特許第6351675号(P6351675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6351675コンクリートボイドスラブ、ボイド型枠の押さえ部材及びコンクリートボイドスラブの構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351675
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】コンクリートボイドスラブ、ボイド型枠の押さえ部材及びコンクリートボイドスラブの構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/32 20060101AFI20180625BHJP
   E04B 5/43 20060101ALI20180625BHJP
   E04C 5/20 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   E04B5/32 B
   E04B5/43 A
   E04C5/20
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-185813(P2016-185813)
(22)【出願日】2016年9月23日
(65)【公開番号】特開2018-48514(P2018-48514A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中塚 隆太
(72)【発明者】
【氏名】中本 寛二
(72)【発明者】
【氏名】日吉 慎一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 晴基
(72)【発明者】
【氏名】西田 安宏
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−113357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/32
E04B 5/43
E04C 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の上部筋及び複数の下部筋が上下に間隔をもって組まれることによって形成される隙間にボイド型枠を設置するコンクリートボイドスラブにおいて、
上記ボイド型枠の上に押さえ部材が設けられ、該押さえ部材が複数の上部筋に対してその上下を縫うように配置されている
ことを特徴とするコンクリートボイドスラブ。
【請求項2】
複数の上端筋及び複数の下端筋が上下に間隔をもって組まれることによって形成される隙間にボイド型枠を設置するコンクリートボイドスラブにおいて、
上記上端筋と上記下端筋によって形成される格子に上記ボイド型枠が設置され、
上記ボイド型枠の上には補助筋が設置されると共に、押さえ部材が上記上端筋と補助筋に対してその上下を縫うように配置されている
ことを特徴とするコンクリートボイドスラブ。
【請求項3】
請求項2に記載のコンクリートボイドスラブにおいて、
上記押さえ部材が、上記補助筋の下で且つ上記上端筋の上に配置されている
ことを特徴とするコンクリートボイドスラブ。
【請求項4】
請求項1〜のいずれか1つに記載のコンクリートボイドスラブに使用するボイド型枠の押さえ部材であって、
上記ボイド型枠の配列方向に延びる一対の連結部と、該配列方向に交わる方向に延びる横渡部とを備えている
ことを特徴とするボイド型枠の押さえ部材。
【請求項5】
請求項に記載のボイド型の押さえ部材において、
上記横渡部は、上記ボイド型枠に食い込む突起部を備えている
ことを特徴とするボイド型枠の押さえ部材。
【請求項6】
上端筋及び下端筋が組まれることによって形成される隙間にボイド型枠を設置するコンクリートボイドスラブの構築方法において、
上記上端筋及び下端筋を格子状に組み、
上記上端筋及び下端筋によって形成される隙間にボイド型枠を設置し、
押さえ部材を上記上端筋及びボイド型枠の上に設置し、
さらに上記押さえ部材の上に補助筋を設置し、
上記補助筋をコンクリート型枠にアンカー止めする
ことを特徴とするコンクリートスラブの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下端筋間に軽量ボイド型枠を配置したコンクリートボイドスラブ、ボイド型枠の押さえ部材及びコンクリートボイドスラブの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコンクリートボイドスラブとして、鉄筋で組まれる格子内に軽量のボイド型枠を埋設したコンクリートボイドスラブが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1にはボイド型枠が浮き上がらないようにするための浮力押さえ部材が設けられている。この浮力押さえ部材は、鉄筋を梯子状に組んだもので、上端筋の上に設置され、番線で上端筋に固定されている。
【0004】
また、特許文献2のように、ボイド型枠の上面中央に溝が形成され、その溝に補助筋を押さえ付けるコンクリートボイドスラブが知られている。このコンクリートボイドスラブでは、補助筋によりボイド型枠の浮き上がりの防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−113357号
【特許文献2】特開2015−108273号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のような浮力押さえ部材を多数箇所で上端筋に対して固定するのは非常に面倒である。
【0007】
また、特許文献2の構造は十分有効なものであるが、例えば、コンクリート打設前に作業員が歩くなどによって何らかの外力がかかると、ボイド型枠がずれたり、回転したりするおそれがあり、更なる改良の余地がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ボイド型枠のずれを防ぎながら、その浮き上がりを確実に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため、この発明は、メインの鉄筋とは別にボイド型枠を押さえる押さえ部材を設けた。
【0010】
第1の発明では、複数の上部筋及び複数の下部筋が上下に間隔をもって組まれることによって形成される隙間にボイド型枠を設置するコンクリートボイドスラブを前提とする。
【0011】
そして、上記コンクリートボイドスラブは、
上記ボイド型枠の上に押さえ部材が設けられ、該押さえ部材が複数の上部筋に対してその上下を縫うように配置されている。
【0012】
上記の構成によると、押さえ部材を上部筋に対し、その上下を縫うように配置しているので、押さえ部材がしっかりと固定され、その結果として上部筋と押さえ部材による相乗効果により、ボイド型枠が確実に固定される。これは、押さえ部材のみがボイド型枠を直接押さえ付けている場合でも同様である。また、押さえ部材がボイド型枠を覆うので、その保護材の役割も果たす。さらに押さえ部材を上部筋に対して縫うように設けているので、押さえ部材を番線などで固定する手間が省ける。なお、上部筋は、後述の上端筋だけでなく、上側の補助筋を含み、下部筋は、下端筋だけでなく、下側の補助筋を含む。
【0013】
第2の発明では、複数の上端筋及び複数の下端筋が上下に間隔をもって組まれることによって形成される隙間にボイド型枠を設置するコンクリートボイドスラブを前提とする。
【0014】
そして、コンクリートボイドスラブは、
上記上端筋と上記下端筋によって形成される格子に上記ボイド型枠が設置され、
上記ボイド型枠の上には補助筋が設置されると共に、押さえ部材が上記上端筋と補助筋に対してその上下を縫うように配置されている。
【0015】
上記の構成によると、押さえ部材を補助筋及び上端筋に対し、その上下を縫うように配置しているので、押さえ部材がしっかりと固定され、その結果として補助筋と押さえ部材による相乗効果により、ボイド型枠が確実に固定される。また、押さえ部材がボイド型枠を覆うので、その保護材の役割も果たす。さらに押さえ部材を補助筋及び上端筋に対して縫うように設けているので、押さえ部材を番線などで固定する手間が省ける。
【0016】
第3の発明では、第2の発明において、
上記押さえ部材が、上記補助筋の下で且つ上記上端筋の上に配置されている。
【0017】
上記の構成によると、押さえ部材が補助筋を設けるときに補助筋によって押さえ付けられるので、押さえ部材自体も補助筋によって固定される。このため、押さえ部材の固定の手間を最小限とすることができる
【0018】
第4の発明では、第1〜第のいずれか1つに記載のコンクリートボイドスラブに使用するボイド型枠の押さえ部材であって、
上記ボイド型枠の配列方向に延びる一対の連結部と、該配列方向に交わる方向に延びる横渡部とを備えている。
【0019】
上記の構成によると、必要且つ最小限の構成であるため、押さえ部材の材料費が安くて済み、また、一対の連結部と横渡部とが一体であるので、その設置が容易である。
【0020】
の発明では、第の発明において、
上記横渡部は、上記ボイド型枠に食い込む突起部を備えている。
【0021】
上記の構成によると、ボイド型枠のコンクリート打設時の浮き上がり防止効果がより一層増す。
【0022】
の発明では、
上端筋及び下端筋が組まれることによって形成される隙間にボイド型枠を設置するコンクリートボイドスラブの構築方法を前提とし、
上記構築方法は、
上記上端筋及び下端筋を格子状に組み、
上記上端筋及び下端筋によって形成される隙間にボイド型枠を設置し、
押さえ部材を上記上端筋及びボイド型枠の上に設置し、
さらに上記押さえ部材の上に補助筋を設置し、
上記補助筋をコンクリート型枠にアンカー止めする構成とする。
【0023】
上記の構成によると、押さえ部材を補助筋及び上端筋に対し、その上下を縫うように配置しているので、押さえ部材がしっかりと固定され、その結果として補助筋と押さえ部材による相乗効果により、ボイド型枠が確実に固定される。また、押さえ部材がボイド型枠を覆うので、その保護材の役割も果たす。さらに押さえ部材を補助筋及び上端筋に対して縫うように設けているので、押さえ部材を番線などで固定する手間が省ける。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、ボイド型枠の上に、押さえ部材を複数の上部筋に対してその上下を縫うように配置したので、ボイド型枠のずれを防ぎながら、その浮き上がりを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリートボイドスラブが嵌め込まれた床型枠を示す斜視図である。
図2】(a)は(b)のIIa−IIa線断面図であり、(b)は図1の床型枠の一部を拡大して示す平面図である。
図3】軽量ボイド型枠の一例を示し、(a)は斜視図、(b)は正面図、(b)は側面図である。
図4】軽量ボイド型枠の他例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(b)は側面図である。
図5】軽量ボイド型枠のさらに他例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(b)は側面図である。
図6】軽量ボイド型枠のさらに他例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(b)は側面図である。
図7】軽量ボイド型枠のさらに他例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(b)は側面図である。
図8】軽量ボイド型枠のさらに他例を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(b)は側面図である。
図9】押さえ部材を示す正面図である。
図10】押さえ部材を示す底面図である。
図11】押さえ部材を示す側面図である。
図12】横渡部と連結部との溶接部を拡大して示す斜視図である。
図13】本発明の実施形態の変形例に係る押さえ部材を示す図11相当側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
−コンクリートボイドスラブの構成−
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態にかかるコンクリートボイドスラブは、床型枠1に、格子状の上端筋2と同じく格子状の下端筋3が上下に間隔をもって並行に設けられ、その上端筋2と下端筋3との間に軽量ボイド型枠40が配置されて、コンクリートCが打設されたコンクリートボイドスラブである。
【0028】
このコンクリートボイドスラブにおいて、図3図8に示すボイド型枠40a,40b,40c,40d,40e,40f(以下、総称符号を40とする)が、その格子状の上端筋2と格子状の下端筋3で形成された小空間S内に適宜に配置される。ボイド型枠40の材質は、従来と同様な軽量なものを適宜に使用すればよいが、例えば、発泡スチロールとする。
【0029】
このボイド型枠40は、例えば図3等に示すように、上下面41a,41bと側面42a,42b,42c,42dとを有し、四方からの側面視が全てほぼ八角形となっており、平面視(上から見ると)、長方形を呈する。
【0030】
上下面41a,41bは平面視で両端がカットされた楕円形で、各側面42a,42b,42c,42dとは上部傾斜面43a、下部傾斜面43bで連結されている。このように、四方からの側面視が全て八角形、平面視、両端がカットされた楕円形、上部傾斜面43a、下部傾斜面43bとなっていることによって、このボイド型枠40は、正面視、楕円や、辺と円弧からなるほぼフラットオーバル形と言うことができる。
【0031】
また、上下面41a,41bには、固定用の上部補助筋5又は下部補助筋6を受け入れる上溝44a及び下溝44bがそれぞれ形成されている。下部補助筋6を受け入れる下面41bの下溝44bは十字状となっている。その下面41bは、中央部が水平面となっているが、長手方向の上溝44aに沿って中央部が徐々に盛り上がって水平面を有さずに下部傾斜面43bに連結する曲面(縦断面下縁が曲線)とすることができる。このとき、その曲面はフラット斜面(縦断面下縁が直線)とすることもできる。なお、この上部補助筋5と上端筋2とを合わせて上部筋と言い、下側の下部補助筋6と下端筋3とを合わせて下部筋と言う。
【0032】
そして、本実施形態では、ボイド型枠40の上に押さえ部材10が設けられ、この押さえ部材10が複数の上端筋2と上部補助筋5とに対してその上下を縫うように配置されている。ここで、「縫うように配置」とは、本実施形態のように複数の上端筋2や上部補助筋5と上側からの接触及び下からの接触があるような配置を言う。図9図12に示すように、押さえ部材10は、ボイド型枠40の配列方向に延びる一対の連結部10bと、配列方向に交わる横渡部10aとを備えている。ここでは、配列方向は、ボイド型枠40の幅方向としている。また、横渡部10aは、一対の連結部10bに対して垂直に交わっているが、斜めに交わっていてもよい。横渡部10aは、ボイド型枠40の長手方向を上から押圧する部分で、長尺の連結部10bに対して溶接されている。一対の連結部10bもボイド型枠40の上面を押さえ付けている。横渡部10aは、連結部10bの下側に配置しても上側に配置してもよい。下側に来るようにすれば、スポット溶接10cに浮力が加わった場合に連結部10bでも荷重を支持できる点では有利である。例えば、ステンレス、アルミ、スチールなどの金属線材をスポット溶接した金網を切断して形成した押さえ部材10が使用される。押さえ部材10は、例えば、汎用の100cm×200cmの汎用の金網を5等分に切断したもので構成してもよい。そうすれば、必要且つ最小限の構成であるため、押さえ部材の材料費が安くて済み、また、横渡部10aと連結部10bとが一体であるので、その設置が容易である。
【0033】
軽量ボイド型枠40の長さL、同幅W、同高さH(図3等参照)は、上記小空間S内にちょうど収まる程度とする。そのため、配置する箇所の鉄筋量が多い場合は、その分、小空間Sも小さくなるため、その長さ、幅を小さくしたボイド型枠40を使用する。
【0034】
例えば、ボイド型枠40の大きさは、
図3に示すボイド型枠40a:正面左右長さL=380mm、平面幅W=230mm、高さH=245mm、
図4に示すボイド型枠40b:同L=340mm、同W=190mm、同H=150mm、
図5に示すボイド型枠40c:同L=300mm、同W=190mm、同H=150mm、
図6に示すボイド型枠40d:同L=380mm、同W=230mm、同H=150mm、
図7に示すボイド型枠40e:同L=300mm、同W=190mm、同H=245mm、
図8に示すボイド型枠40f:同L=340mm、同W=190mm、同H=245mm等となる。
【0035】
−コンクリートボイドスラブの施工方法−
つぎに、このボイド型枠40を使用したコンクリートボイドスラブの施工方法について説明する。
【0036】
まず、コンクリート型枠としての床型枠1に、下端筋3を格子状に配置するとともに、下端筋3間に十字状に下部補助筋6を配置する。そして、上端筋2を同じく格子状に配置する。このとき、スラブ応力が大きくなる箇所、例えば、スラブ端部(梁際)には、上端筋2の量を増やして配筋する。鉄筋(上下筋2、3)同士は所定の間隔を開ける必要があるため、上端筋2の量を増やした箇所(端部)だけ、ボイド型枠40の配置スペース(小空間S)が小さくなる(空間Sの幅が小さくなる)。
【0037】
つぎに、下部補助筋6の上にボイド型枠40を載せ、下溝44bに下部補助筋6が入り込むようにする。このとき、ボイド型枠40の下面は全周囲が中央部に向かって盛り上がる下部傾斜面43bとなっているため、軽く上から押せば(荷重をかければ)、その下部傾斜面43bに沿って下部補助筋6を下溝44bに誘導させることができる。
【0038】
そして、本発明の特徴として、押さえ部材10を上端筋2及びボイド型枠40の上に設置する。具体的には、横渡部10aが各ボイド型枠40の上に来るように、連結部10bを上端筋2に固定する。
【0039】
さらに、ボイド型枠40の上面の上溝44aに入り込むように押さえ部材10の上から上部補助筋5を配置し、その上部補助筋5をU字フック(図示せず)でもって床型枠1に固定する。このとき、押さえ部材10が、上部補助筋5の下で且つ上端筋2の上に配置されるようにしたので、押さえ部材10が上部補助筋5を設けるときに上部補助筋5によって押さえ付けられ、押さえ部材10自体も上部補助筋によって固定される。このため、押さえ部材10の固定の手間を最小限とすることができる。
【0040】
上端筋2、下端筋3、上部補助筋5、下部補助筋6は、針金などによって相互に結束してもよく、上記U字フック等の支持部材(図示せず)によって床型枠1に支持する(特許文献2図4等参照)。
【0041】
以上の配筋2、3、5及びボイド型枠40の配置が完了すれば、床型枠1上にコンクリートCを打設する。このとき、ボイド型枠40の下面周囲は外側から中央部に向かって上り下部傾斜面43bとなっているため、コンクリートCはそのボイド型枠40下面内に円滑に入り込み(回り込み)、打設不良が生じるおそれは少ない。
【0042】
このような配筋2、3、5、6、押さえ部材10及びボイド型枠40の配置とすれば、梁際だけ、コンクリート断面が増えるため、その打設コンクリート層(スラブ)の上下面をフラットに保ったまま、実質的にアーチ状のスラブを形成することができる。このアーチ状によって、スラブの振動性能、撓み性能が向上する。
【0043】
このように、コンクリートボイドスラブを挟み込む上端筋2及び下端筋3だけでは、ボイド型枠40を十分に押さえ付けられず、外力が加わるとボイド型枠40が移動してしまうような場合であっても、押さえ部材10を上端筋2及び上部補助筋5に対し、その上下を縫うように配置しているので、押さえ部材10がしっかりと固定され、その結果として上端筋2及び上部補助筋5と押さえ部材10による相乗効果により、ボイド型枠40が確実に固定される。また、押さえ部材10がボイド型枠40を覆うので、その保護材の役割も果たす。さらに押さえ部材10を上端筋2に対して縫うように設けているので、押さえ部材10を番線などで固定する手間が省ける。
【0044】
−実施形態の変形例−
図13は本発明の実施形態の変形例に係る押さえ部材110を示し、横渡部10aの形状が異なる点で上記実施形態と異なる。なお、本変形例では、図1図12と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0045】
上記実施形態では、上部補助筋5をボイド型枠40の上面に固定する前に、押さえ部材10をボイド型枠40の上から配置し、その後、上部補助筋5を固定することで、上端筋2と上部補助筋5とで押さえ部材10を編み込むようにしているが、上部補助筋5を設けた後に、押さえ部材10を上から配置し、その押さえ部材10を針金等にて上部補助筋5や上端筋2に固定するようにしてもよい。
【0046】
このような場合、特に押さえ部材10を上記実施形態の形状にするのではなく、図13に示す押さえ部材110のように横渡部10aの先端を折り曲げて突起部10dとしてもよい。このように構成し、突起部10dをボイド型枠40の上面に食い込ませることで、ボイド型枠40のコンクリート打設時の浮き上がり防止効果をより一層向上させることができる。
【0047】
このように押さえ部材10を上端筋2の上から設置することで、上端筋2と押さえ部材10による相乗効果により、ボイド型枠40が確実に固定される。また、押さえ部材10がボイド型枠40を覆うので、その保護材の役割も果たす。押さえ部材10は、番線などで上端筋2に固定しなければならないが、上端筋2の上から被せるように設けるので、設置自体は容易である。
【0048】
なお、本変形例のような押さえ部材110を上記実施形態に適用してもよく、その場合は、上部補助筋5を設けた後、最後に突起部10dをボイド型枠40の上面に差し込むようにすればよい。上部補助筋5を設ける前に差し込んでおくと、上部補助筋5で押さえ付けるときに突起部10dが抜けるおそれがあるためである。
【0049】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0050】
すなわち、上記実施形態では、上端筋2、下端筋3の配置、本数、上部補助筋5、下部補助筋6の配置、数、ボイド型枠40の大きさ、形状等の各一例を示したが、本発明は、1方向コンクリートスラブ及び2方向コンクリートスラブのどちらにおいても採用できることは勿論である。
【0051】
上記実施形態では、配列方向をボイド型枠40の幅方向としているが、ボイド型枠40の長手方向としてもよい。その場合には、ボイド型枠40の長手方向に一対の連結部10bが延び、幅方向に横渡部10aが伸びるように押さえ部材10が設けられる。
【0052】
上記実施形態では、押さえ部材を横渡部と連結部とが一体となった形状としているが、板状、棒状、ベルト状等、ボイド型枠の浮き上がり防止が可能であればどのような形状であってもよい。例えば、横渡部を設けずに一対の連結部のみで構成してもよい。また、連結部は、一対としているが、場合によっては、1本や3本以上としてもよい。
【0053】
また上記実施形態では、押さえ部材10は、金網の一部で構成したが、材質も針金などではなく、合成樹脂製でもよい。合成樹脂であれば横渡部と連結部とを一体成形でき、コンクリートとの相性もよいものを製造できる。
【0054】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0055】
1 床型枠(コンクリート型枠)
2 上端筋(上部筋)
3 下端筋(下部筋)
5 上部補助筋(上部筋)
6 下部補助筋(下部筋)
10 押さえ部材
10a 横渡部
10b 連結部
10c スポット溶接
10d 突起部
40,40a,40b,40c,40d,40e,40f ボイド型枠
41a,41b 上下面
42a,42b,42c,42d 側面
43a 上部傾斜面
43b 下部傾斜面
44a 上溝
44b 下溝
110 押さえ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13