【文献】
Porous Li4Ti5O12 Coated with N-Doped Carbon from Ionic Liquids for Li-Ion Batteries,Adv. Mater.,2011年 2月,23,1385-1388
【文献】
Functional Carbon Materials From Ionic Liquid Precursors,Macromol. Chem. Phys.,2012年 3月,213,1132-1145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1種のイオン液体は、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリシアノメタニド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリシアノメタニド及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
リチウム−金属バッテリー及び/又はリチウム−イオンバッテリー中でのカソード材料としての、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法により製造された活物質の使用。
【技術分野】
【0001】
本明細書で引用された全ての文献は、参照により全範囲がこの開示内容に援用される(= incorporated by reference in their entirety)。
【0002】
本発明は、炭素被覆された硫化リチウムを基礎とするバッテリー用の活物質に関する。
【0003】
先行技術:
バッテリー用、例えば電気自動車のバッテリーのための適用又は再生エネルギー(例えば風力エネルギー、太陽光エネルギー等)用の貯蔵技術のための適用は、今まで使用していたバッテリー又は市場で入手可能なバッテリーよりも明らかに高い比エネルギーを有する再充電可能なバッテリーのために新たな技術開発を必要とする。
リチウム−硫黄−電池は、この適用範囲にとって、極めて将来性のある技術である。
従って、硫化リチウムを基礎とする活物質を準備することが先行技術で試された。WO 2013/057023からは、硫化リチウムを炭素層で覆うことは公知であり、ここで、炭素層は、ポリアクリルニトリル又はスクロースから製造される。
更に、先行技術において、硫化リチウムを基礎とするのではなく、他のリチウム化合物を基礎とする、リチウムを基礎とする系が調査された。例えば、L. Zhao et al.著, Adv. Mater. 2011, 23, 1385-1388からは、特にLi
4Ti
5O
12を炭素層で覆い、ここでこの炭素層はイオン液体から製造されることが明らかにされている。この皮膜の好ましい特性は、ここでは、特にTiを有する界面相形成に要因がある。
Paraknowitsch et al.著, Macromol. Chem. Phys. 2012, 213, 1132-1145も、イオン液体から出発する多様な炭素材料を記載している。
【0004】
課題:
本発明の課題は、先行技術から公知の系と比べて改善された特性を示すバッテリー用の活物質を提供することである。
従って、特に、バッテリー用の活物質を製造する、安価で、有効でかつ確実な方法を見つけ出すことが好ましく、特にこの方法を後に場合による大規模工業的利用を考慮しながら見つけ出すことが好ましい。
更に、この課題は、バッテリー用の相応する好ましい活物質、相応する電極及びバッテリー自体を提供することであった。
更に、本発明の課題は、本発明による活物質のための相応する使用を見つけ出すことであった。
本発明の他の課題は、本発明による活物質を利用するカソード材料の準備であった。
【0005】
解決手段:
この課題は、本発明による方法、本発明による使用及び本発明による材料により解決される。
【0006】
概念規定:
本発明の範囲内で、全ての量の記載は、他に記載がない限り、質量の記載として解釈される。
本発明の範囲内で、「室温」の概念は、20℃の温度を意味する。温度の記載は、他の記載がない限り、摂氏度(℃)である。
他に記載がない限り、挙げられた反応又は方法工程は、常圧/大気圧、つまり1013mbarで実施される。
他に記載がない限り、ナノメートル範囲又はマイクロメートル範囲でのサイズの表示は走査電子顕微鏡(SEM)によって決定された/決定される、若しくは決定することができる。
「イオン液体」の概念とは、本発明の範囲内で、専らカチオンとアニオンとからなる液体であると解釈される。このイオン液体は、100℃未満の低い融点を示す。このイオン液体は、室温で蒸気圧が事実上ない。関与するイオンのサイズ及び対称性は、この場合、強い結晶格子の形成を妨害する。従って、格子エネルギーを克服しかつ固体の結晶構造を壊すために、既に低い熱エネルギーで十分である。特に、本発明の範囲内で、イオン液体とは、−10〜80℃の温度、特に室温で液体であるものであると解釈される。本発明の範囲内で、イオン液体は、ILとも省略される。
本発明の範囲内で、「及び/又は」の表現は、その都度列挙して記載された構成要素の、個々の任意の組み合わせも、全ての組み合わせも含める。
【0007】
詳細な説明:
本発明の主題は、特に、次の工程a)〜e):
a) 硫化リチウム、好ましくはLi
2Sを準備する工程、
b) 任意に、この硫化リチウムを乾燥及び/又は、特に2μm未満、殊に1μm未満のサイズに粉砕する工程、
c) 少なくとも1種のイオン液体、任意に適切な有機溶媒中のイオン液体を添加、及び混合する工程、
d) この混合物を、保護ガス下で、イオン液体の分解限度を超えかつLi
2S粒子の分解温度を下回る温度に加熱し、これにより、この少なくとも1種のイオン液体を、炭素に分解し、かつこの炭素を、Li
2S粒子の表面上に均質な層として堆積させる工程、
e)任意に、凝集体を分割するために、得られた生成物を粉砕する工程
を有するか又はこれらの工程からなる、バッテリー用の活物質の製造方法である。
【0008】
硫化リチウムとして、本発明の範囲内で、Li
2S
x(式中x=2〜8)も、Li
2Sも使用できるが、Li
2Sが好ましい。
ここで、高い比表面積を達成するために、硫化リチウムの平均粒径は、2μm未満、特に1μm未満である場合が好ましい。
使用される硫化リチウムが既に、2μm未満、特に1μm未満の平均粒径を示す限り、磨砕は必要ではない(がそれでも可能である)。
【0009】
硫化リチウムの乾燥は、通常は、50〜150℃の温度で、5時間〜2日間行い、かつ硫化リチウム粒子の粉砕は、特にボールミルを用いた磨砕及び/又は手動式の磨砕により行う。好ましくは、ボールミル中のボールの摩耗を防止するために、この磨砕をアセトニトリル中で行う。
【0010】
添加されるべきイオン液体は、保護ガス下で硫化リチウムの融点を下回る温度で加熱する際に炭素に分解されるように選択しなければならない。この場合、特に、この過程の間にまず重合するILが適している、というのも、それにより被覆がより安定でかつより均質になるためである。
ここで、使用されたILが窒素含有の黒鉛状の炭素被覆を生じる場合が好ましい。
【0011】
本発明の範囲内で使用可能なILは、好ましくはカチオンとして、窒素を含むカチオン、特にピリジニウム、ピリジニウム誘導体、ピロリジニウム、ピロリジニウム誘導体、イミダゾリウム、イミダゾリウム誘導体及び/又はこれらの混合物からなる群から選択されるカチオンを有する。この関連で、誘導体とは、炭化水素基で置換された基礎化合物である。ここで、例えば、基礎化合物の窒素原子に1又は2個のアルキル鎖、好ましくはC
1〜C
12−アルカンからなるアルキル鎖が存在してもよく、ここで、このアルキル鎖は、ヘテロ原子、特に酸素を含んでいてもよく;純粋なアルキル鎖が存在する場合に、特に、この鎖は1〜6個の炭素原子の鎖長を有する場合が好ましい。
このような誘導体は、当業者に公知である。
【0012】
この例は次のものである:
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム(BMIM)、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMIM)、
1−ブチル−1−メチルピロリジニウム(Pyr
14)、
3−メチル−N−ブチルピリジニウム(3MBP)、
1−デシル−3−メチルイミダゾリウム(DMIM)、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム(HMIM)、
1−シアノメチル−3−メチルイミダゾリウム(MCNIM)、
1,3−ビス(シアノメチル)−イミダゾリウム(BCNIM)、
N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム(Pyr
12O
1)。
【0013】
本発明の範囲内で使用可能なILは、好ましくはアニオンとして、シアノ官能基を含むアニオン、特にジシアナミド、トリシアノメタニド、これらの誘導体及び/又はこれらの混合物からなる群から選択されるアニオンを有する。この関連で誘導体は、炭化水素基で置換された基礎化合物である。
【0014】
本発明の範囲内で好ましいILは、次の:
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ジシアナミド(BMIM DCA)、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリシアノメタニド(EMIM TCM)、
1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリシアノメタニド(Pyr
14 TCM)、
3−メチル−N−ブチルピリジニウム ジシアナミド(3MBP DCA)、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ジシアナミド(EMIM DCA)
からなる群から選択されるILである。
【0015】
特に好ましくは、本発明の場合に、カチオンとして1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム及び/又は1−ブチル−1−メチルピロリジニウムが使用される。
【0016】
本発明の範囲内で特に好ましく使用可能なILは、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム トリシアノメタニド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム トリシアノメタニド及びこれらの混合物からなる群から選択されるILであり、最も好ましくは、EMIM TCM及び/又はPyr
14 TCMである。
【0017】
しかしながら、本発明の範囲内で、副次的な量、つまり20%未満、好ましくは10%未満、特に5%未満、最も好ましくは1%未満の量で、上述のカチオン及び/又はアニオンを有しないILを併用することも可能である。例として、ビストリフルオロメチルスルホニルイミド(Tf
2N)又はビス(ペルフルオロエチルスルホニル)イミド(BETI)及びあまり好ましくはないがハロゲン化物アニオン(Cl
-、Br
-、F
-、特にCl
-)が挙げられる。これらを使用しないことが好ましい。
【0018】
ここで、このILを、場合により通常の有機溶媒中に添加することもできる。好ましくは、この有機溶媒は容易に蒸発しかつ低い粘度を示すことが好ましい。
好ましくは、このための有機溶媒として、アセトニトリル、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジオキソラン、ジメチルエーテル(DME)、DME誘導体、特に導入された1つ以上のエトキシ基を有するDME誘導体、例えばトリエチレングリコールジメチルエーテル(TEG−DME)、C
6〜C
12−アルカン及びこれらの混合物、好ましくはアセトニトリルからなる群から選択される有機溶媒を使用する。
【0019】
これらの場合により使用可能な溶媒は、この場合、1:1〜50:1、特に5:1〜15:1の溶媒:ILの質量比で使用することができる。
【0020】
炭素化合物を炭素に分解するために、これを保護ガス下で、好ましくはヘリウム、ネオン、アルゴン又は窒素下で、特に好ましくはアルゴン下で、850℃までの温度、好ましくは550℃〜750℃の温度で2〜5時間、好ましくは3時間加熱する。
分解温度への加熱は、この場合、被覆の形成に影響を及ぼすことがあり、従って炭素皮膜の形成を制御する可能性が生じる。
実際の理由から、しばしば、約2〜4℃/分、特に3℃/分の温度上昇が選択される。
本発明の実施態様の場合、まず、2.5℃/分で300℃まで、引き続き3.3℃/分で最終温度まで加熱することができる。
【0021】
好ましくは、まず250〜350℃に加熱し、次いで、この温度で0.5〜3時間保持し、その後、850℃まで、好ましくは550〜750℃に加熱し、かつこの温度を2〜5時間、好ましくはこの温度で3時間保持する。
【0022】
この加熱又はこの温度での保持は、この専門分野で公知の炉、好ましくは管状炉中で行うことができる。
【0023】
このように製造された炭素層で覆われた硫化リチウム粒子は、次いで、電極に継続加工することができる。相応する方法は、同様に本発明の主題であり、かつ工程i)〜iv):
i) 上記の本発明による方法により製造された活物質を準備する工程、
ii) 少なくとも1種の導電性添加物を、場合により少なくとも1種の適切な結合剤の添加下で、添加する工程、
iia) 任意に、他の添加剤を添加する工程、
iii) これらの材料を混合する工程、
iv) 得られる混合物を、好ましくは引き延ばし及び/又はキャスティングにより加工する工程、
v) 得られた材料を乾燥する工程、
を有するか又はこれらの工程からなり、ここで、工程i)〜iv)において、好ましくは溶媒、特に好ましくはNMPを使用する。
【0024】
工程iv)における電極の引き延ばしは、機械的方法であり、この場合、集電体上にスラリーの薄い膜を塗布する。この塗布は、(例えば実験室操作の場合)箔上に引き延ばすブレード/アプリケータフレームを用いて行うことができるか、又は(例えば大工業規模の場合)スラリーを運動する箔上に塗工する。
工程iv)におけるキャスティングは、機械的方法であり、スリットキャスティングともいうこともできる。この場合、定義された供給流をキャビティ及びスリットを通して均質化して、かつ慎重に層状に間隙中で集電体上に塗工する。
その他の点で、2つの方法は当業者に公知である。
使用可能な導電性添加物の例は、例えば炭素含有材料である。
好ましい使用可能な炭素含有材料は、カーボンブラック、合成又は天然の黒鉛、グラフェン、カーボンナノ粒子、フラーレン又はこれらの混合物からなる群から選択される。
使用可能なカーボンブラックは、例えばKetjenblack(登録商標)の名称で入手可能である。
好ましい使用可能なカーボンブラックは、例えばSuper P(登録商標)C 65の商品名で入手可能である。
【0025】
これらの炭素含有材料は、1nm〜500μm、好ましくは5nm〜1μm、特に好ましくは10nm〜60nmの範囲内の平均粒度を示すことができる。
【0026】
適切な結合剤は、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリラート(PMMA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、セルロース誘導体、ポリ(ビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレン)コポリマー(PVdF−HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン−ブタジエン−ゴム(SBR)及びポリビニリデンフルオリド(PVdF)である。
好ましくは、本発明の範囲内で、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、PAN及び/又はPEO、特に好ましくはPANが、結合剤として使用される。
この結合剤は、この方法で使用する前に溶媒中に、好ましくは工程i)〜iv)中で使用される溶媒と同じ溶媒中に、特にNMP中に溶かされる。
【0027】
他の添加剤は、例えば被覆されたリチウム粉末であることができる。このリチウム粉末は、本来の活物質のリチウムの最初の不可逆的損失を補償するために、リチウムリザーバとして利用することができる。
しかしながら、通常では、他の添加剤の添加は行わなくてもよい。
【0028】
この場合、活物質は、少なくとも1種の導電性添加物及び少なくとも1種の適切な結合剤と通常の比率で混合することができる。
【0029】
本発明の一実施態様の場合、活物質:添加物:結合剤の質量比は4:4:2である。別の実施態様の場合に、この比率は4:5:1である。
別の実施態様の場合に、活物質の割合を明らかに高めることができる。
【0030】
こうして製造されたカソード材料は、次いでこの分野で通常の方法で、電極に加工することができる。
【0031】
例えば、これは、集電体として利用するアルミニウム箔、ニッケル箔又はAl/Ni箔に塗布することができる。
しかしながら、この専門分野で公知の他の集電体を使用することもできる。
【0032】
本発明の範囲内で、電解質として、当業者に公知の全ての電解質を使用することができ、この電解質は、当業者に公知のリチウム含有支持塩を含む有機電解質、並びに支持塩、例えばリチウム−ビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)又はリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)を1−ブチル−1−メチルピロリジニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(PYR
14TFSI)中に含むイオン液体、支持塩を含む高分子電解質、例えばLiTFSI(及び任意にPYR
14TFSI)を含むポリエチレンオキシド(PEO)、並びに任意に液状有機電解質、例えばTEGDME中のLiCF
3SO
3、エチレンカルボナート(EC)/ジメチルカルボナート(DMC)/ジエチルカルボナート(DEC)/プロピレンカルボナート(PC)からなる任意の混合物中のLiPF
6並びにジメトキシエタン(DME)と1,3−ジオキソラン(DOL)との混合物中のLiTFSI又はLiPF
6又はLiBF
4、又はイオン液体、固体電解質及び任意の組み合わせを含む。
好ましくは、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド中のリチウム−ビス(フルオロスルホニル)イミド又はリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、LiTFSIを含むポリエチレンオキシド、LiTFSI及びPYR
14TFSIを含むポリエチレンオキシド、TEGDME中のLiCF
3SO
3、エチレンカルボナート/ジメチルカルボナート/ジエチルカルボナート/プロピレンカルボナートからなる任意の混合物中のLiPF
6、ジメトキシエタン/1,3−ジオキソラン中のLiTFSI、ジメトキシエタン/1,3−ジオキソラン中のLiPF
6、ジメトキシエタン/1,3−ジオキソラン中のLiBF
4、3:7のテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)/1,3−ジオキソラン中のLiCF
3SO
3及びこれらの混合物からなる群から選択される電解質を使用することができる。
例示される電解質は、3:7のテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)/1,3−ジオキソラン中のLiCF
3SO
3である。
【0033】
特に好ましくは、Pyr
14 TFSIがLiTFSIと共に(9:1)、使用される。
【0034】
本発明の範囲内で、セパレータとして、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンを基礎とするセパレータ、ガラス繊維を基礎とするセパレータ、セラミックセパレータ、セルロースを基礎とするセパレータ及びこれらの混合物又はこれらの組み合わせからなる群から選択されるセパレータが使用される。
高分子電解質並びに固体電解質の場合には、これらを同時にセパレータとして利用することもできる。
好ましくは、例えばCelgard(登録商標)2500として提供される単層のポリプロピレンセパレータ、又は、特にILを基礎とする電解質を使用する場合にセラミックセパレータ又はガラス繊維を基礎とするセパレータを使用することができる。
最も好ましくは、DE 10 2013 105 678.8に記載されているような、片面が被覆されたセパレータ、特に片面がPEOで被覆されたPETセパレータが使用される。一実施態様の場合に、セラミックで被覆されたPETセパレータを使用することが最も好ましい。このセパレータによって、特に良好な結果が達成された。
【0035】
好ましくは、活物質の本発明による製造の際に、水の存在はできる限り、好ましくは乾燥室及び/又は保護ガス下での作業によって排除する、そうしないとLi
2O及びH
2Sが形成されかねないためである。
【0036】
本発明の主題は、更に、本発明により製造された活物質の、リチウム−金属バッテリー及び/又はリチウム−イオンバッテリー中でのカソード材料としての使用である。
【0037】
本発明の範囲内で、電気化学的に活性の粒子のために、次の要件を考慮して、一種の「マイクロリアクター」を製造した:
− カソード表面又はアノード側への可溶性ポリスルフィドの拡散及びそれらへの堆積の防止(パッシベーション及び「シャトルメカニズム」)。
− 充電工程及び放電工程の間の粒子の凝集の防止。
− 集電体への電気的接触の保証。
【0038】
同時に、本発明の範囲内で、このマイクロリアクターの「皮膜(Huelle)」は、リチウムイオンの活物質への輸送を保証するために、リチウムイオンに対して透過性であることが保証された。
加えて、リチウム化及び脱リチウム化による公知の体積変化を考慮した。
【0039】
「リアクター皮膜」のために炭素を使用した、というのもこの炭素は高い導電性を提供し、かつ長鎖の可溶性ポリスルフィドを「リアクター」の内部に保持するが、同時にリチウムイオンに対しては透過性であるためである。
【0040】
本発明の範囲内で、固体前駆体物質の代わりに、液状の前駆体物質をILの形で使用することで初めて、硫化リチウムの極めて均質な被膜を得ることが可能であることが見出された。
【0041】
本発明による被覆は、バッテリーサイクルの間に損傷を受けることなく体積変化を克服できる。
【0042】
更に、本発明の場合に、硫化リチウムの比較的薄い被覆が達成されるが、それにもかかわらずこの被覆は課せられた要求を満たすことができる。
【0043】
窒素を含むILの使用により、本発明の場合に、被覆の「ドーピング」が達成され、これは電気特性を著しく改善し、特に導電性を有意に高めることができる。この場合、窒素の割合に、最終温度が影響を及ぼすことができる。
【0044】
本発明の場合に製造された活物質の使用の際に達成される結果は、同等の活物質の結果よりも優れている。
【0045】
本発明によるセルによって、高い効率が達成でき;シャトル効果は、添加剤の添加なしでも抑制することができる。
【0046】
サイクル試験により、本発明によって安定なサイクルが可能であることを示すことができた。
【0047】
本発明によって、被覆が、先行技術の材料の場合よりも、より均一でかつ均質である活物質を得ることができた。
【0048】
更に、本発明によるセルの容量は、従来技術によるセルの場合よりも明らかにゆっくりと低下することが明らかとなる。
【0049】
本発明によるバッテリーの場合、バッテリーについてのコストにかなりの影響を及ぼす電解質を、単に少量必要とするだけでなく、少量の使用が更に意外にもこのようなバッテリーの性能を、比容量の向上、効率の上昇並びにサイクル安定性の改善の観点で改善する。
【0050】
本発明による方法は、全体として低コストの方法である。
本発明による方法は、大工業的規模に容易に転用可能である。
【0051】
本発明は、本発明による活物質又は本発明による方法により製造された活物質の使用下で製造されたバッテリーも、並びに本発明による活物質又は本発明による方法により製造された活物質の相応する使用も含む。
【0052】
本発明の特別な処置により得られた、電気化学的に活性な粒子の表面上の炭素層は、均一で、均質でかつ連続した被覆であり、この被覆は先行技術に対して特性の改善を引き起こす。
【0053】
ここで、本発明の多様な実施態様は、例えば、多様な従属請求項の実施態様に制限されるものではなく、任意の方法様式で互いに組み合わせることもできる。
【0054】
本発明を、次の実施例に関連して説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例】
【0056】
例1−本発明による多様な活物質の製造
まず、Li
2Sを1〜2グラム準備し、アセトニトリルの存在でボールミル中で粉砕して、二次粒子を破壊し、次いで120℃で24時間乾燥して、活物質を製造した。
引き続き、このLi
2Sを、第1表から読み取れるように、IL又はIL/アセトニトリルの、Li
2Sとの混合物を、記載された多様な比率で、それぞれ30分間乳鉢ですりつぶすことにより濡らした。
次の工程で、まず300℃まで加熱し、この温度を1時間保持することにより、保護ガス雰囲気(アルゴン)下で炭化を行った。次いで、1分当たり2.5℃で300℃にまで加熱し、次いで1分当たり3.3℃で700℃にまで加熱し、この温度を3時間保持した。
室温に冷却後に、凝集体の分割のために乳鉢ですりつぶした。
生じる材料は黒色であり、これは、硫化リチウムが完全に取り囲まれていることについての証拠である。これは、SEM画像により確かめられる(
図3)。
【表1】
【0057】
最良の被覆は、Li
2SをEMIM TCMで5:1の質量比で被覆した場合に生じ、ここで、前記イオン液体は予め1:9の質量比でアセトニトリルで希釈されていた。
【0058】
EDXマッピングによって、本発明による活物質は、硫黄及び炭素の均質な分布を示すことが確認できた。従って、本発明による活物質は均質な被覆を有する。
【0059】
EMIM TCM(5:1)についての元素分析は、約5〜6%のC割合及びN割合を示した。これは、例1b)のTGA試験とも一致し、この試験はEMIM TCMが700℃までにその質量の約2/3を失うことを示す。
【0060】
例1a〜1c−活物質の製造:
例1に一般的に記載されたように行うが、ここで、次のILを使用した:
表6行目のBMIM DCA(例1a−比率Li
2S:IL=5:1)、
表5行目のEMIM TCM(例1b−比率Li
2S:IL=5:1)、
表2行目のPyr
14 TCM(例1c−比率Li
2S:IL=1:1)。
【0061】
例1a〜1cを直接比較する場合、EMIM TCMとPyr
14 TCMとは、BMIM DCAと比べて、炭素のより高い収率を生じることが明らかになる。EMIM TCMとPyr
14 TCMとは、BMIM DCAと比べて、700℃までで質量の約2/3を失うが、BMIM DCAは、明らかにより多い。このため、熱重量分析測定(TGA)を実施した。このため、それぞれの試料を不活性ガス下で加熱し、温度に依存する質量の損失量を測定した(
図1)。
【0062】
相応するTGA調査を、WO 2013/057023による活物質を用いて実施した(
図2)。
【0063】
EMIM−TCM(
図7)を基礎として又はPAN(
図6)を用いて製造した被覆されたLi
2SのSEM写真を撮影した。EMIM−TCMを用いて、Li
2S粒子のより均質でかつより緻密な被覆が達成されたことが明らかになる。
【0064】
例2−電極の製造:
例1で製造した活物質それぞれ40gを、Super P(登録商標)Li 40g及び10%のPVdF溶液20gと、ミキサー(ボールミル)中で200〜400rpmで1時間混合し、次いで10分間休止した。これを3回繰り返した。
【0065】
得られた生成物を、室温で24時間乾燥室中で乾燥し、引き続き更に、60℃で2時間、80℃で2時間、100℃で2時間乾燥した。
【0066】
生じる混合物を、アルミニウム箔上に引き延ばし(湿潤層厚:130μm)及び僅かに負圧でかつ室温で24時間、並びに真空下でかつ100℃で48時間乾燥した。
【0067】
乾燥したカソード材料を用いて、「パウチバッグ」中に構成成分を配置することにより電極を製造した。ここで、Al/Ni集電体、電解質としてPyr
14 TFSI:LiTFSI(9:1)及びセパレータとしてCelgard(登録商標)2500を使用した。
【0068】
例3a−先行技術による活物質の製造:
WO 2013/057023の例1と同様に行った。
【0069】
例3b−先行技術による電極の製造(比較):
例2の記載と同様に行うが、活物質として例3aの活物質を使用した。
【0070】
例2及び例3(比較)により製造された電極を用いて測定を実施し、この結果は
図8及び9に示されている。
【0071】
この比較で、本発明によるセルの容量が明らかにゆっくりと低下することが明らかになる。
【0072】
例4:本発明による活物質を用いたサイクル試験:
例2と同様に行った。
電極として、Li
2S/C EMIM−TCM:SuperP:PVdF(40:20:20)を使用した(PVdF=ポリビニリデンフルオリド)。
セパレータは、ポリエチレンオキシド被覆したSeparionセパレータであり、電解質としてPyr
14 TFSI:LiTFSI(9:1)を使用した。
試験セルは40℃でのパウチバッグであった。
この結果は
図5中に示されている。
この場合、高い効率を達成したことを読み取ることができ;シャトル効果は、添加剤なしでも抑制された。