(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a)絶縁ゲートバイポーラトランジスタを備え、エミッタ電極パッドが形成された第1表面と、コレクタ電極が形成され、前記第1表面とは反対側の面である第1裏面と、を有する第1半導体チップ、
(b)ダイオードを備え、アノード電極パッドが形成された第2表面と、カソード電極が形成され、前記第2表面とは反対側の面である第2裏面と、を有する第2半導体チップ、
(c)前記第1半導体チップが搭載され、前記第1半導体チップの前記第1裏面と電気的に接続された第1上面と、前記第1上面とは反対側の面である第1下面と、を有する第1チップ搭載部、
(d)前記第2半導体チップが搭載され、前記第2半導体チップの前記第2裏面と電気的に接続された第2上面と、前記第2上面とは反対側の面である第2下面と、を有する第2チップ搭載部、
(e)前記第1半導体チップの前記エミッタ電極パッドと第1導電性部材を介して電気的に接続された第1リード、
(f)前記第2半導体チップの前記アノード電極パッドと第2導電性部材を介して電気的に接続された第2リード、
(g)第1辺および前記第1辺と対向する第2辺を備えた第1主面と、前記第1主面とは反対側の面である第2主面と、を有し、前記第1半導体チップ、前記第2半導体チップ、前記第1チップ搭載部の一部、前記第2チップ搭載部の一部、前記第1リードの一部、および前記第2リードの一部、を封止する封止体、
を有し、
前記第1チップ搭載部の前記第1下面、および、前記第2チップ搭載部の前記第2下面は、前記封止体の前記第2主面から露出し、
平面視において、前記第1リードと前記第2リードは、第1方向に延在する前記封止体の前記第1辺に沿って並んで配置され、
前記第1チップ搭載部と前記第2チップ搭載部とは、電気的に分離され、
前記第1導電性部材と前記第2導電性部材とは、電気的に分離されている、半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0014】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0015】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0016】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0017】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0018】
(実施の形態1)
本実施の形態1は、SRモータを制御するインバータ回路を含むパワーモジュールに関する技術的思想である。ここで、本明細書の説明では、概念的に、パワーモジュール全体が電子装置に対応し、パワーモジュールを構成する構成部品のうち、半導体チップを含む電子部品が半導体装置に対応する。
【0019】
<SRモータの回転原理>
例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などには、モータが搭載されており、このモータとしては、PMモータやSRモータが存在する。SRモータは、PMモータに比べて、低コストであるとともに、高速回転が可能という利点を有している。すなわち、SRモータは、レアアース(レアメタル)を使用しない点や、ロータ(回転子)の構造が単純であるという点によって、PMモータよりも低コスト化が実現できる利点を有している。また、SRモータは、ロータが単純な鉄の塊で堅牢な構造をしているため、高速回転が可能という利点を有している。したがって、近年では、低コスト化の観点から、SRモータに対するニーズが拡大してきており、本実施の形態1では、SRモータに着目している。以下では、まず始めに、このSRモータの回転原理について説明する。
【0020】
図1(a)〜(c)は、SRモータMTの回転原理を説明する図である。まず、
図1(a)に示すように、SRモータMTは、ステータSTとロータRTとを有し、ステータSTの内部に回転可能なロータRTが配置されている。そして、ステータSTの端子Wと端子W´との間(W−W´間)には、巻線が巻き付けられてコイルL(W)が形成されており、このステータSTのW−W´間に巻き付けられたコイルL(W)を含む閉回路Aに電流を流すと、W−W´間に巻き付けられたコイルL(W)に流れる電流に起因する電磁石が形成される。この結果、例えば、鉄部材から構成されているロータRTは、この電磁石によって発生する磁力である引力を受けて、
図1(a)に示す矢印の方向に引っ張られることになる。
【0021】
続いて、ステータSTのW−W´間に巻き付けられたコイルL(W)を含む閉回路Aを開放して、流れる電流を遮断すると、W−W´間に巻き付けられたコイルL(W)に流れる電流に起因する電磁石によって発生する磁力が失われる。これにより、W−W´間に巻き付けられたコイルL(W)に流れる電流に起因する電磁石からロータRTに加わる引力が無くなる。その後、
図1(b)に示すように、ステータSTの端子Uと端子U´との間(U−U´間)に巻き付けられたコイルL(U)を含む閉回路Bに電流を流すと、U−U´間に巻き付けられたコイルL(U)に流れる電流に起因する電磁石が形成される。この結果、ロータRTは、この電磁石から引力を受けて、ロータRTは、
図1(b)に示す矢印の方向に引っ張られることになる。
【0022】
次に、ステータSTのU−U´間に巻き付けられたコイルL(U)を含む閉回路Bを開放して、流れる電流を遮断すると、U−U´間に巻き付けられたコイルL(U)に流れる電流に起因する電磁石によって発生する磁力が失われる。これにより、U−U´間に巻き付けられたコイルL(U)に流れる電流に起因する電磁石からロータRTに加わる引力が無くなる。その後、
図1(c)に示すように、ステータSTの端子Vと端子V´との間(V−V´間)に巻き付けられたコイルL(V)を含む閉回路Cに電流を流すと、V−V´間に巻き付けられたコイルL(V)に流れる電流に起因する電磁石が形成される。この結果、ロータRTは、この電磁石から引力を受けて、ロータRTは、
図1(c)に示す矢印の方向に引っ張られることになる。
【0023】
以上のようにして、閉回路Aと閉回路Bと閉回路Cとを順次切り替えて、それぞれの閉回路に逐次、電流を流すことにより電磁石を形成し、この電磁石からの引力によって、例えば、
図1(a)〜(c)に示すように、ロータRTは、連続して反時計回りに回転することになる。これがSRモータMTの回転原理であり、SRモータMTを回転動作させるためには、閉回路Aと閉回路Bと閉回路Cとを切り替えて電流を流す必要があることがわかる。この閉回路Aと閉回路Bと閉回路Cの切り替え制御を行なう回路がインバータ回路である。すなわち、インバータ回路は、閉回路Aと閉回路Bと閉回路Cとを順次切り替えて、それぞれの閉回路に流れる電流を制御するように構成されている。以下に、このような機能を有するインバータ回路の構成について説明する。
【0024】
<インバータ回路の構成>
図2は、直流電源EとSRモータMTとの間にインバータ回路INVを配置した回路図である。
図2に示すように、インバータ回路INVは、直流電源Eと並列接続された第1レグLG1と第2レグLG2と第3レグLG3とを有している。そして、第1レグLG1は、直列接続された上アームUA(U)と下アームBA(U)から構成され、第2レグLG2は、直列接続された上アームUA(V)と下アームBA(V)から構成され、第3レグLG3は、直列接続された上アームUA(W)と下アームBA(W)から構成されている。そして、上アームUA(U)は、IGBTQ1とダイオードFWD1から構成され、かつ、下アームBA(U)は、IGBTQ2とダイオードFWD2から構成されている。このとき、上アームUA(U)のIGBTQ1と、下アームBA(U)のダイオードFWD2は、ともに端子TE(U1)と接続されており、IGBTQ1とダイオードFWD2は直列接続されている。一方、上アームUA(U)のダイオードFWD1と、下アームBA(U)のIGBTQ2は、ともに端子TE(U2)と接続されており、ダイオードFWD1とIGBTQ2は直列接続されている。さらに、端子TE(U1)は、SRモータの端子U´と接続され、かつ、端子TE(U2)は、SRモータの端子Uと接続されている。つまり、インバータ回路INVの端子TE(U1)と端子TE(U2)の間には、SRモータMTの端子Uと端子U´の間に存在するコイルL(U)が接続されていることになる。
【0025】
同様に、上アームUA(V)は、IGBTQ1とダイオードFWD1から構成され、かつ、下アームBA(V)は、IGBTQ2とダイオードFWD2から構成されている。このとき、上アームUA(V)のIGBTQ1と、下アームBA(V)のダイオードFWD2は、ともに端子TE(V1)と接続されており、IGBTQ1とダイオードFWD2は直列接続されている。一方、上アームUA(V)のダイオードFWD1と、下アームBA(V)のIGBTQ2は、ともに端子TE(V2)と接続されており、ダイオードFWD1とIGBTQ2は直列接続されている。さらに、端子TE(V1)は、SRモータの端子V´と接続され、かつ、端子TE(V2)は、SRモータの端子Vと接続されている。つまり、インバータ回路INVの端子TE(V1)と端子TE(V2)の間には、SRモータMTの端子Vと端子V´の間に存在するコイルL(V)が接続されていることになる。
【0026】
また、上アームUA(W)は、IGBTQ1とダイオードFWD1から構成され、かつ、下アームBA(W)は、IGBTQ2とダイオードFWD2から構成されている。このとき、上アームUA(W)のIGBTQ1と、下アームBA(W)のダイオードFWD2は、ともに端子TE(W1)と接続されており、IGBTQ1とダイオードFWD2は直列接続されている。一方、上アームUA(W)のダイオードFWD1と、下アームBA(W)のIGBTQ2は、ともに端子TE(W2)と接続されており、ダイオードFWD1とIGBTQ2は直列接続されている。さらに、端子TE(W1)は、SRモータの端子W´と接続され、かつ、端子TE(W2)は、SRモータの端子Wと接続されている。つまり、インバータ回路INVの端子TE(W1)と端子TE(W2)の間には、SRモータMTの端子Wと端子W´の間に存在するコイルL(W)が接続されていることになる。
【0027】
次に、上アームUA(U)と上アームUA(V)と上アームUA(W)のそれぞれの構成要素であるIGBTQ1のゲート電極は、ゲート制御回路GCCと電気的に接続されている。そして、このゲート制御回路GCCからのゲート制御信号によって、上アームUA(U)と上アームUA(V)と上アームUA(W)のそれぞれのIGBTQ1のオン/オフ動作(スイッチング動作)が制御されるようになっている。同様に、下アームBA(U)と下アームBA(V)と下アームBA(W)のそれぞれの構成要素であるIGBTQ2のゲート電極も、ゲート制御回路GCCと電気的に接続され、このゲート制御回路GCCからのゲート制御信号によって、下アームBA(U)と下アームBA(V)と下アームBA(W)のそれぞれのIGBTQ2のオン/オフ動作が制御されるようになっている。
【0028】
ここで、例えば、インバータ回路INVのスイッチング素子として、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を使用することが考えられる。このパワーMOSFETによれば、オン/オフ動作をゲート電極に印加する電圧で制御する電圧駆動型であるため、高速スイッチングが可能な利点がある。一方、パワーMOSFETでは、高耐圧化を図るに伴ってオン抵抗が高くなり発熱量が大きくなる性質がある。なぜなら、パワーMOSFETでは、低濃度のエピタキシャル層(ドリフト層)の厚さを厚くすることにより耐圧を確保しているが、低濃度のエピタキシャル層の厚さが厚くなると副作用として抵抗が大きくなるからである。
【0029】
これに対し、スイッチング素子として、大きな電力を取り扱うことができるバイポーラトランジスタも存在するが、バイポーラトランジスタは、ベース電流によりオン/オフ動作を制御する電流駆動型であるため、スイッチング速度が前述のパワーMOSFETに比べて一般的に遅いという性質がある。
【0030】
したがって、大電力で、かつ、高速スイッチングが必要とされる電気自動車やハイブリッド車のモータなどの用途において、パワーMOSFETやバイポーラトランジスタでは対応が困難となる。そこで、上述した大電力で、かつ、高速スイッチングが必要とされる用途には、IGBTが使用される。このIGBTは、パワーMOSFETとバイポーラトランジスタの組み合わせから構成されており、パワーMOSFETの高速スイッチング特性と、バイポーラトランジスタの高耐圧性を兼ね備えた半導体素子である。このことから、IGBTによれば、大電力で、かつ、高速スイッチングが可能であるため、大電流で、かつ、高速スイッチングが必要とされる用途に適している半導体素子ということになる。以上より、本実施の形態1におけるインバータ回路INVには、スイッチング素子としてIGBTが採用されている。
【0031】
本実施の形態1におけるインバータ回路INVでは、互いに並列接続された第1レグLG1〜第3レグLG3を有し、第1レグLG1〜第3レグLG3のそれぞれは、2つのIGBT(IGBTQ1とIGBTQ2)と、2つのダイオード(ダイオードFWD1とダイオードFWD2)とを備えている。このことから、本実施の形態1におけるインバータ回路INVは、6つのIGBTと6つのダイオードから構成されていることになる。このように構成されたインバータ回路INVにおいて、ゲート制御回路GCCで3つのIGBTQ1および3つのIGBTQ2のオン/オフ動作(スイッチング動作)を制御することにより、SRモータMTを回転させることができる。以下では、SRモータMTを回転させるためのインバータ回路INVの動作について、図面を参照しながら説明する。
【0032】
<インバータ回路の動作>
図3は、本実施の形態1におけるインバータ回路INVの動作を説明する図である。
図3に示すインバータ回路INVは、SRモータMTを回転駆動させるための回路であり、第1レグLG1〜第3レグLG3を有している。このとき、例えば、第1レグLG1は、SRモータMTの端子Uと端子U´との間(U−U´間)に設けられているコイルL(U)に流す電流を制御する回路であり、第2レグLG2は、SRモータMTの端子Vと端子V´との間(V−V´間)に設けられているコイルL(V)に流す電流を制御する回路である。同様に、第3レグLG3は、SRモータMTの端子Wと端子W´との間(W−W´間)に設けられているコイルL(W)に流す電流を制御する回路である。すなわち、
図3に示すインバータ回路INVは、第1レグLG1によってコイルL(U)に流れる電流を制御し、かつ、第2レグLG2によってコイルL(V)に流れる電流を制御し、かつ、第3レグLG3によってコイルL(W)に流れる電流を制御することになる。そして、
図3に示すインバータ回路INVにおいては、第1レグLG1によるコイルL(U)への電流制御と、第2レグLG2よるコイルL(V)への電流制御と、第3レグLG3によるコイルL(W)への電流制御は、タイミングを変えて同等に行なわれるため、以下では、例えば、第2レグLG2によるコイルL(V)への電流制御を例に挙げて説明する。
【0033】
図3において、まず、SRモータMTのコイルL(V)に電流を流し始める場合、励磁モードに示すように、IGBTQ1をオンし、かつ、IGBTQ2もオンする。このとき、直流電源EからオンしているIGBTQ1を通り、端子TE(V1)からコイルL(V)に電流が供給される。そして、コイルL(V)から端子TE(V2)を介して、オンしているIGBTQ2を通って、直流電源Eに電流が戻ることになる。このようにして、コイルL(V)に電流を流すことができる。この結果、SRモータMTのステータSTのV−V´間に電磁石が形成され、この電磁石による引力がロータRTに加わることになる。その後、電磁石による引力を維持するため、SRモータMTのコイルL(V)に流れる電流を維持する。具体的に、
図3のフリーホイールモードに示すように、IGBTQ1をオフし、かつ、IGBTQ2をオンしたままとする。この場合、
図3のフリーホイールモードに示すように、コイルL(V)と、オンしているIGBTQ2と、ダイオードFWD2によって閉回路が形成され、この閉回路に電流が流れ続ける。この結果、コイルL(V)に流れる電流が維持され、コイルL(V)に起因する電磁石からの引力がロータRTに加わり続けることになる。続いて、コイルL(V)に流れる電流を消失させる。具体的には、
図3の減磁モードに示すように、IGBTQ1をオフし、かつ、IGBTQ2もオフする。この場合、
図3の減磁モードに示すように、コイルL(V)と、オンしているIGBTQ2と、ダイオードFWD2からなる閉回路内でのコイルL(V)の残留電力が、IGBTQ2をオフすることにより、ダイオードFWD1を介して消失することになる。この結果、コイルL(V)に流れる電流が減少して停止することになり、コイルL(V)に流れる電流に起因する電磁石が消滅する。これにより、コイルL(V)に流れる電流に起因する電磁石からロータRTに加わる引力が無くなる。このような動作を第1レグLG1〜第3レグLG3でタイミングを変えて繰り返して実施することにより、SRモータMTのロータRTを回転させることができる。以上のようにして、本実施の形態1におけるインバータ回路INVによる電流制御によって、SRモータMTを回転させることができることがわかる。
【0034】
<PMモータ用のインバータ回路との相違点>
次に、本実施の形態1におけるSRモータ用のインバータ回路と、一般的に使用されるPMモータ用のインバータ回路の相違点について説明する。
図4は、PMモータ用のインバータ回路と、SRモータ用のインバータ回路との相違点を説明する図である。特に、
図4(a)は、PMモータ用のインバータ回路の一部を示す図であり、
図4(b)は、SRモータ用のインバータ回路の一部を示す図である。
【0035】
図4(a)では、PMモータの端子U(U相)と電気的に接続されるインバータ回路の一部が図示されている。具体的には、上アームを構成するIGBTQ1とダイオードFWD1が逆並列に接続され、かつ、下アームを構成するIGBTQ2とダイオードFWD2が逆並列に接続されている。そして、上アームと下アームとの間に1つの端子TE(U)が設けられており、この端子TE(U)とPMモータの端子Uが接続されることになる。このように構成されているPMモータ用のインバータ回路では、
図4(a)に示すように、PMモータのU相コイルとV相コイルとW相コイルとが3相結線(例えば、スター結線)されており、各コイルを駆動するアームの素子が上下同時動作をしないように制御される。このため、PMモータ用のインバータ回路は、U相+V相→V相+W相→W相+U相というように2相が対になって駆動するように制御される。このことから、PMモータ用のインバータ回路では、IGBTをオンしてコイルに電流を流した後、相転換のため、IGBTをオフすると、これによって、アーム内のダイオードに残留電力に起因した回生電流が流れて、残留電力が消失することになる。したがって、PMモータ用のインバータ回路では、IGBTとダイオードが対になって構成される必要がある。この結果、PMモータ用のインバータ回路では、
図4(a)に示すように上アームと下アームとの間に1つの端子TE(U)が設けられる構成となるのである。
【0036】
一方、
図4(b)では、SRモータの端子Uおよび端子U´と電気的に接続されるインバータ回路の一部が図示されている。具体的には、上アームを構成するIGBTQ1と下アームを構成するダイオードFWD2が直列接続され、上アームを構成するIGBTQ1と下アームを構成するダイオードFWD2との間に端子TE(U1)が設けられている。また、上アームを構成するダイオードFWD1と下アームを構成するIGBTQ2が直列接続され、上アームを構成するダイオードFWD1と下アームを構成するIGBTQ2との間に端子TE(U2)が設けられている。そして、インバータ回路の端子TE(U1)がSRモータの端子Uと接続され、かつ、インバータ回路の端子TE(U2)がSRモータの端子U´と接続されることになる。このように構成されているSRモータ用のインバータ回路は、SRモータの各相のコイルとHブリッジ回路からなる閉回路を構成している。このため、例えば、
図4(b)に示すように、タスキ掛けに配置された上アームのIGBTQ1と下アームのIGBTQ2をオンして、SRモータのU−U´間に配置されたコイルに電流を流した後(
図3の励磁モード参照)、相転換のため、IGBTQ1およびIGBTQ2をオフさせる場合、上述した閉回路内でコイルの残留電力を消失させる必要がある。この場合、上述した閉回路でコイルの残留電力を消失させる必要はなく、SRモータ用のインバータ回路では、上述した閉回路とは別の閉回路でコイルの残留電力を消失させている(
図3の減磁モード)。つまり、SRモータ用のインバータ回路では、
図3の減磁モードに示すように、スイッチング素子であるIGBTQ1およびIGBTQ2ではなく、一方向だけを通電するダイオードFWD1およびダイオードFWD2によって、コイルの残留電力を消失させる別の閉回路を構成できる。このようにSRモータ用のインバータ回路では、
図3の励磁モードでの閉回路と、
図3の減磁モードでの閉回路とが別回路であるという特徴があり、この特徴によって、SRモータ用のインバータ回路は、
図4(b)に示すように、端子TE(U1)と端子TE(U2)という2つの端子を有していることになる。このことから、
図4(b)に示すように、SRモータ用のインバータ回路では、端子TE(U1)と端子TE(U2)という2つの端子を上アームと下アームとの間に有している点で、
図4(a)に示すように、端子TE(U)という1つの端子を上アームと下アームとの間に有しているPMモータ用のインバータ回路と相違することになる。
【0037】
以上のことから、インバータ回路の相違に起因して、本実施の形態1におけるSRモータ用のインバータ回路を具現化する電子装置(パワーモジュール)の構成と、PMモータ用のインバータ回路を具現化する電子装置(パワーモジュール)の構成とは相違することになる。ここで、インバータ回路を具現化した電子装置においては、従来から主に使用されているPMモータに適した高性能化や小型化が図られてきているが、低コスト化の観点からニーズが急速に拡大しつつあるSRモータにおいては、SRモータを制御する電子装置に適した高性能化や小型化があまり進んでいない現状にある。そこで、本実施の形態1では、低コスト化の観点からニーズが急速に拡大しつつあるSRモータに着目し、このSRモータ用のインバータ回路を具現化する電子装置および電子装置の構成部品となる半導体装置に対する高性能化や小型化を実現する工夫を施している。以下に、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明する。特に、本実施の形態1における主な工夫点は、SRモータ用のインバータ回路を具現化する半導体装置のパッケージ構造(実装構造)および電子装置のレイアウト構成にあるが、まず、半導体装置に含まれるIGBTやダイオードについて説明し、その後、本実施の形態1における特徴点について説明することにする。
【0038】
<IGBTの構造>
本実施の形態1におけるインバータ回路INVを構成するIGBTQ1とダイオードFWD1の構造について図面を参照しながら説明することにする。本実施の形態1におけるインバータ回路INVには、IGBTQ1とIGBTQ2とが含まれ、かつ、ダイオードFWD1とダイオードFWD2とが含まれる。ただし、IGBTQ1とIGBTQ2は同様の構成をし、かつ、ダイオードFWD1とダイオードFWD2は同様の構成をしていることから、IGBTQ1およびダイオードFWD1を代表例に挙げて説明する。
【0039】
図5は、IGBTQ1が形成された半導体チップCHP1の外形形状を示す平面図である。
図5では、半導体チップCHP1の主面(表面)が示されている。
図5に示すように、本実施の形態1における半導体チップCHP1の平面形状は、長辺LS1と短辺SS1を有する長方形形状をしている。そして、長方形形状をした半導体チップCHP1の表面には、長方形形状をしたエミッタ電極パッドEPが形成されている。そして、半導体チップCHP1の長辺方向に沿って、複数の電極パッドが形成されている。具体的に、この電極パッドとして、
図5の左側からゲート電極パッドGP、温度検知用電極パッドTCP、温度検知用電極パッドTAP、電流検知用電極パッドSEP、ケルビン検知用電極パッドKPが配置されている。このように、長方形形状をした半導体チップCHP1の表面には、短辺方向に沿って、エミッタ電極パッドEPと電極パッドが配置され、かつ、長辺方向に沿って、複数の電極パッドが形成されていることになる。このとき、エミッタ電極パッドEPのサイズ(平面積)は、複数の電極パッドのそれぞれのサイズよりも遥かに大きくなっている。
【0040】
図6は、半導体チップCHP1の表面とは反対側の裏面を示す平面図である。
図6に示すように、半導体チップCHP1の裏面全体にわたって、長方形形状のコレクタ電極パッドCPが形成されていることがわかる。
【0041】
続いて、半導体チップCHP1に形成されている回路構成について説明する。
図7は、半導体チップCHP1に形成されている回路の一例を示す回路図である。
図7に示すように、半導体チップCHP1には、IGBTQ1、検知用IGBTQSおよび温度検知用ダイオードTDが形成されている。IGBTQ1はメインのIGBTであり、
図2に示すSRモータMTの駆動制御に使用される。このIGBTQ1には、エミッタ電極、コレクタ電極およびゲート電極が形成されている。そして、IGBTQ1のエミッタ電極は、
図5に示すエミッタ電極パッドEPを介してエミッタ端子ETと電気的に接続され、IGBTQ1のコレクタ電極は、
図6に示すコレクタ電極パッドCPを介してコレクタ端子CTと電気的に接続されている。また、IGBTQ1のゲート電極は、
図5に示すゲート電極パッドGPを介してゲート端子GTと電気的に接続されている。
【0042】
IGBTQ1のゲート電極は、
図2に示すゲート制御回路GCCに接続されている。このとき、ゲート制御回路GCCからの信号がゲート端子GTを介してIGBTQ1のゲート電極に印加されることにより、ゲート制御回路GCCからIGBTQ1のスイッチング動作を制御することができるようになっている。
【0043】
検知用IGBTQSは、IGBTQ1のコレクタ−エミッタ間を流れる過電流を検知するために設けられているものである。すなわち、インバータ回路INVとしてIGBTQ1のコレクタ−エミッタ間を流れる過電流を検知して、IGBTQ1を過電流による破壊から保護するために設けられている。この検知用IGBTQSにおいて、検知用IGBTQSのコレクタ電極は、IGBTQ1のコレクタ電極と電気的に接続され、かつ、検知用IGBTQSのゲート電極は、IGBTQ1のゲート電極と電気的に接続されている。また、検知用IGBTQSのエミッタ電極は、
図5に示す電流検知用電極パッドSEPを介して、IGBTQ1のエミッタ電極とは別の電流検知用端子SETと電気的に接続されている。この電流検知用端子SETは、外部に設けられる電流検知回路に接続される。そして、この電流検知回路は、検知用IGBTQSのエミッタ電極の出力に基づいて、IGBTQ1のコレクタ−エミッタ間電流を検知し、過電流が流れたときに、IGBTQ1のゲート電極に印加されるゲート信号を遮断し、IGBTQ1を保護するようになっている。
【0044】
具体的に、検知用IGBTQSは、負荷短絡などでIGBTQ1に過電流が流れないようにするための電流検出素子として使用される。例えば、メインのIGBTQ1を流れる電流と、検出用IGBTQSを流れる電流の電流比が、IGBTQ1:検知用IGBTQS=1000:1となるように設計される。つまり、メインのIGBTQ1に200Aの電流を流す場合、検出用IGBTQSには、200mAの電流が流れることになる。
【0045】
実際のアプリケーションでは、検知用IGBTQSのエミッタ電極と電気的に接続されるセンス抵抗を外付けし、このセンス抵抗の両端の電圧を制御回路にフィードバックする。そして、制御回路では、センス抵抗の両端の電圧が設定電圧以上になった場合に電源を遮断するように制御される。つまり、メインのIGBTQ1に流れる電流が過電流となった場合、検知用IGBTQSに流れる電流も増加する。この結果、センス抵抗を流れる電流も増加することになるから、センス抵抗の両端の電圧が大きくなり、この電圧が設定電圧以上になった場合にメインのIGBTQ1に流れる電流が過電流状態になっていることを把握することができるのである。
【0046】
温度検知用ダイオードTDは、IGBTQ1の温度(広く言えば、半導体チップCHP1の温度)を検知するために設けられている。すなわち、IGBTQ1の温度によって温度検知用ダイオードTDの電圧が変化することにより、IGBTQ1の温度を検知するようになっている。この温度検知用ダイオードTDには、ポリシリコンに異なる導電型の不純物を導入することによりpn接合が形成されており、カソード電極(陰極)およびアノード電極(陽極)を有している。カソード電極は、内部配線により半導体チップCHP1の上面に形成された温度検知用電極パッドTCP(
図5参照)を介して、
図7に示す温度検知用端子TCTと電気的に接続されている。同様に、アノード電極は、内部配線により半導体チップCHP1の上面に形成された温度検知用電極パッドTAP(
図5参照)を介して、
図7に示す温度検知用端子TATと電気的に接続されている。
【0047】
温度検知用端子TCTおよび温度検知用端子TATは、外部に設けられる温度検知回路に接続される。この温度検知回路は、温度検知用ダイオードTDのカソード電極およびアノード電極に接続されている温度検知用端子TCTと温度検知用端子TAT間の出力に基づいて、間接的にIGBTQ1の温度を検知し、検知した温度がある一定温度以上になったとき、IGBTQ1のゲート電極に印加されるゲート信号を遮断することにより、IGBTQ1を保護するようになっている。
【0048】
上述したように、pn接合ダイオードからなる温度検知用ダイオードTDは、ある一定値以上の順方向電圧を印加すると、急激に温度検知用ダイオードTDを流れる順方向電流が増加する特性を有している。そして、急激に順方向電流が流れ始める電圧値は、温度によって変化し、温度が上昇すると、この電圧値は低下する。そこで、本実施の形態1では、温度検知用ダイオードTDのこの特性を利用している。つまり、温度検知用ダイオードに一定の電流を流し、温度検知用ダイオードTDの両端の電圧値を測定することにより、間接的に温度モニタが可能となる。実際のアプリケーションでは、このようにして測定した温度検知ダイオードTDの電圧値(温度信号)を制御回路へフィードバックすることにより、素子動作温度が保証値(例えば、150℃〜175℃)を超えないように制御している。
【0049】
次に、
図7において、IGBTQ1のエミッタ電極は、エミッタ端子ETと電気的に接続されているとともに、エミッタ端子ETとは別の端子であるケルビン端子KTとも電気的に接続されている。このケルビン端子KTは、内部配線により半導体チップCHP1の上面に形成されているケルビン検知用電極パッドKP(
図5参照)と電気的に接続されている。したがって、IGBTQ1のエミッタ電極は、ケルビン検知用電極パッドKPを介してケルビン端子KTと電気的に接続されていることになる。このケルビン端子KTは、メインのIGBTQ1の検査用端子として使用される。すなわち、メインのIGBTQ1に大電流を流す検査時において、電圧センスをIGBTQ1のエミッタ端子ETから取る場合、エミッタ端子ETには、大電流が流れるため、配線抵抗に起因する電圧降下が無視できなくなり、正確なオン電圧の測定が困難になる。そこで、本実施の形態1では、IGBTQ1のエミッタ端子ETと電気的に接続されるが、大電流が流れない電圧センス端子としてケルビン端子KTを設けているのである。すなわち、大電流を流す検査時において、ケルビン端子KTからエミッタ電極の電圧を測定することにより、大電流の影響を受けることなく、IGBTQ1のオン電圧を測定することができる。さらに、ケルビン端子KTは、ゲート駆動出力用の電気的に独立した基準ピンとしても使用される。
【0050】
以上のことから、本実施の形態1における半導体チップCHP1によれば、電流検知回路および温度検知回路などを含む制御回路と接続することができるように構成されているので、半導体チップCHP1に含まれるIGBTQ1の動作信頼性を向上することができる。
【0051】
<IGBTのデバイス構造>
続いて、IGBTQ1のデバイス構造について説明する。
図8は、本実施の形態1におけるIGBTQ1のデバイス構造を示す断面図である。
図8において、IGBTQ1は、半導体チップの裏面に形成されたコレクタ電極CE(コレクタ電極パッドCP)を有し、このコレクタ電極CE上にp
+型半導体領域PR1が形成されている。p
+型半導体領域PR1上にはn
+型半導体領域NR1が形成され、このn
+型半導体領域NR1上にn
−型半導体領域NR2が形成されている。そして、n
−型半導体領域NR2上にはp型半導体領域PR2が形成され、このp型半導体領域PR2を貫通し、n
−型半導体領域NR2に達するトレンチTRが形成されている。さらに、トレンチTRに整合してエミッタ領域となるn
+型半導体領域ERが形成されている。トレンチTRの内部には、例えば、酸化シリコン膜よりなるゲート絶縁膜GOXが形成され、このゲート絶縁膜GOXを介してゲート電極GEが形成されている。このゲート電極GEは、例えば、ポリシリコン膜から形成され、トレンチTRを埋め込むように形成されている。また、
図8においては、トレンチゲート構造を示したが、それに限定されることはなく、例えば、図示していないが、シリコン基板上に形成されるプレーナゲート構造を用いたIGBTでもよい。
【0052】
このように構成されたIGBTQ1において、ゲート電極GEは、
図5に示すゲート電極パッドGPを介して、ゲート端子GTと接続されている。同様に、エミッタ領域となるn
+型半導体領域ERは、エミッタ電極EE(エミッタ電極パッドEP)を介して、エミッタ端子ETと電気的に接続されている。コレクタ領域となるp
+型半導体領域PR1は、半導体チップの裏面に形成されているコレクタ電極CEと電気的に接続されている。
【0053】
このように構成されているIGBTQ1は、パワーMOSFETの高速スイッチング特性および電圧駆動特性と、バイポーラトランジスタの低オン電圧特性を兼ね備えている。
【0054】
なお、n
+型半導体領域NR1は、バッファ層と呼ばれる。このn
+型半導体領域NR1は、IGBTQ1がターンオフしているときに、p型半導体領域PR2からn
−型半導体領域NR2内に成長する空乏層が、n
−型半導体領域NR2の下層に形成されているp
+型半導体領域PR1に接触してしまうパンチスルー現象を防止するために設けられている。また、p
+型半導体領域PR1からn
−型半導体領域NR2へのホール注入量の制限などの目的のために、n
+型半導体領域NR1が設けられている。
【0055】
<IGBTの動作>
次に、本実施の形態1におけるIGBTQ1の動作について説明する。まず、IGBTQ1がターンオンする動作について説明する。
図8において、ゲート電極GEと、エミッタ領域となるn
+型半導体領域ERの間に充分な正の電圧を印加することにより、トレンチゲート構造をしたMOSFETがターンオンする。この場合、コレクタ領域を構成するp
+型半導体領域PR1とn
−型半導体領域NR2の間が順バイアスされ、p
+型半導体領域PR1からn
−型半導体領域NR2へ正孔注入が起こる。続いて、注入された正孔のプラス電荷と同じだけの電子がn
−型半導体領域NR2に集まる。これにより、n
−型半導体領域NR2の抵抗低下が起こり(伝導度変調)、IGBTQ1はオン状態となる。
【0056】
オン電圧には、p
+型半導体領域PR1とn
−型半導体領域NR2との接合電圧が加わるが、n
−型半導体領域NR2の抵抗値が伝導度変調により1桁以上低下するため、オン抵抗の大半を占めるような高耐圧では、パワーMOSFETよりもIGBTQ1の方が低オン電圧となる。したがって、IGBTQ1は、高耐圧化に有効なデバイスであることがわかる。すなわち、パワーMOSFETでは、高耐圧化を図るためにドリフト層となるエピタキシャル層の厚さを厚くする必要があるが、この場合、オン抵抗も上昇することになる。これに対し、IGBTQ1においては、高耐圧化を図るために、n
−型半導体領域NR2の厚さを厚くしても、IGBTQ1のオン動作時には伝導度変調が生じる。このため、パワーMOSFETよりもオン抵抗を低くすることができるのである。つまり、IGBTQ1によれば、パワーMOSFETと比較して、高耐圧化を図る場合であっても、低オン抵抗なデバイスを実現することができるのである。
【0057】
続いて、IGBTQ1がターンオフする動作について説明する。ゲート電極GEと、エミッタ領域となるn
+型半導体領域ERの間の電圧を低下させると、トレンチゲート構造をしたMOSFETがターンオフする。この場合、p
+型半導体領域PR1からn
−型半導体領域NR2への正孔注入が停止し、すでに注入された正孔も寿命がつきて減少する。残留している正孔は、p
+型半導体領域PR1へ直接流出して(テイル電流)、流出が完了した時点でIGBTQ1はオフ状態となる。このようにしてIGBTQ1をオン/オフ動作させることができる。
【0058】
<ダイオードの構造>
次に、
図9は、ダイオードFWD1が形成された半導体チップCHP2の外形形状を示す平面図である。
図9では、半導体チップCHP2の主面(表面)が示されている。
図9に示すように、本実施の形態1における半導体チップCHP2の平面形状は、長辺LS2と短辺SS2を有する長方形形状をしている。そして、長方形形状をした半導体チップCHP2の表面には、長方形形状をしたアノード電極パッドADPが形成されている。一方、図示はしないが、半導体チップCHP2の表面とは反対側の裏面全体にわたって、長方形形状のカソード電極パッドが形成されている。
【0059】
続いて、ダイオードFWD1のデバイス構造について説明する。
図10は、ダイオードFWD1のデバイス構造を示す断面図である。
図10において、半導体チップの裏面には、カソード電極CDE(カソード電極パッドCDP)が形成されており、このカソード電極CDE上にn
+型半導体領域NR3が形成されている。そして、n
+型半導体領域NR3上にn
−型半導体領域NR4が形成されており、n
−型半導体領域NR4上に、p型半導体領域PR3が形成されている。p型半導体領域PR3とp
−型半導体領域PR4上には、アノード電極ADE(アノード電極パッドADP)が形成されている。アノード電極ADEは、例えば、アルミニウム−シリコンから構成されている。
【0060】
<ダイオードの動作>
このように構成されたダイオードFWD1によれば、アノード電極ADEに正電圧を印加し、カソード電極CDEに負電圧を印加すると、n
−型半導体領域NR4とp型半導体領域PR3の間のpn接合が順バイアスされ電流が流れる。一方、アノード電極ADEに負電圧を印加し、カソード電極CDEに正電圧を印加すると、n
−型半導体領域NR4とp型半導体領域PR3の間のpn接合が逆バイアスされ電流が流れない。このようにして、整流機能を有するダイオードFWD1を動作させることができる。
【0061】
<改善の余地>
例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などを駆動するモータには、一般的に、PMモータが使用されている。このPMモータを制御するためには、インバータ回路を構成する電子装置が必要であるが、この電子装置においては、従来から主に使用されているPMモータに適した高性能化や小型化が図られてきている。すなわち、PMモータ用のインバータ回路を具現化した電子装置やこの電子装置の構成部品である半導体装置については、高性能化や小型化の観点から改良が重ねられてきている。
【0062】
ところが、近年では、低コスト化の観点から、SRモータに対するニーズが拡大してきているが、このSRモータを制御する電子装置に適した高性能化や小型化は進んでいない現状にある。例えば、PMモータ用のインバータ回路の構成と、SRモータ用のインバータ回路の構成とは相違することから、PMモータ用のインバータ回路を構成する電子装置と、SRモータ用のインバータ回路を構成する電子装置とは、必然的に異なり、SRモータ用のインバータ回路を構成する電子装置として、PMモータ用のインバータ回路を構成する電子装置をそのまま流用することはできない。そして、低コスト化に有利なSRモータが着目されてきているのは近年になってきてからであることから、SRモータ用のインバータ回路を構成する電子装置の高性能化や小型化の検討が遅れている現状がある。
【0063】
具体的に、SRモータ用のインバータ回路を構成する従来の電子装置は、例えば、セラミック基板上に、IGBTをそれぞれ形成した6つの半導体チップと、ダイオードをそれぞれ形成した6つの半導体チップをベアチップ実装することにより実現されている。このベアチップ実装品によれば、回路構成が基板レイアウトで対応可能という利点がある一方、生産性、汎用性及び信頼性の観点から改善の余地がある。
【0064】
例えば、生産性に対する改善の余地としては、ベアチップ実装品の完成段階で1つの半導体チップでも不良であることが判明すると、その他の良品の半導体チップが無駄となり、部材のロスが大きくなる点を挙げることができる。また、汎用性に対する改善の余地としては、サイズや端子配置が固定化されることにより、実装構成の自由度が小さい点や、外形サイズが必要以上に大型化する点を挙げることができる。さらに、信頼性の観点からの改善の余地としては、半導体チップが樹脂からなる封止体によって封止されていないため、半導体チップは直接的にダメージを受けやすい点を挙げることができる。
【0065】
このように、SRモータ用のインバータ回路を構成する電子装置は、主に、上述したベアチップ実装品が主流であることから、生産性、汎用性及び信頼性の観点から改善の余地が存在し、さらには、電子装置の高性能化や小型化を進める観点からもさらなる改善の余地が存在する。そこで、本実施の形態1では、特に、SRモータ用のインバータ回路を構成する電子装置およびこの電子装置を構成する半導体装置に対する高性能化や小型化を図るための工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態1における技術的思想について説明することにする。
【0066】
<実施の形態1における半導体装置の実装構成>
本実施の形態1における半導体装置は、
図2に示すインバータ回路INVに関するものであり、インバータ回路INVの構成要素となる1つのIGBTと1つのダイオードとを1パッケージ化したものである。すなわち、本実施の形態1における半導体装置を6つ使用することにより、3相モータを駆動する3相のインバータ回路INVとなる電子装置(パワーモジュール)が構成されることになる。
【0067】
図11は、本実施の形態1における半導体装置PAC1の外観構成を示す図である。具体的に、
図11(a)は、本実施の形態1における半導体装置PAC1の表面(上面)側から見た平面図であり、
図11(b)は、本実施の形態1における半導体装置PAC1の一側面から見た側面図であり、
図11(c)は、本実施の形態1における半導体装置PAC1の裏面(下面)側から見た平面図である。
【0068】
図11に示すように、本実施の形態1における半導体装置PAC1は、矩形形状をした樹脂からなる封止体MRを有する。この封止体MRは、
図11(a)に示す上面と、この上面とは反対側の
図11(c)に示す下面と、その厚さ方向において上面と下面との間に位置する第1側面および第1側面と対向する第2側面とを有する。
図11(a)および
図11(c)においては、第1側面を構成する辺S1が図示され、第2側面を構成する辺S2が図示されている。辺S1は、x方向に延在しているとともに、辺S2もx方向に延在している。さらに、封止体MRは、第1側面および第2側面と交差する第3側面(
図11(b))と、第1側面および第2側面と交差し、第3側面と対向する第4側面とを有する。
図11(a)および
図11(c)においては、第3側面を構成する辺S3が図示されているとともに、第4側面を構成する辺S4が図示されている。すなわち、封止体MRは、x方向と交差するy方向に延在する辺S3と、この辺S3と対向する辺S4と、を有する。
【0069】
ここで、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、
図11に示すように、第1側面から複数のリードLD1Aのそれぞれの一部分と複数のリードLD1Bのそれぞれの一部分とが突出し、かつ、第2側面から複数のリードLD2のそれぞれの一部分が突出している。このとき、リードLD1Aはエミッタ端子ETを構成し、リードLD1Bはアノード端子ATを構成し、リードLD2は信号端子SGTを構成している。そして、平面視において、リードLD1AとリードLD1Bとは、x方向(第1方向)に延在する封止体MRの辺S1に沿って並んで配置されている。このとき、エミッタ端子ETを構成する複数のリードLD1Aのそれぞれの幅は、信号端子SGTを構成する複数のリードLD2のそれぞれの幅よりも大きくなっている。同様に、アノード端子ATを構成する複数のリードLD1Bのそれぞれの幅は、信号端子SGTを構成する複数のリードLD2のそれぞれの幅よりも大きくなっている。これは、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATには大電流が流れるため、できるだけ抵抗を低減する必要があるのに対し、信号端子SGTには微小な電流しか流れないことを考慮したものである。なお、本実施の形態1における半導体装置PAC1においては、
図11(a)に示すように、封止体MRの辺S3と辺S4に沿って配置されたリードは存在しない。
【0070】
本実施の形態1における半導体装置PAC1では、
図11(c)に示すように、封止体MRの裏面からチップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とが露出している。このチップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とは、封止体MRによって物理的に分離されるように配置され、この結果、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とは、電気的に分離されている。すなわち、本実施の形態1における半導体装置PAC1は、封止体MRで電気的に分離されたチップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とを有し、チップ搭載部TAB1の裏面およびチップ搭載部TAB2の裏面は、封止体MRの裏面から露出している。
【0071】
続いて、本実施の形態1における半導体装置PAC1の内部構造について説明する。
図12は、本実施の形態1における半導体装置PAC1の内部構造を示す図である。具体的に、
図12(a)が平面図に対応し、
図12(b)が
図12(a)のA−A線での断面図に対応し、
図12(c)が
図12(a)のB−B線での断面図に対応する。
【0072】
まず、
図12(a)において、エミッタ端子ETであるリードLD1Aは、封止体MRで封止された部分(第1部分)と、封止体MRから露出した部分(第2部分)と、を有し、リードLD1Aの第2部分は、スリットが形成されていることにより複数に分割されている。同様に、アノード端子ATであるリードLD1Bは、封止体MRで封止された部分(第3部分)と、封止体MRから露出した部分(第4部分)と、を有し、リードLD1Bの第4部分は、スリットが形成されていることにより複数に分割されている。
【0073】
次に、
図12(a)において、封止体MRの内部には、矩形形状のチップ搭載部TAB1と矩形形状のチップ搭載部TAB2とが配置されており、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とは、互いに分離されている。これらのチップ搭載部TAB1およびチップ搭載部TAB2は、放熱効率を高めるためのヒートスプレッダとしても機能し、例えば、熱伝導率の高い銅を主成分とする材料から構成されている。
【0074】
ここで、本明細書でいう「主成分」とは、部材を構成する構成材料のうち、最も多く含まれている材料成分のことをいい、例えば、「銅を主成分とする材料」とは、部材の材料が銅を最も多く含んでいることを意味している。本明細書で「主成分」という言葉を使用する意図は、例えば、部材が基本的に銅から構成されているが、その他に不純物を含む場合を排除するものではないことを表現するために使用している。
【0075】
チップ搭載部TAB1上には、導電性接着材ADH1を介して、IGBTが形成された半導体チップCHP1が搭載されている。このとき、半導体チップCHP1が搭載されている面をチップ搭載部TAB1の第1上面と定義し、この第1上面と反対側の面を第1下面と定義する。この場合、半導体チップCHP1は、チップ搭載部TAB1の第1上面上に搭載されているということになる。具体的に、IGBTが形成された半導体チップCHP1は、半導体チップCHP1の裏面に形成されたコレクタ電極CE(コレクタ電極パッドCP)(
図6および
図8参照)が、導電性接着剤ADH1を介して、チップ搭載部TAB1の第1上面と接触するように配置される。この場合、半導体チップCHP1の表面に形成されているエミッタ電極パッドEPおよび複数の電極パッドが上を向くことになる。
【0076】
一方、チップ搭載部TAB2上には、導電性接着材ADH1を介して、ダイオードが形成された半導体チップCHP2が搭載されている。このとき、半導体チップCHP2が搭載されている面をチップ搭載部TAB2の第2上面と定義し、この第2上面と反対側の面を第2下面と定義する。この場合、半導体チップCHP2は、チップ搭載部TAB2の第2上面上に搭載されているということになる。具体的に、ダイオードが形成された半導体チップCHP2は、半導体チップCHP2の裏面に形成されたカソード電極パッドが、導電性接着剤ADH1を介して、チップ搭載部TAB2の第2上面と接触するように配置される。この場合、半導体チップCHP2の表面に形成されているアノード電極パッドADPが上を向くことになる。したがって、本実施の形態1における半導体装置PAC1においては、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とが電気的に分離されている。このことから、チップ搭載部TAB1の第1上面と接触するように配置された半導体チップCHP1のコレクタ電極CE(コレクタ電極パッドCP)(
図6および
図8参照)と、チップ搭載部TAB2の第2上面と接触するように配置された半導体チップCHP2のカソード電極パッドとは、電気的に分離されることになる。
【0077】
なお、
図12(a)において、チップ搭載部TAB1の平面積は、IGBTが形成された半導体チップCHP1の平面積よりも大きく、かつ、チップ搭載部TAB2の平面積は、ダイオードが形成された半導体チップCHP2の平面積よりも大きくなっている。
【0078】
続いて、
図12(a)に示すように、半導体チップCHP1のエミッタ電極パッドEP上には、導電性接着材を介して、導電性部材であるクリップCLP1が配置されている。そして、このクリップCLP1は、導電性接着材を介して、エミッタ端子ETと接続されている。したがって、半導体チップCHP1のエミッタ電極パッドEPは、クリップCLP1を介してエミッタ端子ETと電気的に接続されていることになる。このクリップCLP1は、例えば、銅を主成分とする板状部材から構成される。つまり、本実施の形態1では、半導体チップCHP1のエミッタ電極パッドEPからエミッタ端子ETにわたって大電流が流れるため、大電流を流すことができるように、大きな面積を確保できるクリップCLP1を使用している。
【0079】
また、
図12(a)に示すように、半導体チップCHP1の表面には、複数の電極パッドが形成されており、この複数の電極パッドのそれぞれは、導電性部材であるワイヤWによって、信号端子SGTと電気的に接続されている。具体的に、複数の電極パッドは、ゲート電極パッドGP、温度検知用電極パッドTCP、温度検知用電極パッドTAP、電流検知用電極パッドSEP、ケルビン検知用電極パッドKPを含んでいる。そして、ゲート電極パッドGPは、信号端子SGTの1つであるゲート端子GTとワイヤWで電気的に接続されている。同様に、温度検知用電極パッドTCPは、信号端子SGTの1つである温度検知用端子TCTとワイヤWで電気的に接続され、温度検知用電極パッドTAPは、信号端子SGTの1つである温度検知用端子TATとワイヤWで電気的に接続されている。また、電流検知用電極パッドSEPは、信号端子SGTの1つである電流検知用端子SETとワイヤWで電気的に接続され、ケルビン検知用電極パッドKPは、ケルビン端子KTとワイヤWで電気的に接続されている。このとき、ワイヤWは、例えば、金、銅もしくはアルミニウムを主成分とする導電部材から構成されている。
【0080】
一方、
図12(a)に示すように、半導体チップCHP2のアノード電極パッドADP上には、導電性接着材を介して、導電性部材であるクリップCLP2が配置されている。そして、このクリップCLP2は、導電性接着材を介して、アノード端子ATと接続されている。したがって、半導体チップCHP2のアノード電極パッドADPは、クリップCLP2を介してアノード端子ATと電気的に接続されていることになる。このクリップCLP2は、例えば、銅を主成分とする板状部材から構成される。つまり、本実施の形態1では、半導体チップCHP2のアノード電極パッドADPからアノード端子ATにわたって大電流が流れるため、大電流を流すことができるように、大きな面積を確保できるクリップCLP2を使用している。
【0081】
ここで、
図12(a)に示すように、平面視において、チップ搭載部TAB2は、封止体MRの辺S1(
図11(a)参照)とチップ搭載部TAB1との間に配置されている。このことから、半導体チップCHP2は、半導体チップCHP1とエミッタ端子ET(およびアノード端子AT)との間に位置するように、チップ搭載部TAB2上に搭載され、かつ、半導体チップCHP1は、半導体チップCHP2と信号端子SGTとの間に位置するように、チップ搭載部TAB1上に搭載されている。
【0082】
言い換えれば、エミッタ端子ETおよびアノード端子AT、半導体チップCHP2、半導体チップCHP1および信号端子SGTは、y方向に沿って配置されている。具体的には、平面視において、半導体チップCHP2は、半導体チップCHP1よりもエミッタ端子ETおよびアノード端子ATに近くなるように、チップ搭載部TAB2上に搭載され、かつ、半導体チップCHP1は、半導体チップCHP2よりも信号端子SGTに近くなるように、チップ搭載部TAB1上に搭載されていることになる。
【0083】
そして、平面視において、ゲート電極パッドGPがエミッタ電極パッドEPよりも信号端子SGTに近くなるように、半導体チップCHP1はチップ搭載部TAB1上に搭載されている。さらに言えば、平面視において、ゲート電極パッドGP、温度検知用電極パッドTCP、温度検知用電極パッドTAP、電流検知用電極パッドSEP、ケルビン検知用電極パッドKPを含む複数の電極パッドがエミッタ電極パッドEPよりも信号端子SGTに近くなるように、半導体チップCHP1はチップ搭載部TAB1上に搭載されていることになる。言い換えれば、半導体チップCHP1の複数の電極パッドは、平面視において、半導体チップCHP1の辺のうち、信号端子SGTに最も近い辺に沿って配置されているということもできる。このとき、
図12(a)に示すように、平面視において、クリップCLP1は、ゲート電極パッドGPを含む複数の電極パッドおよび複数のワイヤWのいずれとも重ならないように配置されている。
【0084】
さらに、
図12(a)において、クリップCLP1とクリップCLP2は、電気的に分離されている。したがって、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とが電気的に分離され、かつ、クリップCLP1とクリップCLP2とが、電気的に分離されていることを考慮すると、本実施の形態1における半導体装置PAC1において、エミッタ端子ETとアノード端子ATは、電気的に分離されていることになる。
【0085】
そして、平面視において、クリップCLP1は、半導体チップCHP2と重なるように配置されている。具体的には、
図12(a)に示すように、平面視において、半導体チップCHPのアノード電極パッドADPは、その一部がクリップCLP1と重なるように半導体チップCHP2の表面上に形成され、かつ、クリップCLP2が、アノード電極パッドADPを覆うようにアノード電極パッドADPと電気的に接続されている。これにより、クリップCLP1は、アノード電極パッドADP上に位置するクリップCLP2の一部と重なるように配置されていることになる。
【0086】
このように内部構成されている半導体装置PAC1においては、半導体チップCHP1、半導体チップCHP2、チップ搭載部TAB1の一部、チップ搭載部TAB2の一部、リードLD1Aの一部、リードLD1Bの一部、複数の信号端子SGTのそれぞれの一部、クリップCLP1、クリップCLP2およびワイヤWが、封止体MRで封止されている。
【0087】
続いて、
図12(b)および
図12(c)に示すように、チップ搭載部TAB1上には、導電性接着材ADH1を介して、IGBTが形成された半導体チップCHP1が搭載され、チップ搭載部TAB2上には、導電性接着材ADH1を介して、ダイオードが形成された半導体チップCHP2が搭載されている。
【0088】
そして、
図12(b)に示すように、半導体チップCHP1の表面上に、導電性接着剤ADH2を介して、クリップCLP1が配置されている。このクリップCLP1は、半導体チップCHP2の上方を通りながら延在し、エミッタ端子ETと導電性接着材ADH2で接続されている。エミッタ端子ETの一部は、封止体MRから露出している。また、半導体チップCHP1は、エミッタ端子ETとは反対側に配置された信号端子SGTとワイヤWで接続され、信号端子SGTの一部も封止体MRから露出している。
【0089】
図13は、
図12(b)の領域AR1を拡大して示す図である。
図13に示すように、導電性接着材ADH2を介して半導体チップCHP2上に搭載されたクリップCLP2の上方をクリップCLP1が延在していることがわかる。すなわち、
図13に示すように、クリップCLP1は、クリップCLP2と離間しながら、クリップCLP2の一部を跨ぐように配置されていることがわかる。このことから、クリップCLP1とクリップCLP2とは物理的に分離され、この結果、クリップCLP1とクリップCLP2とは、電気的に分離されるように配置されていることがわかる。
【0090】
また、
図12(c)に示すように、半導体チップCHP2の表面上に、導電性接着剤ADH2を介して、クリップCLP2が配置されている。このクリップCLP2は、アノード端子ATと導電性接着材ADH2で接続されており、アノード端子ATの一部は、封止体MRから露出している。
【0091】
ここで、
図12(b)および
図12(c)に示すように、チップ搭載部TAB1の下面は、封止体MRの下面から露出しており、この露出しているチップ搭載部TAB1の下面がコレクタ端子となる。そして、チップ搭載部TAB1の下面は、半導体装置PAC1を実装基板に実装した際、実装基板上に形成された配線と半田付け可能な面となる。
【0092】
同様に、チップ搭載部TAB2の下面は、封止体MRの下面から露出しており、この露出しているチップ搭載部TAB2の下面がカソード端子となる。そして、チップ搭載部TAB2の下面は、半導体装置PAC1を実装基板に実装した際、実装基板上に形成された配線と半田付け可能な面となる。
【0093】
このとき、
図12(b)および
図12(c)に示すように、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とは、電気的に分離されていることから、チップ搭載部TAB1の下面であるコレクタ端子と、チップ搭載部TAB2の下面であるカソード端子とは、電気的に分離されていることになる。
【0094】
なお、
図12(b)および
図12(c)に示すように、チップ搭載部TAB1の厚さやチップ搭載部TAB2の厚さは、エミッタ端子ETの厚さやアノード端子ATの厚さや信号端子SGTの厚さよりも厚くなっている。
【0095】
本実施の形態1における半導体装置PAC1において、導電性接着材ADH1および導電性接着剤ADH2には、例えば、エポキシ樹脂等の材料をバインダとして、銀フィラー(Agフィラー)を含有させた銀ペーストを使用することができる。この銀ペーストは、成分に鉛を含まない鉛フリー材料であるため、環境に優しいという利点がある。また、銀ペーストは、温度サイクル性やパワーサイクル性に優れており、半導体装置PAC1の信頼性を向上できる利点が得られる。さらに、銀ペーストを使用する場合には、例えば、半田のリフロー処理に使用される真空リフロー装置に対して、コストの安いベーク炉で銀ペーストの熱処理が可能なため、半導体装置PAC1の組立設備が安価になるという利点も得ることができる。
【0096】
ただし、導電性接着材ADH1および導電性接着剤ADH2には、銀ペーストに限らず、例えば、半田を使用することもできる。導電性接着材ADH1および導電性接着剤ADH2として半田を使用する場合には、半田の電気伝導率が高いことから、半導体装置PAC1のオン抵抗を低減できる利点が得られる。つまり、半田を使用することにより、例えば、オン抵抗の低減が必要とされるインバータに使用される半導体装置PAC1の性能向上を図ることができる。
【0097】
ここで、本実施の形態1における半導体装置PAC1が製品として完成した後は、回路基板(実装基板)に実装される。この場合、半導体装置PAC1と実装基板の接続には、半田が使用される。半田による接続の場合、半田を溶融させて接続させるため、加熱処理(リフロー)が必要とされる。
【0098】
したがって、半導体装置PAC1と実装基板との接続に使用される半田と、上述した半導体装置PAC1の内部で使用される半田が同じ材料である場合、半導体装置PAC1と実装基板との接続の際に加えられる熱処理(リフロー)によって、半導体装置PAC1の内部に使用されている半田も溶融することになる。この場合、半田の溶融による体積膨張で半導体装置PAC1を封止している樹脂にクラックが発生したり、溶融した半田が外部へ漏れ出したりする不具合が発生することになる。
【0099】
このことから、半導体装置PAC1の内部では高融点半田が使用される。この場合、半導体装置PAC1と実装基板との接続の際に加えられる熱処理(リフロー)によって、半導体装置PAC1の内部に使用されている高融点半田は溶融することはない。この結果、高融点半田の溶融による体積膨張で半導体装置PAC1を封止している樹脂にクラックが発生したり、溶融した半田が外部へ漏れ出したりする不具合を防止することができる。
【0100】
半導体装置PAC1と実装基板との接続に使用される半田は、例えば、Sn(すず)−銀(Ag)−銅(Cu)に代表される融点が220℃程度の半田が使用され、リフローの際に、半導体装置PAC1は、260℃程度まで加熱される。このことから、例えば、本明細書でいう高融点半田とは、260℃程度に加熱しても溶融しない半田を意図している。代表的なものを挙げると、例えば、融点が300℃以上でリフロー温度が350℃程度であり、Pb(鉛)を90重量%以上含んだ半田である。
【0101】
基本的に、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、導電性接着材ADH1と、導電性接着材ADH2とは同じ材料成分であることを想定している。ただし、これに限らず、例えば、導電性接着材ADH1を構成する材料と、導電性接着材ADH2を構成する材料とを異なる材料成分から構成することもできる。
【0102】
以上のようにして、本実施の形態1における半導体装置PAC1が実装構成されていることになる。
【0103】
<実施の形態1における半導体装置の特徴>
次に、本実施の形態1における半導体装置PAC1の特徴点について説明する。
図12(a)に示すように、本実施の形態1における第1特徴点は、SRモータ用のインバータ回路の構成要素となる半導体装置として、IGBTが形成された1つの半導体チップCHP1と、ダイオードが形成された1つの半導体チップCHP2とを、1パッケージ化した半導体装置PAC1(パッケージ品)を実現している点にある。
【0104】
例えば、SRモータ用のインバータ回路を構成する従来の電子装置は、セラミック基板上に、IGBTをそれぞれ形成した6つの半導体チップと、ダイオードをそれぞれ形成した6つの半導体チップをベアチップ実装することにより実現されている。このベアチップ実装品によれば、回路構成が基板レイアウトで対応可能という利点がある一方、生産性や汎用性の観点から改善の余地がある。
【0105】
具体的に、ベアチップ実装品のデメリットとして、ベアチップ実装品の完成段階で1つの半導体チップでも不良であることが判明すると、その他の良品の半導体チップが無駄となり、部材のロスが大きくなる点を挙げることができる。また、ベアチップ実装品では、サイズや端子配置が固定化されることにより、実装構成の自由度が小さい点や、外形サイズが必要以上に大型化する点といったデメリットも存在する。さらに、半導体チップが樹脂からなる封止体によって封止されていないため、半導体チップは直接的にダメージを受けやすいといったデメリットも存在する。
【0106】
このように、SRモータ用のインバータ回路を構成する従来の電子装置は、ベアチップ実装品であることから、ベアチップ実装品に特有の生産性、汎用性及び信頼性の観点からの改善の余地が存在し、SRモータ用のインバータ回路を構成する電子装置では、高性能化や小型化が充分に検討されていない実情がある。つまり、SRモータ用のインバータ回路を構成する従来の電子装置においては、この電子装置の構成要素として、ベアチップ実装品であることが前提となっており、ベアチップ実装品以外の構成要素を採用する観点が欠落している。すなわち、SRモータ用のインバータ回路を構成する電子装置の構成要素として、パッケージ化された半導体装置を使用するという思想がまったく存在していないのである。
【0107】
この点に関し、本実施の形態1の基本思想は、SRモータ用のインバータ回路を構成する電子装置の構成要素として、パッケージ化された半導体装置を使用する思想である。具体的に、本実施の形態1では、SRモータ用のインバータ回路の構成要素となる半導体装置として、IGBTが形成された1つの半導体チップCHP1と、ダイオードが形成された1つの半導体チップCHP2とを、1パッケージ化した半導体装置PAC1を実現している。そして、本実施の形態1によれば、既に良品判定されたパッケージ品(半導体装置PAC1)を複数個使用することにより、SRモータ用のインバータ回路である電子装置を構成している。したがって、本実施の形態1では、例えば、複数のパッケージ品のうちの一部に不良品が紛れ込んだとしても、この不良品自体を容易に取り換えることができる。すなわち、本実施の形態1によれば、SRモータ用のインバータ回路である電子装置を複数のパッケージ品から構成しているため、不良品のパッケージ品自体を容易に取り換えることができ、これによって、その他の良品のパッケージ品が無駄になることを防止できる。この結果、本実施の形態1によれば、部材のロスを大幅に減少することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0108】
つまり、ベアチップ実装品の場合、セラミック基板上に複数の半導体チップがベアチップ実装され、それぞれの半導体チップのパッドとセラミック基板の端子とがワイヤで接続された構成をしている。この場合、複数の半導体チップのうちの一部の半導体チップが不良品であると判明しても、不良品の半導体チップ自体を容易に取り換えることができない。なぜなら、不良品の半導体チップ自体は、ワイヤでセラミック基板と接続されており、この不良品の半導体チップを取り除いて、新たな良品の半導体チップに取り換えても、この取り換えた半導体チップとセラミック基板とをワイヤボンディングすることは困難と考えられるからである。
【0109】
これに対し、本実施の形態1では、SRモータ用のインバータ回路である電子装置を複数のパッケージ品から構成しているため、不良品のパッケージ品自体を容易に取り換えることができる。なぜなら、不良品のパッケージ品を取り除いた後、新たな良品のパッケージ品を取り付ける際、ベアチップ実装品のようにワイヤボンディングする必要はなく、パッケージ品から突き出ている端子を半田や銀ペーストで実装基板に接合するだけでよいからである。すなわち、パッケージ品の取り換え作業は、ベアチップ実装品の取り換え作業に比べて、非常に簡単であり、この結果、その他の良品が無駄になることを防止できる。
【0110】
さらに、本実施の形態1におけるパッケージ品では、ベアチップ実装品よりも、サイズや端子配置の自由度を大きくすることができ、この自由度を活用することにより、外形サイズの小型化を図ることができる利点もある。また、半導体チップを樹脂からなる封止体によって封止された複数のパッケージ品として構成しているため、ベアチップ実装品よりも、半導体チップへの直接的なダメージを軽減できる利点もある。以上のことから、SRモータ用のインバータ回路である電子装置の構成要素にパッケージ品(半導体装置PAC1)を採用するという本実施の形態1における第1特徴点によれば、電子装置のコスト低減、小型化、高信頼性を推進できる優位性を有していることになる。
【0111】
続いて、本実施の形態1における第2特徴点は、1パッケージ化された半導体装置PAC1がSRモータ専用の構成を実現するように工夫されている点にある。以下では、本実施の形態1における第2特徴点の具体的構成について説明する。
【0112】
例えば、
図4(a)に示すように、PMモータ用のインバータ回路では、上アームがIGBTQ1とダイオードFWD1から構成され、下アームがIGBTQ2とダイオードFWD2から構成されており、上アームと下アームとの間にある端子TE(U)がPMモータのU相と接続されている。すなわち、PMモータ用のインバータ回路では、1つの端子TE(U)とPMモータのU相が接続されていることになる。
【0113】
これに対し、
図4(b)に示すように、SRモータ用のインバータ回路でも、上アームがIGBTQ1とダイオードFWD1から構成され、下アームがIGBTQ2とダイオードFWD2から構成されているが、上アームと下アームとの間に2つの端子TE(U1)と端子TE(U2)とが設けられている。そして、これらの2つの端子TE(U1)と端子TE(U2)がSRモータと接続されている。つまり、SRモータ用のインバータ回路では、上アームと下アームとの間に、互いに分離された端子TE(U1)と端子TE(U2)とが設けられている点で、上アームと下アームとの間に、1つの端子TE(U)だけが設けられているPMモータ用のインバータ回路と相違する。
【0114】
したがって、SRモータ用のインバータ回路の上アームに着目すると、IGBTQ1のエミッタは端子TE(U1)と接続され、ダイオードFWD1のアノードは、端子TE(U2)と接続されていることになる。このことは、端子TE(U1)と端子TE(U2)とが互いに分離されていることを考慮すると、IGBTQ1のエミッタとダイオードFWD1のアノードとが互いに分離されていることを意味する。一方、SRモータ用のインバータ回路の下アームに着目すると、IGBTQ2のコレクタは端子TE(U2)と接続され、ダイオードFWD2のカソードは、端子TE(U1)と接続されていることになる。このことは、端子TE(U1)と端子TE(U2)とが互いに分離されていることを考慮すると、IGBTQ2のコレクタとダイオードFWD2のカソードとが互いに分離されていることを意味する。このことから、1パッケージ化された半導体装置PAC1がSRモータ専用の構成を実現し、かつ、上アームと下アームの両方に適用可能なように構成するためには、IGBTのエミッタとダイオードのアノードとが互いに分離されているとともに、IGBTのコレクタとダイオードのカソードとが互いに分離されているように、半導体装置PAC1が実装構成されている必要がある。実際に、本実施の形態1における半導体装置PAC1は、IGBTのエミッタとダイオードのアノードとが互いに分離され、かつ、IGBTのコレクタとダイオードのカソードとが互いに分離される実装構成が実現されており、この実装構成が本実施の形態1における第2特徴点である。
【0115】
具体的に、
図12(a)において、IGBTが形成された半導体チップCHP1が搭載されたチップ搭載部TAB1と、ダイオードが形成された半導体チップCHP2が搭載されたチップ搭載部TAB2とが、電気的に分離されている。このことは、IGBTが形成された半導体チップCHP1の裏面がコレクタとして機能し、ダイオードが形成された半導体チップCHP2の裏面がカソードとして機能することを考慮すると、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とが電気的に分離されているということは、IGBTのコレクタとダイオードのカソードが電気的に分離されていることを意味する。これにより、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とを電気的に分離する構成によって、IGBTのコレクタとダイオードのカソードとが電気的に分離される構成が実現される。
【0116】
次に、
図12(a)に示すように、半導体チップCHP1の表面に形成されたエミッタ電極パッドEPとクリップCLP1とが電気的に接続され、かつ、このクリップCLP1がエミッタ端子ETと電気的に接続されている。一方、半導体チップCHP2の表面に形成されたアノード電極パッドADPとクリップCLP2とが電気的に接続され、かつ、このクリップCLP2がアノード端子ATと電気的に接続されている。このとき、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、クリップCLP1とクリップCLP2とが電気的に分離されている。このことは、エミッタ電極パッドEPとアノード電極パッドADPとが電気的に分離されていることを意味する。言い換えれば、エミッタ端子ETとアノード端子ATとが電気的に分離されている。これにより、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、クリップCLP1とクリップCLP2とを電気的に分離する構成によって、IGBTのコレクタとダイオードのカソードとが電気的に分離される構成が実現されることになる。
【0117】
以上のことから、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とを電気的に分離し、かつ、クリップCLP1とクリップCLP2とを電気的に分離するという第2特徴点により、IGBTのエミッタとダイオードのアノードとが互いに分離され、かつ、IGBTのコレクタとダイオードのカソードとが互いに分離される。この結果、本実施の形態1における半導体装置PAC1によれば、1パッケージ化された半導体装置PAC1がSRモータ専用の実装構成を実現し、かつ、上アームと下アームの両方に適用可能な構成を実現することができる。
【0118】
なお、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とを電気的に分離し、かつ、クリップCLP1とクリップCLP2とを電気的に分離することが望ましい。なぜなら、この構成の半導体装置PAC1によれば、IGBTのエミッタとダイオードのアノードとを電気的に分離する必要のある上アームに使用することができるとともに、IGBTのコレクタとダイオードのカソードとを電気的に分離する必要のある下アームにも使用することができるからである。すなわち、本実施の形態1における第2特徴点によれば、同一の構造で上アームと下アームの両方にできるため、部品の共通化を図ることができる利点が得られる。
【0119】
ただし、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、少なくとも、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とを電気的に分離するか、または、クリップCLP1とクリップCLP2とを電気的に分離していればよい。例えば、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とを電気的に分離する構成が実現されていれば、クリップCLP1とクリップCLP2とが一体化して電気的に接続されていてもよい。この場合は、エミッタ端子ETとアノード端子ATとが電気的に接続されるため、上アームに使用することはできないが、IGBTのコレクタとダイオードのカソードとが電気的に分離される構成が実現されるため、下アームに使用することができるからである。一方、例えば、クリップCLP1とクリップCLP2とを電気的に分離する構成が実現されていれば、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とが一体化して電気的に接続されていてもよい。この場合は、IGBTのコレクタとダイオードのカソードが電気的に接続されるため、下アームに使用することはできないが、IGBTのエミッタとダイオードのアノードとが電気的に分離される構成が実現されるため、上アームに使用することができるからである。
【0120】
すなわち、本実施の形態1における半導体装置PAC1は、上アームと下アームの両方に使用する観点から、本実施の形態1における第2特徴点を有していることが望ましいが、上アーム専用の部品と下アーム専用の部品とを分けて構成してもよい場合には、少なくとも、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とが電気的に分離されているか、または、クリップCLP1とクリップCLP2とが電気的に分離されていればよい。
【0121】
続いて、本実施の形態1における第3特徴点は、例えば、
図12(a)に示すように、平面視において、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATと、IGBTが形成された半導体チップCHP1との間に位置するように、ダイオードが形成された半導体チップCHP2がチップ搭載部TAB2上に搭載されている点にある。言い換えれば、本実施の形態1における第3特徴点は、IGBTが形成された半導体チップCHP1よりもエミッタ端子ETおよびアノード端子ATに近くなるように、ダイオードが形成された半導体チップCHP2が配置されているということもできる。
【0122】
これにより、以下に示す利点を得ることができる。例えば、本実施の形態1における第3特徴点によれば、ダイオードが形成された半導体チップCHP2のアノード電極パッドADPとアノード端子ATとを接続するクリップCLP2の長さを短くすることができる。このことは、クリップCLP2の寄生抵抗を小さくすることができることを意味し、この結果、ダイオードでの熱損失を低減できる。特に、SRモータ用のインバータ回路では、ダイオードでの熱損失の割合が大きくなるため、ダイオードでの熱損失の割合を低減する観点から、本実施の形態1における第3特徴点は有用である。
【0123】
以下に、この点について具体的に説明する。
図14は、IGBTでの熱損失とダイオードでの熱損失との割合が、SRモータとPMモータで相違するメカニズムを説明するための図である。
図14において、まず、PMモータに着目して説明する。
【0124】
PMモータでは、PMモータの構成要素であるU相コイルとV相コイルとW相コイルとがスター結線されており、U相コイル+V相コイル→V相コイル+W相コイル→W相コイル+U相コイルというように2相単位で電流を切り替える。具体的に、
図14の右図に示すように、PMモータ用のインバータ回路では、U相コイルに対応して、IGBTQ1(U)とダイオードFWD1(U)からなる上アームと、IGBTQ2(U)とダイオードFWD2(U)からなる下アームが設けられている。同様に、PMモータ用のインバータ回路では、V相コイルに対応して、IGBTQ1(V)とダイオードFWD1(V)からなる上アームと、IGBTQ2(V)とダイオードFWD2(V)からなる下アームが設けられている。このとき、まず、IGBTQ1(U)→U相コイル→V相コイル→IGBTQ2(V)という経路で電流I1Aが流れる。これがIGBTを流れる主電流である。そして、U相コイル+V相コイル→V相コイル+W相コイルへの切り替えが起こると、W相コイル→V相コイル→IGBTQ2(V)という経路で電流I1Bが流れる。このとき、U相コイルは切り離されて主電流が流れなくなるため、U相コイルに蓄えられたエネルギーは、回生電流I2として開放される。このように動作するPMモータ用のインバータ回路では、U相コイルとV相コイルとの2相にわたって主電流が流れる一方、単一相(U相)から回生電流が流れる。このことから、PMモータ用のインバータ回路では、2相を駆動する主電流が単一相(U相)から発生する回生電流よりも大きくなる特徴がある。この結果、IGBTを流れる主電流は、ダイオードを流れる回生電流よりも大きくなり、これによって、PMモータ用のインバータ回路での熱損失の割合は、例えば、IGBT:ダイオード=8:2となる。このことは、PMモータ用のインバータ回路では、ダイオードを回生電流が流れることによる熱損失の影響が比較的少ないことを意味している。
【0125】
これに対し、SRモータでは、SRモータの構成要素であるU相コイルに対応して、上アームと下アームが設けられている。具体的に、
図14の左図に示すように、SRモータ用のインバータ回路では、U相コイルに対応して、IGBTQ1とダイオードFWD1からなる上アームと、IGBTQ2とダイオードFWD2からなる下アームが設けられている。このとき、まず、IGBTQ1→U相コイル→IGBTQ2という経路で電流I1が流れる。これがIGBTを流れる主電流である。そして、U相コイルからV相コイルへの切り替えが起こると、U相コイルは切り離されて主電流が流れなくなるため、U相コイルに蓄えられたエネルギーは、回生電流I2として開放される。このように動作するSRモータ用のインバータ回路では、IGBTを流れる主電流と、ダイオードを流れる回生電流とが、同一の電流値となる特徴がある。この結果、IGBTを流れる主電流と、ダイオードを流れる回生電流とは等しくなり、これによって、SRモータ用のインバータ回路での熱損失の割合は、例えば、IGBT:ダイオード=5:5となる。このことは、SRモータ用のインバータ回路では、PMモータ用のインバータ回路よりも、ダイオードを回生電流が流れることによる熱損失の影響が大きくなることを意味している。したがって、SRモータ用のインバータ回路では、PMモータ用のインバータ回路よりも、ダイオードでの熱損失を低減する必要性が高まるのである。
【0126】
この点に関し、本実施の形態1における半導体装置PAC1は、IGBTが形成された半導体チップCHP1よりもエミッタ端子ETおよびアノード端子ATに近くなるように、ダイオードが形成された半導体チップCHP2が配置されているという第3特徴点を有している。この第3特徴点によれば、ダイオードが形成された半導体チップCHP2のアノード電極パッドADPとアノード端子ATとを接続するクリップCLP2の長さを短くすることができる。このことは、クリップCLP2の寄生抵抗を小さくすることができることを意味し、この結果、ダイオードでの熱損失を低減できることを意味している。したがって、SRモータ用のインバータ回路では、
図14に示すように、ダイオードでの熱損失の割合が大きくなるため、ダイオードでの熱損失の割合を低減する観点から、本実施の形態1における第3特徴点が有用であることがわかる。
【0127】
さらに、本実施の形態1における第3特徴点によれば、以下に示す利点も得ることができる。すなわち、本実施の形態1において、ダイオードは、負荷に含まれるインダクタンスに蓄えられた電磁気エネルギーを開放するために還流電流(回生電流)を流すという機能を有している。このとき、負荷からの回生電流は、半導体チップCHP2に形成されているダイオードに流れる。この場合、例えば、アノード端子ATと、ダイオードが形成された半導体チップCHP2との間の距離が長くなると、アノード端子ATとダイオードとの間を結ぶ配線(クリップCLP2)の寄生インダクタンスが大きくなる。この結果、このクリップCLP2の寄生インダクタンスによって、アノード端子ATからダイオードへの回生電流の流入が阻害されるのである。つまり、寄生インダクタンスは、なるべく電流の変化を起こりにくくする機能があることから、例えば、アノード端子ATからダイオードへ回生電流が流れ始めようとすることを阻害することになる。したがって、アノード端子ATとダイオードとの間を結ぶクリップCLP2の寄生インダクタンスが大きくなると、ダイオードへの回生電流の流れ込みが生じにくくなるのである。
【0128】
このことから、回生電流を流すためにダイオードを設けたとしても、アノード端子ATとダイオードとを結ぶクリップCLP2の寄生インダクタンスが大きくなると、回生電流を流すというダイオードの機能が充分に発揮されなくなるのである。このため、アノード端子ATとダイオードとを結ぶクリップCLP2の長さをなるべく短くして、クリップCLP2の寄生インダクタンスを低減することが望まれることになる。
【0129】
この点に関し、本実施の形態1では、上述した第3特徴点により、ダイオードを形成した半導体チップCHP2がアノード端子ATに近くなるように配置されている。このため、アノード端子ATとダイオードとを結ぶクリップCLP2の長さが短くなり、これによって、クリップCLP2の寄生インダクタンスを低減することができる。これにより、本実施の形態1によれば、アノード端子ATからダイオードへ回生電流が流入しやすくなり、回生電流を流すというダイオードの機能を充分に発揮させることができるのである。
【0130】
次に、本実施の形態1における半導体装置PAC1は、上述した第3特徴点を有する結果、例えば、
図12(a)に示すように、IGBTが形成された半導体チップCHP1のエミッタ電極パッドEPとエミッタ端子ETとを電気的に接続するクリップCLP1が、ダイオードが形成された半導体チップCHP2を跨ぐように配置される。このことを前提として、本実施の形態1における第4特徴点は、平面視において、このクリップCLP1と、半導体チップCHP2とアノード端子ATとを電気的に接続するクリップCLP2の一部とが、重なるように配置されている点にある。つまり、本実施の形態1では、上述した第3特徴点を有する結果、必然的に、半導体チップCHP2の上方をクリップCLP1が跨ぐことになるが、このクリップCLP1と平面的に重なる領域にまで、クリップCLP2を延在させている点に、本実施の形態1における第4特徴点がある。この第4特徴点によれば、半導体チップCHP2とクリップCLP2との接触面積を増大させることができる。このことは、クリップCLP2の寄生抵抗を低減できることを意味し、上述した第3特徴点によるクリップCLP2の寄生抵抗の低減効果と、第4特徴点によるクリップCLP2の寄生抵抗の低減効果の相乗効果によって、本実施の形態1によれば、特に、SRモータ用のインバータ回路で顕在化しやすいダイオードの熱損失を大幅に低減できる。
【0131】
続いて、本実施の形態1における第5特徴点は、例えば、
図12(a)に示すように、封止体MRの辺S1からエミッタ端子ETおよびアノード端子ATが突出しており、かつ、封止体MRの辺S2から信号端子SGTが突出している点にある。すなわち、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATが突出している封止体MRの辺と、信号端子SGTが突出している封止体MRの辺が異なる点に本実施の形態1における第5特徴点がある。さらに詳細には、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATが突出している封止体MRの辺と対向する辺から、信号端子SGTが突出している。
【0132】
この場合、例えば、以下に示す利点を得ることができる。まず、第1利点は、
図12(a)に示すように、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATを封止体MRの辺S1にわたって配置できる点である。つまり、本実施の形態1における半導体装置PAC1は、数百Aの大電流を流すインバータ回路に適用することを想定している。このため、大電流が流れるエミッタ端子ETおよびアノード端子ATにおける電流経路を充分に確保する必要がある。この点に関し、本実施の形態1では、封止体MRの一辺である辺S1にわたってエミッタ端子ETおよびアノード端子ATを配置することができる。このことは、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATにおける電流経路を充分に確保できることを意味する。この結果、本実施の形態1によれば、電流経路となるエミッタ端子ETおよびアノード端子ATを充分に確保できるため、数百Aという大電流を流すインバータ回路に適用することが可能となるとともに、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATにおける抵抗も低減することができる。すなわち、本実施の形態1では、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATが突出する封止体MRの辺と、信号端子SGTが突出する封止体MRの辺が相違するため、信号端子SGTの占有スペースを考慮することなく、エミッタ端子ETの幅およびアノード端子ATの幅を広くすることができるのである。このことから、本実施の形態1によれば、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATの占有面積を充分に確保できることに起因して、大電流に対応可能で、かつ、抵抗低減による消費電力の削減にも寄与する高性能な半導体装置PAC1を提供することができる。
【0133】
次に、第2利点は、
図12(a)に示すように、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATと信号端子SGTとが互いに対向する辺に配置されているため、クリップCLP1およびクリップCLP2の配置位置に制約を受けることなく、ワイヤWを配置することができる点である。例えば、
図12(a)において、ダイオードが形成されている半導体チップCHP2の表面のアノード電極パッドADPと封止体MRの辺S1側に配置されているアノード端子ATとは、クリップCLP2で電気的に接続され、かつ、IGBTが形成されている半導体チップCHP1のエミッタ電極パッドEPと封止体MRの辺S1側に配置されているエミッタ端子ETとは、クリップCLP1で電気的に接続されている。
【0134】
一方、半導体チップCHP1の表面に形成されている複数の電極パッドは、封止体MRの辺S2側に配置されている信号端子SGTとワイヤWで電気的に接続されている。したがって、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATが辺S1側に配置され、かつ、信号端子SGTが辺S2側に配置されていることから、エミッタ端子ETと接続するクリップCLP1やアノード端子ATと接続するクリップCLP2と、信号端子SGTと接続するワイヤWとは、互いに制約を受けることなく配置することができるのである。
【0135】
特に、半導体チップCHP1において、辺S1側にエミッタ電極パッドEPを配置し、かつ、辺S2側に複数の電極パッドを配置するように、エミッタ電極パッドEPと複数の電極パッドとをレイアウト構成することとの相乗効果によって、
図12(a)に示すように、クリップCLP1とワイヤWは、互いに制約を受けることなく配置できる。このことは、例えば、信号端子SGTと複数の電極パッドの距離が小さくなるようにして、ワイヤWの長さを短くすることができることを意味する。この結果、ワイヤWに存在する寄生インダクタンスを小さくすることができ、これによって、回路動作の安定性を向上することができる。
【0136】
さらに、第3利点は、
図12(b)および
図12(c)に示すように、封止体MRの両側からリードが突出することになり、半導体装置PAC1を配線基板に実装する際の実装安定性が向上する点である。詳細には、本実施の形態1における半導体装置PAC1は、封止体MRから突き出たリードをガルウィング形状に加工して、この加工したリードによって、配線基板の端子と電気的に接続する。したがって、封止体MRの両側からリードが突き出ている構造の場合、バランスが良く、半導体装置PAC1の配線基板への実装安定性が向上し、これによって、半導体装置PAC1の実装時の位置精度の向上および半田接続信頼性を向上することができる。
【0137】
続いて、第4利点は、特に、数百Aという大電流用途で顕著になる。例えば、
図12(a)および
図12(b)において、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、チップ搭載部TAB1の下面であるコレクタ端子から、半導体チップCHP1の内部に形成されたIGBT→半導体チップCHP1の表面に形成されたエミッタ電極パッドEP→クリップCLP1→エミッタ端子ETという電流経路で大電流が流れる。ここで、アンペールの法則により、電流が流れると必然的に電流の周囲に磁界が発生する。この磁界の強さは、電流の大きさが大きくなるほど大きくなる。したがって、大電流を流すほど発生する磁界が大きくなる。このとき、大電流が流れるエミッタ端子ETの近傍に信号端子SGTが存在する場合、信号端子SGTに磁界の影響が及ぶことになる。具体的には、発生した磁界に起因する電磁誘導ノイズが信号端子SGTに印加されることになる。この場合、特に、信号端子SGTのうち、ゲート端子GTに電磁誘導ノイズが加わると、例えば、設定値以上の電圧がIGBTのゲート電極に印加される事態が生じ、これによって、IGBTが破壊されるおそれがある。また、ゲート端子GT以外の信号端子SGTにおいても、ノイズが重畳することによって、電流検知回路や温度検知回路などの誤動作を引き起こすおそれがある。つまり、大電流の流れるエミッタ端子ETの近傍に信号端子SGTを配置すると、大電流に起因する大きな磁界によって、電磁誘導ノイズも大きくなり、信号端子SGTに悪影響が及ぶことになる。つまり、信号端子SGTは、微弱な電流信号や電圧信号が伝達する経路であることから、大電流での強い磁界による電磁誘導ノイズの影響を極力抑制する必要があるのである。
【0138】
この点に関し、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、上述した第5特徴点により、大電流の流れるエミッタ端子ETと、微弱な信号が伝達する信号端子SGTとは、互いに対向する辺に配置されており、最も離れるように配置されている。したがって、本実施の形態1によれば、エミッタ端子ETに大電流が流れ、この大電流で発生する大きな磁界に起因する電磁誘導ノイズの悪影響が、信号端子SGTに及ぶことを抑制することができるのである。このことは、本実施の形態1によれば、大電流を取り扱う場合であっても、半導体装置PAC1の信頼性を向上できることを意味している。この点が第5特徴点による第4利点である。
【0139】
さらに、第5利点は、信号端子SGTも封止体MRの辺S2にわたって配置できる点である。例えば、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、信号端子SGTとして、ゲート端子GT、温度検知用端子TCT、温度検知用端子TAT、電流検知用端子SETおよびケルビン端子KTを使用しているが、さらなる信号端子SGTの追加も容易となる。つまり、本実施の形態1における第5特徴点によれば、さらなる高性能化や高信頼性の観点から、信号端子SGTの追加による多機能化も図りやすくなる。
【0140】
次に、本実施の形態1における第6特徴点は、例えば、
図12(a)に示すように、IGBTが形成された半導体チップCHP1、および、ダイオードが形成された半導体チップCHP2が長方形形状をしており、長方形形状の長辺が、x方向に延在する封止体MRの辺S1や辺S2と並行するように、半導体チップCHP1および半導体チップCHP2が配置されている点にある。これにより、クリップCLP1やクリップCLP2のx方向の幅を大きくすることができ、大電流に対応可能となる。さらに、クリップCLP1やクリップCLP2のx方向の幅を大きくすることで、クリップCLP1やクリップCLP2の抵抗を低減することができ、これによって、エミッタ端子ETと半導体チップCHP1との接続抵抗や、アノード端子ATと半導体チップCHP2との接続抵抗を低減することもできる。
【0141】
つまり、本実施の形態1では、半導体チップCHP1および半導体チップCHP2の平面形状を長方形形状にすることにより、半導体チップCHP1や半導体チップCHP2が長さの長い長辺を有するように構成している。そして、本実施の形態1では、長さの長い長辺を、エミッタ端子ETやアノード端子ATの突出方向(y方向)と交差するように、半導体チップCHP1および半導体チップCHP2を配置している。これにより、エミッタ端子ETやアノード端子ATの突出方向(y方向)に沿うようにクリップCLP1やクリップCLP2を配置した場合、長さの長い長辺に相当する分だけ、クリップCLP1やクリップCLP2のx方向の幅を拡大することができる。このことは、本実施の形態1によれば、封止体MRの辺S1にわたって配置されているエミッタ端子ETやアノード端子ATだけでなく、クリップCLP1やクリップCLP2のx方向の幅も拡大できることを意味する。この結果、本実施の形態1によれば、クリップCLP1からエミッタ端子Eに至る広い電流経路を確保することができる。これにより、本実施の形態1における半導体装置PAC1が大電流に対応可能となるとともに、オン抵抗を低減することができる。
【0142】
さらに、本実施の形態1では、長方形形状をした半導体チップCHP1および半導体チップCHP2の短辺が、エミッタ端子ETおよびアノード端子ATの突出方向(y方向)と並行するように、半導体チップCHP1および半導体チップCHP2が配置されることになる。この結果、本実施の形態1によれば、IGBTを形成した半導体チップCHP1とエミッタ端子ETとの間のy方向の距離を短くできることになる。言い換えれば、IGBTを形成した半導体チップCHP1とエミッタ端子ETとを接続するクリップCLP1のy方向の長さを短くすることができる。このことから、本実施の形態1によれば、IGBTを形成した半導体チップCHP1とエミッタ端子ETとの間の距離を小さくすることができるので、半導体装置PAC1のオン抵抗を低減することができる。
【0143】
以上のことから、本実施の形態1における第6特徴点では、半導体チップCHP1および半導体チップCHP2の平面形状を長方形形状にすることを前提とする。そして、長方形の長辺を電流の流れる方向であるy方向と直交するx方向に沿って配置することにより、クリップCLP1およびクリップCLP2のx方向の幅(電流の流れる方向と直交する方向)を広くすることができる。一方、長方形の短辺は、電流の流れる方向であるy方向に沿って配置されることになるため、クリップCLP1およびクリップCLP2のy方向の長さ(電流の流れる方向の長さ)を短くすることができる。すなわち、本実施の形態1における第6特徴点によれば、クリップCLP1およびクリップCLP2において、電流の流れる方向と直交するx方向の幅を広くすることができ、かつ、電流の流れる方向であるy方向の長さを短くすることができるため、半導体装置PAC1のオン抵抗を充分に低減することができるのである。
【0144】
続いて、本実施の形態1における第7特徴点は、例えば、
図12(b)および
図12(c)に示すように、チップ搭載部TAB1の厚さやチップ搭載部TAB2の厚さが、エミッタ端子ETやアノード端子や信号端子SGTを構成するリードの厚さよりも厚く、かつ、チップ搭載部TAB1の下面とチップ搭載部TAB2の下面とが封止体MRから露出している点にある。これにより、まず、チップ搭載部TAB1の下面とチップ搭載部TAB2の下面とが封止体MRから露出しているため、半導体装置PAC1の放熱効率を向上することができる。さらに、本実施の形態1によれば、チップ搭載部TAB1の厚さやチップ搭載部TAB2の厚さが厚くなっているため、この点からも、半導体装置PAC1の放熱効率を向上することができる。また、チップ搭載部TAB1の厚さやチップ搭載部TAB2の厚さが厚くなっているということは、チップ搭載部TAB1の体積やチップ搭載部TAB2の体積が大きくなっていることを意味し、これによって、チップ搭載部TAB1やチップ搭載部TAB2の熱容量が大きくなることを意味している。これにより、半導体装置PAC1の温度上昇を抑制することができる。すなわち、本実施の形態1における半導体装置PAC1は、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とが封止体MRから露出している点と、チップ搭載部TAB1の厚さとチップ搭載部TAB2の厚さが厚くなっている点の相乗効果によって、放熱効率の向上と熱容量の増大を図ることができる。
【0145】
したがって、本実施の形態1における半導体装置PAC1によれば、放熱効率の向上と熱容量の増大によって、発熱に起因する温度上昇を抑制することができる。この結果、本実施の形態1における半導体装置PAC1によれば、内部温度の上昇に起因する素子の破壊を抑制することができ、これによって、半導体装置PAC1の信頼性を向上することができる。
【0146】
なお、本実施の形態1における半導体装置PAC1では、チップ搭載部TAB1の下面が封止体MRから露出しており、この露出面がコレクタ端子としても機能する。同様に、チップ搭載部TAB2の下面が封止体MRから露出しており、この露出面がカソード端子としても機能する。このように本実施の形態1では、チップ搭載部TAB1が、半導体チップCHP1を搭載する機能だけでなく、その他に、放熱効率を向上させるヒートスプレッダとしての機能や、コレクタ端子としての機能も備えていることになる。同様に、チップ搭載部TAB2は、半導体チップCHP2を搭載する機能だけでなく、その他に、放熱効率を向上させるヒートスプレッダとしての機能や、カソード端子としての機能も備えていることになる。
【0147】
<実施の形態1における半導体装置の組み合わせ例>
以下に、本実施の形態1における半導体装置PAC1を組み合わせることにより、インバータ回路を具現化した実装構成例について説明する。
【0148】
図15は、例えば、
図4(b)に示すSRモータ用のインバータ回路の一部を具現化した実装構成例を示す図である。
図15において、上側に配置されている半導体装置PAC1は、上アームを構成し、下側に配置されている半導体装置PAC1は、下アームを構成している。
図15に示すように、上アームを構成する半導体装置PAC1は、電源電圧が供給される配線WL(P)と電気的に接続されている。具体的には、上アームを構成する半導体装置PAC1の封止体MRの下面から露出するチップ搭載部TAB1の下面とチップ搭載部TAB2の下面の両方に配線WL(P)が電気的に接続されている。
【0149】
このとき、チップ搭載部TAB1の下面が、コレクタ端子として機能し、チップ搭載部TAB2の下面が、カソード端子として機能することから、上アームを構成する半導体装置PAC1においては、コレクタ端子とカソード端子とが配線WL(p)によって電気的に接続されていることになる。この構成は、
図4(b)に示すIGBTQ1のコレクタとダイオードFWD1のカソードとが電気的に接続されていることに対応している。
【0150】
そして、上アームを構成する半導体装置PAC1のエミッタ端子ETが配線WL(U´)と電気的に接続され、上アームを構成する半導体装置PAC1のアノード端子ATが配線WL(U)と電気的に接続されている。一方、配線WL(U´)は、下アームを構成する半導体装置PAC1の封止体MRの下面から露出するチップ搭載部TAB2の下面と電気的に接続されている。また、配線WL(U)は、下アームを構成する半導体装置PAC1の封止体MRの下面から露出するチップ搭載部TAB1の下面と電気的に接続されている。これにより、上アームを構成する半導体装置PAC1のエミッタ端子ETと、下アームを構成する半導体装置PAC1のチップ搭載部TAB2とは、配線WL(U´)を介して、電気的に接続されていることになる。同様に、上アームを構成する半導体装置PAC1のアノード端子ATと、下アームを構成する半導体装置PAC1のチップ搭載部TAB1とは、配線WL(U)を介して、電気的に接続されていることになる。したがって、チップ搭載部TAB1の下面がコレクタ端子として機能し、チップ搭載部TAB2の下面がカソード端子として機能することを考慮すると、上アームを構成する半導体装置PAC1のエミッタ端子ETと、下アームを構成する半導体装置PAC1のカソード端子とが、電気的に接続され、上アームを構成する半導体装置PAC1のアノード端子ATと、下アームを構成する半導体装置PAC1のコレクタ端子とが、電気的に接続されることになる。この構成は、
図4(b)に示すIGBTQ1のエミッタとダイオードFWD2のカソードとが電気的に接続されていることに対応し、かつ、
図4(b)に示すIGBTQ2のコレクタとダイオードFWD1のアノードとが電気的に接続されていることに対応している。
【0151】
さらに、下アームを構成する半導体装置PAC1のエミッタ端子ETとアノード端子ATは、ともに、基準電位(例えば、グランド電位)が供給される配線WL(N)と電気的に接続されている。この構成は、
図4(b)に示すIGBTQ2のエミッタとダイオードFWD2のアノードとが電気的に接続されていることに対応している。
【0152】
以上のようにして、本実施の形態1における半導体装置PAC1を組み合わせることにより、例えば、
図4(b)に示すSRモータ用のインバータ回路の一部が具現化されることがわかる。ここでは、本実施の形態1における半導体装置PAC1を使用することにより、SRモータ用のインバータ回路の一部が具現化される一例について説明したが、最終的に、本実施の形態1における半導体装置PAC1は、SRモータ用のインバータ回路を含む電子装置の構成要素となる。この電子装置の実装構成例については、後述する。
【0153】
<実施の形態1における半導体装置の製造方法>
本実施の形態1における半導体装置は、上記のように構成されており、以下に、その製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0154】
1.チップ搭載部準備工程
まず、
図16に示すように、互いに分離されたチップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とを準備する。これらのチップ搭載部TAB1およびチップ搭載部TAB2は、例えば、同一サイズの矩形形状から構成されている。ここで、チップ搭載部TAB1のサイズとチップ搭載部TAB2のサイズとは、同一サイズである必要はなく、異なるサイズであってもよい。ただし、SRモータ用の半導体装置では、
図14でも説明したように、IGBTの熱損失とダイオードの熱損失とが同等であるため、IGBTが形成された半導体チップからの放熱効率と、ダイオードが形成された半導体チップからの放熱効率とを同等にすることが望ましいと考えられる。したがって、IGBTが形成された半導体チップが搭載されるチップ搭載部TAB1のサイズと、ダイオードが形成された半導体チップが搭載されるチップ搭載部TAB2のサイズとを同一にして、放熱効率を同等とすることが、半導体装置全体の放熱効率の向上させる観点から望ましいといえる。
【0155】
2.チップ搭載工程
次に、
図17に示すように、チップ搭載部TAB1上に導電性接着材ADH1を供給するとともに、チップ搭載部TAB2上にも導電性接着材ADH1を供給する。導電性接着材ADH1としては、例えば、銀ペーストや高融点半田を使用することができる。
【0156】
続いて、
図18に示すように、チップ搭載部TAB1上に、IGBTが形成された半導体チップCHP1を搭載し、チップ搭載部TAB2上に、ダイオードが形成された半導体チップCHP2を搭載する。具体的には、IGBTを備え、エミッタ電極パッドEPが形成された第1表面と、コレクタ電極が形成され、第1表面とは反対側の面である第1裏面と、を有する半導体チップCHP1をチップ搭載部TAB1上に搭載して、チップ搭載部TAB1と半導体チップCHP1の第1裏面とを電気的に接続する。同様に、ダイオードを備え、アノード電極パッドADPが形成された第2表面と、カソード電極が形成され、第2表面とは反対側の面である第2裏面と、を有する半導体チップCHP2をチップ搭載部TAB2上に搭載して、チップ搭載部TAB2と半導体チップCHP2の第2裏面とを電気的に接続する。
【0157】
これにより、ダイオードが形成された半導体チップCHP2においては、半導体チップCHP2の裏面に形成されたカソード電極パッドが、導電性接着材ADH1を介してチップ搭載部TAB2と接触するように配置される。この結果、半導体チップCHP2の表面に形成されているアノード電極パッドADPが上を向くことになる。
【0158】
一方、IGBTが形成された半導体チップCHP1においては、半導体チップCHP1の裏面に形成されたコレクタ電極パッドが、導電性接着材ADH1を介してチップ搭載部TAB1と接触するように配置される。
【0159】
また、半導体チップCHP1の表面に形成されているエミッタ電極パッドEP、および、複数の電極パッドであるゲート電極パッドGP、温度検知用電極パッドTCP、温度検知用電極パッドTAP、電流検知用電極パッドSEP、ケルビン検知用電極パッドKPは上を向くことになる。
【0160】
なお、IGBTが形成された半導体チップCHP1と、ダイオードが形成された半導体チップCHP2の搭載順は、半導体チップCHP1が前で、半導体チップCHP2が後でもよいし、半導体チップCHP2が前で、半導体チップCHP1が後であってもよい。
【0161】
その後、半導体チップCHP1が搭載されたチップ搭載部TAB1と半導体チップCHP2が搭載されたチップ搭載部TAB2とに対して、加熱処理が実施される。
【0162】
3.基材(リードフレーム)準備工程
次に、
図19に示すように、リードLD1AとリードLD1BとリードLD2とを備えたリードフレームLFを準備する。このとき、チップ搭載部TAB2がリードLD1Aとチップ搭載部TAB1との間に位置し、かつ、リードLD1Bとチップ搭載部TAB1との間に位置するように、チップ搭載部TAB1およびチップ搭載部TAB2とリードフレームLFとが配置される。これにより、IGBTが形成された半導体チップCHP1は、リードLD2に近くなる位置に配置され、ダイオードが形成された半導体チップCHP2は、リードLD1AおよびリードLD1Bに近くなる位置に配置される。言い換えれば、平面視において、リードLD1AおよびリードLD1Bと半導体チップCHP1との間に挟まれるように半導体チップCHP2が搭載され、リードLD2と半導体チップCHP2との間に挟まれるように半導体チップCHP1が配置される。なお、チップ搭載部TAB1の厚さとチップ搭載部TAB2の厚さは、リードフレームLFの厚さよりも厚い。
【0163】
4.電気的接続工程
続いて、
図20に示すように、半導体チップCHP2のアノード電極パッドADP上に、導電性接着材ADH2を供給し、半導体チップCHP1のエミッタ電極パッドEP上にも、導電性接着材ADH2を供給する。さらに、リードLD1Aの一部領域上やリードLD1Bの一部領域上にも、導電性接着材ADH2を供給する。
【0164】
この導電性接着材ADH2にも、例えば、銀ペーストや高融点半田を使用することができる。この導電性接着材ADH2は、上述した導電性接着材ADH1と同じ材料成分であってもよいし、異なる材料成分であってもよい。
【0165】
そして、リードLD1Aと半導体チップCHP1とを電気的に接続し、リードLD1Bと半導体チップCHP2とを電気的に接続する。具体的には、まず、
図21に示すように、半導体チップCHP2のアノード電極パッドADPとリードLD1BとにクリップCLP2を搭載することにより、アノード電極パッドADPとリードLD1Bとを電気的に接続する。その後、
図22に示すように、半導体チップCHP1のエミッタ電極パッドEPとリードLD1AとにクリップCLP1を搭載することにより、エミッタ電極パッドEPとリードLD1Aとを電気的に接続する。このとき、
図22に示すように、クリップCLP1がクリップCLP2の一部を跨ぐようにクリップCLP1が搭載される。この工程を経ることにより、リードフレームLFとチップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とが一体化する。その後、一体化したリードフレームLFとチップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とに対して、加熱処理を実施する。
【0166】
次に、
図23に示すように、ワイヤボンディング工程を実施する。例えば、
図23に示すように、リードLD2とゲート電極パッドGPがワイヤWで電気的に接続され、リードLD2と温度検知用電極パッドがワイヤWで電気的に接続される。また、リードLD2と温度検知用電極パッドがワイヤWで電気的に接続され、リードLD2と電流検知用電極パッドがワイヤWで電気的に接続される。さらに、リードLD2とケルビン検知用電極パッドKPがワイヤWで電気的に接続される。ここで、本実施の形態1では、リードLD2が、クリップCLP1が接続されているリードLD1AやクリップCLP2が接続されているリードLD1Bとは反対側に配置されているため、ワイヤWとクリップCLP1やクリップCLP2との干渉を考慮することなく、ワイヤボンディング工程を実施できる。
【0167】
5.封止(モールド)工程
次に、
図24に示すように、半導体チップCHP1、半導体チップCHP2、チップ搭載部TAB1の一部、チップ搭載部TAB2の一部、リードLD1Aの一部、リードLD1Bの一部、複数のリードLD2のそれぞれの一部、クリップCLP1、クリップCLP2およびワイヤWを封止して封止体MRを形成する。
【0168】
このとき、封止体MRは上面、上面とは反対側の下面、その厚さ方向において上面と下面との間に位置する第1側面および第1側面と対向する第2側面を有する。
図24では、第1側面の辺S1と、第2側面の辺S2が図示されている。そして、封止体MRにおいては、リードLD1AおよびリードLD1Bが封止体MRの第1側面(辺S1)から突出し、かつ、複数のリードLD2が封止体MRの第2側面(辺S2)から突出する。
【0169】
なお、
図24では図示されていないが、上述した封止体MRの下面からは、チップ搭載部TAB1の下面とチップ搭載部TAB2の下面とが露出する。
【0170】
6.外装めっき工程
その後、
図25に示すように、リードフレームLFに設けられているタイバーを切断する。そして、
図26に示すように、封止体MRの下面から露出するチップ搭載部TAB1、チップ搭載部TAB2、リードLD1Aの一部の表面、リードLD1Bの一部の表面およびリードLD2の一部の表面に導体膜であるめっき層(錫膜)を形成する。すなわち、リードLD1AやリードLD1Bの封止体MRから露出した部分、複数のリードLD2の封止体MRから露出した部分およびチップ搭載部TAB1の下面やチップ搭載部TAB2の下面にめっき層を形成する。
【0171】
7.マーキング工程
そして、樹脂からなる封止体MRの表面に製品名や型番などの情報(マーク)を形成する。なお、マークの形成方法としては、印刷方式により印字する方法やレーザを封止体の表面に照射することによって刻印する方法を用いることができる。
【0172】
8.個片化工程
続いて、リードLD1Aの一部、リードLD1Bの一部および複数のリードLD2のそれぞれの一部を切断することにより、リードLD1A、リードLD1Bおよび複数のリードLD2をリードフレームLFから分離する。これにより、本実施の形態1における半導体装置PAC1を製造することができる。その後、リードLD1A、リードLD1Bおよび複数の第2リードLD2のそれぞれを成形する。そして、例えば、電気的特性をテストするテスト工程を実施した後、良品と判定された半導体装置PAC1が出荷される。
【0173】
<変形例1>
次に、本実施の形態1における半導体装置PAC1の変形例1について説明する。
図27は、本変形例1における半導体装置PAC2の内部構造を示す図である。具体的に、
図27(a)は、本変形例1における半導体装置PAC2の内部構造を示す平面図であり、
図27(b)は、
図27(a)のA−A線で切断した断面図であり、
図27(c)は、
図27(a)のB−B線で切断した断面図である。
【0174】
図27(a)において、本変形例1における半導体装置PAC2の特徴点は、半導体装置PAC2のクリップCLP1が、
図12(a)に示す半導体装置PAC1のクリップCLP1よりも幅広化されている点にある。つまり、半導体装置PAC2のクリップCLP1のサイズが、
図12(a)に示す半導体装置PAC1のクリップCLP1のサイズよりも大きくなっている。この結果、本変形例1では、平面視において、半導体チップCHP2のアノード電極パッドADPは、クリップCLP1と重なる第1領域と、クリップCLP1と重ならない第2領域と、を有することを前提として、クリップCLP1の幅広化に伴って、アノード電極パッドADPの第1領域の面積が、アノード電極パッドADPの第2領域の面積より大きくなる。
【0175】
本変形例1におけるクリップCLP1によれば、幅広化によって、半導体チップCHP1のエミッタ電極パッドEPとエミッタ端子ETとの間の寄生抵抗および寄生インダクタンスを低減することができる。すなわち、本変形例1における半導体装置PAC2でも、エミッタ端子ETと半導体チップCHP2との間に半導体チップCHP1が配置されている。このため、エミッタ端子ETと半導体チップCHP2とを接続するクリップCLP1の長さが長くなり、クリップCLP1の寄生抵抗や寄生インダクタンスが大きくなりやすいが、本変形例1では、クリップCLP1の幅広化が図られているため、クリップCLP1の寄生抵抗および寄生インダクタンスを低減することができ、これによって、半導体装置PAC2の性能向上を図ることができる。
【0176】
なお、本変形例1における半導体装置PAC2は、インバータ回路の上アームと下アームのいずれにも適用することができる。
【0177】
<変形例2>
続いて、本実施の形態1における半導体装置PAC1の変形例2について説明する。
図28は、本変形例2における半導体装置PAC3の外観構成を示す図である。特に、
図28(a)は、本変形例2における半導体装置PAC3の表面(上面)側から見た平面図であり、
図28(b)は、本変形例2における半導体装置PAC3の一側面から見た側面図であり、
図28(c)は、本変形例2における半導体装置PAC3の裏面(下面)側から見た平面図である。また、
図29は、本変形例2における半導体装置PAC3の内部構造を示す図である。特に、
図29(a)は、本変形例2における半導体装置PAC3の内部構造を示す平面図であり、
図29(b)は、
図29(a)のA−A線で切断した断面図であり、
図29(c)は、
図29(a)のB−B線で切断した断面図である。
【0178】
図28(a)および
図28(c)において、本変形例2における半導体装置PAC3の特徴点は、エミッタ端子ETとアノード端子ATとの間の距離Lが大きくなっている点にある。具体的には、
図29(a)に示すように、エミッタ端子ETとなるリードLD1Aは、封止体MRで封止された第1部分と、封止体MRから露出した第2部分と、を有する。同様に、アノード端子ATとなるリードLD1Bは、封止体MRで封止された第3部分と、封止体MRから露出した第4部分と、を有する。このとき、平面視において、リードLD1Aの第2部分とリードLD1Bの第4部分との最も離間している部分の距離Lは、リードLD1Aの第1部分とリードLD1Bの第3部分との最も近接している部分の距離より大きくなっている。
【0179】
これにより、本変形例2における半導体装置PAC3によれば、エミッタ端子ETとアノード端子ATとの間の絶縁耐圧を向上することができる。
【0180】
特に、本変形例2における半導体装置PAC3をインバータ回路の構成要素に使用する場合、本変形例2における半導体装置PAC3を上アームに適用する際に効果を得ることができる。なぜなら、例えば、
図15に示すように、上アームを構成する半導体装置においては、エミッタ端子ETとアノード端子ATとが別々の配線に接続されており、エミッタ端子ETとアノード端子ATとの間に電位差が生じるからである。
【0181】
一方、本変形例2における半導体装置PAC3をインバータ回路の構成要素に使用する場合、本変形例2における半導体装置PAC3を下アームに適用する際には、技術的意義はない。なぜなら、例えば、
図15に示すように、下アームを構成する半導体装置においては、エミッタ端子ETとアノード端子ATと同じ配線WL(N)に接続されており、エミッタ端子ETとアノード端子ATとの間に電位差が生じないからである。
【0182】
<変形例3>
次に、本実施の形態1における半導体装置PAC1の変形例3について説明する。
図30は、本変形例3における半導体装置PAC4の外観構成を示す図である。特に、
図30(a)は、本変形例3における半導体装置PAC4の表面(上面)側から見た平面図であり、
図30(b)は、本変形例3における半導体装置PAC4の一側面から見た側面図であり、
図30(c)は、本変形例3における半導体装置PAC4の裏面(下面)側から見た平面図である。また、
図31は、本変形例3における半導体装置PAC4の内部構造を示す図である。特に、
図31(a)は、本変形例3における半導体装置PAC4の内部構造を示す平面図であり、
図31(b)は、
図31(a)のA−A線で切断した断面図であり、
図31(c)は、
図31(a)のB−B線で切断した断面図である。
【0183】
図30(a)および
図30(c)において、本変形例3における半導体装置PAC4の特徴点は、エミッタ端子ETとなるリードLD1Aのスリットを省いて一体化することにより幅広化し、かつ、アノード端子ATとなるリードLD1Bのスリットを省いて一体化することにより幅広化している点にある。このとき、
図31(a)に示すように、リードLD1AとリードLD1Bのそれぞれには開口部OP1が形成されており、この開口部OP1には、封止体MRの一部が充填されている。
【0184】
このように構成されている本変形例3における半導体装置PAC4によれば、エミッタ端子ETとなるリードLD1Aの幅広化とアノード端子ATとなるリードLD1Bの幅広化によって、リードLD1AおよびリードLD1Bの電流容量の許容値を大きくすることができ、大電流化に対応した半導体装置PAC4を提供することができる。
【0185】
なお、本変形例3における半導体装置PAC4は、インバータ回路の上アームと下アームのいずれにも適用することができる。
【0186】
<変形例4>
続いて、本実施の形態1における半導体装置PAC1の変形例4について説明する。
図32は、本変形例4における半導体装置PAC5の外観構成を示す図である。特に、
図32(a)は、本変形例4における半導体装置PAC5の表面(上面)側から見た平面図であり、
図32(b)は、本変形例4における半導体装置PAC5の一側面から見た側面図であり、
図32(c)は、本変形例4における半導体装置PAC5の裏面(下面)側から見た平面図である。また、
図33は、本変形例4における半導体装置PAC5の内部構造を示す図である。特に、
図33(a)は、本変形例4における半導体装置PAC5の内部構造を示す平面図であり、
図33(b)は、
図33(a)のA−A線で切断した断面図であり、
図33(c)は、
図33(a)のB−B線で切断した断面図である。
【0187】
図32(c)および
図33(a)〜(c)に示すように、本変形例4における半導体装置PAC5の特徴点は、チップ搭載部TABが一体化しており、この1つのチップ搭載部TAB上に、IGBTが形成された半導体チップCHP1とダイオードが形成された半導体チップCHP2とが搭載されることになる。この場合、半導体チップCHP1の裏面と半導体チップCHP2の裏面とは、1つのチップ搭載部TABによって電気的に接続されることになる。したがって、半導体チップCHP1の裏面に形成されているコレクタ電極パッドと、半導体チップCHP2の裏面に形成されているカソード電極パッドとは、電気的に接続されていることになる。一方、
図33(a)に示すように、本変形例4における半導体装置PAC5においても、クリップCLP1とクリップCLP2とが電気的に分離されているため、クリップCLP1と接続されているエミッタ端子ETと、クリップCLP2と接続されているアノード端子ATとは、電気的に分離されることになる。
【0188】
このように構成されている本変形例4における半導体装置PAC5は、実施の形態1における半導体装置PAC1と組み合わせることにより、インバータ回路を具現化することができる。
図34は、例えば、本変形例4における半導体装置PAC5と実施の形態1における半導体装置PAC1とを組み合わせることにより、
図4(b)に示すSRモータ用のインバータ回路の一部を具現化した実装構成例を示す図である。
図34において、上側に配置されている半導体装置PAC5は、上アームを構成し、下側に配置されている半導体装置PAC1は、下アームを構成している。つまり、上アームにおいては、例えば、
図15に示すように、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とは、同じ配線WL(P)と電気的に接続されることから、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とを分離する必要はなく、
図34に示すように、1つのチップ搭載部TABを有する本変形例4における半導体装置PAC5に置き換えることができる。
【0189】
ただし、
図34に示すように、下アームにおいては、チップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とが電気的に分離している必要があるため、本変形例4における半導体装置PAC5を使用することはできない。したがって、本変形例4における半導体装置PAC5を使用して、
図4(b)に示すSRモータ用のインバータ回路の一部を具現化する場合には、
図34に示すように、本変形例4における半導体装置PAC5を上アームに使用し、かつ、実施の形態1における半導体装置PAC1を下アームに使用する必要がある。
【0190】
以上のことから、
図4(b)に示すSRモータ用のインバータ回路の一部を具現化する実装構成例としては、例えば、
図15に示すように、上アームと下アームのいずれにも実施の形態1における半導体装置PAC1を使用する構成や、
図34に示すように、上アームに本変形例4における半導体装置PAC5を使用し、下アームに実施の形態1における半導体装置PAC1を使用する構成を取ることができる。
【0191】
ここで、
図15に示すように、上アームと下アームのいずれにも実施の形態1における半導体装置PAC1を使用する構成の場合には、上アームと下アームとに同じ半導体装置PAC1を使用することができるため、部品の共通化を図る利点を得ることができる。このことから、部品の共通化を図る観点からは、
図15に示すように、上アームと下アームのいずれにも実施の形態1における半導体装置PAC1を使用する構成が望ましいが、
図4(b)に示すSRモータ用のインバータ回路の一部を具現化する実装構成例は、これに限らず、
図34に示す実装構成例を採用することもできる。
【0192】
<変形例5>
次に、本実施の形態1における半導体装置PAC1の変形例5について説明する。
図35は、本変形例5における半導体装置PAC6の外観構成を示す図である。特に、
図35(a)は、本変形例5における半導体装置PAC6の表面(上面)側から見た平面図であり、
図35(b)は、本変形例5における半導体装置PAC6の一側面から見た側面図であり、
図35(c)は、本変形例5における半導体装置PAC6の裏面(下面)側から見た平面図である。また、
図36は、本変形例5における半導体装置PAC6の内部構造を示す図である。特に、
図36(a)は、本変形例5における半導体装置PAC6の内部構造を示す平面図であり、
図36(b)は、
図36(a)のA−A線で切断した断面図であり、
図36(c)は、
図36(a)のB−B線で切断した断面図である。
【0193】
図35(c)および
図36(a)に示すように、本変形例5における半導体装置PAC6の特徴点は、チップ搭載部TAB1に開口部OP2が設けられているとともに、チップ搭載部TAB2に開口部OP2が設けられており、この開口部OP2に封止体MRの一部が充填されている点にある。つまり、平面視において、チップ搭載部TAB1の半導体チップCHP1と重ならない部分と、チップ搭載部TAB2の半導体チップCHP2と重ならない部分とには、それぞれ開口部OP2が形成され、これらの開口部OP2には、封止体MRの一部が充填されている。
【0194】
これにより、本変形例5における半導体装置PAC6によれば、チップ搭載部TAB1に設けられた開口部OP2に封止体MRの一部が充填されていることによるアンカー効果によって、チップ搭載部TAB1と封止体MRとの密着性を向上することができる。同様に、本変形例5における半導体装置PAC6によれば、チップ搭載部TAB2に設けられた開口部OP2に封止体MRの一部が充填されていることによるアンカー効果によって、チップ搭載部TAB2と封止体MRとの密着性を向上することができる。
【0195】
この結果、本変形例5における半導体装置PAC6によれば、耐湿性や温度サイクル性を向上することができるので、半導体装置PAC6の信頼性を向上することができる。
【0196】
なお、本変形例5における半導体装置PAC6は、インバータ回路の上アームと下アームのいずれにも適用することができる。
【0197】
<変形例6>
続いて、本実施の形態1における半導体装置PAC1の変形例6について説明する。
図37は、本変形例6における半導体装置PAC7の外観構成を示す図である。特に、
図37(a)は、本変形例6における半導体装置PAC7の表面(上面)側から見た平面図であり、
図37(b)は、本変形例6における半導体装置PAC7の一側面から見た側面図であり、
図37(c)は、本変形例6における半導体装置PAC7の裏面(下面)側から見た平面図である。また、
図38は、本変形例6における半導体装置PAC7の内部構造を示す図である。特に、
図38(a)は、本変形例6における半導体装置PAC7の内部構造を示す平面図であり、
図38(b)は、
図38(a)のA−A線で切断した断面図であり、
図38(c)は、
図38(a)のB−B線で切断した断面図である。
【0198】
ここで、本変形例6における半導体装置PAC7の特徴点は、
図37(a)および
図37(c)に示すように、封止体MRの下面からチップ搭載部TAB1の下面とチップ搭載部TAB2の下面とが露出しているとともに、封止体MRの側面からチップ搭載部TAB1の一部およびチップ搭載部TAB2の一部が突出している点にある。
【0199】
これにより、本変形例6によれば、チップ搭載部TAB1の露出面積とチップ搭載部TAB2の露出面積とを増加させることができるため、放熱効率を向上することができる。
【0200】
また、本変形例6によれば、例えば、大電流を測定するテスト工程などにおいて、封止体MRの側面から露出しているチップ搭載部TAB1の一部やチップ搭載部TAB2の一部にテスト端子を接触させることができるため、テスト工程におけるコンタクト性を向上することができる。
【0201】
さらに、本変形例6における半導体装置PAC7では、封止体MRからチップ搭載部TAB1の一部とチップ搭載部TAB2の一部とを突出させるため、封止体MR自体のサイズが小さくなる。このことは、本変形例6における半導体装置PAC7のパッケージサイズ(封止体MRのサイズ)が小さくなることを意味し、これによって、半導体装置PAC7の実装面積を小さくできる。
【0202】
また、本変形例6では、封止体MRの側面からチップ搭載部TAB1の一部とチップ搭載部TAB2の一部とが突出し、かつ、露出していることから、この部分に半田フィレットを形成することができる。つまり、本変形例6における半導体装置PAC7によれば、エミッタ端子ETやアノード端子ATや信号端子SGTだけでなく、チップ搭載部TAB1の突出している部分やチップ搭載部TAB2の突出している部分も半田によって実装基板と接続することができる。このため、半導体装置PAC7の実装基板への実装信頼性を向上することができる。この点に関して、さらに、本変形例6によれば、半田の濡れ拡がりを確認することが容易となり、半導体装置PAC7の実装時における半田付けの信頼性を向上することもできる。
【0203】
なお、本変形例6における半導体装置PAC7は、インバータ回路の上アームと下アームのいずれにも適用することができる。
【0204】
<実施の形態1における電子装置のシステム構成>
本実施の形態1における半導体装置PAC1は、
図2に示すSRモータ用のインバータ回路INVの構成要素となる1つのIGBTと1つのダイオードとを1パッケージ化したものである。このことから、本実施の形態1における半導体装置PAC1を6つ使用することにより、3相のインバータ回路INVを含む電子装置(パワーモジュール)が構成されることになる。
【0205】
以下に、まず、本実施の形態1における電子装置EA1のシステム構成について説明する。
図39は、本実施の形態1における電子装置EA1のシステム構成を示すブロック図である。
図39において、本実施の形態1における電子装置EA1は、制御基板CWB1と、制御基板CWB2と、インバータ回路INVと、電流センサCRSと、SRモータMTとを備えている。
【0206】
SRモータMTは、U相モータコイルとV相モータコイルとW相モータコイルとを有しており、これらのコイルに順次切り換えて電流を流すことにより、SRモータMTは、回転するように構成されている。また、SRモータMTには、SRモータの回転角度を検知するレゾルバが設けられている。
【0207】
そして、インバータ回路INVは、SRモータMTを構成するU相モータコイルとV相モータコイルとW相モータコイルとに順次切り換えて電流を流す機能を有し、6つのIGBTと6つのダイオード(FWD)から構成されている。具体的に、本実施の形態1では、1つのIGBTと1つのダイオードとを1パッケージ化した半導体装置PAC1を6つ使用することにより、
図2に示すインバータ回路INVが構成されている。
【0208】
続いて、制御基板CWB2には、外部電源とドライバICとが搭載されている。外部電源は、例えば、車載バッテリ(12V)からドライバICの駆動電圧を生成する機能を有する回路である(DC/DCコンバータ)。そして、ドライバICは、インバータ回路INVを構成するIGBTを制御する機能を有し、例えば、
図2に示すインバータ回路INVでのゲート制御回路GCCに対応する。具体的に、ドライバICは、インバータ回路INVを構成するIGBTのオン/オフ(スイッチング)を制御する機能を有するとともに、IGBTの短絡保護や温度検知(温度監視)をする機能を有している。
【0209】
次に、制御基板CWB1は、マイコンが搭載された基板である。具体的に、制御基板CWB1には、電源IC、MCU(Micro Controller Unit)、レゾルバ(角度)制御IC、CAN(Controller Area Network)トランシーバI/F用ICが搭載されている。
【0210】
電源ICは、例えば、車載バッテリ(12V)からMCUの駆動電圧を生成する機能を有する回路であり、制御基板CWB2に搭載されている外部電源(例えば、DC/DCコンバータ)と同様の機能を有する。
【0211】
MCUは、例えば、SRモータのモータ相(U相、V相、W相)を制御する機能を有する。具体的に、MCUは、サイン波に代表される波形の制御などを行なうことによって、SRモータを回転させるための制御信号を生成する機能を有する。また、MCUは、電流センサCRSからの出力信号に基づいて、モータ電流検知(モータ電流監視)を行なう機能も有しているとともに、筐体温度センサからの出力信号に基づいて、ケース(筐体)の温度検知(温度監視)を行なう機能も有している。
【0212】
CANトランシーバI/F用ICは、レゾルバや電流センサCRSとMCUとのインターフェースを構築する機能を有する。また、レゾルバ制御ICは、CANトランシーバI/F用ICを介して、レゾルバから出力されたSRモータの回転角度に関する回転角度信号を入力し、この回転角度信号を処理するように構成されている。
【0213】
そして、MCUは、レゾルバ制御ICで処理された回転角度信号に基づいて、適切なタイミングで、SRモータのモータ相(U相、V相、W相)のそれぞれを制御する制御信号を、制御基板CWB2に搭載されているドライバICに出力し、ドライバICは、MCUからの出力された制御信号に基づいて、インバータ回路INVを駆動する。
【0214】
以上のようにして、本実施の形態1における電子装置EA1がシステム構成されている。以下では、このようにシステム構成された本実施の形態1における電子装置EA1の実装構成について説明する。
【0215】
<実施の形態1における電子装置の実装構成>
図40は、本実施の形態1における電子装置EA1の実装構成を示す図である。特に、
図40(a)は、本実施の形態1における電子装置EA1の構成を示す平面図であり、
図40(b)は、
図40(a)の紙面下側から見た側面図であり、
図40(c)は、
図40(b)の紙面右側から見た側面図である。
【0216】
まず、本実施の形態1における電子装置EA1に含まれるインバータ回路の実装構成について説明する。
【0217】
図40(a)に示すように、本実施の形態1における電子装置EA1は、ケースCSに囲まれた配線基板WBを備えており、この配線基板WB上に6つの半導体装置PAC1(U1)、PAC1(U2)、PAC1(V1)、PAC1(V2)、PAC1(W1)、PAC1(W2)が搭載されている。なお、6つの半導体装置PAC1(U1)、PAC1(U2)、PAC1(V1)、PAC1(V2)、PAC1(W1)、PAC1(W2)を特に区別する必要がないときには、総称して単に「半導体装置PAC1」と呼ぶことがある。
【0218】
図40(a)において、ケースCSの右辺(右側面)には、外部から電源電位が供給可能な電源端子PTと、外部から基準電位(例えば、接地電位)が供給可能な基準端子(グランド端子)NTと、が設けられている。また、ケースCSの上辺(上側面)には、SRモータと接続されるU端子UT、U´端子U´T、V端子VT、V´端子V´T、W端子WT、W´端子W´Tが設けられている。
【0219】
そして、ケースCSの下面に配置される配線基板WBの主面には、電源配線WL(P)、基準配線WL(N)、配線WL(U)、配線WL(U´)、配線WL(V)、配線WL(V´)、配線WL(W)、配線WL(W´)、複数の配線WL(S)が形成されている。なお、電源配線WL(P)、基準配線WL(N)、配線WL(U)、配線WL(U´)、配線WL(V)、配線WL(V´)、配線WL(W)、配線WL(W´)、配線WL(S)を特に区別する必要のないときには、総称して単に「配線WL」と呼ぶことがある。
【0220】
このとき、電源配線WL(P)は、電源端子PTと電気的に接続されており、基準配線WL(N)は、基準端子NTと電気的に接続されている。そして、配線WL(U)は、バスバーBB(U)を介して、U端子UTと電気的に接続されており、配線WL(U´)は、バスバーBB(U´)を介して、U´端子U´Tと電気的に接続されている。
【0221】
また、配線WL(V)は、バスバーBB(V)を介して、V端子VTと電気的に接続されており、配線WL(V´)は、バスバーBB(V´)を介して、V´端子V´Tと電気的に接続されている。
【0222】
同様に、配線WL(W)は、バスバーBB(W)を介して、W端子WTと電気的に接続されており、配線WL(W´)は、バスバーBB(W´)を介して、W´端子W´Tと電気的に接続されている。なお、バスバーBB(U)、バスバーBB(U´)、バスバーBB(V)、バスバーBB(V´)、バスバーBB(W)、バスバーBB(W´)を特に区別する必要のないときには、総称して単位「バスバーBB」と呼ぶことがある。ここで、平面視において、バスバーBBは、電源配線WL(P)を跨ぐように配置されている。
【0223】
配線WL(S)は、接続端子CNTを介して、制御基板CWB2上に配置されているドライバIC10と電気的に接続されている。
【0224】
配線基板WBは、例えば、絶縁金属基板(IMS:Insulated Metal Substrate)から構成されている。この絶縁金属基板は、例えば、アルミニウムからなるAlベース上に樹脂絶縁層が形成され、この樹脂絶縁層上に配線WLを構成する銅箔を有している。そして、6つの半導体装置PAC1は、絶縁金属基板の表面に形成されている銅箔からなる配線WLと半田によって接続されている。
【0225】
本実施の形態1では、配線基板WBとして絶縁金属基板を使用することにより、熱抵抗を低減することができる。なぜなら、絶縁金属基板によれば、樹脂絶縁層は薄く、かつ、熱伝導率の高いAlベースが厚くなっていることから、放熱効率の向上を図ることができるからである。この結果、本実施の形態1における電子装置EA1の温度上昇を抑制することができ、これによって、電子装置EA1の信頼性を向上することができる。また、本実施の形態1では、配線基板WBとして絶縁金属基板を使用しているが、それに限定されることはなく、例えば、セラミック基板を使用することもできる。しかし、本実施の形態1では、配線基板WBとして、セラミック基板に比べて安価な絶縁金属基板を使用することにより、部材コストを下げることもできる。
【0226】
図40(a)において、配線基板WBの主面上には、6つの半導体装置PAC1が搭載されている。このとき、
図15および
図40(a)との組み合わせから、半導体装置PAC1(U1)のエミッタ端子ETと、配線WL(U´)とが電気的に接続され、かつ、半導体装置PAC1(U2)のチップ搭載部TAB2と、配線WL(U´)とが電気的に接続されている。この結果、配線WL(U´)を介して、半導体装置PAC1(U1)のエミッタ端子ETと半導体装置PAC1(U2)のチップ搭載部TAB2(カソード端子)とは、電気的に接続されることになる。
【0227】
一方、半導体装置PAC1(U1)のアノード端子ATと、配線WL(U)とが電気的に接続され、かつ、半導体装置PAC1(U2)のチップ搭載部TAB1と、配線WL(U)とが電気的に接続されている。この結果、配線WL(U)を介して、半導体装置PAC1(U1)のアノード端子ATと半導体装置PAC1(U2)のチップ搭載部TAB1(コレクタ端子)とは、電気的に接続されることになる。
【0228】
さらに、
図15および
図40(a)の組み合わせから、半導体装置PAC1(U1)の下面から露出するチップ搭載部TAB1(コレクタ端子)およびチップ搭載部TAB2(カソード端子)は、電源配線WL(P)と電気的に接続されている。一方、半導体装置PAC1(U2)のエミッタ端子ETとアノード端子ATとの両方とも、基準配線WL(N)と電気的に接続されている。したがって、半導体装置PAC1(U2)のエミッタ端子ETとアノード端子ATとは、基準配線WL(N)を介して、電気的に接続されていることになる。
【0229】
図15および
図40(a)の組み合わせから、半導体装置PAC1(U1)の信号端子SGTは、配線WL(S)と接続されており、配線WL(S)は、接続端子CNTを介して、制御基板CWB2上に配置されているドライバIC10と電気的に接続されている。また、半導体装置PAC1(U2)の信号端子SGTは、配線WL(S)と接続されており、配線WL(S)は、接続端子CNTを介して、制御基板CWB2上に配置されているドライバIC10と電気的に接続されている。
【0230】
同様に、
図15と
図40(a)の組み合わせから、半導体装置PAC1(V1)のエミッタ端子ETと、配線WL(V´)とが電気的に接続され、かつ、半導体装置PAC1(V2)のチップ搭載部TAB2と、配線WL(V´)とが電気的に接続されている。この結果、配線WL(V´)を介して、半導体装置PAC1(V1)のエミッタ端子ETと半導体装置PAC1(V2)のチップ搭載部TAB2(カソード端子)とは、電気的に接続されることになる。
【0231】
一方、半導体装置PAC1(V1)のアノード端子ATと、配線WL(V)とが電気的に接続され、かつ、半導体装置PAC1(V2)のチップ搭載部TAB1と、配線WL(V)とが電気的に接続されている。この結果、配線WL(V)を介して、半導体装置PAC1(V1)のアノード端子ATと半導体装置PAC1(V2)のチップ搭載部TAB1(コレクタ端子)とは、電気的に接続されることになる。
【0232】
さらに、
図15および
図40(a)の組み合わせから、半導体装置PAC1(V1)の下面から露出するチップ搭載部TAB1(コレクタ端子)およびチップ搭載部TAB2(カソード端子)は、電源配線WL(P)と電気的に接続されている。一方、半導体装置PAC1(V2)のエミッタ端子ETとアノード端子ATとの両方とも、基準配線WL(N)と電気的に接続されている。したがって、半導体装置PAC1(V2)のエミッタ端子ETとアノード端子ATとは、基準配線WL(N)を介して、電気的に接続されていることになる。
【0233】
図15および
図40(a)の組み合わせから、半導体装置PAC1(V1)の信号端子SGTは、配線WL(S)と接続されており、配線WL(S)は、接続端子CNTを介して、制御基板CWB2上に配置されているドライバIC10と電気的に接続されている。また、半導体装置PAC1(V2)の信号端子SGTは、配線WL(S)と接続されており、配線WL(S)は、接続端子CNTを介して、制御基板CWB2上に配置されているドライバIC10と電気的に接続されている。
【0234】
同様に、
図15と
図40(a)の組み合わせから、半導体装置PAC1(W1)のエミッタ端子ETと、配線WL(W´)とが電気的に接続され、かつ、半導体装置PAC1(W2)のチップ搭載部TAB2と、配線WL(W´)とが電気的に接続されている。この結果、配線WL(W´)を介して、半導体装置PAC1(W1)のエミッタ端子ETと半導体装置PAC1(W2)のチップ搭載部TAB2(カソード端子)とは、電気的に接続されることになる。
【0235】
一方、半導体装置PAC1(W1)のアノード端子ATと、配線WL(W)とが電気的に接続され、かつ、半導体装置PAC1(W2)のチップ搭載部TAB1と、配線WL(W)とが電気的に接続されている。この結果、配線WL(W)を介して、半導体装置PAC1(W1)のアノード端子ATと半導体装置PAC1(W2)のチップ搭載部TAB1(コレクタ端子)とは、電気的に接続されることになる。
【0236】
さらに、
図15および
図40(a)の組み合わせから、半導体装置PAC1(W1)の下面から露出するチップ搭載部TAB1(コレクタ端子)およびチップ搭載部TAB2(カソード端子)は、電源配線WL(P)と電気的に接続されている。一方、半導体装置PAC1(W2)のエミッタ端子ETとアノード端子ATとの両方とも、基準配線WL(N)と電気的に接続されている。したがって、半導体装置PAC1(W2)のエミッタ端子ETとアノード端子ATとは、基準配線WL(N)を介して、電気的に接続されていることになる。
【0237】
図15および
図40(a)の組み合わせから、半導体装置PAC1(W1)の信号端子SGTは、配線WL(S)と接続されており、配線WL(S)は、接続端子CNTを介して、制御基板CWB2上に配置されているドライバIC10と電気的に接続されている。また、半導体装置PAC1(W2)の信号端子SGTは、配線WL(S)と接続されており、配線WL(S)は、接続端子CNTを介して、制御基板CWB2上に配置されているドライバIC10と電気的に接続されている。
【0238】
続いて、本実施の形態1における電子装置EA1では、例えば、
図40(a)に示すように、半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(U2)とがy方向に並ぶように配置され、かつ、半導体装置PAC1(V1)と半導体装置PAC1(V2)とがy方向に並ぶように配置され、かつ、半導体装置PAC1(W1)と半導体装置PAC1(W2)とがy方向に並ぶように配置されている。
【0239】
このとき、半導体装置PAC1(U1)が、
図2に示す第1レグLG1の上アームUA(U)を構成し、半導体装置PAC1(U2)が、
図2に示す第1レグLG1の下アームBA(U)を構成する。同様に、半導体装置PAC1(V1)が、
図2に示す第2レグLG2の上アームUA(V)を構成し、半導体装置PAC1(V2)が、
図2に示す第2レグLG2の下アームBA(V)を構成する。また、半導体装置PAC1(W1)が、
図2に示す第3レグLG3の上アームUA(W)を構成し、半導体装置PAC1(W2)が、
図2に示す第3レグLG3の下アームBA(W)を構成する。
【0240】
そして、例えば、
図40(a)に示すように、半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(V1)と半導体装置PAC1(W1)とが、x方向に並ぶように配置され、半導体装置PAC1(U2)と半導体装置PAC1(V2)と半導体装置PAC1(W2)とが、x方向に並ぶように配置されている。
【0241】
したがって、本実施の形態1における電子装置EA1では、配線基板WBの上側にx方向に沿って並んで配置された3つの半導体装置PAC1(U1)、PAC1(V1)、PAC1(W1)のそれぞれは、第1レグLG1〜第3レグLG3のそれぞれにおける上アームの構成要素となる。一方、配線基板WBの下側にx方向に沿って並んで配置された3つの半導体装置PAC1(U2)、PAC1(V2)、PAC1(W2)のそれぞれは、第1レグLG1〜第3レグLG3のそれぞれにおける下アームの構成要素となる。
【0242】
このとき、半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(U2)に着目すると、平面視において、半導体装置PAC1(U1)および半導体装置PAC1(U2)は、配線基板WBの主面上にそれぞれ異なる向きで搭載されている。
【0243】
例えば、
図40(a)において、半導体装置PAC1(U1)は、エミッタ端子およびアノード端子が封止体から−y方向に突出するように、配線基板WB上に搭載されている。一方、
図40(a)において、半導体装置PAC1(U2)は、エミッタ端子およびアノード端子が封止体から+x方向に突出するように、配線基板WB上に搭載されている。
【0244】
同様に、半導体装置PAC1(V1)と半導体装置PAC1(V2)に着目しても、平面視において、半導体装置PAC1(V1)および半導体装置PAC1(V2)は、配線基板WBの主面上にそれぞれ異なる向きで搭載されている。
【0245】
例えば、
図40(a)において、半導体装置PAC1(V1)は、エミッタ端子およびアノード端子が封止体から−y方向に突出するように、配線基板WB上に搭載されている。一方、
図40(a)において、半導体装置PAC1(V2)は、エミッタ端子およびアノード端子が封止体から+x方向に突出するように、配線基板WB上に搭載されている。
【0246】
同様に、同様に、半導体装置PAC1(W1)と半導体装置PAC1(W2)に着目しても、平面視において、半導体装置PAC1(W1)および半導体装置PAC1(W2)は、配線基板WBの主面上にそれぞれ異なる向きで搭載されている。
【0247】
例えば、
図40(a)において、半導体装置PAC1(W1)は、エミッタ端子およびアノード端子が封止体から−y方向に突出するように、配線基板WB上に搭載されている。一方、
図40(a)において、半導体装置PAC1(W2)は、エミッタ端子およびアノード端子が封止体から+x方向に突出するように、配線基板WB上に搭載されている。
【0248】
さらに、本実施の形態1における電子装置EA1において、例えば、
図15および
図40(a)を参照しながら、半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(U2)との配置関係に着目する。
【0249】
この場合、平面視において、半導体装置PAC1(U1)のチップ搭載部TAB1およびチップ搭載部TAB2は、封止体MRの辺S1と辺S2の間に配置され、かつ、チップ搭載部TAB2は、半導体チップCHP1が搭載されたチップ搭載部TAB1と辺S1との間に配置されている。
【0250】
また、平面視において、半導体装置PAC1(U2)のチップ搭載部TAB1およびチップ搭載部TAB2は、封止体MRの辺S1と辺S2の間に配置され、かつ、チップ搭載部TAB2は、半導体チップCHP1が搭載されたチップ搭載部TAB1と辺S1との間に配置されている。
【0251】
さらに、平面視において、半導体装置PAC1(U1)のエミッタ端子ETおよびアノード端子ATは、封止体MRの辺S1に沿って並んで配置され、かつ、エミッタ端子ETは、辺S1と辺S4で構成される角部とアノード端子ATとの間に配置されている。
【0252】
同様に、平面視において、半導体装置PAC1(U2)のエミッタ端子ETおよびアノード端子ATは、封止体MRの辺S1に沿って並んで配置され、かつ、エミッタ端子ETは、辺S1と辺S4で構成される角部とアノード端子ATとの間に配置されている。
【0253】
そして、平面視において、半導体装置PAC1(U1)の封止体MRの辺S1と半導体装置PAC1(U2)の封止体MRの辺S4とが対向し、かつ、半導体装置PAC1(U1)の封止体MRの辺S4と半導体装置PAC1(U2)の封止体MRの辺S1とが同一方向を向くように、半導体装置PAC1(U1)および半導体装置PAC1(U2)は、配線基板WBの主面上に搭載されている。
【0254】
なお、半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(U2)との配置関係に着目して説明したが、ここでの説明は、半導体装置PAC1(V1)と半導体装置PAC1(V2)との配置関係や、半導体装置PAC1(W1)と半導体装置PAC1(W2)との配置関係にも同様に当てはまる。
【0255】
以上のことから、
図40(a)において、配線基板WBの主面上には、電源端子PTと半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(V1)と半導体装置PAC1(W1)に電気的に接続された電源配線WL(P)が形成されていることになる。
【0256】
また、
図40(a)において、配線基板WBの主面上には、基準端子NTと半導体装置PAC1(U2)と半導体装置PAC1(V2)と半導体装置PAC1(W2)とに電気的に接続された基準配線WL(N)が形成されていることになる。
【0257】
そして、平面視において、半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(V1)と半導体装置PAC1(W1)とは、電源配線WL(P)の一部と重なるように、電源配線WL(P)上に搭載されていることにより、半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(V1)と半導体装置PAC1(W1)のそれぞれのチップ搭載部TAB1およびチップ搭載部TAB2は、電源配線WL(P)と電気的に接続されている。
【0258】
次に、本実施の形態1における電子装置EA1に含まれる制御基板CWB2の実装構成について説明する。
【0259】
まず、
図40(a)において、6つの半導体装置PAC1のそれぞれには、信号端子SGT(
図15参照)が設けられており、この信号端子SGTと電気的に接続するように、配線基板WBの主面には、接続端子CNTが設けられている。この接続端子CNTは、
図40(b)および
図40(c)に示すように、+z方向に折り曲げられている。
【0260】
そして、
図40(b)および
図40(c)に示すように、ケースCSの上方(+z方向)には、制御基板CWB2が配置されており、+z方向に折り曲げられている接続端子CNTと制御基板CWB2とが電気的に接続されている。すなわち、上述した接続端子CNTが制御基板CWB2を貫通するように、接続端子CNTと制御基板CWB2とが配置されている。これにより、制御基板CWB2上に形成されている電子部品と、配線基板WB上に搭載されている半導体装置PAC1とが、電気的に接続されることになる。具体的に、接続端子CNTは、インバータ回路の構成要素となる半導体装置PAC1の制御端子SGTと電気的に接続され、かつ、ドライバICが搭載された制御基板CWB2と電気的に接続されていることから、結果的に、インバータ回路の構成要素となる半導体装置PAC1とドライバICとが電気的に接続されることになる。
【0261】
続いて、
図41は、
図40(a)のA−A線で切断した断面図である。
図41に示すように、本実施の形態1における電子装置EA1では、ケースCSの内部に、半導体装置PAC1とバスバーBBとが配置されてインバータ回路が実装構成され、かつ、ケースCSの上方(+z方向)に、ドライバICが搭載された制御基板CWB2が配置されていることがわかる。
【0262】
また、
図42は、
図40(a)のB−B線で切断した断面図であり、
図43は、
図40(a)のC−C線で切断した断面図である。
図42および
図43に示すように、+z方向に折り曲げられた接続端子CNTが、ケースCSの上方(+z方向)に配置された制御基板CWB2を貫通するように配置されていることがわかる。
【0263】
なお、
図40(b)、
図40(c)、
図42および
図43には、図示していないが、さらに、制御基板CWB2の上方(+z方向)には、MCUが搭載された制御基板CWB1が搭載される。この結果、本実施の形態1では、インバータ回路(6つの半導体装置PAC1)と、ドライバICが搭載された制御基板CWB2と、MCUが搭載された制御基板CWB1とを備える電子装置EA1が実装構成されることになる。以上のようにして、本実施の形態1における電子装置EA1の実装構成が実現される。
【0264】
次に、本実施の形態1の電子装置EA1における電流の流れについて説明する。
図44は、本実施の形態1の電子装置EAにおいて、IGBTを流れる主電流の流れと、ダイオードを流れる回生電流の流れとを示す図である。また、
図45は、本実施の形態1の電子装置EAを構成する半導体装置PAC1の封止体を透視した状態でのIGBTを流れる主電流の流れと、ダイオードを流れる回生電流の流れとを示す図である。
【0265】
まず、
図44において、IGBTを流れる主電流の流れが実線の矢印で示されている。具体的に、IGBTを流れる主電流I1は、電源端子PT→電源配線WL(P)→半導体装置PAC1(U1)→配線WL(U´)→バスバーBB(U´)→U´端子U´T→SRモータ→U端子UT→バスバーBB(U)→配線WL(U)→半導体装置PAC1(U2)→基準配線WL(N)→基準端子NTの経路で流れる。
【0266】
一方、
図44において、ダイオードを流れる回生電流の流れが破線の矢印で示されている。具体的に、ダイオードを流れる回生電流I2は、基準端子NT→基準配線WL(N)→半導体装置PAC1(U2)→配線WL(U´)→バスバーBB(U´)→U´端子U´T→SRモータ→U端子UT→バスバーBB(U)→配線WL(U)→半導体装置PAC1(U1)→電源配線WL(P)→電源端子PTの経路で流れる。
【0267】
続いて、
図45を使用して、半導体装置PAC1(U1)の内部および半導体装置PAC1(U2)の内部における主電流I1と回生電流I2の流れについて説明する。
【0268】
図45において、IGBTを流れる主電流I1は、電源配線WL(P)→チップ搭載部TAB1(半導体装置PAC1(U1))→半導体チップCHP1→クリップCLP1→エミッタ端子ET→
図44→チップ搭載部TAB1(半導体装置PAC1(U2))→半導体チップCHP1→クリップCLP1→エミッタ端子→
図44という経路を流れる。
【0269】
一方、
図45において、ダイオードを流れる回生電流I2は、基準配線WL(N)→アノード端子AT(半導体装置PAC1(U2))→クリップCLP2→半導体チップCHP2→チップ搭載部TAB2→
図44→アノード端子AT(半導体装置PAC1(U1))→クリップCLP2→半導体チップCHP2→チップ搭載部TAB2→
図44という経路を流れる。
【0270】
以上のことから、U´端子U´Tは、電子装置EA1の外部に出力電流を出力可能な電流出力端子として機能し、U端子UTは、電子装置EA1の外部からの入力電流を入力可能な電流入力端子として機能することがわかる。同様に、V´端子V´TおよびW´端子W´Tは、電子装置EA1の外部に出力電流を出力可能な電流出力端子として機能し、V端子VTおよびW端子WTは、電子装置EA1の外部からの入力電流を入力可能な電流入力端子として機能することになる。
【0271】
<実施の形態1における電子装置の特徴>
次に、本実施の形態1における電子装置EA1の特徴点について説明する。本実施の形態1における電子装置EA1の第1特徴点は、例えば、
図40(a)に示すように、電源端子PTと電気的に接続される電源配線WL(P)がx方向に延在し、かつ、半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(V1)と半導体装置PAC1(W1)とがx方向に並びながら、電源配線WL(P)上に配置されている点にある。これにより、半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(V1)と半導体装置PAC1(W1)のそれぞれと、電源端子PTと、を電気的に接続する電源配線WL(P)の配線長を可能な限り短くすることができる。この結果、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、電源配線WL(P)の寄生抵抗および寄生インダクタンスを低減することができる。
【0272】
続いて、本実施の形態1における電子装置EA1の第2特徴点は、例えば、
図40(a)の中の半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(U2)とに着目すると、半導体装置PAC1(U1)と半導体装置PAC1(U2)とを電気的に接続する配線WL(U)や配線WL(U´)の配線長が可能な限り短くなっている点にある。
【0273】
これは、平面視において、半導体装置PAC1(U1)および半導体装置PAC1(U2)が、配線基板WBの主面上にそれぞれ異なる向きで搭載されることによって実現されている。すなわち、
図40(a)において、半導体装置PAC1(U1)は、エミッタ端子およびアノード端子が封止体から−y方向に突出するように、配線基板WB上に搭載されている。一方、
図40(a)において、半導体装置PAC1(U2)は、エミッタ端子およびアノード端子が封止体から+x方向に突出するように、配線基板WB上に搭載されている。この結果、例えば、
図15に示すように、半導体装置PAC1(U1)のエミッタ端子ETと半導体装置PAC1(U2)のチップ搭載部TAB2とがy方向に沿って一直線状に配置されることになる。このため、半導体装置PAC1(U1)のエミッタ端子ETと半導体装置PAC1(U2)のチップ搭載部TAB2とを接続する配線WL(U´)の配線長を短くすることができるのである。同様に、
図15に示すように、半導体装置PAC1(U1)のアノード端子ETと半導体装置PAC1(U2)のチップ搭載部TAB1とがy方向に沿って一直線状に配置されることになる。このため、半導体装置PAC1(U1)のアノード端子ATと半導体装置PAC1(U2)のチップ搭載部TAB1とを接続する配線WL(U)の配線長を短くすることができるのである。
【0274】
これにより、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、配線WL(U)および配線WL(U´)の寄生抵抗および寄生インダクタンスを低減することができる。
【0275】
なお、配線WL(V)、配線WL(V´)、配線WL(W)および配線WL(W´)についても、同様の構成を取ることになるため、これらの配線の配線長も、配線WL(U)および配線WL(U´)の配線長と同様に短くすることができる。したがって、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、配線WL(V)、配線WL(V´)、配線WL(W)および配線WL(W´)の寄生抵抗および寄生インダクタンスも低減することができる。
【0276】
このように、本実施の形態1における電子装置EA1の第1特徴点および第2特徴点により、電源配線WL(P)、配線WL(U)、配線WL(U´)、配線WL(V)、配線WL(V´)、配線WL(W)および配線WL(W´)の配線長を可能な限り短くすることができる。一方、
図40(a)に示すように、基準配線WL(N)の配線長は、上述した第1特徴点および第2特徴点を実現した結果、最短長にはならないが、可能な限り短くなるように形成されている。このことから、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、電源配線WL(P)、基準配線WL(N)、配線WL(U)、配線WL(U´)、配線WL(V)、配線WL(V´)、配線WL(W)および配線WL(W´)の配線長を全体で可能な限り短くすることができるように工夫されていることになる。
【0277】
この結果、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、上述した配線WLに起因する寄生抵抗および寄生インダクタンスを低減することができ、これによって、SRモータ用のインバータ回路を含む電子装置EA1の性能向上を図ることができる。さらに、上述した配線WLの配線長を全体で可能な限り短くすることができるということは、電子装置EA1の小型化を図ることができることを意味する。
【0278】
したがって、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、上述した第1特徴点および第2特徴点を有することにより、電子装置EA1の性能向上を図ることができるだけでなく、電子装置EA1の小型化も実現することができる。
【0279】
次に、本実施の形態1における電子装置EA1の第3特徴点は、例えば、
図40(a)に示すように、ケースCSの一辺(一側面)にU端子UT、U´端子U´T、V端子VT、V´端子V´T、W端子WT、W´端子W´Tが設けられている点にある。これらの端子は、すべてSRモータと接続されるため、これらのすべての端子が、ケースCSの一辺(一側面)にまとめて設けられている場合には、これらの端子とSRモータとの接続容易性を向上することができるのである。さらに、本実施の形態1における電子装置EA1の第3特徴点によれば、上述した第1特徴点および第2特徴点を採用しながら、バスバーBBの配置も容易となる利点を得ることもできる。
【0280】
続いて、本実施の形態1における電子装置EA1の第4特徴点は、例えば、
図40(a)に示すように、配線WLが配線基板WBの表面に密着して形成されている一方、バスバーBBが中空配置されている点にある。つまり、本実施の形態1における電子装置EA1の第1特徴点〜第3特徴点をすべて実現するにあたっては、必然的に、配線WLとバスバーBBとが交差することになる。したがって、配線WLとバスバーBBとのいずれか一方は、配線基板WBの表面に密着した密着配線とし、配線WLとバスバーBBとのいずれか他方は、中空配線とする必要がある。
【0281】
ここで、中空配線は、密着配線よりも、寄生インダクタンスが大きくなることから、本実施の形態1では、配線WLを密着配線から形成し、バスバーBBを中空配線から形成している。なぜなら、電源端子PTと基準端子NTとの間に接続される配線WLの寄生インダクタンスが大きくなると、高速スイッチング動作を行なうインバータ回路の性能を低下させる原因となるからである。一方、バスバーBBは、SRモータのコイルと接続される部位に設けられるため、バスバーBB自体の寄生インダクタンスが大きくなっても、SRモータのコイル自体に大きなインダクタンスが存在するため、バスバーBB自体の寄生インダクタンスの影響は顕在化しないからである。
【0282】
すなわち、配線WLの寄生インダクタンスは、インバータ回路の性能に大きな影響を及ぼす一方、バスバーBBの寄生インダクタンスは、インバータ回路の性能に影響を及ぼさないことから、本実施の形態1における電子装置EA1では、配線WLを密着配線から形成し、バスバーBBを中空配線から形成しているのである。
【0283】
以上のことから、本実施の形態1における電子装置EA1によれば、上述した第1特徴点〜第4特徴点を有することにより、SRモータ用のインバータ回路を含む電子装置EA1の性能向上を図ることができるとともに、小型化を図ることができる。
【0284】
<変形例>
次に、本実施の形態1における電子装置EA1の変形例について説明する。まず、本変形例における電子装置の構成要素である半導体装置PAC8の構成について説明する。
【0285】
図46は、本変形例における半導体装置PAC8の外観構成を示す図である。具体的に、
図46(a)は、本変形例における半導体装置PAC8の表面(上面)側から見た平面図であり、
図46(b)は、本変形例における半導体装置PAC8の一側面から見た側面図であり、
図46(c)は、本変形例における半導体装置PAC8の裏面(下面)側から見た平面図である。
【0286】
図46(a)〜(c)のうち、特に、
図46(b)に示すように、本変形例における半導体装置PAC8の特徴点は、信号端子SGTが+z方向に折れ曲がっている点にある。言い換えれば、複数の信号端子SGTのそれぞれは、その先端が封止体MRの上面より上方に位置するように折り曲げられている。本変形例における半導体装置PAC8のこれ以外の構成は、
図11に示す半導体装置PAC1の構成と同様である。
【0287】
図47は、本変形例における半導体装置PAC8の内部構造を示す図である。具体的に、
図47(a)が平面図に対応し、
図47(b)が
図47(a)のA−A線での断面図に対応し、
図47(c)が
図47(a)のB−B線での断面図に対応する。
【0288】
図47(b)および
図47(c)に示すように、本変形例における半導体装置PAC8では、信号端子SGTが、+z方向に折れ曲がっていることがわかる。本変形例における半導体装置PAC8のこれ以外の構成は、
図12に示す半導体装置PAC1の構成と同様である。以上のようにして、本変形例における半導体装置PAC8が構成されている。
【0289】
以下では、本変形例における半導体装置PAC8を使用した電子装置EA2の実装構成について説明する。
図48は、本変形例における電子装置EA2の実装構成を示す図である。特に、
図48(a)は、本変形例における電子装置EA2の構成を示す平面図であり、
図48(b)は、
図48(a)の紙面下側から見た側面図であり、
図48(c)は、
図48(b)の紙面右側から見た側面図である。また、
図49は、
図48(a)のA−A線で切断した断面図である。
【0290】
図48(a)に示すように、本変形例における電子装置EA2は、ケースCSに囲まれた配線基板WBを備えており、この配線基板WB上に6つの半導体装置PAC8(U1)、PAC8(U2)、PAC8(V1)、PAC8(V2)、PAC8(W1)、PAC8(W2)が搭載されている。なお、6つの半導体装置PAC8(U1)、PAC8(U2)、PAC8(V1)、PAC8(V2)、PAC8(W1)、PAC8(W2)を特に区別する必要がないときには、総称して単に「半導体装置PAC8」と呼ぶことがある。
【0291】
そして、本変形例における電子装置EA2では、ケースCSの一辺(一側面)にU端子UT、U´端子U´T、V端子VT、V´端子V´T、W端子WT、W´端子W´Tが設けられており、これらの端子のそれぞれとバスバーBBとが電気的に接続されている。このとき、バスバーBBは、基準配線WL(N)を跨ぐように配置されている。
【0292】
ここで、
図48(b)、(c)および
図49に示すように、本変形例における電子装置EA2に搭載されている半導体装置PAC8は、信号端子SGTが+z方向に折り曲げられており、この折り曲げられた信号端子SGTが直接、制御基板CWB2を貫通するように配置されている。この結果、本変形例における電子装置EA2によれば、例えば、
図42に示す電子装置EA1のように、接続端子CNTを設ける必要がない。このため、接続端子CNTを配置するスペースを確保する必要がなくなる点によって、電子装置EA2の小型化を図ることができるとともに、部材としての接続端子CNTが不要となる点によって、電子装置EA2のコストを削減することができる。
【0293】
例えば、
図50は、
図49の一部を拡大して示す模式図である。
図50の領域AR2に着目すると、半導体装置PAC8(V2)の折れ曲がった信号端子SGTと、半導体装置PAC8(U2)と電気的に接続されている基準配線WL(N)とを平面的にオーバラップさせることができる。これにより、本変形例における電子装置EA2の小型化を図ることができることがわかる。
【0294】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、リードフレームとチップ搭載部が機械的に締結されている構成例について説明する。すなわち、本実施の形態2においては、リードフレームは吊りリードを有し、チップ搭載部と吊りリードとは、機械的に締結されている点に特徴点がある。なお、リードフレームに設けられている吊リードは、リードフレームを切断して半導体装置を取得する際、切断され、半導体装置には、吊りリードの切断後の残骸が残存することになる。本明細書では、半導体装置に残存する吊りリードの切断後の残骸も、表現の便宜上、「吊りリード」と呼ぶことにする。
【0295】
図51は、本実施の形態2における半導体装置PAC9の外観構成を示す図である。具体的に、
図51(a)は、本実施の形態2における半導体装置PAC9の表面(上面)側から見た平面図であり、
図51(b)は、本実施の形態2における半導体装置PAC9の一側面から見た側面図であり、
図51(c)は、本実施の形態2における半導体装置PAC9の裏面(下面)側から見た平面図である。
【0296】
図51(b)に示すように、本実施の形態2における半導体装置PAC9では、封止体MRの側面から吊りリードHLの切断面が露出している。
【0297】
図52は、本実施の形態2における半導体装置PAC9の内部構造を示す図である。
図52に示すように、本実施の形態2における半導体装置PAC9は、チップ搭載部TAB1と機械的に締結されている吊リードHLが封止体MRの内部に残存しているとともに、チップ搭載部TAB2と機械的に締結されている吊リードHLも封止体MRの内部に残存している。なお、本実施の形態2における半導体装置PAC9のその他の構造は、
図12(a)に示す前記実施の形態1における半導体装置PAC1の構造と同様である。
【0298】
以下に、このように構成されている本実施の形態2における半導体装置PAC9の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0299】
1.基材(リードフレーム)準備工程
まず、
図53に示すように、リードフレームLFとチップ搭載部TAB1およびチップ搭載部TAB2を準備する。このとき、本実施の形態2では、リードフレームLFとチップ搭載部TAB1とは、吊りリードHLによって機械的に締結されており、かつ、リードフレームLFとチップ搭載部TAB2とは、吊りリードHLによって機械的に締結されている。つまり、本実施の形態2では、リードLD1AとリードLD1Bと複数の吊リードHLとを備えたリードフレームLFを準備する。具体的には、リードLD1Aとチップ搭載部TAB1との間にチップ搭載部TAB2が配置され、かつ、リードLD1Bとチップ搭載部TAB1との間にチップ搭載部TAB2が配置され、かつ、チップ搭載部TAB1およびチップ搭載部TAB2とリードフレームLFの複数の吊リードHLのそれぞれとが連結されたリードフレームLFを準備する。
【0300】
このように本実施の形態2では、吊りリードHLによってチップ搭載部TAB1と接続され、かつ、吊りリードHLによってチップ搭載部TAB2と接続されたリードフレームLFが準備される。このため、本実施の形態2では、リードフレームLFとチップ搭載部TAB1との間や、リードフレームLFとチップ搭載部TAB2との間の位置決め治具を使用する必要がなくなり、位置合わせが不要となる利点が得られる。なお、チップ搭載部TAB1の厚さやチップ搭載部TAB2の厚さは、リードフレームLFの厚さよりも厚くなっている。つまり、本実施の形態2では、リードフレームLFの厚さと、チップ搭載部TAB1の厚さやチップ搭載部TAB2の厚さが異なっていることから、リードフレームLFと一体的にチップ搭載部TAB1やチップ搭載部TAB2が形成されておらず、別体となっている。ただし、本実施の形態2では、別体として構成されているリードフレームLFとチップ搭載部TAB1とチップ搭載部TAB2とを吊りリードHLで機械的に締結することにより、製造工程における取扱いを容易にしている。
【0301】
2.チップ搭載工程
次に、
図54に示すように、チップ搭載部TAB1上に導電性接着材ADH1を供給するとともに、チップ搭載部TAB2上にも導電性接着材ADH1を供給する。導電性接着材ADH1としては、例えば、銀ペーストや高融点半田を使用することができる。
【0302】
続いて、
図55に示すように、チップ搭載部TAB1上に、IGBTが形成された半導体チップCHP1を搭載し、チップ搭載部TAB2上に、ダイオードが形成された半導体チップCHP2を搭載する。具体的には、IGBTを備え、エミッタ電極パッドEPが形成された第1表面と、コレクタ電極が形成され、第1表面とは反対側の面である第1裏面と、を有する半導体チップCHP1をチップ搭載部TAB1上に搭載して、チップ搭載部TAB1と半導体チップCHP1の第1裏面とを電気的に接続する。同様に、ダイオードを備え、アノード電極パッドADPが形成された第2表面と、カソード電極が形成され、第2表面とは反対側の面である第2裏面と、を有する半導体チップCHP2をチップ搭載部TAB2上に搭載して、チップ搭載部TAB2と半導体チップCHP2の第2裏面とを電気的に接続する。
【0303】
これにより、ダイオードが形成された半導体チップCHP2においては、半導体チップCHP2の裏面に形成されたカソード電極パッドが、導電性接着材ADH1を介してチップ搭載部TAB2と接触するように配置される。この結果、半導体チップCHP2の表面に形成されているアノード電極パッドADPが上を向くことになる。
【0304】
一方、IGBTが形成された半導体チップCHP1においては、半導体チップCHP1の裏面に形成されたコレクタ電極パッドが、導電性接着材ADH1を介してチップ搭載部TAB1と接触するように配置される。
【0305】
また、半導体チップCHP2の表面に形成されているエミッタ電極パッドEP、および、複数の電極パッドであるゲート電極パッドGP、温度検知用電極パッドTCP、温度検知用電極パッドTAP、電流検知用電極パッドSEP、ケルビン検知用電極パッドKPは上を向くことになる。
【0306】
なお、IGBTが形成された半導体チップCHP1と、ダイオードが形成された半導体チップCHP2の搭載順は、半導体チップCHP1が前で、半導体チップCHP2が後でもよいし、半導体チップCHP2が前で、半導体チップCHP1が後であってもよい。
【0307】
その後、半導体チップCHP1が搭載されたチップ搭載部TAB1と半導体チップCHP2が搭載されたチップ搭載部TAB2とに対して、加熱処理が実施される。
【0308】
3.電気的接続工程
続いて、
図56に示すように、半導体チップCHP2のアノード電極パッドADP上に、導電性接着材ADH2を供給し、半導体チップCHP1のエミッタ電極パッドEP上にも、導電性接着材ADH2を供給する。さらに、リードLD1Aの一部領域上やリードLD1Bの一部領域上にも、導電性接着材ADH2を供給する。
【0309】
この導電性接着材ADH2にも、例えば、銀ペーストや高融点半田を使用することができる。この導電性接着材ADH2は、上述した導電性接着材ADH1と同じ材料成分であってもよいし、異なる材料成分であってもよい。
【0310】
そして、リードLD1Aと半導体チップCHP1とを電気的に接続し、リードLD1Bと半導体チップCHP2とを電気的に接続する。具体的には、まず、
図57に示すように、半導体チップCHPのアノード電極パッドADPとリードLD1BとにクリップCLP2を搭載することにより、アノード電極パッドADPとリードLD1Bとを電気的に接続する。その後、
図58に示すように、半導体チップCHP1のエミッタ電極パッドEPとリードLD1AとにクリップCLP1を搭載することにより、エミッタ電極パッドEPとリードLD1Aとを電気的に接続する。このとき、
図58に示すように、クリップCLP1がクリップCLP2の一部を跨ぐようにクリップCLP1が搭載される。その後、吊りリードHLでチップ搭載部TAB1と接続され、かつ、吊りリードHLでチップ搭載部TAB2と接続されたリードフレームLFに対して、加熱処理を実施する。
【0311】
次に、
図59に示すように、ワイヤボンディング工程を実施する。例えば、
図59に示すように、リードLD2とゲート電極パッドGPがワイヤWで電気的に接続され、リードLD2と温度検知用電極パッドがワイヤWで電気的に接続される。また、リードLD2と温度検知用電極パッドがワイヤWで電気的に接続され、リードLD2と電流検知用電極パッドがワイヤWで電気的に接続される。さらに、リードLD2とケルビン検知用電極パッドKPがワイヤWで電気的に接続される。ここで、本実施の形態2では、リードLD2が、クリップCLP1が接続されているリードLD1AやクリップCLP2が接続されているリードLD1Bとは反対側に配置されているため、ワイヤWとクリップCLP1やクリップCLP2との干渉を考慮することなく、ワイヤボンディング工程を実施できる。
【0312】
4.封止(モールド)工程
次に、
図60に示すように、半導体チップCHP1、半導体チップCHP2、チップ搭載部TAB1の一部、チップ搭載部TAB2の一部、リードLD1Aの一部、リードLD1Bの一部、複数のリードLD2のそれぞれの一部、クリップCLP1、クリップCLP2およびワイヤWを封止して封止体MRを形成する。
【0313】
このとき、封止体MRは上面、上面とは反対側の下面、その厚さ方向において上面と下面との間に位置する第1側面および第1側面と対向する第2側面を有する。
図60では、第1側面の辺S1と、第2側面の辺S2が図示されている。そして、封止体MRにおいては、リードLD1AおよびリードLD1Bが封止体MRの第1側面(辺S1)から突出し、かつ、複数のリードLD2が封止体MRの第2側面(辺S2)から突出する。
【0314】
なお、
図60では図示されていないが、上述した封止体MRの下面からは、チップ搭載部TAB1の下面とチップ搭載部TAB2の下面とが露出する。
【0315】
5.外装めっき工程
その後、
図61に示すように、リードフレームLFに設けられているタイバーを切断する。そして、
図62に示すように、封止体MRの下面から露出するチップ搭載部TAB1、チップ搭載部TAB2、リードLD1Aの一部の表面、リードLD1Bの一部の表面およびリードLD2の一部の表面に導体膜であるめっき層(錫膜)を形成する。すなわち、リードLD1AやリードLD1Bの封止体MRから露出した部分、複数のリードLD2の封止体MRから露出した部分およびチップ搭載部TAB1の下面やチップ搭載部TAB2の下面にめっき層を形成する。
【0316】
6.マーキング工程
そして、樹脂からなる封止体MRの表面に製品名や型番などの情報(マーク)を形成する。なお、マークの形成方法としては、印刷方式により印字する方法やレーザを封止体の表面に照射することによって刻印する方法を用いることができる。
【0317】
7.個片化工程
続いて、リードLD1Aの一部、リードLD1Bの一部および複数のリードLD2のそれぞれの一部を切断することにより、リードLD1AとリードLD1Bと複数のリードLD2とをリードフレームLFから分離する。このとき、リードフレームLFとチップ搭載部TAB1を接続している吊りリードHLや、リードフレームLFとチップ搭載部TAB2を接続している吊りリードHLも切断される。これにより、
図51(a)〜(c)に示すように、本実施の形態2における半導体装置PAC9を製造することができる。
【0318】
このとき、
図51(b)に示すように、封止体MRの側面から吊りリードHLの切断面が露出する。これによって、本実施の形態2における半導体装置9の製造方法において、リードフレームLFとチップ搭載部TAB1とが吊りリードHLDで締結され、かつ、リードフレームLFとチップ搭載部TAB2とが吊りリードHLDで締結されていたことがわかることになる。もちろん、封止体MRの内部を見れば、
図52に示すように、チップ搭載部TAB1の角部に吊りリードHLとチップ搭載部TAB1とを機械的に締結した痕跡が残ることになるとともに、チップ搭載部TAB1の角部に吊りリードHLとチップ搭載部TAB1とを機械的に締結した痕跡が残ることになる。その後、リードLD1A、リードLD1Bおよび複数のリードLD2のそれぞれを成形する。そして、例えば、電気的特性をテストするテスト工程を実施した後、良品と判定された半導体装置PAC9が出荷される。
【0319】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0320】
前記実施の形態は、下記の形態を含む。
【0321】
(付記1)
(a)絶縁ゲートバイポーラトランジスタを備え、エミッタ電極パッドが形成された第1表面と、コレクタ電極が形成され、前記第1表面とは反対側の面である第1裏面と、を有する第1半導体チップ、
(b)ダイオードを備え、アノード電極パッドが形成された第2表面と、カソード電極が形成され、前記第2表面とは反対側の面である第2裏面と、を有する第2半導体チップ、
(c)前記第1半導体チップが搭載され、前記第1半導体チップの前記第1裏面と電気的に接続された第1上面と、前記第1上面とは反対側の面である第1下面と、を有する第1チップ搭載部、
(d)前記第2半導体チップが搭載され、前記第2半導体チップの前記第2裏面と電気的に接続された第2上面と、前記第2上面とは反対側の面である第2下面と、を有する第2チップ搭載部、
(e)前記第1半導体チップの前記エミッタ電極パットと第1導電性部材を介して電気的に接続された第1リード、
(f)前記第2半導体チップの前記アノード電極パットと第2導電性部材を介して電気的に接続された第2リード、
(g)第1辺および前記第1辺と対向する第2辺を備えた第1主面と、前記第1主面とは反対側の面である第2主面と、を有し、前記第1半導体チップ、前記第2半導体チップ、前記第1チップ搭載部の一部、前記第2チップ搭載部の一部、前記第1リードの一部、および前記第2リードの一部、を封止する封止体、
を有し、
前記第1チップ搭載部の前記第1下面、および、前記第2チップ搭載部の前記第2下面は、前記封止体の前記第2主面から露出し、
平面視において、前記第1リードと前記第2リードは、第1方向に延在する前記封止体の前記第1辺に沿って並んで配置され、
前記第1チップ搭載部と前記第2チップ搭載部とは、分離され、
前記第1導電性部材と前記第2導電性部材とは、分離されている、半導体装置。
【0322】
(付記2)(PKG実施例1(複数に分割))
付記1に記載の半導体装置において、
前記第1リードは、前記封止体で封止された第1部分と、前記封止体から露出した第2部分と、を有し、
前記第2リードは、前記封止体で封止された第3部分と、前記封止体から露出した第4部分と、を有し、
前記第1リードの前記第2部分は、第1スリットが形成されていることにより複数に分割され、
前記第2リードの前記第4部分は、第2スリットが形成されていることにより複数に分割されている、半導体装置。
【0323】
(付記3)(PKG変形例2(異なるリード間の幅が広い):絶縁耐圧を確保)
付記1に記載の半導体装置において、
前記第1リードは、前記封止体で封止された第1部分と、前記封止体から露出した第2部分と、を有し、
前記第2リードは、前記封止体で封止された第3部分と、前記封止体から露出した第4部分と、を有し、
平面視において、前記第1リードの前記第2部分と前記第2リードの第4部分との最も離間している部分の距離は、前記第1リードの前記第1部分と前記第2リードの第3部分との最も近接している部分の距離より大きい、半導体装置。
【0324】
(付記4)(PKG変形例3(大電流対応のリード大型化に必須な開口部))
付記1に記載の半導体装置において、
前記第1リードと前記第2リードのそれぞれには開口部が形成され、
前記開口部には、前記封止体の一部が充填されている、半導体装置。
【0325】
(付記5)(PKG変形例6(チップ搭載部に開口):抜け防止)
付記1に記載の半導体装置において、
平面視において、前記第1チップ搭載部の前記第1半導体チップと重ならない部分と、前記第2チップ搭載部の前記第2半導体チップと重ならない部分とには、それぞれ開口部が形成され、
前記開口部には、前記封止体の一部が充填されている、半導体装置。
【0326】
(付記6)(PKG変形例7(チップ搭載部が突出):接合性向上)
付記1に記載の半導体装置において、
平面視において、前記第2チップ搭載部は、前記封止体の前記第1辺と前記第1チップ搭載部との間に配置され、
前記第1半導体チップの前記第1表面上には、平面視において前記封止体の前記第2辺と前記エミッタ電極パッドとの間に配置されたゲート電極パッドを含む複数の制御電極パッドが形成され、
前記半導体装置は、さらに、
前記封止体の前記第2辺に沿って並んで配置された複数の第3リードと、
前記複数の制御電極パッドのそれぞれと前記複数の第3リードのそれぞれとに電気的に接続された複数の第3導電性部材と、
を有し、
前記封止体の前記第1主面は、前記第1方向と交差する第2方向に延在する第3辺と、前記第3辺と対向する第4辺と、
を有し、
前記封止体の前記第3辺と前記第4辺に沿って配置されたリードは無く、
前記封止体は、前記第1主面と前記第3辺を共有する第3側面と、前記第1主面と前記第4辺を共有する第4側面と、を有し、
前記第1チップ搭載部と前記第2チップ搭載部のそれぞれの一部は、前記封止体の前記第3側面と前記第4側面とから突出している、半導体装置。
【0327】
(付記7)(製造方法)(実施例1(カシメなし))
(a)第1チップ搭載部と第2チップ搭載部とを準備する工程、
(b)絶縁ゲートバイポーラトランジスタを備え、エミッタ電極パッドが形成された第1表面と、コレクタ電極が形成され、前記第1表面とは反対側の面である第1裏面と、を有する第1半導体チップを前記第1チップ搭載部上に搭載して、前記第1チップ搭載部と前記第1半導体チップの前記第1裏面とを電気的に接続する工程、
(c)ダイオードを備え、アノード電極パッドが形成された第2表面と、カソード電極が形成され、前記第2表面とは反対側の面である第2裏面と、を有する第2半導体チップを前記第2チップ搭載部上に搭載して、前記第2チップ搭載部と前記第2半導体チップの前記第2裏面とを電気的に接続する工程、
(d)第1リードと第2リードとを備えたリードフレームを準備し、前記第2チップ搭載部が前記第1リードと第1チップ搭載部との間に位置し、かつ、前記第2リードと前記第1チップ搭載部との間に位置するように、前記第1チップ搭載部および前記第2チップ搭載部と前記リードフレームとを配置する工程、
(e)前記第1リードと前記第1半導体チップとを電気的に接続し、前記第2リードと前記第2半導体チップとを電気的に接続する工程、
(f)前記(e)工程の後、前記第1チップ搭載部の一部および前記第2チップ搭載部の一部、前記第1半導体チップおよび前記第2半導体チップ、前記第1リードの一部および前記第2リードの一部を封止して封止体を形成する工程、
を備え、
前記(e)工程は、
(e1)前記第2半導体チップの前記アノード電極パッドと前記第2リードとに第2導電性部材を搭載することにより、前記アノード電極パッドと前記第2リードとを電気的に接続する工程、
(e2)前記(e1)工程の後、前記第1半導体チップの前記エミッタ電極パッドと前記第1リードとに第1導電性部材を搭載することにより、前記エミッタ電極パッドと前記第1リードとを電気的に接続する工程、
を有し、
前記(e2)工程は、前記第1導電性部材が前記第2導電性部材の一部を跨ぐように前記第1導電性部材を搭載する、半導体装置の製造方法。
【0328】
(付記8)(製造方法)(実施例2(カシメ有り))
(a)第1リードと第2リードと複数の吊リードとを備えたリードフレームであって、前記第1リードと第1チップ搭載部との間に第2チップ搭載部が配置され、かつ、前記第2リードと前記第1チップ搭載部との間に前記第2チップ搭載部が配置され、かつ、前記第1チップ搭載部および前記第2チップ搭載部と前記リードフレームの前記複数の吊リードのそれぞれとが連結された前記リードフレームを準備する工程、
(b)絶縁ゲートバイポーラトランジスタを備え、エミッタ電極パッドが形成された第1表面と、コレクタ電極が形成され、前記第1表面とは反対側の面である第1裏面と、を有する第1半導体チップを前記第1チップ搭載部上に搭載して、前記第1チップ搭載部と前記第1半導体チップの前記第1裏面とを電気的に接続する工程、
(c)ダイオードを備え、アノード電極パッドが形成された第2表面と、カソード電極が形成され、前記第2表面とは反対側の面である第2裏面と、を有する第2半導体チップを前記第2チップ搭載部上に搭載して、前記第2チップ搭載部と前記第2半導体チップの前記第2裏面とを電気的に接続する工程、
(d)前記第1リードと前記第1半導体チップとを電気的に接続し、前記第2リードと前記第2半導体チップとを電気的に接続する工程、
(e)前記(d)工程の後、前記第1チップ搭載部の一部および第2チップ搭載部の一部、前記第1半導体チップおよび前記第2半導体チップ、前記第1リードの一部と前記第2リードの一部と前記複数の吊リードのそれぞれの一部を封止して封止体を形成する工程、
を備え、
前記(d)工程は、
(d1)前記第2半導体チップの前記アノード電極パッドと前記第2リードとに第2導電性部材を搭載することにより、前記アノード電極パッドと前記第2リードとを電気的に接続する工程、
(d2)前記(d1)工程の後、前記第1半導体チップの前記エミッタ電極パッドと前記第1リードとに第1導電性部材を搭載することにより、前記エミッタ電極パッドと前記第1リードとを電気的に接続する工程、
を有し、
前記(d2)工程は、前記第1導電性部材が前記第2導電性部材の一部を跨ぐように前記第1導電性部材を搭載する、半導体装置の製造方法。