特許第6351688号(P6351688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351688
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】試験用小魚の飼育装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/00 20170101AFI20180625BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A01K63/00 Z
   A01K63/04 Z
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-215295(P2016-215295)
(22)【出願日】2016年11月2日
(65)【公開番号】特開2017-86070(P2017-86070A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-217174(P2015-217174)
(32)【優先日】2015年11月5日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】392035189
【氏名又は名称】橋本電子工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 利男
(72)【発明者】
【氏名】小岩 純子
(72)【発明者】
【氏名】小幡 勝
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正敏
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−44979(JP,A)
【文献】 特開昭53−127200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00 − 63/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向へ配列されてそれぞれ試験用小魚を収容する多数の引き出し状水槽と、
前記各引き出し状水槽の上端開口を個別に覆う蓋カバーと、
前記各引き出し状水槽を個別に前方へ引き出し可能に支持し、かつ、前記各引き出し状水槽を垂直方向へ多段に支持するフレームと、
前記各引き出し状水槽へ個別に水を供給する給水ユニットと、
を備え、
前記引き出し状水槽の少なくとも両壁部は、透明樹脂により形成され、かつ、
前記引き出し状水槽の奥壁部は、上方から落下する水を前記引き出し状水槽内に案内するために斜設された水受け部を有することを特徴とする試験用小魚の飼育装置。
【請求項2】
前記給水機構は、同一段の前記各引き出し状水槽の前記水受け部の上方に位置して略水平方向へ延在する分配用水槽を有し、
前記分配用水槽は、同一段の前記各引き出し状水槽の前記水受け部の直上に形成されて前記各水受け部に水を滴下させる多数の水落下用孔部を有する請求項1記載の試験用小魚の飼養装置。
【請求項3】
前記水落下用孔部は、前記分配用水槽の底面から所定高さだけ立設された水落下筒部に設けられている請求項2記載の試験用小魚の飼養装置。
【請求項4】
前記分配用水槽は、前記分配用水槽内の水位を前記水落下筒部の上端よりも所定レベルだけ高く維持するための溢流部を有し、
所定階の前記各引き出し状水槽に水を供給するための第1の前記
配用水槽に設けられた前記皿溢流部は、前記所定階の直下に位置
する前記各引き出し状水槽に水を供給するための第2の前記分配用
水槽に水を溢流させる請求項3記載の試験用小魚の飼養装置。
【請求項5】
前記引き出し状水槽の前記壁部は、前記引き出し状水槽の水位を所定レベルに維持するための水槽溢流部を有する請求項1記載の試験用小魚の飼養装置。
【請求項6】
前記水槽溢流部は、前記引き出し状水槽の前壁部に突設されている請求項5記載の試験用小魚の飼養装置。
【請求項7】
それぞれ前後方向へ延在する多数のポケットが横方向及び高さ方向へ配置されるフレームと、
前後方向へスライド可能に前記各ポケットに個別に収容される試験用小魚収容用の多数の引き出し状水槽と、
前記フレームに隣接配置されて前記各引き出し状水槽へ個別に水を供給する給水ユニットとをを備え、
前記引き出し状水槽はそれぞれ、前記給水ユニットから水を受け取る水受け部と、前記引き出し状水槽内の水を外部にオーバーフローさせる水槽溢流部とを有し、
前記各水受け部は、前記引き出し状水槽の奥部から前記給水ユニットへ向けて突設されることを特徴とする試験用小魚の飼養装置。
【請求項8】
前記給水機構は、同一段の前記各引き出し状水槽の前記水受け部の上方に位置して略水平方向へ延在する分配用水槽を有し、
前記分配用水槽は、同一段の前記各引き出し状水槽の前記水受け部の直上に形成されて前記各水受け部に水を滴下させる多数の水落下用孔部を有する請求項7記載の試験用小魚の飼養装置。
【請求項9】
前記水落下用孔部は、前記分配用水槽の底面から所定高さだけ立設された水落下筒部に設けられている請求項8記載の試験用小魚の飼養装置。
【請求項10】
前記分配用水槽は、前記分配用水槽内の水位を前記水落下筒部の上端よりも所定レベルだけ高く飼養するための皿溢流部を有し、
所定階の前記各引き出し状水槽に水を供給するための第1の前記分配用水槽に設けられた前記皿溢流部は、前記所定階の直下に位置する前記各引き出し状水槽に水を供給するための第2の前記分配用水槽に水を溢流させる請求項9記載の試験用小魚の飼養装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験用小魚の飼育装置に関し、特に試験用のゼブラフィッシュを管理する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生育が早く小さいゼブラフィッシュは、薬剤効果の判定や遺伝子処理効果の判定に好適である。たとえば薬剤効果の判定において試験条件がそれぞれ変えられた100を超える非常に多数の個体を調べる必要がある。遺伝子処理においても、産生された非常に多数の個体から適切な特徴を持つ個体を選別する必要がある。多くの場合、この選別は光学的に実施される。
【0003】
このため、付番された多数のゼブラフィッシュを個別に飼養することが必要になる。これは、多数の水槽を各ゼブラフィッシュごとに個別に準備する必要があることを意味する。しかしながら、ゼブラフィッシュを飼養するには各水槽に水を循環させ、かつ各水槽に定期的に餌を与えねばならない。結局、百を超える水槽にゼブラフィッシュを個別に飼養することは広いスペースを必要とするうえ、手間がかかった。
【0004】
特許文献1は、それぞれゼブラフィッシュが収容された多数の水室が集合化された集合水槽を提案する。盥状に形成されたこの集合水槽をデバイダと呼ばれる隔壁により行列状に区画することにより、多数の水室が集合水槽内に形成される。ゼブラフィッシュの飛び出しを防ぐために、これらの水槽は列ごとに長尺の蓋板により覆われる。デバイダは水が流通可能な孔をもつ。給水装置が共通水槽に供給する水は各水槽を通って、外部に排出される。
【0005】
しかしながら、この集合水槽方式のゼブラフィッシュ飼養装置は、多数のゼブラフィッシュを狭小なスペースで個別飼養できるものの解決されるべき次の問題をもつことがわかった。第1の問題は、水が隔壁を貫通して各水室を順次流れるため、各水室内のゼブラフィッシュを異なる条件で飼養できないことである。たとえば、各ゼブラフィッシュへの餌量や投与薬剤量を変更しても、それらは流れる水を通じて隣接する水室に移動するため、各水室に与えられる条件は共通化されてしまう。
【0006】
第2の問題は、この種のゼブラフィッシュ個別飼養装置では、飼養中の各ゼブラフィッシュの変化を頻繁に観察する必要がある。しかし、各水室が行列状に配列された特許文献1の装置では、各水室内のゼブラフィッシュを上方からしか観察することができない。ゼブラフィッシュの上方からの投影面積は非常に小さいため、ゼブラフィッシュの変化を上方からだけの観察では判別が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2013 /0206077A1
【発明の概要】
【0008】
本発明の一つの目的は、多数の試験用小魚を異なる条件で飼養可能な集合型の試験用小魚の飼育装置を提供することである。本発明のもう一つの目的は、狭小スペースで多数の試験用小魚を個別飼養できるにもかかわらず、各試験用小魚の観察や判定が容易な集合型の試験用小魚の飼育装置を提供することである。
【0009】
本発明の装置の一つの様相によれば、試験用小魚をそれぞれ収容する多数の水槽はそれぞれ引き出し形状に形成される。各引き出し状水槽を支持するフレームは少なくとも左右方向へ配列された所定数の角形ポケットをもち、各引き出し状水槽は各角形ポケットに個別に前後方向へスライド可能に収納される。したがって、すべての引き出し状水槽を、必要に応じてフレームの角形ポケットから個別に引き出し、その後、フレームの角形ポケットへ再び押し込まれる。
【0010】
引き出し状水槽の少なくとも側壁部は透明樹脂により形成されているため、各引き出し状水槽が左右方向へ略隣接した状態で配列されているにもかかわらず、フレームから引き出された引き出し状水槽の側面から内部のゼブラフィッシュを観察して判定することができる。言い換えれば、ゼブラフィッシュの視認性を損なうことなく、個別飼養をコンパクトな空間で実現することができる。
【0011】
各引き出し状水槽に個別に被せられた蓋カバーにより、各引き出し状水槽は個別に覆われるため、一つの引き出し状水槽の蓋板を外した時、ゼブラフィッシュが隣の引き出し状水槽に飛び込むのを防止することができる。
【0012】
給水機構は、各引き出し状水槽へ個別に水を供給するため、一つの引き出し状水槽内の水が隣の引き出し状水槽に拡散することがない。その結果、ある引き出し状水槽内の水に混入する餌や薬剤が隣の引き出し状水槽に拡散することがない。したがって、各引き出し状水槽内のゼブラフィッシュに異なる飼養条件を与えることができる。以上に説明した各効果により、多数の試験用小魚をコンパクトかつ使い勝手良く個別飼養することが可能となった。
【0013】
好適な一つの態様によれば、フレームの角形ポケットは、左右方向とともに垂直方向へも配列される。言い換えれば、個別に前後方向へスライド可能な多数の引き出し状水槽は、横方向及び垂直方向へ配列される。これにより、観察性を劣化させることなく多数の引き出し状水槽を狭小な空間に集積することが可能となった。なお、角形ポケットは一体のフレーム内に垂直方向へ多段に形成されることができる他、左右方向へ配列された複数の角形ポケットをもつ単段フレームを垂直方向へ所定段数だけ積み重ねるようにしてもよい。すなわち、フレーム及び各引き出し状水槽は箪笥状に形成される。
【0014】
好適なもう一つの態様によれば、引き出し状水槽の奥壁部は、上方から落下する水を水槽内へ案内するために斜設された水受け部を有する。これにより、各引き出し状水槽への所定流量の水の個別供給を簡素に実行することができる。
【0015】
好適なもう一つの態様によれば、同一段の各引き出し状水槽の水受け部の上方に水落下用の分配用水槽が配置される。水は各分配用水槽に設けられた水落下用孔部から各水受け部へ個別に落下する。その結果、給水構造を複雑化することなく各引き出し状水槽への水の供給量を等しくすることができる。
【0016】
好適なもう一つの態様によれば、この水落下用孔部は、分配用水槽の底面からほぼ等しい高さをもつ水落下筒部により構成される。このようにすれば、各水落下用孔部から各水受け部への落下水量を簡素な機構で一定化することができる。言い換えれば、分配用水槽には水落下筒部の高さに相当する水量が常に保持される。これは、分配用水槽内における水平方向への水の移動抵抗は非常に小さくなり、分配用水槽内の水面のレベルがばらつくことがないためである。
【0017】
好適なもう一つの態様によれば、分配用水槽内は水落下筒部の上端よりも所定レベルだけ溢流部を有する。これにより、簡素な機構で各引き出し状水槽への個別の水供給量をほぼ一定とすることができる。
【0018】
好適なもう一つの態様によれば、上方の分配用水槽の溢流部から溢流した水は直下の分配用水槽に落下する。これにより、多段に配置された引き出し状水槽への略定量の水の供給を簡素な機構で実現することができる。
【0019】
好適なもう一つの態様によれば、引き出し状水槽の好適には前壁部は、引き出し状水槽の水位を所定レベルに維持するための水槽溢流部を有する。これにより、簡素な機構で多数の引き出し状水槽の水位を一定とすることができる。さらに、引き出し状水槽に奧から前への水の流れを形成することができるため、引き出し状水槽内のゴミを外部に流出させることができる。当然、水槽溢流部は水槽内のゼブラフィッシュが溢流しないサイズに形成される。
【0020】
好適なもう一つの態様によれば、フレームは積層可能な複数のフレームユニットからなり、各フレームユニットは一段分の引き出し状水槽を収容する。給水ユニットも積層可能な複数の分配用水槽からなる。一つの分配用水槽は、一段分の引き出し状水槽への給水を行う。フレームユニットおよび分配用水槽は上下方向へ分解可能に連結されている。これにより、引き出し状水槽数の増減および各部の清掃が容易となる。
【0021】
好適なもう一つの態様によれば、分配用水槽の底板から複数の水落下筒部が垂下し、複数の給水ロッドが各水落下筒部に個別に嵌められている。分配用水槽の水は水落下筒部と給水ロッドとの間の隙間を通じて、引き出し状水槽に供給される。給水ロッドの上下移動により、水落下筒部の詰まりを防止することができる。
【0022】
好適なもう一つの態様によれば、一つの分配用水槽内の各給水ロッドは、共通の給水ロッド保持板に連結されている。これにより、この給水ロッド保持板を上下することにより、各水落下筒部を容易に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1はこの試験用小魚の飼育装置の全体構成を示す斜視図である。
図2図2はフレーム及び給水ユニットを示す斜視図である。
図3図3は一つの引き出し状水槽を示す斜視図である。
図4図4図1に示される試験用小魚の飼育装置の正面図である。
図5図5はこの装置の透視斜視図である。
図6図6はこの装置の縦断面図である。
図7図7は第2実施例の飼育ユニットを示す斜視図である。
図8図8は第2実施例の飼育ユニットを示す斜視図である。
図9図9は第2実施例の飼育ユニットを示す斜視図である。
図10図10は3段の飼育ユニットを示す斜視図である。
図11図11は3段の飼育ユニットを示す斜視図である。
図12図12は3段の飼育ユニットを示す斜視図である。
図13図13は分配用水槽を示す斜視図である。
図14図14は分配用水槽を示す斜視図である。
図15図15は給水ロッド保持板と連結される給水ロッドを示す断面図である。
図16図16は分配用水槽内に収容された給水ロッド保持板を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1実施例
本発明の試験用小魚の飼育装置の第1の実施態様が図面を参照して説明される。試験用小魚としてはゼブラフィッシュが採用される。ただし、本発明はこの実施態様に限定解釈されるべきではなく、本発明の主題を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0025】
図1はこの試験用小魚の飼育装置の全体構成を示す斜視図である。この飼育装置は、15個の引き出し状水槽1と、引き出し状水槽1を収容する角箱状のフレーム2と、フレーム2の奧側に隣接配置された給水ユニット5とを有している。各引き出し状水槽1にはそれぞれ一尾のゼブラフィッシュと一定量の水とが収容されている。各引き出し状水槽1内の清浄性を維持するために角箱状水槽内の水は定期的に交換される。
【0026】
図2はフレーム2及び給水ユニット5を示す斜視図である。フレーム2は横5列縦3段に配列された合計15個の角形ポケット20を有する。図1に示されるように、各角形ポケット20はそれぞれ一個の引き出し状水槽1を収容している。各引き出し状水槽1は、前後方向へスライド可能に角形ポケット20に支持されている(図1参照)。
【0027】
図3は一つの引き出し状水槽1を示す斜視図である。引き出し状水槽1は長方形の底部の周囲に設けられた前壁部11、一対の側壁部12、13及び奧壁部14を有している。引き出し状水槽1の上端開口は蓋カバー4により覆われている。
【0028】
引き出し状水槽1は、奧壁部14の上部から奧上方向へ斜設された水受け部15を有している。水受け部15に落下した水滴は水受け部15の斜面を流れて引き出し状水槽1内に導かれる。
【0029】
さらに、引き出し状水槽1は、前壁部11の上部から前上方向へ斜設された餌投入部16を有している。 餌投入部16に落下した餌又は餌入り水は餌投入部16の斜面を流れて引き出し状水槽1内に導かれる。
【0030】
さらに、引き出し状水槽1は、前壁部11の上部に設けられた2つの細孔18と、前壁部11から前下方向へ斜設された溢流水案内プレート19とからなる水槽溢流部17を有している。2つの細孔18の直下に設けられた 溢流水案内プレート19は溢流水を前壁部11から離すことにより、溢流水が下段の細孔18を通じて下段の引き出し状水槽1へ再流入するのを防止している。
【0031】
給水機構3が図4乃至図6を参照して説明される。図4図1に示される試験用小魚の飼育装置の正面図であり、図5はこの装置の透視斜視図であり、図6はこの装置の縦断面図である。この給水機構3は、給水ユニット5と、給水ユニット5の上方に配設された給水パイプ51と、給水パイプ51から下方へ分岐する2本の垂下パイプ52にそれぞれ設けられた2つの電磁式又は手動式の開閉弁53とからなる。2つの開閉弁53を定期的に一定時間だけ開くことにより、所定量の水が垂下パイプ52から上段の分配用水槽6に定期的に所定量だけ落下する。
【0032】
略直方体形状の給水ユニット5は、引き出し状水槽1を収容するためのフレーム2の奧壁部に固定されている。給水ユニット5は、垂直方向へ配列された3つの分配用水槽6乃至8を有している。すなわち、給水ユニット5は、上段の引き出し状水槽1に給水するための分配用水槽6と、中段の引き出し状水槽1に給水するための分配用水槽7と、下段の引き出し状水槽1に給水するための分配用水槽8とを有している。各分配用水槽6乃至8は支持プレートにより一体化されるとともに、この支持プレートを通じてフレーム2の奧壁部に固定されている。
【0033】
長箱状に形成された分配用水槽6乃至8はそれぞれ、横方向へ延在している。これより、分配用水槽6乃至8はそれぞれ、横方向へ配列された各段の5つの引き出し状水槽1に給水可能となっている。上段の分配用水槽6は中段の分配用水槽7の直上に配置され、中段の分配用水槽7は下段の分配用水槽8の直上に配置されている。
【0034】
分配用水槽6乃至8の構造が以下に説明される。分配用水槽6乃至8は実質的に同一構造をもつため、分配用水槽6だけが以下において説明される。分配用水槽6は、分配用水槽6の底部を貫通してそれぞれ垂下する筒部からなる一つの 溢流部9及び5つの水落下筒部10を有している。水落下筒部10は、水が落下するための水落下用孔部を有している。15個の水落下筒部10が15個の水受け部15の直上に個別に配置されている。
【0035】
溢流部9の上端は分配用水槽6の底面から所定の高さまで立設されており、水落下筒部10の上端も分配用水槽6の底面からわずかに上方へ突出している。これにより、分配用水槽6の最低水位が規定され、分配用水槽6内の水の水平方向への流動性が確保される。その結果、分配用水槽6内の各部の水位は常に一定となり、分配用水槽6内の5つの水落下筒部10の高さが等しければ、分配用水槽6から各水落下筒部10内へ溢流する水量はほぼ等しくなる。
【0036】
筒状の溢流部9の上端は水落下筒部10の上端よりも高く形成され、 溢流部9の口径は水落下筒部10の口径よりも遙かに大きく形成されている。したがって、開閉弁53が所定時間だけ開かれると、垂下パイプ52から落下した水は上段の分配用水槽6に溢流部9の高さまで貯留された後、分配用水槽6の溢流部9を通じて中段の分配用水槽7に落下する。次に、水は中段の分配用水槽7に溢流部9の高さまで貯留される。その後、中段の分配用水槽7の溢流部9を通じて下段の分配用水槽8に落下する。次に、水は下段の分配用水槽8に溢流部9の高さまで貯留され、その後、下段の分配用水槽8の溢流部9を通じて図略の水回収装置に落下する。
【0037】
溢流部9の口径が大きいため、上段の分配用水槽6への水の落下が開始されてから下段の分配用水槽8の溢流部9が水の溢流を開始するまでに要する水落下時間は短い。このため、各分配用水槽6乃至8にそれぞれ所定量の水を貯留するのに要する時間は短く、この期間内における各水落下筒部10を通じての各引き出し状水槽1への水の供給量の差は小さい。
【0038】
溢流部9の高さまで貯留された各分配用水槽6乃至8の水は、合計15個の水落下筒部10を通じて各引き出し状水槽1に個別に落下する。すべての水落下筒部10の口径は等しいため、ほぼ等量の水が各引き出し状水槽1に供給される。この水の供給は分配用水槽6乃至8内の水位が水落下筒部10の高さに達した時、終了する。
【0039】
各引き出し状水槽1の細孔18から溢れた水は溢流水案内プレート19を経て下方へ落下する。したがって、各引き出し状水槽1は細孔18の下端により規定される水位を維持する。各引き出し状水槽1は餌投入部16を個別に有するため、各引き出し状水槽1内のゼブラフィッシュに与えられる餌量は個別に制御されることができる。
【0040】
この装置によれば、合計15尾のゼブラフィッシュが各引き出し状水槽1内に所定期間だけ個別に飼養される。引き出し状水槽1を引き出すことにより、各ゼブラフィッシュは上方及び側方から個別に観察乃至撮影される。
【0041】
変形態様が以下に説明される。蓋カバー4はたとえば前後方向にスライド可能に引き出し状水槽1の上面に保持されることができる。引き出し状水槽1の少なくとも壁部は、アクリル樹脂の透明樹脂により形成されている。引き出し状水槽1の少なくとも内面に抗菌効果を有する光透過性の被膜をコーティングしてもよい。
【0042】
引き出し状水槽1は隔壁により奥行き方向へ複数の小室に区画されることができる。ゼブラフィッシュは各小室に個別に収容される。各小室への給水はたとえば蓋カバーに開けられた孔を通じて行うことができる。各小室からの溢流水は引き出し状水槽1の側壁の上部から外部へ排出されることができる。溢流は、前方へ引き出された引き出し状水槽1に被せられた蓋カバー4を外すか又は蓋カバー4に設けられた孔から実施されることができる。ゼブラフィッシュが隣接する小室に飛び込むのを防止するため、蓋カバーは各小室ごとに分割されることが重要である。
【0043】
第2実施例
本発明の試験用小魚の飼育装置の第2の実施態様が図面を参照して説明される。この実施態様の装置は幾つかの工夫点を除いて既述された第1実施例の装置と本質的に同じである。最も大きな相違は、この実施態様の飼育装置は、複数の飼育ユニットが高さ方向へ積み重ねられて構成されている点である。その結果、積み重ね段数の変更により、設置に必要な水平投影面積の増加なし飼育数の適切な変更が可能となる。
【0044】
1段の飼育ユニット100が図7-図9を参照して説明される。この飼育ユニット100は、5個の引き出し状水槽1と、それらを横一列に収容する1段のフレームユニット22と、フレームユニット22に隣接して配置された1段の分配用水槽25とからなる。引き出し状水槽1は第一実施例の引き出し状水槽1と本質的に同じである。同様に、分配用水槽25も第一実施例の分配用水槽と本質的に同じである。
【0045】
フレームユニット22は、6枚の側板221-226と、各1枚の底板227および天板228からなる。各側板は互いに所定間隔を隔てて底板上に立てられており、天板を支えている。これにより、フレームユニット22は5個の引き出し状水槽1を個別に収容するための5個のスペースをもつ。6枚の側板221-226のうち、左右両端の側板である外側板221、226は、分配用水槽25を支持するために後方へ突出している。
【0046】
さらに、6枚の側板221-226はそれぞれ、溢流水をガイドするために、底板および天板よりも前方に突出している。これら側板221-226の前方突出部分には、溢流水を案内するためのスリット220が斜設されている。各引き出し状水槽1の細孔18から溢れた水は溢流水案内プレート19によりスリット220の上方へ落下した後、スリット220に沿って側板221-226の前端に達した後、落下する。落下した溢流水は図略の排水装置に誘導される。これにより、所定の引き出し状水槽1がフレームユニット22に着脱される時、上方の引き出し状水槽1の溢流水がこの所定の引き出し状水槽1内に流入することが防止される。各引き出し状水槽1は溢流用の細孔18の下端により規定される水位を維持する。各引き出し状水槽1は孔部からなる餌投入部16を個別に有する。
【0047】
分配用水槽25はフレームユニット22の奥側の側面に隣接して配置されている。上端開口の長い角箱からなる分配用水槽25は、フレームユニット22の一対の外側板221および226に上下スライド可能に支持されている。分配用水槽25の左右両端は下方に突出する突起250を有し、突起250は外側板221および226の上端から上方へ突出する突起252に嵌合している。これにより、分配用水槽25は、フレームユニット22に対して上方へのみスライド可能に支持される。
【0048】
給水のために、分配用水槽25はフレームユニット22に対して所定の高さに保持される。図7は分配用水槽25をフレームユニット22に固定する前の状態を斜め上から見下ろした斜視図である。図8は分配用水槽25をフレームユニット22に固定した後の状態を斜め上から見下ろした斜視図である。図9は1段の飼育ユニット100を斜め下から見上げた斜視図である。
【0049】
3段の飼育ユニット100の積層状態が図10および図11を参照して説明される。図10において、1段の飼育ユニット100が、既に積み重ねられた2段の飼育ユニット100の上方に位置している。図11において、3段の飼育ユニット100が積層されている。フレームユニット22の側壁222-225は、フレームユニット22の底板227から下方に突出する下方突起229を有している。これらの下方突起229は、直下のフレームユニット22の天板228に設けられたスリット230を通じて直下のフレームユニット22の側壁222-225の上端に載置されている。同様に、フレームユニット22の側壁221および226は直下のフレームユニット22の側壁221および226の上端に直接に載置されている。
【0050】
分配用水槽25が図12-図14を参照して説明される。図12は3段重ねの飼育ユニット10を後下方から見上げた状態を示す斜視図である。3段に積み重ねられた分配用水槽25は、本発明で言う給水ユニットを構成している。上端が開口する長尺角箱状の分配用水槽25は、フレームユニット22の後部に上下スライド可能に支持されている。分配用水槽25の底板251は、フレームユニット22に収容された引き出し状水槽1よりも高く位置している。
【0051】
分配用水槽25の詳細が図13および図14を参照して説明される。図13は分配用水槽25を斜め上方から見下ろした斜視図であり、図14は分配用水槽25を斜め下方から見上げた斜視図である。分配用水槽25の底板251は、分配用水槽25の底部を貫通する2つの 溢流用の孔部90を有している。一つの溢流用の筒部91が2つの孔部90の一つから垂下している。残る一つの孔部90は図略のゴム栓により封止されている。
【0052】
図12に示されるように、第1段および第3段の分配用水槽25の溢流用の筒部91は、第2段の分配用水槽25の溢流用の筒部91と反対位置に設けられている。これにより、分配用水槽25の水位のばらつきを低減することができる。筒部91は、第1実施例で言う溢流部に相当する。最下段である第1段の分配用水槽25の筒部91から落下する水は、図略の排水装置に排水される。最上段である第3段の分配用水槽25は、図略の給水装置から給水される。
【0053】
さらに、分配用水槽25の底板251には、5つの水落下筒部10が個別に圧入されている5個の孔を有する。各水落下筒部10はそれぞれ、引き出し状水槽1の5つの水受け部15の直上に個別に位置している。これにより、分配用水槽25から各引き出し状水槽1へ供給される水量を適切に調整することができる。好適には、各引き出し状水槽1へは等量の水が供給される。さらに、引き出し状水槽1がフレームユニット22に装着されていない場合には、水落下筒部10から落下した水は直下の分配用水槽25により回収される。
【0054】
図15は水落下筒部10を示す拡大断面図である。給水ロッド101が水落下筒部10を貫通している。水は水落下筒部10と給水ロッド101との間の隙間を通じて落下する。給水ロッド101の直径を変更することにより、あるいは、分配用水槽25の水位を調節することにより、落下する水量が調節される。給水ロッド101の頂部は、横方向へ突出する係合部102に固定されている。この係合部102は、分配用水槽25内に収容された給水ロッド保持板200の角孔部201に遊嵌されている。
【0055】
図16は、分配用水槽25の断面図である。ただし、溢流用の孔部90、筒部91およびゴム栓の図示は省略されている。給水ロッド保持板200は分配用水槽25の長手方向へ延在している。給水ロッド保持板200は5つの角孔部201をもつ。2つの取手部202が給水ロッド保持板200の両端に個別に設けられている。これらの取手部202は、分配用水槽25の側壁上部に設けられたガイド溝253に上下スライド可能に嵌められている。その結果、給水ロッド保持板200を上下にスライドさせることにより、各給水ロッド101は各水落下筒部10内を個別に上下することができる。これにより、小さい異物等による水落下筒部10内の水詰まりを防止することができる。さらに、給水ロッド保持板200を分配用水槽25から容易に取り外すことができるので、給水ロッド保持板200および給水ロッド101の清掃が容易となる。他の構造および機能は第1実施例と本質的に同じである。
【0056】
本発明の飼養装置の効果が以下に説明される。まず、多数のゼブラフィッシュをコンパクトな空間内に飼養しつつ、すべてのゼブラフィッシュの側面からの観察、判定が可能となる。これはこの種の装置において、非常に重要な点である。次に、各引き出し状水槽1は別々の蓋カバーにより覆われるため、蓋カバーを取り外した時でもゼブラフィッシュが隣のゼブラフィッシュ収容空間に飛び込んで、試験結果を無効化することがない。
【0057】
この実施例によれば、横方向及び垂直方向へ配列された多数の引き出し状水槽1へのそれぞれ独立の定量給水を簡素な機構で実現することができる。さらに、各引き出し状水槽1に別々に投与した餌や薬剤が隣の引き出し状水槽1に拡散することを防止することができる。
【0058】
上記実施例において、各引き出し状水槽1の操作は手動にて行われる。しかし、この装置が大規模化される場合、各引き出し状水槽1の引き出し、引き出された引き出し状水槽1内のゼブラフィッシュの撮像及び画像判定、及び、判定結果に基づく引き出し状水槽1の番号の記憶乃至表示を自動的に実施してもよいことはもちろんである。さらに、判定結果に基づいて決定された引き出し状水槽1の引き出し動作を自動化することも可能である。
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