特許第6351626号(P6351626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6351626可塑剤含有ポリビニルアセタールより成る中間層フィルムを含有する蛍光ディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351626
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】可塑剤含有ポリビニルアセタールより成る中間層フィルムを含有する蛍光ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20180625BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20180625BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20180625BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20180625BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20180625BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20180625BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C03C27/12 C
   C03C27/12 N
   B32B17/10
   B32B27/18 A
   B32B27/18 Z
   H01L33/48
   B60R11/02 C
   B60J1/00 H
   B60K35/00 A
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-552055(P2015-552055)
(86)(22)【出願日】2014年1月10日
(65)【公表番号】特表2016-509565(P2016-509565A)
(43)【公表日】2016年3月31日
(86)【国際出願番号】EP2014050400
(87)【国際公開番号】WO2014108508
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】102013100268.4
(32)【優先日】2013年1月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ケラー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ レリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ベークハイゼン
【審査官】 増山 淳子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−538172(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0120916(US,A1)
【文献】 特開2008−285389(JP,A)
【文献】 特開平11−349630(JP,A)
【文献】 特開2008−290900(JP,A)
【文献】 特開2014−024312(JP,A)
【文献】 特表2014−505645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
日光の方を向いた側Sと、蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、かつUV吸収剤、蛍光体及び可塑剤含有ポリビニルアセタールを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有する、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであって、前記中間層フィルムにおける前記UV吸収剤と前記蛍光体とは、前記蛍光体を励起するためのUV線が前記UV吸収剤によって吸収されず、従って前記蛍光体がUV線によって励起され得るように空間的に配置されている、前記蛍光ディスプレイにおいて、前記UV吸収剤が、前記蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されていることを特徴とする、前記蛍光ディスプレイ。
【請求項2】
前記中間層フィルムが、
− 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
− 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム並びに
− 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有することを特徴とする、請求項1記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項3】
前記中間層フィルムが、
− 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
− 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上又は前記第一の層に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有することを特徴とする、請求項1記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項4】
前記中間層フィルムが、
− 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
− 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層上又は前記第一の層に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有することを特徴とする、請求項1記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項5】
前記中間層フィルムが、
− 可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
− 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、前記第一の層の第一の側上又は前記第一の側に配置された拡散傾向の低い蛍光体
− 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、前記第一の層の第二の側上又は前記第二のに配置された拡散傾向の低いUV吸収剤
を有することを特徴とする、請求項1記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項6】
前記中間層フィルムが、
− 前記蛍光ディスプレイの側Sに配置されている、低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
− 前記蛍光ディスプレイの側Bに配置されている、少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム
− 低分子量UV吸収剤を含有しないか又は前記蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有することを特徴とする、請求項1記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項7】
前記中間層フィルムが、0〜50の範囲のアルカリ滴定値を有する可塑含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項8】
前記中間層フィルムが、ラジカル連鎖反応を抑制するための光安定剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項9】
前記中間層フィルムが、フェノール系酸化防止剤を有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの層を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項10】
前記中間層フィルムが、少なくとも1つの音響減衰層を含んでおり、そうして前記中間層フィルムは、2.1mm厚のガラス2枚の間に貼り合わせて、かつ20℃にてISO TS 16940に準拠した測定を行った場合に0.15超の1次モードの損失係数を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項11】
前記日光の方を向いた側Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせてISO 13837,Convention“A”(2008)に準拠した測定を行った場合に30%未満のUV透過率TUV(400)を有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項12】
前記日光の方を向いた側Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせてISO 13837(2008)に準拠したUV/VIS透過率スペクトルの測定を行った場合に50%以下のUV透過率TUV(400)を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイ。
【請求項13】
自動車両のフロントウインドウ、自動車両のサイドウインドウ、飛行機、鉄道又は船舶用のウインドウのための、或いは建築領域において適用するためのディスプレイ系として用いるための、請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイの使用。
【請求項14】
ショーウインドウ、エレベーター又はファサードウインドウにおいて適用するためのディスプレイ系として用いるための、請求項13記載の蛍光ディスプレイの使用。
【請求項15】
請求項1から12までのいずれか1項記載の蛍光ディスプレイを含有するフロントウインドウと、UV吸収性ガラスより成るか又は当該UV吸収性ガラスを有するサイドウインドウとを有する自動車両のコンパートメントルーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ドライバー視野領域に情報を映し出すために、近年、自家用車においていわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)が用いられている。これに関して、下方から−ダッシュボードブラケットに設けられているプロジェクターユニットから−虚像としてドライバーのシートから見られることができる画像がフロントウインドウ(WSS/Windschutzscheibe)に投影される。この効果は、車内の方を向いたガラス面並びに車外の方を向いたガラス面の反射作用に基づいている。内側のガラス面は、ほとんど反射には寄与せず、なぜなら、これらは、法律により定められている合わせ安全ガラスにおいて、ガラス層の間に設けられているガラスと似た屈折率を有するPVBフィルムと貼り合わされているからである。
【0002】
通常の構造のフロントウインドウの4つのガラス面をより簡素化して名称付けるために、図1に示される以下の取り決めが用いられる:
第1の側 車外に向いた複合体の板の外側の面
第2の側 複合体において中間層フィルムに向いた外側の板の内側の面
第3の側 複合体において中間層フィルムに向いた内側の板の内側の面
第4の側 複合体の内側の板の車内の方を向いた面
【0003】
通例、中間層フィルムとして、可塑化されたポリビニルブチラール、略してPVBフィルムより成るフィルムが使用される。
【0004】
上記の機能原理を持った慣用のHUDにおける二重像を取り除くために、第1と第4の側に属するガラス面は、互いに一定の角度を有していなければならない。これは、くさび形の厚さプロファイルを有するPVBフィルムの使用によって実現される。しかしながら、このようなフィルムは、加工し難く、かつ製造が煩雑であり、くさび形ではないフィルム補完物(Folienpendant)よりずっと高価なものになる。
【0005】
慣用のHUDの更なる欠点は、制限された視野領域においてのみドライバーの前方に情報が直接可視化されることができ、またこれについてのみ見ることができる点にある。実際にはしかし、情報が同乗者にも見られることができるか若しくはフロントウインドウの別の箇所に表示されることが望ましい状況が数多く存在する。例えば、安全に関わる警告情報として、車線上又は車線の横にある障害物の輪郭−例えば、これらは最新の乗り物においては暗視装置システムにより検知され得る−をフロントウインドウに直接投影することが考えられる。それに、慣用のHUDの場合、フロントウインドウ上の雨粒によって画像が歪められる。なぜなら、この場合、最適化されたシステム構成の基になるガラスと空気との間の屈折率の移行に狂いが生じるからである。
【0006】
この慣用のHUDの代わりとして、フロントウインドウの平面に配置された蛍光材料及び適切なその励起によって画像を作り出すことが提案されていた(いわゆる蛍光HUD)。これらの物質の励起は、人間の目では見ることのできないUV線により行われ、それによって、ドライバーだけに限られず見ることが可能な実際の画像をフロントウインドウの平面に作り出すことができる。蛍光材料として、例えば、相応する有機染料、無機粒子等が提案されていた。
【背景技術】
【0007】
蛍光HUDの製造のために、フロントウインドウの第4の側に蛍光顔料又は染料を、被覆、積層フィルム等の形で施与することが知られている。代替案として、第3の側とPVB中間層との間に、蛍光体を含有するフィルムを位置決めするか若しくは第3の側の方を向いたPVBフィルムの表面に蛍光体を印刷することが提案されていた。
【0008】
WO2012/072950A1は、PVBフィルムに特定の低分子量蛍光体を印刷することを開示しており、該蛍光体がオートクレーブ処理中に均一にフィルム中に分散するように印刷が行われている。この場合、蛍光体は、UV吸収剤として同時に作用している。これに加えて、WO2012/072950A1は、蛍光体として低分子量ヒドロキシテレフタレート、殊に2,5−ジヒドロキシジエチルテレフタレート並びに酸化防止剤の使用を記載しており、これらはPVBフィルム上に施与される。この場合、蛍光体は、PVBフィルム中に分散し、かつそれ自体UV吸収剤として作用するか又はフィルム中に存在する低分子量UV吸収剤と混ざり合う可能性がある。
【0009】
WO2008132368A9からは、蛍光HUDが、従来のPVBフィルムに加えて1つ以上の無機発光体を含有する層を複合体の第3の側に20μm未満の厚さで含んでよいことが知られている。しかしながら、従来のPVBフィルムは少ない量で低分子量UV吸収剤を含有しているので、そのような低分子量UV吸収剤は、発光体を含有する層中に拡散し易く、そこで蛍光を吸収する可能性がある。そのうえ、制御されない外部からの日光による励起が部分的に起こり得るというリスクが存在し、なぜなら、従来のPVBフィルムの場合、UV線の残留透過率が通常見出されるからである。さらに、曇りにつながる、不適格に大きい粒子による光散乱が起こらないように注意が向けられなければならない。発光体を含有する20μmの層の僅かな層厚では使用可能な蛍光体の量は限られており、なぜなら、濃度が高すぎると曇りにつながるからである。それゆえ、最大で到達可能な蛍光発光の強度も限られている。
【0010】
US2002/0120916A1には、蛍光染料を有するヘッドアップディスプレイが記載されており、該ディスプレイにおいて観察者の方を向いた側はUV吸収剤を含有する。これにより、蛍光染料のための励起線がディスプレイを貫通して外側に放射されるのが防がれることになる。この目的のために、US2011/1073773A1には、観察者から離れたディスプレイ側に不透明な材料を有する蛍光ディスプレイが開示されている。
【0011】
EP2409833には、蛍光染料が日光の方を向いた側に配置されている蛍光ディスプレイが記載されている。
【0012】
これらの公知の蛍光ディスプレイは、蛍光染料が不所望にも日光によって励起される可能性があることである。そのような励起は、外観上ディスプレイの曇りにつながり、自動車両のフロントウインドウにおける使用には適していない。
【0013】
公知の先行技術における問題のほかに、ディスプレイに表示された情報の光沢度及び鮮明度並びに持ちを損なうという問題が生じる。自動車ガラスの製造のために入手可能な慣用のPVBフィルムは、少ない量の低分子量UV吸収剤、殊にTinuvin 326若しくはTinuvin 327型のUV吸収剤を含有している。
【0014】
UV吸収剤は、蛍光体の励起も行われるちょうど同じ波長領域で作用することから、UV線の大部分は、蛍光体の励起のために利用されるのではなく吸収される。
【0015】
つまり、UV吸収剤を既に含有している低分子量蛍光体がPVBフィルムの表面上に単純に施与される場合、蛍光体は拡散によってフィルムの厚さ全体にわたって分散する。しかし、その場合、蛍光体はガラス表面のすぐ近くでしか放射することができず、なぜなら、ここでしかUV線は、存在するUV吸収剤に基づきフィルム層の深さにたいして入り込むことができないため、十分な強度で蛍光体に当たることができないからである。これにより、十分な光沢度を得るために高濃度の蛍光体が不可欠となり、この場合はまたフィルム若しくはガラスの黄色度及びディスプレイ系のコストに悪影響を及ぼし得る。当然の事ながら、蛍光体がPVBフィルムの製造に際して添加剤としてこれに直接導入される場合にも同じことが言える。
【0016】
特に厄介なのは、蛍光体が拡散によってフロントウインドウの第2の側(図1を参照されたい)にも達してしまうことであり、そこで、一方では、蛍光体は日光によって変色する可能性があり(なぜなら、この箇所ではフィルム中に含まれるUV吸収剤によってもはや保護されないからである)、他方では、制御されずに日射のUV割合によって励起発光させられる可能があることである。
【0017】
課題
それゆえ、これらの欠点が構造的に生じ得ない、ガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイ用の中間層フィルムを提供するという課題が存在していた。
【0018】
本発明の枠内では、図1に示されるガラス/ガラスラミネートの面を名称付けるための上記取り決めが、更に別の適用分野、例えば建築及び広告領域等において使用するためのディスプレイユニット用のガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイの場合にも用いられる。この場合、第4の側は、励起線源に向いた側を意味する。
【0019】
殊に、蛍光ディスプレイの第2の側に接している中間層膜は、高い光透過率と同時に低いUV透過率とを有しているべきである。これによって、以下の効果、すなわち、その背後にある蛍光体を変色から保護する効果、励起源のUV線が抜け出すことを防止する効果、日射のUV割合による制御されない励起を防止する効果及び全体のコンポーネントに関して通常要求される低いUV透過率を保証する効果が得られる。
【0020】
本発明の説明
層の基本的な配置は、図2に描写している。
【0021】
UV吸収剤と蛍光体とが持続的に互いに空間的に分離して存在するか又は高濃度の蛍光体が第3の側で持続的に保持され続ける中間層又は中間層組合せ物がこの要件を具備することを見出した。
【0022】
それゆえ、本発明の対象は、日光の方を向いた側Sと蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側Bとを有し、UV吸収剤、蛍光体及び可塑剤含有ポリビニルアセタールを含有する少なくとも1つの中間層フィルムを有するガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイであり、ここで、中間層フィルムにおけるUV吸収剤と蛍光体とは、蛍光体がUV線によって、UV吸収剤が当該UV線を吸収することなく励起され得るように空間的に配置されており、ここで、UV吸収剤は、蛍光ディスプレイの日光の方を向いた側Sに配置されている。
【0023】
自動車両のフロントウインドウとしての蛍光ディスプレイの例示的な適用においては、この配置により、蛍光体をUV線によって車内から若しくはディスプレイユニットの第4の側から励起させることが可能となり、その際、励起のために実際に供給された放射線が早くもUV吸収剤により吸収されることはない。
【0024】
本発明の第一の実施形態においては、蛍光ディスプレイは、
− 蛍光ディスプレイ側Sに配置されている、慣用の低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
− 蛍光体及び低分子量UV吸収剤のための拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄い層並びに
− 蛍光ディスプレイ側Bに配置されている、1つ以上の蛍光体を含有し、低分子量UV吸収剤を含有しないか又は蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤をそのつど含有する、可塑剤含有ポリビニルアセタール及び/又はポリウレタン及び/又はEVAより成る少なくとも1つの第二の層
を有する中間層フィルムを含有する。
【0025】
拡散ブロックとして作用する薄い層は、好ましくはPET又は変性PETより成る薄いフィルムである。
【0026】
有利には、非変性PETの場合には二軸延伸PETが使用され、かつ変性PETの場合にはPETG(ポリ(シクロヘキサンジメチレンテレフタレート−co−エチレンテレフタレート)が使用される。さらに、拡散ブロックとして、ポリビニルアルコール若しくはエチレン変性ポリビニルアルコール(例えばExceval(R))より成る層並びにエチレンビニルアルコールコポリマー(例えばEVAL(R))が用いられることができる。
【0027】
1つ又は複数の蛍光体は、中間層組合せ物若しくは第二の層の製造に際して、例えば押出プロセスにおいてこれに導入してよい。その代わりに、第二の層の面の1つに施与することも可能である。これに関して、原則的に、すべての適した被覆法、印刷法、転写法、噴霧法等が考慮に入れられる。施与は、積層工程の段階になって初めて、1つ又は複数の蛍光体をまず、複合体における第3の側に相当する表面上又は拡散ブロックとして作用する層上に供給することによって行ってもよい。
【0028】
同様に、1つ又は複数の蛍光体は、フィルム形で供給された、拡散ブロックとして用いられる薄い層の励起源の方を向いた面上に、印刷又は被覆の形で持続的に施与されていてよい。付加的に又はその代わりに、拡散ブロックとして用いられる薄い層は、励起源から離れたその面上に、赤外線吸収性被覆又は反射性被覆を備えていてよい。
【0029】
第二の層は、蛍光体を省いた場合、0.38mmの層厚において2mm厚のPlanilux2枚の間で測定して10%超、有利には20%超、有利には35%超、最も有利には50%超のEN 410に準拠したUV透過率を有してよい。
【0030】
好ましくは、第一及び第二の層は、可塑化されたポリビニルアセタール、殊に可塑剤含有ポリビニルブチラール(n−ブチラール及び/又はイソブチラール)、PU又はEVAから成る。
【0031】
本発明の第二の実施形態においては、本発明による蛍光ディスプレイは、
− 蛍光ディスプレイ側Sに配置されている、慣用の低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
− 蛍光ディスプレイ側Bに配置されている、この層上又はこの層に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有する中間層フィルムを含有する。
【0032】
拡散蛍光の低い蛍光体は、蛍光性有機ポリマー、イオン基を有する蛍光体、蛍光性ナノ粒子、従来のフィルムの可塑剤に難溶性の蛍光体(20℃で5g/L未満)であってよい。
【0033】
この実施形態の利点は、蛍光体が高い局所濃度で第3の側に直接接する境界面に留まることである。その後ろにあるフィルム層は、たしかに移動可能なUV吸収剤を含有するが、しかしこれは蛍光体の前には到達し得ない。
【0034】
蛍光体は、印刷されてよいか、被覆又は噴霧によって施与されていてよいか、又は従来のフィルムとガラス側3との間のガラス/ガラスラミネート中に付加的に積層された薄いフィルムの形で導入されてよいか、又は従来のフィルム上に押出された層に導入されていてよい。
【0035】
本発明の第三の実施形態においては、本発明による蛍光ディスプレイは、
− 蛍光ディスプレイ側Sに配置されている、拡散傾向の低いUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
− 蛍光ディスプレイ側Bに配置されている、この層上又はこの層に配置された拡散傾向の低い蛍光体
を有する中間層フィルムを含有する。
【0036】
殊に、拡散し得ないか又は非常に僅かしか拡散し得ないUV吸収剤は、ポリマーUV吸収剤、例えばHallstar社のPolycrylene S1、イオン基を有するUV吸収剤、UV吸収性ナノ粒子、フィルムマトリックス中に粒子として存在する有機UV吸収剤であってよい。この第一のフィルムには、慣用の低分子量UV吸収剤は含まれていないか、若しくは蛍光体の励起波長では吸収しないUV吸収剤のみを含有する(例えばUV−B−吸収剤、例示的に挙げるとすればSandovur VSUC)。
【0037】
この実施形態の第一の変形例においては、第一の層/フィルムに、拡散傾向の低い蛍光体が印刷される。
【0038】
この実施形態の第二の変形例においては、第3の側で、拡散傾向の低い蛍光体を含有する第二のフィルム又は層が導入される。
【0039】
本発明の第四の実施形態においては、本発明による蛍光ディスプレイは、
− 蛍光ディスプレイ側Sに配置されている、拡散し得ないか又は非常に僅かしか拡散し得ないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
− 蛍光ディスプレイ側Bに配置されている、UV吸収剤は含まないが、一方で蛍光体、有利には拡散傾向の低い蛍光体を含有する少なくとも第二の層
を有する中間層フィルムを含有する。
【0040】
この実施形態においては、蛍光体は、層の部分領域中にのみ含まれていてよく、これは、フロントウインドウにおいて通常用いられるシェードバンド/カラーバンド(Farbkeil/Farbband)の代わりに蛍光バンドを生む。層の内側では蛍光バンドを、かつ外側では顔料着色されたシェードバンドをコントラスト強調のために備えることも可能である。
【0041】
本発明の第五の実施形態においては、本発明による蛍光ディスプレイは、
− 蛍光ディスプレイ側Sに配置されている、慣用の低分子量UV吸収剤の1つを含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第一の層、
− 蛍光ディスプレイ側Bに配置されている、少なくとも1つの蛍光体を含有する拡散ブロックとしての少なくとも1つの薄いフィルム
− UV吸収剤を含有しないか又は蛍光体の選択された励起波長では吸収しないUV吸収剤を含有する可塑剤含有ポリビニルアセタールの少なくとも1つの第二の層
を有する中間層フィルムを含有する。第二の層において用いられる蛍光体は、拡散を抑制するものであってはならない。
【0042】
本発明の上記実施形態においては、高い拡散能を有する低分子量(慣用の)UV吸収剤として、例えばベンゾトリアゾール型の化合物、例えばTinuvin P型、Tinuvin 328型、Tinuvin 326型、Tinuvin 327型の化合物又はTinuvin 1577型又はCyasorb 1164型の置換されたフェニルトリアジンを用いてよい。
【0043】
本発明の上記実施形態においては、拡散能を有さないか又は低い拡散能のみを有するUV吸収剤として、例えば、ナノ粒子、例えばナノTiO2、UV吸収性ポリマー、存在するマトリックスに難溶性のUV吸収剤、例えばベンゾオキサジノン型、僅かに置換されたジフェニルヒドロキシフェニルトリアジン型のUV吸収剤、イオン基を有するUV吸収剤、ポリビニルアセタールに化学的に結びついたUV吸収剤、例えばベントリアゾール系UV吸収剤、ポリマーに結合したクリレン基又はアルコキシクリレン基、殊にフェニル環の1つにアルコキシ基を有するもの(例えばUS7,964,245B2に記載)、例えばUS7008618B1に挙げられているUV吸収性ポリマー、又は置換された2−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールであって、例えば、エステル基によって、ポリマー、殊にポリビニルアセタールに結合しているものを使用してよい。
【0044】
可塑化されたポリビニルアセタールの場合、UV吸収剤は難溶性と見なされ、そのつど可塑剤中で20℃にて5g/L未満の溶解度を有する。これに関する一例がCyasorb UV 3638Fである。
【0045】
UV吸収剤は、本発明によれば、0.005〜5質量%、有利には0.1〜2質量%、特に有利には0.2〜1.0質量%、殊に0.1〜0.8質量%の濃度で用いられることができる(そのつどUV吸収剤が含まれている層を基準として)。
【0046】
本発明の上記実施形態においては、低分子量の蛍光体として、公知のレーザー染料、典型的な蛍光染料、例えば置換されたクマリン、アクリジン並びに希土類金属の錯体が用いられることができる。
【0047】
本発明の上記実施形態においては、拡散傾向を有さないか又は僅かしか拡散傾向を有さない蛍光体として、例えば、蛍光性無機ナノ粒子、周囲マトリックスに難溶性の蛍光染料、例えば置換されたペリレン若しくはリレン又はキナクリドン誘導体、イオン基又はイオン特性を有する、例えばウラニンを有する蛍光染料並びにポリマー蛍光体が用いられることができる。
【0048】
一般に、ポリマーの蛍光体として、発光単位をポリマー鎖内に又はポリマー鎖に結合して含む蛍光性ポリマーが用いられることができる。周囲マトリックス中でのそのようなポリマーの拡散傾向が最小となるように、本発明により使用可能な蛍光性ポリマーは、2000g/モル超、有利には5000g/モル超、最も有利には10000g/モル超のモル質量Mnを有しているべきである。
【0049】
周囲マトリックス中若しくは周囲マトリックス表面の蛍光性ポリマーの局所濃度は、高い蛍光性が得られ、かつ強い蛍光消光が起こらないように選択される。
【0050】
本発明の枠内で用いられることができる蛍光性ポリマーの例は、数ある中でも、ポリ(9−アントラセニルメチルアクリレート)、ポリ(9−アントラセニルメチルメタクリレート)、ポリ(3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−alt−アクリジンイエローG)、ポリ(3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物−alt−3,6−ジアミノアクリジンヘミスルフェート)、ポリ(フルオロセインO−アクリレート)、ポリ(フルオロセインO−メタクリレート)、ポリ[(メチルメタクリレート)−co−(7−(4−トリフルオロメチル)クマリンアクリルアミド)]、ポリ[(メチルメタクリレート)−co−(9−アントラセニルメチルメタクリレート)]、ポリ[(メチルメタクリレート)−co−(7−(4−トリフルオロメチル)クマリンメタクリアミド)]、ポリ(ピロメリット酸二無水物−alt−アクリジンイエローG)、ポリ(1,4−フェニレン)(PPP)、ポリフルオレン(PFO)、ポリ(チオフェン)、ポリキノリン、ポリ[2,5−ビス(3',7'−ジメチルオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ[9,9−ビス−(2−エチルヘキシル)−9H−フルオレン−2,7−ジイル]、ポリ[2−(2',5'−ビス(2''−エチルヘキシルオキシ)フェニル)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ{[2−[2',5'−ビス(2''−エチルヘキシルオキシ)フェニル]−1,4−フェニレンビニレン]−co−[2−メトキシ−5−(2'−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]}、ポリ[(2,5−ビスオクチルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン]、ポリ(2,5−ビス(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)−1,4−フェニレンビニレン)、ポリ(3−シクロヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ(9,9−ジ−n−ドデシルフルオレニル−2,7−ジイル)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(アントラセン−9,10−ジイル)]、ポリ(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)]、ポリ(9,9−n−ジヘキシル−2,7−フルオレン−alt−9−フェニル−3,6−カルバゾール)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(9−エチルカルバゾール−2,7−ジイル)]、ポリ(2,5−ジヘキシルオキシ−1,4−フェニレンビニレン)、ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレニル−2,7−ジイル)、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ(3−オクチルチオフェン−2,5−ジイル)、ポリ[(o−フェニレンビニレン)−alt−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−p−フェニレンビニレン)]、ポリ[トリス(2,5−ビス(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレン)−alt−(1,3−フェニレンビニレン)]、ポリ[(1,4−フェニレン−1,2−ジフェニルビニレン)]、ポリキノリンである。
【0051】
本発明により用いられる蛍光体の励起は、有利には、光の非可視領域、例えば300〜420nmの波長領域、有利には350〜400nmの波長領域における照射によって行われる。照射源として、殊にUVレーザーまたはUVLEDを用いてよい。
【0052】
本発明により使用される中間層フィルム、殊に蛍光体が中に又は表面に配置されている中間層フィルムは、有利には、可塑剤含有ポリビニルアセタールより成る1つ以上の層を含んでいてよく、これらは、
a. 0〜50、0〜40、0〜35、5〜35の範囲のアルカリ滴定値(Alkalititer)を有する。これによって、遊離酸又は高いアルカリ度による蛍光体の分解が回避される。
b. 光安定剤、例えばHAS/HALS/NOR−HALS(立体障害アミノエーテル)をラジカル連鎖反応の抑制のために含有し、
c. フェノール系酸化防止剤、例えばLowinox 44B25又はIrganox 245型のBHTを含有し、
d. 音響減衰層を含有し、そうして本発明よる中間層フィルムは、2.1mm厚のガラス2枚の間に貼り合わせて、かつ20℃でISO TS 16940に準拠した測定を行った場合に0.15超、有利には0.20超、有利には0.25超の1次モードの損失係数を有する。音響減衰層も同様に可塑剤含有ポリビニルアセタールから成っていてよい。
【0053】
光安定剤は、殊にHAS/HALS/NOR−HALS(立体障害アミノエーテル)型の立体障害アミン、例えばCiba Specialities社の市販製品Tinuvin 123(NOR−HALS)、Tinuvin 144、Tinuvin 622、Tinuvin 770及びそのジ−N−メチル化された誘導体であってよい。特に良く適しているのは、旭電化社のADK Stab LA−57、LA−52若しくはLA−62又はBASF AGのUVINUL 4050Hである。
【0054】
光安定剤は、殊に0.001〜1質量%(フィルム混合物を基準として)の割合で用いられる。
【0055】
日光の方を向いた側又は層Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせてISO 13837,Convention“A”(2008)に準拠した測定を行った場合に30%未満、20%未満、15%未満、8%未満、6%未満、5%未満、有利には4%未満、有利には3%未満、最も有利には2%未満のUV透過率TUV(400)を有する。
【0056】
日光の方を向いた側又は層Sは、2.1mm厚の透明ガラス2枚の間に組み合わせて、かつISO 13837(2008)に準拠したUV/VIS透過スペクトルの測定を行った場合に50%以下、30%以下、15%以下、10%以下、5%以下、有利には3%以下、有利には2%以下、最も有利には1%以下のUV透過率TUVを有する。
【0057】
本発明の更なる対象は、自動車両のフロントウインドウ、自動車両のサイドウインドウ、飛行機、鉄道又は船舶用のグレイジングとしての、及び建築領域、例えばショーウインドウ、エレベーター又はファサードグレイジングにおいて適用するための、上記特性及び/又は組成を有する中間層フィルムを使用したガラス/ガラスラミネートより成る本発明による蛍光ディスプレイの使用である。
【0058】
これに加えて、更なる1つの変形例においては、ガラス/ガラスラミネートの第4の側に、280〜420nmの波長領域で反射防止作用のある面(コーティング)が備わっていてよい。
【0059】
更に別の変形例においては、このガラス/ガラスラミネートは、光線の通り抜けを簡単にするために、内側のガラス板について、外側のガラス板より小さい厚みを有してよい。自動車両への適用のために、外側の板は、3m以下、有利には2.6mm未満、有利には2mm未満の厚みを有する。関連する内側の板は、有利には、2.6mm以下、2.2mm以下、2.0mm以下、1.8mm以下、1.6mm以下の厚みを有する。
【0060】
本発明の更なる対象は、上記の特性及び/又は組成を有する中間層フィルムを使用したガラス/ガラスラミネートより成る本発明による蛍光ディスプレイを有するフロントウインドウ及びサイドウインドウ及び場合によりUV吸収性ガラスより成るか又は当該ガラスを有する透明なルーフモジュールを備えた自動車両のコンパートメントルーム(KFZ-Fahrgastzelle)である。
【0061】
これによって、フロントウインドウにおける蛍光ディスプレイは、外光の入射及びそれが原因であるコントラスト損失又は制御されない励起から保護される。UV吸収性ガラスは、例えば、UV吸収性の一体式ガラス、又はUV吸収剤を含有する慣用のPVBフィルムを有する複合ガラスであってよい。有利には、上述のUV吸収性ガラスは、ISO 13837,Convention“A”(2008)に準拠した評価及び測定を行った場合に10%未満、有利には4%未満のUV透過率を有する。
【0062】
本発明により使用される中間層フィルムは、個々に押出された部分フィルムを一つにすることによって、又は有利には部分フィルムの共押出によって製造することができる。
【0063】
ポリビニルアセタールより成る本発明により使用される中間層フィルムは、PBVフィルムのために公知の以下の可塑剤の少なくとも1つより成る可塑剤又は可塑剤混合物を含有してよい:ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS)、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジヘキシルアジペート(DHA)、ジブチルセバケート(DBS)、トリエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(3G7)、テトラエチレングリコール−ビス−n−ヘプタノエート(4G7)、トリエチレングリコール−ビス−2−エチルヘキサノエート(3GO若しくは3G8)、テトラエチレングリコール−ビス−n−2−エチルヘキサノ−エト(4GO若しくは4G8)、ジ−2−ブトキシエチルアジペート(DBEA)、ジ−2−ブトキシエトキシエチルアジペート(DBEEA)、ジ−2−ブトキシエチルセバケート(DBES)、ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、トリエチレングリコール−ビス−イソノナノエート、トリエチレングリコール−ビス−2−プロピルヘキサノエート、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート(TOF)及びジプロピレングリコールベンゾエート。
【0064】
ポリビニルアセタールより成る本発明により使用される中間層フィルムは、18〜36質量%、有利には22〜30質量%の可塑剤含有率を有してよい。
【0065】
本発明により使用される中間層フィルムは、当業者の公知の更に別の添加剤、例えば、水の残留量、UV吸収剤、酸化防止剤、接着調整剤、蛍光増白剤、安定剤、染料、加工助剤、有機若しくは無機ナノ粒子、熱分解法シリカ及び/又は表面活性物質を含有してよい。
【0066】
接着調整剤(粘着防止剤)とは、本発明の枠内では、ガラス面に対する可塑剤含有ポリビニルアセタールフィルムの粘着性を調整することができる化合物を意味する。この種類の化合物は当業者に知られており、実際に、このために有機酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、例えば酢酸カリウム/マグネシウム又は相応する2個より多い炭素原子を有するカルボン酸塩が用いられる。
【0067】
ポリビニルアセタールの製造のために、ポリビニルアルコールが水に溶解され、かつアルデヒド、例えばブチルアルデヒドにより酸触媒の添加の下でアセタール化される。沈殿したポリビニルアセタールは分離され、中性に洗浄され、場合によりアルカリ性に調整された水性媒体に懸濁され、その後、新たに中性に洗浄され、かつ乾燥される。
【0068】
ポリビニルアセタールのポリビニルアルコール含有率は、アセタール化の際に用いられるアルデヒドの量によって調整されることができる。アセタール化を2〜10個の炭素原子を有する他の又は複数のアルデヒド(例えばn−ブチルアルデヒド及び/又はイソブチルアルデヒド)、バレルアルデヒド)を用いて実施することも可能である。
【0069】
可塑剤含有ポリビニルアセタールをベースとするフィルムは、有利には架橋されていないポリビニルブチラール(PVB)を含有し、これはポリビニルアルコールのブチルアルデヒドによるアセタール化によって取得される。
【0070】
架橋されたポリビニルアセタール、殊に架橋されたポリビニルブチラール(PVB)の使用も同様に可能である。適した架橋されたポリビニルアセタールは、例えばEP1527107B1及びWO2004/063231A1(カルボキシル基含有ポリビニルアセタールの熱的自己架橋)、EP1606325A1(ポリアルデヒドと架橋したポリビニルアセタール)及びWO03/020776A1(グリオキシル酸と架橋したポリビニルアセタール)に記載されている。これらの特許出願の全開示内容を、参照をもって本開示に含める。
【0071】
ポリビニルアルコールとして、本発明の枠内では、加水分解された酢酸ビニル/エチレン−コポリマーより成るターポリマーも用いられることができる。これらの化合物は、一般に92モル%超が加水分解されており、かつエチレンをベースとする単位(例えばKuraray Europe GmbHの“Exceval”型)1〜10質量%を含有する。
【0072】
さらに、ポリビニルアルコールとして、本発明の枠内では、酢酸ビニルと少なくとも1種の更なるエチレン性不飽和モノマーとより成る加水分解されたコポリマーも用いることができる。
【0073】
ポリビニルアルコールは、本発明の枠内では、純粋に又は異なる重合度又は加水分解度を有するポリビニルアルコールの混合物として用いられることができる。
【0074】
本発明により使用される中間層フィルムは、殊に、0.1〜11モル%、ここで、有利には0.1〜4モル%、特に有利には0.1〜2モル%の、若しくは音響を減衰する付加的な層として使用される場合は5〜8モル%の割合のポリビニルアセテート基を有するポリビニルアセタールを含有してよい。
【0075】
本発明により使用される中間層フィルムの製造のために、部分フィルムをまず個々に押出によって製造し、引き続き機械的に、例えばフィルムロールに一緒に巻き取ることによってつなぎ合わせてよい。
【0076】
中間層フィルムを部分フィルムの同時共押出によって製造することも可能である。共押出は、例えば、相応して備え付けられた多層ノズル又はフィードブロックにより行ってよい。
【0077】
自動車領域においては、上方領域にいわゆるカラーバンドを有するフィルムが頻繁に使用される。このために、相応して着色された溶融ポリマーを有するフィルムの上部が共押出されるか、又は多層系において部分フィルムの1つが異なる色を有していてよい。本発明において、これは少なくとも1つの部分フィルムを完全に又は部分的に着色することによっても実現可能である。
【0078】
本発明により使用される中間層フィルムの製造は、一般に押出又は共押出によって行われ、これにより、特定の条件下(溶融圧力、溶融温度及びツール温度)で、溶融損傷表面、すなわち確率論的な表面粗さ(stochastische Oberflaechenrauheit)が得られる。
【0079】
代替案として、既に製造された中間層フィルムに、少なくとも1つのロール対の間への型押しプロセスによって、非確立論的な、規則的な粗さを付与してもよい。型押しされたフィルムは、一般に複合ガラス製造において改善された脱気挙動を有し、有利には自動車領域において用いられる。
【0080】
本発明により使用される中間層フィルムは、製造法とは無関係に、15〜150μmの粗さRz、有利には15〜100μmの粗さRz、特に有利には20〜80μmの粗さRz、殊に30〜75μmの粗さRzを有する表面構造を片側若しくは特に有利には両側に持つ。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】通常の構造のフロントウインドウの4つのガラス面を有するガラス/ガラスラミネートの基本的な配置を示す図
図2】本発明による中間層フィルムを有するガラス/ガラスラミネートより成る蛍光ディスプレイの基本的な配置を示す図
【0082】

蛍光体の不所望の励起はフィルムの曇りにつながり、これはColorquest XE機器、光源C/2°を用いて測定したヘイズ値により、ASTM D 1003に従って測定することができる。
【0083】
染料の不所望の励起によって得られる蛍光を模擬実験するために、蛍光染料を含有する中間層フィルムのヘイズ値を測定した。中間層フィルムは、2枚の、すなわち2mm厚のPlaniluxガラス板2枚の間に貼り合わせた。
【0084】
この測定においては、測定装置の光源は、日射(可視光+UV)を表し、これは外側(S側)から蛍光性フィルムに当たり、かつ不自然なヘイズにつながる。なぜなら、染料は意図せず励起されるからである。検出器は、B側(観察者)に配置している。
【0085】
比較例V1では、光源の前に、蛍光性フィルム/PETフィルムと、標準UV保護(V2)を備えたフィルムとより成るラミネートを配置した。
【0086】
例1では、光源の前に、蛍光性フィルム、PETフィルム及び本発明によるUV保護を備えたフィルムより成るラミネートを配置した。
【0087】
PETフィルムは23μm厚であり、蛍光体とUV吸収剤との空間的な分離に用いた。
【0088】
【表1】
【0089】
標準UV保護を使用した場合、意図しない染料の励起は十分には防止されない。これによって、曇りは1の値を上回り、これは光学的に透明なガラス板には許容され得ない値となる。
【0090】
本発明によるUV保護によって初めて、UV光が必要な程度でフィルタリングされ、その結果、不所望の蛍光が抑制され、かつ曇り/ヘイズが許容され得る値にまで下がる。
【符号の説明】
【0091】
B 蛍光ディスプレイの観察者の方を向いた側、 S 日光の方を向いた側
図1
図2