【実施例】
【0026】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0027】
本実施例は、河川や海などに架けられた橋の、橋脚1の補修・補強工事に用いる仮締切り構造体4の設置工法に関するものである。また、図面は円柱形の橋脚1を図示しているが、この形の橋脚1への設置工法に限定されるものではなく、橋脚1の形状に応じて仮締切り構造体4の形状等は適宜設計変更可能である。
【0028】
以下、設置手順を説明する。
【0029】
先ず、橋脚1の非水没箇所に作業床2を設置する。
【0030】
具体的には、
図1に示すように、前記橋脚1の周囲の水面9に浮体10としての浮桟橋10を設置する。尚、図示していないが、浮体10は、浮桟橋10以外にも、ボートやその他の水に浮く性質のものを採用することができる。
【0031】
また、この浮体10は、例えば橋脚1の全周囲を囲うようにして設置されていて、水上での作業者の作業スペースを確保している。
【0032】
次いで、この浮体10を利用して橋脚1外周面の水面9より上方の非水没箇所にブラケット11を採用した床支持部材11を固定し、この床支持部材11の上腕部上に合板や穴あき鉄板などの敷板から成る前記作業床2を載置設置する。
【0033】
次いで、この作業床2上に作業足場3を設置する。
【0034】
具体的には、作業床2上に複数の枠組み足場を段積みして橋脚1上部にまで達する前記作業足場3を組成設置する。また、この作業足場3は、例えば橋脚1上方部の略全周囲を囲うようにして設置されていると良い。
【0035】
次いで、この作業足場3を利用して前記作業床2上に、底部に橋脚1を貫通配設する貫通孔部5が設けられ橋脚1の外周を囲むように設置される仮締切り構造体4を構築する。即ち、仮締切り構造体4の構築を、従来のように潜水士が水中で行うのではなく、水上で行う。
【0036】
具体的には、仮締切り構造体4は、中心部に前記貫通孔部5が設けられている底板材16の外周縁に、円筒状の囲い壁18が立設状態に連結された有底円筒状に構成されている。
【0037】
更に詳しくは、先ず、分割壁材17として採用した湾曲板状のライナープレート17を、前記橋脚1の周方向および高さ方向に複数組み合せ連結して所要高さの前記円筒状囲い壁18を形成する。
【0038】
次いで、作業足場3を利用して橋脚1の上部に吊り設備12を設置する。
【0039】
具体的には、吊り設備12は、橋脚1の上方の数箇所(例えば四箇所)に降下索19を設置し、この各降下索19を前記囲い壁18に連結して、囲い壁18を橋脚1に吊り下げる(
図2,
図3参照)。
【0040】
また、この各降下索19は、チェーンブロックなどの昇降装置(図示省略)によって昇降駆動可能に構成されており、昇降装置の制御により囲い壁18(仮締切り構造体4)を降下移動し得るように設けられている。
【0041】
次いで、この囲い壁18の下部に、前記底板材16を形成して前記仮締切り構造体4を構築する。
【0042】
この底板材16は、前記橋脚1の基礎(フーチング)25の外径寸法より径大な平面視ドーナツ円板形に構成されている。
【0043】
このようなドーナツ円板形の底板材16の外周縁部に、前記囲い壁18の下端部を連結することにより、底板材16が底部となり底板材16の内周縁部(中心孔部)が前記貫通孔部5として機能する有底円筒状の前記仮締切り構造体4が構築されている。
【0044】
次いで、
図3,
図4に示すように、橋脚1と仮締切り構造体4とに降下用ガイド6を設置する。
【0045】
具体的には、前記降下用ガイド6は、前記橋脚1外周面の対向部に設置される上下方向に長さを有する降下用レール13と、前記仮締切り構造体4内の対向部に前記橋脚1に向けて内向きに突設され突出先端に前記降下用レール13に嵌合して滑走可能な滑走部材15を有する滑走支持アーム14とから構成されている。
【0046】
更に詳しくは、降下用レール13は、断面溝形(コ字形)の金属製長尺材(溝型鋼材)で構成されており、その溝底部を前記橋脚1の外周面に沿わせて橋脚1に縦設状態に固定されている。
【0047】
また、この降下用レール13は、橋脚1の外周面に、その周方向に等間隔を置いた四箇所(橋脚1の平面視中心に対し角度0度,90度,180度,270度の各位置)に固定されている(
図4参照)。
【0048】
一方、滑走支持アーム14は、詳しく図示していないが断面H字形の金属製長尺材で構成されており、前記仮締切り構造体4の囲い壁18の内周面に、その周方向に等間隔を置いた四箇所(仮締切り構造体4の平面視中心に対し角度0度,90度,180度,270度の各位置)に、中心に向けて水平突設するように構築し、この四箇所の滑走支持アーム14の先端の前記滑走部材15を、橋脚1に固定されている四箇所の前記降下用レール13に滑走可能に嵌合する(
図4参照)。図中符号20は滑走支持アーム14の水平突設状態を補強すると共に、仮締切り構造体4の保形強度向上にも寄与する補強フレームである。
【0049】
また、この滑走支持アーム14は、仮締切り構造体4の囲い壁18の途中位置に配設されているリング状中継フレーム21の内周面から突設されており、仮締切り構造体4内で上下二段設けられている。
【0050】
また、この滑走支持アーム14の突出先端には、短い金属棒が付設されていると共に、この金属棒の先端が前記降下用レール13に嵌合して滑走可能となるようにR加工されていて、このR加工部分が前記滑走部材15として構成されている。
【0051】
従って、四本(四箇所)の降下用レール13を合計八個の滑走部材15が滑走することにより、橋脚1に対し仮締切り構造体4が姿勢を保持したままスムーズに降下移動可能となるように構成されている。
【0052】
次いで、仮締切り構造体4の下方に存する前記浮体10の一部を撤去し、続けて前記作業足場3を撤去し、続けて前記吊り設備12の昇降装置により仮締切り構造体4を少し上昇させて(前記作業床2より浮かせて)作業床2を撤去し、続けて前記床支持部材11を撤去する。
【0053】
次いで、前記吊り設備12の昇降装置により前記降下用ガイド6を介して橋脚1に対し仮締切り構造体4を水中に降下させ、その後、仮締切り構造体4の囲い壁18の上縁部より上方に浮上防止ブラケット22を配して橋脚1に固定し、この浮上防止ブラケット22が仮締切り構造体4の囲い壁18の上縁部に設けられている天端フレーム23に接することによって、浮力により上昇しようとする仮締切り構造体4を水中に止める。
【0054】
また更に、仮締切り構造体4の前記底板材16より下方の前記橋脚1の基礎25の外周面に、略三角枠状の浮上防止水中ブラケット24を付設し、この浮上防止水中ブラケット24の上枠部に前記底板部16を連結固定する。
【0055】
即ち、本実施例では、この浮上防止ブラケット22が仮締切り構造体4の囲い壁18の上縁部に設けられている天端フレーム23に接することと、底板材16が浮上防止水中ブラケット24に固定されていることとによって、浮力により上昇しようとする仮締切り構造体4を水中に止めている(
図5参照)。
【0056】
また、この浮上防止水中ブラケット24の橋脚1への取付作業と、浮上防止水中ブラケット24への底板材16の連結固定作業と、後述する型枠板27の隙間への設置作業とは、仮締切り構造体4下方での潜水士による水中作業となるが、本実施例の仮締切り構造体4は、この際に水の流れや波などの影響を受けにくいように、底板材16より下方へ守護壁26が垂設されている。
【0057】
この守護壁26は、前記囲い壁18と同様に分割壁材17を組み合せ連結して所要高さ(深さ)の円筒壁体に構成されている(
図3,
図5,
図6参照)。
【0058】
尚、図面は、仮締切り構造体4を、その底部が橋脚1の基礎25に到達するようにして橋脚1に設置して、仮締切り構造体4の貫通孔部5と橋脚1の基礎25との間に隙間が生じるようにした場合を示している。
【0059】
次いで、この仮締切り構造体4の貫通孔部5と橋脚1の基礎25との間の隙間を、止水手段7で止水する。
【0060】
具体的には、本実施例の止水手段7は、仮締切り構造体4の貫通孔部5と橋脚1の基礎25との間の隙間を型枠板27で塞いでからこの隙間にコンクリート28を充填し、このコンクリート28の硬化により前記隙間を密閉して止水するように構成されている。
【0061】
更に詳しくは、浮上防止水中ブラケット24と底板材16とを連結固定する際、同時に前記貫通孔部5と前記橋脚1との間の前記隙間に型枠板27が設置されて、この型枠板27により前記隙間が塞がれている。
【0062】
本実施例では、この型枠板27で前記隙間を塞ぐ前、若しくは隙間を塞いだ後に、前記隙間より上方の前記橋脚1外周面に、鉄筋の機能も具備する形状に組まれたアンカー筋29を付設し、次いで、仮締切り構造体4内に浸入している水8中で、前記アンカー筋29が埋設(埋没)するようにして型枠板27の上から隙間にコンクリート28を充填し、このコンクリート28を硬化させる。
【0063】
即ち、コンクリート28の硬化により前記隙間が密閉されて止水されると共に、アンカー筋29による仮締切り構造体4の橋脚1に対する強固な位置決め効果とが発揮されるように構成されている。
【0064】
また、本実施例の場合、コンクリート28は、前記隙間に加えて、底板材16上面の橋脚1側(底板材16上面の内外方向の内側1/2程度)が埋まるように充填されている場合を示している(
図6参照)。
【0065】
尚、止水手段7は、この実施例に限らず適宜設計変更可能である。
【0066】
次いで、このコンクリート28硬化による仮締切り構造体4の止水完了後に、仮締切り構造体4内に入り込んでいる水8をポンプ等により排水して仮締切り構造体4内を作業用ドライエリアとし、施工完了となる。
【0067】
橋脚1の補修・補強工事完了後は、前記コンクリート28層を斫り、仮締切り構造体4を上昇させて撤去する。
【0068】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。