【実施例】
【0067】
実施例1
【0068】
II: N2-(3-アミノスルホニル-4-メチルフェニル)-5-フルオロ-N4-[4-(プロパ-2-イニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン
4-ニトロフェノール(1.00 g, 7.19 mmol)、臭化プロパルギル(トルエン中80 wt %; 0.788 mL, 7.09 mmol)およびK
2CO
3 (1.08 g, 7.84 mmol)を混ぜ合わせ、アセトン(16.0 mL)中60℃で18時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、水(200 mL)で希釈した。4-(プロパ-2-イニルオキシ)ニトロベンゼンを吸引ろ過により白色の固形物として分離した(1.12 g)。
【0069】
4-(プロパ-2-イニルオキシ)ニトロベンゼン(0.910 g, 5.13 mmol)、鉄(1.42 g, 25.3 mmol)およびNH
4Cl (0.719 g, 12.8 mmol)をEtOH/水(1:1, 55 mL)中70℃で15分間激しく撹拌した。反応混合物を珪藻土を通して熱ろ過し、真空で濃縮した。残留物を10% 2 Nアンモニア性メタノールのジクロロメタン液に懸濁し、超音波処理し、珪藻土に通してろ過した。濃縮により4-(プロパ-2-イニルオキシ)アニリンを油状物として得て、これをさらには精製せずに用いた。
【0070】
4-(プロパ-2-イニルオキシ)アニリン(0.750 g, 5.10 mmol)および2,4-ジクロロ-5-フルオロピリミジン(1.27 g, 0.760 mmol, Sigma-Aldrich of Milwaukee, Wisconsin, USAから市販されている)をMeOH/水(4:1, 35 mL)中、室温で18時間撹拌した。反応混合物をEtOAc (200 mL)で希釈し、1 N HCl (50 mL)および塩水(50 mL)で洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO
4)、ろ過し、真空で濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサンをEtOAc:ヘキサン(1:10)に勾配)により精製して、2-クロロ-5-フルオロ-N4-[4-(プロパ-2-イニルオキシ)フェニル]-4-ピリミジンアミンを淡褐色の固形物(0.514 g)として得た。
【0071】
2-クロロ-5-フルオロ-N4-[4-(プロパ-2-イニルオキシ)フェニル]-4-ピリミジンアミン(0.514 g, 1.85 mmol)、3-(アミノスルホニル)-4-メチルアニリン(0.689 g, 3.70 mmol, 市販されている2-メチル-5-ニトロベンゼンスルホンアミドの還元によって作製され、または下記の通りに合成された)およびトリフルオロ酢酸(0.186 mL, 2.41 mmol)を密閉バイアル中でiPrOH (6.0 mL)と混合し、3時間100℃で加熱した。反応混合物を室温に冷却し、1 N HCl (80 mL)で希釈した。N2-(3-アミノスルホニル-4-メチルフェニル)-5-フルオロ-N4-[4-(プロパ-2-イニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン(II)を吸引ろ過により白色の固形物として分離した(0.703 g)。
【0072】
I: 5-フルオロ-N2-(4-メチル-3-プロピオニルアミノスルホニルフェニル)-N4-[4-(プロパ-2-イニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン
N2-(3-アミノスルホニル-4-メチルフェニル)-5-フルオロ-N4-[4-(プロパ-2-イニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン, II, (0.200 g, 0.467 mmol)、DMAP (40 mg, 0.33 mmol))およびトリエチルアミン(0.118 mL, 0.847 mmol)をTHF (6.0 mL)中で撹拌した。無水プロピオン酸(0.180 mL, 1.40 mmol)を溶液に滴加した。反応混合物を室温で終夜撹拌した。溶液を酢酸エチル(50 mL)で希釈し、水(5×25 mL)および塩水(10 mL)で洗浄した。有機層を乾燥し(MgSO
4)、ろ過し、蒸発させた。残留物を酢酸エチル(25 mL)に懸濁し、超音波処理し、固形物をろ過により集めて、5-フルオロ-N2-(4-メチル-3-プロピオニルアミノスルホニルフェニル)-N4-[4-(プロパ-2-イニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン, I, (0.20 g)を得た。
【0073】
III: 5-フルオロ-N2-(4-メチル-3-プロピオニルアミノスルホニルフェニル)-N4-[4-(プロパ-2-イニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン一ナトリウム塩
5-フルオロ-N2-(4-メチル-3-プロピオニルアミノスルホニルフェニル)-N4-[4-(プロパ-2-イニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミン, I, (0.125 g, 0.258 mmol)をアセトニトリル(1.5 mL)および水(1.5 mL)に懸濁し、氷浴中で冷却した。1 N NaOH水溶液(0.260 mL)を滴加した。反応混合物を、透明になるまで撹拌し、グラスウールに通してろ過し、凍結乾燥してIのナトリウム塩を得た。
【0074】
以下の化合物を上記と同様の様式で作製した。
【0075】
IV: 5-フルオロ-N2-[4-メチル-3-(N-プロピオニルアミノスルホニル)フェニル]-N4-[4-(2-プロピニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミンカリウム塩
【0076】
V: 5-フルオロ-N2-[4-メチル-3-(N-プロピオニルアミノスルホニル)フェニル]-N4-[4-(2-プロピニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミンカルシウム塩
【0077】
VI: 5-フルオロ-N2-[4-メチル-3-(N-プロピオニルアミノスルホニル)フェニル]-N4-[4-(2-プロピニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミンアルギニン塩
【0078】
VII: 5-フルオロ-N2-[4-メチル-3-(N-プロピオニルアミノスルホニル)フェニル]-N4-[4-(2-プロピニルオキシ)フェニル]-2,4-ピリミジンジアミンコリン塩
【0079】
実施例2
【0080】
5-アミノ-2-メチルベンゼンスルホンアミド
4-メチルニトロベンゼン(20 mmol)をクロロスルホン酸(5.29 mL, 80 mmol)により0℃で処理し、次いで、均一溶液を室温に戻した後に、この溶液を110℃で24時間撹拌した。得られたスラリーを次いで、氷水(100 gm)に注ぎ、ジエチルエーテル(3×75 mL)で抽出し、有機相を水(75 mL)で洗浄し、次に無水硫酸ナトリウムで乾燥した。次に溶媒を減圧下で除去して粗スルホニルクロリドを得て、これを酢酸エチルに溶解し、室温で終夜、水酸化アンモニウムとともに撹拌した。酢酸エチル層を分離した後に、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を混ぜ合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。得られた油状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン、その後ヘキサン中10%、20%、最大で50%までの酢酸エチル)により精製して、3-アミノスルホニル-4-メチルニトロベンゼン、LCMS: 純度: 95%; MS (m/e): 217 (MH+)を得た。
【0081】
3-アミノスルホニル-4-メチルニトロベンゼンのジクロロメタンおよびメタノール溶液に10% Pd/Cを加え、混合物を水素雰囲気下、15分間50 psiで振盪した。混合物を珪藻土に通してろ過し、ろ過ケーキをメタノールで洗浄した。混ぜ合わせた有機溶媒を減圧下で濃縮して粗生成物を得て、これをフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン 1:1)によりさらに精製して、3-アミノスルホニル-4-メチルアニリン、LCMS: 純度: 87%; MS (m/e): 187 (MH+)を得た。
【0082】
V.開示される組成物の具体例を作製する方法
開示される組成物は、開示される構成要素を適切な量で組み合わせることによって作製されてもよい。特定の開示される態様は、化合物Iまたは化合物Iコリン塩を含む組成物に関する。いくつかの開示される態様において、組成物の具体例はまた、限定された量の化合物II(例えば、約300μg/mL未満)を含んでもよい。適した組成物の具体例はまた、化合物I、化合物Iコリン塩、または化合物IIを必要としない組成物も含む。これらの態様において、組成物は、ポリビニルピロリドンを含むことができる。いくつかの態様は、緩衝剤および等張化剤をさらに含むことができる。例示的な組成物は、ポリビニルピロリドン、リン酸緩衝剤、およびプロピレングリコールを含む。
【0083】
化合物Iおよび/または化合物IIを含む開示される組成物の具体例は、ビヒクル溶液ならびに化合物Iおよび/または化合物IIを含む溶液などの、二つの別々の溶液を調製することによって作製されてもよい。ビヒクルは、標的量の組成物の各構成要素(化合物I以外)を容器中に順次秤量すること、およびその後、溶媒、典型的には水を添加することによって作製することができる。典型的には、構成要素を混合して溶解度を確実にするために、標的量の約2/3などの、標的量未満の量の溶媒を添加する。pHは、NaOH溶液(ビヒクルをより塩基性にするため)またはHCl溶液(ビヒクルをより酸性にするため)などの適切な溶液を用いて調整してもよい。典型的には、pHを、7.5 +/- 0.1にまたは約7.6〜約7.8に調整する。撹拌およびpH調整の後で、標的最終重量を達成するために、残りの量の溶媒を添加してもよい。特定の開示される態様において、ビヒクルの密度は約1.02 g/mLである。
【0084】
ビヒクルを作製した後、化合物Iおよび/または化合物IIを含む溶液を、溶液を撹拌しながらゆっくりとビヒクルに添加してもよい。化合物Iおよび/または化合物IIが撹拌で完全には溶解しない場合、その時は音波処理を用いて溶解を促進してもよい。7.5 +/- 0.1のpHを達成するために、上記で開示される方法を用いてpHを調整してもよい。化合物Iおよび/または化合物IIを含まない態様が、さらなる操作なしで使用されてもよい。
【0085】
標的重量オスモル濃度を達成するために、組成物の重量オスモル濃度を調整してもよい。例えば、重量オスモル濃度を、308 mOsm/kgの涙液重量オスモル濃度の標的範囲内であるように調整してもよい。開示される組成物の具体例の重量オスモル濃度は、ある量のNaClまたはプロピレングリコールを添加することによって、調整してもよい。添加されるべきNaClまたはプロピレングリコールの量は、開示される組成物において使用される各構成要素の重量オスモル濃度を決定するために、下記の式Iを用いること、およびその後、標的重量オスモル濃度(例えば、300 mOsm/kgまたは275 (±45) mOsm/kg)から各構成要素の重量オスモル濃度を差し引くことによって、決定してもよい。
成分の重量オスモル濃度=g/Lでの量×(i価)×1000/分子量=mOsml/Kg (I)
【0086】
開示される組成物を、試料にストレスを加えることによって、化学的および/または物理的安定性について試験してもよい。この種類の試験のために使用される試料は、開示される組成物を滅菌すること、例えば、開示される組成物をミクロフィルター(例えば、0.2ミクロンフィルター)に通過させ、その後ある量の滅菌された組成物をガラスアンプルに移し、その後密封することによって、調製することができる。アンプル中に存在する試料にその後、さまざまな温度でストレスを加える。例えば、外見および不純物プロファイルを分析するために、異なる時点でストレスを加えた後、試料を分析する。
【0087】
本明細書において開示されるさまざまな賦形剤を、開示される組成物の具体例を形成するために添加することができる。これらの賦形剤は、個々の構成要素、混合物、溶液、およびまたは懸濁液として添加することができる。表3は、本明細書において開示される局所眼部用組成物を形成するのに有用な賦形剤の例を提供する。
【0088】
(表3)本眼部用組成物における使用のための例示的な賦形剤
【0089】
VI.開示される組成物を使用する方法
開示される組成物の具体例は、一つまたは複数の眼の疾患または障害を処置、改善、または予防するために使用されてもよい。いくつかの態様において、ポリビニルピロリドンを含む組成物が、そのような疾患または障害を処置するために使用されてもよい。そのような組成物は、緩衝剤および等張化剤をさらに含んでもよい。いくつかの態様において、化合物Iおよび/または化合物II(またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、N-酸化物、もしくは溶媒和物)を含む組成物が、そのような疾患または障害を処置するために使用されてもよい。これらの態様において、化合物Iおよび/またはII(またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、N-酸化物、もしくは溶媒和物)の、本明細書において開示される眼の疾患または障害を処置、改善、および/または予防する能力は、そのような化合物の、JAKキナーゼの強力かつ選択的な阻害剤として作用する能力に帰する可能性があり、JAK3を含有するサイトカインシグナル伝達経路に特に選択的でありうる。開示される組成物のある特定種の態様は、JAKキナーゼ活性、JAKキナーゼが役割を担うシグナル伝達カスケード、およびそのようなシグナル伝達カスケードによってもたらされる生物学的応答を調節または阻害するために、各種のインビトロ、インビボ、およびエクスビボの状況で使用されてもよい。例えば、開示される組成物の具体例は、インビトロまたはインビボのいずれかで、JAKキナーゼを発現する実質的に任意の細胞型(例えば、JAK3が大部分に発現している造血細胞)において、JAKキナーゼを阻害するために使用されてもよい。本明細書において開示されるある特定の組成物はまた、JAKキナーゼ、特にJAK3が役割を担うシグナル伝達カスケードを調節するために使用されてもよい。そのようなJAK依存性のシグナル伝達カスケードは、例えば、IL-4、IL-7、IL-5、IL-9、IL-15およびIL-21、またはIL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21受容体シグナル伝達カスケードなどの、共通γ鎖を含むサイトカイン受容体のシグナル伝達カスケードを含むが、これらに限定されない。化合物Iおよび/またはII(またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物、もしくはN-酸化物)はまた、そのようなJAK依存性のシグナル伝達カスケードによって影響を受ける細胞応答または生物学的応答を調節するため、特に阻害するために、インビトロまたはインビボで使用されてもよい。そのような細胞応答または生物学的応答は、IL-4/ラモス(ramos)CD23の上方制御、IL-2媒介性のT細胞増殖などを含むが、これらに限定されない。重要なことに、化合物Iおよび/またはII(またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物、もしくはN-酸化物)は、JAKキナーゼ活性によって全体的または部分的に媒介される疾患の処置または予防に対する治療的アプローチとして、インビボでJAKキナーゼを阻害するために使用されてもよい。そのような疾患は、「JAKキナーゼ媒介性疾患」といわれる。
【0090】
特定の動作理論に限定されるわけではないが、眼の障害の処置、改善、および/または予防は、少なくとも部分的に、本明細書において開示される組成物の構成要素に起因すると、現在考えられている。いくつかの態様において、眼の疾患または障害は、少なくとも部分的に、JAKキナーゼによって媒介されている可能性があり、したがって、化合物Iおよび/または化合物IIを含む組成物の具体例を用いて処置されうる。いくつかの態様において、開示される組成物の具体例を用いて処置または予防することができる眼の疾患または障害は、ドライアイ症候群、ブドウ膜炎、アレルギー性結膜炎、緑内障、交感性眼炎および(眼の)酒さを含むがこれらに限定されない、眼の疾患および障害を含む。
【0091】
乾性角結膜炎(KCS)、乾性角膜炎、乾燥症候群、または眼球乾燥症として別に知られているドライアイ症候群(DES)は、ヒトおよびいくつかの動物においてよく見出される、涙液産生の減少または涙液層蒸発の増加によって引き起こされる眼の疾患である。ブドウ膜炎または虹彩毛様体炎は、眼の中間層(「ブドウ膜」)の炎症を指し、一般的な用法においては、眼の内部に影響を与える任意の炎症過程を指しうる。アレルギー性結膜炎は、アレルギーによる結膜(眼の白色部分を覆う膜)の炎症である。緑内障は、視神経に影響を与える疾患群を指し、特徴的パターンでは網膜神経節細胞の喪失、すなわち一種の視神経症を伴う。眼内圧の上昇が、緑内障を発症する有意なリスク因子であり(22 mmHgまたは2.9 kPaより上)、炎症過程、例えばブドウ膜炎は、この眼内圧の上昇を引き起こしうる。酒さは、顔面紅斑を特徴とする慢性炎症状態であるが、眼および鼻(鼻瘤)に影響を与えうる。開示される組成物の具体例は、そのような眼の疾患および/または障害を処置するために使用されてもよい。一つの態様において、眼の疾患および/または障害は、ドライアイ症候群、糖尿病性網膜症、黄斑変性症 ブドウ膜炎、アレルギー性結膜炎、緑内障、酒さ、およびそれらの組み合わせから選択される。一つの態様において、眼の疾患および/または障害はドライアイ症候群である。別の態様において、眼の疾患および/または障害はブドウ膜炎である。一つの態様において、眼の疾患および/または障害はアレルギー性結膜炎である。一つの態様において、眼の疾患および/または障害は緑内障である。別の態様において、眼の疾患および/または障害は酒さである。
【0092】
開示される組成物を投与するための方法の具体例が、本明細書において開示される。方法は、有効量の組成物を提供する段階、および組成物を対象の眼に適用する段階を含んでもよい。組成物の開示される具体例の任意のものが使用されてもよい。ある特定の態様において、組成物を適用する段階は、局所的な配置または注射を介して、対象の眼を組成物に曝露することを含む。局所的な配置は、典型的に、一滴または複数滴の組成物を対象の眼の上に置くことに関する。
【0093】
開示される組成物の具体例を投与する段階を含む、眼の疾患または障害を処置するための方法もまた、本明細書において開示される。方法は、一つまたは複数の非薬物介入を行う段階をさらに含んでもよい。特定の開示される態様において、一つまたは複数の非薬物介入は、涙点閉鎖、角膜を覆う、液体で満たされた層を作り出すスクレラルまたはセミスクレラルのコンタクトレンズの対象への取り付け、およびそれらの組み合わせから選択されてもよい。開示される方法はまた、コルチコステロイド、抗ヒスタミン薬、抗生物質、抗炎症薬、抗ウイルス薬、緑内障薬、およびそれらの組み合わせから選択されうる、一つまたは複数の薬理学的活性剤を投与する段階をさらに含んでもよい。
【0094】
特定の開示される態様は、本明細書において開示される組成物の具体例の任意の一つ、および、分離可能なまたは一体型の点滴器を装備していてもよい、組成物を収納する容器を含むキットに関する。
【0095】
開示される組成物の具体例は、単独で投与されてもよいし、または、眼の疾患および/または障害を処置するのに有用な他の剤と組み合わせて投与されてもよい。特定の開示される態様において、開示される組成物は、わずかな例を挙げると、ステロイド、膜安定化薬、5-リポキシゲナーゼ(5LO)阻害剤、ロイコトリエン合成および受容体阻害剤、IgEアイソタイプスイッチングまたはIgE合成、IgGアイソタイプスイッチングまたはIgG合成の阻害剤、β-アゴニスト、トリプターゼ阻害剤、アスピリン、シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤、メトトレキサート、抗TNF薬、rituxan、PD4阻害剤、p38阻害剤、PDE4阻害剤、ならびに抗ヒスタミン薬などの、他の障害または疾病を処置するのに有用な剤と組み合わせて投与されてもよい。
【0096】
開示される組成物の具体例を投与する段階と組み合わせて使用されうる特定の免疫抑制療法は、例えば、メルカプトプリン;プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、およびプレドニゾロンなどのコルチコステロイド;シクロホスファミドなどのアルキル化剤;シクロスポリン、シロリムス、およびタクロリムスなどのカルシニューリン阻害剤;ミコフェノラート、ミコフェノール酸モフェチル、およびアザチオプリンなどのイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ(IMPDH)の阻害剤;ならびに、さまざまな抗体(例えば、抗リンパ球グロブリン(ALG)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、モノクローナル抗T細胞抗体(OKT3))および放射線照射を含む、レシピエントの液性免疫応答を無傷のままにしながら細胞性免疫を抑制するように設計された剤を含む。これらのさまざまな剤は、市販の薬物の形態に添付の処方情報において指定されているように(2006年版の
The Physician's Desk Reference中の処方情報もまた参照されたい)、その標準的または一般的な投与量にしたがって使用することができ、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0097】
アザチオプリンは商標名AZASANでSalix Pharmaceuticals, Inc.から現在入手可能であり;メルカプトプリンは商標名PURINETHOLでGate Pharmaceuticals, Inc.から現在入手可能であり;プレドニゾンおよびプレドニゾロンはRoxane Laboratories, Inc.から現在入手可能であり;メチルプレドニゾロンはPfizerから現在入手可能であり;シロリムス(ラパマイシン)は商標名RAPAMUNEでPfizerから現在入手可能であり;タクロリムスは商標名PROGRAFでFujisawaから現在入手可能であり;シクロスポリンは商標名SANDIMMUNEでNovartisから、および商標名GENGRAFでAbbottから現在入手可能であり;ミコフェノール酸モフェチルおよびミコフェノール酸などのIMPDH阻害剤は、商標名CELLCEPTでRocheから、および商標名MYFORTICでNovartisから現在入手可能であり;アザチオプリンは商標名IMURANでGlaxo Smith Klineから現在入手可能であり;ならびに抗体は、商標名ORTHOCLONEでOrtho Biotechから、商標名SIMULECT(バシリキシマブ)でNovartisから、および商標名ZENAPAX(ダクリズマブ)でRocheから現在入手可能である。
【0098】
一つの態様において、開示される組成物の具体例は、抗ヒスタミン薬、抗生物質、抗炎症薬、抗ウイルス薬、および緑内障薬と組み合わせてか、または補助的にかのいずれかで、投与することができる。一般的な抗ヒスタミン薬は、livostin、patanol、クロモリン、alomideを含む。フェニラミンなどの、作用が弱いがより軽度の症例において非常に役立つ、眼用の処方箋が不要な抗ヒスタミン薬もある。眼において使用される一般的な抗生物質の例は、スルファセタミド、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、シプロフロキサシン、およびオフロキサシンである。コルチコステロイド(時には「ステロイド」といわれる)は、副腎によって産生される天然物質に類似しており、多種多様な眼の問題に対して非常に有効な抗炎症薬である。コルチコステロイドは、眼において安全に使用することができ、プレドニゾンのような経口ステロイドと関連するリスクの大部分を保有しない。眼を処置するために使用されるコルチコステロイドは、プレドニゾロン、フルオロメトロン、およびデキサメタゾンを含むが、これらに限定されない。眼用の非ステロイド性抗炎症薬は、イブプロフェン、ジクロフェナク、ケトロラク、およびフルルビプロフェンを含むが、これらに限定されない。一般的な抗ウイルス眼薬は、トリフルオロチミジン、アデニン、アラビノシド、およびイドクスウリジンを含むが、これらに限定されない。緑内障薬は、典型的に、失明を結果としてもたらす視神経への損傷を阻止するために、眼の内部の液圧である眼の眼内圧を低減することを試みる。これらの薬は、眼において産生される体液の量を減少させること、眼の天然の排液管を通って出る体液の量を増加させること、または体液が眼を去るための追加的な経路を提供することによって、圧力を低下させうる。これらの効果を組み合わせて、一つの薬だけで可能であるよりもさらにいっそう圧力を低下させることができるため、しばしば、一つより多い緑内障薬が同時に使用されることになる。一般的な緑内障薬は、チモロール、メチプラノロール、カルテオロール、ベタキソロール、およびレボブノロールなどのβ遮断薬;ラタノプロストなどのプロスタグランジン類似体;ピロカルピンおよびカルバコールなどのコリン作動性アゴニスト;ブロモニジンおよびiopidineなどのαアゴニスト;ドルゾラミドなどの炭酸脱水素酵素阻害剤;ならびにエピネフリンおよびジピベフリンなどのアドレナリン作動性アゴニストを含むが、これらに限定されない。
【0099】
開示される組成物の具体例で処置される対象は、眼の疾患および/または障害の存在を示唆する臨床所見または眼科検査に基づいて選抜される。例えば、対象は、眼の不快なまたは焼けるような感覚を訴える可能性がある。重症例では、羞明またはかすみ目が存在する可能性さえある。例えば、酒さ性ざ瘡、放射線療法、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、もしくは強皮症、または他の自己免疫障害の既存の診断を有する患者においては、患者の病歴もまた、ドライアイを示唆しうる。マイボーム腺炎、結膜拡張、涙液メニスカスの減少、涙液細片の増加、粘液ストランド(mucus strand)、または乾性角結膜炎と一致する染色パターンを検出するために、細隙灯での生体顕微鏡検査が典型的に行われる。10秒未満の涙液層破壊時間がまた評価されてもよく、特許請求される剤での処置から恩恵を受けると考えられる対象をより客観的に特定するために、シルマー試験が頻繁に行われる。特定の群の患者、例えば、涙腺からの涙液産生が減少している患者(例えば、免疫媒介性障害または他の障害による涙腺の機能低下を示唆するシルマー試験を有している患者)が、処置のために選抜されてもよい。
【0100】
開示される組成物は、眼の疾患を処置、改善、および/または予防するために必要とされる頻度で、目薬を用いて眼に滴下されてもよい。例えば、開示される組成物は、1日に2回、3回、4回、またはそれより多く投与されてもよい。処置は、少なくとも1週間、1か月間、または1年間継続してもよく、一部の対象において、処置は複数年に及んでもよい。
【0101】
特定の症例において、対象は、薬学的介入、非薬学的介入、またはそれらの組み合わせとの併用処置のために選抜される。例えば、涙点閉鎖が、眼からの涙液の流出を減少させるために行われ、他方で、特許請求される組成物が、涙腺の涙液産生を増加させる。さらに別の例は、角膜を覆う、液体で満たされた層を作り出すスクレラルまたはセミスクレラルコンタクトレンズの対象への取り付けである。
【0102】
開示される組成物の具体例を、ドライアイと関連する状態などの別の状態を処置する別の剤と組み合わせる組み合わせ療法もまた、提供される。いくつかの例において、対象は、ドライアイと関連する基礎障害と診断され、組み合わせ療法が対象に施与される。一つの例において、対象は、酢酸プレドニゾロン眼部用懸濁液1%などの、コルチコステロイドの局所適用に応答性であると考えられる、マイボーム腺炎を有することが見出される。開示される組成物の構成要素を、プレドニゾロン組成物中に懸濁し、1日に2〜4回眼に滴下することができる。他の例において、ドライアイは、季節性アレルギーまたは他の炎症状態と関連しており、目薬は、抗ヒスタミン薬(フェニラミン、エメダスチン、もしくはアゼラスチンなど)、充血除去剤(塩酸テトラヒドロゾリンもしくはナファゾリンなど)、または非ステロイド性抗炎症剤(ネパフェナクもしくはケトロラクなど)、コルチコステロイド(フルオロメトロンもしくはロテプレドノールなど)、肥満細胞安定剤(アゼラスチン、cromal、エメダスチン、ケトチフェン、ロドキサミド、ネドクロミル、オロパタジン、もしくはペミロラストなど)を含む組成物と共にまたはその中で投与される。ドライアイが感染性細菌状態(マイボーム腺感染症または角膜感染症など)と関連する場合には、目薬は、適切な抗生物質(シプロフロキサシン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、オフロキサシン、スルファセタミド、トブラマイシン、またはモキシフロキサシンなど)を含有しうる複合組成物と共にまたはその中で投与される。ドライアイがウイルス感染症と関連する場合には、目薬は、トリフルリジンまたはイドクスウリジンなどの抗ウイルス剤を有する複合組成物と共にまたはその中で投与される。
【0103】
組み合わせ療法の別の例は、刺激された眼および毛細血管拡張症を伴う顔面紅斑を呈した後に眼の酒さと診断される対象である。対象は、開示される組成物の具体例を含む目薬で処置され、かつ対象はまた、経口抗生物質、例えばミノサイクリンなどのテトラサイクリン抗生物質で処置される。
【0104】
別の例において、対象は、ドライアイおよび別の既存の自己免疫障害を呈し、開示される組成物を含む目薬で処置される。対象はまた、漸減用量のプレドニゾロンなどの全身(例えば)経口コルチコステロイド療法で処置される。
【0105】
一つの局面において、処置は、ドライアイ症候群を患っている対象の状態の改善を結果としてもたらす。この改善は、下角膜フルオレセイン染色の低減、シルマー試験の改善、またはドライアイ症候群の兆候および/もしくは症状の改善のうちの一つまたは複数によって実証されうる。そのような改善は、例として、眼表面疾患指数、眼快適指数などを用いて測定されうる。
【0106】
VII.製造例
全般的な材料:
・化合物Iコリン塩
・ポビドン(PVPまたはポリビニルピロリドン)K30、USP/EP
・プロピレングリコール(PG)、USP/EP
・リン酸二水素ナトリウム、一水和物(NaH
2PO
4・H
2O)、USP/EP
・リン酸水素二ナトリウム、無水物(Na
2HPO
4)、USP/EP
・精製水、USP
・10N水酸化ナトリウム(NaOH)および10N塩酸(HCl)
・滅菌ポリエーテルスルホン(PES)膜フィルター(0.2μmの孔サイズ)
【0107】
装置:天秤、磁気撹拌機または機械的混合機、ガラスまたはステンレス鋼の容器、pHメーター、浸透圧計、および種々雑多な実験室用品。
【0108】
ビヒクル調製:
必要とされる量のおよそ2/3の水を適した容器中に移して、室温で撹拌した。必要とされる量のPVPを、混合しながら、少量の部分ずつ水に添加した。透明の溶液に達するまで、混合を室温で継続した。必要とされる量のNaH
2PO
4・H
2OおよびNa
2HPO
4を容器中に添加して、透明な溶液に達するまで室温で混合した。水を、標的重量の約95%になるように添加して、十分に混合した。pHを、NaOHまたはHClで7.5 +/- 0.1に調整してもよい。PG(約1.75%)を、300 +/- 10 mOsm/kgの重量オスモル濃度を達成するように添加した。十分な量の水(QS)を、標的重量を達成するように添加して(例えば、製剤の密度が1.02 g/mLであると、100 mLの製剤の標的重量は102 gである)、完全に混合した。ビヒクルを、0.2μmのPESフィルターで濾過した。
【0109】
化合物Iおよび/またはIIを含む組成物のための例示的な調製法:
製剤を、N
2保護の下で調製した。必要とされる量のおよそ2/3の水を適した容器中に移して、室温で撹拌した。必要とされる量のPVPを、混合しながら、少量の部分ずつ水に添加した。透明の溶液に達するまで、混合を室温で継続した。必要とされる量のNaH
2PO
4・H
2OおよびNa
2HPO
4を容器中に添加して、透明な溶液に達するまで室温で混合した。水を、標的重量の約95%になるように添加して、十分に混合した。必要とされる量の化合物Iコリン塩を、撹拌しながらゆっくりと容器中に添加した。撹拌速度を高に調整してもよく、透明な溶液に達するまで撹拌を室温で継続した(およそ30分)。pHを測定して、必要な場合はNaOHまたはHClで7.5 +/- 0.1に調整することができる。析出が形成した場合は、すべての析出が溶解して透明な溶液に達するまで、撹拌を継続するべきである。PG(約1.6%(w/v)のPGが、標的重量オスモル濃度を達成するために必要である)を、300 +/- 10 mOsm/kgの重量オスモル濃度を達成するように添加した。十分な量の水(QS)を、標的重量を達成するように添加して(上記のように)、完全に混合した。製剤を次に、0.2μmのPESフィルターで濾過した。
【0110】
クロマトグラフィー分析
化合物Iコリン塩の定量化のために、RAM-1038を用いる。HPLC条件は、以下のように要約される。
移動相A: 水中、0.05% TFA
移動相B: アセトニトリル中、0.05% TFA
HPLCカラム:Waters SymmetryShield(商標)RP18、3.5μm、4.6×150 mm
カラム温度:30℃
検出: 260 nm
実行時間: 45分
流速: 1.0 mL/分
注入量: 20μL
希釈剤: 40%アセトニトリル‐60%水
勾配プロファイル:
*化合物Iコリン塩の保持時間はおよそ19分である。
【0111】
特定の開示される組成物の具体例を、本明細書において開示されるような望ましい特徴への準拠について試験した。本セクションにおいて議論される例示的態様は、化合物Iのコリン塩を含む組成物に関する;しかしながら、開示される組成物はまた、本明細書において開示される任意の他の化合物を用いて作製されてもよいし、または、そのような化合物なしで(例えば、化合物Iおよび/またはII、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、N-酸化物、もしくは溶媒和物なしで)作製されてもよい。
【0112】
一つの態様において、組成物を、10 mMの化合物I(化合物Iコリン塩ではなく化合物Iに基づいて算出された濃度)を用いて10 mMリン酸緩衝剤中で作製した。変動する量のPVP K30、PEG 400、およびさまざまな界面活性剤を、化合物Iの複数の異なる溶液に添加した。さらに、開示される組成物のさまざまな具体例の重量オスモル濃度を調整するために、プロピレングリコールおよび/またはNaClを等張化剤として用いた。さまざまな具体例の完全な説明およびこの特定の具体例において使用されたその構成要素を、表4に提供する。
【0113】
(表4)評定のために調製された組成物
【0114】
この特定の態様における組成物のすべての試料を、およそ5週間、約2℃〜約8℃、または室温のいずれかで保存した。これらの条件下で、10% PVPおよび1%の界面活性剤を含む組成物の具体例(試料11〜13)は、透明淡黄色溶液のままであった。これらの結果を、表5に提供する。
【0115】
(表5)ストレスを加えた組成物およびストレスを加えていない組成物の物理的外見
*PPT:観察された析出
【0116】
またこの態様において、さまざまな異なる組成物の具体例に、3日間まで80℃でストレスを加えた。もしある場合には化合物IIの析出のレベルを測定するために、これらの組成物の具体例を、ストレスを加える前および後にHPLCを用いて分析した。2% PVP、MYS40またはPS80のいずれか、および1% PEG400を含むこの例示的な組成物の具体例は、ストレスを加えた後に析出を示したため、これらの試料は妥当な安定性を提供しなかった。開示される組成物の他の具体例の結果を、下記の表6に提供する。
【0117】
(表6)特定の組成物の分析結果
【0118】
この一つの態様は、以下の結論を支持する結果を提供した。第一に、少なくとも5%のPVP K30が、化合物Iの10 mM(化合物Iコリン塩ではなく化合物Iに基づいて算出された濃度)での安定性を維持するために必要であることが確定された。また、界面活性剤は、化合物Iコリン塩および/または化合物IIの溶解度を維持するのに有用であることが判明した;しかしながら、PS 80およびチロキサポールが、MYS40よりも有効であった。組成物の具体例のpHは、10 mM緩衝剤を用いては維持されなかった;したがって、緩衝剤濃度を最終組成物において増大させるべきであることが確定された。さらに、この特定の態様は、2年間室温で保存されている組成物において形成されると考えられるものと実質的に同等の化合物IIの量を潜在的に生じるであろうストレスを加える条件を決定するための、適切な方法を提供する手助けをした。
【0119】
別の態様において、緩衝剤濃度を増大させ、PVP K30の量を10%で維持した。5% PVP K30を含む対照試料もまた、以前の態様の結果を確認するために使用した。この他の態様において、化合物Iの濃度は、約2 mM〜約10 mM(化合物Iコリン塩ではなく化合物Iに基づいて算出された濃度)の範囲であり、組成物において使用される他の構成要素は、PEG400、PS 80、およびチロキサポールのさまざまな組み合わせを含んだ。組成物のさまざまな具体例を、表7に提供する。
【0120】
(表7)評定のために調製された組成物
【0121】
この他の態様において、組成物の安定性、および極端な条件に耐える能力を判定するために、さまざまな組成物の具体例を、さまざまな温度サイクル研究に供した。例えば、10サイクルの凍結/融解(-20℃〜RT)、8サイクルの凍結/加熱(-20℃〜50℃)および10サイクルの冷却/加熱(5℃〜40℃)を用いた。二つの試料の試料3および4に、さまざまな温度サイクル研究に曝露する前のおよそ7日間、80℃でストレスを加えた。驚くべきことに、10 mMの化合物I(化合物Iコリン塩ではなく化合物Iに基づいて算出された濃度)を含む組成物の多くが、析出を示さず、温度サイクル研究後に約7%(約290μg/mL)のみの化合物IIを含有していた(表8)。さらに、試料3および4は、事前のストレスを加える条件の後でさえも、析出を伴わず透明黄色溶液のままであった(表9)。この特定の態様において得られた重要な結果によって、本明細書において開示されるような使用に適した組成物は、PVP、PS 80、チロキサポール、およびPEG400を含有することができ、PVPの量は5%より多いことが、示唆される。
【0122】
(表8)温度サイクル研究後の調製された組成物の分析結果
【0123】
(表9)80℃で7日間ストレスを加えるおよび10サイクルの温度サイクル後の、組成物番号3および番号4の分析結果
【0124】
さらに別の態様において、開示される組成物に他の構成要素を添加する効果を判定した。開示される組成物の特定の具体例において、核形成阻害剤を添加した。核形成阻害剤を添加して、ある特定の組成物の具体例において化合物Iコリン塩および/または化合物IIの析出の量を減少させたか否かを評定する。この態様において分析した試料組成物を、表10に提供する。
【0125】
(表10)評定のために調製された組成物
【0126】
驚くべきことに、1%の核形成阻害剤であるHPMC E5を含む試料組成物は、単に室温で一晩保存した後に、析出を示した。これらの試料(試料12〜16)のさらなる分析は行わなかった。試料1〜11および17を、60℃で14日間および80℃で6日間ストレスを加えることによって、さらに評定した。続いて、これらの試料を、5サイクルの凍結/加熱(-20℃〜50℃)に供した。これらの試料は、析出を示さず、透明黄色溶液のままであった。
【0127】
このさらなる態様から、特定の量のHPMC核形成阻害剤は、驚くべきことに、開示される組成物の物理的および/または化学的特性を維持する手助けをしなかったことが確定された。さらに、開示される組成物のこれらの具体例によって、PEG400が存在しなかった場合でさえも、PVPの量を約7.5%に低減できたことが示された。したがって、この他の態様は、最も少ない数の賦形剤と組み合わせる、開示される組成物における使用に適した可能な最小PVP量を決定するための基礎を提供した。
【0128】
さらに別の態様において、核形成阻害剤であるHPMC E5の、組成物の化学的および/または物理的特性を維持する手助けをする能力を再び分析した;しかしながら、組成物に添加した核形成阻害剤の量を、約0.25%に減少させた。この特定の態様において使用された他の構成要素を、表11に提供する。
【0129】
(表11)評定のために調製された組成物
【0130】
この特定の態様において検討されたさまざまな試料組成物に、60℃で14日間のストレスを加え、その後、室温で少なくとも4週間保存した。再び、0.25%の核形成阻害剤を含む試料は、60℃で14日間ストレスを加えた後に析出を示した。したがって、核形成阻害剤は、少量であっても、開示される組成物の化学的および/または物理的特性を維持するための実行可能な選択肢であるようには見られなかった。このさらなる態様はまた、より高い濃度の化合物Iを、提供されるPVP K30の量の必要な対応する増大なしで使用できたこと、および、ある特定の組成物の具体例において化合物Iコリン塩および/または化合物IIの溶解度を維持するために他の賦形剤は不必要であったことの、驚くべき結果を提供した。
【0131】
化合物Iの量が10 mg/mL(化合物Iコリン塩ではなく化合物Iに基づいて算出された濃度)に維持された、別のラウンドの組成物を試験した。80℃でのストレスを6日間加え、それに続いて5サイクルの冷却/加熱(約5℃〜約40℃)を行った。開示される組成物はすべて、透明黄色溶液のままであった。この態様の特定の構成要素を、表12に提供する。
【0132】
(表12)評定のために調製された組成物
【0133】
これらのさまざまな組成物試験ラウンドの知見に基づいて、開示される形成物の例示的具体例を決定し、下記の表13に提供する。特定の組成物の具体例は、約1 mg/mL〜約10 mg/mLの化合物Iまたはそのコリン塩を含むことができる。例示的態様は、2 mg/mLまたは5 mg/mLの化合物Iコリン塩を使用することに関する。
【0134】
(表13)化合物Iの眼部用プロトタイプ組成物
【0135】
(表14)追加的な組成物の具体例
aプロピレングリコールを、製剤の重量オスモル濃度を275 +/- 45 mOsm/kgに調整するための等張化剤として使用する。
bプラセボの密度は、20〜25℃で1.0246 g/mLである。
【0136】
(表15)追加的な組成物の具体例
aAPIは、化合物Iコリンである。APIの量を、所定のロットの重量純度にしたがって調整するべきである。1.213 mgの化合物Iコリン=1 mgの化合物I。
bプロピレングリコールを、製剤の重量オスモル濃度を275 +/- 45 mOsm/kgに調整するための等張化剤として使用する。
c製剤の密度は、20〜25℃で1.0284 g/mLである。
【0137】
(表16)追加的な組成物の具体例
aAPIは、化合物Iコリンである。APIの量を、所定のロットの重量純度にしたがって調整するべきである。1.213 mgの化合物Iコリン=1 mgの化合物I。
bプロピレングリコールを、製剤の重量オスモル濃度を275 +/- 45 mOsm/kgに調整するための等張化剤として使用する。
c製剤の密度は、20〜25℃で1.0269 g/mLである。
【0138】
(表17)追加的な組成物の具体例
aAPIは、化合物Iコリンである。APIの量を、所定のロットの重量純度にしたがって調整しなければならない。1.213 mgの化合物Iコリン=1 mgの化合物I。
bプロピレングリコールを、製剤の重量オスモル濃度を275 +/- 45 mOsm/kgに調整するための等張化剤として使用する。
c製剤の密度は、20〜25℃で1.0268 g/mLである。
【0139】
IL-4で刺激されたラモスB細胞株のアッセイ法
JAK阻害をアッセイする手段の一つは、下流の遺伝子産物の上方制御に対する化合物IおよびIIの効果の検出である。ラモス/IL4アッセイ法においては、B細胞をサイトカインのインターロイキン-4 (IL-4)で刺激し、JAKファミリーキナーゼのJAK1およびJAK3のリン酸化を通じてJAK/Stat経路の活性化をもたらし、このことが次には、転写因子Stat-6をリン酸化し活性化する。活性化Stat-6により上方制御される遺伝子の一つが、低親和性IgE受容体CD23である。JAK1およびJAK3キナーゼに対する阻害剤(例えば、本明細書において記載される2,4-置換ピリミジンジアミン化合物)の効果を調べるため、ヒトラモスB細胞をヒトIL-4により刺激する。刺激から20〜24時間後、CD23の上方制御がないか細胞を染色し、フローサイトメトリー(FACS)により分析する。対照条件に比べて、存在するCD23の量の低減により、試験化合物の活性がJAK キナーゼ経路を阻害することが示唆される。このタイプの例示的なアッセイ法を以下でさらに詳細に記載している。
【0140】
サイトカインのインターロイキン-4 (IL-4)で刺激したB細胞は、JAKファミリーキナーゼのJAK-1およびJAK-3のリン酸化を通じてJAK/Stat経路を活性化し、このことが次に、転写因子Stat-6をリン酸化し活性化する。活性化Stat-6により上方制御される遺伝子の一つが、低親和性IgE受容体CD23である。JAKファミリーキナーゼに対する阻害剤の効果を調べるため、ヒト ラモスB細胞をヒトIL-4により刺激する。
【0141】
ラモスB細胞株はATCC (ATCCカタログ番号CRL-1596)から入手した。この細胞をATCC増殖プロトコルにしたがい、熱不活化した10%ウシ胎仔血清(FBS) (JRH Biosciences, Inc, Lenexa, Kansas, カタログ番号12106-500M)の入ったRPMI 1640 (Cellgro, MediaTech, Inc., Herndon, VA, カタログ番号10-040-CM)中で培養した。細胞を3.5×10
5個の密度で維持した。実験前日に、ラモスB細胞を細胞3.5×10
5個/mLに希釈して、確実にそれらが対数増殖期にあるようにした。
【0142】
細胞を、遠心沈殿し、5%血清入りのRPMIに懸濁した。96ウェル組織培養プレート中にて1ポイントあたり細胞5×10
4個を使用した。細胞を37℃のインキュベータ中で1時間、化合物またはDMSO (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, カタログ番号D2650)ビヒクル対照とともにプレインキュベートした。次いで、細胞を20〜24時間、終濃度50単位/mLのIL-4 (Peprotech Inc., Rocky Hill, NJ, カタログ番号200-04)により刺激した。その後、細胞を、遠心沈殿し、抗CD23-PE (BD Pharmingen, San Diego, CA, カタログ番号555711)で染色し、FACSにより解析した。San Jose, CaliforniaのBecton Dickinson Biosciencesから購入した、BD LSR I System Flow Cytometerを用いて検出を行った。このアッセイ法に基づき算出されたIC
50を表18に示す。
【0143】
IL-2により刺激した初代ヒトT細胞の増殖アッセイ法
本明細書において記載される化合物Iおよび/またはII(またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物、またはN-オキシド)のJAK活性は、初代ヒトT細胞の増殖応答に対する、本明細書において記載されるこれらの化合物の効果をアッセイすることでさらに特徴付けることができる。このアッセイ法においては、末梢血から得られ、かつT細胞受容体およびCD28の刺激を通じて前活性化された初代ヒトT細胞は、サイトカインのインターロイキン-2 (IL-2)に応答して培養液中で増殖する。この増殖応答は、転写因子Stat-5をリン酸化かつ活性化するJAK1およびJAK3チロシンキナーゼの活性化に依存する。初代ヒトT細胞を72時間IL-2の存在下で化合物Iおよび/またはII(またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物、またはN-オキシド)とともにインキュベートし、アッセイ法のエンドポイントで、細胞内ATP濃度を測定して細胞生存度を評価する。対照条件に比べて細胞増殖の低減は、JAKキナーゼ経路の阻害を示唆する。このタイプの例示的なアッセイ法を以下でさらに詳細に記載している。
【0144】
末梢血から得られ、かつT細胞受容体およびCD28の刺激を通じて前活性化された初代ヒトT細胞は、サイトカインのインターロイキン-2 (IL-2)に応答してインビトロで増殖する。この増殖応答は、転写因子Stat-5をリン酸化かつ活性化するJAK-1およびJAK-3チロシンキナーゼの活性化に依存する。
【0145】
ヒト初代T細胞を次の通りに調製した。全血を、健常ボランティアから採取し、PBSと1:1混合し、2:1の血液/PBS:フィコール比にてフィコールハイパック(Ficoll Hypaque) (Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ, カタログ番号17-1440-03)に重層し、1750 rpmにて4℃で30分間遠心分離した。血清:フィコール界面のリンパ球を、回収し、5倍容量のPBSで2回洗浄した。細胞を、40 U/mLの組換えIL2 (R and D Systems, Minneapolis, MN, カタログ番号202-IL (20 μg))の入ったイッセル(Yssel's)培地(Gemini Bio-products, Woodland, CA, カタログ番号400-103)に再懸濁し、1 μg/mLの抗CD3 (BD Pharmingen, San Diego, CA, カタログ番号555336)および5 μg/mLの抗CD28 (Immunotech, Beckman Coulter of Brea California, カタログ番号IM1376)により予めコーティングしておいたフラスコの中に播種した。初代T細胞を、3〜4日間刺激し、次いで新鮮なフラスコに移し、10% FBSおよび40 U/mLのIL-2入りのRPMI中で維持した。
【0146】
初代T細胞を、PBSで2回洗浄してIL-2を除去し、細胞2×10
6個/mLでイッセル培地に再懸濁した。80 U/mLのIL-2を含有する細胞懸濁液50 μLを、平底96ウェル黒色プレートの各ウェルに添加した。未刺激の対照の場合、IL-2をプレートの最終列から除いた。化合物を、ジメチルスルホキシド(DMSO, 純度99.7%, 細胞培養試験済み, Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, カタログ番号D2650)中、3倍希釈で5 mMから連続的に希釈し、その後イッセル培地中1:250で希釈した。1ウェルあたり2×化合物50 μLを二通り添加し、細胞を37℃で72時間増殖させた。
【0147】
増殖は、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay (Promega)を用いて測定した。このアッセイ法では、代謝的に活性な細胞の指標として、存在するATPの定量化に基づき培養液中の生存細胞の数を判定する。この基質を、融解し、室温に到達させた。Cell Titer-Glo試薬および希釈剤を一緒に混合した後に、100 μLを各ウェルに添加した。プレートを回転式振盪機上で2分間混合して溶解を誘導し、室温でさらに10分間インキュベートしてシグナルを平衡化させた。検出は、Perkin Elmer, Shelton, CTから購入したWallac Victor2 1420マルチラベルカウンタを用いて行った。このアッセイ法の結果に基づいて計算したIC
50を表18に示す。
【0148】
IFNγにより刺激したA549上皮細胞株
本明細書において記載される化合物Iおよび/またはII(またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、溶媒和物、またはN-オキシド)のJAK活性は、A549肺上皮細胞およびU937細胞に対するこれらの化合物の効果をアッセイすることで特徴付けることもできる。A549肺上皮細胞およびU937細胞は、種々の異なる刺激に応答してICAM-1 (CD54)の表面発現を上方制御する。それゆえ、ICAM-1発現を読出しに用いて、異なるシグナル伝達経路に対する試験化合物の効果を同細胞型において評価することができる。IL-1βによる刺激はIL-1β受容体を通じてTRAF6/NFκB経路を活性化し、ICAM-1の上方制御を引き起こす。IFNγはJAK1/JAK2経路の活性化を通じてICAM-1の上方制御を誘導する。ICAM-1の上方制御を化合物の用量曲線にわたってフローサイトメトリーにより定量化することができ、EC
50値を算出する。このタイプの例示的なアッセイ法を以下でさらに詳細に記載している。
【0149】
A549肺上皮細胞は、種々の異なる刺激に応答して、ICAM-1 (CD54)の表面発現を上方制御する。それゆえ、ICAM-1発現を読出しに用いて、異なるシグナル伝達経路に対する化合物の効果を同細胞型において評価することができる。IFNγはJAK/Stat経路の活性化を通じてICAM-1を上方制御する。本実施例においては、IFNγによるICAM-1の上方制御を評価した。
【0150】
A549肺上皮がん細胞株はAmerican Type Culture Collectionから得た。日常的な培養は、10%ウシ胎仔血清、100 I.U.のペニシリンおよび100 ng/mLのストレプトマイシン入りのF12K培地(Mediatech Inc., Lenexa, KS, カタログ番号10-025-CV) (F12k完全培地)を用いたものであった。細胞を37℃で5% CO
2の加湿雰囲気中でインキュベートした。アッセイ法で用いる前に、A549細胞を、PBSで洗浄し、細胞を持ち上げるためにトリプシン(Mediatech Inc., カタログ番号25-052-CI)処理した。トリプシン細胞懸濁液をF12K完全培地により中和し、遠心分離して細胞をペレットにした。細胞ペレットを、2.0×10
5/mLの濃度でF12K完全培地に再懸濁した。細胞を平底組織培養プレート中、1ウェルあたり20,000個、総量100 μLで播種し、終夜接着させた。
【0151】
2日目に、A549細胞を1時間、2,4-置換ピリミジンジアミン試験化合物またはDMSO (対照) (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO, カタログ番号D2650)とともにプレインキュベートした。次いで、細胞をIFNγ (75 ng/mL) (Peprotech Inc., Rocky Hill, NJ, カタログ番号300-02)により刺激し、24時間インキュベートさせた。試験化合物の最終用量範囲は、5% FBS、0.3% DMSO含有F12K培地200 μL中にて30 μM〜14 nMであった。
【0152】
3日目に、細胞培地を除去し、細胞を200 μL PBS (リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した。細胞を引き離すために各ウェルをトリプシン処理し、次にF12K完全培地200 μLの添加によって中和した。細胞を、ペレットにし、4℃で20分間、APC結合マウス抗ヒトICAM-1 (CD54) (BD Pharmingen, San Diego, CA, カタログ番号559771)抗体で染色した。細胞を、氷冷FACS緩衝液(PBS + 2% FBS)で洗浄し、表面のICAM-1発現をフローサイトメトリーにより解析した。検出は、San Jose, CaliforniaのBD Biosciencesから購入したBD LSR I System Flow Cytometerを用いて行った。事象を作動中の散乱(live scatter)に対してゲート開閉し、幾何平均を計算した(Becton-Dickinson CellQuestソフトウェア第3.3版, Franklin Lakes, NJ)。幾何平均を化合物濃度に対しプロットして、用量反応曲線を作成した。このアッセイ法の結果に基づいて計算したIC
50を表18に示す。
【0153】
U937 IFNγ ICAM1 FACSアッセイ法
U937ヒト単球細胞は、種々の異なる刺激に応答してICAM-1 (CD54)の表面発現を上方制御する。それゆえ、ICAM-1発現を読出しに用いて、異なるシグナル伝達経路に対する化合物の効果を同細胞型において評価することができる。IFNγは、JAK/Stat経路の活性化を通じてICAM-1を上方制御する。本実施例においては、IFNγによるICAM-1の上方制御を評価した。
【0154】
U937ヒト単球細胞株を、Rockville MarylandのATCC, カタログ番号CRL-1593.2より入手し、10% (v/v) FCS含有のRPMI-1640培地中で培養した。U937細胞を10% RPMI中で増殖させた。その後、細胞を96ウェル平底プレート中、160 μLあたり細胞100,000個の濃度でプレーティングした。次いで、試験化合物を以下の通りに希釈した。10 mMの試験化合物を、DMSO中1:5で希釈し(DMSO 12 μL中に10 mMの試験化合物3 μL)、引き続きDMSO中で試験化合物の1:3の連続希釈を行った(試験化合物6 μLをDMSO 12 μLに連続的に希釈して3倍希釈物を得た)。その後、試験化合物4 μLを10% RPMI 76 μLに移し、10×溶液(100 μMの試験化合物, 5% DMSO)を得た。対照ウェルの場合、DMSO 4 μLを10% RPMI 76 μLに希釈した。
【0155】
アッセイ法は、8ポイント(10 μlからの、8回の3倍希釈濃度)により、かつ刺激条件下DMSOのみの4ウェル(対照ウェル)および未刺激条件下DMSOのみの4ウェルにより二つ組で行った。
【0156】
希釈済み化合物のプレートをマルチメック(Brea, CaliforniaのBeckman Coulter)により2回混合し、その後、希釈化合物20 μLを細胞160 μL含有の96ウェルプレートに移し、これをその後、低速で2回再び混合した。その後、細胞および化合物を5% CO
2、37℃で30分間プレインキュベートした。
【0157】
10% RPMI中ヒトIFNγの100 ng/mL溶液を調製することにより、10×刺激混合物を作製した。その後、細胞および化合物をIFNγ刺激混合物20 μLにより刺激して、10 ng/mL IFNγ、10 μMの試験化合物および0.5% DMSOの終濃度を得た。細胞を5% CO
2、37℃で18〜24時間刺激の条件下で保持した。
【0158】
細胞を、染色のため96ウェル丸底プレートに移し、その後、染色手順の間、氷上に保持した。細胞を4℃で5分間1000 rpmにて遠心沈殿し、その後、上清を除去した。上清の除去後、FACS緩衝液100 μLあたりAPC結合マウス抗ヒトICAM-1抗体1 μLを添加した。細胞をその後、30分間、暗所中にて氷上でインキュベートした。インキュベーション後、FACS緩衝液150 μLを添加し、細胞を4℃で5分間1000 rpmにて遠心分離し、その後、上清を除去した。上清の除去後、FACS緩衝液200 μLを添加し、細胞を再懸濁した。懸濁後、細胞を4℃で5分間1000 rpmにて遠心分離した。次いで、FACS緩衝液150 μL中での細胞の再懸濁の前に、上清を除去した。
【0159】
検出は、San Jose, CaliforniaのBD Biosciencesから購入したBD LSR I System Flow Cytometerを用いて行った。生細胞を作動中の散乱に対してゲート開閉し、ICAM-APCの幾何平均を測定した(Becton-Dickinson CellQuestソフトウェア第3.3版, Franklin Lakes, NJ)。生細胞%とICAM-1発現の両方を分析した。試験化合物のアッセイ法を活性公知の対照化合物と並行して行った。対照化合物のEC
50は、典型的には、40〜100 nMである。このアッセイ法の結果に基づいて計算したIC
50を表18に示す。
【0160】
(表18)アッセイ結果
【0161】
誘発性ドライアイのマウスモデル
本実施例では、ドライアイのマウスモデルでの症状の処置について記載する。注射用生理食塩水(動物1匹当たり1〜1.5 mL)中に2.5 mg/mLのスコポラミン(Sigma-Aldrich)を含む、注射液を調製した。正常C57マウスの後肢に交互に2.5時間ごと4回スコポラミン溶液200〜250 μLを注射する。マウスを特別な檻(正面および背面に穴の開いた)に入れ、フードの中に入れる。送風機を各檻の前に置き、5日連続で終夜16時間作動させる。涙液産生の測定を毎日行い、5日間の終了時にマウスは全て、ドライ誘発されたと見なす。動物を2週間のあいだ1日に1回、本明細書に開示される組成物の具体例の任意のものにより1 μLで処置してもよい。涙液産生を測定し、処置の結果は正常涙液産生値の一部または全部の回復によって測定される。
【0162】
涙液産生は定量的手段、または動物の角膜の定性評価のいずれかによって測定することができ、例えば、処置した眼のフルオレセインまたはローズベンガル染色パターンの生体顕微鏡検査によって行うことができる。そのような染色の低減はドライアイ状態の処置の成功を示す。
【0163】
他の動物モデル
モデルの状態において見られる自己反応性リンパ球の初期活性化および浸潤を模倣する、いくつかのシェーグレン症候群モデルが開発されている。非肥満糖尿病(NOD)マウスモデルは、涙腺、ならびに膵臓、顎下腺および甲状腺を含む他の臓器において主にCD4
+ Th1細胞のリンパ球浸潤を示す。雄性NODマウスは8週齢から涙腺の顕著な炎症性病変を示すのに対し、雌性NODマウスは30週齢まで何らの変化も示さない。Takahashi et al., High incidence of autoimmune dacryoadenitis in male non-obese diabetic (NOD) mice depending on sex steroid. Clin Exp Immunol. 1997;109:555-561。シェーグレン症候群MRL/MpJ-fas
+/fas
+ (MRL/+)およびMRL/MpJ-fas
lpr/fas
lpr (MRL/lpr)マウスモデルは、CD4
+ T細胞の優位によって特徴付けられる涙腺浸潤物を示す。Van Blokland and Versnel, Pathogenesis of Sjogren's syndrome: characteristics of different mouse models for autoimmune exocrinopathy. Clin Immunol. 2002;103:111-124。
【0164】
マウスと比べてウサギでは露出した眼表面が広いため、涙液層破壊時間および眼表面のフルオレセインまたはローズベンガル染色などの標準的なドライアイ臨床試験は、ウサギでは、より簡単に行われる。シェーグレン症候群に似ているウサギでの自己免疫疾患は、反対側の切除涙腺から得た上皮細胞との培養で増殖された自家末梢血リンパ球を涙腺へ注射することにより誘発することができる。
【0165】
この動物モデルおよび他の動物モデルを、本明細書において開示される組成物を試験するために使用してもよい。開示される組成物を動物に投与し、涙液産生の増加の証拠またはドライアイの減少の証拠について眼を検査してもよい。
【0166】
いくつかの態様において、対象に、7.5% w/vのK30グレードポリビニルピロリドン、約25 mMの濃度を有するリン酸緩衝剤、および1.6% w/vのプロピレングリコールを含む組成物を投与する。対象は、ドライアイ症候群と関連する一つまたは複数の症状を患っているため、またはドライアイ症候群と診断されたために、選抜される。特定の開示される態様において、対象が患う(または症状を示す)ドライアイ症候群が、処置、改善、または予防される。例えば、いくつかの態様において、対象は、対象の眼の物理的状態の改善(例えば、涙液産生の増加または蒸発の減少)を示す。いくつかの態様において、対象は、下角膜フルオレセイン染色の低減、シルマー試験の改善、またはドライアイ症候群の兆候および/もしくは症状の改善を実証する。そのような改善は、眼表面疾患指数、眼快適指数、または同様の試験を用いて測定される。
【0167】
開示される発明の原理が適用されうる多くの可能な態様を考慮すると、例証された態様は本発明の好ましい例であるだけであり、本発明の範囲を限定すると受け取られるべきではないことが、認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって、本発明者らは、これらの請求項の範囲および精神内に入るすべてを、本発明者らの発明として特許請求する。