【文献】
TAN, Ming et al.,"The P domain of norovirus capsid protein forms dimer and binds to histo-blood group antigen receptors",J. Virol.,2004年,Vol. 78,p. 6233-6242
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のノロウイルス株由来のVP1のS−ドメインと第2のノロウイルス株由来のVP1のP−ドメインの少なくとも一部とを含むキメラノロウイルスウイルスタンパク質1(VP1)であって、該第1のノロウイルス株は該第2のノロウイルス株とは異なるものであり、該キメラノロウイルスVP1は、該S−ドメインと該P−ドメインとを作動可能に連結するリンカーペプチドをさらに含み、該キメラノロウイルスVP1は、発現されるとウイルス様粒子(VLP)に自己集合し、該第1のノロウイルス株がSnow Mountain株であり、該キメラノロウイルスVP1は、
式:A−S−L−P−B
(式中、
AおよびBは、独立して、存在しないまたは任意の所望のアミノ酸配列であり;
Sは該第1のノロウイルス株由来のVP1のS−ドメインであり;
Lは、リンカーペプチドであり;
Pは該ノロウイルスVP1のP−ドメインであり;ここで、該P−ドメインの少なくとも一部は該第2のノロウイルス株由来である)
を有し、ここで、Lが、該第1のノロウイルス株由来、該第2のノロウイルス株由来、または第3のノロウイルス株由来のVP1のリンカーペプチドであり、該第3のノロウイルス株が、該第1のノロウイルス株および該第2のノロウイルス株とは異なるものであるか、または、Lが、ポリグリシンリンカーGlyn、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多い(配列番号5)、(GGGS)n、ここで、n=1、2、3または4(配列番号6)、および、高度に荷電したリンカー(SRSK)n、ここで、n=1、2、3または4(配列番号7)から選択される、キメラノロウイルスVP1。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、キメラノロウイルスVP1タンパク質を生成し、使用するための組成物および方法を提供する。本発明は、さらに、S−ドメインが第1のノロウイルス株に由来し、P−ドメインの全部または一部分が第2のノロウイルス株に由来する前記キメラVP1タンパク質を含むノロウイルスVLPを含む免疫原性組成物を提供する。
【0026】
本発明の他の態様は、核酸およびポリペプチド、ならびにそのような核酸およびポリペプチドを調製し、精製するための方法を包含する。本発明のこれらの態様は、本発明のVLPならびに免疫原性組成物におけるそれらの使用ならびにノロウイルスの処置または予防におけるそのような組成物の使用方法と共に、以下により詳細に記載する。
【0027】
I. 定義
本出願において使用される科学用語および技術用語は全て、別段の指定がない限り、当技術分野で一般に使用される意味を有する。本出願において使用される場合、以下の単語または句は指定された意味を有する。
【0028】
本明細書で使用される場合、「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」は、その内容からそうでないことが明らかでない限り、単数および複数の言及を含むことに留意しなければならない。よって、例えば、「a(1つの)ポリヌクレオチド」への言及は、そのようなポリヌクレオチド2つ以上などの混合物を包含する。
【0029】
数値xに関して、用語「約」は、例えば、x+10%を意味する。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「ノロウイルス」および「Norwalk様ウイルス」は、ポジティブセンス一本鎖RNAの、エンベロープを持たないウイルスであるCaliciviridae科のノロウイルス属のメンバーをいう(Greenら、Human
Caliciviruses、Fields Virology 1巻、841〜874頁(KnipeおよびHowley、編集主幹、第4版、Lippincott Williams & Wilkins 2001年))。用語ノロウイルスは、そのウイルスの全ての遺伝子群の株を包含する。現在、ノロウイルス株は、5つの遺伝子群(GI〜GV)に分けられ、それらは少なくとも20の遺伝クラスターまたは遺伝子型に細分される。具体的には、用語ノロウイルスは、これらに限定されないが、Norwalkウイルス(NV)種、Lordsdaleウイルス(LV)種、Mexicoウイルス(MV)種、Hawaiiウイルス(HV)種、Snow Mountainウイルス(SMV)種、Desert Shieldウイルス(DSV)種、およびSouthhamptonウイルス(SV)種を包含する。多数のノロウイルス分離株が部分的に、または完全に配列決定されている。例えば、GenBankデータベース(ncbi.nlm.nih.gov)、National Center for Biotechnology InformationのTaxonomy Database(ncbi.nlm.nih.gov)またはCaliciviridaeに関するPathoSystems Resource Integration Center Database(patric.vbi.vt.edu)を参照されたい。用語ノロウイルスは、出願時に特徴付けられていない分離株も包含する。
【0031】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、アミノ酸残基のポリマーを指し、生成物の最小の長さに限定されない。よって、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体などがこの定義の範囲内に含まれる。全長のタンパク質およびそのフラグメントの両方がこの定義に包含される。これらの用語は、ポリペプチドの発現後(postexpression)修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化なども包含する。さらに、本発明の目的のために、「ポリペプチド」とは、タンパク質が所望の活性を維持する限りは、天然の配列に対して修飾、例えば、欠失、付加および置換など(一般に天然に保存された)を含むタンパク質をいう。これらの修飾は、部位特異的変異誘発によるものなど、意図的なものであってよい、または、タンパク質を生成する宿主の変異によるものまたはPCR増幅に起因するエラーなどの偶発的なものであってよい。
【0032】
「実質的に精製された」とは、一般に、物質(化合物、ポリヌクレオチド、タンパク質、ポリペプチド、ポリペプチド組成物)が、その物質が、それが存在する試料における百分率の大部分を構成するように単離することをいう。典型的に、試料において、実質的に精製された成分は、その試料の50%、好ましくは80%〜85%、より好ましくは90〜95%を構成する。目的のポリヌクレオチドおよびポリペプチドを精製するための技法は、当技術分野で周知であり、それらとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび密度にしたがった沈降が挙げられる。
【0033】
「単離された」とは、ポリペプチドについて言及する場合、示された分子が、その分子が天然に見いだされる、生物全体から分離されており、別個である、または、同じ種類の他の生物学的な高分子の実質的な不在下で存在することを意味する。用語「単離された」は、ポリヌクレオチドに関しては、天然では通常それに関連している配列の全体またはその一部分を欠く核酸分子;または、天然に存在するのと同様だが、それと結びついた異種配列を有する配列;または染色体から切り離された分子である。
【0034】
「組換え」とは、本明細書において核酸分子を説明するために使用される場合、その起源または操作によって、それが天然では関連しているポリヌクレオチドの全部または一部と結びついていない、ゲノム起源、cDNA起源、ウイルス起源、半合成起源、または合成起源のポリヌクレオチドを意味する。用語「組換え」は、タンパク質またはポリペプチドに関して使用される場合、組換えポリヌクレオチドを発現させることによって生成されるポリペプチドを意味する。一般に、下でさらに記載するように、目的の遺伝子をクローニングし、次いで、形質転換した生物において発現させる。宿主生物は、発現条件下で外来遺伝子を発現してタンパク質を生成する。
【0035】
用語「形質転換」とは、挿入するために用いる方法に関係なく、外因性のポリヌクレオチドを宿主細胞に挿入することをいう。例えば、直接的な取り込み、トランスフェクション、形質導入またはf−接合が含まれる。外因性のポリヌクレオチドは、非組み込み型ベクター、例えばプラスミドとして維持することができる、あるいは、宿主ゲノムに組み込むことができる。
【0036】
「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」、「細胞」、「細胞株」、「細胞培養物」、および他のそのような単細胞の実体として培養された微生物またはそれよりも高等の真核細胞株を示す用語は、組換えベクターまたは他の移入DNAのレシピエントとして用いることができる、または用いられてきた細胞をいい、トランスフェクトされた元の細胞の元の後代を包含する。
【0037】
「コード配列」または選択されたポリペプチドを「コードする」配列は、適切な調節配列(または「制御エレメント」)の制御下に置かれると、in vivoで転写され(DNAの場合)、翻訳されて(mRNAの場合)ポリペプチドになる核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定することができる。コード配列としては、これに限定されないが、ウイルス、原核生物または真核生物のmRNA由来のcDNA、ウイルスまたは原核生物のDNAまたはRNA由来のゲノムDNA配列、およびさらには合成DNA配列を挙げることができる。転写終結配列は、コード配列の3’側に位置してよい。
【0038】
典型的な「制御エレメント」としては、これらに限定されないが、転写プロモーター、転写エンハンサーエレメント、転写終結シグナル、ポリアデニル化配列(翻訳終止コドンの3’側に位置する)、翻訳の開始を最適化するための配列(コード配列の5’側に位置する)、および翻訳終結配列が挙げられる。
【0039】
用語「核酸」は、DNAおよびRNAを包含し、また、それらの類似体、例えば、修飾された骨格を含有するものなど(例えば、ホスホロチオエートなど)、およびペプチド核酸(PNA)なども包含する。本発明は、上記のものと相補的な配列を含む核酸を包含する(例えば、アンチセンスまたはプローブする(probing)目的で)。
【0040】
用語「自己複製する」は、ポリメラーゼをコードし、ポリメラーゼにより核酸分子が複製されることを可能にするヌクレオチド配列エレメントを含有し、好ましくは、キメラノロウイルスVP1などの所望のポリペプチドもコードする核酸分子をいう。自己複製核酸は、自己複製するRNA分子であることが好ましい。例えば、自己複製するRNA分子は、アルファウイルスのゲノムに基づいてよく、RNA分子の複製を導き得る非構造タンパク質をコードし、RNA分子の複製を可能にするために十分な複製認識配列を含有し、かつ、キメラノロウイルスVP1などの所望の標的ポリペプチドもコードする。必要に応じて、1または複数の構造ウイルス遺伝子(例えば、カプシドおよび/またはエンベロープの糖タンパク質)が自己複製するRNA分子から欠失しているまたは除かれている。自己複製するRNA分子を生成するために使用することができる適切なアルファウイルスとしては、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、東部ウマ脳炎ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルスなどが挙げられる(自己複製するRNA分子に関しては、例えば、EP1751289B1;Yingら(1999年)Nat. Med. 5巻(7号):823〜827頁;Racanelliら(2004年)Immunity、20巻(1号):47〜58頁を参照されたい)。
【0041】
「作動可能に連結した」とは、そう記載されている成分がそれらの通常の機能を果たすように構成されている、エレメントの配置(arrangement)をいう。よって、コード配列に作動可能に連結した所与のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合に、コード配列の発現をもたらすことができる。プロモーターは、コード配列の発現を導くように機能する限りは、コード配列と隣接している必要はない。よって、例えば、介在性の、翻訳されないが転写された配列がプロモーター配列とコード配列の間に存在してよく、それでも、プロモーター配列はコード配列に「作動可能に連結した」とみなされ得る。
【0042】
「にコードされる」とは、ポリペプチド配列またはその一部が、少なくとも3アミノ酸のアミノ酸配列を含有するポリペプチド配列をコードする核酸配列をいう。
【0043】
「発現カセット」または「発現構築物」とは、目的の配列(複数可)または遺伝子(複数可)の発現を導くことができる集合体をいう。発現カセットは、一般に、上記の通り、制御エレメント、例えば、目的の配列(複数可)または遺伝子(複数可)に作動可能に連結している(それらの転写を導くために)プロモーターなどを含み、多くの場合、その上ポリアデニル化配列も含む。本発明のある特定の実施形態の範囲内では、本明細書に記載の発現カセットは、プラスミド構築物内に含有されてよい。発現カセットの成分に加えて、プラスミド構築物は、1または複数の選択マーカー、プラスミド構築物が一本鎖DNAとして存在することを可能にするシグナル(例えば、M13複製起点)、少なくとも1つの多重クローニング部位、および「哺乳動物の」複製起点(例えば、SV40またはアデノウイルス複製起点)も含んでよい。
【0044】
「精製されたポリヌクレオチド」とは、本質的に遊離している、例えば、ポリヌクレオチドが天然に関連しているタンパク質を約50%未満、好ましくは約70%未満、およびより好ましくは少なくとも約90%未満含有する目的のポリヌクレオチドまたはそのフラグメントをいう。目的のポリヌクレオチドを精製するための技法は、当技術分野で周知であり、それらとしては、例えば、ポリヌクレオチドを含有する細胞を、カオトロピック作用剤を用いて破壊すること、およびポリヌクレオチド(複数可)およびタンパク質を、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび密度にしたがった沈降によって分離することが挙げられる。
【0045】
「ベクター」は、核酸配列を標的細胞に移入することができる(例えば、ウイルスベクター、非ウイルスベクター、粒子キャリア、およびリポソーム)。典型的に、「ベクター構築物」、「発現ベクター」および「遺伝子移入ベクター」とは、目的の核酸の発現を導くことができる任意の核酸構築物を意味し、これは、核酸配列を標的細胞に移入することができる。よって、これらの用語は、クローニングビヒクルおよび発現ビヒクル、ならびにウイルスベクターを包含する。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」とは、一般に、T細胞受容体および/または抗体によって認識される抗原上の部位をいう。エピトープは、タンパク質抗原に由来する、またはその一部分の短いペプチドであり得る。エピトープの三次元構造は、その機能にとって重要である場合も重要でない場合もある。しかし、この用語は、グリコペプチドおよび炭水化物エピトープを有するペプチドも包含することが意図される。いくつかの異なるエピトープが単一の抗原性分子に保有され得る。用語「エピトープ」は、生物全体を認識する応答を刺激する、アミノ酸または炭水化物の修飾された配列も包含する。選択されたエピトープが、感染症を引き起こす感染性因子のエピトープであれば有利である。
【0047】
種々のノロウイルスのカプシドエピトープに関する記載については、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Hardyら、米国特許出願公開第2005/0152911号を参照されたい。具体的には、Hardyらは、以下の配列:WTRGSHNL、(配列番号1)、WTRGGHGL、(配列番号2)、WTRGQHQL(配列番号3)、またはWLPAPIDKL(配列番号4)を含む、Norwalkウイルスのカプシドタンパク質の残基133〜137におけるエピトープ、およびSnow Mountainウイルスのカプシドタンパク質の残基319〜327におけるエピトープを同定した。そのようなカプシドエピトープおよびそれらをコードする核酸を含む免疫原性ポリペプチドを、本発明の実施において使用することができる。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「T細胞エピトープ」は、一般に、T細胞応答を誘導することができるペプチド構造の特徴をいい、「B細胞エピトープ」は、一般に、B細胞応答を誘導することができるペプチド構造の特徴をいう。
【0049】
抗原または組成物に対する「免疫学的応答」は、被験体における、目的の組成物内に存在する抗原に対する体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答の発生である。本発明の目的のために、「体液性免疫応答」とは、抗体分子によって媒介される免疫応答をいい、一方、「細胞性免疫応答」は、T−リンパ球および/または他の白血球によって媒介される免疫応答をいう。細胞性免疫の1つの重要な態様は、細胞溶解性T細胞(cytolytic T−cell)(「CTL」)による抗原に特異的な応答を伴う。CTLは、主要組織適合性複合体(MHC)にコードされるタンパク質と結びついて提示され、細胞の表面上で発現されるペプチド抗原に対する特異性を有する。CTLは、細胞内の微生物の破壊の誘導および促進、またはそのような微生物に感染した細胞の溶解を助ける。細胞性免疫の別の態様は、ヘルパーT細胞による抗原に特異的な応答を伴う。ヘルパーT細胞は、それらの表面上にMHC分子と結びついたペプチド抗原を提示している細胞に対する非特異的なエフェクター細胞の機能を刺激すること、およびその活性の焦点を合わせることを助けるように作用する。「細胞性免疫応答」とは、CD4+T細胞およびCD8+T細胞に由来するものを含めた、活性化されたT細胞および/または他の白血球によって生成される、サイトカイン、ケモカインおよび他のそのような分子の生成もいう。
【0050】
細胞性免疫応答を惹起する免疫原性組成物またはワクチンは、脊椎動物の被験体を、細胞表面において抗原をMHC分子と結びつけて提示させることによって感作するために役立ち得る。細胞媒介性免疫応答は、それらの表面に抗原を提示している細胞、またはその近傍に向けられる。さらに、抗原に特異的なT−リンパ球を生じさせて、免疫された宿主の将来の防御を可能にすることができる。
【0051】
特定の抗原の、細胞媒介性免疫学的応答を刺激する能力は、いくつものアッセイ、例えば、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイによって、または、感作された被験体において抗原に特異的なT−リンパ球をアッセイすることによって決定することができる。そのようなアッセイは当技術分野で周知である。例えば、Ericksonら、J. Immunol.(1993年)151巻:4189〜4199頁;Doeら、Eur. J. Immunol.(1994年)24巻:2369〜2376頁を参照されたい。細胞媒介性免疫応答を測定する最近の方法は、細胞内のサイトカインまたはT細胞集団によるサイトカインの分泌を測定することを含む、または、エピトープに特異的なT細胞を測定することによる(例えば、四量体技法によって)(McMichael, A. J.、およびO’Callaghan, C. A.、J.
Exp. Med. 187巻(9号)1367〜1371頁、1998年;Mcheyzer−Williams, M. G.ら、Immunol. Rev. 150巻:5〜21頁、1996年;Lalvan, A.ら、J. Exp. Med. 186巻:859〜865頁、1997年により概説されている)。
【0052】
よって、免疫学的応答とは、本明細書で使用される場合、抗体の生成(例えば、細菌毒素、および細胞に進入して複製するウイルスなどの病原体を、毒素および病原体に結合することによって遮断し、典型的に、細胞を感染および破壊から保護する中和性抗体)を刺激するものであってよい。目的の抗原は、CTLの生成も惹起することができる。よって、免疫学的応答としては、以下の効果の1または複数を挙げることができる:B細胞による抗体の生成;ならびに/または、目的の組成物またはワクチンに存在する1または複数の抗原を特異的に向けさせるサプレッサーT細胞および/または記憶/エフェクターT細胞の活性化。これらの応答は、感染性を中和するため、および/または抗体−補体、または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介して、免疫された宿主に防御をもたらすために役立ち得る。そのような応答は、標準的な免疫測定法を使用して決定することができる。哺乳動物の先天性免疫系は、病原性生物の分子上の特徴も、免疫細胞上のToll様受容体および同様の受容体分子を活性化することによって認識し、それに応答する。先天性免疫系が活性化されると、種々の非適応性の免疫応答細胞が活性化されて、例えば、種々のサイトカイン、リンフォカインおよびケモカインが生成される。先天性免疫応答によって活性化される細胞としては、単球(moncyte)および形質細胞様(plamasacytoid)系列(MDC、PDC)の未成熟樹状細胞および成熟樹状細胞、ならびにガンマ、デルタ、アルファおよびベータT細胞およびB細胞などが挙げられる。よって、本発明は、先天性応答と適応応答の両方を伴う免疫応答も意図している。
【0053】
「免疫原性組成物」は、組成物を被験体に投与することにより被験体において目的の抗原性分子に対する体液性免疫応答および/または細胞性免疫応答が発生する場合の、抗原性分子を含む組成物である。
【0054】
用語「免疫原性」タンパク質またはポリペプチドは、上記の通り免疫学的応答を惹起するアミノ酸配列をいう。「免疫原性」タンパク質またはポリペプチドは、本明細書で使用される場合、前駆体および成熟形態、その類似体、またはその免疫原性フラグメントを含めた、問題のタンパク質の全長の天然配列または組換え配列を包含する。
【0055】
上で定義されたノロウイルスのポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、ノロウイルスに由来する分子であり、それぞれ、これらに限定することなく、ノロウイルスの種々の分離株の任意のものを含む。分子は、問題の特定の分離株に物理的に由来する必要はないが、合成的にまたは組換えによって生成することができる。
【0056】
具体的には、ノロウイルス株のゲノムは、3つのオープンリーディングフレーム:ポリタンパク質に転写されるORF1;主要なカプシドタンパク質であるVP1に転写されるORF2;副次的な構造タンパク質であるVP2に転写されるORF3を含有する。ノロウイルスのNorwalk株では、VP1タンパク質内のポリペプチドドメインの境界は以下の通りである:アミノ酸残基1〜221によって形成される殻(S)ドメイン、アミノ酸残基222〜230の可撓性ヒンジ領域、およびアミノ酸残基(amino residue)231〜530によって形成される突出(P)ドメイン。P−ドメインは、さらに、P1、およびカプシド殻から最も遠く広がり、推定上の受容体結合部位を含有する超可変P2の2つのサブドメインに分類される(Choiら(2008年)Proc. Natl. Aacd. Sci. USA 105巻:9175〜9180頁、Prasadら(1999年)Science 286巻:287〜290頁)。前記の番号付けは、Norwalk株のポリタンパク質アミノ酸配列(配列番号11)に対するものであるが、ノロウイルスの他の遺伝子型および分離株から得た配列内の対応するアミノ酸位も本発明に包含されることが意図されていると理解されるべきである。例えば、
図3を参照されたい。全長のVP1またはVP2をコードするポリペプチド、ならびにその変異体、その免疫原性フラグメント、およびそのようなポリペプチド、変異体または免疫原性フラグメントをコードする核酸のうちの任意の1つを本発明の実施において使用することができる。
【0057】
いくつものノロウイルス分離株の核酸配列およびタンパク質配列が公知である。代表的なノロウイルスのVP1およびVP2の配列は
図4A〜4Bおよび5A〜5Bに示されている。ノロウイルス分離株由来のORF1、ORF2、ORF3、およびそれらがコードするポリペプチドの配列を含めた追加的な代表的な配列は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)データベースに列挙されている。例えば、GenBankエントリーを参照されたい:ノロウイルス遺伝子群1株Hu/NoV/West Chester/2001/USA、GenBank受託番号AY502016;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Braddock Heights/1999/USA、GenBank受託番号AY502015;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Fayette/1999/USA、GenBank受託番号AY502014;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Fairfield/1999/USA、GenBank受託番号AY502013;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Sandusky/1999/USA、GenBank受託番号AY502012;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Canton/1999/USA、GenBank受託番号AY502011;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Tiffin/1999/USA、GenBank受託番号AY502010;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/CS−E1/2002/USA、GenBank受託番号AY50200;ノロウイルス遺伝子群1株Hu/NoV/Wisconsin/2001/USA、GenBank受託番号AY502008;ノロウイルス遺伝子群1株Hu/NoV/CS−841/2001/USA、GenBank受託番号AY502007;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Hiram/2000/USA、GenBank受託番号AY502006;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Tontogany/1999/USA、GenBank受託番号AY502005;Norwalkウイルス、完全なゲノム、GenBank受託番号NC−001959;ノロウイルスHu/GI/Otofuke/1979/JP ゲノムRNA、完全なゲノム、GenBank受託番号AB187514;ノロウイルスHu/Hokkaido/133/2003/JP、GenBank受託番号AB212306;ノロウイルスSydney2212、GenBank受託番号AY588132;Norwalkウイルス株SN2000JA、GenBank受託番号AB190457;Lordsdaleウイルス 完全なゲノム、GenBank受託番号X86557;Norwalk様ウイルスゲノムRNA、Gifu’96、GenBank受託番号AB045603;Norwalkウイルス株Vietnam026、完全なゲノム、GenBank受託番号AF504671;ノロウイルスHu/GII.4/2004/N/L、GenBank受託番号AY883096;ノロウイルスHu/GII/Hokushin/03/JP、GenBank受託番号AB195227;ノロウイルスHu/GII/Kamo/03/JP、GenBank受託番号AB195228;ノロウイルスHu/GII/Sinsiro/97/JP、GenBank受託番号AB195226;ノロウイルスHu/GII/Ina/02/JP、GenBank受託番号AB195225;ノロウイルスHu/NLV/GII/Neustrelitz260/2000/DE、GenBank受託番号AY772730;ノロウイルスHu/NLV/Dresden174/pUS−NorII/1997/GE、GenBank受託番号AY741811;ノロウイルスHu/NLV/Oxford/B2S16/2002/UK、GenBank受託番号AY587989;ノロウイルスHu/NLV/Oxford/B4S7/2002/UK、GenBank受託番号AY587987;ノロウイルスHu/NLV/Witney/B7S2/2003/UK、GenBank受託番号AY588030;ノロウイルスHu/NLV/Banbury/B9S23/2003/UK、GenBank受託番号AY588029;ノロウイルスHu/NLV/ChippingNorton/2003/UK、GenBank受託番号AY588028;ノロウイルスHu/NLV/Didcot/B9S2/2003/UK、GenBank受託番号AY588027;ノロウイルスHu/NLV/Oxford/B8S5/2002/UK、GenBank受託番号AY588026;ノロウイルスHu/NLV/Oxford/B6S4/2003/UK、GenBank受託番号AY588025;ノロウイルスHu/NLV/Oxford/B6S5/2003/UK、GenBank受託番号AY588024;ノロウイルスHu/NLV/Oxford/B5S23/2003/UK、GenBank受託番号AY588023;ノロウイルスHu/NLV/Oxford/B6S2/2003/UK、GenBank受託番号AY588022;ノロウイルスHu/NLV/Oxford/B6S6/2003/UK、GenBank受託番号AY588021;Norwalk様ウイルス分離株Bo/Thirsk10/00/UK、GenBank受託番号AY126468;Norwalk様ウイルス分離株Bo/Penrith55/00/UK、GenBank受託番号AY126476;Norwalk様ウイルス分離株Bo/Aberystwyth24/00/UK、GenBank受託番号AY126475;Norwalk様ウイルス分離株Bo/Dumfries/94/UK、GenBank受託番号AY126474;ノロウイルスNLV/IF2036/2003/Iraq、GenBank受託番号AY675555;ノロウイルスNLV/IF1998/2003/Iraq、GenBank受託番号AY675554;ノロウイルスNLV/BUDS/2002/USA、GenBank受託番号AY660568;ノロウイルスNLV/Paris Island/2003/USA、GenBank受託番号AY652979;Snow Mountainウイルス、完全なゲノム、GenBank受託番号AY134748;Norwalk様ウイルスNLV/Fort Lauderdale/560/1998/US、GenBank受託番号AF414426;Hu/norovirus/hiroshima/1999/JP(9912−02F)、GenBank受託番号AB044366;Norwalk様ウイルス株11MSU−MW、GenBank受託番号AY274820;Norwalk様ウイルス株B−1SVD、GenBank受託番号AY274819;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Farmington Hills/2002/USA、GenBank受託番号AY502023;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/CS−G4/2002/USA、GenBank受託番号AY502022;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/CS−G2/2002/USA、GenBank受託番号AY502021;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/CS−G12002/USA、GenBank受託番号AY502020;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Anchorage/2002/USA、GenBank受託番号AY502019;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/CS−D1/2002/CAN、GenBank受託番号AY502018;ノロウイルス遺伝子群2株Hu/NoV/Germanton/2002/USA、GenBank受託番号AY502017;ヒトカリシウイルスNLV/GII/Langen1061/2002/DE、完全なゲノム、GenBank受託番号AY485642;マウスノロウイルス1ポリタンパク質、GenBank受託番号AY228235;Norwalkウイルス、GenBank受託番号AB067536;ヒトカリシウイルスNLV/Mex7076/1999、GenBank受託番号AF542090;ヒトカリシウイルスNLV/Oberhausen 455/01/DE、GenBank受託番号AF539440;ヒトカリシウイルスNLV/Herzberg 385/01/DE、GenBank受託番号AF539439;ヒトカリシウイルスNLV/Boxer/2001/US、GenBank受託番号AF538679;Norwalk様ウイルスゲノムRNA、完全なゲノム、GenBank受託番号AB081723;Norwalk様ウイルスゲノムRNA、完全なゲノム、分離株:Saitama U201、GenBank受託番号AB039782;Norwalk様ウイルスゲノムRNA、完全なゲノム、分離株:Saitama U18、GenBank受託番号AB039781;Norwalk様ウイルスゲノムRNA、完全なゲノム、分離株:Saitama U25、GenBank受託番号AB039780;Norwalkウイルス株:U25GII、GenBank受託番号AB067543;Norwalkウイルス株:U201 GII、GenBank受託番号AB067542;Norwalk様ウイルス株416/97003156/1996/LA、GenBank受託番号AF080559;Norwalk様ウイルス株408/97003012/1996/FL、GenBank受託番号AF080558;Norwalk様ウイルスNLV/Burwash Landing/331/1995/US、GenBank受託番号AF414425;Norwalk様ウイルスNLV/Miami Beach/326/1995/US、GenBank受託番号AF414424;Norwalk様ウイルスNLV/White River/290/1994/US、GenBank受託番号AF414423;Norwalk様ウイルスNLV/New Orleans/306/1994/US、GenBank受託番号AF414422;Norwalk様ウイルスNLV/Port Canaveral/301/1994/US、GenBank受託番号AF414421;
Norwalk様ウイルスNLV/Honolulu/314/1994/US、GenBank受託番号AF414420;Norwalk様ウイルスNLV/Richmond/283/1994/US、GenBank受託番号AF414419;Norwalk様ウイルスNLV/Westover/302/1994/US、GenBank受託番号AF414418;Norwalk様ウイルスNLV/UK3−17/12700/1992/GB、GenBank受託番号AF414417;Norwalk様ウイルスNLV/Miami/81/1986/US、GenBank受託番号AF414416;Snow Mountain株、GenBank受託番号U70059;Desert ShieldウイルスDSV395、GenBank受託番号U04469;Norwalkウイルス、完全なゲノム、GenBank受託番号AF093797;Hawaiiカリシウイルス、GenBank受託番号U07611;Southamptonウイルス、GenBank受託番号L07418;Norwalkウイルス(SRSV−KY−89/89/J)、GenBank受託番号L23828;Norwalkウイルス(SRSV−SMA/76/US)、GenBank受託番号L23831;Camberwellウイルス、GenBank受託番号U46500;ヒトカリシウイルス株Melksham、GenBank受託番号X81879;ヒトカリシウイルス株MX、GenBank受託番号U22498;Minireovirus TV24、GenBank受託番号U02030;およびNorwalk様ウイルスNLV/Gwynedd/273/1994/US、GenBank受託番号AF414409;これらの配列は全て(本出願の出願日で記録される)は、参照により本明細書に組み込まれる。追加的なノロウイルス配列は、以下の特許公報に開示されている:WO05/030806、WO00/79280、JP2002020399、US2003129588、米国特許第6,572,862号、WO94/05700、およびWO05/032457、これらは全て、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列の比較およびノロウイルスの遺伝的な多様性および系統発生解析に関する考察については、Greenら(2000年)J. Infect. Dis. 181巻(増補2):S322〜S330頁;Wangら(1994年)J. Virol. 68巻:5982〜5990頁;Chenら(2004年)J. Virol. 78巻:6469〜6479頁;Chakravartyら(2005年)J. Virol. 79巻:554〜568頁;Fankhauserら(1998年)J. Infect. Dis. 178巻:1571〜1578頁も参照されたい。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「主要なカプシドタンパク質」または「主要なカプシドポリペプチド」または「VP1」は、ノロウイルスに関しては、ノロウイルスのORF2にコードされるポリペプチドに対して相同または同一である配列を含むポリペプチドをいい、それには、ノロウイルスのORF2にコードされるポリペプチドに対して少なくとも約70〜100%または約80〜100%のアミノ酸配列同一性を示す配列であって、この範囲内の任意の%同一性、例えば、それに対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%のアミノ酸配列同一性を含む配列が含まれる。
【0059】
本明細書で使用される場合、用語「副次的な構造タンパク質」または「副次的な構造ポリペプチド」または「VP2」または「小さな塩基性タンパク質」は、ノロウイルスに関しては、ノロウイルスのORF3にコードされるポリペプチドに対して相同または同一である配列を含むポリペプチドをいい、それには、ノロウイルスのORF3にコードされるポリペプチドに対して少なくとも約70〜100%または約80〜100%のアミノ酸配列同一性を示す配列であって、この範囲内の任意の%同一性、例えば、それに対して71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%のアミノ酸配列同一性を含む配列が含まれる。
【0060】
本明細書で使用される場合、用語「ウイルス様粒子」または「VLP」は、ウイルスカプシドを含有するが、ウイルスのゲノムの全部または一部分、具体的には、ウイルスのゲノムの複製性でかつ感染性の成分を欠く非複製的な、非感染性のウイルスの殻をいう。VLPは、一般に、1または複数のウイルスタンパク質、例えば、これらに限定されないが、カプシド、外被、殻、表面、構造タンパク質と称されるタンパク質など(例えば、VP1、VP2)で構成される。ノロウイルス・VLPは、適切な発現系においてVP1を組換え発現させると、自発的に形成され得る。特定のVLPを生成するための方法は当技術分野で公知であり、以下により詳細に考察されている。ウイルスタンパク質を組換え発現させた後のVLPの存在は、当技術分野で公知の従来の技法、例えば、電子顕微鏡法、生物物理学的な特徴付けなどを使用して検出することができる。例えば、VLPは、密度勾配遠心分離によって単離することができ、かつ/または、特徴的な密度バンド形成(density banding)によって同定することができる。あるいは、問題のVLP調製物のガラス化した水性試料において低温電子顕微鏡法を実施し、適切な曝露条件下で画像を記録することができる。ノロウイルスまたはノロウイルスVLPの試料に対して、高電子密度の陰性造影剤(negative contrast agent)、例えば、酢酸ウラニル、ギ酸ウラニル(uranuyl formate)、またはリンタングステン酸でコーティングした後にネガティブ染色電子顕微鏡検査を実施することができる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「生物学的試料」は、これらに限定されないが、例えば、血液、血漿、血清、排泄物(fecal matter)、尿、骨髄、胆汁、脊髄液、リンパ液、皮膚試料、皮膚、呼吸器、腸、および泌尿生殖器の外分泌物、涙、唾液、乳、血球、器官、生検材料を含めた、被験体から単離された組織または流体の試料、ならびに、これらに限定されないが、細胞および組織、例えば組換え細胞、および細胞成分を培地中で成長させることによって生じる馴化培地を含めた、in vitro細胞培養物の構成成分の試料をいう。具体的には、ノロウイルスは、生物学的試料、例えば、ウイルスに感染した個体由来の嘔吐物または下痢などから得ることができる。
【0062】
「被験体」は、これらに限定することなく、チンパンジーなどの非ヒト霊長類および他の類人猿およびサル種を含めたヒトおよび他の霊長類;農場動物、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマなど;家庭内哺乳動物、例えば、イヌおよびネコなど;げっ歯類、例えば、マウス、ラットおよびモルモットなどを含めた実験動物;家禽、野鳥および猟鳥、例えば、ニワトリ、シチメンチョウおよび他の家禽の鳥類、アヒル、ガチョウなどを含めた鳥類などを含めた、脊索動物亜門の任意のメンバーを意味する。この用語は、特定の年齢を示さない。よって、成体個体および新生仔個体のどちらも包含されるものとする。
【0063】
「相同性」は、2つのポリヌクレオチド間または2つのポリペプチド部分間の%同一性をいう。2つの核酸配列、または2つのポリペプチド配列は、その分子の定義された長さにわたって配列が少なくとも約50%の配列同一性、好ましくは少なくとも約75%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約80%〜85%の配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の配列同一性、および最も好ましくは少なくとも約95%〜98%の配列同一性を示す場合、互いに「実質的に相同」である。本明細書で使用される場合、実質的に相同とは、特定の配列に対して完全な同一性を示す配列もいう。
【0064】
一般に、「同一性」は、2つのポリヌクレオチド配列のヌクレオチドとヌクレオチドの正確な対応、または2つのポリペプチド配列のアミノ酸とアミノ酸の正確な対応をそれぞれいう。%同一性は、上記配列をアラインメントし、2つのアラインメントされた配列間の一致の正確な数を計数し、短い方の配列の長さで割り、その結果に100を掛けることにより、2つの分子間の配列情報を直接比較することによって決定することができる。容易に利用可能なコンピュータプログラム、例えば、ペプチド分析についてのSmithおよびWaterman(1981年)Advances in Appl. Math.
2巻:482〜489頁の局所相同性アルゴリズムを適応させるAtlas of Protein Sequence and Structure M.O. Dayhoff編、5巻、増補3:353〜358頁、National biomedical Research Foundation、Washington、D.C.のALIGN、Dayhoff、M.O.を使用して、解析を補助することができる。同様にSmithおよびWatermanアルゴリズムに依拠する、Wisconsin Sequence Analysis Package、Version8(Genetics Computer Group、Madison、Wis.から入手可能である)内のヌクレオチド配列同一性を決定するためのプログラム、例えば、BESTFIT、FASTAおよびGAPプログラムが利用可能である。これらのプログラムは、製造者によって推奨されており、上記のWisconsin Sequence Analysis Packageに記載されているデフォルトパラメータを用いて容易に利用される。例えば、特定のヌクレオチド配列の参照配列に対する%同一性は、SmithおよびWatermanの相同性アルゴリズムを使用し、デフォルトスコアリング表および6ヌクレオチド位(six nucleotide positions)のギャップペナルティを用いて決定することができる。
【0065】
本発明に関して%同一性を確立する別の方法は、University of Edinburghが著作権を持つ、John F.CollinsおよびShane S.Sturrokにより開発され、IntelliGenetics、Inc.(Mountain View、Calif.)により配給されるMPSRCHパッケージのプログラムを使用することである。このパッケージ一式から、スコアリング表についてデフォルトパラメータを使用して(例えば、ギャップ開始ペナルティが12、ギャップ伸長ペナルティが1、およびギャップが6)、Smith−Watermanアルゴリズムを使用することができる。データから、「配列同一性」を反映する「一致(Match)」する値が生じた。配列間の%同一性または%類似性を算出するための他の適切なプログラムは、一般に、当技術分野で公知であり、例えば、別のアラインメントプログラムは、デフォルトパラメータを用いたBLASTである。例えば、以下のデフォルトパラメータを使用してBLASTNおよびBLASTPを使用することができる:遺伝暗号(genetic coce)=標準(standard);フィルタ(filiter)=なし(none);鎖(strand)=両方(both);カットオフ(cutoff)=60;エクスペクト(expect)=10;マトリックス(Matrix)=BLOSUM62;記述(Descriptions)=50配列(50 sequences);ソート(sort by)=高スコア(HIGH SCORE);データベース(Databases)=非冗長性(non−redundant)、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は容易に入手可能である。
【0066】
あるいは、相同性は、ポリヌクレオチドを、相同な領域間に安定な二重鎖が形成される条件下でハイブリダイズし、その後、一本鎖特異的ヌクレアーゼ(複数可)により消化し、消化されたフラグメントのサイズを決定することによって決定することができる。実質的に相同なDNA配列は、例えば、特定のシステムに対して定義されたストリンジェントな条件下でサザンハイブリダイゼーション実験において同定することができる。適切なハイブリダイゼーション条件を定義することは当技術分野の技術の範囲内である。
【0067】
アミノ酸置換がキメラVP1タンパク質に存在する場合、それは、本質的に保存されていること、すなわち、第1のアミノ酸が、それらの側鎖に基づいて同様の性質を有する第2のアミノ酸で置き換えられている置換であることが好ましい。詳細には、アミノ酸は、一般に、4つのファミリーに分けられ、ファミリーを用いた置換は、保存置換であるとみなされる。4つのファミリーは、(1)酸性アミノ酸−アスパラギン酸およびグルタミン酸;(2)塩基性アミノ酸−リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性アミノ酸−アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)非荷電の極性アミノ酸−グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンである。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時には芳香族アミノ酸に分類される。
【0068】
「治療有効量」は、免疫原性組成物に関しては、抗体を生成させるため、またはノロウイルス感染または疾患を処置もしくは予防するためのいずれかの免疫学的応答を誘導するであろう免疫原(例えば、キメラVP1タンパク質、VLP、または抗原をコードする核酸)の量を意味する。そのような応答は、一般に、被験体において、組成物に対する抗体媒介性免疫応答および/または分泌性免疫応答もしくは細胞性免疫応答の発生をもたらすであろう。通常、そのような応答は、これらに限定されないが、以下の効果の1または複数を含む;免疫グロブリンA、免疫グロブリンD、免疫グロブリンE、免疫グロブリンGまたは免疫グロブリンMなどの任意の免疫学的クラス由来の抗体の生成;Bリンパ球およびTリンパ球の増殖;免疫学的な細胞(immunological cell)に対する活性化シグナル、増殖シグナルおよび分化シグナルをもたらすこと;ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、および/または細胞傷害性T細胞および/またはγσT細胞集団の増大。
【0069】
本発明の目的のために、アジュバントの「有効量」は、共投与された(coadministered)抗原または抗原をコードする核酸に対する免疫学的応答を増強する量となる。
【0070】
本明細書で使用される「処置」は、(i)感染または再感染または疾患の予防、(ii)症状の低減または排除、および(iii)問題の病原体の実質的な排除または完全な排除、のいずれかをいう。処置は、予防的に(感染する前に)、または治療的に(感染した後に)実施することができる。
【0071】
II.発明を実施する形式
本明細書に記載された本発明は、それ自体が変動し得る、特に例示されている分子またはプロセスのパラメータに限定されないことが理解されるべきである。本明細書において使用される用語法は、単に本発明の特定の局面、特徴および実施形態を説明するためのものであり、限定的なものではない。さらに、本発明の実施は、その全てが当技術分野の通常の技術の範囲内である、ウイルス学、微生物学、分子生物学、組換えDNA技法および免疫学の従来の方法を用いるであろう。そのような技法は、文献において十分に説明されている。例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第3版、2000年);DNA Cloning:A Practical Approach、第I&II巻(D. Glover編);Oligonucleotide Synthesis(N. Gait編、1984年);A Practical Guide to Molecular Cloning(1984年);およびFundamental Virology、第4版、2001年(B. N. FieldsおよびD. M. Knipe編);Handbook of Experimental Immunology、第I〜IV巻(D. M. WeirおよびC. C. Blackwell編、Blackwell Scientific Publications);A. L. Lehninger、Biochemistry(Worth Publishers, Inc.、現在の追加物);Methods In Enzymology(S. ColowickおよびN. Kaplan編、Academic Press, Inc.)を参照されたい。本明細書に記載のものと同様または同等であるいくつもの方法および材料を本発明の実施において用いることができるが、本明細書には、好ましい材料および方法が記載されている。さらに、本明細書において引用された全ての刊行物、特許および特許出願は、上記のものであろうが下記のものであろうが、これによってそれらの全体が参照により組み込まれる。
【0072】
本発明は、一部分において、第1のノロウイルス株のVP1タンパク質のP−ドメインの全部または一部を第2のノロウイルス株のP−ドメインの全てまたは対応する一部で置き換えることができるという発見、および発現すると、そのようなキメラVP1タンパク質はVLPに自己集合し得るという発見に基づく。VLPは、組換え宿主細胞において十分に発現されず、したがってVLPを容易に形成しないノロウイルス株のVP1タンパク質由来のP−ドメインであっても、任意の所望のVP1のP−ドメインを含有することが発見されている。これは、十分に発現され、したがって、VLPを容易に形成し得るノロウイルス株由来のVP1のS−ドメイン、および任意の他の所望のノロウイルス株のVP1タンパク質のP−ドメインの全部または一部を含有するキメラVP1タンパク質を調製することによって実現される。したがって、本発明は、任意の所望のP−ドメインの全部または一部を含有するキメラノロウイルスVP1タンパク質、およびノロウイルスVLPを提供する。現在、新興のノロウイルス株由来のP−ドメインを含めた任意のP−ドメインの全部または一部を含有するキメラノロウイルスVP1タンパク質、およびノロウイルスVLPを比較的容易かつ迅速に生成することができる。
【0073】
したがって、本発明は、被験体における免疫応答を誘導するために使用することができる免疫原性組成物、好ましくは被験体をノロウイルス感染および/またはノロウイルス疾患から保護することができる免疫原性組成物を迅速に生成するための組成物および方法を提供する。本発明は、キメラノロウイルスVP1タンパク質を単量体の形態でまたはVLPの形態で含む免疫原性組成物を提供する。キメラノロウイルスVP1タンパク質は第1のノロウイルス株由来のVP1のS−ドメインと、第2のノロウイルス株由来のVP1のP−ドメインの全部または一部とを含有する。
【0074】
本発明のノロウイルスVLPは一価であってよく、単一型のキメラVP1タンパク質で構成されてよい。そのような一価VLPは、単一のノロウイルス株由来の単一のVP1のP−ドメインの複数のコピーを含有する。所望に応じて、本発明のノロウイルスVLPは多価であってよく、2種以上の異なるキメラVP1タンパク質で構成されてよい。2種以上の異なるキメラVP1タンパク質は、同じノロウイルス株由来のVP1のS−ドメインを含有するが、異なるノロウイルス株由来のVP1のP−ドメインを含有することが好ましい。
【0075】
さらに、本発明の免疫原性組成物は1または複数のアジュバントまたはアジュバントをコードする核酸をさらに含んでよく、免疫原性ポリペプチドおよび/またはVLPをアジュバントと混合する、または共発現させる。免疫原性組成物は、ノロウイルス抗原以外の追加的な抗原、例えば、下痢性疾患を引き起こす病原体に対する免疫において使用することができる抗原も含んでよい。
【0076】
キメラノロウイルスVP1をコードする核酸分子、例えば、RNA分子または自己複製するRNA分子を含む免疫原性組成物も提供される。そのような組成物は、被験体に投与することができ、コードされるキメラノロウイルスVP1を被験体において、好ましくはVLPの形態で生成することができる。
【0077】
核酸、ポリペプチドおよび/またはVLPならびにそれらを調製し、精製し、ノロウイルス感染症の処置または予防において使用するための方法を含めた本発明の他の態様をさらに理解するために、より詳細な考察が以下に提供される。
【0078】
A.ポリペプチドおよびVLP
キメラノロウイルスVP1タンパク質は、第1のノロウイルス株のVP1のS−ドメインと、第2のノロウイルス株のVP1のP−ドメインの少なくとも一部を含有するP−ドメインとを含有する。キメラノロウイルスVP1タンパク質のS−ドメインおよびP−ドメインは、一般に、天然に存在するVP1タンパク質においてと同様に、リンカーペプチドを通じて繋がれている。リンカーペプチドにより、キメラVP1タンパク質が適正に折りたたまれ、したがって自己集合してVLPを形成することが可能になり得る。リンカーペプチドは、任意の適切なアミノ酸配列、例えば、第1のノロウイルス株、第2のノロウイルス株または第3のノロウイルス株のVP1タンパク質由来のリンカーペプチドであってよい。第1のノロウイルス株、第2のノロウイルス株および第3のノロウイルス株は、任意の所望のノロウイルス株、例えば、表1に列挙されている任意の株であってよい。例えば、第1のノロウイルス株はSnow Mountain株であってよく、第2のノロウイルス株は、任意の他の株、例えば、Norwalk株または2006a株であってよい。
【0079】
所望に応じて、キメラVP1のSドメイン、リンカーおよび/またはPドメインのアミノ酸配列は、対応する天然に存在するアミノ酸配列と、1または複数のアミノ酸の交換、付加または欠失(例えば、変異、置換、挿入、欠失、切断など)により異なってよい。そのような配列の変化によってキメラVP1タンパク質が適正に折りたたまれ、VLPに自己集合することが妨げられるべきではない。一般に、高度に保存されていない領域において天然に存在する配列からアミノ酸配列が変動する(1または複数のアミノ酸の付加または欠失によるものを含む)ことは許容される。例えば、
図8A〜8Bに示されているように、いくつかのノロウイルスのVP1タンパク質のアミノ酸配列のアラインメントにより、Sドメインは高度に保存されているが、Pドメイン、特にP2サブドメインは可変性がより高いことが示されている。したがって、所望に応じて、アミノ末端領域、カルボキシ末端領域、およびPドメインにアミノ酸配列の変動を導入することができる。Sドメインおよび/またはP1サブドメインにも、好ましくは
図8Aにおいてアスタリスクで印を付けていない、保存されていない位置に、いくらかのアミノ酸配列の変動を導入することができる。
【0080】
いくつかのノロウイルス株のVP1タンパク質は、酵母などの宿主細胞において組換え発現によって高収量で生成することが難しい。しかし、キメラノロウイルスVP1タンパク質が、酵母細胞などの所望の宿主細胞において高発現体(expressor)である株(例えば、発現が酵母細胞1リットル当たり>40mgになり得るSnow Mountain株など)由来のS−ドメインを含有する場合、P−ドメインが十分に発現されない株由来であっても、キメラタンパク質はその宿主細胞において高収量で生成され得る。例えば、NorwalkのP−ドメインの分泌型可溶性発現を、Snow MountainのS−ドメインを用いて記載の通りキメラ構築物を生成することにより、5倍超増加させることができる。したがって、本発明のキメラVP1タンパク質を使用して、宿主細胞において十分に発現されず、したがってVLPを容易に形成しない株由来のVP1のP−ドメインを含有するVLPを作製することができる。したがって、一般に、S−ドメインは、酵母細胞などの所望の宿主細胞において十分に発現される株のVP1タンパク質由来であることが好ましい。高発現体ノロウイルス株は、宿主細胞、好ましくは酵母において、組換えにより、VP1タンパク質を少なくとも細胞1リットル当たり約5mg、少なくとも細胞1リットル当たり約10mg、少なくとも細胞1リットル当たり約15mg、少なくとも細胞1リットル当たり約20mg、少なくとも細胞1リットル当たり約25mg、少なくとも細胞1リットル当たり約30mg、少なくとも細胞1リットル当たり約35mg、または少なくとも細胞1リットル当たり約40mgの量で生成することができる株であることが好ましい。
【0081】
キメラノロウイルスVP1タンパク質は、式Iによる構造を有してよい:
A−S−L−P−B (I)
式中、
AおよびBは、独立して、存在しないまたは任意の所望のアミノ酸配列であり;
Sは第1のノロウイルス株のVP1のS−ドメインであり;
Lは、リンカーペプチドであるまたは存在しない;および
Pは、ノロウイルスVP1のP−ドメインであり、ここで、Pの少なくとも一部は第2のノロウイルス株のP−ドメイン由来である。
【0082】
リンカーペプチド(L)は、キメラVP1タンパク質が適正に折りたたまれ、自己集合してVLPを形成することを可能にする任意のアミノ酸配列であってよい。適切なリンカーペプチドとしては、第1のノロウイルス株、第2のノロウイルス株または第3のノロウイルス株のVP1タンパク質由来のリンカーペプチドが挙げられる。あるいは、リンカーペプチド(L)は、キメラタンパク質が適正に折りたたまれ、VLPに自己集合することを可能にする短いアミノ酸配列、例えば、20アミノ酸以下(すなわち、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1アミノ酸)、好ましくは約9アミノ酸であってよい。適切なリンカーペプチド(L)の例としては、ポリグリシンリンカー(Gly
n、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれより多い(配列番号5))、および(GGGS)n、ここで、n=1、2、3または4(配列番号6)、および高度に荷電したリンカー、例えば、(SRSK)n、n=1、2、3または4(配列番号7)が挙げられる。Lは、第1のノロウイルス株、第2のノロウイルス株または第3のノロウイルス株のVP1タンパク質由来のリンカーペプチドであることが好ましい。
【0083】
AおよびBは、存在する場合、独立して、任意の所望のアミノ酸配列、例えば、約1〜500アミノ酸、約1〜250アミノ酸、約1〜100アミノ酸、約1〜50アミノ酸、約1〜40アミノ酸、約1〜30アミノ酸、約1〜20アミノ酸、約1〜10アミノ酸、または約1〜5アミノ酸の配列である。例えば、AおよびBは、クローニングを容易にするために、またはクローニングの結果として、またはタンパク質の精製を容易にするためにキメラタンパク質に付加される1または複数のアミノ酸、例えば、エピトープタグまたはヒスチジンタグ(His
n、ここで、n=3、4、5、6、7、8、9、10(配列番号8))であってよい。エピトープタグは、強力なT細胞エピトープまたはタンパク質の免疫原性を改善するために設計された修飾されたエピトープからなってよい。これらの追加的な残基は、免疫調節物質の戦略の一部分として、修飾されたTLRアゴニストを含んでよい。所望に応じて、Aおよび/またはBは、例えば、米国特許公開第20060264609号に開示されているものなどの熱ショックタンパク質またはフラグメント、または、米国特許第7,527,801号に開示されているものなどのウイルス性抗原および細菌性抗原を含めた免疫原性フラグメントを含んでよい。あるいは、Aおよび/またはBは、全長のタンパク質、例えば、ノロウイルスVP1融合タンパク質上に提示される、またはノロウイルスVP1またはその一部を提示するために用いられる組換えタンパク質を含んでよい。いくつかの実施形態では、AおよびBはどちらも存在しない。
【0084】
本明細書に記載の通り、VP1のP−ドメインは、P
1サブドメインとP
2サブドメインとを含む。したがって、本明細書に開示されている式において、Pは、P
1−P
2と表すことができ、ここで、P
1はP
1サブドメインであり、P
2はP
2サブドメインである。
【0085】
P−ドメインの一次構造において、P
2サブドメインのアミノ酸をP
1サブドメインのアミノ酸の配列に挿入すると、一次構造は、式P
1−1−P
2−P
1−2を有し、P
1−1はP
1サブドメインの配列のアミノ末端部分であり、P
1−2はP
1サブドメインの配列の残りであり、P
2はP
2サブドメインの配列である。
【0086】
いくつかの例示的な実施形態では、キメラノロウイルスVP1タンパク質は、式Iのものであってよく、式中、Sは第1のノロウイルス株由来であり、Pは第2のノロウイルス株由来である。そのような実施形態では、Lは、任意の適切なリンカー、例えば、第1のノロウイルス株または第2のノロウイルス株由来の天然のリンカーであってよい、または存在しなくてよい。
【0087】
本明細書に記載の通り、キメラノロウイルスVP1タンパク質は、P−ドメインの一部がSドメインと同じ株由来であり、P−ドメインの一部が異なる株由来であるP−ドメインを含有してよい。異なる株(stain)由来の部分は、P
1ドメインまたはその一部、P
2ドメインまたはその一部ならびにP
1ドメインおよびP
2ドメインの一部の任意の組み合わせであってよい。異なる株由来の部分はP
2ドメインまたはその一部であることが好ましい。例えば、いくつかの実施形態では、キメラノロウイルスVP1タンパク質は、式IIまたは式IIIによる構造を有してよい。
【0088】
A−S−L−P
1−P
2−B (II)
A−S−P
1−P
2−B (III)
式IIおよびIIIにおいて、変数であるA、S、LおよびBは式Iに記載の通りであり、P
1はVP1のP
1ドメインであり、P
2はVP1のP
2ドメインであり、P
1およびP
2の少なくとも1つはSを提供する株とは異なるノロウイルス株(stain)由来である。いくつかの実施形態では、SおよびP
1は第1のノロウイルス株(stain)由来であり、P
2は第2のノロウイルス株由来である。他の実施形態では、SおよびP
2は第1のノロウイルス株由来であり、P
1は第2のノロウイルス株由来である。そのような実施形態では、リンカーLが存在する場合、それは任意の適切なリンカー、例えば、第1のノロウイルス株または第2のノロウイルス株由来のリンカーであってよい。いくつかの実施形態では、キメラノロウイルスVP1タンパク質は式IIのものであり、式中、S、LおよびP
1は第1のノロウイルス株由来であり、P
2は第2のノロウイルス株由来である。式IIおよびIIIに包含される例示的な実施形態のこの記載は、Pドメインの一部がSドメインと同じ株由来であり、Pドメインの一部が異なる株由来であるP−ドメインを含有するキメラノロウイルスVP1タンパク質を例示するものである。
【0089】
いくつかの実施形態では、キメラノロウイルスVP1タンパク質は、式IVおよびXVIIのいずれか1つによる構造を有する:
【0091】
式中、Pは、P
1サブドメインおよびP
2サブドメインを含めたP−ドメインを表し、下付き文字は、S−ドメインまたはP−ドメインが以下の株:NV、Norwalk株;SMV、Snow Mountain株;DSV、Desert Storm株由来であり;かつ、GI、GII、GIII、GIVおよびGVは、それぞれ遺伝子群GI、GII、GIII、GIVおよびGV由来の任意のノロウイルスであることを示す。
【0092】
特定の実施形態では、キメラノロウイルスVP1タンパク質は、Snow Mountain株のVP1由来のS−ドメイン、Snow Mountain株のVP1由来のリンカーペプチド、および別のノロウイルス株のVP1のP−ドメインの少なくとも一部を含有するP−ドメインを含む。より特定の実施形態では、P−ドメインまたはその一部は、Norwalk株、2006a株、またはNew Orleans株のVP1由来である。
【0093】
いくつかの実施形態では、キメラノロウイルスVP1タンパク質は、式XVIIIによる一次構造を有する:
A−S
第1−L−P1−1
(第1)−P2
(第2)−P1−2
(第1)−B (XVIII)
式XVIIIにおいて、下付き文字の第1および第2は、そのドメインが、それぞれ第1の株由来であることまたは第2の株由来であることを示す。特定の例では、キメラノロウイルスVP1タンパク質は、式XIX〜XLVIのいずれか1つによる一次構造を有する:
【0095】
式中、下付き文字は、S−ドメインまたはP−サブドメインが、以下の株:NV、Norwalk株;SMV、Snow Mountain株;DSV、Desert Storm株由来であり;かつ、GI、GII、GIII、GIVおよびGVは、それぞれ遺伝子群GI、GII、GIII、GIVおよびGV由来の任意のノロウイルスであることを示す。
【0096】
本発明の教義に従うことにより、標準の手順を用いた組換え手段によって莫大な数の異なるキメラVP1タンパク質を生成することができる。ノロウイルスの異なる株由来のVP1タンパク質のアミノ酸配列、およびそれらをコードするヌクレオチド配列は、GenBankデータベース(ncbi.nlm.nih.gov)、National Center for Biotechnology InformationのTaxonomy Database(ncbi.nlm.nih.gov)またはCaliciviridaeに関するPathoSystems Resource Integration Center Database(patric.vbi.vt.edu)から入手することができる。
【0097】
本発明のキメラVP1タンパク質は、酵母細胞などの宿主細胞において発現させることによって生成させると、VLPに自己集合し得る。これは、特に、宿主細胞において十分に発現されるノロウイルス株のVP1のS−ドメイン、例えば、Snow Mountain株のS−ドメインなどを含有するキメラVP1タンパク質の場合にそうである。したがって、本発明は、キメラVP1を含有するVLPをさらに提供する。VLPは、一価であっても二価であっても多価であってもよい。一価VLPは、キメラVP1タンパク質と、ただ1つのP−ドメインとを含有する。いくつかの実施形態では、一価VLPは、それぞれが同じP−ドメインを含有する、キメラVP1と天然に存在するVP1とを含有してよい。好ましい一価VLPは、単一のキメラVP1タンパク質の複数のコピー(例えば、180コピー)で構成される。したがって、特定の実施形態では、本発明の一価VLPは、例えば、式I〜XLVIのいずれか1つの単一のキメラVP1の180コピーを含む。
【0098】
二価VLPおよび多価VLPは、キメラVP1タンパク質と、少なくとも2つの異なるP−ドメインとを含有する。例えば、いくつかの実施形態では、二価VLPは、第1のP−ドメインを含有するキメラVP1と、第2のP−ドメインを含有する天然に存在するVP1とを含有してよい。そのような実施形態では、キメラVP1のS−ドメインと天然に存在するVP1のS−ドメインは同じであることが好ましい。他の実施形態では、二価または多価VLPは、異なる株由来のP−ドメインを含有する2種以上の異なるキメラVP1タンパク質を含有する。2種以上のキメラVP1タンパク質は同じS−ドメイン含有することが好ましい。
【0099】
特定の他の実施形態では、本発明の二価または多価VLPは、例えば式I〜XLVIによるキメラVP1タンパク質からなる群から選択される2種以上のキメラVP1タンパク質を含む。
【0100】
所望に応じて、キメラVP1のS−ドメインおよびP−ドメイン(P−サブドメインを含む)の一方または両方のアミノ酸配列を、例えば、該ドメインまたはサブドメインのアミノ酸配列が、該ドメインまたはサブドメインのアミノ酸配列の長さにわたって最大約20%、最大約1%、最大約2%、最大約3%、最大約4%、最大約5%、最大約10%、最大約15%、または最大約20%が、対応する天然に存在するアミノ酸配列と異なるようにする1または複数のアミノ酸の挿入、欠失、変異または置換を含むように(挿入、欠失、変異、置換によって)変更することができる。
【0101】
図8A〜8Eに示されているように、天然に存在するVP1のアミノ酸配列のアラインメントにより、N末端領域(アミノ酸1〜49)、S−ドメイン(アミノ酸50〜225)およびP
1−1サブドメイン(アミノ酸226〜278)のアミノ酸配列が、P2サブドメイン(アミノ酸279〜405)、P1−2ドメイン(アミノ酸406〜520)およびC末端領域のアミノ酸配列よりも保存されている(アスタリスクは、保存されたアミノ酸を示す)ことが実証されている(Hansmanら(2006年)J. General Virology 87巻:909〜919頁)。保存されたアミノ酸残基は多くの場合、適切な折りたたみまたは機能にとって重要であるので、存在する任意のアミノ酸配列の変更は、保存された位置には導入しないことが好ましい。例えば、S−ドメインにおける保存されたアミノ酸は、適切な折りたたみおよびVLPの形成にとって重要であり得る。したがって、本発明のキメラVP1タンパク質では、保存されたアミノ酸残基は欠失しない、かつ置き換えられないことが好ましい。
【0102】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明のキメラVP1タンパク質のS−ドメインは、天然に存在するS−ドメインに対して少なくとも約70〜100%または約80〜100%のアミノ酸配列同一性であって、この範囲内の任意の%同一性、例えば、少なくとも約70%、少なくとも約71%、少なくとも約72%、少なくとも約73%、少なくとも約74%、少なくとも約75%、少なくとも約76%、少なくとも約77%、少なくとも約78%、少なくとも約79%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を含めたアミノ酸配列同一性を有してよい。その代わりにまたはそれに加えて、本発明のキメラVP1タンパク質のP1−1−サブドメインは、天然に存在するP1−1−サブドメインに対して少なくとも約70〜100%または約80〜100%のアミノ酸配列同一性であって、この範囲内の任意の%同一性、例えば、少なくとも約70%、少なくとも約71%、少なくとも約72%、少なくとも約73%、少なくとも約74%、少なくとも約75%、少なくとも約76%、少なくとも約77%、少なくとも約78%、少なくとも約79%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を含めたアミノ酸配列同一性を有してよい。その代わりにまたはそれに加えて、本発明のキメラVP1タンパク質のP
2−サブドメインは、天然に存在するP
2−サブドメインに対して少なくとも約70〜100%または約80〜100%のアミノ酸配列同一性であって、この範囲内の任意の%同一性、例えば、少なくとも約70%、少なくとも約71%、少なくとも約72%、少なくとも約73%、少なくとも約74%、少なくとも約75%、少なくとも約76%、少なくとも約77%、少なくとも約78%、少なくとも約79%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を含めたアミノ酸配列同一性を有してよい。その代わりにまたはそれに加えて、本発明のキメラVP1タンパク質のP1−2−サブドメインは、天然に存在するP1−2−サブドメインに対して少なくとも約70〜100%または約80〜100%のアミノ酸配列同一性であって、この範囲内の任意の%同一性、例えば、少なくとも約70%、少なくとも約71%、少なくとも約72%、少なくとも約73%、少なくとも約74%、少なくとも約75%、少なくとも約76%、少なくとも約77%、少なくとも約78%、少なくとも約79%、少なくとも約80%、少なくとも約81%、少なくとも約82%、少なくとも約83%、少なくとも約84%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%のアミノ酸配列同一性を含めたアミノ酸配列同一性を有してよい。
【0103】
本発明のVP1タンパク質のS−ドメインは、天然に存在するS−ドメインと比較して全長またはほぼ全長である。N末端もしくはC末端のいずれか、またはその両方における切断および内部の欠失は、VLPを形成する能力がVLPの形成に好都合な条件下で保持されるのであれば、許容される。したがって、S−ドメインは、全長の配列、フラグメント、切断された配列および部分配列、ならびに参照S−ドメインまたはネイティブなS−ドメインの類似体形態および前駆体形態を含んでよい。いくつかの実施形態では、本発明のVP1タンパク質のS−ドメインは、そのN末端において、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸残基が切断されている。その代わりにまたはそれに加えて、本発明のVP1タンパク質のS−ドメインは、そのC末端において、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸残基が切断されていてよい。その代わりにまたはそれに加えて、本発明のVP1タンパク質のS−ドメインは、5、10、15、20、25、30、35、40、45または50アミノ酸残基長の内部の欠失を含有してよい。
【0104】
本発明のVP1タンパク質のP1−1−サブドメインは、天然に存在するP1−1−サブドメインと比較して全長またはほぼ全長であり、N末端もしくはC末端のいずれか、またはその両方における配列の切断および/または内部の欠失を伴う。したがって、P1−1−サブドメインは、全長の配列、フラグメント、切断された配列および部分配列、ならびに天然に存在するP1−1−ドメインの類似体形態および前駆体形態を含んでよい。いくつかの実施形態では、本発明のVP1タンパク質のP1−1−サブドメインは、そのN末端において1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸残基が切断されている。その代わりに、またはそれに加えて、本発明のVP1タンパク質のP1−1−サブドメインは、そのC末端において、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸残基が切断されていてよい。その代わりにまたはそれに加えて、本発明のVP1タンパク質のP1−1−サブドメインは、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸残基長の内部の欠失を含有してよい。
【0105】
本発明のVP1タンパク質のP2−サブドメインは、天然に存在するP2−サブドメインと比較して全長またはほぼ全長であり、N末端もしくはC末端のいずれか、またはその両方における配列の切断および/または内部の欠失を伴う。したがって、P2−サブドメインは、全長の配列、フラグメント、切断された配列および部分配列、ならびに天然に存在するP2−ドメインの類似体形態および前駆体形態を含んでよい。いくつかの実施形態では、本発明のVP1タンパク質のP2−サブドメインは、そのN末端において1〜約26アミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、20、24または26アミノ酸残基が切断されている。その代わりに、またはそれに加えて、本発明のVP1タンパク質のP2−サブドメインは、そのC末端において、1〜約26アミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、20、24または26アミノ酸残基が切断されていてよい。その代わりに、またはそれに加えて、本発明のVP1タンパク質のP2−サブドメインは、1〜約26アミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、20、24または26アミノ酸残基の内部の欠失を含有してよい。
【0106】
本発明のVP1タンパク質のP1−2−サブドメインは、ネイティブなP1−2−サブドメインまたは参照P1−2−サブドメインと比較して全長またはほぼ全長であり、N末端もしくはC末端のいずれか、またはその両方における配列の切断および/または内部の欠失を伴う。したがって、P1−2−サブドメインは、全長の配列、フラグメント、切断された配列および部分配列、ならびに天然に存在するP1−2−ドメインの類似体形態および前駆体形態を含んでよい。いくつかの実施形態では、本発明のVP1タンパク質のP1−2−サブドメインは、そのN末端において1〜約26アミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、20、24または26アミノ酸残基が切断されている。その代わりに、またはそれに加えて、本発明のVP1タンパク質のP1−2−サブドメインは、そのC末端において、1〜約26アミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、20、24または26アミノ酸残基が切断されていてよい。その代わりにまたはそれに加えて、本発明のVP1タンパク質のP1−2−サブドメインは、1〜約26アミノ酸、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、16、20、24または26アミノ酸残基の内部の欠失を含有してよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明のキメラVP1タンパク質のP−ドメイン(P1−1、P2およびP1−2サブドメインを含む)は、キメラVP1上に提示されるポリペプチドなどの、他のポリペプチドの一部であるアミノ酸配列の挿入または置き換えを含んでよい。例えば、P−ドメインを別のポリペプチドまたは別のポリペプチドの一部と融合することができる。例えば、式1において、Bは、キメラVP1上に提示される別のポリペプチドのアミノ酸配列であってよい。そのような状況では、その他のポリペプチドは、キメラVP1タンパク質を含有するVLPの表面上に提示され得る。
【0108】
本発明のキメラVP1タンパク質は、本明細書に記載のものを含めた任意の適切な方法を用いて酵母細胞などの適切な組換え宿主細胞において発現させることによって生成することができる。
【0109】
B.核酸
本発明は、さらに、本明細書に記載のキメラノロウイルスVP1タンパク質をコードする組換え核酸を提供する。これらの核酸は、第1のノロウイルス株のVP1のS−ドメインをコードする第1のヌクレオチド配列、第2のノロウイルス株のP−ドメインの少なくとも一部を含有するP−ドメインをコードする第2のヌクレオチド配列、ならびに必要に応じて、それぞれリンカーペプチド、アミノ酸配列Aおよびアミノ酸配列Bをコードする第3、第4および第5のヌクレオチド配列を含有する。核酸配列は、核酸が転写および/または翻訳されて、VLPに自己集合するキメラVP1タンパク質を生成できるように作動可能に連結する。所望のノロウイルス株由来のVP1のS−ドメインおよびP−ドメインをコードする任意の適切な核酸配列を使用することができる。例えば、所望のノロウイルス株のゲノムにおけるORF2内の対応する配列と同じヌクレオチド配列を有する核酸、または酵母細胞などの所望の宿主細胞において組換え発現させるために最適化された、コドン最適化したその変異体を使用することができる。
【0110】
Snow Mountain株由来の代表的なノロウイルスORF2配列は公知であり、
図4Aに示されている。多くの他のノロウイルス株のORF2のヌクレオチド配列、例えば、NorwalkウイルスのORF2配列、GenBank受託番号M87661、Hawaiiウイルス;GenBank受託番号U07611、および以下の特許公報:WO05/030806、WO00/79280、JP2002020399、US2003129588、米国特許第6,572,862号、WO94/05700、およびWO05/032457に開示されている配列が当技術分野で公知である。異なるノロウイルス株の配列の比較については、Greenら(2000年)J. Infect. Dis. 181巻(増補2):S322〜330頁;Wangら(1994年)J. Virol. 68巻:5982〜5990頁;Chenら(2004年)J. Virol. 78巻:6469〜6479頁;Chakravartyら(2005年)J. Virol. 79巻:554〜568頁;Fankhauserら(1998年)J.
Infect. Dis. 178巻:1571〜1578頁も参照されたい。ノロウイルスのヌクレオチド配列についてのさらなる情報は、GenBankデータベース(ncbi.nlm.nih.gov)、National Center for Biotechnology InformationのTaxonomy Database(ncbi.nlm.nih.gov)またはCaliciviridaeに関するPathoSystems Resource Integration Center Database(patric.vbi.vt.edu)から入手することができる。
【0111】
一部の態様では、組換え核酸は、本明細書に記載のキメラVP1タンパク質、例えば、式IによるキメラVP1タンパク質をコードする。例えば、組換え核酸は、式LIVによるコード配列を含んでよい
A’−S’−L’−P’−B’ (XLVII)
式中、
A’およびB’は、独立して、存在しないまたは任意の所望のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列であり;
S’は、第1のノロウイルス株のVP1のS−ドメインをコードするヌクレオチド配列であり;
L’は存在しないまたはリンカーペプチドをコードするヌクレオチド配列であり;
P’は、ノロウイルスVP1のP−ドメインをコードするヌクレオチド配列であり、ここで、Pの少なくとも一部は第2のノロウイルス株のP−ドメイン由来である。
【0112】
L’にコードされるリンカーペプチド、およびA’、S’、P’およびB’にコードされるアミノ酸配列は、それぞれL、A、S、P、およびBについて本明細書において記載されている通りである。
【0113】
特定の実施形態では、組換え核酸は、式I〜XLVIのいずれか1つによるキメラVP1タンパク質をコードするコード配列を含有する。
【0114】
他の特定の実施形態では、組換え核酸は、
図7に示されている任意の一次構造を有するキメラVP1タンパク質をコードするコード配列を含有する。
【0115】
Snow Mountain株由来のS−配列とNorwalk株(stain)由来のP−配列;またはSnow Mountain株由来のS−配列とGII.4 2006a.OPTI.P株由来のP−配列を含有するキメラVP1タンパク質をコードする代表的な組換え核酸がそれぞれ
図5および6に示されている。Snow Mountain配列の場合では、S−ドメインは、残基1〜216を包含し、リンカーは、残基217〜226を含む。Norwalkについては、P−配列は残基231〜530を包含した。2006a配列については、P−配列は残基227〜541を包含した。追加的な代表的なノロウイルス配列は、Norwalkウイルス、GenBank受託番号M87661、Snow Mountainウイルス、GenBank受託番号U70059;Snow Mountainウイルス、GenBank受託番号AY134748、Hawaiiウイルス;GenBank受託番号U07611、および以下の特許公報:WO05/030806、WO00/79280、JP2002020399、US2003129588、米国特許第6,572,862号、WO94/05700、およびWO05/032457に開示されている配列である。異なるノロウイルス株の配列の比較については、Greenら(2000年)J. Infect. Dis. 181巻(増補2):S322−330;Wangら(1994年)J. Virol. 68巻:5982〜5990頁;Chenら(2004年)J. Virol. 78巻:6469〜6479頁;Chakravartyら(2005年)J. Virol. 79巻:554〜568頁;Fankhauserら(1998年)J. Infect. Dis. 178巻:1571〜1578頁も参照されたい。
【0116】
キメラVP1タンパク質をコードする核酸は、RNAであってもDNAであってもよく、任意の適切な方法を用いて構築することができ(例えば、化学合成によって、組換えDNA技術を用いて)、かつ種々の形態をとってよい(例えば、一本鎖、二本鎖、ベクターなど)。組換え構築物を生成するための多くの適切な方法が当技術分野において周知であり、慣習的である。例えば、組換え核酸は、キメラVP1タンパク質の一部をコードする配列を含む2つ以上のオリゴヌクレオチドから、または標準の分子生物学技法を用いて、オリゴヌクレオチドをライゲーションして全長のキメラVP1タンパク質についてのコード配列を形成することによって生成することができる。例えば、米国特許第6,632,601号および米国特許第6,630,298号を参照されたい。核酸は、実質的に純粋な(すなわち、実質的に他の宿主細胞や非宿主細胞の核酸を含まない)形態で調製することが好ましい。
【0117】
対象のVP1タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、例えば、感染した個体由来の便試料または吐物試料中に存在するウイルスRNAに由来するゲノムライブラリーから単離することができる。あるいは、ノロウイルス核酸は、例えば、Estesら、米国特許第6,942,865号;Guntapongら(2004年)Jpn J. Infect. Dis. 57巻:276〜278頁;Harringtonら(2004年)J. Virol. 78巻:3035〜3045頁;Fankhauserら(1998年)J. Infect. Dis. 178巻:1571〜1578頁;および、Dolinら(1971年)J. Infect. Dis. 123巻:307〜312頁に記載の通り、感染したヒトまたは他の哺乳動物から、または感染した個体から収集した便試料または吐物試料から単離することができる。ブタウイルスは、LLC−PK細胞において、胆汁酸を含有する腸液の存在下で成長させることができる(Changら(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101巻:8733〜8738頁)。したがって、PCRなどの増幅方法を使用して、ポリヌクレオチドを、ノロウイルスのゲノムRNAまたはコードするcDNAのいずれかから増幅することができる。あるいは、ポリヌクレオチドは、化学的に合成することができる。ヌクレオチド配列は、所望の特定のアミノ酸配列についての適切なコドンを用いて設計することができる。合成構築物は、キメラVP1タンパク質を生成する意図された宿主細胞において発現させるために最適化されたコドンを含有することが好ましい。対象のポリヌクレオチドの完全な配列は、標準の方法によって調製した、重複しているオリゴヌクレオチドから組み立て、完全なコード配列に組み立てることができる。例えば、Edge(1981年)Nature 292巻:756頁;Nambairら(1984年)Science 223巻:1299頁;Jayら(1984年)J. Biol. Chem. 259巻:6311頁;Stemmerら(1995年)Gene 164巻:49〜53頁を参照されたい。ポリヌクレオチドは、RNAであっても、一本鎖もしくは二本鎖のDNAであってもよい。ポリヌクレオチドは、タンパク質および脂質などの他の成分を含まずに単離することが好ましい。
【0118】
あるいは、特定のヌクレオチド配列は、所望の配列を有するベクターから入手することができる、または、適切な場合には、当技術分野で公知の種々のオリゴヌクレオチド合成技法、例えば、部位特異的変異誘発およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法を用いて完全にまたは部分的に合成することができる。例えば、Sambrook、上記を参照されたい。具体的には、所望の配列をコードするヌクレオチド配列を得る1つの方法は、重複している合成オリゴヌクレオチドの相補的なセットをアニーリングし、次に適切なDNAリガーゼを用いてライゲーションし、ライゲーションされたヌクレオチド配列をPCRによって増幅することによるものである。例えば、Jayaramanら(1991年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88巻:4084〜4088頁を参照されたい。さらに、オリゴヌクレオチド特異的合成(oligonucleotide directed synthesis)(Jonesら(1986年)Nature 54巻:75〜82頁)、既存のヌクレオチド領域のオリゴヌクレオチド特異的変異誘発(Riechmannら(1988年)Nature 332巻:323〜327頁およびVerhoeyenら(1988年)Science 239巻:1534〜1536頁)、および間隙のある(gapped)オリゴヌクレオチドの、T4 DNAポリメラーゼを用いた酵素的穴埋め(filling−in)(Queenら(1989年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86巻:10029〜10033頁)を使用することができる。
【0119】
キメラVP1タンパク質をコードする組換え構築物は、従来の方法を用いて、発現ベクターなどの適切なベクターに調製することができる。発現ベクターなどの組換え構築物は、キメラノロウイルスVP1タンパク質をコードする核酸配列を含む。組換え構築物は、DNA、RNAの形態であってよく、一本鎖または二本鎖のいずれであってもよい。例えば、構築物はプラスミドの形態であってよい。所望の宿主細胞において組換えタンパク質を発現させるためのいくつもの適切なベクターが当技術分野において周知であり、慣習的である。適切なベクターは、これらに限定されないが、以下:複製起点;選択マーカー遺伝子;1もしくは複数の発現制御エレメント、例えば、転写制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター)、および/または1もしくは複数の翻訳シグナル;選択された宿主細胞(例えば、哺乳動物起源の宿主細胞または異種哺乳動物または非哺乳動物種由来の宿主細胞)における分泌経路に対してターゲティングするためのシグナル配列またはリーダー配列、の1または複数を含めたいくつもの成分を含有してよい。例えば、昆虫細胞における発現のために、pFastBac(Invitrogen)などの適切なバキュロウイルス発現ベクターを使用して、組換えバキュロウイルス粒子を生成する。バキュロウイルス粒子を増幅し、昆虫細胞に感染させるために使用して、組換えタンパク質を発現させる。哺乳動物細胞における発現のために、所望の哺乳動物の宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞)において構築物の発現を駆動するベクターを使用する。同様に、酵母における発現のために、所望の酵母宿主細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Candida albicans、Candida maltosa、Hansenual polymorpha、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces lactis、Pichia guillerimondii、Pichia pastoris、Schizosaccharomyces pombeおよびYarrowia lipolytica)において発現を駆動するベクターを使用する。
【0120】
真核細胞において本発明のVLPを生成するために、ウイルスベクター、例えば、ワクシニアウイルスおよび鳥類のポックスウイルスを含めたポックスウイルス科のウイルス(pox family of viruses)に由来するウイルスベクターを使用することができる。さらに、Tomeiら(1993年)J. Virol. 67巻:4017〜4026頁およびSelbyら(1993年)J. Gen. Virol. 74巻:1103〜1113頁に記載のワクシニアに基づく感染/トランスフェクション系も、本発明での使用が見出される。この系では、細胞をまず、バクテリオファージT7 RNAポリメラーゼをコードするワクシニアウイルス組換え体にin vitroで感染させる。このポリメラーゼは、それが、T7プロモーターを担持する鋳型のみを転写するという点で、優れた特異性を示す。感染させた後、細胞に、T7プロモーターによって駆動される対象のDNAをトランスフェクトする。ワクシニアウイルス組換え体由来の細胞質において発現されたポリメラーゼにより、トランスフェクトされたDNAがRNAに転写され、次いでそれが宿主の翻訳機構によってタンパク質に翻訳される。あるいは、「前駆体」系(StudierおよびMoffatt(1986年)J. Mol. Biol. 189巻:113〜130頁)の場合と同様に、T7を精製タンパク質または酵素として加えることができる。この方法により、多量のRNAおよびその翻訳産物(複数可)が細胞質内において高レベルで一過性に生成する。
【0121】
組換え核酸は、自己複製する核酸分子(例えば、RNA)、アルファウイルス粒子、アルファウイルスレプリコンなどのようなベクター発現系の形態、またはそのようなベクター発現系の成分であってよい。
【0122】
所望に応じて、ベクターは、検出可能なマーカーを含んでよい。例えば、検出可能なマーカーは、1または複数の抗生物質に対する抵抗性を付与するポリペプチドであってよい。本発明のベクターに関する追加的な情報は、以下のセクションCにおいて提供される。
【0123】
C.ウイルス様粒子(VLP)の生成およびそのための宿主細胞
本発明は、さらに、キメラノロウイルスVP1タンパク質をコードする核酸を含有する組換え宿主細胞、ならびにキメラノロウイルスVP1タンパク質およびキメラVP1タンパク質を含有するVLPを生成するための方法を提供する。キメラVP1タンパク質は、任意の適切な方法を用いて生成することができる。一般に、キメラVP1タンパク質は、キメラVP1タンパク質をコードする組換え構築物を、適切な組換え宿主細胞、例えば、昆虫細胞(例えば、Aedes aegypti、Autographa californica、Bombyx mori、Drosophila melanogaster、Spodoptera frugiperda、およびTrichoplusia ni)、哺乳動物細胞(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、およびげっ歯類(例えば、ハムスター)、トリの細胞(例えば、ニワトリ、アヒル、およびガチョウ、細菌(例えば、E.coli、Bacillus subtilis、およびStreptococcus種)、酵母細胞(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Candida albicans、Candida maltosa、Hansenual polymorpha、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces lactis、Pichia guillerimondii、Pichia pastoris、Schizosaccharomyces pombeおよびYarrowia lipolytica)、テトラヒメナの細胞(例えば、Tetrahymena thermophila)またはそれらの組み合わせにおいて発現させることによって生成される。多くの適切な昆虫細胞および哺乳動物細胞が当技術分野で周知である。適切な昆虫細胞としては、例えば、Sf9細胞、Sf21細胞、Tn5細胞、シュナイダーS2細胞、およびHigh Five細胞(親のTrichoplusia ni BTI−TN−5B1−4細胞系(Invitrogen)に由来するクローン分離株)が挙げられる。適切な哺乳動物細胞としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児由来腎臓細胞(HEK293細胞、一般にはせん断された(sheared)アデノウイルス5型DNAによって形質転換される)、NIH−3T3細胞、293−T細胞、Vero細胞、HeLa細胞、PERC.6細胞(ECACC寄託番号96022940)、Hep G2細胞、MRC−5(ATCC CCL−171)、WI−38(ATCC CCL−75)、アカゲザル胎仔肺細胞(ATCC CL−160)、メイディンダービーウシ腎臓(「MDBK」)細胞、メイディンダービーイヌ腎臓(「MDCK」)細胞(例えば、MDCK(NBL2)、ATCC CCL34;またはMDCK 33016、DSM ACC 2219)、および、BHK21−F細胞、HKCC細胞などのベビーハムスター腎臓(BHK)細胞などが挙げられる。適切なトリの細胞としては、例えば、ニワトリ胚性幹細胞(例えば、EBx(登録商標)細胞)、ニワトリ胚線維芽細胞、ニワトリ胚性生殖細胞、アヒルの細胞(例えば、Vaccine 27巻:4975〜4982頁(2009年)およびWO2005/042728に記載されているAGE1.CRおよびAGE1.CR.pIX細胞系(ProBioGen))、およびEB66細胞などが挙げられる。
【0124】
バキュロウイルス系などの適切な昆虫細胞発現系は、当業者に公知であり、例えば、SummersおよびSmith、Texas Agricultural Experiment Station Bulletin 1555巻(1987年)に記載されている。バキュロウイルス/昆虫細胞発現系のための材料および方法は、とりわけ、Invitrogen、San Diego CAから、キットの形態で市販されている。トリ細胞発現系も当業者に公知であり、例えば、米国特許第5,340,740号;同第5,656,479号;同第5,830,510号;同第6,114,168号;および、同第6,500,668号;欧州特許第EP0787180B号;欧州特許公開第EP1500699号;WO03/043415;および、WO03/076601に記載されている。同様に、酵母、細菌および哺乳動物細胞発現系も当技術分野で公知であり、例えば、Yeast Genetic Engineering(Barrら編、1989年)Butterworths, Londonに記載されている。
【0125】
一部の態様では、キメラノロウイルスVP1タンパク質を生成するための方法は、キメラVP1タンパク質をコードする組換え核酸で形質転換した宿主細胞を、核酸の発現に適した条件下で培養するステップを含み、それにより、キメラノロウイルスVP1タンパク質が生成される。キメラVP1タンパク質は、自己集合してVLPを形成し得、宿主細胞をVLPの形成に適した条件下で維持することが好ましい。VLPの形成に適した条件は周知であり、当業者により容易に決定される。例えば、酵母細胞(Saccharomyces cerevisiae)および昆虫細胞(SF9)におけるウイルス粒子の生成について記載されている米国特許第7,527,801号、およびHEK293T細胞におけるVLPの生成について記載されているTaube, S.ら(2005年)Archives of Virology 150巻:1425〜1431頁を参照されたい。所望に応じて、方法は、キメラノロウイルスVP1タンパク質、キメラVP1タンパク質を含有するVLPまたはそれらの組み合わせを培養培地または細胞から単離または精製するステップをさらに含んでよい。いくつかの好ましい実施形態では、キメラVP1タンパク質および/またはキメラVP1タンパク質を含有するVLPを生成するために使用する宿主細胞は、酵母細胞、昆虫細胞、またはそれらの組み合わせである。
【0126】
本発明は、多価VLPを生成するための方法も提供する。多価VLPは、2つの異なるキメラVLPをコードする組換え核酸を含有する宿主細胞を維持することによって調製することができる。例えば、これは、酵母において発現させるためのpCDC.7などのバイシストロン性の発現ベクターを使用して実現することができる。あるいは、2つ以上の一価VLPを調製し、必要に応じて、精製し、次いで、混合して多価のVLP処方物を生成することができる。
【0127】
ノロウイルスキメラVP1タンパク質、およびVLPは、ノロウイルスキメラVP1タンパク質をコードする組換え核酸分子を、例えば、該組換え核酸を哺乳動物に投与した後、該哺乳動物の細胞により、ベクター発現系の形態でまたはベクター発現系の成分として発現させることによっても生成することができる。
【0128】
D.VLPの単離および精製
本発明はさらに、ノロウイルスVLPを培養培地、宿主細胞またはそれらの組み合わせから単離または精製する方法を提供する。宿主細胞の培養培地、すなわち、馴化培養培地から直接VLPを単離または精製することが好ましい。しかし、所望に応じて、例えば遠心分離によって宿主細胞を回収することができ、任意の適切な方法を用いて宿主細胞のホモジネートまたは溶解物を形成することができ、VLPを単離することができる。VLPを実質的にインタクトな状態にしたまま細胞を溶解する適切な化学的手段、物理的手段または機械的手段は当技術分野で公知であり、例えば、Protein Purification Applications:A Practical Approch(E.
L. V. HarrisおよびS. Angal編、1990年)に記載されている。
【0129】
VLPは、培養培地または宿主細胞、例えば、細胞溶解物またはホモジネートから、任意の適切な方法を用いて単離することができる。VLPの完全性を維持する適切な方法、例えば、密度勾配遠心分離、例えば、スクロース勾配、PEG沈殿、ペレット形成など(例えば、Kirnbauerら(1993年)J. Virol. 67巻:6929〜6936頁を参照されたい)、ならびに、例えば、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過クロマトグラフィーを含めた標準の精製技法を使用することができる。スクロースクッションまたはスクロース勾配での遠心分離は、VLPをVP1単量体またはオリゴマーから単離するため、および他の細胞成分から単離するための都合のよい方法である。これらの方法は、単独で使用すること、継続的に使用すること、およびより大規模な精製スキームの中に組み込んで使用することができる。例えば、スクロースクッションまたは勾配で精製したVLPは、その後に、所望に応じて、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーまたは任意の他の適切な方法を用いてさらに精製することができる。特定の実施例では、ノロウイルスのウイルス様粒子(VLP)は、ノロウイルスのVP1タンパク質を発現している酵母細胞の培地から精製することができる。その培地を低速で回転させて(15,000×g)、余分の細胞または細胞の破片を除去することができる。このステップの後、40%スクロースクッションによる高速回転(100,000×g)を実施して、ウイルス様粒子を遊離のタンパク質および他の材料から分離することができる。VLPを含有するペレットを緩衝液(50mMのトリス、pH7.5、100mMのNaCl)に再懸濁させ、イオン交換カラムにローディングすることができる。塩勾配を用いてカラムからVLPを溶出させることができる。最後に、VLPを含有する溶出画分を濃縮し、緩衝液を低塩濃度の緩衝液(20mMのトリス、pH7.5、100mMのNaCl)と交換し、必要になるまで4℃で保管することができる。
【0130】
E.免疫原性組成物
上記の通り、本発明は、1または複数のキメラVP1タンパク質を、好ましくはVLPの形態で含む免疫原性組成物も提供する。2種以上の異なるキメラVP1タンパク質、一価VLP、または多価VLPを一緒に混合して、2種以上の異なるVP1のP−ドメインを含有する多価の免疫原性組成物を生成することができる。
【0131】
免疫原性組成物は、キメラVP1タンパク質、VLPおよび核酸の混合物を含み得、これは今度は、同一または異なるビヒクルを使用して送達され得る。抗原は、例えば、予防的な(すなわち、感染を予防するための)免疫原性組成物または治療的な(感染を処置するための)免疫原性組成物中で、個別に、または組み合わせて投与することができる。免疫原性組成物は、所望の効果を実現するために、2回以上与えてよい(例えば、「初回刺激(prime)」投与、その後の1または複数の「追加刺激(boost)」)。同じ組成物を、1または複数の初回刺激ステップおよび1または複数の追加刺激ステップで投与してよい。あるいは、初回刺激および追加刺激のために異なる組成物を用いてよい。
【0132】
免疫原性組成物は、所望に応じて、ノロウイルス由来または別の病原体由来の1または複数の他の抗原をさらに含んでよい。例えば、組み合わせの免疫原性組成物は、キメラVP1タンパク質および別の病原体、例えば、細菌性病原体、ウイルス性病原体または真菌性病原体由来の1または複数の抗原を含むノロウイルスVLPを含有してよい。例えば、本発明の免疫原性組成物は、本明細書に記載のキメラVP1タンパク質、および1または複数のロタウイルス抗原、例えば、弱毒生ロタウイルス(例えば、ROTARIX(ロタウイルスワクチン、生、経口用;GlaxoSmithKline))、1または複数の生リアソータントロタウイルス(例えば、ROTATEQ(ロタウイルスワクチン、生、経口用、五価;Merck)、ROTASHIELD(ロタウイルスワクチン、生、経口用、四価;Wyeth−Lederle))、非ヒトロタウイルス(例えば、子ヒツジロタウイルス(Lanzhou)、ウシロタウイルス、アカゲザルロタウイルス)、リアソータントロタウイルス(例えば、ヒト−ウシリアソータントロタウイルス、ヒト−子ヒツジリアソータントロタウイルス、ヒト−アカゲザルリアソータントロタウイルス)、不活化ロタウイルス(例えば、熱失活させたロタウイルス)、ロタウイルスサブユニット(例えば、VP2、VP4、VP6、VP7、またはそれらの任意の組み合わせ)、ロタウイルスサブユニットVLPまたはワクチンを含むノロウイルスVLPを含んでよい。
【0133】
別の態様では、免疫原性組成物は、ノロウイルスキメラVP1タンパク質をコードする組換え核酸分子を含む。所望に応じて、そのような免疫原性組成物は、適切な核酸送達系、例えば、リポソーム、リポプレックス、エマルション(ナノエマルション、マイクロエマルション)、粒子(ナノ粒子、微小粒子)、ベクター、例えばウイルス粒子、およびレプリコンなどを含有してよい。
【0134】
免疫原性組成物は、一般に、1または複数の「薬学的に許容される賦形剤またはビヒクル」、例えば、水、生理食塩水、グリセロール、エタノールなどを、単独で、または組み合わせて含む。免疫原性組成物は、典型的に、上記の成分に加えて、1または複数の「薬学的に許容されるキャリア」を含む。これらとしては、それ自体は、組成物を受容する個体に有害な抗体の生成を誘導しない任意のキャリアが挙げられる。適切なキャリアは、典型的に、大型の、ゆっくりと代謝される高分子、例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、アミノ酸ポリマー、アミノ酸共重合体、および脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソームなど)などである。そのようなキャリアは、当業者に周知である。さらに、補助的な物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などが存在してよい。薬学的に許容される成分の徹底的な考察は、Gennaro(2000年)Remington:The Science and Practice of Pharmacy.第20版、ISBN:0683306472において入手可能である。
【0135】
薬学的に許容される塩、例えば、無機塩類、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩など、ならびに有機酸の塩、例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩なども、本発明の免疫原性組成物において用いることができる。
【0136】
所望に応じて、抗原は、リポソームおよび粒子キャリア、例えば、ポリ(D,L−ラクチドco−グリコリド)(PLG)の微小粒子またはナノ粒子などに吸着させる、その中に閉じ込める、またはその他の方法でそれと結びつけることができる。抗原は、免疫原性を増強するために、キャリアタンパク質に結合体化することができる。Ramsayら(2001年)Lancet 357巻(9251号):195〜196頁;Lindberg(1999年)Vaccine 17 Suppl 2巻:S28〜36頁;Buttery & Moxon(2000年)J R Coll Physicians Lond 34巻:163〜168頁;Ahmad & Chapnick(1999年)Infect Dis Clin North Am 13巻:113〜133頁、vii;Goldblatt(1998年)J. Med. Microbiol. 47巻:563〜567頁;欧州特許第0477508号;米国特許第5,306,492;WO98/42721;Conjugate Vaccines(Cruseら編)ISBN 3805549326、特に10巻:48〜114頁;Hermanson(1996年)Bioconjugate Techniques ISBN:0123423368または012342335Xを参照されたい。
【0137】
本発明の免疫原性組成物は、他の免疫調節剤と併せて投与することができる。例えば、本発明の免疫原性組成物は、アジュバントを含んでよい。好ましいアジュバントとしては、これらに限定されないが、下記のアジュバントの以下の1または複数の型が挙げられる。本発明の免疫原性組成物は、投与する前にアジュバントと予め混合することもできる。
【0138】
ミョウバン
一実施形態において、本発明において用いるためのアジュバントは、ミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム(AlK(SO
4)
2))、またはミョウバン誘導体、例えば、リン酸緩衝液中の抗原をミョウバンと混合し、次いで、水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウムなどの塩基を用いて滴定し、沈殿させることによってin−situで形成されるミョウバン誘導体などである。
【0139】
レチノイン酸
一実施形態において、本発明において用いるためのアジュバントは、ビタミンAの酸化形態であり、部分的なビタミンA機能のみを持つレチノイン酸である。
【0140】
MF59C.1
一実施形態において、本発明において用いるためのアジュバントは、クエン酸緩衝液中の水中油エマルジョン(スクアレン)であるMF59C.1である。MF59C.1は、有効なアジュバントであり、パルボウイルスB19に対する高い力価の中和性抗体の生成を増強することが示されている(Ballouら、JID、187巻:675〜678頁(2003年))。
【0141】
鉱質を含有する組成物
本発明においてアジュバントとして用いるのに適した、鉱質を含有する組成物としては、無機塩、例えば、アルミニウム塩およびカルシウム塩などが挙げられる。適切な無機塩としては、水酸化物(例えば、オキシ水酸化物)、リン酸塩(例えば、ヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩など(例えば、Vaccine Design...(1995年)Powell & Newman編ISBN:030644867X、Plenumの第8章および9章を参照されたい)、または、異なる鉱質化合物の混合物(例えば、リン酸塩および水酸化物アジュバント(必要に応じて過剰なリン酸塩を含む)の混合物)が挙げられ、この化合物は、任意の適切な形態(例えば、ゲル、結晶、非晶質など)を取り、塩(複数可)への吸着が好ましい。鉱質を含有する組成物は、金属塩の粒子として処方することもできる(WO00/23105)。
【0142】
「水酸化アルミニウム」として公知のアジュバントは、典型的にはオキシ水酸化アルミニウム塩であり、これは、通常、少なくとも部分的に結晶である。式AlO(OH)で表すことができるオキシ水酸化アルミニウムは、水酸化アルミニウムAl(OH)
3のようなその他のアルミニウム化合物から、赤外(IR)分光法により、特に1070cm
−1での吸収バンドおよび3090〜3100cm
−1での強いショルダーの存在により区別できる[Vaccine Design… (1995) eds. Powell &
Newman. ISBN: 030644867X. Plenum.の第9章]。水酸化アルミニウムアジュバントの結晶化度は、半分の高さでの回折バンドの幅(width of the diffraction band at half height)(WHH)により反映され、結晶性が乏しい粒子は、より小さい晶子サイズのために、より大きな線の広がりを示す。表面積は、WHHが増加するにつれて増加し、より高いWHHの値を有するアジュバントは、抗原吸着のための能力がより大きいことが観察されている。繊維状の形態(例えば透過型電子顕微鏡写真で観察されるような)は、水酸化アルミニウムアジュバントに典型的である。水酸化アルミニウムアジュバントのpIは、典型的に約11であり、すなわちアジュバント自体は生理的pHにて正の表面電荷を有する。pH7.4にてAl
+++1mgあたり1.8〜2.6mgのタンパク質の吸着能力が、水酸化アルミニウムアジュバントについて報告されている。
【0143】
「リン酸アルミニウム」として公知のアジュバントは、典型的には、少量の硫酸塩も頻繁に含有しているヒドロキシリン酸アルミニウムである(すなわち、アルミニウムヒドロキシホスフェートサルフェート(aluminium hydroxyphosphate sulfate))。これらは、沈殿により得ることができ、沈殿の間の反応条件および濃度は、塩中のヒドロキシルのホスフェートによる置換の程度に影響する。ヒドロキシリン酸塩は、通常、PO
4/Alモル比が0.3〜1.2である。ヒドロキシリン酸塩は、ヒドロキシル基の存在により厳密なAlPO
4から区別できる。例えば、3164cm
−1(例えば200℃に加熱時)でのIRスペクトルのバンドは、構造上のヒドロキシルの存在を示す[Vaccine Design… (1995) eds. Powell & Newman. ISBN: 030644867X. Plenum.の第9章]。
【0144】
リン酸アルミニウムアジュバントのPO
4/Al
3+モル比は、通常、0.3〜1.2、好ましくは0.8〜1.2、より好ましくは0.95±0.1である。リン酸アルミニウムは、特にヒドロキシリン酸塩について、一般的に、非晶質である。典型的なアジュバントは、0.84〜0.92のPO
4/Alモル比を有する非晶質ヒドロキシリン酸アルミニウムであり、0.6mg Al
3+/mlで含まれる。リン酸アルミニウムは、一般的に、粒子状である(例えば透過型電子顕微鏡写真で観察されるような板状の形態)。この粒子の典型的な直径は、任意の抗原を吸着した後に0.5〜20μm(例えば約5〜10μm)の範囲である。pH7.4にてAl
+++1mgあたり0.7〜1.5mgタンパク質の吸着能力が、リン酸アルミニウムアジュバントについて報告されている。
【0145】
リン酸アルミニウムのゼロ電荷点(PZC)は、ヒドロキシルのホスフェートによる置換の程度と反比例し、この置換の程度は、沈殿により塩を調製するために用いる反応条件および反応物の濃度に依存して変動できる。PZCは、溶液中の遊離ホスフェートイオンの濃度を変化させること(より多いホスフェート=より酸性側のPZC)、またはヒスチジン緩衝剤のような緩衝剤を加えること(PZCをより塩基性にする)によっても変更される。本発明に従って用いられるリン酸アルミニウムは、通常、4.0〜7.0、より好ましくは5.0〜6.5、例えば約5.7のPZCを有する。
【0146】
本発明の組成物を調製するために用いるアルミニウム塩の懸濁物は、緩衝液(例えば、リン酸緩衝液またはヒスチジン緩衝液またはトリス緩衝液)を含有してよいが、これは必ずしも必要ではない。懸濁物は、滅菌されており、発熱物質を含まないことが好ましい。懸濁物は、例えば、1.0mMから20mMの間、好ましくは5mMから15mMの間、より好ましくは約10mMの濃度で存在する遊離の水性ホスフェートイオンを含むことができる。懸濁物は、塩化ナトリウムも含んでよい。
【0147】
一実施形態において、アジュバント成分としては、水酸化アルミニウムとリン酸アルミニウムの両方の混合物が挙げられる。この場合、リン酸アルミニウムが水酸化アルミニウムよりも多く、例えば、少なくとも2:1、例えば、≧5:1、≧6:1、≧7:1、≧8:1、≧9:1などの重量比で存在してよい。
【0148】
患者に投与するための組成物中のAl
+++の濃度は、10mg/ml未満、例えば、≦5mg/ml、≦4mg/ml、≦3mg/ml、≦2mg/ml、≦1mg/mlなどであることが好ましい。好ましい範囲は、0.3mg/mlから1mg/mlの間である。最大≦0.85mg/用量が好ましい。
【0149】
油エマルジョン
本発明においてアジュバントとして用いるのに適した油エマルジョン組成物としては、MF59などのスクアレン−水エマルジョン[Vaccine Design...(1995年)Powell & Newman編、ISBN:030644867X、Plenumの第10章](マイクロフルダイザーを用いてサブミクロンの粒子に処方した5%スクアレン、0.5%Tween80、および0.5%Span85)が挙げられる。完全フロイントアジュバント(CFA)および不完全フロイントアジュバント(IFA)も用いることができる。
【0150】
種々の適切な水中油エマルジョンが公知であり、それらは、代表的には、少なくとも1種の油および少なくとも1種の界面活性剤を含み、油(複数可)および界面活性剤(複数可)は、生分解性(代謝可能)かつ生体適合性である。エマルジョン中の油滴は、一般的には、直径5μm未満であり、有利には、上記エマルジョンは、理想的にはサブミクロンの直径の油滴を有し、これらの小さいサイズは、マイクロフルイダイザーを用いて安定なエマルジョンを得ることにより達成される。220nm未満のサイズの液滴は、フィルタ滅菌に供することができるので好ましい。
【0151】
本発明は、動物(例えば魚類)または植物の供給源からのもののような油とともに使用することができる。植物油の供給源は、堅果、種子および穀粒を含む。ピーナツ油、大豆油、ヤシ油およびオリーブ油が、最も一般的に入手可能な堅果油の例である。例えばホホバ豆から得られるホホバ油を用いることができる。種子油は、紅花油、綿実油、ひまわり種子油、ごま種子油などを含む。穀粒の群において、コーン油が最も容易に入手可能であるが、コムギ、オートムギ、ライムギ、イネ、テフ、ライコムギなどのようなその他の穀類の穀粒の油も用いてよい。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10炭素脂肪酸エステルは、種子油中に天然に存在しないが、堅果油および種子油から出発する適切な材料の加水分解、分離およびエステル化により調製し得る。哺乳動物の乳からの脂肪および油は代謝可能であり、よって本発明の実施において用いてよい。動物の供給源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、けん化およびその他の手段の手順は、当該技術において周知である。ほとんどの魚類は、容易に回収し得る代謝可能な油を含有する。例えば、タラ肝油、サメ肝油および鯨ろうのような鯨油は、本明細書において用い得る魚油のいくつかの例である。いくつかの分岐鎖油が、5炭素イソプレンユニットで生化学的に合成され、一般的に、テルペノイドとよばれる。サメ肝油は、スクアレン、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエンとして公知の分岐不飽和テルペノイドを含有する。他の好ましい油は、トコフェロールである(下記参照のこと)。スクアレンを含む水中油エマルジョンが特に好ましい。油の混合物を用いることができる。
【0152】
界面活性剤は、それらの「HLB」(親水性/親油性比)により分類できる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、そしてより好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、それらに限定されないが、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweenとよばれる)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;線状EO/POブロックコポリマーのようなDOWFAX(商標)の商標の下で販売されるエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー;反復エトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が変動し得るオクトキシノール、特にオクトキシノール−9(TritonX−100またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が興味深い;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);ホスファチジルコリン(レシチン)のようなリン脂質;トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30)のようなラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールに由来するポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知である);ならびにソルビタントリオレエート(Span85)およびソルビタンモノラウレートのようなソルビタンエステル(一般的にSPANとして公知である)を含む界面活性剤を用いることができる。エマルジョンに含むために好ましい界面活性剤は、Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span85(ソルビタントリオレエート)、レシチンおよびTritonX−100である。上記したように、Tween80のような洗浄剤は、以下の実施例にみられる熱安定性に寄与し得る。
【0153】
界面活性剤の混合物、例えばTween80/Span85混合物を用いることができる。ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween80))およびオクトキシノール(例えば、t−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(TritonX−100))の組み合わせも適切である。別の有用な組み合わせは、ラウレス9とポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールとを含む。
【0154】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えばTween80)0.01〜1%、特に約0.1%;オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えばTritonX−100またはTritonシリーズのその他の洗浄剤)0.001〜0.1%、特に0.005〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(例えばラウレス9)0.1〜20%、好ましくは、0.1〜10%、特に0.1〜1%または約0.5%である。
【0155】
本発明で有用な具体的な水中油型エマルジョンアジュバントは、以下のものを含むが、それらに限定されない:
・スクアレンとTween80とSpan85とのサブミクロンのエマルジョン。エマルジョンの体積での組成は、約5%スクアレン、約0.5%ポリソルベート80および約0.5%Span85であり得る。重量の点において、これらの比率は、4.3%スクアレン、0.5%ポリソルベート80および0.48%Span85になる。このアジュバントは、「MF59」として公知である。MF59エマルジョンは、有利には、シトレートイオン、例えば10mMクエン酸ナトリウム緩衝液を含む。
【0156】
・スクアレンとαトコフェロールとポリソルベート80とを含むエマルジョン。これらのエマルジョンは、2〜10%スクアレン、2〜10%トコフェロールおよび0.3〜3%Tween80を有してよく、スクアレン:トコフェロールの重量比は、より安定なエマルジョンを提供するので、好ましくは≦1(例えば、0.90)である。スクアレンとTween80とは、約5:2の体積比または約11:5の重量比で存在してよい。あるこのようなエマルジョンは、Tween80をPBS中に溶解して2%溶液を得て、次いで90mlのこの溶液を、(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlスクアレン)の混合物と混合し、次いで混合物を微小流動化する(microfluidise)ことにより作製できる。得られるエマルジョンは、100〜250nm、好ましくは約180nmの平均直径のサブミクロンの油滴を有し得る。
【0157】
・スクアレンとトコフェロールとTriton洗浄剤(例えばTritonX−100)とのエマルジョン。エマルジョンは、3d−MPL(下記参照のこと)も含んでよい。エマルジョンは、リン酸緩衝液を含有してよい。
【0158】
・ポリソルベート(例えばポリソルベート80)とTriton洗浄剤(例えばTritonX−100)とトコフェロール(例えばα−トコフェロールスクシネート)とを含むエマルジョン。エマルジョンは、これらの3成分を、約75:11:10の質量比で含んでよく(例えば750μg/ml ポリソルベート80、110μg/ml TritonX−100および100μg/ml α−トコフェロールスクシネート)、これらの濃度は、抗原からのこれらの成分のいずれの寄与も含むべきである。エマルジョンは、スクアレンも含んでよい。エマルジョンは、3d−MPL(下記参照のこと)も含んでよい。水相は、リン酸緩衝液を含有してよい。
【0159】
・スクワランとポリソルベート80とポロキサマー401(「Pluronic(商標)L121」)とのエマルジョン。エマルジョンは、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4中で処方できる。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドについての有用な送達ビヒクルであり、スレオニル−MDPとともに「SAF−1」アジュバント中で用いられている(0.05〜1%Thr−MDP、5%スクワラン、2.5%PluronicL121および0.2%ポリソルベート80)。これは、「AF」アジュバントにおけるように、Thr−MDPなしで用いることもできる(5%スクワラン、1.25%PluronicL121および0.2%ポリソルベート80)。微小流動化が好ましい。
【0160】
・スクアレンと水性溶媒とポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えばポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)と疎水性非イオン性界面活性剤(例えばソルビタンモノオレエートまたは「Span80」のようなソルビタンエステルまたはマンニドエステル)とを含むエマルジョン。エマルジョンは、好ましくは、熱可逆性であり、かつ/または少なくとも90%の油滴(体積による)が200nm未満のサイズである。エマルジョンは、アルジトール、凍結保護剤(例えばドデシルマルトシドおよび/またはスクロースのような糖)、および/またはアルキルポリグリコシドの1または複数も含んでよい。このようなエマルジョンは、凍結乾燥してよい。
【0161】
・0.5〜50%の油と、0.1〜10%のリン脂質と、0.05〜5%の非イオン性界面活性剤とを含むエマルジョン。好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロンの液滴サイズが有利である。
【0162】
・非代謝性油(例えば軽鉱油(light mineral oil))と少なくとも1種の界面活性剤(例えばレシチン、Tween80またはSpan80)とのサブミクロンの水中油型エマルジョン。QuilAサポニン、コレステロール、サポニン親油性物質結合体(例えば脂肪族アミンをデスアシルサポニンに、グルクロン酸のカルボキシル基を介して付加することにより生成される、GPI−0100)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(dimethyidioctadecylammonium)ブロミドおよび/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンのような添加物を含んでよい。
【0163】
・鉱油と、非イオン性親油性エトキシ化脂肪アルコールと、非イオン性親水性界面活性剤(例えばエトキシ化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)とを含むエマルジョン(WO2006/113373を参照のこと)。
【0164】
・鉱油と、非イオン性親水性エトキシ化脂肪アルコールと、非イオン性親油性界面活性剤(例えばエトキシ化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)とを含むエマルジョン(WO2006/113373を参照のこと)。
【0165】
・サポニン(例えばQuilAまたはQS21)とステロール(例えばコレステロール)とが、らせん状ミセルとして会合しているエマルジョン。
【0166】
組成物中の抗原(VLP)およびアジュバントは、典型的に、患者に送達される時には、混和物中にあるであろう。エマルジョンは、抗原(VLP)と、製造中に混合することができる、または、送達時に即席で混合することができる。よって、アジュバントおよび抗原(VLP)は、使用時に最終的な処方物にすぐ準備できる、包装または分配されたワクチン中に別々に保持することができる。抗原(VLP)は、一般に、最終的に2つの液体を混合することによってワクチンを調製するために、水性の形態であろう。混合するための2つの液体の体積比は、変動してよいが(例えば、5:1と1:5の間)、一般に約1:1である。
【0167】
サポニン処方物(Vaccine Design...(1995年)Powell & Newman編、ISBN:030644867X、Plenumの第22章を参照されたい)
サポニン処方物も、本発明においてアジュバントとして用いることができる。サポニンは、広範囲の植物種の樹皮、葉、茎、根、さらには花において見いだされるステロール配糖体およびトリテルペノイド配糖体の不均一な群である。Quillaia saponaria Molinaの木の樹皮由来のサポニンがアジュバントとして広く研究されている。サポニンは、Smilax ornata(サルサパリラ(sarsaprilla))、Gypsophilla paniculata(ブライダルベール(brides veil))、およびSaponaria officianalis(ソープルート(soap root))から商業的に取得可能である。サポニンアジュバント処方物としては、QS21などの精製された処方物、ならびにISCOMなどの脂質処方物が挙げられる。QS21は、Stimulon(商標)として販売されている。
【0168】
サポニン組成物は、HPLCおよびRP−HPLCを用いて精製されてきた。これらの技法を用いて特異的に精製された画分が同定されており、それらとしては、QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cが挙げられる。サポニンはQS21であることが好ましい。QS21の生成方法は、米国特許第5,057,540号に開示されている。サポニン処方物は、コレステロールなどのステロールも含んでよい。
【0169】
サポニンとコレステロールの組み合わせを使用して、免疫賦活性複合体(ISCOM)と呼ばれる独特の粒子を形成することができる(Vaccine Design...(1995年)Powell & Newman編、ISBN:030644867X、Plenumの第23章)。ISCOMは、典型的には、リン脂質、例えば、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなども含む。任意の公知のサポニンをISCOMに用いることができる。ISCOMはQuilA、QHAおよびQHCの1または複数を含むことが好ましい。ISCOMは、WO96/33739にさらに記載されている。必要に応じて、ISCOMは、追加的な洗浄剤を欠いてよい。
【0170】
ビロソームおよびウイルス様粒子
ビロソームおよびウイルス様粒子(VLP)も、本発明においてアジュバントとして用いることができる。これらの構造は、一般に、必要に応じてリン脂質と組み合わされる、またはリン脂質と一緒に処方される、ウイルス由来の1または複数のタンパク質を含有する。これらは、一般に、非病原性、非複製的であり、概して、いかなる天然のウイルスのゲノムも含有しない。ウイルスタンパク質を、組換え生成することができる、またはウイルス全体から単離することができる。ビロソームまたはVLPにおいて用いるのに適したこれらのウイルスタンパク質としては、インフルエンザウイルス(例えば、HAまたはNAなど)、B型肝炎ウイルス(例えば、コアタンパク質またはカプシドタンパク質など)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNA−ファージ、Qβ−ファージ(例えば、コートタンパク質など)、GA−ファージ、fr−ファージ、AP205ファージ、およびTy(例えば、レトロトランスポゾンTyタンパク質p1など)に由来するタンパク質が挙げられる。
【0171】
細菌誘導体または微生物誘導体
本発明において用いるのに適したアジュバントは、細菌誘導体または微生物誘導体、例えば、腸内細菌のリポ多糖(LPS)の無毒性の誘導体など、リピドA誘導体、免疫賦活性オリゴヌクレオチドおよびADP−リボシル化毒素およびその解毒された誘導体を包含する。
【0172】
LPSの無毒性の誘導体としては、モノホスホリルリピドA(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)が挙げられる。3dMPLは、4、5または6のアシル化された鎖を有する3脱O−アシル化モノホスホリルリピドAの混合物である。好ましい3脱O−アシル化モノホスホリルリピドAの「小粒子」形態は、EP−A−0689454に開示されている。そのような3dMPLの「小粒子」は、0.22μmの膜を通して滅菌ろ過するのに十分小さい(EP−A−0689454)。他の無毒性のLPS誘導体としては、モノホスホリルリピドA模倣体(mimic)、例えば、RC−529などのアミノアルキルグルコサミニドホスフェート誘導体などが挙げられる。
【0173】
リピドA誘導体としては、Escherichia coli由来のリピドAの誘導体、例えば、OM−174などが挙げられる。OM−174は、例えば、Meraldiら(2003年)Vaccine 21巻:2485〜2491頁およびPajakら(2003年)Vaccine 21巻:836〜842頁に記載されている。
【0174】
本発明においてアジュバントとして用いるのに適した免疫賦活性オリゴヌクレオチドとしては、CpGモチーフを含有するヌクレオチド配列(リン酸結合によってグアノシンと連結した、メチル化されていないシトシンを含有するジヌクレオチド配列)が挙げられる。パリンドローム配列またはポリ(dG)配列を含有する二本鎖RNAおよびオリゴヌクレオチドも、免疫賦活性であることが示されている。
【0175】
CpGは、ヌクレオチドの修飾/類似体、例えば、ホスホロチオエート修飾などを含んでよく、また、二本鎖または一本鎖であってよい。参考文献であるKandimallaら(2003年)Nucleic Acids Research 31巻:2393〜2400頁;WO02/26757、およびWO99/62923は、可能性のある類似体の置換、例えば、グアノシンの、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンとの交換を開示している。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント効果は、Krieg(2003年)Nature Medicine 9巻:831〜835頁;McCluskieら(2002年)FEMS Immunology and Medical Microbiology 32巻:179〜185頁;WO98/40100;US6,207,646;US6,239,116;およびUS6,429,199においてさらに考察されている。
【0176】
CpG配列(例えば、GTCGTTモチーフまたはTTCGTTモチーフなど)は、TLR9に向けられ得る(Kandimallaら(2003年)Biochemical
Society Transactions 31巻(第3部):654〜658頁)。CpG配列は、例えば、CpG−A ODNなど、Th1免疫応答の誘導に特異的であってよい、または、例えば、CpG−B ODNなどB細胞応答誘導により特異的であってよい。CpG−A ODNおよびCpG−B ODNは、Blackwellら(2003年)J Immunol 170巻:4061〜4068頁;Krieg(2002年)Trends Immunol 23巻:64〜65頁およびWO01/95935において考察されている。CpGは、CpG−A ODNであることが好ましい。
【0177】
CpGオリゴヌクレオチドは、受容体を認識するために5’末端を利用できるように構築することが好ましい。必要に応じて、2つのCpGオリゴヌクレオチド配列を、それらの3’末端に付着させて、「イムノマー(immunomer)」を形成することができる。例えば、Kandimallaら(2003年)Biochemical Society Transactions 31巻(第3部):654〜658頁およびKandimallaら(2003年)BBRC 306巻:948〜953頁;Bhagatら(2003年)BBRC 300巻:853〜861頁およびWO03/035836を参照されたい。
【0178】
免疫賦活性オリゴヌクレオチドに基づく特に有用なアジュバントは、IC−31(商標)として公知である(Schellackら(2006年)Vaccine 24巻:5461〜5472頁)。よって、本発明で用いるアジュバントは、(i)少なくとも1つの(好ましくは複数の)CpIモチーフ(すなわち、イノシンと連結してジヌクレオチドを形成しているシトシン)を含めたオリゴヌクレオチド(例えば、15〜40ヌクレオチド)と(ii)少なくとも1つの(好ましくは複数の)Lys−Arg−Lysトリペプチド配列(複数可)を含めたオリゴペプチド(例えば、5〜20アミノ酸)などのポリカチオンポリマーの混合物を含んでよい。オリゴヌクレオチドは、26merの配列5’−(IC)
13−3’(配列番号9)を含むデオキシヌクレオチドであってよい。ポリカチオンポリマーは、11−merのアミノ酸配列KLKLLLLLKLK(配列番号10)を含むペプチドであってよい。
【0179】
細菌ADP−リボシル化毒素およびその解毒された誘導体を、本発明においてアジュバントとして用いることができる。タンパク質は、E.coli(E.coli熱不安定性エンテロトキシン「LT」)、コレラ(「CT」)、または百日咳(「PT」)に由来することが好ましい。解毒されたADP−リボシル化毒素の、粘膜アジュバントとしての使用は、WO95/17211に記載されており、非経口的なアジュバントとしての使用は、WO98/42375に記載されている。毒素または類毒素は、AサブユニットおよびBサブユニットの両方を含むホロ毒素の形態であることが好ましい。Aサブユニットは、解毒性変異を含有することが好ましく;Bサブユニットは変異していないことが好ましい。アジュバントは、解毒されたLT変異体、例えば、LT−K63、LT−R72、およびLT−G192などであることが好ましい。ADP−リボシル化毒素およびその解毒された誘導体、特にLT−K63およびLT−R72の、アジュバントとしての使用は、Beignonら(2002年)Infect Immun 70巻:3012〜3019頁;Pizzaら(2001年)Vaccine 19巻:2534〜2541頁;Pizzaら(2000年)Int J Med Microbiol 290巻:455〜461頁;Scharton−Kerstenら(2000年)Infect Immun 68巻:5306〜5313頁;Ryanら(1999年)Infect Immun 67巻:6270〜6280頁;Partidosら(1999年)Immunol
Lett 67巻:209〜216頁;Peppoloniら(2003年)Expert Rev Vaccines 2巻:285〜293頁;Pineら(2002年)J Control Release 85巻:263〜270頁およびTebbeyら(2000年)Vaccine 18巻:2723〜34頁に見いだすことができる。有用なCT変異体はCT−E29Hである。アミノ酸置換についての数値での参照は、その全体が参照により具体的に本明細書に組み込まれるDomenighiniら(1995年)Mol Microbiol 15巻:1165〜1167頁に記載のADP−リボシル化毒素のAサブユニットとBサブユニットのアラインメントに基づくことが好ましい。
【0180】
ヒト免疫調節物質
本発明においてアジュバントとして用いるのに適したヒト免疫調節物質としては、サイトカイン、例えば、インターロイキンなど(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12など)(WO99/40936およびWO99/44636)、インターフェロン(例えば、インターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子、および腫瘍壊死因子が挙げられる。好ましい免疫調節物質はIL−12である。
【0181】
生体接着剤(bioadhesive)および粘膜接着剤(mucoadhesive)
生体接着剤および粘膜接着剤も、本発明においてアジュバントとして用いることができる。適切な生体接着剤としては、エステル化されたヒアルロン酸ミクロスフェア(Singhら)(2001年)J Cont Release 70巻:267〜276頁)、または粘膜接着剤、例えば、ポリ(アクリル酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖およびカルボキシメチルセルロースの架橋した誘導体などが挙げられる。キトサンおよびその誘導体も、本発明においてアジュバントとして用いることができる(WO99/27960)。
【0182】
微小粒子
微小粒子も、本発明においてアジュバントとして用いることができる。ポリ(ラクチド−co−グリコリド)を用いて、生分解性かつ無毒性の材料(例えば、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリカプロラクトンなど)から形成された微小粒子(すなわち、直径約100nm〜約150μm、より好ましくは直径約200nm〜約30μm、最も好ましくは直径約500nm〜約10μmの粒子)が好ましく、必要に応じて、それを、負に荷電した表面を有するように処理する(例えば、SDSを用いて)または正に荷電した表面を有するように処理する(例えば、CTABなどの陽イオン洗浄剤を用いて)。
【0183】
リポソーム(Vaccine Design...(1995年)Powell & Newman編、ISBN:030644867X、Plenumの第13章および14章)
アジュバントとして用いるのに適したリポソーム処方物の例は、US6,090,406、US5,916,588およびEP A0626169に記載されている。
【0184】
ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル処方物
本発明において用いるのに適したアジュバントは、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル(WO99/52549)を包含する。そのような処方物としては、さらに、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(WO01/21207)ならびに少なくとも1つの追加的な非イオン性界面活性剤、例えば、オクトキシノールなどと組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤(WO01/21152)が挙げられる。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群から選択される:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン(polyoxytheylene)−8−ステオリル(steoryl)エーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテル。
【0185】
ポリホスファゼン(PCPP)
PCPP処方物は、例えば、Andrianovら(1998年)Biomaterials 19巻:109〜115頁およびPayneら(1998年)Adv Drug Delivery Review 31巻:185〜196頁に記載されている。
【0186】
ムラミルペプチド
本発明においてアジュバントとして用いるのに適したムラミルペプチドの例としては、N−アセチル−ムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル(normuramyl)−L−アラニル−D−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミンMTP−PE)が挙げられる。
【0187】
イミダゾキノロン(Imidazoquinolone)化合物
本発明においてアジュバントとして用いるのに適したイミダゾキノロン化合物の例としては、イミキモド(Imiquamod)およびその同族化合物(例えば、「レシキモド(Resiquimod)3M」)が挙げられ、Stanley(2002年)Clin
Exp Dermatol 27巻:571〜577頁およびJones(2003年)Curr Opin Investig Drugs 4巻:214〜218頁においてさらに記載されている。
【0188】
ベンゾナフチリジン(Benzonaphthyridine)
本発明においてアジュバントとして使用するために適したベンゾナフチリジン化合物の例は、WO2009/111337に記載されている。
【0189】
リポペプチド
リポペプチド(すなわち、1または複数の脂肪酸残基および2つ以上のアミノ酸残基を含む化合物)は、免疫賦活特性を有することが公知である。グリセリルシステイン(glycerylcysteine)に基づくリポペプチドは、本発明においてアジュバントとして使用するために特に適している。そのようなペプチドの特定の例としては、次式の化合物が挙げられる:
【0191】
式中、R
1およびR
2はそれぞれ、必要に応じて酸素官能基で置換されていてもよい8個から30個まで、好ましくは11個から21個までの炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基、飽和混成脂環式−脂肪族炭化水素基、または不飽和混成脂環式−脂肪族炭化水素基を表し、R
3は、水素、またはR
1が上記と同じ意味を有するR
1−CO−O−CH
2−基を表し、Xは、ペプチド結合によって結合した、遊離のカルボキシ基、エステル化されたカルボキシ基またはアミド化されたカルボキシ基を有するアミノ酸、または末端のカルボキシ基が遊離であるか、エステル化した形態であるか、アミド化した形態である2〜10アミノ酸のアミノ酸配列を表す。特定の実施形態では、アミノ酸配列は、D−アミノ酸、例えば、D−グルタミン酸(D−Glu)またはD−ガンマ−カルボキシ−グルタミン酸(D−Gla)を含む。
【0192】
細菌のリポペプチドは、一般に、TLR6が関与することを必要とせずにTLR2を認識する。(TLRは協同的に作動して、種々のトリガーの特異的な認識をもたらし、TLR2とTLR6は一緒になってペプチドグリカンを認識するが、TLR2はリポペプチドの認識にはTLR6を伴わない)。これらは、時には天然リポペプチドと合成リポペプチドとに分類される。合成リポペプチドは同様の挙動をする傾向があり、主にTLR2によって認識される。
【0193】
本発明においてアジュバントとして使用するために適したリポペプチドとしては、次式を有する化合物:
【0195】
(式中、
*で標識されたキラル中心および
***で標識されたキラル中心はどちらもR立体配置にあり;
**で標識されたキラル中心はR立体配置またはS立体配置のいずれかにあり;
R
1aおよびR
1bは、それぞれ独立して、酸素官能基によって置換されていてもよい7〜21個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基または脂環式−脂肪族炭化水素基である、またはR
1aおよびR
1bのうちの両方ではなく一方がHであり;
R
2は、酸素官能基によって置換されていてもよい1〜21個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基または脂環式炭化水素基であり;
nは0または1であり;
Asは−O−Kw−CO−または−NH−Kw−CO−のいずれかを示し、Kwは1〜12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基であり;
As
1は、D−アルファアミノ酸またはL−アルファアミノ酸であり;
Z
1およびZ
2は、それぞれ独立して、アミノ−(低級アルカン)−スルホン酸のD−アルファアミノ酸またはL−アルファアミノ酸の−OH基またはN末端基、またはD−アルファアミノカルボン酸およびL−アルファアミノカルボン酸から選択される最大6個のアミノ酸を有するペプチドおよびアミノ−低級アルキル−スルホン酸の、D−アルファアミノ酸またはL−アルファアミノ酸の−OH基またはN末端基を示し;
Z
3はHまたは−CO−Z
4であり、ここで、Z
4はアミノ−(低級アルカン)−スルホン酸のD−アルファアミノ酸またはL−アルファアミノ酸の−OH基またはN末端基、またはDアルファアミノカルボン酸およびL−アルファアミノカルボン酸から選択される最大6個のアミノ酸を有するペプチドおよびアミノ−低級アルキル−スルホン酸の、D−アルファアミノ酸またはL−アルファアミノ酸の−OH基またはN末端基である);またはそのような化合物のカルボン酸から形成されるエステルまたはアミドが挙げられる。適切なアミドとしては−NH
2およびNH(低級アルキル)が挙げられ、適切なエステルとしてはC1〜C4のアルキルエステルが挙げられる。(本明細書で使用される場合、低級アルキルまたは低級アルカンは、C
1〜C
6の直鎖アルキルまたは分枝アルキルをいう)。
【0196】
そのような化合物は、US4,666,886により詳細に記載されている。本発明においてアジュバントとして使用するために適したリポペプチド化合物の例は、次式を有するリポペプチドである:
リポペプチド種の別の例はLP40と称され、TLR2のアゴニストである。Akdisら(2003年)Eur. J. Immunology、33巻:2717〜2726頁。
【0197】
これらは、ムレインリポタンパク質と称されるE.coli由来のリポペプチドの公知のクラスと関連する。ムレインリポペプチドと称されるこれらのタンパク質の特定の部分的な分解生成物は、Hantkeら(1973年)Eur. J. Biochem., 34巻:284〜296頁に記載されている。これらは、N−アセチルムラミン酸と連結したペプチドを含み、したがって、ムラミルペプチドと関連する。これらは、Baschangら、Tetrahedron(1989年)45巻(20号):6331〜6360頁に記載されている。
【0198】
本発明は、上記のアジュバントの1または複数の態様の組み合わせも含んでよい。例えば、以下のアジュバント組成物を本発明において用いることができる:(1)サポニンおよび水中油エマルジョン(WO99/11241);(2)サポニン(例えば、QS21)+無毒性のLPS誘導体(例えば、3dMPL)(WO94/00153);(3)サポニン(例えば、QS21)+無毒性のLPS誘導体(例えば、3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えば、QS21)+3dMPL+IL−12(必要に応じて、+ステロール)(WO98/57659);(5)3dMPLと、例えば、QS21および/または水中油エマルジョンの組み合わせ(欧州特許出願第0835318号、同第0735898号および同第0761231号);(6)サブミクロンのエマルジョンに微小流動化(microfluidize)した、またはボルテックスしてより大きな粒子サイズのエマルジョンを生じさせた、10%スクアラン、0.4%Tween80(商標)、5%プルロニック−ブロックポリマーL121、およびthr−MDPを含有するSAF;(7)2%スクアレン、0.2%Tween80、ならびに、モノホスホリルリピドA(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)、および細胞壁の骨格(CWS)、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))からなる群からの1または複数の細菌の細胞壁成分を含有するRibi(商標)アジュバント系(RAS)、(Ribi Immunochem);および(8)1または複数の無機塩類(例えば、アルミニウム塩など)+LPSの無毒性の誘導体(例えば、3dMPLなど)。
【0199】
免疫賦活剤としての機能を果たす他の物質は、Vaccine Design ...(1995年)Powell & Newman編 ISBN:030644867X.
Plenumの第7章に開示されている。水酸化アルミニウムおよび/またはリン酸アルミニウムアジュバントの使用は、特に小児において有用であり、一般に、抗原はこれらの塩に吸着される。水中スクアレンエマルジョンも、特に高齢者において好ましい。有用なアジュバントの組み合わせとしては、Th1アジュバントとTh2アジュバントの組み合わせ、例えば、CpGとミョウバンの組み合わせ、またはレシキモド(Resiquimod)とミョウバンの組み合わせなどが挙げられる。リン酸アルミニウムと3dMPLの組み合わせを用いてもよい。
【0200】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載のVP1およびVP2を含有するパルボウイルス・VLP、およびMF59などのアジュバントを含有する免疫原性組成物である。VLPとアジュバント(例えば、MF59)は、予め混合し、単一の組成物として提供することができる、または、投与する前に混合するための別々の成分として提供することができる。
【0201】
E.投与
本発明の組成物(例えば、ノロウイルスキメラVP1タンパク質、VLP、およびノロウイルスキメラVP1タンパク質をコードする核酸を含む組成物)は、一般に、患者に直接投与されるであろう。直接的な送達は、非経口的な注射(例えば、皮下に、腹腔内に、静脈内に、筋肉内に、もしくは組織の間質腔(interstitial space)へ)、または粘膜を通じて、例えば、直腸投与、経口投与(例えば、錠剤、噴霧)、膣への投与、局所投与、経皮(transdermal)投与(例えば、WO99/27961を参照されたい)または経皮(transcutaneous)投与(例えば、WO02/074244およびWO02/064162を参照されたい)、鼻腔内投与(例えば、WO03/028760を参照されたい)、眼への投与、耳への投与、肺への投与または他の粘膜投与などによって実現することができる。経皮送達は、例えば、マイクロニードル(microneedle)を使用して達成され得る。免疫原性組成物も、皮膚の表面に直接移すことによって局所的に投与してもよい。局所投与は、いかなるデバイスも利用することなく、または包帯または包帯様デバイスを利用して裸の皮膚を免疫原性組成物と接触させることによって実現することができる(例えば、米国特許第6,348,450号を参照されたい)。
【0202】
投与形式は、非経口的な免疫、粘膜免疫、または粘膜免疫と非経口的な免疫の組み合わせであることが好ましい。投与形式は、1〜3週間離した合計1〜2回のワクチン接種での非経口的な免疫、粘膜免疫、または粘膜免疫と非経口的な免疫の組み合わせであることがさらに好ましい。投与経路は、これらに限定されないが、経口的な送達、筋肉内の送達および経口的な送達および筋肉内の送達の組み合わせを含むことが好ましい。
【0203】
粘膜病原体由来の抗原、例えば、Helicobacter pylori抗原などに対する粘膜免疫応答および全身免疫応答は、粘膜に初回刺激し、その後全身的に追加刺激する免疫により増強し得ることがすでに実証されている(Vajdyら(2003年)Immunology 110巻:86〜94頁)。いくつかの実施形態において、ノロウイルスによる感染を処置または予防するための方法は、それを必要とする被験体に、1または複数のノロウイルス抗原を含む第1の免疫原性組成物を、粘膜に投与し、次いで、1または複数のノロウイルス抗原を含む第2の免疫原性組成物を治療有効量で非経口的に投与することを含む。
【0204】
免疫原性組成物は、全身免疫および/または粘膜免疫を惹起するため、好ましくは増強された全身免疫および/または粘膜免疫を惹起するために用いることができる。
【0205】
免疫応答は、血清IgG免疫応答および/または腸のIgA免疫応答の誘導を特徴とすることが好ましい。
【0206】
上記の通り、初回刺激−追加刺激方法は、1または複数の遺伝子送達ベクターおよび/またはポリペプチド抗原を「初回刺激」ステップで送達し、その後、1または複数の第2の遺伝子送達ベクターおよび/またはポリペプチド抗原を「追加刺激」ステップで送達する場合に用いることが好ましい。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の1または複数の遺伝子送達ベクターまたはポリペプチド抗原を用いた初回刺激および追加刺激の後に、1または複数のポリペプチドを含有する組成物(例えば、ノロウイルス抗原を含むポリペプチド)をさらに追加刺激する。
【0207】
共投与を伴う任意の方法では、種々の組成物を任意の順序で送達することができる。よって、複数の異なる組成物または分子を送達することを含む複数の実施形態において、核酸の全てがポリペプチドの前に送達される必要はない。例えば、初回刺激ステップは、1または複数のポリペプチドを送達することを含んでよく、追加刺激は、1もしくは複数の核酸および/または1もしくは複数のポリペプチドを送達することを含む。複数のポリペプチドを投与した後に、複数の核酸の投与を行うことができる、またはポリペプチドおよび核酸の投与を任意の順序で実施することができる。よって、本明細書に記載の遺伝子送達ベクターの1または複数、および本明細書に記載のポリペプチドの1または複数を、任意の順序で任意の投与経路によって共投与することができる。よって、本明細書に記載のポリヌクレオチドとポリペプチドの任意の組み合わせを使用して、免疫反応を惹起することができる。
【0208】
(i)投薬レジメン
投薬処置は、単回用量スケジュールまたは多回用量スケジュールに従ってもよい。多回用量は、一次免疫スケジュールおよび/または追加免疫スケジュールで用いることができる。多回用量スケジュールにおいて、様々な用量を、同じまたは異なる経路、例えば非経口的な初回刺激および粘膜での追加刺激、粘膜での初回刺激および非経口的な追加刺激などにより与えてよい。
【0209】
投薬レジメンにより、抗体応答のアビディティが増強され、中和特性を持つ抗体がもたらされることが好ましい。
【0210】
ある場合では、血清中の抗体レベルと、ノロウイルスによって引き起こされる疾患からの防御との間に相関がある。例えば、多数の攻撃試験において、血清中の抗体レベルは、高用量のNorwalkウイルスを用いて経口的な攻撃を繰り返した(2〜3回)後の防御と関連した(Johnsonら(1990年)J. Infect. Dis. 161巻:18〜21頁)。別の試験では、抗体が先在していない乳児では23人のうち18人にヒトカリシウイルスによって引き起こされる胃腸炎が発生したが、抗体レベル先在している乳児では18人のうち15人が病気にならなかった(Ryderら(1985年)J. Infect. Dis. 151巻:99〜105頁)。さらに別の研究では、Norwalk感染による発症は、ベースラインのNorwalk抗体力価が1:100を超える人では13%であったのと比較して、ベースラインのNorwalk抗体力価が1:100未満である人では47%であった(p<0.001)(Ryderら(1985年)J. Infect. Dis. 151巻:99〜105頁)。一部の個体は特定のノロウイルス株に対する受容体を生成せず、したがって、それらのノロウイルス株に対して本質的に抵抗性であるので、抗体の存在が、防御ではなく特定の株に対する感受性と相関するという異常な結果が認められ得る。Parrinoら(1997年)N. Engl. J. Med. 297巻:86〜89頁を参照されたい。
【0211】
上記のとおりキメラノロウイルスVP1タンパク質およびVLPを、哺乳動物、例えば、マウス、ヒヒ、チンパンジー、またはヒトなどに投与して、ノロウイルスに特異的なT細胞をin vivoで活性化することができる。投与は、上記で考察されるように、遺伝子銃(biological ballistic gun)を用いた注射を含めた非経口注射、鼻腔内注射、筋肉内注射または皮下注射を含めた当技術分野で公知の任意の手段によるものでよい。
【0212】
キメラノロウイルスVP1タンパク質またはVLPを含む本発明の組成物は、使用される特定の組成物と適合する様式で、かつ免疫応答(例えば、T細胞応答および/または体液性応答)、好ましくは防御免疫応答を誘導するために有効な量で投与する。
【0213】
ノロウイルスに特異的なT細胞応答は、とりわけ、51Cr放出アッセイ、リンパ球増殖アッセイによって、またはIFN−γを細胞内染色することによって測定することができる。タンパク質は、ノロウイルスに感染していない哺乳動物に投与することができる、または、ノロウイルスに感染している哺乳動物に投与することができる。組成物中の融合タンパク質の詳細な投与量は、これらに限定されないが、組成物を投与する哺乳動物の種、年齢、および全身状態、ならびに組成物の投与形式を含めた多くの因子に左右されるであろう。本発明の組成物の有効量は、常套的な実験のみを用いて容易に決定することができる。適切な用量を同定するためにin vitroモデルおよびin vivoモデルを用いることができる。一般に、0.5mg、0.75mg、1.0mg、1.5mg、2.0mg、2.5mg、5mg、または10mgのノロウイルスポリペプチドまたはVLPを、大型の哺乳動物、例えば、ヒヒ、チンパンジー、またはヒトなどに投与するであろう。所望に応じて、共起刺激分子またはアジュバントも、組成物の前、その後、またはそれと一緒に提供することができる。
【0214】
本発明の組成物を送達することによって生じる、ノロウイルスに特異的なT細胞の活性化を含めた哺乳動物の免疫応答は、投与量、投与経路、または追加刺激レジメンを変動させることによって増強することができる。本発明の組成物は、単回投与スケジュール、または、好ましくは、ワクチン接種の一次過程が1〜10の別個の用量を含み、その後、その後の免疫応答を維持し、かつ/または強化するために必要な時間間隔で他の用量を与え、例えば、1〜4カ月で第2の用量を与え、必要に応じて、その後、数か月後に1または複数の用量を与える多回用量スケジュールで与えてよい。
【0215】
F.免疫応答の効力を決定するための試験
治療的な処置の効力を調査する1つの方式は、本発明の組成物を投与した後に、感染をモニターすることを伴う。予防的処置の効力を調査する別の方式は、組成物を投与した後に、本発明の組成物中の抗原に対する全身免疫応答をモニターすること(例えば、IgG1生成レベルおよびIgG2a生成レベルをモニターすることなど)および粘膜免疫応答をモニターすること(例えば、IgA生成レベルをモニターすることなど)の両方を伴う。典型的に、血清特異的な抗体応答は、免疫した後、攻撃する前に決定されるが、一方、粘膜特異的な抗体応答は、免疫し、攻撃した後に決定される。
【0216】
本発明の免疫原性組成物の成分タンパク質の免疫原性の別の評価の仕方は、タンパク質を組換えによって発現させて、患者の血清または粘膜の分泌物を免疫ブロットによってスクリーニングすることである。タンパク質と患者血清との間の陽性反応は、患者において問題のタンパク質に対する免疫応答が以前開始されたことがある−すなわち、そのタンパク質が免疫原であることを示す。この方法は、免疫優性タンパク質および/またはエピトープを同定するためにも用いることができる。
【0217】
in vivo効力モデルとしてはヒト攻撃モデルが挙げられ、これは、NIHおよびCenter for Disease Control(CDC)によって支持される(例えば、Lindesmithら(2003年)Nat. Med. 9巻:548〜553頁およびLindesmithら(2005年)J. Virol. 79巻:2900〜2909頁を参照されたい)。
【0218】
免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2応答の一方または両方であってよい。免疫応答は、改善された、または増強された、または変化した免疫応答であってよい。免疫応答は、全身免疫応答および粘膜免疫応答の一方または両方であってよい。免疫応答は、増強された全身応答および/または粘膜応答であることが好ましい。
【0219】
増強された全身免疫および/または粘膜免疫は、増強されたTH1免疫応答および/またはTH2免疫応答に反映される。免疫応答の増強は、IgG1および/またはIgG2aおよび/またはIgAの生成の増加を含むことが好ましい。粘膜免疫応答は、TH2免疫応答であることが好ましい。粘膜免疫応答は、IgAの生成の増加を含むことが好ましい。
【0220】
活性化されたTH2細胞は、抗体生成を増強し、よって、細胞外の感染に対する応答において価値がある。活性化されたTH2細胞は、IL−4、IL−5、IL−6、およびIL−10の1または複数を分泌し得る。TH2免疫応答により、将来の防御のためにIgG1、IgE、IgAおよび記憶B細胞が生成され得る。
【0221】
TH2免疫応答は、TH2免疫応答に関連するサイトカイン(例えば、IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10など)の1または複数の増加、またはIgG1、IgE、IgAおよび記憶B細胞の生成の増加のうち1または複数を含んでよい。増強されたTH2免疫応答は、IgG1生成の増加を含むようになることが好ましい。
【0222】
TH1免疫応答は、CTLの増加、TH1免疫応答に関連するサイトカイン(例えば、IL−2、IFNγ、およびTNFβなど)の1または複数の増加、活性化されたマクロファージの増加、NK活性の増加、またはIgG2aの生成の増加のうち1または複数を含んでよい。増強されたTH1免疫応答は、IgG2a生成の増加を含むようになることが好ましい。
【0223】
本発明の免疫原性組成物、具体的には、本発明の1または複数の抗原を含む免疫原性組成物は、単独で、または他の抗原と組み合わせて、必要に応じてTh1応答および/またはTh2応答を惹起することができる免疫調節剤と一緒に用いることができる。
【0224】
本発明は、1または複数の免疫調節剤、例えば、アルミニウム塩などの無機塩など、およびCpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドを含む免疫原性組成物も含む。免疫原性組成物は、アルミニウム塩とCpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドの両方を含むことが最も好ましい。あるいは、免疫原性組成物は、ADPリボシル化毒素、例えば、解毒されたADPリボシル化毒素など、およびCpGモチーフを含有するオリゴヌクレオチドを含む。1または複数の免疫調節剤はアジュバントを含むことが好ましい。アジュバントは、上でさらに説明されているTH1アジュバントおよびTH2アジュバントからなる群の1または複数から選択することができる。
【0225】
感染に有効に対処するために、本発明の免疫原性組成物により細胞媒介性免疫応答ならびに体液性免疫応答の両方が引き出されることが好ましい。この免疫応答により、長持ちする(例えば、中和)抗体および1または複数の感染性抗原に曝露させると直ちに応答し得る細胞媒介性免疫が誘導されることが好ましい。
【0226】
G.医薬品としての免疫原性組成物の使用
本発明は、医薬品として使用するための(特にワクチンを作製するための、またはワクチンとして使用するための)本発明の組成物も提供する。医薬品は、哺乳動物における免疫応答を生じさせることができること(すなわち、免疫原性組成物である)が好ましく、ワクチンであることがより好ましい。本発明は、哺乳動物における免疫応答を上昇させるための医薬品の製造における本発明の組成物の使用も提供する。医薬品は、ワクチンであることが好ましい。胃腸炎、好ましくは急性胃腸炎などの腸の感染症を予防および/または処置するためにワクチンを使用することが好ましい。胃腸炎は、水様下痢ならびに/または腸の蠕動(peristalisis)および/もしくは運動性の両方をもたらすイオンおよび/または水の移動の不均衡に起因し得る。胃腸炎は、嘔吐ももたらす場合がある。
【0227】
本発明は、上記の組成物を用いて免疫応答を誘導する、または増大させるための方法を提供する。免疫応答は、防御的であることが好ましく、抗体媒介免疫および/または細胞媒介免疫を含んでよい(全身免疫および粘膜免疫を含む)。免疫応答は、追加刺激応答を含む。
【0228】
本発明は、有効量の本発明の組成物を投与するステップを含む、哺乳動物における免疫応答を上昇させるための方法も提供する。免疫応答は、防御的であることが好ましく、抗体媒介免疫および/または細胞媒介免疫を伴うことが好ましい。免疫応答は、TH1免疫応答およびTH2免疫応答の一方または両方を含むことが好ましい。方法により、追加刺激応答が生じてよい。
【0229】
哺乳動物はヒトであることが好ましい。免疫原性組成物、好ましくはワクチンが予防的に使用するためのものである場合、ヒトは、子(例えば、乳児または幼児、就学前の子、例えば、1歳以下の子、1歳から3歳までの子、または4歳の子、または5歳の子、または6歳の子、または7歳の子、または8歳の子、または9歳の子、または10歳以上の子)、ティーンエイジャー、高齢者(例えば、約60歳以上)または高リスク群の人、例えば、軍人、旅行者、医療従事者、保育(デイケア)提供者、および食品取扱者であることが好ましい。免疫原性組成物またはワクチンは、そのような個体に、治療的に使用するために投与することもできる。(例えば、安全性、投与量、免疫原性などを評価するために)小児用ワクチンを成人に投与することもできる。
【0230】
本発明の免疫原性組成物(例えば、ワクチン)の他の標的グループとしては、移植および免疫無防備状態の個体;例えば、米国、カナダおよびヨーロッパにいる成人および小児であって、これらに限定されないが、食品取扱者;これらに限定されないが病院および養護施設の人員などの医療従事者;デイケア提供者;巡航客船旅行者を含めた旅行者;軍人;ならびに上記の小児集団および/または高齢者集団を含めた成人および小児が挙げられる。
【0231】
(i).ノロウイルス特異的T細胞
ノロウイルス特異的T細胞は、in vivoまたはin vitroで発現されるキメラVP1タンパク質またはVLPによって活性化され、好ましくはVP1のP−ドメインのエピトープを認識する。ノロウイルス特異的T細胞はCD8+またはCD4+であり得る。
【0232】
ノロウイルス特異的CD8+T細胞は、MHCクラスI分子と複合体を形成するこれらのエピトープのいずれかを提示している、ノロウイルスに感染している細胞を死滅させ得る細胞傷害性Tリンパ球(CTL)であり得る。ノロウイルス特異的CD8+T細胞は、例えば、51Cr放出アッセイによって検出することができる。51Cr放出アッセイでは、ノロウイルス特異的CD8+T細胞の、これらのエピトープのうちの1または複数を提示している標的細胞を溶解する能力を測定する。IFN−γなどの抗ウイルス作用物質を発現するノロウイルス特異的CD8+T細胞も、本明細書において想定されており、同様に免疫学的方法によって、好ましくはIFN−γなどのサイトカインに対する細胞内染色によって、本明細書に記載のものなどのノロウイルスポリペプチドのうちの1または複数を用いてin vitro刺激した後に、検出することができる。
【0233】
ノロウイルス特異的CD4+T細胞は、リンパ球増殖アッセイによって検出することができる。リンパ球増殖アッセイでは、ノロウイルス特異的CD4+T細胞の、例えば、VP1に反応して増殖する能力を測定する。
【0234】
(ii)ノロウイルス特異的T細胞を活性化する方法
キメラノロウイルスVP1タンパク質およびVLPを使用して、ノロウイルス特異的T細胞をin vitroまたはin vivoのいずれかで活性化することができる。ノロウイルス特異的T細胞の活性化は、とりわけ、ノロウイルスに対するCTL応答を最適化するためのモデル系をもたらすため、およびノロウイルス感染症に対する予防的処置または治療的処置をもたらすために使用することができる。in vitro活性化のために、タンパク質を、上記の通り、プラスミドまたはウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベクターによってT細胞に供給することが好ましい。
【0235】
T細胞のポリクローナル集団は、ノロウイルスに感染している哺乳動物の血液に由来してよく、リンパ節、脾臓、または胸腺などの末梢リンパ器官由来であることが好ましい。好ましい哺乳動物としては、マウス、チンパンジー、ヒヒ、およびヒトが挙げられる。ノロウイルスに感染することは、哺乳動物における活性化されたノロウイルス特異的T細胞の数を増やすことに役立つ。次いで、哺乳動物に由来するノロウイルス特異的T細胞を、本発明によるノロウイルス免疫原性ポリペプチド、および/または融合タンパク質を加えることによってin vitroで再刺激することができる。次いで、ノロウイルス特異的T細胞を、とりわけ、増殖、IFN−γの生成、および、例えばVP1ポリペプチドエピトープを提示している標的細胞を溶解する能力についてin vitroで試験することができる。
【0236】
H.キット
本発明は、本発明の免疫原性組成物の1または複数の容器を含むキットも提供する。組成物は、個々の抗原がそうであり得るように、液体の形態であってよい、または凍結乾燥されてよい。組成物用の適切な容器としては、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスティックを含めた種々の材料から形成されていてよい。容器は、滅菌アクセスポートを有してよい(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針で穴をあけることができる止め栓を有するバイアルであってよい)。
【0237】
キットは、薬剤的に許容できる緩衝液、例えば、リン酸緩衝食塩水、リンゲル液、またはブドウ糖溶液などを含む第2の容器をさらに含んでよい。これは、他の薬学的に許容される処方用溶液、例えば、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジまたは他の送達デバイスなどを含めた、最終使用者にとって有用な他の材料も含有してよい。キットは、アジュバントを含む第3の成分をさらに含んでよい。
【0238】
キットは、免疫誘導する方法のため、または感染を処置するための使用説明書を含有する添付文書も含んでよい。添付文書は、承認されていないドラフト添付文書であってよい、または食品医薬品局(FDA)または他の規制機関によって承認された添付文書であってよい。
【0239】
本発明は、本発明の免疫原性組成物を予め満たした送達デバイスも提供する。
【実施例】
【0240】
以下は、本発明を実行するための特定の実施形態の例である。実施例は、単に例示的な目的で提供されており、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものではない。
【0241】
(実施例1)
Snow Mountain/NorwalkキメラVP1タンパク質のための発現構築物
キメラノロウイルスVP1タンパク質、およびキメラタンパク質を含有するVLPを生成するための構築物であるSaccharomyces cerevisiae株AD3を、キメラVP1タンパク質をコードする配列を酵母発現ベクターpBS24.1にクローニングすることによって作製した。pBS24.1ベクターは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、1989年7月19日出願の共有に係る米国特許出願第382,805号に詳細に記載されている。pBS24.1ベクターは、酵母において自律複製するための2−ミクロン配列および酵母遺伝子leu2dおよび選択マーカーとしてURA3を含有する。β−ラクタマーゼ遺伝子および細菌におけるプラスミドの複製のために必要なColE1複製起点もこの発現ベクター内に存在する。発現の調節は、ハイブリッドADH2/GAPDHプロモーター(米国特許第6,183,985号に記載されている)およびアルファ因子ターミネーターの制御下に置いた。
【0242】
図6に示されているポリヌクレオチド配列(配列番号16)に含まれるSnow Mountain(SMV0/Norwalk VP1タンパク質を発現させるために、構築物を作製し、利用した。これを行うために、制限酵素HindIIIおよびAcc651によって切り取った、予め生成したSnow Mountain遺伝子のS−ドメインに対応するフラグメントを、制限酵素Alw211およびSal1を用いて生成したNorwalk遺伝子のP−ドメインに対応するフラグメントにライゲーションした。この新しいキメラDNAを、pMADC5サブクローニングベクター(
図1)に、HindIII−SalI部位においてライゲーションし、増幅させた。次に、S.cervisiae株AD3においてSMV/NorwalkキメラVP1タンパク質を発現させるために、増幅させたフラグメント(
図5に示されている)を、発現ベクターpBS24.1(
図2)に、BamHI+SalI部位においてクローニングした。
【0243】
(実施例2)
Snow Mountain/GII.4.2006aキメラのための発現構築物
本実施例では、Saccharomyces cerevisiae株AD3におけるSnow Mountain/GII.4.2006a VLP(SMV/GII.4.2006a/キメラ)の生成において発現ベクターpBS24.1を使用した。キメラSMV/GII.4.2006a VP1タンパク質を発現させるために利用したコード配列は
図7に示されている。Snow MountainウイルスおよびGII.4.2006aウイルスのVP1のS−ドメインおよびP−ドメインのcDNA配列に基づく合成オリゴヌクレオチドを用いてコード配列を生成した。
【0244】
本実施例では、制限酵素HindIIIおよびAcc651によって切り取った、予め生成したSnow Mountain遺伝子のS−ドメインに対応するフラグメントを、制限酵素Xbal−SalIを用いて生成したGII.4.2006a遺伝子のP−ドメインに対応するフラグメントにライゲーションした。この新しいキメラDNAを、pMADC5サブクローニングベクター(
図1)に、HindIII−SalI部位においてライゲーションし、増幅させた。次に、S.cervisiae株AD3においてSMV/NorwalkキメラVP1タンパク質を発現させるために、増幅させたフラグメント(
図6に示されている)を、発現ベクターpBS24.1(
図2)に、BamHI+SalI部位においてクローニングした。
【0245】
(実施例3)
酵母におけるキメラVLPの発現
S.cerevisiae株AD3(MATa、leu2、ura3−52、prb1−1122、pep4−3、prc1−407、gal2、[cir0]、::pDM15(pGAP/ADR1::G418R)、::Yip5ΔleuAD)を上記の発現プラスミドで形質転換した。形質転換する前に、酵母細胞をYEPD(酵母抽出物バクトペプトン(bactopeptone)2%グルコース)プレート上に画線し、形質転換のためのコンピテント細胞を調製するために単一のコロニーを選択した。
【0246】
Invitrogen S.c.EasyComp(商標)Transformation Kitを使用して酵母の形質転換を実施した。形質転換後、単一のコロニーを得るために、いくつかのUra−形質転換体をUra−8%グルコースプレート上に画線した。その後、単一のコロニーをLeu−8%グルコースプレートにパッチして、プラスミドのコピー数を増加させた。Leuスターター培養物を30℃で24時間成長させ、次いで、YEPD(酵母抽出物バクトペプトン2%グルコース)またはVeggie(Novagen Veggie PeptoneおよびVeggie Yeast Extract)培地中に1:20に希釈した。細胞を30℃で48〜72時間にわたり成長させ、培地中のグルコースを枯渇させ、次いで採取した。培地からグルコースが枯渇すると誘導が起こった。この系により、外来遺伝子が誘導される前に高細胞量がもたらされた。
【0247】
(実施例4)
キメラVLPの精製
ノロウイルスのウイルス様粒子(VLP)を、ノロウイルスキメラVP1タンパク質を発現している酵母細胞の培地から精製した。培地を低速回転(15,000×g)させて余分の細胞または細胞の破片を除去した。このステップの後、上清を、40%スクロースクッションによる4時間の高速回転(100,000×g)に供して、遊離のタンパク質および他の材料からウイルス様粒子を分離した。VLPを含有するペレットを、緩衝液(50mMのトリス、pH7.5、100mMのNaCl)に再懸濁させ、Capto(商標)Qカラムにローディングし、高塩濃度を用いて溶出させた。VLPを、塩の勾配を増加させる過程でカラムから溶出させた。最後に、VLPを含有する溶出画分を濃縮し、緩衝液を低塩濃度の緩衝液(20mMのトリス、pH7.5、100mMのNaCl)に交換し、使用するまで4℃で保管した。
【0248】
【表1-1】
【0249】
【表1-2】
【0250】
【表1-3】
【0251】
【表1-4】
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【表1-5】
【0253】
【表1-6】
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【表1-7】
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【表1-8】
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【0258】
【表1-11】
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【表1-12】
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【表1-13】
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【表1-24】
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【0273】
【表1-26】
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【表1-28】
【0276】
【表1-29】
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【表1-47】
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【表1-48】
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【表1-49】
【0297】
【表1-50】
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【表1-55】
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【表1-75】
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【表1-76】
【0324】
【表1-77】
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【0326】
【表1-79】
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【表1-80】