(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351716
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】伸縮式支柱を有する移動型X線装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
A61B6/00 310
A61B6/00 300D
【請求項の数】22
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-522668(P2016-522668)
(86)(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公表番号】特表2016-526425(P2016-526425A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】ES2013070473
(87)【国際公開番号】WO2015001144
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】513046799
【氏名又は名称】ソシエダッド・エスパニョーラ・デ・エレクトロメディシナ・イ・カリダッド・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】SOCIEDAD ESPANOLA DE ELECTROMEDICINA Y CALIDAD,S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(74)【代理人】
【識別番号】100179154
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 真衣
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100184424
【弁理士】
【氏名又は名称】増屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】モレノ・バジェッホ,イルデフォンソ
(72)【発明者】
【氏名】サンス・パレーニョ,ディエゴ
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア・アロンソ,アンヘル
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス・フアレス,ハビエル
(72)【発明者】
【氏名】カウサペ・ロドリゲス,アンドレス
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−164437(JP,A)
【文献】
特開昭61−208796(JP,A)
【文献】
特開昭54−040587(JP,A)
【文献】
特開2000−023958(JP,A)
【文献】
特表2013−523397(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0249804(US,A1)
【文献】
国際公開第1990/014748(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮式支柱(2)を支持するシャーシ(1)と、
垂直軸に対して回転する下部固定部分(5)、および少なくとも1つの上部可動部分(6)を有する前記伸縮式支柱(2)と、
前記伸縮式支柱(2)に沿って垂直に移動し、X線エミッタを含むヘッドアセンブリ(4)を端部で支持する伸縮式アーム(3)であって、伸長または後退時に、前記X線エミッタを水平にさらに離し、または近付けることができる伸縮式アーム(3)とを備え、
アームヘッドアセンブリが、後退位置における前記伸縮式支柱の下部位置から、伸長位置における可動支柱の上部位置まで移動可能であり、
支柱のすべての移動も手動であり機械的平衡機構を有することを特徴とし、
前記機械的平衡機構が、
垂直移動を伴う2つの吊下げ本体(一方では前記可動部分(6)、他方では前記ヘッドアセンブリ(4)を有する前記伸縮式アーム(3))の重量を平衡させる第1の機構であって、前記固定部分(5)に収容される第1の機構と、
前記伸縮式アーム(3)および前記ヘッドアセンブリ(4)から構成されたアセンブリの重量を平衡させ、前記伸縮式支柱(2)が備える前記可動部分(6)のそれぞれに収容される第2の機構とを備え、
前記第1の平衡機構が、
任意の種類の牽引技術を使用することができ、下端部で支持部(11.1)に固定された引張ばね(11)と、
1群の下部プーリ(12.1)と1群の上部プーリ(12.2)とから構成され、前記下部プーリ(12.1)が前記引張ばね(11)に接合された滑車装置(12)と、
可変径プーリ(13)であって、ケーブルが前記滑車装置(12)から出て前記プーリの溝に巻き付き、前記プーリの径が前記ケーブルの走行を通じて変化して、それによって前記プーリ(13)の出力時に前記ケーブルが一定の張力を有するようにし、この力が、平衡される2つの重量(前記可動部分(6)の重量および前記ヘッドアセンブリ(4)を有する前記伸縮式アーム(3)の重量)の合計となる可変径プーリ(13)とを備え、
前記伸縮式支柱(2)の前記可動部分(6)のそれぞれに収容された前記第2の平衡機構が、
前記伸縮式アーム(3)および前記ヘッドアセンブリ(4)の重量を、このプーリの入力時の牽引力(前記可動部分(6)と前記伸縮式アーム(3)および前記ヘッドアセンブリ(4)のアセンブリとの合計)と平衡させる役割を担う二径プーリ(14)と、
前記可変径プーリ(13)から出る前記ケーブルを、前記可動部分(6)の下部から上方へ引くことのできる回復プーリ(15)とを備えることを特徴とする、伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項2】
前記シャーシ(1)が、前記装置を移動させることのできる、手動または電動移動による車輪のシステムを有することを特徴とする、請求項1に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項3】
前記伸縮式アーム(3)が、
前記可動部分(6)に沿って可動な接合部により、前記伸縮式支柱(2)の前記可動部分(6)に固定された基部(7)と、
前記基部(7)に対して水平に摺動し、それぞれが、すぐ前の部分に対しても摺動する2つの部分(8)、(9)とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項4】
前記二径プーリ(14)が、入力径を出力径で割った比を、前記伸縮式アーム(3)アセンブリの重量と前記ヘッドアセンブリ(4)の重量との合計を前記可動部分(6)、前記伸縮式アームアセンブリ(3)、および前記ヘッドアセンブリ(4)の重量の合計で割ったものに等しくすることにより、言い換えると、入力径と出力径との比が、重量[(3)+(4)]を重量[(6)+(3)+(4)]で割った商に等しくすることにより、力の平衡を達成し前記二径プーリ(14)が前記可動部分(6)の上部に固定されることを特徴とする、請求項1に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項5】
前記可動部分(6)が、前記可動部分(6)および前記固定部分(5)の間の直線ガイド(16)と、前記可動部分(6)および前記伸縮式アーム(3)の間の直線ガイド(17)とを有することを特徴とする、請求項1に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項6】
軸受(5.1)により具体化される、前記下部固定部分(5)と前記シャーシ(1)の間の回転接合部が、オリフィス(6.1)を有し、システムの電気ケーブルが、前記シャーシ(1)から前記固定部分(5)の内側へ向けて、前記オリフィスに通されることを特徴とする、請求項1に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項7】
伸縮式支柱(2)を支持するシャーシ(1)と、
垂直軸に対して回転する下部固定部分(5)、および少なくとも1つの上部可動部分(6)を有する前記伸縮式支柱(2)と、
前記伸縮式支柱(2)に沿って垂直に移動し、X線エミッタを含むヘッドアセンブリ(4)を端部で支持する伸縮式アーム(3)であって、伸長または後退時に、前記X線エミッタを水平にさらに離し、または近付けることができる伸縮式アーム(3)とを備え、
アームヘッドアセンブリが、後退位置における前記伸縮式支柱の下部位置から、伸長位置における可動支柱の上部位置まで移動可能であり、
支柱のすべての移動も手動であり機械的平衡機構を有することを特徴とし、
前記機械的平衡機構が、
垂直移動を伴う2つの吊下げ本体(一方では前記可動部分(6)、他方では前記ヘッドアセンブリ(4)を有する前記伸縮式アーム(3))の重量を平衡させる第1の機構であって、前記固定部分(5)に収容される第1の機構と、
前記伸縮式アーム(3)および前記ヘッドアセンブリ(4)から構成されたアセンブリの重量を平衡させ、前記伸縮式支柱(2)が備える前記可動部分(6)のそれぞれに収容される第2の機構とを備え、
前記第1の平衡機構が、
任意の種類の牽引技術を使用することができ、下端部で支持部(11.1)に固定された引張ばね(11)と、
1群の下部プーリ(12.1)と1群の上部プーリ(12.2)とから構成され、前記下部プーリ(12.1)が前記引張ばね(11)に接合された滑車装置(12)と、
可変径プーリ(13)であって、ケーブルが前記滑車装置(12)から出て前記プーリの溝に巻き付き、前記プーリの径が前記ケーブルの走行を通じて変化して、それによって前記プーリ(13)の出力時に前記ケーブルが一定の張力を有するようにし、この力が、平衡される2つの重量(前記可動部分(6)の重量および前記ヘッドアセンブリ(4)を有する前記伸縮式アーム(3)の重量)の合計となる可変径プーリ(13)とを備え、
前記機械的平衡機構が、ケーブル断線の場合の安全手段を有し、前記安全手段が、前記伸縮式アーム(3)および前記可動部分(6)の間の第1のパラシュート機構(25)と、前記可動部分(6)および前記固定部分(5)の間の第2のパラシュート(26)であり、ケーブル断線の場合に、前記2つのパラシュート機構が、前記伸縮式アーム(3)、前記ヘッドアセンブリ(4)、および前記可動部分(6)の起こり得る落下を防止することを特徴とする、伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項8】
前記シャーシ(1)が、前記装置を移動させることのできる、手動または電動移動による車輪のシステムを有することを特徴とする、請求項7に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項9】
前記伸縮式アーム(3)が、
前記可動部分(6)に沿って可動な接合部により、前記伸縮式支柱(2)の前記可動部分(6)に固定された基部(7)と、
前記基部(7)に対して水平に摺動し、それぞれが、すぐ前の部分に対しても摺動する2つの部分(8)、(9)とを備えることを特徴とする、請求項7に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項10】
前記可動部分(6)が、前記可動部分(6)および前記固定部分(5)の間の直線ガイド(16)と、前記可動部分(6)および前記伸縮式アーム(3)の間の直線ガイド(17)とを有することを特徴とする、請求項7に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項11】
軸受(5.1)により具体化される、前記下部固定部分(5)と前記シャーシ(1)の間の回転接合部が、オリフィス(6.1)を有し、システムの電気ケーブルが、前記シャーシ(1)から前記固定部分(5)の内側へ向けて、前記オリフィスに通されることを特徴とする、請求項7に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項12】
伸縮式支柱(2)を支持するシャーシ(1)と、
垂直軸に対して回転する下部固定部分(5)、および少なくとも1つの上部可動部分(6)を有する前記伸縮式支柱(2)と、
前記伸縮式支柱(2)に沿って垂直に移動し、X線エミッタを含むヘッドアセンブリ(4)を端部で支持する伸縮式アーム(3)であって、伸長または後退時に、前記X線エミッタを水平にさらに離し、または近付けることができる伸縮式アーム(3)とを備え、
アームヘッドアセンブリが、後退位置における前記伸縮式支柱の下部位置から、伸長位置における可動支柱の上部位置まで移動可能であり、
支柱のすべての移動も手動であり機械的平衡機構を有することを特徴とし、
前記機械的平衡機構が、
垂直移動を伴う2つの吊下げ本体(一方では前記可動部分(6)、他方では前記ヘッドアセンブリ(4)を有する前記伸縮式アーム(3))の重量を平衡させる第1の機構であって、前記固定部分(5)に収容される第1の機構と、
前記伸縮式アーム(3)および前記ヘッドアセンブリ(4)から構成されたアセンブリの重量を平衡させ、前記伸縮式支柱(2)が備える前記可動部分(6)のそれぞれに収容される第2の機構とを備え、
前記第1の平衡機構が、
任意の種類の牽引技術を使用することができ、下端部で支持部(11.1)に固定された引張ばね(11)と、
1群の下部プーリ(12.1)と1群の上部プーリ(12.2)とから構成され、前記下部プーリ(12.1)が前記引張ばね(11)に接合された滑車装置(12)と、
可変径プーリ(13)であって、ケーブルが前記滑車装置(12)から出て前記プーリの溝に巻き付き、前記プーリの径が前記ケーブルの走行を通じて変化して、それによって前記プーリ(13)の出力時に前記ケーブルが一定の張力を有するようにし、この力が、平衡される2つの重量(前記可動部分(6)の重量および前記ヘッドアセンブリ(4)を有する前記伸縮式アーム(3)の重量)の合計となる可変径プーリ(13)とを備え、
前記下部固定部分(5)が、回転軸受(5.1)により前記シャーシ(1)に対して回転し、前記回転軸受に対して同心のオリフィスも回転接合部に有して、前記システムの電気ケーブルを前記シャーシ(1)から前記伸縮式支柱(2)へ通すことができることを特徴とする、伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項13】
前記シャーシ(1)が、前記装置を移動させることのできる、手動または電動移動による車輪のシステムを有することを特徴とする、請求項12に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項14】
前記伸縮式アーム(3)が、
前記可動部分(6)に沿って可動な接合部により、前記伸縮式支柱(2)の前記可動部分(6)に固定された基部(7)と、
前記基部(7)に対して水平に摺動し、それぞれが、すぐ前の部分に対しても摺動する2つの部分(8)、(9)とを備えることを特徴とする、請求項12に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項15】
前記可動部分(6)が、前記可動部分(6)および前記固定部分(5)の間の直線ガイド(16)と、前記可動部分(6)および前記伸縮式アーム(3)の間の直線ガイド(17)とを有することを特徴とする、請求項12に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項16】
軸受(5.1)により具体化される、前記下部固定部分(5)と前記シャーシ(1)の間の回転接合部が、オリフィス(6.1)を有し、システムの電気ケーブルが、前記シャーシ(1)から前記固定部分(5)の内側へ向けて、前記オリフィスに通されることを特徴とする、請求項12に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項17】
伸縮式支柱(2)を支持するシャーシ(1)と、
垂直軸に対して回転する下部固定部分(5)、および少なくとも1つの上部可動部分(6)を有する前記伸縮式支柱(2)と、
前記伸縮式支柱(2)に沿って垂直に移動し、X線エミッタを含むヘッドアセンブリ(4)を端部で支持する伸縮式アーム(3)であって、伸長または後退時に、前記X線エミッタを水平にさらに離し、または近付けることができる伸縮式アーム(3)とを備え、
アームヘッドアセンブリが、後退位置における前記伸縮式支柱の下部位置から、伸長位置における可動支柱の上部位置まで移動可能であり、
支柱のすべての移動も手動であり機械的平衡機構を有し、
前記伸縮式支柱(2)の前記固定部分(5)に、前軸受(18)および横軸受(19)が両側で配置され、これにより、上下動や縦揺れなしで、前記可動部分(6)を前記固定部分(5)に対して移動させることができ、
前記伸縮式アーム(3)の移動のためのベースプレート(20)では、上端部および下端部の両方において両側に前軸受(21)が配置され、他側に横軸受(22)が配置されて、前記伸縮式アーム(3)が関連付けられる前記可動部分(6)にわたる垂直移動の際に、前記伸縮式アーム(3)を案内することができることを特徴とする、伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項18】
前記シャーシ(1)が、前記装置を移動させることのできる、手動または電動移動による車輪のシステムを有することを特徴とする、請求項17に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項19】
前記伸縮式アーム(3)が、
前記可動部分(6)に沿って可動な接合部により、前記伸縮式支柱(2)の前記可動部分(6)に固定された基部(7)と、
前記基部(7)に対して水平に摺動し、それぞれが、すぐ前の部分に対しても摺動する2つの部分(8)、(9)とを備えることを特徴とする、請求項17に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項20】
前記アセンブリがユーザコンソール(27)を備えることを特徴とする、請求項1から19のいずれか1項に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項21】
前記ユーザコンソール(27)が、水平軸の周りで0°〜90°回転することを特徴とする、請求項20に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【請求項22】
前記ユーザコンソール(27)が、垂直軸の周りで−180°〜+180°回転することを特徴とする、請求項21に記載の伸縮式支柱を有する移動型X線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的
発明の名称が定めるように、本発明の目的は、空間内の任意の点に到達可能なX線を、任意の角度および/または方向で発生させるために使用され、かつ機器の移動を容易にする構成を採用可能な設計を有する、伸縮式支柱を有するX線装置である。
【0002】
移動型X線装置は、アセンブリ全体を支持するシャーシと、シャーシに接合された固定部分を備える伸縮式支柱とを備え、固定部分が少なくとも1つの伸縮部分を備え、装置は、少なくとも1つの伸縮部分に沿って移動し、かつX線エミッタを端部で支持する伸縮式アームをさらに備える。
【0003】
本発明は、装置の要素形成部分のそれぞれの特別な構成および設計を特徴とし、特に、X線エミッタを支持する支柱およびアームの両方が伸縮式に伸長可能であって、空間内の任意の点への到達を可能にすることに加えて、移動を容易にし、可動部分に沿った伸縮式アーム、および伸縮式支柱の伸長および後退のすべての移動の平衡機構を有するコンパクトな構成を採用することを特徴とする。
【0004】
したがって、本発明は、X線を発生させるための移動型装置の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
現行技術では、米国特許出願第20110249807号に開示されたような、伸縮式支柱が配置され、X線エミッタを端部に有する伸縮式アームに関連付けられたシャーシを有する、X線を発生させるための移動型装置がよく知られている。
【0006】
装置は、行われる垂直移動、支柱の可動部分の伸長および後退の移動、ならびに支柱の可動部分に沿った伸縮式アームの移動を機械的に平衡させるための手段を有する。
【0007】
2つの移動を平衡させる際に使用される手段は、釣合い重りおよび/または電動ブレーキシステムであるが、これらは費用の掛かる複雑な手段であり、電源を有することに依存し、継続的なメンテナンスを必要とする。
【0008】
したがって、本発明の目的は、伸縮式支柱と、X線エミッタが端部に組み付けられた伸縮式アームとを有し、垂直移動の平衡手段が単純化された移動型X線装置を開発することであり、これにより、請求項1に要旨が反映された、本明細書に記載されたような移動型X線装置を開発することである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、X線エミッタが端部に組み付けられた伸縮式アームを、伸縮式支柱に組み付けた移動型X線装置であって、アセンブリの垂直移動を平衡させるための手段を伸縮式支柱手段に有する移動型X線装置である。
【0010】
移動型X線装置は、伸縮式アームおよび端部のX線エミッタから構成されたアームヘッドアセンブリと、固定下部、およびアームヘッドアセンブリの高さを位置決めすることのできる可動上部を有する伸縮式支柱であって、垂直軸の周りを回転して、アームヘッドアセンブリが水平面上で支柱の周りを回転できるようにする伸縮式支柱と、垂直支柱に沿って移動し、X線エミッタを端部で支持する伸縮式アームであって、伸長または後退時に、X線エミッタを水平にさらに離し、または近付けることができる伸縮式アームと、伸縮式支柱全体を支持し、装置を移動させるための手動または電動システムを備え、移動型X線装置を移動させることのできる車輪を備えるシャーシと、X線エミッタを備えるヘッドまたはヘッドアセンブリと、ユーザコンソールとの部分から構成される。
【0011】
伸縮式支柱および伸縮式アームの伸長可能な特性を組み合わせるおかげで、一方では、X線を発生させる、空間内の任意の部分に到達することができ、他方では、コンパクトな構成を採用して、移動中に、伸縮式支柱自体が、移動型装置の前の視野における障害物とならないようにすることができる。
【0012】
シャーシおよび伸縮式アームの両方が駐車ロックを組み込むことにより、移送中にエミッタをロックして安全性を高めるようにする。
【0013】
この移送のための構成は、装置を駆動する操作者に、障害物のない視野を提供する。
【0014】
アームヘッドアセンブリを、後退位置(最小高さ位置)における可動支柱の下部位置から、伸長位置(最大高さ位置)における可動支柱の上部位置へ移動させることができる。
【0015】
加えて、支柱のすべての移動は手動であり機械的に平衡されるため、最大高さ位置および最小高さ位置の間の任意の高さで、アームヘッドアセンブリを位置決めすることが可能になる。
【0016】
移動型X線装置のシャーシに組み付けられる要素の移動は、水平面にわたる、垂直軸上での伸縮式支柱の回転と、伸縮式支柱の垂直移動、すなわち伸長および後退と、伸縮式支柱の可動部分にわたるアームヘッドアセンブリの移動と、伸縮式アームの伸長および後退と、ヘッドアセンブリの回転とを含む。
【0017】
これらのすべての移動のうち、垂直方向に行われ、平衡させる必要のあるものが2つある。すなわち、支柱の可動部分にわたるアームヘッドアセンブリの移動、ならびに伸縮式支柱の伸長および後退の移動である。
【0018】
現行技術では、この問題は、通常、釣合い重りおよび/または電動ブレーキシステムにより解決される。本発明では、前述したすべての移動が手動であり機械的に平衡されるため、メンテナンスが必要で故障の危険性の高い、電気手段に基づく平衡システムとは対照的に、平衡システムの正確かつ継続的な機能が確保される。
【0019】
本発明に提供される機械的平衡機構は、支柱の可動部分およびアームヘッドアセンブリである2つの本体のアセンブリの重量を垂直移動と平衡させる第1の機構であって、固定支柱、滑車装置、ばね、および可変径プーリから構成された第1の機構と、アームヘッドアセンブリの重量を平衡させる第2の機構であって、可動支柱、回復プーリ、および二径プーリから構成された第2の機構との、2つの部分に分割される。
【0020】
伸縮式支柱のそれぞれの新しい部分に対して、1つの新しい可変径プーリと1つの新しい回復プーリとを単に加えることにより、さらなる垂直伸縮部分を受け入れるように、第2の平衡機構を修正してもよい。
【0021】
コンパクトな伸縮式アームは、種々の部分と、支柱に接合された基部と、基部に対して水平に摺動する少なくとも1つの他の部分とを備える。
【0022】
説明を補うため、および実践的な実施形態の好ましい例による本発明の特徴をよりよく理解できるようにするために、前記説明に不可欠な部分として図面の組を添付する。図面は以下のものを表すが、例示的であり、限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の目的を含む移動型X線装置の全体を確認可能な図である。
【
図2】コンパクトな後退位置にある装置の図である。
【
図3.4】アームヘッドアセンブリが高さに関して採用することのできる極限位置を示し、
図3は最小高さ位置、
図4は最大高さ位置を示す図である。
【
図5】伸縮式支柱の機械的平衡手段を単純化して示す図である。
【
図6】伸縮式支柱および内部に収容された機械的平衡手段の分解図である。
【
図8.9】
図7に示す面VIII−VIII、IX−IXのそれぞれにおける伸縮式支柱からなる2つの断面を示す図である。
【
図10】ユーザコンソールの回転の異なる可能性を示す、コンパクトな後退位置にある装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図面を参照して、以下で、提案された発明の実施形態の好ましい態様について説明する。
【0025】
図1では、伸縮式支柱を支持し、装置を移送できるようにする手動または電動移動のための車輪を持つシステムを有するシャーシ(1)と、垂直軸に対して回転する、高さが固定された下部(5)、および高さが可動の少なくとも1つの部分(6)を備えた伸縮式支柱(2)と、伸縮式支柱に沿って垂直に移動し、X線エミッタが位置するヘッドアセンブリ(4)を端部で支持する伸縮式アーム(3)であって、伸長または後退時に、X線エミッタを水平にさらに離し、または近付けることのできる伸縮式アーム(3)とを備え、ヘッドアセンブリ(4)がX線エミッタを備える、本発明の目的である移動型装置を確認することが可能である。
【0026】
伸縮式アーム(3)は、基部(7)および少なくとも1つの他の水平可動部分を備える。考えられる実施形態では、前記伸縮式アームが、伸縮式支柱の最後の部分(最高部分)に沿って可動な接合部によって伸縮式支柱(2)に固定された基部(7)と、基部(7)に対して水平に摺動する2つの部分(8)、(9)とを備える。
【0027】
図2では、移動型装置を移送するのに便利な位置である、伸縮式支柱(2)および伸縮式アーム(3)の両方の後退(駐車)位置と、どのようにユーザ(28)の視野(29)が制限されないかを確認することができる。
【0028】
図1、
図2および
図10は、ユーザコンソール(27)があることを示す。
図1ではユーザコンソール(27)が広げられ、
図2ではユーザコンソール(27)が折り畳まれている。
【0029】
図10では、ユーザコンソール(27)が水平軸上で0°〜90°回転することができ、さらにユーザコンソール(27)が垂直軸上で−180°〜+180°回転することができる様子を示す。
【0030】
図3および
図4は、伸縮式アーム(3)およびヘッドアセンブリ(4)から構成されたアセンブリが採用することのできる高さの極限位置を示し、この位置は、後退位置(
図3)における伸縮式支柱(2)の可動部分(6)の最低位置から、伸長位置(
図4)における伸縮式支柱(2)の可動部分(6)の最高位置までに及ぶ。
【0031】
図5は、垂直に移動する吊下げ本体(一方では伸縮式支柱(2)の可動部分(6)、他方ではヘッドアセンブリ(4)を有する伸縮式アーム(3))の重量を平衡させる第1の機構であって、伸縮式支柱(2)の固定下部(5)に収容される第1の機構と、伸縮式アーム(3)およびヘッドアセンブリ(4)から構成されたアセンブリの重量を平衡させ、伸縮式支柱(2)が備える可動部分(6)のそれぞれに収容される第2の機構とを備える、機械的平衡機構の詳細を概略的に示す。
【0032】
第1の平衡機構は、可動吊下げ本体が下方へ移動するときに、可動吊下げ本体の位置重力エネルギーを位置弾性エネルギーの形で蓄え、可動吊下げ本体が上方へ移動するときにこれを戻す装置である、任意の種類の牽引技術を使用する引張ばね(11)と、ばね(11)の力を分割し、出力時にケーブルの走行を倍増させる滑車装置(12)であって、倍増および分割の程度が滑車装置(12)のプーリの数によって決まり、図示した場合には、倍増率が6であり、1群の下部プーリ(12.1)および1群の上部プーリ(12.2)から構成される滑車装置(12)と、可変径プーリ(13)であって、ばね(11)に接合された滑車装置から出るケーブルがプーリの溝に巻き付き、径がケーブルの走行を通じて変化して、前記可変径プーリの出力時にケーブルが一定の張力を有するようにし、この力が、平衡される重量(伸縮式支柱(2)の可動部分(6)の重量、ならびに伸縮式アーム(3)およびヘッドアセンブリ(4)の重量)の合計となる可変径プーリ(13)とを備える。
【0033】
固定支柱は、前述した要素、すなわち、ばね(11)、滑車装置(12)、および可変径プーリ(13)を収容する。
【0034】
伸縮式支柱(2)の固定部分(5)は、シャーシのフレームに固定され、フレーム上で回転することができる。回転機構は、支柱と同心のオリフィスを組み込んでおり、これにより、シャーシ(1)から伸縮式支柱(2)へ延び、前記オリフィスとヘッドアセンブリ(4)までとの間にある任意の装置に最終的に到達するシステムの電気ケーブルを通すことができる。
【0035】
滑車装置(12)の考えられる実施形態では、2本の軸のみで、一方での上部プーリ(12.2)および可変径プーリ(13)と、他方での下部プーリ(12.1)との軸方向整合を達成することができるが、これは同様の機能を実行可能な他の考えられる滑車装置構成を排除するものではない。
【0036】
図5に示すシステムは、垂直方向の2つの自由度を有し、移動が手動であり平衡されている。したがって、ヘッドアセンブリ(4)が手動で垂直方向へ移動された場合、2つの垂直ガイドのうちのどちらが移動し始めるかについては確定できない。垂直ガイド(16)、(17)の摩擦が異なるため、2つのうちの一方のみが、ストッパに到達するまで移動し、その後、他方が移動し始める。
【0037】
第2の平衡機構は、伸縮式アーム(3)およびヘッドアセンブリ(4)の重量を、このプーリの入力時の牽引力(伸縮式支柱(2)の可動部分(6)と伸縮式アーム(3)およびヘッド(4)アセンブリとの合計)と平衡させる役割を担う二径プーリ(14)であって、入力径と出力径との比を、アームヘッドアセンブリの重量を可動部分(6)と伸縮式アーム(3)およびヘッドアセンブリ(4)との重量で割ったものに等しくすることにより、平衡が達成され、言い換えると、入力径と出力径との比が、重量[(3)+(4)]を重量[(6)+(3)+(4)]で割った商に等しく、伸縮式支柱(2)の可動部分(6)の上部に固定される二径プーリ(14)と、可変径プーリ(13)から出るケーブルを、伸縮式支柱(2)の可動部分(6)の下部から上方へ引くことのできる回復プーリ(15)とを備える。
【0038】
この第2の平衡機構は可動部分(6)に収容されるため、回復プーリ(15)と二径プーリ(14)とを収容する。さらに、第2の平衡機構は、可動部分(6)および固定部分(5)の間の直線ガイド(16)と、可動部分(6)および伸縮式アーム(3)の間の直線ガイド(17)とを有する。
【0039】
可動支柱の新しい部分のそれぞれに対して、新しい二径プーリおよび回復プーリを単に加えることにより、伸縮式支柱(2)の可動部分と同数のさらなる部分を受け入れるように、第2の平衡機構を修正してもよい。
【0040】
この
図5では、X線エミッタ(4.1)およびX線コリメータ(4.2)から構成されたヘッドアセンブリ(4)を端部に有する伸縮式アーム(3)も示される。
【0041】
図6では、玉軸受(5.1)により達成される、下部固定部分(5)とシャーシ(1)との回転接合部に特に注目した、前述した要素が示される。前記接合部は同心のオリフィスを有し、シャーシ(1)から固定部分(5)へ延び、前記オリフィスと構成要素を備えたヘッドアセンブリ(4)との間にある任意の装置に最終的に到達し得るシステムの電気ケーブルが、オリフィスに通される。
【0042】
伸縮式支柱(2)の固定部分(5)には、前軸受(18)および横軸受(19)が両側で配置され、これにより、上下動や縦揺れなしで、可動部分(6)を固定部分(5)に対して移動させることができる。
【0043】
伸縮式アーム(3)の移動のためのベースプレート(20)も示され、基部(7)が示される。前記ベースプレート(20)は、上端部および下端部の両方において両側に前軸受(21)、他側に横軸受(22)を備え、これらの軸受により、伸縮式アーム(3)が関連付けられる可動部分(6)に沿った垂直移動の際に、伸縮式アーム(3)の上下動や縦揺れなしで、完全な案内が可能になる。
【0044】
図7では、固定部分(5)および可動部分(6)の間のガイド(16)と、伸縮式アーム(3)および可動部分(6)の間のガイド(17)とが示される。ガイド(16)は前軸受(18)および横軸受(19)を収容する。ガイド(17)は前軸受(21)および横軸受(22)を収容する。
【0045】
図8および
図9は、伸縮式支柱の断面を示し、ここでは下端部にあるばね(11)の支持部(11.1)が示される。
【0046】
また、機械的平衡機構は安全手段を有し、これは考えられる実施形態において、可変径プーリ(13)に取り付けられた電磁ブレーキ(24)と、伸縮式アーム(3)およびヘッドアセンブリ(4)から構成されたアセンブリがケーブルの断線の場合に落下することを防止する第1のパラシュート機構(25)と、ケーブル断線の場合に可動部分(6)が落下することを防止する第2のパラシュート機構(26)とを備える。
【0047】
本発明を実践する方法に加えて、本発明の特質を十分に説明したが、本発明は、基本原理が改変、変更、または修正されない限り、その要旨内において、例として示されたものとは詳細が異なる、求める保護の範囲が同様に広がる他の実施形態でも実施可能である。