【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の特徴を有する真空ポンプによって、及び請求項11に記載の特徴を有する真空ポンプによって解決される。
【0007】
本発明に係る真空ポンプ、特にターボ分子ポンプは、
外部の装置、特にレシーバーの開口部と接続可能な少なくとも一つの開口部を有するハウジングを有し、当該開口部は、少なくとも部分的に取付平面を定義する取付部分に取り囲まれており、当該取付部分は好ましくはシリンダー形状に形成されており、及び、
ハウジングを外部の装置に対してストレスフリーに取り付けるための独立した取付要素を有し、その際、取付要素は、外部の装置と連結可能であり、かつ取付要素と取付部分の間の力結合的な接続を形成するための固定手段を有する。代替として、取付要素を、取付部分と連結可能に形成し、取付要素と外部の装置の間の力結合的な接続の形成のための固定手段を設けることが可能である。
【0008】
上述した公差の補償は、力結合的な接続によって巧みに行われるので、ポンプはストレスフリーに真空システム内に組み入れられることが可能である。
【0009】
真空ポンプのハウジングの開口部は、好ましくはインレットである。これを介して、真空引きすべき領域に存在するガスが、真空ポンプのハウジング内部へとポンピングされる。開口部は、真空ポンプのアウトレットであることも可能である。これを介して真空引きすべきガスがハウジングから排出される。
【0010】
外部の装置は、好ましくはレシーバー、つまりポンプインレットの開口部と接続されている真空引きすべき領域である。レシーバーは例えば、科学的な機器(例えば質量分析計又は電子顕微鏡)であることが可能である。外部の装置は、予真空ポンプ、例えばメンブランポンプであることも可能である。これは、ポンプインレットの開口部と接続されているので、発明に係る真空ポンプは、ポンピングすべきガスを、大気圧に対して排出する必要が無い。
【0011】
好ましくはシリンダー形状に形成された取付部分は、フランジ、特に真空フランジであることが可能である。取付部分は、例えば、楕円形状、長方形状、四角形状、又は六角形状の中空プロフィル(又は中空輪郭、独語:Hohlprofil)として形成されていることが可能である。
【0012】
ストレスフリーな取付の為に独立して設けられる取付要素は、好ましくは取付部分の形状(独語:Geometrie)に合わせられている。よってつまり基本的に、取付部分と同じ形状を有している。特に、取付要素はリング形状であり、その際、取付部分はシリンダー形状に形成されている。特に有利な実施形においては、取付要素はカバーリングであるか、又はカバースリーブである。これは、ハウジングの取付部分上に、又は外部の装置の相応する取付部分上に差し込まれる、又はずらし込まれることが可能である。
【0013】
取付要素は、好ましくは金属から成り、そして好ましくは一部材式に形成されている。
【0014】
取付要素と取付部分の間の力結合的な接続の形成の為の取付要素の固定手段は、好ましくは、外部の装置の方向に拡張した内側面を有する。これは、取付部分の外側面と共に、シールリングの収容の為の溝を形成する。
【0015】
取付要素と外部の装置の間の力結合的な接続の形成の為の取付要素の固定手段は、好ましウは、反対の方向、つまり真空ポンプの方向に拡張した内側面を有する。これは、外部の装置の取付部分の外側面と共にシールリングの収容の為の溝を形成する。
【0016】
固定手段は、好ましくは取付要素と一体に形成されている。
【0017】
シールリングは、好ましくは弾性的な材料(例えばゴム)から成り、そして弾性的な予負荷のもと溝内に押し込まれる。溝深さは、通常、シールリングが、予取付の際(つまりポンプが外部の装置と接続される前)に、溝によって形成される中空空間内に完全にはまり込まないように選択される。換言すると、シールリングは溝からはみ出していることが可能である。この意味で、好ましくは、溝深さはシールリングの断面直径よりも小さい。
【0018】
取付の際、つまり取付要素によって外部の装置を真空ポンプの開口部と接続する際、シールリングは、外部の装置の取付部分に(つまり壁部に、又はフランジに)支持されるか、又は、真空ポンプのそれに支持され、そして、取付要素と相応する取付部分が互いに接近するとき、更なる取付の過程中に変形をする。その際、シールリングは、溝の内部において軸方向に圧縮され、又は打ちつけられ、そして半径方向において伸ばされる。これは、外部の装置の取付部分の、又はハウジング開口部の取付部分の外側面の間と、取付要素の固定手段の間の挟み込み作用を引き起こす。これによって力結合的な接続が引き起こされる。
【0019】
シールリングの変形性は、取付要素と組手た部分の間の公差の補償を可能とする。ポンプの運転の間の振動が、同様に受け止められる。更に、公差の補償は、ポンプの密閉特性の改善を行う。
【0020】
好ましい実施形においては、固定手段の拡張された内側面は、面取り部または円すい面である。面取り面、又は円すい面は、その際、15度から75度の間、好ましくは30度から60度の間、特に好ましくは40度から50度の間、特に約45度の面取り角度又は円すい角度(傾斜角度)を有する。面取り幅は、ポンプの構造に応じて、例えば0.1cmから4cmの間、好ましくは0.2cmから3cmの間、特に好ましくは0.3cmから2cmの間であることが可能である。
【0021】
別の実施形に従い、取付要素、特にカバーリングは、ストッパーとして作用するショルダー部又はラジアル段を内側面に有する。取付要素の組み付けの際に、ショルダー部は、外部の装置又は開口部の取付部分の相補的なショルダー部又はラジアル段へ打ち当てられることが可能である。そのようにして取付の為の開始位置を定義するためである。シールリングは、この位置において形成された溝内へと押し込まれることが可能であり、そして好ましくはこの位置に飛び出すことなくとどまる。
【0022】
他の実施形に従い、取付要素は、取付要素の外部の装置との、又は取付要素の真空ポンプの取付部分との軸方向の接続又は連結の為の、複数の穴、及び/又は半径方向に推移する複数の欠刻を有する。複数の穴、及び/又は半径方向に推移する複数の欠刻は、その際、好ましくは、取付要素の周囲に均等に分配されている。
【0023】
穴及び/又は欠刻を通して、ねじ又はボルトが貫通案内されることが可能である。これらは外部の装置と、又は真空ポンプの取付部分とねじ留めされる。ここで再度、外部の装置と真空ポンプの開口部の間の連結は、最終的に、取付要素の固定手段を使って提供される圧力によって完成することが指摘されよう。
【0024】
更に、外部の装置と真空ポンプの間の最適な間隔を調整するために、ねじまたはボルトにスペーサースリーブが付設されることが意図され得る。
【0025】
有利な発展形に従い、ボルト及び/又はネジに、複数のOリングが付設されることが可能である。これらは、ねじ及び/又はボルトをすべり落ちの無いよう、又は失われないよう穴内及び/又は欠刻内に保持する。好ましくは弾性の材料又はゴムから成るこれらOリングは、取付要素内の半径方向に推移する空所部又はスリットを通して穴及び/又は半径方向に推移する欠刻内に導入されることが可能である。その様な取付補助は、特に、これらが一人の者によって実施されるときポンプのインストールを簡単にする。
【0026】
別の取付補助として、開口部の取付部分、又は外部の装置の取付部分は位置決め補助を有する。これは、外部の装置の取付装置、または真空ポンプの開口部と協働する。例えば、位置決め補助は、取付部分のボルト及び/又はねじが固定される前に、外部の装置と真空ポンプの間の連結の為の開始位置を決定する。例えば、位置決め補助は、取付部分の軸方向の出っ張りであることが可能である。これは、外部の装置の側の相補的な溝と協働する。このようにして、ボルト及び/又はねじの固定の間の反対側のずり落ちが防止されることが可能である。位置決め補助は、中心決め部分であることも可能である。これは、外部の装置又は真空ポンプの開口部内に差し込まれることが可能である。
【0027】
真空ポンプの好ましい実施形に従い、第一の開口部、特に第一のインレットは、ハウジング内に設けられるポンプ段の回転軸に関して、真空ポンプの軸方向の正面側に設けられている(軸方向開口部)。更に、ハウジングは、少なくとも一つの第二の開口部、特に第二のインレットを有する。これは、回転軸に関してハウジングの半径方向の側壁部に設けられている(半径方向の開口部)。
【0028】
外部の装置への連結は、その際、第一及び/又は第二の開口部に、独立した取付要素、特にカバーリングによって可能である。好ましくは、両方の開口部は、取付平面を定義する取付部分を有する。その際、開口部の取付平面は、好ましくは互いに垂直に配置されている。
【0029】
更に、真空ポンプは、軸方向の開口部の他に、半径方向に設けられた二以上の開口部、特にインレットを有する。好ましい実施形においては、半径方向の開口部の間に、少なくとも一つのポンプ段が設けられており、特に好ましくは当該配置は二つのポンプ段のものである。
【0030】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプのポンプ段は、特に、少なくとも、各ローターディスク及びステーターディスクから成る配置(又は装置、独語:Anordnung)であると理解される。これらは、ローター軸に付設されている。ローターディスクは、例えば、個々の鋸走行において製造されており、そしてローター軸に接合されている。真空ポンプ、特にターボ分子ポンプは、通常、一連の、又は相前後する対として配置されたローターディスク及びステーターディスクからなる複数のポンプ段を有する。各ポンプ段は、これがポンプのインレットに付設されているとき、所定の圧力を、インレットに接続されるレシーバー内に作り上げることができる。その際、ポンプ段の為のこの圧力はポンプアウトレットの方向で増加する。ポンプ段は、予真空ポンプ、特に分子ポンプ段、例えばホルベックポンプ段又はジーグバーンポンプ段であることも可能である。ローター軸の支承は、通常(必須ではない)、ハイブリッド支承である。これは例えばボール支承部をポンプのアウトレット側又は予真空側に有し、そしてマグネット支承部を高真空側に有する。
【0031】
二以上の、特に半径方向に配置されたインレットを有する予真空ポンプ(これらは、スプリットフロー真空ポンプとも称される)は、複数の、特に列に相前後して配置され、そこに異なる圧力が存在している複数のレシーバーを真空引きすることを可能とする。そのようなポンプは、典型的には、二から六のインレットを有する。これらは、ポンプの回転軸に沿って互いに間隔をあけて配置されている。真空ポンプは、通常、ハウジングの内部の相前後して接続された複数のポンプ段の積層から成る。通常、ポンプ段は、少なくとも一セットのローターディスク及びステーターディスクを有するターボ分子ユニットとそして場合によっては一または複数の予真空ポンプを有する。典型的には、最も早いポンプ速度で最も低い圧力領域は、第一、つまり全ての別のインレットに前接続されるインレットにおいて使用可能である。後接続されるインレットは、その順番に相応して、より高い圧力領域にあり、そしてより低いポンプ速度を提供する。
【0032】
一つの実施形に従い、(例えば窒素の為の)圧縮比は、ポンプの半径方向に設けられた二つの開口部の間において10よりも大きく、特に100以上である。
【0033】
更に、半径方向に設けられた少なくとも二つの開口部は、少なくとも部分的に、取付平面を定義する一つの共通な取付部分によって取り囲まれている。
【0034】
半径方向に設けられた両方の開口部のお互いのシールは、第一の密閉手段、特に第一の密閉リングが、両方の開口部を取り囲み、他方で、第二の密閉手段、特に第二の密閉リングは、両方の開口部の一方のみを取り囲んでいる。このようにして、半径方向に設けられた両方の開口部の間の間隔が最小とされることが可能である。というのは、開口部の間に一つの密閉手段のみが設けられているからである。ポンプの全軸方向長は、よって減少されることが可能である。
【0035】
本発明の別の観点は、真空ポンプ、特に上述した実施形に従うものであって、外部の装置、特にレシーバーの開口部と接続可能な少なくとも一つの開口部を有するものに関する。その際、開口部は、少なくとも部分的に、取付平面を定義する取付装置によって少なくとも部分的に取り囲まれている。更に、真空ポンプは、其々、少なくとも一つの緩衝要素を有する固定要素、特にネジ及び/又はボルトを、外部の装置との取付装置のストレスフリーな接続の為に有する。
【0036】
取付装置は、特に、上述した取付部分であることが可能である。これは、好ましくはシリンダー形状に形成されている。しかし好ましくは、取付装置、特に半径方向に設けられた開口部は、少なくとも一つの開口部を取り囲むプラットフォームである。これは、開口部の開口部面と、一つの平面を形成する。プラットフォームは、その際、プラットフォームによって取り囲まれる開口部の平面よりも数倍大きな面積を有することが可能である。プラットフォームの形状(独語:Geometrie)は、基本的に任意であるが、好ましくは長方形又は円形である。
【0037】
固定要素によって真空ポンプの開口部と接続されるために、外部の装置、特に外部の装置の開口部が、上述した様式の取付装置を有することも考え得る。
【0038】
緩衝要素は、ポンプ開口部に付設される取付装置の外部の装置への連結の際に(またはその逆の際に)公差の補償を行う。
【0039】
緩衝要素は、好ましくは固定要素の固定部分を少なくとも部分的に取り囲む。好ましくは、緩衝要素は、スリーブ及び/又は少なくとも一つのOリングを有する。特に、緩衝要素はスリーブ及び/又はOリングである。
【0040】
好ましくは、緩衝要素は、エラストマー、特に弾性的な材料から成り、そして好ましくは70から95の間のショア硬さを有する。
【0041】
好ましい実施形に従い、固定要素はねじ及び/又はボルトである。これらは、ねじ頭部又はボルト頭部の下で少なくとも部分的にスリーブによって取り囲まれている。その際、スリーブの少なくとも一方の端部にはOリングが付設されている。好ましくは、スリーブはその両方の端部においてOリングによって脇を固められている。スリーブとOリングは、その際、異なる弾性を有する。
【0042】
別の実施形に従い、取付装置は、外部の装置との軸方向の接続の為の側方の欠刻及び/又は穴を有する。好ましくは、その際、穴及び/又は側方の欠刻には、其々既に緩衝要素、特にスリーブ及び/又は少なくとも一つのOリングが付設されている。Oリング及び/又はスリーブは、その際、固定手段の為の滑落防止、又はずり落ち防止としても機能する。更に、スリーブは、外部の装置と取付装置の間の所望の間隔を調整するためのスペーサースリーブとしても機能する。
【0043】
スリーブが、内側の側面カバー(独語:Mantel)及び外側の側面カバーを有するとき特に有利であり得る。その際、これら側面カバーは、互いに異なる弾性を有する。好ましくは、その際、内側の側面カバーは、外側のものより弾性的である。
【0044】
発明に係る真空ポンプの好ましい実施形は、軸方向に配置された開口部、特にインレットを有する。その取付部分は、独立した取付要素を使って外部の装置に連結可能である。更に、真空ポンプは、半径方向に設けられた少なくとも二つの開口部、特にインレットを有する。これらは、共に、一つの取付装置によって少なくとも部分的に取り囲まれている。取付装置は、その際、干渉要素を取り囲む少なくとも一つの固定要素、特にねじ及び/又はボルトによって外部の装置に連結可能である。一方で軸方向の開口部の取付部分によって、そして他方で半径方向の開口部の取付装置によって定義される取付平面は、互いに垂直に配置されている。このようにして、メリットを伴いつつ真空ポンプをストレスフリーに、複数の各外部の装置へと連結することが可能である。その際、どの開口部がまず連結されるかは関係ない。
【0045】
一または複数の外部の装置への真空ポンプの連結の際、真空ポンプの部材、特に取付部分及び/又は取付装置が、外部の装置のハウジングによって取り囲まれていることが意図され得る。換言すると、真空ポンプの部材、特に正面側にある部材が、外部の装置のハウジング内へと突入している。例えば、これは、取付部分及び/又は取付装置によって成し遂げられることが可能である。これらは、外部の装置に対して連れ戻される。
【0046】
本発明の別の観点は、複数の外部の装置、特にレシーバーと少なくとも一つの発明に係る真空ポンプを有する真空システムに関する。その際、少なくとも一つの外部の装置は、ポンプの開口部、特にインレットとストレスフリーに連結されている。
【0047】
本発明の上述した及び別の特徴と、メリットは、添付の図面を参照しつつ例示的な実施形の以下の説明に基づいて詳細に説明される。図中では同じ参照符号が同じ要素を表すのに使用される。