特許第6351707号(P6351707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6351707オクタクロロトリシランの製造方法および製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351707
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】オクタクロロトリシランの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/107 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   C01B33/107 Z
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-509338(P2016-509338)
(86)(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公表番号】特表2016-522141(P2016-522141A)
(43)【公表日】2016年7月28日
(86)【国際出願番号】EP2014054127
(87)【国際公開番号】WO2014173574
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年1月5日
(31)【優先権主張番号】102013207447.6
(32)【優先日】2013年4月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン エルヴィン ラング
(72)【発明者】
【氏名】ハルトヴィッヒ ラウレーダー
(72)【発明者】
【氏名】エッケハート ミュー
(72)【発明者】
【氏名】イマド ムサレム
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−543828(JP,A)
【文献】 特表2010−517922(JP,A)
【文献】 特開平02−153815(JP,A)
【文献】 特開昭63−222011(JP,A)
【文献】 特開昭60−247917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
xSiCl4-x (I)
[式中、xは、互いに独立して、0、1、2または3から選択される]の少なくとも1種のモノマーのクロロシランを含むクロロシランを、熱的プラズマにさらし、ここで、熱的プラズマは、電子とイオンがほぼ同じ温度を有するアークプラズマである、オクタクロロトリシランの製造方法であって、
前記方法が、2つの塔(2a,2b)を備えた1つのガス放電反応器(1)を含む装置(0)において行われ、ここで、前記装置(0)において、
− オクタクロロトリシランの分離のための塔入口(3a)を備えた第一の塔(2a)がガス放電反応器(1)の上流に設けられており、かつ低沸点物の分離のための塔入口(4a)を備えた第二の塔(2b)がガス放電反応器(1)の下流に設けられており、かつ
− 塔(2b)の塔出口(4b)には、ガス分配器(5)が取り付けられており、かつ
− ガス分配器(5)には、低沸点物を第一の塔(2a)またはガス放電反応器(1)へと還流として供給する返送路(6)が取り付けられており、ここで、前記ガス放電反応器(1)において、300〜800mbar(絶対圧)の圧力が保たれていることを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
オクタクロロトリシランおよびヘキサクロロジシランが混合物として得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
超高純度のオクタクロロトリシランが単離されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1質量ppm未満のチタン含量を有するオクタクロロトリシランが得られることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
出発物質として、超高純度のテトラクロロシラン、超高純度のトリクロロシランおよび/または超高純度のジクロロシランが使用されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガス分配器(5)は、遮断機構または調節機構を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
式Iのクロロシランまたはヘキサクロロジシランとの混合物における式Iのクロロシランが、ガス放電反応器(1)中に導入されるか、または第一の塔(2a)へと供給されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
(i)ガス放電反応器から第二の塔(2b)を経て出て行く、ヘキサクロロジシランとの混合物における式Iのクロロシランが、装置(0)においてガス分配器(5)で分けられ、そして該混合物の一部が還流として(ii)返送路(6)を介して第一の塔(2a)へと返送され、そして(iii)再びガス放電反応器(1)に導通され、そして(iv)高純度または超高純度のオクタクロロトリシランが、第一の塔(2a)の塔出口(3b)で得られることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
流中の、トリクロロシランのテトラクロロシランに対するモル比が、0.1:20から2:20までであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロロシランから高純度および超高純度のオクタクロロトリシランを製造するための方法および装置であって、モノマーのクロロシランを熱的プラズマにさらすことによる前記方法および装置に関する。
【0002】
従来技術から、ポリクロロシランの製造方法は公知である。ここで、DE102006034061は、ポリシランの製造のために四塩化ケイ素と水素とを反応させることを開示している。水素の存在下での反応に基づき、製造されたポリシランは水素を含有している。設備を連続運転で保持しうるためには、テトラクロロシランは、水素に対して過剰に添加される。それに加えて、開示された設備は複雑な構成を有しており、ポリシラン混合物の製造だけが可能であるにすぎない。ポリシランの高められた分子量は、複数の反応器および高周波発生器の直列的な接続によってのみ達成できるにすぎない。直列的に接続されたプラズマ反応器のそれぞれを通過した後に、ポリシランの分子量は、各々のプラズマ反応器の後に高まる。開示された方法は、分解されずに気相に変換可能な化合物の製造に限られる。
【0003】
EP1264798A1は、多結晶シリコンの製造に際してのヘキサクロロジシランを含有する副生成物の後処理法を開示している。
【0004】
また、US4,542,002およびWO2009/143823A2は、四塩化ケイ素および水素から出発するポリクロロシランのプラズマ化学的製造方法を開示している。製造条件に応じて、水素を含有するポリクロロシランが得られる。WO2009/143823A2によれば、水素を含有する高分子のポリクロロシランの混合物が得られる。ポリクロロシラン中に含まれる四塩化ケイ素は、更なる使用の前に費用をかけて真空中で蒸留により除去せねばならない。特に従来技術における欠点は、ポリクロロシランをガス状の水素の存在下で製造する必要があることである。これによって、材料と設備の保全に対して非常に高い安全措置が課される。
【0005】
本発明の課題は、オクタクロロトリシランの、特に高純度ないし超高純度のオクタクロロトリシランの経済的な方法であって、好ましくは半導体品質のシリコン層の堆積のような更なる加工の前にもはや精製する必要のない前記オクタクロロトリシランの製造方法を提供することである。更に、該方法は、プロセス生成物の高い収率および特に高い純度の点で優れているべきである。更なる課題は水素の使用を省けることにあった。同様に、オクタクロロトリシランは、その直接的な製造に際して、分解生成物の形成を避けるために気相へと変換される必要がないことが望ましい。更に求められることは、モノマーのクロロシランを本質的に含まずにオクタクロロトリシランをその製造に際して直接的に製造することにあった。更に、廉価で簡単な構成の、操作しやすいオクタクロロトリシランの製造装置を提供するという課題があった。クロロシランの汚染に寄与しうる内表面を最小限にすることに特に注力された。更に、前記装置は、縦型であって僅かしか場所を取らないべきである。
【0006】
前記課題は、請求項1に係る方法、請求項15に係る得られたオクタクロロトリシラン、および請求項14に係る装置によって解決される。
【0007】
驚くべきことに、良好な収率で、モノマーのクロロシラン、場合によりヘキサクロロジシランとの混合物におけるモノマーのクロロシランは、熱的プラズマ中で、つまり熱的平衡にあるプラズマ中でオクタクロロトリシランへと、本発明によれば高純度ないし超高純度のオクタクロロトリシランへと転化させることができることが判明した。その場合に、直接的なプロセス生成物はオクタクロロトリシランを85質量%以上で含有することができ、前記生成物は、少なくとも2つのケイ素原子を有するポリクロロシランを100質量%まで有する混合物で存在する。ポリクロロシランとしては、特にヘキサクロロジシラン、デカクロロテトラシラン、ドデカクロロペンタシランおよび/またはそれらの構造異性体が該当する。特に驚くべきことには、オクタクロロトリシランの製造が、モノマーのクロロシラン、例えば好ましくはテトラクロロシランまたはテトラクロロシラン(STC)およびトリクロロシラン(TCS)を含む混合物またはTCS、STCおよび/またはジクロロシランの混合物から、本質的に水素ガスの存在なく、熱的プラズマ中でうまくいくことであった。本発明による方法の具体的な経済的な利点は、特に、本発明による装置によって、2つの塔の間に配置されているガス放電反応器を用いて達成される。一般的に、本方法によれば、より低い品質のオクタクロロトリシランも、ガス放電反応器と下流に配置された塔とを有する装置において製造することもできる。
【0008】
本発明による装置は、2つの反応蒸留塔が取り付けられた1つのプラズマ反応器、すなわちガス放電反応器を含む。好ましくは、前記塔の1つおよび前記ガス放電反応器には、一般式Iの未反応のモノマーのクロロシランをガス放電反応器を通じて再び導通させるための返送路が取り付けられており、それは図3に表されている。本発明により製造されるオクタクロロトリシランは、好ましくは当業者に周知の検出限界の範囲で、水素原子不含、および/または水素原子含有のモノマーのクロロシランおよび/またはポリクロロシラン不含である。
【0009】
水素不含とは、その水素原子の含量が、1×10-3質量%未満、特に1×10-4質量%未満、更に好ましくは1×10-6質量%未満から、事実上1×10-10質量%の検出限界までにあるオクタクロロトリシランに当てはまる。本発明の主題は、また、1×10-3質量%未満、好ましくは1×10-6質量%未満から、上述の検出限界までの水素原子の含量を有するオクタクロロトリシランである。水素原子の含量の測定のための有利な方法は、以下に挙げられる元素に伴う全不純物プロファイルの測定のための、1H−NMR分光分析法、CHN分析と、好ましくはICP−MSと組み合わせたものである。
【0010】
本発明による方法の特に大きな一つの利点は、製造されたオクタクロロトリシランの直接的な使用可能性であり、すなわちソーラーシリコン品質または半導体品質を有する高純度のシリコン層の堆積のために更なる精製が必要ないことである。
【0011】
従って、本発明の主題は、オクタクロロトリシランの製造方法、およびこの方法により得られたオクタクロロトリシランであって、特に80質量%以上のオクタクロロトリシランの含量を有し、かつ1質量ppm以下の、好ましくは100質量ppb以下のチタン含量を有する前記オクタクロロトリシランの製造方法、および前記オクタクロロトリシランにおいて、一般式I
xSiCl4-x (I)
[式中、xは互いに独立して、0、1、2または3から選択され、好ましくはxは、0、1または2であり、好ましくはxは0または1であり、特に有利にはxは0である]の少なくとも1種のモノマーのクロロシランを含むクロロシラン、または式Iの少なくとも2種のモノマーのクロロシランを含む混合物、特にテトラクロロシラン、トリクロロシランおよびジクロロシランから選択されるクロロシラン、有利には純粋なテトラクロロシランまたは全混合物中に20質量%以下の、特に10質量%以下の、有利には7.5質量%以下のトリクロロシランの含量を有する純粋なテトラクロロシラン、ならびに場合によりヘキサクロロジシランの含量を有する混合物におけるモノマーのクロロシランが、熱的プラズマにさらされ、そしてオクタクロロトリシランへと転化される前記方法および前記オクタクロロトリシランである。
【0012】
該方法の利点は、水素キャリヤーガスを使用する必要がなく、また追加の触媒を使用する必要がないことである。従って、本方法において、一般式Iのモノマーのクロロシランまたはヘキサクロロジシランを有するもしくは有さない式Iのモノマーのクロロシランの混合物は熱的プラズマ中でオクタクロロトリシランへと転化させることができ、その際、追加の水素含有化合物、特に水素を添加する必要がない。
【0013】
好ましくは高純度ないし超高純度のオクタクロロトリシランの製造は、一般式Iのモノマーのクロロシランの熱的プラズマにおける転化によって行われる。好ましくは、低沸点物とみなされる一般式Iのモノマーのクロロシランおよびヘキサクロロジシランの還流比はガス分配器で調整される。返送される低沸点物は、引き続き好ましくは凝縮器で凝縮され、そして第一の塔またはガス放電反応器中に返送される。低沸点物の残留部は、同様に凝縮され、返送または排出されうる。好ましくは、得られたモノクロロシラン、HClおよび/またはモノシランは凝縮されず、凝縮器の後に該システムから排出される。
【0014】
上述の分離は、凝縮器の相応する温度調節によって簡単に可能である。その他の方法操作においては、出発物質として、場合により所定の含量のトリクロロシランおよび/またはジクロロシランを有するテトラクロロシランの場合に、形成されるヘキサクロロジシランは凝縮器でガス分配器の後に凝縮され排出される一方で、他のクロロシランは気体状で再びガス放電反応器へと供給される。
【0015】
熱的プラズマ中の考えられる反応は、理想的には以下の通りに表すことができる:
【化1】
[式中、xは、0、1、2または3であり、好ましくはxは、1または0であり、それとは独立して、好ましくはnは、3であり、中間生成物としてはnは、2である]。
【0016】
【化2】
【0017】
前記方法操作によって、特に本発明による図3〜6の装置において、モノマーの出発物質または副生成物を分離するために予め気相に変換することなく、狙い通りにオクタクロロトリシランを製造および単離できる。
【0018】
好ましくは、一般式Iのクロロシランとしては、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、ジクロロシランまたはこれらの混合物が使用される。該方法の具体的な利点は、超高純度のテトラクロロシラン(STCeg)、好ましくは超高純度のトリクロロシラン(TCSeg)の含量を有する混合物における前記テトラクロロシランから出発して、半導体品質のオクタクロロトリシランを製造できることである。
【0019】
その一方で、前記オクタクロロトリシランは、STCから超高純度のジクロロシラン(DCSeg)ならびに上述のクロロシランの混合物の存在下で得ることができる。相応して超高純度の好ましい混合物は、トリクロロシランおよび/またはジクロロシランの含量を有するテトラクロロシランを含む。「超高純度のクロロシラン」は、本発明の範囲においては、「エレクトロニクス等級のクロロシラン(electronic grade Chlorsilan)」、略して「eg」についての呼称である。
【0020】
本発明によるオクタクロロトリシランの製造のためには、一般式Iの高純度ないし超高純度のモノマーのクロロシランまたは式Iのモノマーのクロロシランの混合物、例えば超高純度のテトラクロロシラン、超高純度のトリクロロシランおよび/または超高純度のジクロロシラン、好ましくは90質量%から99.9999999質量%のモノマーのクロロシランの含量を有し、100質量%まで場合によりヘキサクロロジシラン、オクタクロロトリシランおよび場合により少なくとも2個のケイ素原子を有するポリクロロシランを含む前記クロロシランが使用され、その際、以下に挙げられる元素についての100質量ppm以下から0.001質量pptまでの全不純物は、高純度のクロロシランを定義する。以下の元素についての50質量ppm以下から0.001質量pptまでの全不純物は、超高純度のクロロシランを定義し、40質量ppm以下で0.001質量pptまでの全不純物が有利である。好ましくは、モノマーのクロロシランの含量は、98質量%〜99.9999999質量%であり、その際、高純度クロロシランでは100質量ppm以下で0.001質量pptまでの全不純物を有し、好ましくは、超高純度のクロロシランでは50質量ppm以下で、0.001質量pptまでの不純物を有し、場合により100質量%までヘキサクロロジシランおよび/またはオクタクロロトリシランを含み、その際、一般式Iのモノマーのクロロシランの不純物プロファイルは、以下の通りの元素:
a. 15質量ppmから0.0001質量pptまでのアルミニウム、および/または
b. 5質量ppt以下で0.0001質量pptまでの、好ましくは3質量ppmから0.0001質量pptまでの範囲のホウ素、および/または
c. 2質量ppm以下の、好ましくは2質量ppmから0.0001質量pptまでのカルシウム、および/または
d. 5質量ppmから0.0001質量pptまでの、好ましくは0.6質量ppmから0.0001質量pptまでの鉄、および/または
e. 5質量ppmから0.0001質量pptまでの、好ましくは0.5質量ppmから0.0001質量pptまでのニッケル、および/または
f. 5質量ppmから0.0001質量pptまでの、好ましくは3質量ppmから0.0001質量pptまでのリン、および/または
g. 10質量ppm以下の、好ましくは2質量ppm以下の、有利には1質量ppmから0.0001質量pptまでの、更に有利には0.6質量ppmから0.0001質量pptまでの、更に有利には0.1質量ppmから0.0001質量pptまでのチタン、および/または
h. 3質量ppm以下の、有利には1質量ppmから0.0001質量pptまでの、更に有利には0.3質量ppmから0.0001質量pptまでの亜鉛、および/または
i. 炭素、
を有し、その際、炭素の濃度は、当業者に公知の測定方法の範囲で周知の検出限界が目指される。
【0021】
上述の元素についての全不純物の測定は、好ましくはICP−MSによって行われる。該方法は、連続的に当業者に公知のオンライン分析によって監視することができる。要求される純度は、GC、IR、NMR、ICP−MSによるか、または抵抗測定もしくはGD−MSによってSiの堆積後に調べることができる。
【0022】
本発明による方法の具体的な利点は、オクタクロロトリシランの製造が、ガス放電反応器における、調整された還流比、ヘキサクロロジシランのモル含量ならびに一般式Iのモノマーのクロロシランのモル比によって選択的に制御できることである。
【0023】
同様に、高価な、不活性な希ガスの添加を省くことができることが好ましい。その一方で、キャリアガス、好ましくは圧力下にある不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、その他の希ガスまたはこれらの混合物を添加してよい。
【0024】
本方法の更なる利点は、場合により低い含量の超高純度のヘキサクロロジシラン、超高純度のデカクロロテトラシランおよび/またはドデカクロロペンタシランを有し、半導体産業の要求に極めて相応しい超高純度のオクタクロロトリシランの選択的な製造である。
【0025】
ここで、特に好ましい一つの変法によれば、95.9999質量%を上回り99.999999質量%までのオクタクロロトリシランの含量を有する超高純度のオクタクロロトリシランが単離され、その際、それぞれヘキサクロロジシラン、デカクロロテトラシランおよび/またはドデカクロロペンタシランの99.999999質量%までの残留含量を含む。オクタクロロトリシランは、本発明によれば、第一の塔を通じて受容器に流出し、そこで連続的にまたはまとめて単離できる。
【0026】
一つの選択肢によれば、更に低沸点物として、好ましくはガス分配器後および凝縮後に、95.9999質量%を上回り99.999999質量%までのヘキサクロロジシランの含量を有する超高純度のヘキサクロロジシランが単離でき、その際、それぞれ一般式Iのモノマーのクロロシランの99.999999質量%までの残留含量を含む。好ましくは、ヘキサクロロジシランは、図5および6に相応して、凝縮器(11)の後で単離できる。
【0027】
特に有利な変法によれば、直接的なプロセス生成物として、10質量ppm未満のチタン含量を有する、有利には8質量ppm未満の、特に有利には5質量ppm未満の、更に有利には1質量ppm未満のチタン含量(ICP−MSにより測定)を有する超高純度のオクタクロロトリシランが単離される。
【0028】
高純度のオクタクロロトリシランとは、80質量%から99.999999質量%までの間のオクタクロロトリシランの含量を有し、100質量%までポリクロロシラン、例えばヘキサクロロジシラン、デカクロロテトラシラン、ドデカクロロペンタシランおよび/またはそれらの構造異性体を含み、以下の元素についての全不純物が、100質量ppm以下であるオクタクロロトリシランを言い、その際、超高純度のオクタクロロトリシランでは全不純物は、50質量ppm以下である。好ましくは、高純度または超高純度のオクタクロロトリシランにおけるオクタクロロトリシランの含量は、85質量%から99.999999質量%まで、有利には90質量%から99.999999質量%まで、特に有利には99.99質量%から99.999999質量%まで、更に有利には99.9999質量%から99.9999999質量%までであり、その際、全不純物は、高純度のオクタクロロトリシランにおいては100質量ppm以下であり、超高純度のオクタクロロトリシランにおいては50質量ppm以下であり、特に前記不純物は、ホウ素、リン、炭素および異種金属ならびに水素から選択される、好ましくはホウ素、リン、炭素、アルミニウム、カルシウム、鉄、ニッケル、チタンおよび亜鉛および/または水素から選択される1種、複数種、または全ての元素である。
【0029】
その場合に、上述のオクタクロロトリシランは、以下の1種、複数種、または全ての元素の以下の不純物プロファイルを有し、かつ超高純度のオクタクロロトリシランとしては以下のことが当てはまる:
a. 5質量ppm以下の、または5質量ppmから0.0001質量pptまでの、好ましくは3質量ppmから0.0001質量pptまでのアルミニウム、および/または
b. 10質量ppmから0.0001質量pptまでの、好ましくは5質量pptから0.0001質量pptまでの範囲の、更に有利には3質量ppmから0.0001質量pptまでの範囲のホウ素、および/または
c. 2質量ppm以下の、有利には2質量ppmから0.0001質量pptまでのカルシウム、および/または
d. 20質量ppm以下の、有利には10質量ppmから0.0001質量pptまでの、更に有利には0.6質量ppmから0.0001質量pptまでの鉄、および/または
e. 10質量ppm以下の、有利には5質量ppmから0.0001質量pptまでの、更に有利には0.5質量ppmから0.0001質量pptまでのニッケル、および/または
f. 10質量ppm未満で0.0001質量pptまでの、有利には5質量ppmから0.0001質量pptまでの、更に有利には3質量ppmから0.0001質量pptまでのリン、および/または
g. 10質量ppm以下の、2質量ppm未満の、有利には1質量ppmから0.0001質量pptまでの、更に有利には0.6質量ppmから0.0001質量pptまでの、更に有利には0.1質量ppmから0.0001質量pptまでのチタン、および/または
h. 3質量ppm以下の、有利には1質量ppmから0.0001質量pptまでの、更に好ましくは0.3質量ppmから0.0001質量pptまでの亜鉛、および/または
i. 炭素、および
j. 水素、その際、炭素および水素の含量は、それぞれ当業者に公知の測定法の検出限界の範囲の濃度が目指される。上述のように、オクタクロロトリシランの上述の元素もしくは不純物による全不純物は、高純度のオクタクロロトリシランでは100質量ppmから0.001質量pptであり、有利には超高純度のオクタクロロトリシランでは50質量ppmから0.001質量pptまで、更に有利には合計で10質量ppmから0.001質量ppt、特に有利には5質量ppmから0.001質量pptである。本発明により得られるオクタクロロトリシランは、当業者に公知の測定方法の検出限界の範囲の水素濃度を有する。
【0030】
特に有利には、オクタクロロトリシラン、特にヘキサクロロジシラン、デカクロロテトラシランおよび/またはドデカクロロペンタシランを含むオクタクロロトリシランであって、60質量%から99.999999質量%までのオクタクロロトリシランの含量を有する前記オクタクロロトリシランが、好ましくは2、4および/または5個のケイ素原子を有する他のポリクロロシランとの混合物において得られる。91質量%から99.999999質量%のオクタクロロトリシランの含量が有利であり、更に99.99質量%から99.9999999質量%までの含量を有することが好ましい。
【0031】
更なる有利な変法によれば、本発明によるオクタクロロトリシランの製造方法であって、一般式Iのモノマーのクロロシラン、特にトリクロロシランとの混合物におけるテトラクロロシランまたは式Iのモノマーのクロロシランの混合物をヘキサクロロジシランの存在下で、2つの塔を備えた1つのガス放電反応器を含む装置において熱的プラズマにさらす前記製造方法が使用される。
【0032】
式Iのモノマーのクロロシランを、前記ガス放電反応器の上流に配置されているオクタクロロトリシランの分離のための塔へと供給するか、または直接的にガス放電反応器中に導入する場合に更に有利である。分離されるオクタクロロトリシランは、高沸点物とみなされる。オクタクロロトリシランおよびヘキサクロロジシランの形成の比率は、本発明による方法においては、式Iのモノマーのクロロシランのモル比、ガス放電反応器中での接触時間、およびsccm/sで測定された貫流速度を介して制御できる。
【0033】
特に好ましい一実施形態によれば、前記方法は、オクタクロロトリシランの分離のための塔入口を備えた第一の塔を、ガス放電反応器の上流に、特にガス放電反応器の下方部に有し、かつ低沸点物、特にモノマーのクロロシランおよびヘキサクロロジシランの分離のための塔入口を有する第二の塔を、ガス放電反応器の下流に、特にガス放電反応器の上方部に有する装置において行われる。好ましくは、この第二の塔の塔出口にはガス分配器が取り付けられており、好ましくはガス分配器の後に、返送および/または分離された低沸点物の凝縮のための少なくとも1つの凝縮器が取り付けられている。前記装置は、プラズマ反応蒸留装置としても構成されていてよく、その際、プラズマ反応器は2つの反応蒸留塔の間に配置されている。
【0034】
本方法においては、式Iのクロロシランまたはヘキサクロロジシランとの混合物における式Iのクロロシランは、ガス放電反応器中に導入されるか、または第一の塔に、特に上部三分の一に供給される。
【0035】
同様に、本発明の主題は、図3〜6に表される、オクタクロロトリシランの分離のための塔入口(3a)を有する第一の塔(2a)をガス放電反応器(1)の上流に、特にガス放電反応器(1)の下方に含み、かつ低沸点物の、特にモノマーのおよび/またはダイマーのクロロシランの、特に形成されたモノマーのクロロシラン、未反応の出発物質およびダイマーのクロロシラン化合物、例えばヘキサクロロジシランの分離のための塔入口(4a)を有する第二の塔(2b)が、ガス放電反応器1の下流に、特に図3〜5に相応するガス放電反応器(1)の上方に設けられており、かつ塔(2b)の塔出口(4b)にはガス分配器(5)が取り付けられており、特に該ガス分配器(5)は、遮断機構または調節機構を有し、更に前記ガス分配器(5)には低沸点物を還流として第一の塔(2a)またはガス放電反応器(1)へと供給する返送路(6)が取り付けられている装置におけるオクタクロロトリシランの製造方法である。特に好ましい一実施形態によれば、前記ガス分配器(5)は、遮蔽機構または調節機構、有利には弁、特に有利には電磁弁を有する。電磁弁は、ポペット弁として構成されていてよい。
【0036】
ガス分配器(5)の機能は、ガス状のプロセス生成物および未反応のガス状の出発物質を2つのガス流に分けることにあり、特に返送路(6)を介して還流として再びガス放電反応器(1)または第一の塔(2a)へと、特に上半分で、好ましくは上部三分の一に供給される第一のガス流に分けることにある。第二のガス流は、例えば図5および6による装置(11)において凝縮され、そして導管(12)を介して分離でき、または定義のように返送路(6)へと遮断機構および調節機構(14)を介して供給できる。その一方で、第二のガス流の凝縮された化合物は、ガス放電反応器に直接的に供給することもできる。分離されたガス流は、互いに独立して、ガス分配器の後で、別個の凝縮器において少なくとも部分的に凝縮されうる。形成されたオクタクロロトリシランは、第一の塔(2a)において受容器または缶出部に流出する。
【0037】
有利な還流比の測定のためには、オンラインのプロセス分析工学、例えばIR分析機器および/またはプロセスガスクロマトグラフはガス分配器の前で、ガス組成物のモル組成を測定でき、そこから引き続き出発物質流を考慮に入れて所望される還流比を計算できる。それにより、出発物質のモル組成は、特に連続的プロセスにおいて、ガス放電反応器中で一般式Iのクロロシランと場合によりヘキサクロロジシランとの間の定義されたモル比を調整できるように狙い通りに制御できる。
【0038】
特に有利には前記還流比は、熱的プラズマ中で形成されたヘキサクロロジシランを当業者に周知の測定精度の範囲内で完全に返送し、そして好ましくは同時に還流においてトリクロロシランのテトラクロロシランに対するモル比を約1対20に調整することを可能にする値に調整される。特に好ましい変法によれば、第二のガス流においてヘキサクロロジシランは、特に図6に示される凝縮器(13)および制御機構(14)を備えた装置(11)において凝縮され、このようにして気体状のモノマーのクロロシランが分離される。前記ヘキサクロロジシランは、引き続き制御機構(14)を介して制御することで返送路(6)へと供給できる。その一方で、前記ヘキサクロロジシランは、ガス放電反応器または第一の塔に取り付けられた更なる返送路を介して計量供給できる。同様に、第二のガス流から凝縮されたヘキサクロロジシランを、出発物質流に直接的に添加することができる。熱的プラズマ中で形成されるオクタクロロトリシランは、ガス放電反応器から、第一の塔を通じて缶出部または受容器中に流出しうる。底部蒸発器の温度は、所望のオクタクロロトリシランが気相に変換されないように調整される。底部蒸発器としては、有利にはポリシランの穏やかな加熱のための循環蒸発器を使用することができる。その一方で、熱的負荷を最小限にするために缶出物を連続的に排出してもよい。
【0039】
従って、本発明の主題は、(i)ガス放電反応器から第二の塔(2b)を経て出て行くヘキサクロロジシランとの混合物におけるもしくはヘキサクロロジシランを有さない式Iのクロロシランを装置(0)においてガス分配器(5)で分割し、そして(ii)第一のガス流とも呼ばれるガス流の一部を、返送路(6)を介して還流として第一の塔(2a)へと返送し、(iii)この一般式Iのクロロシランの部分を、ヘキサクロロシランおよび場合により第二のガス流という一方で還流ともみなされるガス流からのヘキサクロロジシランとの混合物において再びガス放電反応器(1)に導通させ、そして(iv)オクタクロロトリシラン、特に高純度のオクタクロロトリシラン、特に有利には超高純度のオクタクロロトリシランを第一の塔(2a)の塔出口(3b)で取得する方法である。
【0040】
好ましくは、式Iのクロロシランは、ヘキサクロロジシランとの混合物においてガス分配器の後に少なくとも部分的に返送前に凝縮されうる。還流とは、全体的に返送される物質流であって、第一のガス流を含むが、少なくとも部分的に返送される第二のガス流、特に凝縮されたヘキサクロロジシランを含む前記物質流を言う。
【0041】
その場合に、第一のガス流中の、更に有利には還流中の、トリクロロシランのテトラクロロシランに対するモル比が0.1:20〜2:20であり、特にトリクロロシランのテトラクロロシランに対するモル比がほぼ1:20に調整される場合に特に有利である。誤差は、約±0.5、有利には±0.25である。
【0042】
得られたオクタクロロトリシランは、必要に応じて更に精製してよく、例えば蒸留またはクロマトグラフィーにより精製することができる。しかしながら、更なる精製は、本発明により製造されたオクタクロロトリシランのためには一般には不要である。必要に応じて、得られたオクタクロロトリシランは、ポリクロロシランの混合物が得られた場合に高分子のポリクロロシランを分離することによりオクタクロロトリシランの含量を高めるために、真空蒸留に、特に真空精製蒸留に供給することができる。その代わりに、またはそれに加えて、不純物を分離するために、またはオクタクロロトリシランの含量を調整するためにも、クロマトグラフィーによる後処理が続いてもよい。
【0043】
前記特徴の一つに加えて、またはその代わりに、有利には、少なくとも1モル%の分岐したポリクロロシラン、例えばt−デカクロロテトラシラン、イソデカクロロテトラシランおよび/または分岐したドデカクロロペンタシランを全組成物中に有する、好ましくは割合が1.5モル%以上であるポリクロロシランの含量を有するオクタクロロトリシランが得られる。
【0044】
更に、一般式Iのクロロシランまたは式Iのクロロシランの混合物および場合によりヘキサクロロジシランとの混合物におけるクロロシランが、ガス放電反応器中に導入されるか、または第一の塔へと供給される、好ましくは前記クロロシランまたは混合物が気体状でガス放電反応器または第一の塔へと供給される方法が有利である。その場合に、前記クロロシランが最初の供給に際しては蒸発され、低沸点物として返送される場合には、前記クロロシランが第一の塔中で蒸発され、その一方で、形成されたオクタクロロシランは蒸発されず、そして缶出部の受容器に流出されて収集される場合に更に有利である。
【0045】
モノマーの、およびダイマーのクロロシラン、例えばヘキサクロロジシランは、低沸点物とみなされ、その際、オクタクロロトリシランおよび少なくとも3つのケイ素原子を有するポリクロロシランは高沸点物とみなされる。本発明による方法においては、形成される水素、塩素、モノシラン、モノクロロシランおよび/または塩化水素はプロセスガスとしてプロセスから排出され、引き続き分離でき、この装置の外部で凝縮されるか、または別のプロセスへと導かれる。
【0046】
前記ガス放電反応器から、特にプラズマトロンから第二の塔を経て出て行く式Iのクロロシラン、特にテトラクロロシラン、トリクロロシランおよび/またはジクロロシランは、該方法においては、転化のためにガス放電反応器へと還流として再び供給される未反応のクロロシランに相当する。該方法の具体的な利点およびその経済性は、ガス放電反応器中で転化されなかったクロロシランの返送量または循環量から得られる。
【0047】
未反応のクロロシラン出発物質の本発明による返送およびオクタクロロトリシランの第一の塔を介しての缶出物としての同時の排出によって、本発明による単純な構成の装置または設備を用いて、特に経済的な方法を、極めて縮小された装置部材の内表面をもって提供できる。公知の方法および装置は、生成物の汚染または装置部材の費用に大きく寄与する。費用と汚染のどちらも、本発明による方法および本発明による装置を用いることで明らかに低減できた。従って、本発明による装置の構成は、本発明による方法と組み合わせて、汚染の影響を明らかに抑えて特に経済的な方法実施を可能にする。
【0048】
その他の方法実施によれば、低沸点物は、出発物質供給部の蒸発器へと、またはガス放電反応器中の蒸発器へと供給されうるので、クロロシランおよびヘキサクロロジシランは蒸発することができ、蒸発されていないオクタクロロトリシランは第一の塔中で流出しうる。
【0049】
上述の方法の特徴に加えて、またはその代わりに、一般式Iのモノマーのクロロシランのモル数の混合物を該方法で使用する場合に、または熱的プラズマ中でモル比を調整する場合に有利である。テトラクロロシランおよびトリクロロシランの有利なモル比は、好ましくは1:30から10:1までであり、特に1:25から5:1までであり、更に有利には1:20から1:10までである。
【0050】
その一方で、オクタクロロトリシランの製造のためには、好ましくは、一般式Iのクロロシランの混合物であって、テトラクロロシランおよびジクロロシランを、特に1:10から10:1までの、特に1:5から5:1までの、有利には1:2から2:1までのモル比で含む混合物を使用できる。このようにして、本発明による方法により、特に本発明による装置を使用して、それぞれ1質量ppm以下のチタンしか有さない、高純度のオクタクロロトリシラン、特に超高純度のオクタクロロトリシランを得ることができる。
【0051】
本発明によれば、熱的プラズマとしては、電気的に発生された平衡プラズマが好ましい。熱的プラズマとは、高められた圧力で作動され、平衡に至るプラズマを言う。熱的プラズマにおいて、電子TEとイオンTIはほぼ同じ温度を有する。それというのも、粒子の自由行程は短く、かつ衝突頻度は高く、こうして均一なガス温度TGが生じ、TEはTIとほぼ同じであり、それはTGとほぼ同じであるからである。従って、熱的プラズマは、高いエネルギー密度と高いプロセス温度を有する。該プラズマは、アークプラズマであり、加えられた電圧に応じて、数ミリアンペアから数キロアンペアまでの間の電流を有する。有利には、前記方法は自己放電の範囲において操作され、その際、グリム放電(70〜1000V、1〜1000mA)の範囲において、特に有利にはアーク放電(10〜50V、1A超)の範囲において作業される。アークプラズマの発生または熱的プラズマの発生は、プラズマトロンを用いて行われる。一般的に、本発明による方法の実施のために、直接式、間接式、および直流または交流のプラズマトロンが適している。有利な均一な熱的プラズマを発生させるためには、間接式の直流プラズマトロンが用いられる。
【0052】
一般式Iのモノマーのクロロシランは、間接式のプラズマトロンの場合には、該プラズマトロン内部のカソードとアノードとの間にあるアークの周囲およびその中を流れ、場合により解離および電離する。安定なアークを発生させるために、好ましくは直流プラズマトロンを用いて作業される。
【0053】
本発明による方法の実施のために、ガス放電反応器において、300〜800mbar(絶対圧)の圧力が保たれる。
【0054】
同様に、本発明の主題は、装置または設備、特に本発明による方法を実施するための装置または設備であって、装置(0)が1つのガス放電反応器(1)を有し、前記ガス放電反応器(1)には2つの塔(2a,2b)が取り付けられており、かつ前記ガス放電反応器は、好ましくはプラズマトロンである(直流または交流)、特に有利には間接式プラズマトロンである前記装置または設備である。更に有利には、前記装置は、ガス放電反応器に加えて、オクタクロロトリシランの分離のための塔入口(3a)を有する第一の塔(2a)を、ガス放電反応器(1)の上流に有し、かつ低沸点物および循環へと供給されるべきヘキサクロロジシランの分離のための塔入口(4a)を有する第二の塔(2b)を、ガス放電反応器(1)の下流に有する。更に、塔(2b)の塔出口(4b)に、低沸点物の定義されたガス流の調整のためのガス分配器(5)が取り付けられている場合に有利である。
【0055】
ガス放電反応器中にクロロシランを供給するために、該反応器には出発物質供給部(9)(図4または5)が取り付けられており、前記供給部(9)は、一つの選択肢においては、出発物質の蒸発および/または温度調節のための蒸発器(10)(図4または5)を有する。その他に、前記蒸発器はガス放電反応器(1)中に存在してもよい。
【0056】
特に有利な一実施形態においては、前記ガス分配器(5)には、遮断機構または調節機構、特に弁が取り付けられており、特に有利には前記ガス分配器(5)には、電磁弁が取り付けられており、かつ返送路(6)が取り付けられており、該返送路(6)は、低沸点物を第一の塔(2a)へと供給するか、またはガス放電反応器(1)、ガス放電反応器中の蒸発器、もしくは出発物質供給部に取り付けられた蒸発器に供給する。第一の塔(2a)の下方にある塔出口(3b)には、受容器(7)が缶出部または底部蒸発器(8)に取り付けられている。本発明によれば、第一の塔および/または第二の塔としては、いわゆる充填塔または反応塔が使用され、それらは、ラシヒリングまたは泡鐘トレイを有してよい。製造されるオクタクロロトリシランは、第一の塔の塔出口(3b)に取り付けられた受容器(7)または塔出口(3b)に取り付けられた底部蒸発器(8)において高純度または超高純度で単離される。前記ガス分配器(5)には、第二のガス流の少なくとも一部、特にヘキサクロロジシランの凝縮のための凝縮器(13)を有する装置(11)が取り付けられている。同様に、前記返送路(6)は、ガス分配器(5)および装置(11)に取り付けられている。全体として、第二の塔の低沸点物は、ガス分配器(5)において、第一のガス流と第二のガス流とに分けることができ、前記第一のガス流は、返送路(6)に導入され、かつ前記第二のガス流は、装置(11)において凝縮器(13)を通過できる。前記第二のガス流は、引き続き装置(11)から調節機構(14)を経て返送路(6)に導通できるか、または導管(12)を介して排出することができる。
【0057】
同様に、本発明の主題は、本発明による方法により得られたオクタクロロトリシランであって、90.0質量%から99.999999質量%までのオクタクロロトリシランの含量を有し、100質量%まで好ましくは少なくとも3個のケイ素原子を有するポリクロロシランを含み、特に有利には100質量%までヘキサクロロジシラン、n−デカクロロテトラシラン、イソデカクロロテトラシラン、t−デカクロロテトラシランおよび/またはドデカクロロペンタシランならびにそれらの構造異性体を含み、かつ1質量ppm以下のチタンの含量を有する前記オクタクロロトリシランである。前記得られたオクタクロロトリシランは、それに加えて、またはその代わりに、全組成中に1モル%以上の、少なくとも4個のケイ素原子を有する分岐したポリクロロシランの含量を有しうる。
【0058】
本方法により製造される1質量ppm以下のチタンの含量を有するオクタクロロトリシランは、高純度ないし超高純度のシリコンの堆積のために、好ましくはシリコンを含有する層の堆積のために極めて適している。本発明により製造される純粋なオクタクロロトリシランの使用によって、堆積の間の塩素による負荷も、堆積の間の温度も明らかに下げることができる。同様に、前記オクタクロロトリシランは、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素または酸化ケイ素の製造のために、特にこれらの材料の層の製造のために、ならびに、有利には低温エピタキシーによるエピタキシャル層の製造のために大いに適している。これらの層は、例えば化学蒸着法(CVD)により製造され得る。更に、製造される高純度または超高純度のオクタクロロトリシランは、高純度のジシラン(Si26)またはトリシラン(Si38)の製造のための出発物質としても適している。
【0059】
以下に、本発明を図面をもとにより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1:本発明による方法により製造されたオクタクロロトリシランおよびヘキサクロロジシランを含有する混合物(DMSO中の99.34MHz−29Si−NMR)。
図2図2:本発明による方法により製造されたヘキサクロロジシラン、オクタクロロトリシラン、t−デカクロロテトラシラン、n−デカクロロテトラシランおよびドデカクロロペンタシランを含むポリクロロシラン(DMSO中の99.34MHz−29Si−NMR)。Aは、Si2Cl6であり、Bは、n−Si3Cl8であり、Cは、(Cl3Si)3SiClであり、Dは、n−Si4Cl10であり、Eは、n−SiCl12である。
図3図3:ガス放電反応器(1)および第一の塔(2a)と第二の塔(2b)ならびにガス分配器(5)および返送路(6)を含む装置(0)の概略図。
図4図4:底部蒸発器(8)および出発物質供給部(9)ならびに蒸発器(10)を有する装置(0)の概略図。
図5図5:底部蒸発器(8)、出発物質供給部(9)、ガス分配器(5)および装置(11)を有し、前記装置(11)が凝縮器(13)を含む装置(0)の概略図。
図6図6:装置(11)およびガス分配器(5)の概略図。
【0061】
実施例1:オクタクロロトリシランおよびヘキサクロロジシランの混合物の製造
本発明により得られた混合物における、29Si−NMRで測定された濃度の不純物が図1に表されている。
【0062】
実施例2:ポリクロロシランの混合物の製造
異種金属の含量は、ICP−MSで測定した。本発明により得られた混合物の不純物は、図2に示されている。
【符号の説明】
【0063】
0 装置/設備、 1 ガス放電反応器、 2a 第一の塔、 2b 第二の塔、 3a 第一の塔の上方の塔入口、 3b 第一の塔の下方の塔出口、 4a 第二の塔の下方の塔入口、 4b 第一の塔の上方の塔出口、 5 凝縮器、 6 返送路、 7 受容器、 8 底部蒸発器、 9 出発物質供給部、 10 蒸発器、 11 凝縮器および調節機構(還流/分離)を含む装置、 12 導管、 13 凝縮器、 14 遮断/調節機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6