリスク源を低減し、最終的にはなくすことである。これらの計算される視覚的表現は、問題エリアの素早く効率的且つ直観的な識別を可能にするために提供される。さらに、血糖値管理介入のインタラクティブシミュレーションを適用して、異なる治療手法の影響を示すことができる。
【0032】
「リスク低減量」の計算
低血糖値、高血糖値、及び血糖値変動という3つのパラメータに沿った臨床リスクの計算は、
図1に示される「コントロールグリッド」の概念を用いることによって可能になり、
図1は、糖尿病治療推奨をマッピングする際に使用するための、所与の血糖測定値セットでのメジアン−10パーセンタイル血糖値という差(「低範囲変動」又は「LRV」として定義される)に対して血糖値メジアンをプロットする。
図1は、様々なデータ要素を有するコントロールグリッド50を示す。
【0033】
図1のコントロールグリッド50は、行うべき計算をグラフで表すとともに、計算の定義に必要なターゲットの選択を示す。ターゲットの調整により、検討中の患者の異なる属性に従ってリスクを個人化することができる。4つの潜在的な閾値についてここで説明する:
1)ターゲットメジアン、
2)低血糖リスク曲線(hypoglycemia risk curve)(「低血糖リスク曲線(Hypo Risk Curve)」)、
3)ターゲット低範囲変動、及び
4)治療可能マージン曲線。
【0034】
ターゲットメジアン−ターゲットメジアン曲線は、血糖コントロールの全体レベルを表し、通常、大半の患者で125〜155の範囲である。低値は、腎臓、目、及び神経の疾患等の合併症の発生低減に関連付けられる。
【0035】
低血糖リスク曲線(hypoglycemia risk curve)(低血糖リスク曲線(Hypo Risk Curve))−低血糖リスク曲線52は、低血糖の理論的な一定許容可能量によって定義される。コントロールグリッド50上での左側に高い曲線の選択ほど、低血糖値合併症(低血糖無意識等)への通常よりも高い脆弱性の患者に対して示され、一方、右側に低い曲線の選択ほど、通常よりも低い脆弱性の患者(低血糖値アラームと共に連続血糖値モニタを使用することに起因して)又は急性低血糖値症状のトレードオフが、胎児の合併症の発症よりも好ましい妊娠等の他の高優先度目標を有する患者に対して示され得る。
【0036】
ターゲット低範囲変動−ターゲット低範囲変動線54は、調整可能であってもよく、又は固定されてもよい。調整可能な場合、ターゲットメジアン線58と低血糖リスク曲線52との交点56でのx軸値に制約され得るか、又はこの交点よりも下の値に配置することができる。全ての場合において、ターゲット低範囲変動線特徴は、左へ行くほど、血糖値変動以外の全てを等しく保持した状態での、血糖値変動に関連するリスクの増大を示す。現在、血糖値変動低減の長期恩恵についての直接的な臨床エビデンスは限られているが、コントロールグリッド50の状況では、低範囲血糖値変動の低減は、低血糖リスクを低減する手段である。
【0037】
治療可能マージン−「治療可能マージン」及び治療可能マージン曲線60の概念は、糖尿病治療が追加される場合に予期されるメジアン血糖値低減量である。これは、高血糖リスクの低減により、低血糖リスクに許容不可能な程の大きな増大が生じる、臨床リスク便益でのミスマッチに繋がる恐れがある治療を回避するために、「緩衝ゾーン」として機能することが意図される。典型的な治療マージンは、10mg/dL〜50mg/dLの範囲である。調整は、異なるタイプの治療又は特定の患者の既知の治療有効性に適切である。例えば、臨床経験により、糖尿病薬が、患者Aで単位投与量当たり平均低減5mg/dLを有するが、患者Bでは単位投与量当たり平均低減10mg/dLを有することが示され得る。
【0038】
図1を引き続き参照すると、コントロールグリッド50上の任意の点(x,y)を、セントロイド62又は治療推奨点(「TRP」)64のいずれか、又は異なるリスク計算ではこれらの組合せによって定義し得ることが考えられる。セントロイド62は、血糖測定値のサンプルから導出されるコントロールグリッド50上の確率の最も高いロケーション点として定義される。統計学的方法を使用して、セントロイド周囲の不確実性バブルを推定することができ、不確実性境界66は、許容可能な不確実性(例えば、95%確実領域を縁取る5%)を選択することによって定義される。代替的には、不確実性バブルの機能定義は、経験的に見つけることができる。治療推奨点64は、不確実性境界と、連続低血糖リスクの表面からの最高値低血糖リスク曲線との交点であるコントロールグリッド上の点として定義される。これらの定義から、(x,y)として定義されるコントロールグリッド上の任意の点で、3つのリスクカテゴリ又は「リスク低減距離」(
図2にグラフで示される)の計算を行うことができる。
【0039】
これより
図2を詳細に参照して、3つのグラフを提示し、各グラフはリスク低減距離を示す。左のグラフは、低血糖リスクの低減を示す。中央のグラフは変動リスクの低減を示し、右のグラフは高血糖リスクの低減を示す。特に、
左のグラフ−低血糖リスク低減距離(「低血糖RRD」)=7−xでの低血糖リスク曲線メジアン値(負の値のみ)。低血糖に関連する急性リスクにより、この場合、(x,y)はTRPとして定義し得る。
【0040】
中央のグラフ−変動リスク低減距離(「VRRD」)=最小[x−ターゲット低範囲変動,x−yでの治療可能マージン変動](正の値のみ)。
【0041】
右のグラフ−高血糖リスク低減距離(「高血糖RRD」)=最小[y−ターゲットメジアン,y−xでの治療可能マージンメジアン](正の値のみ)。
【0042】
低範囲変動(「LRV」)及び血糖測定値数でのみ変化する不確実性バブルの関数定義を使用すると、
図3に示されるコントロールグリッドになる。これより
図3を参照して、不確実性境界の機能形態を使用するコントロールグリッドを示す。このコントロールグリッドを使用すると、リスク低減距離は、以下により、セントロイドとして(x,y)を用いて定式化される。
【0043】
低血糖RRD=y−xでの低血糖リスク中曲線(負の値のみ)(
図4参照)。
【0044】
高血糖RRD=最小[y−ターゲットメジアン,y−xでの低血糖リスク中線](正の値のみ)(
図5参照)。
【0045】
VRRD=x−中変動線(正の値のみ)(
図6参照)。
又は代替として、VRRD及び高血糖RRDを相互に排他的にするために、
VRRD=最小[x−中変動線,x−yでの治療可能マージン変動](正の値のみ)(
図7参照)。
【0046】
代替のコントロールグリッド−臨床リスクの3つのパラメータを計算するための定義を所与として、異なる臨床手法を強調するために、特に変動の低減と高血糖の低減とのバランスをとるために、コントロールグリッド領域の代替の基礎形態を設計し得る。ゾーン定義の代替の一設計が
図8に示され、
図8は、ターゲットメジアン線まで低血糖リスク曲線に平行して治療可能マージン曲線を拡張する。この設計は、低範囲変動がより高いターゲットゾーンに近づくにつれて、高血糖の低減よりも変動の低減を強調する。これは、ターゲットゾーンを「行き過ぎ」て、結果として低血糖リスクが過度になる危険を低減するために好ましいことがある。
【0047】
図9及び
図10に示されるゾーン定義の別の代替の設計は、低範囲変動が増大するにつれて、治療可能マージン曲線を低血糖リスク曲線に近づけ、最終的には低血糖リスク曲線に等しくさせる。この設計は、より低いメジアン及び低範囲変動での変動低減を強調するが、より高いメジアン及び低範囲変動で高血糖低減を強調する。これは、低血糖値リスクよりも高血糖値への対処で急性化するリスクが低いと考えられる場合に適切であり得る。これは、治療可能マージン曲線をターゲットメジアン[線](
図9)又はターゲット変動線(
図10)まで拡張することで実施し得る。
【0048】
図11に示されるゾーン定義の更に別の代替設計は、治療可能マージン曲線を、低範囲変動が増大するにつれて、低血糖リスク曲線から離す。この設計は、より高いメジアン及び低範囲変動での変動低減を更に強調する。これは、低血糖値リスクよりも高血糖値への対処で急性化するリスクが高いと考えられる場合に適切であり得る。
【0049】
(x,y)を、セントロイド若しくは治療推奨点のいずれかにより、不確実性境界上の他の点若しくは異なるリスク計算ではこれらの組合せによって定義し得ることが考えられる。例えば、リスク計算を実行し得、次に、不確実性境界からの点を用いて2回目を実行して、リスク計算の信頼度について追加の情報を追加し得る。この不確実性は、数値(以下)又はグラフ(以下の「グラフ表現」参照)で表示することができる。例えば、
低血糖RRD=10mg/dL、95%信頼性境界35mg/dL
は、10mg/dLの増大が、セントロイドを低血糖リスク曲線の上に移動させ、一方、35mg/dLの増大が、TRPを低血糖リスク曲線の上に移動させることを意味する。
【0050】
グラフ表現
リスク計算が実行されると、リスク計算を素早く解釈するために、グラフで表示し得る。血糖測定値の性質に応じて、異なる時間セグメント中にリスクを計算することが適切であり得る。センサ導出血糖値の場合、リスクの1時間毎の特定を計算する可能性が高い。ストリップ導出血糖値の場合、1日のうち数回、例えば4回以上の時間にわたり、リスクの特定を計算する可能性が高い。
【0051】
センサからの1時間毎のデータが示される
図12及び
図13に示される提案される設計表示の一実施形態では、3つのリスク計算は、垂直に位置合わせされたバーとして示され、低血糖リスクは水平線の下にあり、一方、変動リスク及び高血糖リスクは線の上にある。本発明の一実施形態は、高血糖RDD及びVRRDを相互に排他的なものとして定義する。しかし、別の実施形態では、これらは一緒に計算され表示される(
図13)。
【0052】
SMBG又はセンサからの時間に基づく
図14に示されるリスク低減距離例のグラフ表現では、ストリップ導出血糖値が、4つの時間(患者が1日当たり5つの測定を実行した時間)でのリスク計算と共に表示される。さらに、不確実性は、より大きなリスク低減バー上の小さな「エラーバー」として表示される。
【0053】
インタラクティブ性、「シミュレーション」、及びユーザインタフェースコントロール
1組の血糖測定値に関連するリスク及びリスクが変化する潜在性をよりよく理解するために、追加のコントロールを設計した。これらのコントロールにより、データのインタラクティブな変更が可能であり、「仮説(what if)」状況を構築することが可能になる。これらにより、何の変更が異なるリスク源を増大又は低減し得るかを更に理解し得る。
【0054】
コントロール行動
一例として、4つのコントロールが提案される:メジアン調整、変動調整、最大メジアン調整、及び最小メジアン調整。これらは、例えば「スクロールバー」の形態をとり得る。加えて、コントロールが調整されると、追加の視覚的特徴をグラフに追加して、何がどれだけ変化しているかを強調し得る。例えば、「新しい」設定には実線の水平線、「前の」設定には破線の水平線、及び「前の」設定と「新しい」設定との間のスペースを満たす垂直の赤線。以下は、追加される視覚特徴を有する各コントロールの例である。
【0055】
図15は、視覚特徴が追加されたメジアン調整の表示を提示し、メジアン変更は−26mg/dLであり、変動変更は0%であり、最大メジアンは350mg/dLであり、最小メジアンは50mg/dLである。
【0056】
図16は、視覚特徴が追加された変動調整の表示を提示し、メジアン変更は0mg/dLであり、変動変更は−46%であり、最大メジアンは350mg/dLであり、最小メジアンは50mg/dLである。
【0057】
図17は、視覚特徴が追加された最大メジアン調整の表示を提示し、メジアン変更は0mg/dLであり、変動変更は0%であり、最大メジアンは140mg/dLであり、最小メジアンは50mg/dLである。
【0058】
図18は、視覚特徴が追加された最小メジアン調整の表示を提示し、メジアン変更は0mg/dLであり、変動変更は0%であり、最大メジアンは350mg/dLであり、最小メジアンは140mg/dLである。
【0059】
タッチスクリーンコントロール
タッチスクリーン装置の広く普及した利用に伴い、これらのコントロールをグラフ自体に埋め込み得る。例えば、1本の指をプロットエリアに置いてドラッグすることで、メジアン調整コントロールをアクティブ化することができ、ドラッグ移動の垂直成分はメジアン調整として適用される。2本の指をプロットエリアの「ピンチング(pinching:つまむ)」位置に配置することで、変動調整コントロールをアクティブ化することができ、「閉じる」及び「開く」ことで変動をそれぞれ低減及び増大させる。最大調整コントロールは、指をプロットエリア外の上に配置し、下に向けてドラッグしてプロットエリア内に入れることでアクティブ化することができる。同様に、最小調整コントロールは、指をプロットエリア外の下に配置し、上にドラッグしてプロットエリア内に入れることでアクティブ化することができる。
【0060】
そのようなタッチスクリーンコントロールは、矢印を有する黒い円により
図19に示される。特に、黒い円を用いて示される指の配置は、最大メジアン調整、最小メジアン調整、変動調整、及びメジアン調整を含む。他のコントロールも可能である。
【0061】
低血糖及び高血糖の特定に関するシステム及び方法を続けると、HbA1c及びCGMを使用して平均血糖値の改善された推定値も提供される。この態様では、CGMデータを使用して、平均血糖値とHbA1c結果との関係をより正確に記述する。HbA1cと平均血糖値との関係は、人によって様々である。これにも拘わらず、臨床医は1つの「母集団平均」式を使用して、一方を他方に関連させる。しかし、CGMデータは、平均血糖値の独立した良好な推定値をもたらし、これをHbA1c結果と連動させて、個人に合わせられた式を作成することができる。
【0062】
ACTは、グリコシル化された、又はグルコースの添加によって変性したヘモグロビンである。これは一般にHbA1c又はA1cとして知られている。これはグリコシル化ヘモグロビン
A1c又は糖化ヘモグロビンと呼ばれることもある。糖尿病のない人でのA1cの通常レベルは約4%〜6%である。
【0063】
HbA1cは、過去8週間〜12週間にわたる平均血糖値を示すテストである。その値は、割合単位で、以下の式:
平均血糖値(mg/dL)=28.7・HbA1c(%)−46.7 (1)
によってmg/dL単位の平均血糖にリンクされる。
【0064】
これは、人の母集団に基づく平均的な関係であり、個人の被験者での関係は大きくばらつく。しかし、平均的な関係からの個人の関係のずれは、時間の経過に伴って一定であると決まっており、平均血糖値の独立した推定値を得ることができる場合、計算可能である。
【0065】
個人の血糖値データが指スティックによって提供される場合、平均血糖値の良好な推定値を提供するのに十分な値がないことが多い。したがって、A1cテストの結果は、式(1)を介して平均血糖値に変換され、平均指スティック血糖値のチェックに使用することができる。任意の大きな不一致は、計測器の不正確性又は不十分なデータに起因するものである。
【0066】
代わりにCGMシステムが使用されて、データが収集される場合、平均血糖値をより確実に計算することができる。この値とA1cテストによって提供される値との大きな差は、式(1)からの個人のばらつきに帰することができ、式(1)への補正係数を推定することができる。この補正は、傾き及び/又はオフセットの変更という形態をとることができる。傾き及びオフセットを見つけなければならない場合、数ヶ月離れて行われる2つのA1cテストのうちの最小のものを使用しなければならず、これら2つのテストには同じ時間でのCGMも付随する。2つのテストが行われる場合、
G
1=m
*A
1+b及びG
2=m
*A
2+b (2)
を有し、傾き「m」及びオフセット「b」は、CGM平均血糖値「G」及び測定されたA1c「A」から特定することができる。3つ以上のA1cテスト及び同時に行われたCGMトレースがある場合、例えば、最小二乗によって一次多項式を当てはめることで、傾き及びオフセットが特定される。最小二乗計算での独立変数は、2つのうちのより正確な測定値である。
【0067】
傾き及びオフセットが与えられると、式(2)を使用して、それと同じ期間のA1c測定値に基づいて、個人の患者の平均血糖値を推定することができる。指スティックも利用可能な場合、加重平均を使用することによって血糖値を結合することができる。A1c測定値がいくつの指スティックに等しいかを推定する必要がある。これが行われると、平均の加重は明らかである。さらに、メジアン血糖値はこの時点で、容易に計算される。
【0068】
いかなる推定値も固有の不確実性を有する。CGMの使用が複数のA1cテストに一致する場合、変更された係数の不確実性は定量化することができる。いずれの場合でも、式(2)の使用により、測定されたA1cからの平均血糖値の続く推定がより正確になる。加えて、現在のA1cテスト結果が利用可能ではない場合、式(2)を「逆」に使用して、指スティック値からA1cのより正確な推定値を提供することができる。また、3つ以上のA1cテストが、同じ時間中のCGMと共に利用可能な場合、最小二乗技法を使用して、m及びbの最良な値を特定し得ることに留意する。また、平均血糖値とA1cとの関係を定義するために、2パラメータ線形モデル以外のモデルを使用してもよいことにも留意する。
【0069】
被験者が指スティックの使用に戻る場合、式(2)を使用して、平均血糖値のより正確な推定を行うことができる。これは、任意の続く分析で平均血糖値として使用することができる。これにより、変動のみの推定に向けて指スティックの使用を専用化することができる。指スティックのタイミングは、食事に相対して調整して、例えば、CGMの推定値に一致する変動の推定値を生成することができる。しかし、これは、平均血糖値の指スティックの推定を非常に不正確にすることがある。
【0070】
平均血糖値の指スティック推定がなお十分に正確である場合、A1cからの平均血糖値と、指スティックから導出される血糖値平均との不一致は、データ品質テスト又はデータ不十分性テストとして使用することができる。ずれの重大さは、式(2)の係数の推定での不確実性から特定することができる。
【0071】
本発明の更に別の態様では、CGMデータが確率分布に従うという観測に基づく糖血症リスクの理論的計算が提供される。
【0072】
変動は、低血糖及び高血糖のリスクファクタであることが分かっている。しかし、変動は特徴付け測定することが難しいため、特に治療投与量を決定する際に大方無視されてきた。本発明は、血糖値レベルが時間の経過に伴って確率分布を辿り、糖血症リスクを定量化するという観測を使用する。したがって、変動は、平均血糖値レベルと同じくらい重要であることが示される。
【0073】
血糖ターゲット範囲は、血糖値を測定し、血糖コントロールを促す一般的な方法である。下限未満の全ての血糖値レベルは、低血糖と見なされ、上限を超える全ての値は高血糖と見なされる。血糖値を使用して、低血糖及び高血糖のリスクを評価する多くの方法がある。本発明は、血糖値の仮定される分布を使用して、低血糖リスク及び高血糖リスクの理論的な測定値を計算する方法を記載し、時間相関及び偏り補正等の特定の拡張を考慮する。
【0074】
糖血症リスク計算は、2つの広いクラスに分けることができる:
パラメトリック及び
非パラメトリック。パラメトリック計算は、血糖値がある分布、例えば、対数正規又はガンマ分布に従い、データを使用して、分布のパラメータを計算すると仮定する。本発明者らは、最も実際的な分布が2つのパラメータ(通常、平均及び標準偏差)によって決まることを見出したが、定義するのにより少数又はより多数のパラメータを必要とする分布があり、それらの分布を使用することもできる。これらのパラメータから、全ての糖血症リスク推定値を導出することができる。非パラメトリック計算は、いかなる分布も仮定しない。リスク推定は、データから直接計算される。パラメトリック計算の利点は、妥当な推定を行うために必要なデータ量がより少ないことである。欠点は、データが仮定される分布に従わなければならないことである。
【0075】
パラメトリック推定を行うために必要なデータはより少ないが、そのようなモデルの信頼性を確立するためには比較的大きなデータセットが必要である。例えば、血糖値が正規分布に当てはまると思われる場合、仮説の確認に多くの被験者からの多くのデータをとる。CGMは、必要量のデータの収集を現実的なものにする。
【0076】
大半の糖血症リスク推定は、低血糖又は高血糖のいずれかで単一の閾値を超えるデータ点の蓄積率を含み、例えば、週毎の低血糖閾値を下回るデータのエリアを使用することができる。
【0077】
リスクの一般的な非パラメトリック式は、
【0079】
であり、式中、閾値(G
0)を超えるデータ点(G
i)のみが和に含められるが、収集時間は全てのデータ点を含む。指数nは、非負の値をとることができる。nの値が大きいほど、より極端なデータ点をより重く加重する。例えば、n=0の場合、閾値を超える全ての点は等しく加重され、Rは、閾値を超える点の割合である。n=1の場合、Rは閾値を超えるエリア蓄積率であり、点は閾値からの距離に従って加重される。
【0086】
ここで、P(x)は、データによって決まる分布パラメータを有する仮定分布であり、G
L及びG
Hは低血糖閾値及び高血糖閾値である。ここで、非パラメトリック式と同様に、nの値が大きいほど、より極端なデータ点をより重く加重する。なお、閾値を超えるデータ値がない場合、非パラメトリック式はR=0をもたらし、一方、パラメトリック式は常に正の結果を与える。
【0087】
上述した考察に従わない一対の非パラメトリック血糖尺度は、Boris Kovatchev and William Clarke,et al.,
Quantifying Glucose Variability in Diabetes via Continuous Glucose Monitoring:Mathematical Methods and Clinical Application,Diabetes Technology and Therapeutics,2005;7:849−862によって定義されるようなLBGI及びHBGIである。ここで、低血糖限度及び高血糖限度は112.5mg/dLで交わり、閾値からの距離の複雑な加重を和で使用する。この場合、同じパラメトリック式:
【0089】
を適用することができ、式中、f(x)は単一血糖値のLBGI関数である。R
Hの式も同様である。
【0090】
これまで、本書での式は全て、可能な時間相関を無視してきた。非パラメトリック法の1つの精巧さは、被験者を正常血糖値外であると見なす前に、閾値を超えて費やされる時間量が最小であると主張することである。これは、測定アーチファクトからの幾らかの保護も提供する。
【0091】
例えば、低血糖閾値が70mg/dLであると考える。被験者は、
・70mg/dL以下で60分連続、又は
・60mg/dL以下で40分連続、又は
・50mg/dL以下で30分連続、又は
・40mg/dL以下で20分連続
費やさない限り、低血糖になったと見なされない。ここで、10分のサンプリング間隔を仮定した。単一のデータ点は、それがいかに極値であろうとも、低血糖リスクに寄与することができない。一旦低血糖になると、閾値を下回る後続点はリスクに追加される。低血糖から脱するにも同様の制約があり、低血糖閾値を超える分離されたデータ点は、被験者を低血糖から出すことができない。
【0092】
パラメトリック式は時間を含まない。データは、分布パラメータ値の計算のみに使用される。したがって、時間相関をパラメトリック法に含めることはできない。
【0093】
パラメトリック法と非パラメトリック法との1つの重要な違いについて述べた:パラメトリック法はデータをより効率的に使用する。これより、この概念を拡大する。血糖値データを使用して、血糖値リスクの推定を行う。推定の概念に固有なのは不確実性である:推定が「真」にどの程度近いと期待するか。密にサンプリングされたデータを有する場合、非パラメトリック式を使用して任意の定義リスクの真の値を計算することができる。
【0094】
このデータの比較的疎なサブサンプルが利用可能な場合、リスクの推定を行うことができる。データ点の数が低減するにつれて、推定の不確実性は増大する。不確実性の大きさは、データ点の数の平方根の逆数として拡大縮小すると見られる。これらの非パラメトリック推定値は不偏である。幾つかの異なるサンプルが完全なデータセットからとられる場合、推定の平均は、推定値の数が増大するにつれて、又はサンプルサイズが増大するにつれて真に収束する。
【0095】
パラメトリック推定値は異なる。所与のサンプルサイズの推定値の不確実性は、非パラメトリック推定値の場合よりも低いが、パラメトリック推定器は、不偏ではないことがある。これは、全データが使用される場合であっても該当する。偏りの値は、多くのデータ点を用いて非パラメトリック法を使用して真の値が見つけられると仮定することによって見つけることができる。この「真」は、1日の特定の部分中に収集された特定数の点を使用してパラメトリック法から得られる結果と比較される。本発明者らは、偏りがサンプルサイズ及び日時の関数であることを見出した。この偏りの補償は、パラメトリック推定値の精度を上げる。
【0096】
データ収集コンプライアンスは常に問題である。比較的少数のサンプルを用いて有用な結果を得る能力は、重要な利点である。パラメトリック法を使用することに加えて、各データ点から最高を得るために、構造化テストプロトコル(STP)を使用することもできる。STPを用いる場合、テストの好ましい時間、1日当たりのテスト回数、及び日数を定義する。テスト時間は、食事に相対して、又は時計によって定義することができる。朝食前から夕食4時間後までの1日当たり8回のテストを7日間にわたって試みた。1日当たり4回のテストも7日間にわたって試みた。点の数が半分になると、不確実性が増大するが、結果はそれでもなお臨床的に有用である。
【0097】
したがって、パラメトリックモデルは、非パラメトリックモデルよりもデータの使用において効率的であり、妥当な日数で指スティックの構造化テストプロトコルを用いて有用な予測を得ることが可能である。CGMデータは、多数のデータ点を提供することにより、パラメトリックモデルの構築を可能にする。
【0098】
本発明の更なる態様は、CGM装着からの結果に基づいてSMBGテストスケジュールを調整することを含む。本発明は、CGM装着の短期間の結果を使用して、CGMデータの分析によって発見される変動リスク及び低血糖リスクの高い期間にフォーカスするSMBGテストスケジュールを生成する。本発明は、SMBGテストスケジュールを変動リスク及び低血糖リスクの高い期間にフォーカスすることにより、SMBGテストの有用性を最大化する。
【0099】
SMBGテストスケジュールに伴う問題の幾つかは、患者のコンプライアンス及び限られたデータである。患者は、BGテストは痛みがあり得、不都合であることがあるため、SMBGテストスケジュールに準拠しないことがある。コンプライアンスを最大にするために、SMBGテストスケジュールは一般に、少数だけのSMBGテストで、短期間にわたって行われる。これは、第2の問題である限られたデータに繋がる。血糖値テストスケジュールは比較的少数のデータセットを生成し、これは、計算されるメジアン血糖値、計算される低範囲変動、及び計算される低血糖リスクに高い不確実性を導入し得る。不確実性が高いほど、低血糖リスクの回避を保証するために、治療推奨の積極性は低くなる。
【0100】
さらに、小量のデータを収集することに起因する別の問題は、SMBG測定値が、少数の短時間又は長時間にフォーカス可能であるが、両方にフォーカスすることができないことである。例えば、SMBGテストスケジュールは、固定時間、例えば、食後1時間でのメジアン及び変動にフォーカスし得、患者は、1〜2週間にわたり、毎日、スケジュールされた食後1時間でテストを実行する必要がある。そのようなテストスケジュールを用いる場合、メジアン及び低範囲変動は、比較的正確に計算することができるが、スケジュールされた各食後の1時間だけである。他の時間(毎食後2時間等)についての情報は略分からない。代替的には、SMBGテストスケジュールは、プログレッシブスケジュールに従うことができ、患者は、1日の様々な時刻でテストする必要がある。例えば、スケジュールは、患者に、1〜2週間にわたり、ある日は7:00AM、11:00AM、3:00PM、及び7:00PMでテストし、次に、翌日は8:00AM、12:00PM、4:00PM、及び8:00PMでテストするように求め得る。このタイプのSMBGテストスケジュールは、テストされる期間全体中のメジアン及び低範囲変動の比較的正確な描写を生成することができる(備考:患者が、来る日も来る日も睡眠時間中にテストを必要とするテストスケジュールに準拠する可能性は低い)が、メジアン血糖値、低範囲変動、及び低血糖リスクの計算は、任意の特定の日時で非常に高い不確実性を有する。
【0101】
本発明は、短期間の連続血糖値モニタ装着によって発見される問題の時間(変動又は低血糖リスクが高い時間)にフォーカスするように、テストスケジュールを調整する。これは、SMBGスケジュールが短くてよいため、限られたデータ及びコンプラインスの問題に対処し、したがって、より大きなコンプライアンスに繋がり、収集されるデータは重要なデータであり、限られたデータ供給からより多くの値を導出する。さらに、対象となる時間を識別することにより、短い時間にフォーカスするのが適切なとき及びどの時間にフォーカスするのが適切か並びにより長い時間にフォーカスするのが適切なときの識別を支援することができる。
【0102】
SMBGテストスケジュールは、HCPが治療及び生活習慣変更に関して患者に推奨することができるように、データを収集するために、HCPによって患者に割り当てられる。このSMBGテストによって確認することができる主要尺度は、メジアン血糖値、低範囲変動、及び低血糖リスクである。通常、主要な治療目標は、患者が低血糖でかなりの時間を過ごすリスク又は深刻な低血糖発生を経験するリスクを回避しながら、患者のメジアン血糖値を下げることである。患者の低範囲変動が高いほど、患者が、低血糖のこれらの発生を回避するために維持する必要があるメジアン血糖値は高くなる。
【0103】
連続血糖値モニタも、患者のメジアン血糖値、低範囲変動、及び低血糖リスクを測定するために、HCPにより患者に与えられる。連続血糖値モニタを使用することにより、離散血糖値(「BGM」)テストに関連する問題の大半に対処することができる。連続血糖値モニタを用いる場合、通常、患者のコンプライアンスに伴う問題はない。非常に短い時間で、通常、1時間と短時間で、低範囲変動を測定するのに十分なデータがある。さらに、CGMシステムは、患者が睡眠中もデータを提供する。連続血糖値モニタの欠点は、比較的高価であり、不快なことがある可能性があり、患者が通常、置を常時装着しなければならず、多くは装置を常時装着することを非常に嫌がることである。
【0104】
本発明は、HCPが短時間のみ、連続モニタを指示すると推量する。本発明は、CGM装着からの結果を使用して、CGMデータの分析によって識別される対象となるエリア(通常、低範囲変動又は低血糖が高い時間)をターゲットとする特定のSMBGテストを調整することが提案する。調整されたSMBGテストスケジュールを使用して、HCPによって指示される生活習慣又は治療の変更の効果をモニタリングし得るか、又は調整されたSMBGテストスケジュールを使用して、単に、進行中の問題をより密にモニタリングし得る。
【0105】
備考:下記の場合、プログレッシブ及び固定時間SMBGテストスケジュールの使用が述べられる。下記の事例の多くは、全てのテストを特定の時間に限定する。これらの場合、全体テスト数が増大しないため、時間当たりのテスト数を増大することはあまり面倒ではないことがある。
【0106】
CGM結果により識別される生じ得る問題及びSMBG調整テストスケジュール
1.
CGMにより識別される問題−CGMは、いかなる特定の日又は時間も区別しない状態で、低範囲変動及び低血糖リスクが1日を通して散乱することを識別する。
【0107】
調整−上述したプログレッシブSMBGスケジュールを割り当てる:患者に、1〜2週間にわたり、ある日は7:00AM、11:00AM、3:00PM、及び7:00PMでテストし、次に、翌日は8:00AM、12:00PM、4:00PM、及び8:00PM等でテストするように求める。
【0108】
2.
CGMにより識別される問題−CGMは、曜日に関して繰り返しパターンがない状態で、高い低範囲変動が特定の食事時間の間又は空腹期間中にあり、変動の時間を特に指定することができないことを識別する。
【0109】
調整−上述したプログレッシブSMBGスケジュールを付与するが、それを対象となる食事期間の間(又は空腹中)に限定する。幾つかの時間が変動を示さない場合、それらの時間内でテストを行う必要はなく、患者へのSMBGスケジュールがより短いか、又は代替的に、対象となる時間内でより多数のデータをスケジュール可能であり、したがって、より正確な結果を生成することを意味する。
【0110】
3.
CGMにより識別される問題−CGMは、低範囲変動が食事間の短い時間中に生じることを識別する。例:特定の食後の1時間。
【0111】
調整−対象となる時間のまわりに固定時間SMBGスケジュールを割り当てる。例えば、変動が昼食の約1時間後に生じる場合、テストをその特定の時間にわたって分散させるように求めるSMBGテストスケジュールを割り当てる。
【0112】
4.
CGMにより識別される問題−CGMは、1日のうちの特定の時間(例えば、午前4時〜午後5時)中、低範囲変動及び/又は低血糖リスクが高いエリアを識別する。
【0113】
調整−1〜2週間期間中、上記午後4時〜午後5時の時間帯内の様々な時間(例えば、3:45PM〜5:15PM)で行われるテストをスケジュールする。このテストの結果は、この時間中の患者の低血糖発生及び低範囲変動に関する比較的正確な情報を生成するはずである。なお、この概念は、重症の低血糖の深刻な頻繁な発生が検出される場合、睡眠時間中まで拡張することができる。重症の低血糖発生を頻繁に経験する患者が、睡眠中の昏睡及び死亡のリスクに起因して、睡眠中であってもテストする動機付けがなされると仮定する。例えば、対象の時間間隔が4:00AM〜5:00AMである場合、同様のSMBGテストスケジュールを作成することができる。この調整されたテストスケジュールを有することにより、睡眠中に起きる必要があるという不便さが制限される。
【0114】
5.
CGMにより識別される問題:CGMは、特定の曜日(例えば、土曜日)中に高い低範囲変動のエリアを識別する。
【0115】
調整−SMBGテストを対象となる日に割り当てる。例えば、患者に、5週間〜10週間にわたり週に1日(例えば、土曜日)テストするように求めるべきであり、テストは1日を通して様々な時間に散乱させる。
【0116】
6.
CGMにより識別される問題:CGMは、特定の曜日の特定の時間(例えば、土曜日の午後6時〜午後8時)中、高い低範囲変動又は低血糖発生のエリアを識別する。
【0117】
調整−SMBGテストを対象となる特定の日の特定の時間に割り当てる。
【0118】
7.
CGMにより識別される問題:CGMは、食事の食後ピーク時間を識別する。実施形態例:データを異なる食事セグメントに分割するか、患者の食事マーカー入力に頼るか、又はこれらの両方に頼る。各食事セグメントデータを分析して、ピークに到達するまでの時間の分布を得る。食事マーカーのないセグメントの場合、開始は、そのセグメント内の5パーセンタイル血糖値の平均タイムスタンプとして識別され、ピークは、そのセグメント内の95パーセンタイル血糖値の平均タイムスタンプとして識別される。
【0119】
調整−SMBGテストリマインダを、食事関連SMBG事象マーカー後の最適な持続時間に設定する。異なる食事時間には異なる持続時間設定が必要であり得る。
【0120】
8.
CGMにより識別される問題:CGMの分析により、特定の時間[絶対又は食事相対]での値、テストするのがあまり好都合ではない[例えば、夜間]将来の時間で観察される問題に相関する特定の時間での値の変動[特定の大きさ又は率の上昇/下降]等、テストするのが好都合なとき(例えば、起きている時間中)にとられたデータのパターンを見つける。
【0121】
調整−適切な時間での読み取りを促して、予測パターンの存在を確立し、読み取り値がパターンを検出する場合、将来の問題をより積極的に検出するか、又は回避するように行動する(例えば、即座の回避行動を示唆するか、又は予期される問題期間中にプロンプトをスケジュールする)。
【0122】
本発明の別の実施形態では、CGMテストの結果を使用して、メンテナンスSMBGテストスケジュールを調整し得る。メンテナンスSMBGテストスケジュールは、他のより総合的なモニタリングが行われていないときに患者が良好なコントロールを維持していることを保証するために使用されるのではなく、データが収集されていないされていないときに使用されて、患者の糖尿病の状態の診断を助ける。CGMテストの結果は、高い低範囲変動又は過度の低血糖リスクの少数の特定の日時を識別し得る。この場合、メンテナンススケジュールは、それらの特定の日時でテストするように調整することができる。
【0123】
図20は、本発明を実行するシステム及び方法
1100の一実施形態のブロック図である。この実施形態は、患者サイトにおけるモバイル装置又は静止装置に収容されるプロセッサ
1102と、プロセッサのプログラムに使用される1つ又は複数のプログラムを記憶する不揮発性メモリ
1104と、視覚出力の視覚的ディスプレイ
1106であって、この実施形態では、入力のためにタッチスクリーン
1108を有する、視覚的ディスプレイ
1106と、キーパッド等の手動入力に使用可能な他のタイプの装置のキーボード入力装置
1110とを含む。システム
1100は、出力又は表示装置としてのプリンタ
1112に接続され、リモートサーバ
1122と通信するためのデータ出力
1120を有する。一実施形態では、リモートサーバは、HCPによるリモートアクセスのために、患者のデータをメモリに記憶する。一実施形態では、データの処理は、患者のプロセッサで実行され、又はリモートサーバで実行してもよい。
【0124】
メモリ
1104は、この実施形態では、糖血症リスクを計算し視覚化するコントロールグリッドプログラム
1130と、平均血糖値の推定値を改善するCGM及びHbA1cプログラム
1132と、血糖値リスクを推定する糖血症確率プログラム
1134と、CGM分析及びSMBGスケジュール調整プログラム
1136とを含み、これらは全て詳細に上述した。他のプログラム及びデータベースを不揮発性メモリに記憶してもよい。別の実施形態では、1つ又は複数のプログラムは他の場所に記憶し得るが、プロセッサ
1102で実行し得る。他の構成も可能であり、本発明を実行する他のハードウェアバリエーションも可能である。
【0125】
血糖値データ
1150は、血糖値センサ
1152によって提供される。BGセンサ
1152は、連続血糖値モニタ(CGM)の形態をとってもよく、又はストリップリーダ等の他の形態をとってもよい。
【0126】
高度日常パターンリポート、24時間血糖値プロファイル、血糖コントロール測定値、エンジンモジュールの設計説明
前置き及び背景
連続血糖値データを使用して糖尿病治療判断指針を生成する連続血糖値(「CG」)分析方法論について説明する。本明細書に開示されるCG方法論は、血糖値メジアン、血糖値変動、及び低血糖リスクの関係を利用し、数学に基づき、コンピュータソフトウェアで実施することができる。この分析から生成されたリポートを使用して、糖尿病臨床医は、患者の全体的な血糖状況を素早く理解し、薬剤調整及びセルフケア挙動変更等の安全で効果的な治療変更を促進するように設計される結果を検討することができる。
【0127】
引用文献
Kovatchev,Boris et al.Assessment of Risk for Severe Hypoglycemia Among Adults With DDM:Validation of the Low Blood Glucose Index.Diabetes Care 1998,21,pp1870−1875、参照により本明細書に援用。
【0128】
AGP/CG分析リポート説明
「高度日常パターン」(ADP)リポートという名称の特定のリポートは、指定された時間にわたり特定の患者の連続血糖値(「CG」)データから生成される。このリポート100及び102の2つの例は、それぞれ同じA1c(7.7%)を有する異なる1型(「T1」)糖尿病患者についての
図21及び
図22にそれぞれ示される。これらの患者は同じA1cを有するが、第2の患者(
図22)ははるかに高い血糖値変動を有し、これは、リポートの上にある「24時間血糖値プロファイル」(AGP)プロット106において見ることができる。AGPは、第2の患者(第1の患者は104、
図21)の血糖値データでより広い拡散を示す。リポート108、110の下にある「血糖コントロール測定値」(GCM)表は、第2の患者の場合、表112の「メジアンを下回る変動」行に赤い「信号灯」を示す。図面では、赤色は、幅の広い平行線模様で示され、黄色は狭い平行線模様で示され、緑色の信号灯は、円内の「OK」で示される。AGP106及びGCM112は、第2の患者が第1の患者よりもはるかに高い低血糖リスクを有することも明らかにする;AGPは、70mg/dLよりも下がって延びる血糖値トレースを有し、GCMは、「低血糖値の可能性」行に赤色「信号灯」を示す。このリポートは、メジアン、血糖値変動、及び低血糖リスクの関係を明らかにする。
【0129】
ADPリポート100は、3つの主要構成要素で構成される:24時間血糖値プロファイル(AGP)プロット104、血糖コントロール測定値(GCM)表108、及び血糖値変動高が検出されるときの表示114。これらの構成要素は、糖尿病を有する人々に関連する日時期間116に分割される。
【0130】
AGP104は、選択された時間枠内の全ての日に基づく「通常」日116にわたって提示される血糖値読み取り値の10パーセンタイル、25パーセンタイル、50(メジアン)パーセンタイル、75パーセンタイル、及び90パーセンタイルのグラフである。AGPの下には、「通常」日での5つの時間118のそれぞれでの3つの血糖コントロール測定値を含む表110がある。
【0131】
低血糖値の可能性120は、低血糖値が許容可能なユーザ定義の閾値を超える確率である。
【0132】
メジアン血糖値122は、メジアン血糖値が、これもまたユーザ定義の設定であるメジアン目標を超えたときの表示である。メジアン血糖値はA1cに強く相関する。
【0133】
メジアンを下回る変動124は、メジアンを下回る血糖値データの拡散の測定値である。これは、時間中の50パーセンタイル血糖値読み取り値と10パーセンタイル血糖値読み取り値としての差として計算される。
【0134】
図23に示される高度日常パターンリポート104は、図に示される基準126に基づいて、血糖コントロール測定値を低、中、又は高として評価する。
【0135】
高度日常パターンリポート100の第3の主要構成要素は、変動高の表示である。
図21では、変動はいずれの時間でも高くないため、変動は強調表示されてない。
図1bでは、変動の高い日時期間が強調表示されている。
【0136】
評価表110の右下隅にある説明114(
図22)は、変動の重要性を明らかにしている。変動が十分に大きい場合、メジアン目標及び低血糖回避目標を同時に満たすことが重要である。変動に寄与し得るファクタとしては、偏食、薬剤が正しくないか、若しくは薬剤の非摂取、アルコール消費、活動レベルの変動、又は病気が挙げられる。
【0137】
高度日常パターンリポートは、以下の構成設定を有する。
【0138】
日常事象は、血糖コントロール測定値の分析に使用される日中の日時期間を定義する。分析前に、特定の患者の朝食、昼食、夕食、及び就寝の典型的な時間を定義することができる。これらの時間は、治療が食事事象及び睡眠事象を中心とされる糖尿病患者に臨床的に関連する日常の事象に対応する。就寝と朝食との間の夜間時間は、2つの期間に分割して、長い空腹期間を分割する。この方法論は、2つの夜間期間がそれぞれ6時間に制限されることを除き、これらの日時期間を3〜8時間の範囲に制限する。
【0139】
メジアン目標は、メジアン血糖値(目標と比較される)が低、中、又は高として報告される血糖値を定義する設定である。以下の設定が可能である。
【0141】
低血糖値許容は、低血糖値の可能性が低、中、又は高として報告される閾値を定義する設定である。設定選択肢は小、中、又は大である。このパラメータを増大させると、70mg/dL(3.9mmol/L)を下回る許容可能な低血糖値読み取り値の量が増大する。許容は、低読み取り値の頻度及び値の両方に基づく。これらの設定は概ね、以下に翻訳される。
【0143】
判断サポート方法手法
糖尿病臨床医及び患者にとって、血糖管理の難問は、2つの競合する目的のバランスをとることである:全体血糖値レベルを下げる一方で、これらの値を、70mg/dLであるべきとこの分析では定義される低血糖値閾値よりも上に維持する。正常血糖値レベルの1つの主要な分布は、血糖値レベルの「拡散」又は「変動」が、糖尿病を有する人と比較して低いことである。血糖値変動が高い場合、恐らくはインスリン等の薬剤を用いて、全般的に血糖値レベルを下げる工程がとられることで、より多くの血糖値レベルを70mg/dL未満に下げ得る。これは、より多くのレベルが70未満に下げずに全体血糖値レベルを下げるためには、状況によっては、血糖値変動を低減する必要があり得ることを示唆する。換言すれば、血糖値を下げる薬剤を安全に増大させるには、多くの場合、血糖値変動を低減する工程をとる必要がある。
【0144】
適切な血糖管理のために考慮する必要がある2つの重要な側面がある−a)全体血糖値レベルを低減する、及びb)血糖値変動を低減する。臨床医は、薬剤を処方するか、又は全体血糖値レベルの低減を目的とする食事療法及び運動を示唆することによって全体血糖値レベルの低減に対処する。変動に対処するためには、臨床医は多くの場合、血糖値レベルの異常な振れの原因であり得る自己管理挙動又は状況を識別しそれに対処しようとし、そのような挙動又は状況は、偏食、薬剤が正しくないか、若しくは薬剤の非摂取、アルコール消費、活動レベルの変動、又は病気を含む。自己管理挙動への対処は、血糖値変動を低減するメカニズムである。
【0145】
数学的枠組み
数学的枠組みを使用して、ソフトウェアにプログラムすることができるルールの作成に役立つ方法で判断サポート方法論を記述することができる。この枠組みの鍵は、時間にわたる各個人が、定常分布としてモデリング可能な血糖値読み取り値の母集団を有することを考慮することである。付録Aに記載のように、血糖測定値に適切な標準分布モデルは、ガンマ分布である。患者/期間毎に、この分布は、「中心傾向」尺度及び「変動」尺度によって特徴付けることができる。本明細書での方法論では、「メジアン」は、中心傾向の尺度として選ばれ、メジアンと10パーセンタイルとの差は、変動の尺度として選ばれた−ここでは、この変動測定値を「South40」又は略して「S40」と呼ぶことにする。パーセンタイル尺度は、平均及び標準偏差等の他の一般的な尺度よりも好ましく、その理由は、a)パーセンタイルは血糖値データで発生することが多い外れ値に対してよりロバストであり、b)AGPのパーセンタイル使用の一般性である。S40尺度は、四分位範囲又は90パーセンタイルと10パーセンタイルとの差等の他の「対称」測定値よりも、変動を表すために選ばれ、その理由は、ガンマ分布が非対称分布であり、付録Aに示されるように、ガンマ分布モデルが、低血糖値での血糖値読み取り値をより正確に表すためである。低サンプルサイズの場合、これらの尺度の推定値には偏り補正が必要である−これは付録Bにおいて説明される。
【0146】
この枠組みを使用して、血糖値メジアン、血糖値変動、及び低血糖リスクの数学的関係を記述することができる。この関係は、血糖値データを治療判断の標準化された指針に変換するルールに繋がる。2つの血糖値管理目標は当然、A1cに相関付けて示された血糖値メジアンと、低血糖リスクとで表される。血糖値変動は、これら2つに関連する第3の尺度であり、両目標を満たすべき場合には、血糖値変動に対処しなければならない。これらのルールは、プログラム可能であり、AGPモジュール計算のベースである。
【0147】
低血糖リスクの定義
メジアン、変動、及び低血糖リスクの関係を説明する前に、「低血糖」を数学的に定義しなければならない。本方法では、時間及び70mg/dLを下回る血糖値読み取り値の大きさの両方に依存する低血糖尺度を選択した−この尺度はAU70(「70mg/dL下のエリア」の略)と呼ばれる。AU70尺度は、
a)70mg/dLを下回る全ての読み取り値の全ての差(70mg/dL−読み取り値)の和を
b)全ての読み取り値の数で割ったもの
として定義される。
【0148】
低血糖のこの定義を本方法論で使用して、a)ガンマ分布モデルを使用して低血糖リスク曲線を計算し、b)これらの曲線を使用して、低血糖リスクをいかによく推定することができるかを評価する。これらの曲線の説明及び導出は、後に本文書において与える。
【0149】
ADPリポート100の生成に使用されるAU70尺度の値は「低血糖値許容」(LGA)設定と呼ばれる。上述したように、本方法論は、LGAに定義される3つの可能な設定を有する:これらのそれぞれは、3つの対応する低血糖値のリスク量についてのアルゴリズムを構成する。
【0150】
付録Cは、他の低血糖リスク尺度と、AU70尺度が何故、本方法論に選ばれたかとを考察している。
【0151】
メジアン、変動、及び低血糖リスク(Hypo Risk)(低血糖リスク(Hypoglycemia Risk))の関係
判断サポート方法論の鍵は、
図24に示されるメジアン−変動プロット130に示されるような、メジアン、変動、及び低血糖リスクの重要な関係の観測である。Juvenile Diabetes Research Foundation(「JDRF」)研究の最初の2週間からのデータを使用して、
図24、
図25A〜
図25E、及び
図26A〜
図26Cを作成した。
【0152】
図24では、y軸に血糖値メジアンがあり、x軸に血糖値変動(又はS40)があり、各患者/期間の点がプロットされ、期間は、複数の日数にわたる連続血糖値データの範囲を定義する。点は、患者/期間データを使用して計算される低血糖リスク尺度が、中設定の低血糖値許容を超える場合、黒丸132であり、その他の場合、点は白丸134である。図中のプロット130は、2つのゾーン:過度の低血糖に関連するゾーン及び許容可能な低血糖であるか、又は低血糖ではないことに関連するゾーンを定義可能なことを示唆し、メジアンと変動との組合せが低血糖リスクの良好な予測子であり得ることを示す−この観測を使用して、判断サポート方法論をいかに設計するかを以下に示す。
【0153】
メジアン−変動−低血糖リスク関係が、1日24時間全体を表す血糖値データを保持するだけではないことに留意することが重要である。この関係は、血糖値データが異なる日時期間にセグメント化される場合でも関係する。残りの導出は、血糖値データが糖尿病患者に関連する5つの日時期間にセグメント化されると仮定する−朝食前(デフォルト午前3時〜午前8時)、朝食後(デフォルト午後8時〜午後12時)、昼食後(デフォルト午後12時〜午後6時)、夕食後(デフォルト午後6時〜午後10時)、就寝後(デフォルト午後10時〜午前3時)。
図24のメジアン−変動プロットの生成に使用される血糖値データは、これらの日時期間にセグメント化されており、同様のメジアン−変動プロットが、
図25A〜
図25Eにおいてそれぞれ、これらのそれぞれについて生成された。これらの図は、過度の低血糖を有するメジアン−変動点と、許容可能な低血糖を有する点との同様の隔たりを示す。
【0154】
特に、
図25A〜
図25Eは、過度の実測低血糖を有するメジアン−変動点を黒丸132で示し、許容可能な実測低血糖を有するメジアン−変動点を白丸134で示す。各プロットの点は、朝食前(
図25A)、朝食後(
図25B)、昼食後(
図25C)、夕食後(
図25D)、就寝後(
図25E)の日時期間のそれぞれによってセグメント化される血糖値データから計算される。
【0155】
低血糖リスク曲線の定義
図24及び
図25A〜
図25Eに示される結果は、メジアン−変動プロットを2つのゾーン:「低血糖リスクが高い」ゾーン及び「低血糖リスクが低い」ゾーンに分けることが可能なことを示唆する。血糖値データのガンマ分布モデルを低血糖のAU70定義と共に利用して、これらのゾーンを分ける曲線を定義する。この曲線(「低血糖リスク曲線」と呼ばれる)の数学的導出は付録Dにおいて説明される。各低血糖値許容設定に1つずつ、3つの低血糖リスク曲線が、5つの日時期間のそれぞれに予め決定される。
【0156】
図26A〜
図26Cでは、3つの異なる低血糖値許容設定140、142、144の数学的に導出された低血糖リスク曲線が、朝食前期間について
図25A〜
図25Eのメジアン−変動点に重ねられて示される。これらの図は、ガンマモデルに基づく理論的な曲線が、各患者/期間点で計算されるAU70結果とよく一致することを示す。
【0157】
特に、
図26Aでは、LGA=大での朝食前の低血糖リスク性能が示される。
図26Bでは、LGA=中での朝食前の低血糖リスク性能が示される。
図26Cでは、LGA=小での朝食前の低血糖リスク性能が示される。
【0158】
低血糖リスク曲線の検出性能は付録Dに示され、中LGA設定では、感度は、5つの日時期間にわたり88%〜92%の範囲であり、特に77%〜89%の範囲である。
【0159】
備考として、S40尺度が血糖値変動を表すものとして選ばれた別の理由は、付録Eに示されるように、四分位範囲(「IQR」)等のより一般的に使用される対称変動尺度よりも良好な低血糖の検出子であるためである。
【0160】
低血糖値許容設定の理論的根拠
低血糖値許容設定に適切な値を特定することは、現在、この設定がどうあるべきかの臨床的指針がないため、難問である。インスリン治療に関する低血糖値許容設定の影響は、「小」設定が低い低血糖耐性に対応し、潜在的に保守的なインスリン治療に繋がり、一方、「大」設定が、高い低血糖耐性に対応し、潜在的に積極的なインスリン治療に繋がるようなものである。なお、ゼロリスクは可能ではなく、実際的でもない。臨床的指針がない状態で、本方法論は、臨床医が3つの可能な値のうちから1つを選択可能なように設計される。低血糖値許容設定のこれらの3つの値の理論的根拠は、付録Fにおいて説明される。付録Gでは、これらの3つの値の妥当性が評価される。
【0161】
コントロールグリッドの定義
図26A〜
図26Cは、メジアン−変動プロットを低血糖リスク曲線で隔てられた2つの「ゾーン」に分割可能なことを示した:上部ゾーンは「低血糖リスク低」ゾーン(150、
図26A)であり、下部ゾーンは「低血糖リスク高」ゾーン(152、
図26A)である。ゾーンのこの概念は、メジアン−変動プロットをいわゆる「コントロールグリッド」に変換するように拡張することができる。患者のCGデータセットの場合、コントロールグリッド上の点は、5つの日時期間のそれぞれで計算することができる。
【0162】
コントロールグリッド160の作成を
図27に示し、
図27では、6つのゾーンが示される。低血糖リスク曲線162は、上述したように、メジアン−変動プロット160を「低血糖リスク高」ゾーン164(曲線162の下)及び「低血糖リスク低」ゾーン166(曲線162の上)に分割する。「メジアン目標」168と呼ばれる水平線が追加される。メジアン目標は有用な治療ターゲットであり、その理由は、メジアンが患者のA1cと強く相関する−全血糖値レベルを低減しようとする場合、メジアン血糖値を使用して、全体血糖値を表すことができる−ためである。
【0163】
垂直線170が、メジアン目標線と低血糖リスク曲線との交点に追加される−この線は、変動高を変動低から分離する。変動高の臨床的関連は、定義により、高い低血糖リスクを生じさせずにメジアンをメジアン目標より下に低減することができない変動の程度であるというものである。
図27では、6つの異なるゾーンがここで、治療変更の方向を示唆する臨床的関連の血糖状況に従って識別されている。右下のグレーエリア172は可能ではなく、したがって、ゾーンとしてカウントされない。治療判断サポートの重要さは、コントロールグリッドに提供されるゾーンが、患者/期間の血糖値データを治療示唆にマッピングする基本であり得ることである。
【0164】
ゾーンの概念は、患者/期間の結果がゾーン境界に近い「中」ゾーンが可能なように更に拡張することができる。「最終」コントロールグリッド176が
図28Aに示され、これらの中ゾーンを含む。
【0165】
図28A、コントロールグリッド176
「低血糖リスク中」ゾーン178が提供され、これにより、a)データサンプルサイズの関数としてのメジアン及びS40推定の不確実性と、b)時間の経過に伴って自然に生じる典型的な患者のメジアン及び変動のばらつきとに起因する低血糖リスク評価での不確実性を考慮に入れる。低血糖リスク中ゾーンは、
図28Aでは幅の広い平行線模様で示され、上は中リスク曲線180を境界とし、下は低血糖リスク曲線182を境界とする。中リスク曲線の導出は付録Hに提供される。
【0166】
本願に添付される白黒の図面で使用される場合、赤色は幅の広い平行線模様として示され、黄色は狭い平行線模様として示され、緑色は円内の文字「OK」として示される。
【0167】
変動中ゾーン184はコントロールグリッド上に提供され、
図28Aでは、左側は変動中を表す垂直線186(破線)を境界とし、右側は変動高垂直線188(破線)を境界とする。中変動線はS40=35mg/dL(1.9mmol/L)において定義され、この値は、付録C、
図38に見ることができるように、糖尿病を有さない人々が一般にこの変動レベルよりも下であることを観察することによって決定された。
【0168】
中−高メジアン境界は、コントロールグリッド176に明示的に示されない。コントロールグリッドの点がメジアン目標線190の上にある場合、メジアン目標に対して中又は高のいずれかであると見なされる。本方法論は、コントロールグリッドの点が1日全体のメジアンよりも20%及び40mg/dLを超えて大きい場合、日時期間をメジアン目標よりも高いものとして定義する。この意図は、他の日時期間メジアンよりもはるかに高い場合のみ、高メジアン表示を有する目標よりも上の日時期間に注意を引くことである。
【0169】
血糖コントロール測定値表
図28Bの導出
コントロールグリッド176(
図28A)上の点は、任意の母集団の血糖値データに基づいて特定することができる。本方法論では、5つのコントロールグリッドが使用され、それぞれが特定の日時に関連するデータを表す。血糖コントロール測定値表194、
図28B内の結果の列は、対応するコントロールグリッドによって生成される−各列が日時期間を表し、この日時期間からのデータを使用して、対応するコントロールグリッド上の点を計算する。
【0170】
各コントロールグリッド176の点を血糖コントロール測定値表194の各列にマッピングするために使用される論理は、以下である。
低血糖値の可能性:
低血糖リスク中曲線の上にある場合、緑(OK)
低血糖リスク中曲線と低血糖リスク高曲線との間にある場合、黄色(狭い平行線模様)
低血糖リスク高曲線よりも下にある場合、赤(広い平行線模様)
メジアン血糖値:
メジアン目標線の下にある場合、緑(OK)
メジアン目標線よりも上にある場合、黄色又は赤
メジアン目標線よりも上にあり、且つ1日全体のメジアンよりも20%及び40mg/dL(2.2mmol/L)を超えて大きい場合、赤
メジアンを下回る変動:
低変動線の下にある場合、緑(OK)
低変動線と後変動線との間にある場合、黄色
変動高線よりも上にある場合、赤
血糖コントロール測定値表の解釈の仕方
GCM表の値は、潜在的な治療調整に直接マッピングするものである。以下の表に、インスリンを使用中の患者の治療に関するこのマッピングを示す。
【0171】
データ十分性
メジアン及びS40推定値は、読み取り値の数が低減するにつれて、患者の真の血糖値プロファイルを表す度合いが低くなる。各TOD期間の有効なメジアン及びS40推定値を計算するために必要な読み取り値の最小数を定義するルールは、推定に高度の確実性を達成することと、読み取り値が欠けていることへの耐性とのトレードオフである。
【0172】
任意のTOD期間のメジアン及びSouth40推定値の生成に必要な最小量のデータを定義するルールは、
a)TOD期間内で少なくとも10の合計血糖値読み取り値、及び
b)TOD期間内で少なくとも5つの別個の日からの読み取り値
である。
【0173】
TOD期間当たり10の読み取り値により、S40(すなわち、10パーセンタイル)を有意義に区別することができる。
【0174】
5日という境界の正当性を示すために、メジアン及び10パーセンタイルの予測可能性を様々な利用可能日数で調べた。JDRF研究からのナビゲータCGMデータを使用して、54人の各被験者の血糖値データを35日セグメントに群分けし、メジアン及び10パーセンタイルを計算した。これらの値は「真」として知られた。この真に先行するセグメントから、様々な日数を使用して、メジアン血糖値及び10パーセンタイルを推定した。これらの値は「予測」と呼ばれた。
図29は、血糖値読み取りの日数が低減するにつれて、メジアンの不確実性がいかに増大するかを示す。同様に、
図30は10パーセンタイルの不確実性の増大を示す。両プロットにおいて、全てのTOD期間及び全ての被験者の推定値を結合した。白丸196の曲線は、差の平均であり、黒い円の曲線及び線198は差のプラスマイナス標準偏差である。予測200及び202に使用された1日での不確実性が、予測204及び206に使用された35日での不確実性よりもはるかに広いことに留意する。
【0175】
血糖値メジアン差プロットでは、標準偏差は、mg/dL単位での予測メジアンの不確実性を表す。不確実性は、収集されるデータの日数が低減するにつれて増大する。最低日数の選択は、測定の不確実性をデータと、その日数のデータを収集するコストとのバランスをとる。
図29は、14日を超えると予測確実性の改善が極僅かであることを示す。図は、4日未満のいずれの持続時間でも、測定の不確実性がかなり急激に増大することも示す。5日は、予測の確実性とGCM利用可能性での制限との妥当な歩み寄りを表すため、臨床的関連での最低日数として選ばれた。5日での不確実性は、最小不確実性の2倍以下であり、5日にわたる有効な血糖値読み取り値は、1週間のセンサ装着中に容易に収集されるはずである。
【0176】
同じ特徴の多くが、
図30の血糖値10パーセンタイル差プロットでも明らかである。測定の不確実性は、日数が低減するにつれて増大する。ここでも、14日の後での改善は僅かである。ここでも、少ない日数では差が急激に増大し、5日最低が良好な妥協のように見える。
【0177】
データ十分性ルールは、利用可能な全ての有効データを利用するように設計され、その結果、大半の時間で最も正確なパーセンタイル推定値がもたらされる。
【0178】
コントロールグリッドの代替の実施形態
ここに、コントロールグリッド上に線を構築する代替の方法を記載する。コントロールグリッドは、2本の線で隔てられた3等級の低血糖(「低血糖値」)リスク:高、中、及び低を有する。これもまた2本の線で隔てられた3等級の血糖値変動がある:高、中、及び低。コントロールグリッドのこの新しい変形は、高と中との間の境界線と同じように、中と低との間も境界線を定義する。
【0179】
この時点では、コントロールグリッドは、
図59に示される5つの主線によって定義される。これらは以下である。
【0180】
1.
ターゲットメジアン線(水平)−被験者のメジアン血糖値をこの線よりも下にすることが望ましい。
【0181】
2.
高リスク低血糖線−この線よりも下のコントロールグリッド位置は、低血糖の過度のリスクを示す。この線上の全ての点は一定値の低血糖リスク尺度:70mg/dLという低血糖閾値未満のエリア−を有する
3.
極端変動線(垂直)−ターゲットメジアン線と高リスク低血糖線との交点に配置される。この線の右側のコントロールグリッド位置は、血糖値の過度の変動を示す。過度の変動は、ターゲットメジアンの下にあり、且つ過度の低血糖リスクに曝されないことを不可能にする。
【0182】
4.
中リスク低血糖線−この線よりも上のコントロールグリッド位置は、低血糖の大きなリスクがないこと、且つインスリン投与量を安全に増大可能なことを示す。この線は、高リスク低血糖線からの距離がSouth40の線形増加関数であるように選ばれる。したがって、中リスク線及び高リスク線が円錐形を形成する。中線の実際の位置は、95%の信頼度で、危険なエラー数を10%以下に保つように選ばれる。危険な判断は、「真」のコントロールグリッド位置が高リスク低血糖線よりも下にあるのに、中リスク低血糖線の上にあるものとしてコントロールグリッド位置を計算することとして定義される。この場合、推定値は、被験者の平均血糖値を安全に低減することができることを示すが、実際には、被験者の低血糖リスクは既に大きすぎる。
【0183】
5.
中変動線(垂直)−極端変動線の左側の、収集データ及び医療協力者からのコメントに基づいて妥当であるように見える位置に配置される。
【0184】
代替の実施形態では、
図60に示されるように、低血糖リスク中線及び中変動線が計算される方法が異なる。特に、中リスク低血糖線は、高リスク低血糖線のように真の低血糖線になっている。中リスクは、一定値の血糖値尺度(高リスク低血糖線よりも小さな値)によって定義することができる。さらに、中線のロケーションは、前と同じ要件、すなわち、推定値の10%以下が危険なエラーである95%信頼度を満たすように選ぶことができる。加えて、中変動線は、ターゲットメジアン線と低血糖リスク中線との交点に配置することができる。中変動線の右側のコントロールグリッド位置は、低血糖のリスクが極僅かな状態でターゲット血糖値未満になることを不可能にする。
【0185】
上述した両変更は、コントロールグリッドの構築及び解釈を簡易化する。2本の低血糖リスク線及び2本の変動線が、独自の方法で構築され配置される代わりに、ここでは、2対の線がある:一方の対は低血糖リスク線であり一方の対は変動線である。低血糖リスク線は、コントロールグリッドにわたって一定レベルの低血糖リスクを示す。関連する変動線は、低血糖リスク線とメジアンターゲット線との交点に配置される。したがって、ターゲット上にあり、且つ関連するレベルの低血糖リスクに曝されないことに準拠する最大量の血糖値変動を記す。
【0186】
血糖値データ品質の改善
モニタから検索される血糖値データの品質の改善は、被験者の糖尿病の苦痛のより正確で首尾良い管理に繋がり得る。血糖値メジアン及び血糖値変動のよりロバストな分析を行うことができる。従来、血糖値データは、無条件で収集され分析されてきた。これは、特定の状況(例えば、日時)が過大表現又は過小表現される場合、血糖値データの偏りに繋がった。次に、分析が基づく収集サンプルが、患者のデータ母集団を真には表さないため、これは不正確な分析に繋がった。
【0187】
この問題に対処するに当たり、患者の血糖値データスキャンのギャップを考慮すべきである。データの遡及的分析を行い、データスキャンでのギャップを識別すべきである。血糖値データをアップロードし、スキャンでのそのようなギャップについて分析すべきである。それらのギャップが識別されると、ギャップを低減することができる1つ又は複数のリマインダスケジュールが作成される。示唆は、患者の糖尿病の管理システムのHCPに提供される。この情報も患者の血糖値セルフモニタ(「SMBG」)機器若しくはシステム又は近い将来に最適なスキャンリマインダをセットアップするために患者のオンデマンドメーターに送信される。
【0188】
一例として、単純な高レベル時間概念に相対するヒストグラムスキャンパターンに起因するデータギャップについて、血糖値データの評価が行われる。時間概念の例は、曜日(例えば、月曜日)、日時(例えば、朝)、及び基本的な食事のマーカー(例えば、夕食)を含む。その評価から、最も頻繁なデータギャップに対応する、任意の高レベル概念に相対する理想的なリマインダ時刻の特定がなされる。一例として、土曜日等の特定の曜日に対応するスキャンギャップが識別されると考える。また、前のセンサ血糖値(「SG」)データによって特定される最良のスキャン時刻が土曜日の10:00AM前後であるとも考える。この情報は、患者のコンピュータ支援判断サポート(「CADS」)システムに記憶される。1つ又は複数の組のこれらの条件(例えば、「夕食後3時間」)は、新しい各組が前の組からの優先度のより低い条件になり、管理システムに記憶しプログラムされる。
【0189】
HCPは、患者にこれらの一般的な時間ギャップと、次回訪問時にギャップに対処するために血糖値データスキャンがいつ最良に実行されるかを通知する。この情報をリーダ又はInsulinxメータにアップロードする選択肢が与えられ、情報を示唆されるリマインダ設定として使用することが考慮される。例えば、患者は、新しいリマインダを追加し得、
図61に示される「血糖値チェック」230タイプのリマインダを選ぶ。
【0190】
図62は、血糖値管理プログラムへのリマインダの組み込みを達成するためのオンデマンドリーダ画面内のリマインダ編集メニュー232を示す。次に、「リピート」234及び「時刻」236フィールドは、最高優先度条件に基づいて事前に埋められる。
【0191】
ガンマ分布テスト−ガンマ(又は任意の他の)分布への当てはめの品質は、コルモゴルフ・スミルノフ検定、アンダーソン・ダーリング検定、又はカイ二乗検定等の幾つかの標準検定によって特定することができる。当てはめが良好であると見なされる閾値は大概、データ点の数の関数であり、経験的に見つけられなければならない。
【0192】
血糖値データスキャンギャップのリマインダについての更なる検討に関して、そのようなリマインダは、予め定義される間隔/固定された日時(例えば、午前7時、午後3時、午後11時)に表示して、完全なカバレッジを保証する。リマインダは、ギャップが間近であるとき(すなわち、非捕捉データ点がまさに上書きされるとき)は常に表示することもできる。
【0193】
プログレスは常に評価される。日時当たりの特定数のスキャンが要求される場合(例えば、朝4つ、昼間4つ、夕方4つ、夜4つ)、この目標に向かうプログレスは、要求される各スキャンのチェックボックスを用いて示される。プログレスは、数値又はグラフ(例えば、棒グラフ又は線グラフ)のいずれかで、各時間ビン(例えば、時)内にいくつの読み取り値があるかに更に細分することもできる。
【0194】
治療関連尺度を改善するためのデータ補間も実行されて、データ品質を改善させる。SGに基づくアーチファクト検出システム及び方法の幾つかは既に、ギャップが30分を超えない限り、何らかの形態の補間を実行している。これらのギャップを埋めることにより、離散事象をカウントする尺度の正確性を改善することができる。例としては、所定の閾値を下回る低血糖事象の持続時間の分布を追跡する尺度及び前の低血糖回復と、続く低血糖事象の開始との間の時間間隔を追跡する尺度が挙げられる。
【0195】
血糖値データの上述した管理、分析及び測定値の提示、並びによりロバストなデータの取得及び血糖値データの分析及び管理の他の結果の提供は、
図20に示されるシステム及び方法によって実行される。例えば、CGM分析プログラム
1136は、広い性質のものであり、高度日常パターン(ADP)リポート100、血糖測定値表108、及びコントロールグリッド28Aを提供するとともに、他のデータ計算を実行し、他の結果を提供し得る。
【0196】
付録A 血糖値分布モデル
本方法論の数学的土台は、血糖値データを統計学的分布として扱うことである。対数正規、ガンマ、及びワイブル分布は論理的な選択であり、その理由は、血糖値のように、いずれもゼロ又負の値を許さず、いずれも最大値を制限せず、全てが単一のピークを有し、全てが高血糖値に向かってスキューするためである。
【0199】
であり、式中、「a」は形状係数であり、「b」はスケール係数である。ガンマ分布及びワイブル分布は両方とも、a≦1で劇的な形状変化を経る。形状係数は、1よりも大きな値に制限される。
【0200】
対数正規分布は、ピーク値の両側で急激に降下する(指数(−x
2)に比例して)。これは、「裾の薄い分布」として知られている。逆に、ガンマはピークの両側で厚い裾を有する。ワイベルは、低い側で厚い裾を有する。高い側の裾は形状係数の値に依存する。これらの3つの分布から選ぶために、40日ホームユース研究(Home Use Study)からのデータを使用した。この研究は(最高で)40日のナビゲータを使用する125人の被験者からなる。処理済みの(10分)データのみが利用可能である。最初の20日はマスキングされ、次の20日はマスキングされない。
【0201】
この分析のために、研究データを、データがマスキングされたか否か及びデータがとられた日時に従って4つのカテゴリに分割した。日中は、午前8時〜午後10時の間にとられた全てのデータからなる。残りは夜間である。
【0202】
被験者毎に、カテゴリ内の全データが3つの分布に当てはめられ、R
2が計算されて、当てはめの良好性を特定する。
図31A〜
図31Dは4つのプロットを示し、R
2値は、被験者にわたって低から高にソートされて、全被験者にわたる分布を容易に比較できるようにした。プロットの横軸は被験者であり、1は全被験者に対応する。縦軸は、各被験者での当てはめのR
2である。したがって、よりよく当てはまる分布は1に向かってより素早く上昇し、その理由は、R
2の値が小さい当てはめが少ないためである。
図31A〜
図31Dは、3つの分布での125人の被験者のR
2を示す。対数正規分布は、ガンマ又はワイブルよりもはるかに悪い当てはめであることが示され、したがって、更なる検討から外される。
【0203】
図32は、ガンマ及びワイブル分布とデータのヒストグラムとの関係を示す。
図32では、ガンマ及びワイブル分布は、特定の被験者のデータヒストグラムに重ねて示され、プロット及びR
2値は、両分布モデルがデータに良好に当てはまることを示す。ガンマ分布は数学的に、特に指数の引数でより単純であるため、血糖値を表すために、ワイブル分布よりもガンマ分布が選択された。ガンマ当てはめの詳細は、分位点−分位点(QQ)プロットを使用することによってより詳細に説明することができる。このタイプのプロットでは、データへの良好な当てはめは、直線への良好な当てはめとして現れる。
【0204】
図33はガンマ分布のQQプロットを示す。
図33は、1人の被験者のガンマ分布当てはめを示す。なお、ローエンドでの当てはめはハイエンドの当てはめよりも良好である。これは典型的である。
図34は、全被験者でのデータ及び分布と血糖値との差の分布を示す。
【0205】
図34は、ガンマとデータとの差の平均±2標準偏差を示す。なお、大きな値の血糖値では、大半の残差は正である。これは、ガンマ分布とデータとの系統的な不一致を示す。低血糖値での良好な当てはめは、極度に低い血糖値事象は危険且つ比較的希であるため、重要である。したがって、血糖値範囲のローエンドを正確にモデリングする能力は重要である。
【0206】
ガンマ分布モデルは、本方法論では固定される低血糖リスク曲線を予め決定するためにのみ使用される。特に、メジアンとS40との関係のグラフでは、70mg/dLを下回る分布モデルの固定エリアを様々な値のメジアン及びS40で達成可能な曲線を定義することができる。この手法は、低血糖リスク曲線(付録E)の定義に関して本書の他の箇所で更に説明する。本方法論では、分布モデルが、個々の各個人/期間データセットのメジアン又はS40の推定値の特定に使用されないことを指摘することが重要である。パーセンタイルのパラメトリック推定が追加の偏りを生じさせるおそれがあるという懸案事項及びCGデータを用いる場合、良好な推定をするために多数の血糖値を予期するため、メジアン及びS40の推定値は、データから直接、非パラメトリックに特定される。
【0207】
付録B メジアン及びS40推定値の偏り補正
血糖値データの母集団からメジアン及びS40の最良の推定値を特定するために、どの条件下で、これらの推定値に偏りが存在し得るかを特定し、この偏りを補償することが重要である。偏りは、
・データが収集される日数、
・日時、及び
・タイムゾーンの持続時間
の関数であり得る。
【0208】
1年分のマスキングのないJDRFデータを使用して、偏りを推定した。各被験者からのデータを21日セグメント及び5つのタイムゾーンに群分けした。21日全てのデータ(各タイムゾーンで)を使用して、「真」の値を計算した。推定値は、1日から20日までの持続時間を使用して計算した。タイムゾーンの境界を変更して、3時間〜12時間のタイムゾーン内の異なる時間数を提供した。
【0209】
図35及び
図36は、非ゼロ値のメジアン及び負のSouth40偏りの十分性をそれぞれ示す。平均値は「x」である。「X」バー210及び212は、平均前後の±2標準誤差にわたって広がる。y軸は、誤差バーがより明確になるように拡大されている。
【0210】
誤差バーは95%信頼区間に概ね等しい。このバーがゼロを含む場合、いかなる非ゼロの平均値も統計的に有意であると見なされるべきではない。
図35では、メジアンに関して、これが、1日よりも長い全ての収集持続時間で行われる。1日の収集期間であっても、平均はメジアン値の小さな割合であるため、本方法論は、メジアン偏りの補償を含まない。
【0211】
図36は、S40の偏りが、他方では、5日よりも長い収集持続時間で統計的に有意であることを示す。さらに、偏り値は、典型的なS40値のはるかに大きな割合である。
【0212】
図36でのS40推定偏り値は、
図37の黒線214によって示されるように、日時期間の時間数にわたって平滑化された。これは、各日時期間で行われた。
【0213】
図37は、偏りをデータが収集される日数のみの関数とする朝食後タイムゾーンでの時間数にわたる平均を示す。異なる日時期間及び異なる持続時間でのS40の偏り結果は、以下の表に集められる。列2〜6内の表要素は、計算されたS40値に追加されるmg/dL数である。
【0215】
付録C 低血糖の定義
低血糖は多くの方法で定義することができる−しかし、判断ガイド方法を作成するには、数学的定義を決定する必要がある。本方法論での使用に選ばれた尺度は、
a)70mg/dLを下回る全読み取り値の全ての差(70mg/dL−読み取り値)の和を、
b)読み取り値の総数で除算したもの
として定義されるいわゆるAU70である。低血糖の代替の可能な測定値は、
・70mg/dLを下回る時間の割合。これは「範囲未満時間」としても知られている。この測定値は、一般に使用されており、したがって、容易に説明されるため、魅力的である。しかし、割合尺度は、更に後述するAU70尺度と比較して欠点を有する。
【0216】
・Boris Kovatchev及びWilliam Clarke[2]によって開発された低血糖指数(LBGI)。血糖値は、大きな範囲の糖濃度にわたり、血糖異常(malglycemia)のリスクを対称にする複雑な関数を介して変換される。この尺度には、低血糖閾値が必要ないという利点がある。欠点は、本明細書に提示される他の尺度よりも直観性が劣ることである。
【0217】
この付録でのプロットは、以下の研究からのデータを使用して生成した:GLADIS,40日ホームユース、IDC観測、JDRFベースライン、JDRFコントロール、及びIDC健康。全てのデータはマスキングされた。各被験者からのデータを日中(午前8時〜午後10時)及び空腹時(午後10時〜午前8時)に分割した。これにより、各被験者に2つのコントロールグリッドロケーションを生成した。
【0218】
以下のプロットは、3つの低血糖尺度での一定低血糖リスクの曲線(「低血糖リスク曲線」)と共に、糖尿病患者(藤色)及び非糖尿病患者(健康)のメジアン−変動プロットロケーションを示す。全ての尺度での低血糖リスク曲線は、強い類似性を有する。「割合」及びAU70の低血糖リスク曲線は、コントロールグリッドの左縁の70mg/dL付近で収束する。LBGIの低血糖リスク曲線は完全には収束せず、この低血糖定義には明示的な低血糖閾値がない。全ての尺度の曲線は、South40の増大に伴って散開する。
【0219】
特に左縁において細部に幾つかの違いがある。LBGI曲線は、顕著な上方への湾曲を示す。AU70曲線ではその程度は低く、割合曲線は略直線であるか、又は逆方向に僅かに曲がる。この細部は、健康な被験者のロケーション(健康ドット)が考慮に入れられる場合に重要である。AU70曲線には、健康な被験者の下に曲がるという傾向があり、これは、健康な被験者は、定義により、過度の低血糖リスクを有さないため、望ましい。LBGI曲線はこれと同じタイプの湾曲を有するが、線はエリア線よりも高い値で軸に達し、したがって、健康な被験者を逃さない。
【0220】
図38は、低血糖の定義として、閾値下割合を使用する一定低血糖リスクの曲線を示す。
図39は、低血糖の定義としてAU70を使用する一定低血糖リスクの曲線を示す。
図40は、低血糖の定義としてLBGIを使用する一定低血糖リスクの曲線を示す。
【0221】
特に左縁において細部に幾つかの違いがある。LBGI曲線は、顕著な上方への湾曲を示す。AU70曲線ではその程度は低く、割合曲線は略直線であるか、又は逆方向に僅かに曲がる。この細部は、健康な被験者のロケーション(健康ドット)が考慮に入れられる場合に重要である。AU70曲線には、健康な被験者の下に曲がるという傾向があり、これは、健康な被験者は、定義により、過度の低血糖リスクを有さないため、望ましい。LBGI曲線はこれと同じタイプの湾曲を有するが、線はエリア線よりも高い値で軸に達し、したがって、健康な被験者を逃さない。したがって、主に、AU70尺度が低メジアン及び変動データを最も妥当に扱うように見えるため、AU70尺度が本方法論で選ばれた。
【0222】
付録D 低血糖リスク曲線の特定
血糖値データの特定の母集団は、ガンマ分布によってモデリングすることができる。この分布は、データ母集団から特定されるメジアン及びSouth40によって一意に定義される。
【0223】
メジアン及びSouth40尺度は、メジアン−変動プロット上に点を定義する。このプロット上の各点は、
【0225】
によって特定されるAU70尺度に関連する値を有する。
【0226】
ここで、ガンマ(G;a,b)はガンマ分布であり、Gはmg/dL単位での血糖値であり、a及びbはガンマ分布形状及びスケールパラメータである。パラメータa及びbはガンマ分布を一意に指定する。本方法では、メジアン及びSouth40を指定することは、ガンマ分布も同様に一意に指定する。
【0227】
一定AU70値に関連する点で構成される曲線は、上記式を使用して分析で特定することができる。この曲線は「低血糖リスク曲線」と呼ばれ、各曲線には特定の低血糖値許容設定(すなわち、特定のAU70値)が関連する。
図41は、メジアン−変動プロット上に、それぞれが異なるAU70値に関連する8本の低血糖リスク曲線を示す。
【0228】
図42は、メジアン−変動平面上の一定AU70の曲線を示す。本方法論では、各低血糖値許容設定に1つずつ、3本の異なる低血糖リスク曲線が上述したように予め定義される。
図42〜
図44では、3本の異なる低血糖リスク曲線が、JDRF研究の最初の2週間からのデータを使用して計算されたメジアン及びS40点を含むメジアン−変動平面に重なる。データは5つの異なる日時期間に記憶された。点は、患者/期間データを使用して計算されたAU70が中設定の低血糖値許容を超える場合、黒い「O」として表され、その他の場合、点は白い「O」として表される。なお、点は、メジアン及び変動尺度の計算に、10の血糖値読み取り値が少なくとも5日にわたって利用可能な場合のみ、含まれた。これらの図は、低血糖リスク曲線がメジアン−変動プロットを低血糖の高リスクゾーン及び低リスクゾーンにいかによく分けるかを示す。
【0229】
図42〜
図44は、LGA=大、中、及び小を有する朝食前の低血糖リスク性能をそれぞれ示す。
【0230】
低血糖リスク曲線の低血糖検出性能は、感度及び特異度に関して以下のように推定される。許容可能な低血糖リスク(曲線の上)と過度の低血糖リスク(曲線の下)とを分ける一定AU70の理論的に導出された曲線を所与として、メジアン−変動平面点の母集団は4つの群に分割される。第1に、母集団は、
実測AU70≧低血糖リスク曲線に関連するAU70
である過度の実測低血糖を有する点と、許容可能な実測低血糖を有する点とに分割される。上記図では、これは、それぞれ黒い点と白い点として表される。これは真のシステム状態を示す。第2に、母集団は、システムが警告する、
メジアン−変動平面上のロケーション≧低血糖曲線
である点と、システムが警告しない点とに分割される。これは検出器を表す。上記図では、これらの点はそれぞれ、低血糖リスク曲線224の下222及び上220にある。
【0232】
・検出:点は過度の実測低血糖を示し、検出器は警告する(線下の黒い点)。
【0233】
・検出見逃し:点は過度の実測低血糖を示し、検出器は警告しない(線上の白い点)。
【0234】
・誤検出:点は許容可能な実測低血糖を示し、検出器は警告する(線下の白い点)。
【0235】
・真の陰性:点は許容可能な実測低血糖を示し、検出器は警告しない(線上の白い点)。
【0236】
一般に、可能な限り少数の検出見逃し及び誤検出を有することが望ましい。感度は、
【0241】
以下の表に、各日時期間及びLGA設定(大=1.94、中=0.83、小=0.35)での感度及び特異度結果をまとめる。
【0243】
付録E 変動尺度比較
2つの代替の変動式が、低血糖リスクを推定する能力に関して、S40と比較される。
【0244】
1.四分位範囲(IQR)、75パーセンタイルと25パーセンタイルとの差、及び
2.口語では「ミッド80(mid80)」として知られている90パーセンタイルと10パーセンタイルとの差。
【0245】
なお、変動おこれらの代替の測定値は両方とも、メジアンを中心として対称であり、一方、S40測定値は、メジアンよりも下の変動のみに関わる。S40を使用することの裏にある仮説は、血糖値母集団分布は、低血糖値においてガンマ分布によってより正確にモデリングされるため、平均よりも上の変動測定値を除いたものが、低血糖リスクのより正確な推定値を提供するというものである。
【0246】
この比較は、様々な低血糖リスク値で感度及び特異度を計算することを含む。以下の3つの図は、3つの異なる変動軸でのメジアン−変動平面上の一定AU70の曲線を示す。
【0247】
図45は、South40での一定AU70の曲線を示す。関連するAU70値は各曲線に示される。
【0248】
図46は、IQRでの一定AU70の曲線を示す。関連するAU70値は各曲線に示される。
【0249】
図47は、Mid80での一定AU70の曲線を示す。関連するAU70値は各曲線に示される。
【0250】
3つ全ての組の曲線は同様の特徴を有する。Mid80線(
図47)は、より大きなx軸広がりを有する。これは、Mid80が常にsouth40又はIQRよりも大きいため、理解することができる。IQR(
図46)は、横軸に沿ってsouth40よりも大きな広がりを有するが、他の2つよりも垂直方向においてより早く拡散する。
【0251】
どの変動測定値が、低血糖リスクの推定においてよりよいかを評価するために、各感度及び特異度を比較する。JDRFデータセットの最初の2週間をこの分析に使用し、分析方法は付録Dに記載されている。様々なタイプのマスキングされたCGM装置を使用する443人の被験者が存在した。各被験者のデータを5つの日時期間に分割した。
【0252】
S40変動がIQR又はMid80で置き換えられた場合の感度及び特異度を特定するために、両方の低血糖リスク曲線並びにメジアン−変動平面上の点のロケーション及び色を再計算する必要がある。次のプロットである
図49は、0〜3の低血糖リスク曲線のAU70値の関数としてプロットされる朝食前日時期間での感度及び特異度の比較を示す。図から、S40尺度が変動を表すために使用される場合、感度がはるかに優れており、且つ特異度がわずかに良好なことを見て取ることができる。
【0253】
付録F 低血糖値許容設定の定義
異なる低血糖リスク曲線を、任意の値のAU70に特定することができる。1つの難しさは、「過度」又は「問題がある」と見なされるAU70の最小値で確率されている臨床指針がないことである。したがって、本方法論は、低血糖リスク曲線AU70値を調整する能力を臨床医に提供するように設計され、これは低血糖値許容(LGA)設定と呼ばれる。
【0254】
LGA設定値は、JDRF CGMデータの最初の2週間、40日ホームユースデータの最初の20日、Gladisデータの最初の20日、及びIDC観測データの30日全てのデータを使用して決定された。これらのデータは全てマスキングされた。
【0255】
図50は、低血糖リスク曲線及び昼食後メジアン−変動点を示す。メジアン−変動点を、被験者期間毎に1つずつ、3つの食後日時期間のそれぞれで計算した。これらの結果は、
図50において昼食後期間に関して示される。また、1つの夜間日時期間(就寝期間と朝食前期間とを結合した)に関してメジアン−変動点を計算した。次に、3つの低血糖リスク曲線を、a)最低曲線(LGA=大)が10%の「最高低血糖リスク」点を残りの点から分け、b)中曲線(LGA=中)が30%の「最高低血糖リスク」点を分け、c)一番上の曲線(LGA=小)が50%の「最高低血糖リスク」点を分けるように、各TOD期間について経験的に特定した。これらの曲線は、
図50において、昼食後TOD期間に関して示される。以下の表は、各曲線に対応するAU70値を示す。
【0257】
一観測は、AU70の数が夜間期間で、他の日時期間と比較してはるかに大きいことである。これは、母集団が日中よりも夜間により高い低血糖リスクを受けることを示す。
【0258】
本方法では、LGAの1列は、全ての時間を表すように選ばれた。昼食後値は、メジアン(デフォルト)AU70設定が最小であるため選ばれ、最小LGA値は、低血糖リスクの推定に関して、最も保守的である。
【0259】
最終的なAU70値を以下の表に示す。
【0261】
本方法で使用されるデフォルトLGA設定は中設定である。この設定の妥当性は、一方はLGAが中設定を用いた、広範囲の血糖値特徴を有する26人の異なる患者についてのADPリポートを2つの臨床専門家にレビューさせて、分析結果が適切であること、特に、GCM表に示される各結果が、過度の低血糖を低減すべきであるか、又は過度の低血糖を生じさせずに全体の血糖値レベルを安全に低減すべき対応する治療変更に一致することを保証することによって評価した。実際、医師の判断を用いて、血糖値レベルを低減する治療に関して、LGAをより保守的な設定(小)に設定すべきか、それともより積極的な設定(大)に設定すべきかを決める。
【0262】
LBGIは、血糖値データから低血糖リスクを評価するために使用される別の尺度である。LGA設定値を、中リスクと高リスクとの境界(2.5)を定める[2]で説明したLBGIリスク閾値と比較することが有益である。
図52は以下で、LGA値での低血糖リスク曲線に重ねられた等しいLBGI値の曲線を示す。
【0263】
図52は、各LGA設定の低血糖リスク曲線と、対応する近似LBGI曲線とを示す。LBGI曲線は、メジアン−変動点の大半があるエリアにおいて、低血糖リスク曲線と概ね同じである。LGA AU70に概ね等しいLBGI値は、以下の表に示される。
【0265】
なお、中−高リスクLBGI閾値2.5は、LGAの中設定と大設定との間に入る。
【0266】
付録G 重度の低血糖を報告する低血糖値許容閾値の比較
LGAの3つの可能な設定に関して、これらがいかに報告される重度の低血糖(「SH」)に関連するかを調べることは興味深い。SHはJDRF−CGM試行で文書化され、そこで、SHは、患者が、少なくとも、低血糖症発現に対処するために助けを必要とするときとして定義された。なお、ここでは、検出感度のみが評価に適切であり、その理由は、SHが、JDRF試行によって提供されるCGデータのスパンにわたって希な事象であり、特異度は全方法で極めて低く、基本的に意味がないためである。
【0267】
この分析では、本方法論からの結果を、Kovatchev[2]によって開発された低血糖指数(LBGI)方法と比較する。これらの方法を、SH事象に先行するCGの14日分に適用した。89の報告されたSH発現のうち48が、低血糖予測が利用可能な5つ全ての日期間を有し、したがって、両方法によって評価した。本方法で少なくともとも1つの「赤」低血糖予測を有することにより、検出感度を評価し、LBGI「高リスク」(>2.5)予測と比較した。
【0268】
本方法及びLBGI方法によるSH事象検出の性能を表G3に示す。LLG方法による低血糖の少なくとも1つの「赤」予測を有することの検出感度は、デフォルトLGA設定(「中」)で83%であり、これはLBGIの「高」結果79%と同等である。本方法への低血糖値許容設定の影響は、より高感度の「小」設定の場合での96%への検出感度の増大及び感度がより低い「大」設定の場合での44%への低減として見ることができる。
【0270】
以下の距離の関数としてSHヒストグラムを生成することにより、SH検出性能を更に調べた。
【0271】
・AU70低血糖リスク曲線
・LBGI低血糖リスク曲線(付録FのLBGI表からとられた値)
・AU70中リスク曲線(付録H)
これらのヒストグラムが全てのTOD期間でかなり類似することが分かった。LGAシフトを低減すると、予期されるように、曲線は右にシフトする。LBGIによる曲線はAU70曲線に厳密に一致する。低血糖中線は、全てのLGA設定でSH発現の90%超を検出する。
【0272】
付録H 中低血糖リスク曲線の導出
「中」低血糖リスク曲線は、「高」低血糖リスク曲線を補足して、コントロールグリッド上に「中」低血糖リスクゾーンを生成する。これらの2つの曲線によって画定されるゾーン内に配置されるメジアン−変動点を有する患者の場合、患者が過度の低血糖リスクを受ける10%〜50%の確率がある。低血糖リスクを低減するために、治療変更を行うべきか否か判断するには、臨床的判断が要求されるが、血糖値レベルを下げる任意の工程は、特別な注意を払って更に検討すべきである。
【0273】
緩衝ゾーンのサイズは、a)期間毎の血糖値プロファイルの自然な変動及びb)血糖値メジアン及びS40尺度を限られたデータを用いて推定することに関連する不確実性によって導出される。後者の不確実性原因は、尺度が、疎な血糖自己測定(SMBG)データを用いる場合と比較して、定期的で頻繁なCGデータを用いて推定される場合、因子の度合いははるかに低いが、本方法は、適切なリスク中曲線を特定する際にサンプルサイズが小さい可能性を考慮に入れる。結果として、データが多いほど、低血糖リスク中ゾーンは小さくなる。換言すれば、データが多いことは、血糖値尺度での確実性が高いことに等しく、安全により積極的な治療判断をする能力に繋がり得る。しかし、大量のデータの場合、追加のデータが利益を損なうことに留意する。
【0274】
本方法では、中リスク曲線は、続く時間が過度の低血糖リスクを示すときに低血糖リスクを計算する確率が、信頼度レベル95%で10%未満であるように作成される。JDRFデータセットを使用した:マスキングされていないで1年分のデータを有する54人の被験者。作成は、被験者の最初の2/3を使用して行われ、残りを結果のチェックに使用した。
【0275】
5つのデフォルト日時(TOD)期間のそれぞれで、作成セットを21日セグメントに群分けした。21日分のデータに基づいて各TOD期間のコントロールグリッド位置を計算した。これらのコントロールグリッド位置は、本明細書では「真」と呼ばれるものを構成する。直前の21日期間において、様々な日数のデータを収集し、コントロールグリッド位置を計算した。本明細書では、これらは「予測」と呼ばれる。日時期間中の時間数で乗算すると、これは、収集されるデータの日数を増大させる。この構築を
図52に示す。予測に使用したデータは、対応する真のデータセグメントの直前でとられた。この分析の結果は、それぞれが異なる長さの、直前期間からの関連する幾つかのコントロールグリッド予測を有するコントロールグリッド真の集まりである。
【0276】
図52は、「真」と「予測」との対を示す。中リスク曲線の設計目標は、真が「過度の低血糖リスク」(すなわち、低血糖リスク曲線の下)を示すとき、信頼度レベル95%で、予測の10%未満が「低血糖リスクなし」を示す(すなわち、低血糖中曲線の上)ことである。なお、低血糖リスク曲線から離れた真のコントロールグリッド位置は、この要件をかなり楽観的に達成するという効果を有し、例えば、コントロールグリッドの左上隅に配置される真は、「低血糖リスクなし」として容易に検出される。同様に、コントロールグリッドの右下隅に配置される真は、「低血糖リスク高」として容易に検出される。低血糖リスクについて評価することが最も難しく、ひいては、中リスク曲線の設計に最も有意味な真のコントロールグリッド位置は、低血糖リスク曲線に近い位置である。したがって、この効果の影響を取り除くすために、各予測コントロールグリッド位置は、関連する真のコントロールグリッド位置から低血糖リスク曲線までの垂直距離だけ、垂直に調整される。ここで、これらの垂直調整された予測には、「過度」の低血糖リスク閾値に厳密に配置された真が関連付けられる。
【0277】
低血糖リスク曲線と同様に、中リスク曲線もガンマ分布の仮定に基づく等しいAU70値の曲線である。特定の中リスク曲線は、a)5つのTOD期間、b)1日から21日まで様々な予測データ長、及びc)3つのLGA設定の各組合せに特定される。条件の組合せ毎に、中リスク曲線は、信頼度レベル95%で、垂直に調整された予測の10%未満が「低血糖リスクなし」(すなわち、低血糖中曲線の上)を示すように、垂直調整された予測セットから経験的に特定される。なお、信頼度レベル95%を達成するために、中リスク曲線は、10%未満の何らかの数の予測が曲線の上にあるように位置決めされるべきである。
図53及び
図54はこの経験的当てはめの例を示す。
【0278】
図53は、予測を行うために、12時間(4時間TOD期間の場合、3日分のデータに等しい)のデータを使用した朝食後TOD期間を示す。LGA設定は中である。図中、低血糖リスク曲線は黒い線であり、中リスク曲線は破線である。約200の予測があるため、要件を満たすためには、中リスク曲線上にあることができる予測は13個のみである。要件を達成するために、この特定の中リスク曲線には0.0035というAU70値が関連付けられる。
【0279】
図54は、予測を行うために、40時間(4時間TOD期間の場合、10日分のデータに等しい)のデータを使用した朝食後TOD期間を示す。LGA設定は中である。
図54では、条件の組合せは、
図53の場合と、予測に使用されるデータの期間が3日から10日に拡張された点でのみ異なる。なお、予測に用いるデータが多いほど、中リスク曲線は低血糖リスク曲線に近づき、低血糖リスク中ゾーンは小さくなる。これは、予測に利用可能なデータが多いことの利点を示す。例えば、
図54の中リスク曲線の真上に配置されるコントロールグリッド点の場合、追加のデータは、低血糖リスクがないことの信頼度を増大させることになる−
図53での同じ点は、緩衝ゾーンに配置され、低血糖リスクがないことの信頼度はより低い。
【0280】
上記計算は条件の全ての組合せに対して繰り返される。
図55は、中リスク曲線が、予測及び異なるTOD期間に利用可能なデータ量にわたっていかに変化するかを示す。特に、各中リスク曲線は、S40値100での縦座標によって表される。これにより、1つのプロットで、所与の低血糖値許容設定の全ての中リスク曲線をプロットすることができる。
【0281】
図55は、S40=100mg/dLでの中リスク曲線の垂直位置と、データ収集時間数との関係を示す。LGA設定は中である。プロットはここでも、収集されるデータ量が増大するにつれて、中リスク曲線が低血糖リスク曲線に近づくことを示す。なお、予測に収集される10日分を超えるデータがある場合、低血糖リスク中ゾーンサイズの更なる低減は小さい。
【0282】
図55に示されるデータは、本方法に使用される中リスク曲線の基本である。導出は以下である。
【0283】
平滑な曲線が
図55に示されるデータに当てはめられる。2つの曲線が当てはめられる:一方は2つの夜間TOD期間への曲線であり、一方は3つの食後TOD期間への曲線である。平滑化された曲線は、目により、且つ一般に時間ゾーン値の上に留まることにより当てはめられる。これは保守的な選択であり、低血糖リスク中ゾーンをわずかに大きくする。これらの当てはめられた曲線を
図56に示す。
【0284】
あらゆる中リスク曲線は、S40=100での値によって一意に定義することができる。表H1は、可能な各条件での(a)での平滑化曲線のこの値を示す。各中リスク曲線は、表中の値を通る曲線によって制約される、ガンマ分布の仮定に基づく。
【0285】
図56は、夜間(実線)及び食後(破線)TOD期間の平滑曲線が追加された
図55と同じ図である。
【0287】
JDRFデータの残りの1/3を使用して、計算された中リスク曲線をチェックし、設計目標が満たされたか否か:信頼度レベル95%で、予測のうちの10%未満が「低血糖リスクなし」を示すか否かを判断した。18人の被験者で、低血糖リスク予測性能をデフォルトTOD期間にわたり、全てのLGA設定値且つ3時間〜150時間の予測期間持続時間の範囲でチェックした。結果は、95.4%が正確な低血糖予測であり、これは、95%信頼度レベルを超える。第2のチェックを、8つの異なるTOD持続時間を有する8つの異なるTODスケジュールで再実行し、その結果、95.7%が正確な低血糖リスク予測であった。
【0288】
ソフトウェア実施を簡易化するために、中リスク曲線は、各曲線を定義する特定のパラメータを有する双曲線関数として定義される。表H1で定義されるあらゆる中リスク曲線で、双曲線関数が当てはめられる。双曲線関数は、各曲線全体(これは、2mg/dL S40インクリメント毎に1つの値では、曲線毎に5つではなく数百の値になる)を記憶するのではなく、ソフトウェアに記憶可能な5つのパラメータによって定義されるという利点を有する。
【0289】
これらの全ての双曲線近似のうちの最悪のものを
図57に示し、この最悪の当てはめはR
20.997で良好として示される。
図58は、この最悪当てはめの残余を示す。70mg/dLよりも大きなS40値の場合、当てはめは+/−1mg/dL以内である。70mg/dLを下回るS40値の場合、双曲線関数は、特定される中リスク曲線よりも最高で4mg/dL大きいが、この近似は、中リスクゾーンをわずかに大きくし、したがって、低血糖リスクの観点からは保守的である。
【0290】
図57は、元の中リスク曲線(薄い線)と、近似高血糖関数(太い線)線−最悪事例とを示す。
図58は、元の中リスク曲線の残余と、近似高血糖関数−最悪事例との関係を示す。
【0291】
本説明では、構成要素、モジュール、装置という用語は、様々な方法で実施し得る任意のタイプの論理的又は機能的プロセス又はブロックを指し得る。例えば、様々なブロックの機能を互いに結合して、任意の他の数のモジュールにすることができる。モジュールは、プロセッサ又は中央演算処理装置によって読み出されて、本明細書での技術革新の機能を実施する、有形メモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ、CD−ROMメモリ、ハードディスクドライブ等)に記憶されるソフトウェアプログラムとして実装することができる。又は、モジュールは、送信搬送波を介して汎用コンピュータ又は処理/グラフィックハードウェアに送信されるプログラミング命令を含むことができる。また、モジュールは、本明細書での技術革新によって包含される機能を実装するハードウェア論理回路として実装することもできる。モジュールは、専用命令(SIMD命令等)、フィールドプログラマブル論理アレイ、それらの任意の組合せ、又は所望のレベルの性能及びコストを提供する他のものを使用して実装することができる。
【0292】
本明細書で開示されるように、本発明の実施態様及び特徴は、コンピュータハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアを通して実施し得る。例えば、本明細書に開示されるシステム及び方法は、例えば、データベースも含むコンピュータ等のデータプロセッサ、デジタル電子回路、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの組合せを含む様々な形態で実施し得る。さらに、開示される実施態様の幾つかは、ソフトウェア等の構成要素を説明するが、本明細書での技術革新によるシステム及び方法は、ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアの任意の組合せを用いて実施し得る。さらに、上述した特徴並びに本明細書での技術革新の他の態様及び原理は、様々な環境で実施し得る。そのような環境及び関連出願は特に、本発明による様々なプロセス及び動作を実行するように構築されてもよく、又は必要な機能を提供するコードによって選択的にアクティブ化若しくは再構成される汎用コンピュータ若しくは計算プラットフォームを含んでもよい。本明細書で開示されるプロセスは本質的には、いかなる特定のコンピュータ、ネットワーク、アーキテクチャ、環境、又は他の装置にも関連せず、ハードウェア、ソフトウェア、及び/又はファームウェアの適する組合せによって実施し得る。例えば、様々な汎用マシンを、本発明の教示に従って書かれたプログラムと併用してもよく、又は必要とされる方法及び技法を実行する専用装置若しくはシステムを構築することがより好都合であることもある。
【0293】
文脈により明らかに別段のことが要求される場合を除き、本説明及び特許請求の範囲を通して、「備える」、「備えている」等の言葉は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に、包含の意味で、すなわち、「〜を含むが、それらに限定されない」の意味で解釈されるべきである。単数又は複数を使用する言葉はそれぞれ、複数又は単数も含む。さらに、「本明細書では」、「この下」、「上」、「下」という言葉及び同様の意味の言葉は、本願のいかなる特定の部分でもなく、本願全体を指す。「又は」という言葉が2つ以上のアイテムのリストの参照に使用される場合、この言葉はその言葉の以下の解釈の全てを含む:リスト内の任意のアイテム、リスト内の全てのアイテム、及びリスト内のアイテムの任意の組合せ。
【0294】
更なる実施態様及び/又は変形を、本明細書に記載の実施態様に加えて提供し得る。例えば、本発明は、好ましい実施形態の詳細な説明で開示される特徴の様々な組合せ及び副次的組合せに向けられ得る。
【0295】
本システム及び本方法を、特定の実施形態であると現在考えられるものに関して説明したが、開示される実施形態に限定される必要はない。特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれる様々な変更及び同様の構成を包含することが意図され、特許請求の範囲は、そのような全ての変更及び同様の構造を包含するように最も広い解釈に従うべきである。本開示は、以下の特許請求の範囲のありとあらゆる実施形態を包含する。