(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351645
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】回転軸構造
(51)【国際特許分類】
F16H 9/12 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
F16H9/12 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-15619(P2016-15619)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-133648(P2017-133648A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2017年11月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 恭太
(72)【発明者】
【氏名】檀上 弥輝
(72)【発明者】
【氏名】原田 淳平
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−9622(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/148474(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のトランスミッションに適用される回転軸構造であって、
回転軸線に沿った中空部を部分的に有する回転軸には、外嵌部材が外嵌され、
前記回転軸における前記外嵌部材が外嵌される部分に対して回転軸線方向の一方側に、当該外嵌される部分よりも外径が大きい部分が形成されることにより、前記回転軸の外周面には、前記外嵌される部分と前記外径が大きい部分との間で段差が生じており、
前記中空部に対して回転軸線方向の前記一方側にずれた位置にロックナットが螺着されて、当該ロックナットの締め付けにより、前記外嵌部材が前記段差によって形成される面と前記ロックナットとの間に挟まれて前記回転軸に固定されている、回転軸構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のトランスミッションに適用される回転軸構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両では、駆動源からの動力がトランスミッション(変速機)に入力され、トランスミッションで変速された動力がトランスファやデファレンシャルなどを介して駆動輪に伝達される。
【0003】
トランスミッションには、複数の回転軸が備えられており、その回転軸には、回転軸を取り囲む環状の部材が外嵌されて固定される。たとえば、ベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)は、入力側のプライマリプーリと出力側のセカンダリプーリとの間に無端状のベルトが巻き掛けられた構成を有している。セカンダリプーリを支持するセカンダリ軸には、セカンダリプーリの固定シーブが一体に形成されている。セカンダリプーリの可動シーブは、セカンダリ軸に外嵌されて、固定シーブにベルトを挟んで対向し、その対向方向に移動可能に設けられている。可動シーブに対して固定シーブと反対側には、ピストンが設けられ、可動シーブとピストンとの間には、可動シーブに作用する油圧が供給されるピストン室(油室)が形成されている。ピストンは、環状に形成され、セカンダリ軸に外嵌されている。ピストンに対して可動シーブ側と反対側において、ロックナットがセカンダリ軸に螺着されて、このロックナットの締め付けにより、ピストンがセカンダリ軸に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−145682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セカンダリ軸などの回転軸は、回転軸線上を延びる軸心油路などを有する中空構造に形成されていることが多い。中空構造の回転軸では、ロックナットが螺着される部分の強度を確保するために外径が大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、ロックナットが螺着される部分の強度不足を回避し、外径の縮小を図ることができる、回転軸構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る回転軸構造は、車両のトランスミッションに適用される回転軸構造であって、当該回転軸構造では、回転軸線に沿った中空部を部分的に有する回転軸に、外嵌部材が外嵌され、中空部に対して回転軸線方向にずれた位置にロックナットが螺着されて、当該ロックナットの締め付けにより外嵌部材が回転軸に固定されている。
【0008】
この構成によれば、回転軸には、外嵌部材が外嵌され、外嵌部材に対して回転軸線方向の一方側にロックナットが螺着される。このロックナットの締め付けにより、外嵌部材が回転軸に固定される。回転軸には、回転軸線に沿った中空部が部分的に形成されており、ロックナットは、中空部に対して回転軸線方向にずれた位置に螺着される。そのため、回転軸におけるロックナットが螺着される部分の強度不足を回避し、回転軸の外径(少なくとも、ロックナットを螺着するために回転軸の外周面に形成されているねじのねじ径)の縮小を図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転軸におけるロックナットが螺着される部分の強度不足を回避し、回転軸の外径の縮小を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る回転軸構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る回転軸構造1を示す断面図である。なお、
図1では、断面を示すハッチングの付与が省略されている。
【0014】
回転軸構造1は、車両のトランスミッションに適用される。ベルト式の無段変速機(CVT:Continuously Variable Transmission)11は、車両のトランスミッションの一例であり、入力側のプライマリプーリと出力側のセカンダリプーリ12との間に無端状のベルト13が巻き掛けられた構成を有している。
図1には、無段変速機11の出力側の構成が示されている。
【0015】
無段変速機11は、セカンダリプーリ12を支持するセカンダリ軸14と、セカンダリ軸14に伝達される動力を出力するためのアウトプット軸15とを備えている。セカンダリ軸14とアウトプット軸15とは、同軸上に配置され、それらの回転軸線が一致している。
【0016】
セカンダリ軸14には、セカンダリプーリ12の固定シーブ16が一体に形成されている。セカンダリプーリ12の可動シーブ17は、固定シーブ16に対して回転軸線方向の一方側(
図1における右側。以下、「右側」という。)において、セカンダリ軸14に外嵌されて、回転軸線方向に移動可能に設けられている。可動シーブ17のシーブ面は、ベルト13を挟んで、固定シーブ16のシーブ面と対向している。
【0017】
可動シーブ17の右側には、ピストン18が設けられている。可動シーブ17とピストン18との間には、可動シーブ17に作用する油圧が供給されるピストン室(油室)19が形成されている。ピストン18は、セカンダリ軸14に外嵌されている。セカンダリ軸14におけるピストン18が外嵌される部分は、可動シーブ17が外嵌されている部分よりも小径に形成され、セカンダリ軸14の外周面には、可動シーブ17が外嵌されている部分とピストン18が外嵌されている部分との間で段差が生じている。
【0018】
その段差によって形成される面20とピストン18の内周端部との間には、可動シーブ17の移動を規制するための円環板状のストッパ21が介在されている。
【0019】
また、セカンダリ軸14の外周面において、ピストン18が外嵌されている部分の右側に隣接する部分には、ねじ22が切られている。ねじ22が切られた部分には、ロックナット23が螺着される。このロックナット23の締め付けにより、ピストン18およびストッパ21の各内周端部が面20とロックナット23との間で圧接されて、ピストン18およびストッパ21がセカンダリ軸14に固定されている。
【0020】
セカンダリ軸14には、回転軸線に沿って延びる軸心油路24が形成されている。軸心油路24は、セカンダリ軸14の回転軸線方向の他方側(
図1における左側。以下、「左側」という。)の端面で開放されている。
【0021】
セカンダリ軸14の左側の端部25は、固定シーブ16から左側に突出している。端部25には、ベアリング31の内輪(インナレース)32が外嵌されている。ベアリング31の外輪(アウタレース)33は、無段変速機11のケース34に保持されている。
【0022】
また、ピストン18は、セカンダリ軸14の外周面から回転径方向に延び、途中部が左側に屈曲して延びている。その左側に延びた部分には、ベアリング35の内輪36が外嵌されている。ベアリング35の外輪37は、ケース34に保持されている。
【0023】
これにより、セカンダリ軸14は、2つのベアリング31,35を介してケース34に支持されている。
【0024】
セカンダリ軸14の右側の端部38は、ねじ22が切られた部分からさらに右側に延びている。端部38には、その端面で開放される中空部39が形成されている。中空部39は、セカンダリ軸14の回転軸線を中心とする円筒状の内周面40を有している。内周面40は、セカンダリ軸14の外周面に切られたねじ22の右側の端部と回転軸線方向に微小な幅でオーバラップしている。これにより、ロックナット23は、中空部39に対して回転軸線方向にずれた位置に螺着される。
【0025】
アウトプット軸15の左側の端部41は、セカンダリ軸14の中空部39の内周面40の内径よりも小さい外径を有する円柱状に形成されている。端部41は、中空部39に挿入されている。中空部39の内周面40と端部41の外周面42との間には、ベアリング43が介在されている。ベアリング43は、複数の転動体を保持器で保持した構成のケージ&ローラ形ニードル軸受である。
【0026】
アウトプット軸15の右側の端部44には、ベアリング45が外嵌されている。ベアリング45は、内輪を有していない針状ころ軸受である。ベアリング45の外輪46は、ケース34に保持されている。
【0027】
これにより、アウトプット軸15は、端部41がベアリング43を介してセカンダリ軸14に支持され、端部44がベアリング45を介してケース34に支持されることにより、ケース34に回転可能に支持されている。
【0028】
また、アウトプット軸15には、ベアリング45の左側において、パーキングギヤ47が外嵌されている。パーキングギヤ47は、アウトプット軸15の外周面に対してスプライン嵌合している。
【0030】
以上のように、セカンダリ軸14には、ピストン18およびストッパ21が外嵌され、ピストン18およびストッパ21の右側にロックナット23が螺着される。このロックナット23の締め付けにより、ピストン18およびストッパ21がセカンダリ軸14に固定される。セカンダリ軸14には、中空部39が部分的に形成されており、ロックナット23は、中空部39に対して回転軸線方向にずれた位置に螺着される。そのため、セカンダリ軸14におけるロックナット23が螺着される部分の強度不足を回避し、セカンダリ軸14の外径(少なくとも、ロックナット23を螺着するためにセカンダリ軸14の外周面に形成されているねじ22のねじ径)の縮小を図ることができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することができる。
【0033】
たとえば、回転軸の一例であるセカンダリ軸14に外嵌される外嵌部材として、ピストン18およびストッパ21を例に挙げたが、外嵌部材は、ベアリングやギヤなどであってもよい。
【0034】
また、前述の実施形態では、回転軸構造1の適用対象の回転軸がセカンダリ軸14である場合を例にとったが、無段変速機11の他の回転軸、たとえば、プライマリプーリを支持するプライマリ軸が本発明に係る回転軸構造の適用対象とされてもよい。
【0035】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 回転軸構造
11 無段変速機(トランスミッション)
14 セカンダリ軸(回転軸)
18 ピストン(外嵌部材)
21 ストッパ(外嵌部材)
23 ロックナット