【課題を解決するための手段】
【0006】
発明に従い、この課題は、請求項1に記載の特徴を有する真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのローターによって、請求項8に記載の特徴を有する真空ポンプによって、及び請求項9に記載の特徴を有する方法によって解決される。本発明に係るローターの好ましい実施形と、本発明に係る方法の好ましい態様は、下位の請求項、本明細書、及び図面から生ずる。
【0007】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの発明に係るローターは、ローター軸を中心に回転可能に支承されたローターシャフトと、該ローターシャフトに設けられ、軸方向に連続し、其々、複数のローター羽根を有する複数のローター面を有している。その際、真空ポンプの吸引側の高真空領域における各ローター面におけるローター羽根の数量は、真空ポンプの予真空領域又は低真空領域内の各ローター面におけるよりも少ない。特に、高真空領域におけるローター面ごとのローター羽根の数量は、予真空領域又は低真空領域におけるものよりも2倍から4倍だけ少ない。
【0008】
この態様に基づいて、最適なローター羽根構造が生じる。これによって真空ポンプの効率が相応して向上される。
【0009】
ローターは、中実材料から製造される、つまり一体式に形成されていることが可能である。代替として、ローターは、複数の別体の、互いに独立した、つまり必ずしも同時に一つの製造プロセスで製造されていないローターディスクからなることが可能である。これらは、ローターの形成のため、軸方向で重なり合い、そして一つの共通なローターシャフトに設けられている。
【0010】
本発明は、その結果、ローターが一体に形成されているか、または個々のローターディスクから成る構成を有するかに拠らない。
【0011】
好ましくは、ローターは、軸方向に連続し、各ローター面内におけるローター羽根の数量が異なる少なくとも二つの領域に区分されている。その際、各ローター面の数量は軸方向でみて、真空ポンプの高真空領域から出発して真空ポンプの予真空領域又は低真空領域にむかって増加している。
【0012】
代替として、又は追加的に、ローターは、軸方向に連続し、各ローター面に置けるローター羽根の数量が異なる二の領域又はこれを越える領域を有することが可能である。その際、各ローター面に置けるローター羽根の数量は、軸方向でみて、真空ポンプの高真空領域から出発して真空ポンプの低真空領域に向かって減少している。
【0013】
発明に係るローターの有利な実施形に従い、ローターは、軸方向に連続し、各ローター面に置けるローター羽根の数量が異なる二つの領域に区分されている。その際、高真空領域における各ローター面内のローター羽根の数量は、真空ポンプのこれに続く領域における各ローター面内のローター羽根の数量よりも2倍分だけ少ない。
【0014】
本発明に係るローターの代替的な有利な実施形に従い、ローターは、軸方向に連続し、各ローター面におけるローター羽根の数量が異なる三つの領域に区分されている。その際、高真空領域における各ローター面のローター羽根の数量は、真空ポンプのこれに続く領域、特に中真空領域における各ローター面内のローター羽根の数量よりも2倍分だけ少なく、そして真空ポンプの予真空領域又は低真空領域における各ローター面内のローター羽根の数量よりも3倍分または4倍分だけ少ない。
【0015】
発明に係るローターの別の有利な実施形に従い、ローターは、各ローター面に置けるローター羽根の数量が異なる、軸方向に連続する四つの領域に区分されている。その際、各ローター面におけるローター羽根の数量は、真空ポンプの高真空領域から出発して予真空領域又は低真空領域に儲かって1:2:3:4の比率で増加する。
【0016】
ローター羽根構造が、真空ポンプの予真空領域から出発して高真空領域に向かって開かれるとき、特に有利である。開放性は、ここでは、軸方向における透光性の意味である。つまり、ローターの所定の軸方向の領域においてローター羽根の構造が、例えば、ローター面に沿って閉じられるほどに、周囲方向における二つの連続する羽根の間に存在する各中間空間(これら中間空間の間を、光は、ローターの軸方向の領域を通過することができる)は小さくなる。
【0017】
好ましくは、ローターは、複数のローター羽根を有する。ローター軸に対して少なくとも基本的に直角な各ローター面に対するその調整角度(ローター羽根の調整角度)は、20°から35°の領域にある。好ましくは、各ローター面内において、其々、全てのローター羽根が同じ調整角度を有する。その際、この統一的な調整角度は、全てのローター面内において同じである。
【0018】
更に好ましくは、少なくとも二つのローター面が、そのローター羽根の軸方向の高さに関して互いに異なっていることが意図される。調整されたローター羽根の軸方向の高さは、これら羽根構造の開放性を決定する。ローター面に置けるローター羽根構造の取り除きは、開放性を明らかに高める。ローター面におけるローター羽根の軸方向の高さは、このローター面におけるローター羽根の名目上の(独語:nominell)数量、つまり、場合によって行われるこのローター面からのローター羽根の取り除きの前のローター羽根の数量の関数(独語:Funktion)であることが可能である。この関数は、真空ポンプの所望の、又は必要な吸引状態に応じて選択されることが可能である。
【0019】
特に、ローターシャフトとローター羽根は互いに一体に形成されている。ローターは、好ましくは中実材料から成る、特にシリンダー状のベースボディから製造されている。
【0020】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの製造の為の本発明に係る方法は、ローターシャフトに設けられ、軸方向に連続し、其々、複数のローター羽根を有する複数のローター面の製造の為に、ねじがシリンダー状のベースボディ中に切り込まれそして、其々、ローター軸に少なくとも基本的に垂直な異なる面内に、複数の環状溝がベースボディ中に設けられることによって、ローターシャフトと、該ローターシャフトに設けられた複数の羽根を有するローターが、中実の材料から成るシリンダー状のベースボディから一体に製造され、そして引き続いて、軸方向でみて真空ポンプの高真空領域に向かって開かれたローター羽根構造を製造するために、真空ポンプの高真空領域内における少なくとも一つのローター面の製造されたローター羽根の一部が取り除かれる点において際立っている。
【0021】
本方法のこの態様に基づいて、ローターは、比較的少ない労力で、かつ、ひいては相応して安価に製造されることが可能である。
【0022】
その際、其々複数のローター羽根を有するローター面の製造の為の発明に係る方法の有利な態様に従い、複数のローター面は、先ず、ねじをシリンダー状のベースボディ中に切り込まれる。引き続いて、環状溝が、ローター軸に少なくとも基本的に垂直な異なる面中に設けられる。
【0023】
本発明に係る方法の代替的な態様に従い、其々、複数のローター羽根を有する複数のローター面の製造の為に、先ず、環状溝が、ベースボディの中の、其々、ローター軸に少なくとも基本的に垂直な異なる面中に設けられ、その際、引き続いて、ねじがシリンダー状のベースボディ中に切り込まれる。
【0024】
1条ねじ又は多条ねじがシリンダー状のベースボディ中に切り込まれることが可能である。
【0025】
目的にかなり、ねじは円形の鋸ディスク又は側フライスによってシリンダー状のベースボディ中に切り込まれる。
【0026】
環状溝は、目的に適って、旋盤上又は鋸ディスク若しくは側フライスによってシリンダー状のベースボディ中に設けられることが可能である。
【0027】
複数の環状溝の間の異なる軸方向の間隔によって、相応して異なる軸方向の高さの複数のローター羽根が製造されることができる。
【0028】
好ましくは、傾斜したローター羽根が製造される。その調整角度は、ローター軸に少なくとも基本的に直角な各ローター面に対して、このローター面の領域におけるねじのピッチによって決定される。
【0029】
ねじの切り込みによって、及び、中実材料から成るシリンダー状のベースボディ内への差込み(独語:Einstichen)を形成することによって、まず複数のローター羽根と同じ数量を有するローター面が生じる。軸方向の間隔が、環状溝形成の際にどのように選択されるかに応じて、傾斜した複数ローター羽根は、異なる程度の軸方向高さで延在する。其々、ローター軸に垂直な複数のローター面に対する複数のローター羽根の調整角度は、シリンダー状のベースボディ内に設けられるねじのピッチによって決定される。個々のローター面の軸方向の延在と、ひいてはその軸方向のローター羽根高さが変更可能である。その際、ローター羽根は、例えば高真空領域内において、他の領域内においてよりもより大きな軸方向の延在を有する。
【0030】
すでに上述したように、まずねじが切り込まれそして引き続いて環状溝が設けられるか、又は、まず環状溝が設けられ、そしてその後ねじが切り込まれることが可能である。引き続いて、軸方向でみて真空ポンプの高真空領域の方に向かって開かれた、つまり透光性のローター羽根構造を製造する為に、真空ポンプの高真空領域内の少なくとも一つのローター面内の製造されるローター羽根の一部が取り除かれる。各ローター羽根の取り除きは、例えば、エンドミル(独語:Fingerfraeser)等によって行われることが可能である。真空ポンプの高真空領域においては、複数の羽根は好ましくは重なり合わないので、そこでは、比較的開かれた羽根構造が存在している。好ましくは、場合によっては存在する中真空領域内においても、複数のローター羽根の重なり合いも存在しない。特に、真空ポンプの予真空領域又は低真空領域においてローター羽根の重なりが生じる。その際、ねじ切りおよび環状溝によってつくりだされた全てのローター羽根は、予真空領域又は低真空領域内に保持されることが可能である。
【0031】
例えば、36条までのねじが、中実材料から成るシリンダー状のベースボディ中に切り込まれることが可能であるので、真空ポンプの予真空又は低真空領域内には、ローター面ごとに36の羽根が設けられることが可能である。中真空領域内では、その際、例えば一つおきのローター羽根が取り除かれることが可能である一方で、高真空領域における各三番目のローター羽根のみが残される。ローター面内におけるローター羽根の数量は、真空ポンプの予真空領域又は低真空領域から出発して、ローター面ごとのローター羽根の数量に関して例えば3:2:1の比率である。
【0032】
基本的に、中実材料から成るベースボディ内に設けられるべきねじは、条について他の数量、つまり、他の条数を有することが可能で、かつ他のローター羽根が選択されることが可能である。その際、好ましくは、真空ポンプの高真空領域内の各ローター面内のローター羽根の数量は、真空ポンプの予真空領域又は低真空領域内の各ローター面内のものよりも2倍分から4倍分だけ少ない。
【0033】
アンバランスが生じないことを保証するために、異なるローター面内のローター羽根は、其々、周囲方向において同様に分配されている。
【0034】
ある意味、ローター羽根の上側および下側の縁部が、環状溝形成の際に、例えば円形の鋸ディスクによって又は側フライスによって撤去されるとき、またはこのような形式の製造によって上側および下側の縁部が、ローター羽根に生じないとき、ローター羽根の断面は、其々、長方形の代わりに特に平行四辺形である。
【0035】
すでに上述したように、ローター羽根の調整角度は有利には20°から35°の領域にある。調整角度の好ましい値は、27°の領域にある。
【0036】
例えば、半径方向において一定の厚さを有する円形状の鋸ディスク又は側フライスの使用すると、半径方向において一定の断面のローター羽根が生ずる。しかしまた、基本的に、環状溝形成及びねじは、例えば、半径方向に増加する又は減少する厚さを有する鋸ディスク又は側フライスによって設けられることが可能である。これによってローター羽根は、半径方向に円すい形に拡張される、又は先細となる断面を生じる。
【0037】
貼付の図面を参照しつつ実施例に基づいて本発明を以下に詳細に説明する。