(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献4に記載された発明においても、推進効率の改善を図ることができるものの、例えば、方形係数(CB)の大きな肥大船では遅速帯の領域が広くなる傾向にあり、更なる改善の余地があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、遅速帯の領域をプロペラ面に集約することによって推進効率を改善し、省エネルギー化を図ることができる、フィン装置及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、船側の船長方向に形成された平面状のサイドフラットを備えた船体に配置されるフィン装置において、前記サイドフラットの船尾側最下点P
1と計画満載喫水線DWLとプロペラの位置を示すプロペラ線PLとの交点Qとを結ぶ直線L
1と、ビルジ高さを示すビルジ高さ線BHLと、前記プロペラ線PLとにより囲まれた領域内に少なくとも一部が配置された複数のフィンを有し、
前記領域は、前記サイドフラットの後端線SELと前記ビルジ高さ線BHLとの交点P2を通り前記直線L1に平行な直線L2と、前記直線L1と、前記ビルジ高さ線BHLと、前記プロペラ線PLとにより囲まれた第一領域を含み、前記フィンの少なくとも一部が前記第一領域内に配置されており、前記複数のフィンは、水平方向の位置が異なる少なくとも2枚のフィンを含み、船尾部側に位置するフィンは船首部側に位置するフィンよりも上方に配置されている、ことを特徴とするフィン装置が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、船側の船長方向に形成された平面状のサイドフラットを備えた船体に配置されるフィン装置を備えた船舶において、前記サイドフラットの船尾側最下点P
1と計画満載喫水線DWLとプロペラの位置を示すプロペラ線PLとの交点Qとを結ぶ直線L
1と、ビルジ高さを示すビルジ高さ線BHLと、前記プロペラ線PLとにより囲まれた領域内に少なくとも一部が配置された複数のフィンを有し、
前記領域は、前記サイドフラットの後端線SELと前記ビルジ高さ線BHLとの交点P2を通り前記直線L1に平行な直線L2と、前記直線L1と、前記ビルジ高さ線BHLと、前記プロペラ線PLとにより囲まれた第一領域を含み、前記フィンの少なくとも一部が前記第一領域内に配置されており、前記複数のフィンは、水平方向の位置が異なる少なくとも2枚のフィンを含み、船尾部側に位置するフィンは船首部側に位置するフィンよりも上方に配置されている、ことを特徴とする船舶が提供される。
【0011】
上述したフィン装置及び船舶において、前記領域は、前記サイドフラットの後端線SELと前記ビルジ高さ線BHLとの交点P
2を通り前記直線L
1に平行な直線L
2と、前記直線L
1と、前記ビルジ高さ線BHLと、前記プロペラ線PLとにより囲まれた第一領域を含み、前記フィンの少なくとも一部が前記第一領域内に配置されていてもよい。
【0012】
また、前記領域は、最も船首部側に配置された1番目のフィンの先端を通る鉛直線FTLと前記ビルジ高さ線BHLとの交点P
3を通り前記直線L
1に平行な直線L
3と、前記直線L
1と、前記ビルジ高さ線BHLと、前記プロペラ線PLとにより囲まれた第二領域を含み、前記フィンの少なくとも一部が前記第二領域内に配置されていてもよい。
【0013】
また、本発明によれば、船側の船長方向に形成された平面状のサイドフラットを備えた船体に配置されるフィン装置において、前記サイドフラットの船尾側最下点P1と計画満載喫水線DWLとプロペラの位置を示すプロペラ線PLとの交点Qとを結ぶ直線L1と、ビルジ高さを示すビルジ高さ線BHLと、前記プロペラ線PLとにより囲まれた領域内に少なくとも一部が配置された複数のフィンを有し、前記領域は、最も船首部側に配置された1番目のフィンの先端を通る鉛直線FTLと前記ビルジ高さ線BHLとの交点P3を通り前記直線L1に平行な直線L3と、前記直線L1と、前記ビルジ高さ線BHLと、前記プロペラ線PLとにより囲まれた第二領域を含み、前記フィンの少なくとも一部が前記第二領域内に配置されており、前記複数のフィンは、水平方向の位置が異なる少なくとも2枚のフィンを含み、船尾部側に位置するフィンは船首部側に位置するフィンよりも上方に配置されている、ことを特徴とするフィン装置が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、船側の船長方向に形成された平面状のサイドフラットを備えた船体に配置されるフィン装置を備えた船舶において、前記サイドフラットの船尾側最下点P1と計画満載喫水線DWLとプロペラの位置を示すプロペラ線PLとの交点Qとを結ぶ直線L1と、ビルジ高さを示すビルジ高さ線BHLと、前記プロペラ線PLとにより囲まれた領域内に少なくとも一部が配置された複数のフィンを有し、前記領域は、最も船首部側に配置された1番目のフィンの先端を通る鉛直線FTLと前記ビルジ高さ線BHLとの交点P3を通り前記直線L1に平行な直線L3と、前記直線L1と、前記ビルジ高さ線BHLと、前記プロペラ線PLとにより囲まれた第二領域を含み、前記フィンの少なくとも一部が前記第二領域内に配置されており、前記複数のフィンは、水平方向の位置が異なる少なくとも2枚のフィンを含み、船尾部側に位置するフィンは船首部側に位置するフィンよりも上方に配置されている、ことを特徴とする船舶が提供される。
【0015】
前記複数のフィンは、各フィンにより生成された渦が互いに干渉し合う位置に配置されていてもよい。
【0016】
前記フィンは、船幅を超えないように配置されていてもよい。また、前記フィンは、略水平に配置されていてもよい。
【0017】
また、前記船舶は、船尾部に配置されたプロペラの前方に配置され、前記プロペラに流入する水流を整流する整流装置を有していてもよい。
【発明の効果】
【0018】
上述した本発明に係るフィン装置及び船舶によれば、船尾部の所定の範囲内に複数のフィンを配置したことにより、フィンによって生じた渦によって遅速帯を撹乱するとともに、遅速帯を形成していた水流を集約してプロペラに導くことができる。また、複数のフィンによって生じた渦の相乗効果によって、より効果的に遅速帯を撹乱及び集約することができる。したがって、本発明によれば、遅速帯の領域をプロペラ面に集約することによって推進効率を改善し、省エネルギー化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図8を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係るフィン装置を備えた船舶の船尾部を示す斜視図である。
図2は、
図1に示した船舶のプロファイル線図である。なお、
図1において、説明の便宜上、船体以外の構造物(プロペラ、舵等)については、図を省略してある。
【0021】
本発明の一実施形態に係る船舶1は、
図1及び
図2に示したように、船側の船長方向に形成された平面状のサイドフラット11を備えた船体に配置されるフィン装置2を備え、サイドフラット11の船尾側最下点P
1と計画満載喫水線DWLとプロペラ12の位置を示すプロペラ線PLとの交点Qとを結ぶ直線L
1と、ビルジ高さを示すビルジ高さ線BHLと、プロペラ線PLとにより囲まれた領域α内に2枚のフィン(第一フィン21及び第二フィン22)を有している。なお、以下の説明において、第一フィン21及び第二フィン22を総称する場合にはフィン21,22と称するものとする。
【0022】
図2に示したプロファイル線図は、船舶1の複数のプロファイル線図を一つの図に統合して記載したものである。ここでは、船体中心線を含む鉛直面における外形を示した船体中心プロファイル線
図F1(実線)、サイドフラット11の外縁を示したサイドフラットプロファイル線
図F2(実線)、第一フィン21を含む水平面における外形を示した水線面プロファイル線
図F3(実線)、第二フィン22を含む水平面における外形を示した水線面プロファイル線
図F4(実線)、計画満載喫水線DWLを含む水平面における外形を示した喫水面プロファイル線
図F5(破線)及び甲板を含む水平面における外形を示した甲板面プロファイル線
図F6(二点鎖線)の6つのプロファイル線図を統合して図示している。
【0023】
なお、水線面プロファイル線
図F3、水線面プロファイル線
図F4、喫水面プロファイル線
図F5及び甲板面プロファイル線
図F6については、船体中心線に対する右半分の領域(右舷側)のみを図示している。したがって、図中に示したB/2は船幅Bの半幅を示している。
【0024】
船体中心プロファイル線
図F1における下端の直線部は船舶1の船底13を示し、上端の直線部は船舶1の甲板14を示している。船底13の位置は、一般にベースラインBLと称する。また、
図2において、符号1aは船首部を示し、符号1bは船尾部を示している。
【0025】
サイドフラット11は、船体の側面視略中央部に形成されており、船底13と略平行な直線部11aを有している。この直線部11aの最後端は、サイドフラット11の船尾側最下点P
1に相当する。また、船底13と直線部11aとの差分(鉛直距離)は、ビルジ高さ(船底13の両側部における湾曲部分の高さ)を示している。なお、本実施形態において、直線部11aはビルジ高さ線BHLと一致している。
【0026】
また、サイドフラット11は、船尾部1b側に略鉛直に形成された後端部11bを有している。本実施形態において、この後端部11bを含む直線を後端線SELと定義する。また、サイドフラット11は、後端部11bの下端と直線部11aの最後端(船尾側最下点P
1)とを結ぶプロファイルは、船尾部1bに向かって船底13側から甲板14側に上昇する傾斜部11cを有している。なお、後端部11bを有しない船舶1の場合は、後端線SELは、傾斜部11cと甲板14との交点を通る鉛直線によって構成される。
【0027】
また、水線面プロファイル線
図F3及び水線面プロファイル線
図F4に示したように、第一フィン21及び第二フィン22は、船幅Bを超えないように配置されている。第一フィン21及び第二フィン22は、船幅Bを超えないように配置位置をずらしてもよいし、船幅Bからはみ出した部分をカットするようにしてもよい。
【0028】
第一フィン21及び第二フィン22は、例えば、
図1に示したように、略矩形形状の平板により構成されており、角部には必要に応じてRを形成してもよい。フィン21,22の船体に対する取付角度は、例えば、略水平に設定され、フィン21,22の水流に対する迎角は、例えば、0°に設定される。また、図示しないが、フィン21,22は、水流の抵抗を低減するために、流線形状や翼形状を有していてもよい。なお、本実施形態において「略水平」とは、水平に対して数度程度の傾斜した状態を含む意味である。
【0029】
次に、フィンの位置決め方法について、
図3(A)〜
図5(B)を参照しつつ説明する。ここで、
図3は、フィンの位置決め方法を示す図であり、(A)は第一例、(B)は第二例、を示している。
図4は、フィンの位置決め方法を示す図であり、(A)は第三例、(B)は第四例、(C)は第五例、(D)は第六例、(E)は第七例、を示している。
図5は、フィンの位置決め方法を示す図であり、(A)は第八例、(B)は第九例、を示している。なお、各図において、プロペラ12の形状を模式化して図示し、舵やダクト等の付属品の図を省略してある。
【0030】
図3(A)に示したように、プロペラ12の位置を示すプロペラ線PLと計画満載喫水線DWLとの交点をQとする。プロペラ線PLは、プロペラ12の軸線に垂直なプロペラ翼基線である。船尾部1bを側面視した状態において、サイドフラット11の船尾側最下点P
1と交点Qとを結ぶ直線をL
1とする。この直線L
1と計画満載喫水線DWLとビルジ高さ線BHLとにより囲まれた領域(図の斜線部分)をαとすれば、フィン21,22は領域α内に配置される。なお、「領域α内に配置」とは、フィン21,22の少なくとも一部が領域α内に配置されていればよい趣旨である。
【0031】
例えば、
図3(A)に示したように、フィン装置2が水平方向の位置が異なる2枚のフィン(第一フィン21及び第二フィン22)を含む場合、船尾部1b側に位置する第二フィン22は船首部1a側に位置する第一フィン21よりも上方に配置される。ここで、フィン21,22の水平方向の位置は、例えば、船首部1a側の端部(先端)を基準に判断される。また、「上方」とは、第二フィン22の少なくとも一部が第一フィン21よりも上方(水面側)に位置することを意味している。
【0032】
例えば、
図3(B)に示したように、フィン装置2が水平方向の位置が異なる3枚のフィン(第一フィン21〜第三フィン23)を含む場合、第一フィン21と第二フィン22との位置関係については、船尾部1b側に位置する第二フィン22が船首部1a側に位置する第一フィン21よりも上方に配置され、第二フィン22と第三フィン23との位置関係については、船尾部1b側に位置する第三フィン23が船首部1a側に位置する第二フィン22よりも上方に配置される。
【0033】
なお、図示しないが、フィン装置2が水平方向の位置が異なる4枚以上のフィンを含む場合であっても、前後する2枚のフィンを選択すれば、船尾部1b側に位置するフィンは船首部1a側に位置するフィンよりも上方に配置される。
【0034】
また、本実施形態は、
図3(A)及び
図3(B)に示したフィンの配置に限定されるものではない。例えば、
図4(A)〜
図4(C)に示した第三例〜第五例は、フィンが2枚の場合の位置決め方法を示し、
図4(D)及び
図4(E)に示した第六例及び第七例は、フィンが3枚の場合の位置決め方法を示している。
【0035】
図4(A)に示した第三例は、第二フィン22を第一フィン21よりも上方かつ水平方向の同じ位置に配置したものである。図示したように、第二フィン22の一部が領域α内に含まれていればよく、第二フィン22の一部が領域αからはみ出ていてもよい。なお、図示しないが、第一フィン21の一部が領域αからはみ出ていてもよい。
【0036】
図4(B)に示した第四例は、第二フィン22を第一フィン21よりも上方かつ前方に配置したものである。ここで、「前方」とは、少なくとも第二フィン22の先端が第一フィン21の先端よりも前方(船首部1a側)に位置することを意味している。
【0037】
図4(C)に示した第五例は、第二フィン22を第一フィン21よりも後方かつ同じ高さに配置したものである。ここで、「後方」とは、少なくとも第二フィン22の先端が第一フィン21の後端よりも後方(船尾部1b側)に位置することを意味している。
【0038】
図4(D)に示した第六例は、第二フィン22を第一フィン21よりも上方かつ後方に配置するとともに、第三フィン23を第二フィン22よりも後方かつ同じ高さに配置したものである。なお、図示しないが、第一フィン21及び第二フィン22は、
図4(A)〜
図4(C)に示した第三例〜第五例の位置関係を有していてもよい。
【0039】
図4(E)に示した第七例は、第二フィン22を第一フィン21よりも上方かつ後方に配置するとともに、第三フィン23を第二フィン22よりも下方かつ後方に配置したものである。なお、図示しないが、第一フィン21及び第二フィン22は、
図4(A)〜
図4(C)に示した第三例〜第五例の位置関係を有していてもよい。
【0040】
また、
図5(A)に示したように、サイドフラット11の後端線SELとビルジ高さ線BHLとの交点をP
2とし、この交点P
2を通り、直線L
1に平行な直線をL
2と定義する。このとき、フィン21,22は、直線L
2と直線L
1とビルジ高さ線BHLとプロペラ線PLとにより囲まれた第一領域β内に配置されていてもよい。図示したように、第一領域βは領域αに含まれる領域である。
【0041】
また、
図5(B)に示したように、最も船首側に配置された1番目のフィン(第一フィン21)の先端を通る鉛直線をFTLとし、この鉛直線FTLとビルジ高さ線BHLとの交点をP
3とし、この交点P
3を通り、直線L
1に平行な直線をL
3と定義する。このとき、フィン21,22は、直線L
3と直線L
1とビルジ高さ線BHLとプロペラ線PLとにより囲まれた第二領域γ内に配置されていてもよい。
【0042】
上述した第八例及び第九例では、フィン21,22が2枚の場合について図示しているが、フィンは3枚以上であってもよい。また、フィン21,22の配置は、上述した第三例〜第五例に示した構成であってもよい。また、図示しないが、フィン21,22は、少なくとも一部が第一領域β又は第二領域γ内に含まれていればよく、必ずしもフィン21,22の全体が第一領域β又は第二領域γ内に含まれていなくてもよい。
【0043】
次に、フィンが2枚の場合におけるフィン21,22の位置関係と伴流係数改善効果との関係について、
図6を参照しつつ説明する。ここで、
図6は、フィンの位置関係と伴流係数改善効果との関係を示す分布図である。
【0044】
一般に、船舶1の船体に近い周囲の水は、船舶1の走行に伴って船舶1に引っ張られて船舶1と同じ方向に走ることとなる。この船舶1を追いかけて進む水の流れのことを伴流という。この伴流の速度を船舶1の速度で割った値を伴流率wという。船舶1の速度をVとし、プロペラ12の前進速度をVpとすれば、Vp=V(1−w)と表すことができる。「1−w」は一般に伴流係数という。したがって、伴流係数wの値が大きいほどプロペラ12の前進速度Vpは船舶1の速度Vに対して遅くなり、推進効率が向上する。
【0045】
図2に示したように、第一フィン21の先端と第二フィン22の先端との水平方向の距離をΔXとし、第一フィン21と第二フィン22との鉛直方向の距離をΔZとする。
図6は、ΔXを0〜50m、ΔZを2〜8mの範囲内で変化させた場合における伴流係数の改善効果をシミュレーションした結果を図示したものである。なお、ΔX及びΔZの数値は単なる例示であって、かかる数値に限定されるものではない。
【0046】
図6に示したように、第二フィン22を第一フィン21に対して後方(船尾部1b側)かつ上方(水面側)に配置することによって、伴流係数を効果的に改善することができる。また、第二フィン22を第一フィン21に比較的接近した位置に配置することによって、高い伴流係数の改善効果を得ることができる。
【0047】
また、
図6に示した3本の一点鎖線は、上述したフィン21,22の位置決め方法で用いた直線L
1,L
2,L
3を示している。この図からも判るように、直線L
1の上方に超えない範囲にフィン21,22を配置することによって一定の伴流係数の改善効果を得ることができる。また、直線L
1と直線L
2との間にフィン21,22を配置することによっても一定の伴流係数の改善効果を得ることができ、直線L
1と直線L
3との間にフィン21,22の先端を配置することによっても一定の伴流係数の改善効果を得ることができる。
【0048】
ここで、
図6に示した伴流係数改善効果の原理について、
図7(A)及び
図7(B)を参照しつつ考察する。
図7は、フィン装置と整流装置とを備えた船舶の船尾部を示す側面図であり、(A)はフィンが2枚の場合、(B)はフィンが3枚の場合、を示している。図示した船舶1は、船尾部1bに配置されたプロペラ12の前方に配置されプロペラ12に流入する水流を整流する整流装置15と、プロペラ12の後方に配置され船舶1の進行方向を制御する舵16と、を備えている。
【0049】
整流装置15は、例えば、プロペラ12の直前に配置された略円筒形状又は略半円筒形状のダクトである。かかる整流装置15は、例えば、特公平03−066197や特許第5132140号等に記載された既知のものを任意に適用することができる。
【0050】
船尾部1bの底部における水流は、船底13から後方(船尾部1b側)かつ上方(水面側)に向かう方向に流れていることから、略水平に配置された第一フィン21に衝突した水流は、第一フィン21の下面から上面に回り込む流れ(渦21v)を生成する。同様に、第二フィン22に衝突した水流は、第二フィン22の下面から上面に回り込む流れ(渦22v)を生成する。
【0051】
これらの渦21v,22vは成長しながら下流に向かい、ある地点で互いに干渉し合い、より大きな渦2vのような振る舞いを生じるものと考えられる。この大きな渦2vが生成されると、船尾部1bの遅速帯を効果的に撹乱することができ、遅速帯を形成していた水流を集約してプロペラ12に導くことができるものと考えられる。
【0052】
また、第一フィン21と第二フィン22とが近過ぎたり、離れ過ぎたりしている場合には、大きな渦2vを生成することが難しく船尾部1bの遅速帯に与える影響が低減することとなる。かかる考察は、
図6に示した伴流係数改善効果の傾向と一致する。
【0053】
また、上述した考察は、
図7(B)に示したように、フィンが3枚の場合にも当てはまる。第三フィン23に衝突した水流は、第三フィン23の下面から上面に回り込む流れ(渦23v)を生成する。渦21v,22v,23vは成長しながら下流に向かい、ある地点で互いに干渉し合い、より大きな渦2vのような振る舞いを生じることとなる。
【0054】
したがって、以上の考察に基づけば、複数のフィンは、各フィンにより生成された渦が互いに干渉し合う位置に配置されていることが好ましい。なお、各フィンによって生成された渦が互いに干渉しない場合であっても、少なからず、各渦によって船尾部1bの遅速帯を撹乱し集約する効果を有している。すなわち、上述したフィンの位置決め方法において説明した範囲内に複数のフィンが配置されていれば、必ずしも各フィンによって生成された渦が互いに干渉していなくてもよい。
【0055】
最後に、本実施形態に係るフィン装置2の省エネ効果について説明する。ここで、
図8は、省エネ効果を示す比較図である。サンプルAは1枚のフィン(例えば、第一フィン21のみ)を有する船舶、サンプルBは2枚のフィン(例えば、第一フィン21及び第二フィン22)を有する船舶、サンプルCは整流装置15のみを有する船舶、サンプルDは1枚のフィンと整流装置15とを有する船舶、サンプルEは2枚のフィンと整流装置15とを有する船舶、を示している。
【0056】
図8に示した省エネ効果は、船体模型を用いた水槽試験の結果から算出したものである。具体的には、サンプルA〜サンプルEの船体模型を製作し、それぞれのサンプルについて同じ条件で推進性能試験を行い、その試験結果から燃料消費量を計算することによって、削減できた燃料消費量から省エネ効果を算出した。
【0057】
図8に示したように、サンプルAとサンプルBとを比較すれば、フィンを2枚にする、すなわち、第二フィン22を追加することによってフィンが1枚の場合よりも大きな省エネ効果を得ることができる。また、サンプルDとサンプルEとを比較すれば、サンプルEではフィンの枚数を増やした分だけサンプルDよりも省エネ効果が改善されている。
【0058】
また、サンプルDでは、1枚のフィン(第一フィン21)と整流装置15との相乗効果によってΔE
1の省エネ効果を得ることができる。この相乗効果は、第一フィン21を配置することによって、従来の船舶では整流装置15で回収できなかった遅速帯の伴流を回収することができるようになったことに起因している。
【0059】
また、サンプルEでは、2枚のフィン(第一フィン21及び第二フィン22)と整流装置15との相乗効果によってΔE
2の省エネ効果を得ることができる。図示したように、ΔE
2はΔE
1よりも大きな数値を示し、サンプルEの方がサンプルDよりも相乗効果が高いことが判る。これは、2枚のフィンを配置することによって、サンプルDの船舶では整流装置15で回収できなかった遅速帯の伴流を回収することができるようになったことを意味している。
【0060】
上述した本実施形態に係る船舶1は、タンカー、バルクキャリアー、LNG船、LPG船、フェリー等の肥大船に限定されるものではなく、PCC(自動車運搬船)、一般貨物船、コンテナ船等の瘠形船にも適用することができる。
【0061】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。