特許第6351792号(P6351792)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351792
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/475 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   A61F13/475 111
   A61F13/475 112
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-101367(P2017-101367)
(22)【出願日】2017年5月23日
(62)【分割の表示】特願2013-65479(P2013-65479)の分割
【原出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2017-144286(P2017-144286A)
(43)【公開日】2017年8月24日
【審査請求日】2017年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】梅本 香織
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−152947(JP,A)
【文献】 特開2006−345909(JP,A)
【文献】 特開2009−006065(JP,A)
【文献】 特開2010−035865(JP,A)
【文献】 特開平10−052457(JP,A)
【文献】 特開2007−143874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、表面側の両側部にそれぞれ肌側に起立する立体ギャザーを備えた吸収性物品において、
前記立体ギャザーは、肌側面とその両側端から延びる側面とを含む略四角形の中空断面形状に形成された中空部と、前記中空部の肌側面を起立基端とする起立部とを有するとともに、前記中空部の肌側面に、その両側部に配置される側部弾性部材と前記側部弾性部材間に配置される中間部弾性部材とを有し、
前記起立部は、前記中間部弾性部材の配置位置を起立基端として肌側に起立し、
前記立体ギャザーは、折り畳み状態で、前記中空部の側面がそれぞれ高さ方向中間部で外側にのみ折り畳まれ、これらの折り畳み部分のうち幅方向外側の折り畳み部分が前記裏面シートの側縁より外側に延在して配設され、幅方向内側の折り畳み部分が前記吸収体側に接着されない状態で配設されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記中空部の肌側面は、シートが二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に前記側部弾性部材及び中間部弾性部材が配置されることにより構成され、
前記側部弾性部材のうち一方の側部弾性部材は、前記二重シートの折返し部又はその近傍に配置されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記起立部は、起立基端から先端までほぼ直線状に形成された1段ギャザー又は起立中間部で1又は複数に屈折する多段ギャザーによって形成されている請求項1〜2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記中空部は、前記肌側面とその両側端から延びる側面とを含む略四角形の中空断面形状に形成され、
前記中空部の肌側面及び少なくとも一方の側面は、シートが二重に積層された二重シート構造とされている請求項1〜3いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記中空部及び起立部は、1枚のシートによって形成されるか、それぞれ別体のシートで形成したものを接合することによって形成されている請求項1〜4いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血やおりもの、尿などを吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品であって、表面側の両側部にそれぞれ肌側に起立する中空断面形状の中空ギャザーを有する吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パンティライナー、生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品として、ポリエチレンシートまたはポリエチレンシートラミネート不織布などの不透液性裏面シートと、不織布または透液性プラスチックシートなどの透液性表面シートとの間に綿状パルプ等からなる吸収体を介在したものが知られている。
【0003】
この種の吸収性物品にも幾多の改良が重ねられ、尿や経血、おりもの等の体液の横漏れを効果的に防止するため、表面側の両側部に、起立安定性が高く横漏れを防止するとともに、クッション性に優れて装着感が良好であるなどの利点を有する中空断面形状の中空ギャザーを形成したものが種々提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1においては、シート状部材により中空部を有するように構成される一対のギャザーを備え、前記一対のギャザーそれぞれは、前記シート状部材が、該吸収性物品の肌当接面側に凸となるような立体形状部を有し、該立体形状部は、該吸収性物品の長手方向に延びるように形成された接合部により前記表面層及び/又は裏面層に接合されるとともに、前記中空部を構成するようにして形成された吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2においては、吸収性本体の長手方向両側部に伸縮性シートを接合して形成された中空のループ状の防漏壁が備えられ、前記伸縮性シートは、吸収性物品の長手方向におけるウイング部を有する領域である排泄部領域に、所定の固定部で固定された吸収性物品が開示されている。
【0006】
さらに、下記特許文献3においては、少なくとも体液排出部位を含む股間部領域において、断面が中空のループ状立体ギャザーと、その幅方向外側を起立基端とし先端が自由端とされた自由端状立体ギャザーとからなる立体ギャザーを備えた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−6065号公報
【特許文献2】特開2010−42059号公報
【特許文献3】特開2012−205638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1、2記載の吸収性物品のような中空断面形状の中空ギャザーでは、中空断面の表面(肌側面)が滑らかな曲線状(ループ状)に形成され、しかもその構造上高さを高くすることが困難なため、大量の体液(尿)を堰き止める必要がある軽失禁パッド用の立体ギャザーとして採用するには不向きであった。
【0009】
また、上記特許文献3記載の吸収性物品では、断面が中空のループ状立体ギャザーと先端が自由端とされた自由端状立体ギャザーとからなる立体ギャザーが設けられているが、前記自由端状立体ギャザーがループ状立体ギャザーの幅方向外側を起立基端として幅方向外側を回り込むようにしてループ状立体ギャザーの上方に延びているため、装着時の圧力によって自由端状立体ギャザーが倒れ込みやすく、自由端状立体ギャザーを越えて体液の漏れを生じるおそれがあった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、中空ギャザーの装着感を損なわずに、起立高さが高く、漏れを防止できる立体ギャザーを備えた吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、透液性表面シートと裏面シートとの間に吸収体が介在されるとともに、表面側の両側部にそれぞれ肌側に起立する立体ギャザーを備えた吸収性物品において、
前記立体ギャザーは、肌側面とその両側端から延びる側面とを含む略四角形の中空断面形状に形成された中空部と、前記中空部の肌側面を起立基端とする起立部とを有するとともに、前記中空部の肌側面に、その両側部に配置される側部弾性部材と前記側部弾性部材間に配置される中間部弾性部材とを有し、
前記起立部は、前記中間部弾性部材の配置位置を起立基端として肌側に起立し、
前記立体ギャザーは、折り畳み状態で、前記中空部の側面がそれぞれ高さ方向中間部で外側にのみ折り畳まれ、これらの折り畳み部分のうち幅方向外側の折り畳み部分が前記裏面シートの側縁より外側に延在して配設され、幅方向内側の折り畳み部分が前記吸収体側に接着されない状態で配設されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記請求項1記載の発明では、立体ギャザーとして、中空断面形状の中空部と、前記中空部の肌側面を起立基端とする起立部とを有するとともに、前記中空部の肌側面に、その両側部に配置される側部弾性部材と前記側部弾性部材間に配置される中間部弾性部材とを有するものとしている。すなわち、前記側部弾性部材及び中間部弾性部材が配置された幅方向区間の肌側面が、着用者の肌側に立ち上がり、中空断面形状の中空部が形成されるとともに、この中空部の肌側面を起立基端として更に肌側に起立する起立部が形成されるようになっている。このため、中空部のクッション性によって装着感を損なうことなく、立体ギャザーの起立高さを高くすることが可能となり、肌との間に隙間ができにくく体液の漏れが確実に防止できるようになる。
【0013】
また、前記起立部は、前記中間部弾性部材の配置位置を起立基端として肌側に起立している。仮に起立部の起立基端部に中間部弾性部材を設けない場合には、起立部の上方への引張力によって中空部の肌側面の幅方向中間部が上方に変形するのに伴って、側部弾性部材同士が引き寄せられるような変形を生じるため、中空部の側面のうち特に幅方向内側の側面が吸収性物品の表面に対し、垂直に立ち上がらずに外側に向けて傾斜して立ち上がるようになる。このため、吸収性物品の中央側から流れてきた体液の堰き止め効果が低下し、立体ギャザーを乗り越えて外側に漏れやすくなる。これに対して、本発明に係る立体ギャザーでは、前記起立部の起立基端に中間部弾性部材を配置してあるため、起立部の立ち上がりによって中空部の肌側面に上方の引張力が作用しても、前記中間部弾性部材がこの引張力を打ち消すように作用し、側部弾性部材同士が引き寄せられるような変形を生じずに、そのままの配置位置で立ち上がりやすくなり、中空部の吸収性物品表面からの起立面である側面が吸収性物品の表面に対し垂直に起立しやすくなる結果、体液を効果的に堰き止めることができ、確実に体液の漏れが防止できるようになる。
【0014】
また、上記請求項1記載の発明では、前記中空部が前記肌側面とその両側端から延びる側面とを含む略四角形の中空断面形状に形成された場合において、前記立体ギャザーは、開封前の個装状態などの折り畳み状態で、前記中空部の側面がそれぞれ高さ方向中間部で外側にのみ折り畳まれ、これらの折り畳み部分のうち幅方向外側の折り畳み部分が前記裏面シートの側縁より外側に延在して配設され、幅方向内側の折り畳み部分が前記吸収体側に接着されない状態で配設してあるため、折り畳み状態で中空部の両側面の折り畳みを最小限にしているので、立体ギャザーの起立状態で両側面が肌側に立ち上がりやすくなるとともに、幅方向外側の側面が裏面シートの側縁を起立基端として肌側に立ち上がるようになる。
【0015】
請求項2に係る本発明として、前記中空部の肌側面は、シートが二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に前記側部弾性部材及び中間部弾性部材が配置されることにより構成され、
前記側部弾性部材のうち一方の側部弾性部材は、前記二重シートの折返し部又はその近傍に配置されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記請求項2記載の発明では、前記中空部の肌側面として、シートが二重に折り返されるとともに、この二重シート内部に前記側部弾性部材及び中間部弾性部材が配設される構成とすることによって、中空部の肌側面の剛性を高め、この肌側面が吸収性物品表面から立ち上がりやすくしている。
【0017】
請求項に係る本発明として、前記起立部は、起立基端から先端までほぼ直線状に形成された1段ギャザー又は起立中間部で1又は複数に屈折する多段ギャザーによって形成されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記請求項記載の発明では、前記起立部のギャザー構造として、直線状の1段ギャザーでもよいし、く字状やZ状、Σ状などの多段ギャザーとしてもよいことを規定している。
【0019】
請求項に係る本発明として、前記中空部は、前記肌側面とその両側端から延びる側面とを含む略四角形の中空断面形状に形成され、
前記中空部の肌側面及び少なくとも一方の側面は、シートが二重に積層された二重シート構造とされている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品。が提供される。
【0020】
上記請求項記載の発明では、前記中空部が肌側面とその両側端から延びる側面とを含む略四角形の中空断面形状に形成され、前記中空部の肌側面及び少なくとも一方の側面を、シートが二重に積層された二重シート構造とすることによって、中空部の起立性を良くしている。
【0021】
請求項に係る本発明として、前記中空部及び起立部は、1枚のシートによって形成されるか、それぞれ別体のシートで形成したものを接合することによって形成されている請求項1〜いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0022】
上記請求項記載の発明では、前記中空部及び起立部の形成方法について規定し、1枚のシートを折り畳んで形成してもよいし、中空部と起立部とで異なる素材のものを用いて形成してもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、中空ギャザーの装着感を損なわずに、起立高さが高く、漏れを防止できる立体ギャザーを備えた吸収性物品が提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る軽失禁パッド1の一部破断展開図である。
図2】そのII−II線矢視図である。
図3図1のIII−III線矢視図である。
図4】立体ギャザーの起立状態を示す、(A)は本発明に係る立体ギャザーG、(B)は従来の立体ギャザーの断面図である。
図5】立体ギャザーGの接着領域20を示す平面図である。
図6】立体ギャザーGの折り畳み状態の断面図である。
図7】他の形態に係る立体ギャザーG(その1)の断面図である。
図8】他の形態に係る立体ギャザーG(その2)の断面図である。
図9】(A)〜(D)は、他の形態に係る立体ギャザーG(その3)の断面図である。
図10】1段ギャザーの場合の折り畳み手順を示す断面図である。
図11】2段ギャザーの場合の折り畳み手順を示す断面図である。
図12】他の形態に係る軽失禁パッド1の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0026】
〔軽失禁パッド1の基本構成〕
本発明に係る軽失禁パッド1は、図1図3に示されるように、不透液性裏面シート2と、透液性表面シート3(以下、単に表面シートともいう。)との間に、吸収体4または図示しないがクレープ紙によって囲繞された吸収体4が介在され、表面側の両側部にそれぞれ肌側に起立する立体ギャザーG、Gが備えられた構造である。
【0027】
前記不透液性裏面シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他に防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には、防水フィルムと不織布とで不透液性裏面シートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが好適に用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。
【0028】
次いで、前記透液性表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高でソフトである点で優れている。
【0029】
前記不透液性裏面シート2と透液性表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0030】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイドバイサイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0031】
前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸水力と吸水速度の調整が可能である。
【0032】
本軽失禁パッド1の表面側両側部にはそれぞれ長手方向に沿って、かつ軽失禁パッド1の全長に亘ってギャザー形成用不織布7,7が設けられているとともに、このギャザー形成用不織布7,7の外側部分が側方に延在されるとともに、前記不透液性裏面シート2が側方に延在され、これら側方に延在されたギャザー形成用不織布7部分と不透液性裏面シート2部分とをホットメルト接着剤等により接合して側部フラップが形成されている。
【0033】
前記ギャザー形成用不織布7としては、重要視する機能の点から撥水処理不織布または親水処理不織布を使用することができる。たとえば、尿やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの機能を重視するならば、シリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングしたSSMSやSMS、SMMSなどの撥水処理不織布を用いるのが望ましく、体液の吸収性を重視するならば、合成繊維の製造過程で親水基を持つ化合物、例えばポリエチレングリコールの酸化生成物などを共存させて重合させる方法や、塩化第2スズのような金属塩で処理し、表面を部分溶解し多孔性とし金属の水酸化物を沈着させる方法等により合成繊維を膨潤または多孔性とし、毛細管現象を応用して親水性を与えた親水処理不織布を用いるのが望ましい。かかるギャザー形成用不織布7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくは目付け量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的な目付け量としては、5〜25g/m2が好ましく、10〜20g/m2がより好ましい。
【0034】
前記ギャザー形成用不織布7は、適宜に折り畳まれて立体ギャザーGを形成している。前記立体ギャザーGは、図2に示されるように、透液性表面シート3と不透液性裏面シート2との間に吸収体4が介在された本体部分の両側部に所定の接着領域20で接合され、中空断面形状を有する中空部10と、前記中空部10の肌側面12を起立基端とする起立部11とを有するとともに、前記中空部10の肌側面12に、その両側部にそれぞれ両端または長手方向の適宜の位置が固定された側部弾性部材15、15と、これら側部弾性部材15、15間に両端または長手方向の適宜の位置が固定された中間部弾性部材16とからなる3本の弾性部材15、15、16がそれぞれ幅方向に離間して長手方向に沿って配設されている。
【0035】
前記中空部10は、肌側に起立する肌側面12と、その両側端からそれぞれ本体部分の表面まで延びる側面13、13と、本体部分に接合される底面14とによって四方が画成された略四角形の中空断面形状に形成されている。
【0036】
前記起立部11は、前記中間部弾性部材16の配置位置を起立基端として肌側に起立している。図2に示される例では、前記起立部11は、起立基端から幅方向外側の斜め肌側に向けてほぼ直線状に延びる1段ギャザーとされ、その自由端の近傍に両端または長手方向の適宜の位置が固定された弾性部材17が配設されている。
【0037】
すなわち、本立体ギャザーGでは、前記側部弾性部材15、15及び中間部弾性部材16が配置された幅方向区間の肌側面12が、着用者の肌側に立ち上がり、中空断面形状の中空部10が形成されるとともに、この中空部10の肌側面12を起立基端として更に肌側に起立する起立部11が形成されるようになっている。このため、前記中空部10のクッション性によって装着感を損なうことなく、前記起立部11を設けることによって立体ギャザーGの起立高さを高くすることが可能となり、肌との間に隙間ができにくく体液の漏れが確実に防止できるようになる。
【0038】
また、前記起立部11は、前記中空部10の肌側面12に配置された中間部弾性部材16の配置位置を起立基端として肌側に起立している。ここで、仮に起立部11の起立基端に中間部弾性部材16を設けない場合には、図4(B)に示されるように、起立部の上方に立ち上がる引張力によって中空部の肌側面の幅方向中間部が上方に変形するが、これに伴って両側の側部弾性部材同士が引き寄せられるような変形を生じる。このため、中空部の側面のうち、特に本立体ギャザーのように起立部が外方肌側に向けて傾斜して起立する場合には幅方向内側の側面が軽失禁パッドの表面に対して垂直に立ち上がらずに外側に向けて傾斜して立ち上がるようになる結果、軽失禁パッドの中央側から側方に向けて流れてくる体液の堰き止め効果が低下し、立体ギャザーを乗り越えて外側に漏れやすくなる。これに対して、本発明に係る立体ギャザーGでは、前述の通り、前記起立部11の起立基端に中間部弾性部材16を配置してあるため、図4(A)に示されるように、起立部11の立ち上がりによって中空部10の肌側面に上方の引張力が作用しても、前記中間部弾性部材16がこの引張力を打ち消すように作用し、側部弾性部材15、15同士が引き寄せられるような変形を生じさせずに、そのままの配置位置で立ち上がるようになり、中空部10のパッド表面からの起立面である側面13、13がパッドの表面に対し垂直に起立しやすくなる。従って、体液を効果的に堰き止めることができ、確実に体液の漏れが防止できるようになる。
【0039】
前記立体ギャザーGの構造について更に詳しく説明すると、前記中空部10の肌側面12は、前記ギャザー形成用不織布7を二重に折り返すとともに、この二重シート内部に前記側部弾性部材15、15及び中間部弾性部材16を配置した構成とすることが好ましい。中空部10の肌側面12を二重シートで形成することによって、肌側面12の剛性を高め、この肌側面12の変形を抑制しつつ肌側に立ち上がるようにしている。これによって、側面13が軽失禁パッド1の表面からほぼ垂直に立ち上がるようになる。
【0040】
また、肌側面12の両側に配置された側部弾性部材15、15のうち、一方側の側部弾性部材15、図示例では幅方向内側の側部弾性部材15は、肌側面12の二重シートの折返し端部又はその近傍に配置することが好ましい。これにより、二重シートにして剛性が高められた部分が肌側面12として作用しやすくなる。なお、他方側の側部弾性部材15、図示例では幅方向外側の側部弾性部材15は、図示例のように二重シートの端縁より若干内側に配置することが好ましい。
【0041】
一方、前記側面13、13及び底面14は、図2に示される例では、ギャザー形成用不織布7の一重シートによって形成されている。これにより、特に側面13、13が柔軟性を有するようになるため、中空部10のクッション性が良好となり、装着感に優れる立体ギャザーGが得られるようになる。
【0042】
前記起立部11は、図2に示されるように、中空部10の一方側の側面13、図示例では幅方向内側の側面13から肌側に延在させたギャザー形成用不織布7を二重に折り返すとともに、この二重シート内部の先端部に弾性部材17を配置し、且つ肌側に延在させた部分の基端部分を肌側面12の上面(肌側面)に対し、幅方向内側の端縁から中間部弾性部材16の配置位置までの間が接着剤によって接着された接着部21とすることによって、前記接着部21より外側に延在した部分が肌側に起立する起立部11として機能している。
【0043】
前記ギャザー形成用不織布7は、前後端部では、図3に示されるように、中空部10の側面13、13がそれぞれ高さ方向中央部で外側に折り畳まれ、積層された状態で吸収体4側に接着されている。
【0044】
前記ギャザー形成用不織布7と本体部分との接着領域20は、図5に示されるように、前記立体ギャザーGが形成される起立範囲では、不透液性裏面シート2の側縁から相対的に幅狭な接着領域が形成され、ギャザー形成用不織布7が折り畳まれて積層状態で吸収体4側に接着される非起立範囲では、前述の通り幅方向内側の側面13を折り畳んで吸収体4側に接着する分だけ、不透液性裏面シート2の側縁から相対的に幅広な接着領域が形成されている。すなわち、起立範囲において接着領域20の幅方向内側に接着剤が塗布されない非接着領域を設けることによって、前記中空部10の幅方向内側の側面13が弾性部材15〜17の収縮力によって起立できるようになっている。
【0045】
前記立体ギャザーGは、軽失禁パッド1を個装したときなどの折り畳み状態において、図6に示されるように、中空部10の側面13、13がそれぞれ高さ方向の中間部の1箇所のみで外側に折り畳まれ、これらの折り畳み部分のうち幅方向外側の折り畳み部分13aが不透液性裏面シート2の側縁より外側に延在して配設され、幅方向内側の折り畳み部分13bが吸収体4側に接着されない状態で配設されている。このように、立体ギャザーGの折り畳み状態で中空部10の両側面13、13の折り畳みを最小限に抑えているので、立体ギャザーGの起立状態で、両側面が肌側に立ち上がりやすくなるとともに、幅方向外側の側面13が不透液性裏面シート2の側縁を起立基端として立ち上がるようになる。
【0046】
前記立体ギャザーGの各部の寸法について詳細に説明すると、図6に示される折り畳み状態において、ギャザー幅Aは、10〜35mm、好ましくは15〜30mmとするのがよい。起立時に肌側面12となるギャザー形成用不織布7の二重シート部分の幅Bは、5〜25mm、好ましくは10〜20mmとするのがよい。起立部11の幅Cは、5〜20mmが好ましい。側面13の折り畳み状態での幅(側面13の起立高さの約半分)Dは、3〜12mm、好ましくは5〜10mmとするのがよい。このとき、起立部11は、中空部10の側面13を折り畳んだとき、折り返し端部とほぼ同等の長さで形成されている。
【0047】
また、図5に示されるように、軽失禁パッド1の前端から起立範囲前端までの距離Eは、30〜80mm、好ましくは35〜75mmとするのがよく、軽失禁パッド1の後端から起立範囲後端までの距離Fは、軽失禁パッド1の全長の10〜30%、好ましくは15〜25%とするのがよい。
【0048】
前記起立部11は、図7に示されるように、起立中間部で1又は複数に屈折する多段ギャザー構造としてもよい。多段ギャザー構造とする場合、同図7に示されるように、屈折部分に弾性部材18を配置し、この弾性部材18を屈曲点として屈折する構造とする。図7に示される例では、断面く字状の2段ギャザーによって形成されている。多段ギャザーとすることによって、より肌側に高く起立するため、更に漏れが防止できるようになる。
【0049】
また、前記中空部10の中空断面形状を形成するため、肌側面12に側部弾性部材15、15及び中間部弾性部材16を配置する構成に代えて、図8に示されるように、中空部10の肌側面12に、軽失禁パッド1の長手方向に伸縮する伸縮性シート19を配設することができる。前記伸縮性シート19としては、例えば、伸縮性のフィルム、不織布、ウレタンフォームなどをシート状に加工したものを用いることができる。前記伸縮性シート19の伸縮方向は、主として軽失禁パッド1の長手方向に伸縮自在である一方、幅方向にほとんど伸縮しないものを用いることが好ましい。
【0050】
一方、前記側部弾性部材15及び中間部弾性部材16を用いる場合の弾性部材15、16の太さは、300〜1000dtが好ましく、400〜550dtがより好ましい。弾性部材15、16の伸長率は10〜90%(1.1倍〜1.9倍)が好ましく、20〜80%(1.2倍〜1.8倍)がより好ましい。前記弾性部材15、16の伸長率は同等としてもよいが、軽失禁パッド1の幅方向内側に配置される弾性部材の伸長率が相対的に高くなるように設定することが好ましい。
【0051】
前記立体ギャザーGは、図9に示されるように、種々の形態で形成することができる。図9(A)では、中空部10の肌側面12を二重シートにするため内側に折り返した端部をさらに側面13の内側にまで延在させ、底面14の幅方向外側端部で接着するようにしてある。これによって、幅方向外側の側面13の剛性が高まるため、外方側の起立性が良好となる。
【0052】
また、同図9(B)に示されるように、幅方向外側の側面13の二重シート内部であって、高さ方向の中間部に弾性部材22を配置することができる。これによって、幅方向外側の側面13の起立性を更に高めることができる。なお、前記弾性部材22の伸長率(テンション)は、肌側面12に配置した弾性部材15、16の伸長率より低く設定することが好ましい。
【0053】
更に、同図9(C)に示されるように、肌側面12及び幅方向外側の側面13を二重シートにするため内側に折り返した端部を、さらに幅方向内側の側面13の中間部まで延在させてもよい。このとき、図示例のように、幅方向内側の側面13の起立性を良くするため、この側面13の二重シート内部に弾性部材23を配置することができる。この弾性部材23の伸長率は、肌側面12に配置した弾性部材15、16の伸長率より低く設定することが好ましい。ただし、肌側面12と側面13との剛性の変化を持たせるため、延在させた二重シート部分と肌側面12との間に一重シート部分を残しておくことが望ましい。なお、図示しないが、このときに幅方向外側の側面13の高さ方向中間部にも弾性部材を配置してもよい。
【0054】
一方、前記立体ギャザーGは、図9(D)に示されるように、前記中空部10と起立部11とをそれぞれ別体のシートで形成し、起立部11を中空部10の肌側面12に接着することによって形成することも可能である。これによって、中空部10と起立部11とで異なる素材を用いることが可能となる。例えば、中空部10には親水性の不織布を用いる一方で、起立部11は肌と接触する機会が多いためべた付き感を軽減することなどを目的として撥水性の不織布を用いることも可能である。
【0055】
前記立体ギャザーGを1枚のギャザー形成用不織布7を折り畳んで形成する場合の折り畳み手順について、図10及び図11に基づいて説明する。先ずはじめに、図2に示される1段ギャザーの折り畳み手順について説明すると、図10(A)に示されるように、ギャザー形成用不織布7の両側部をそれぞれ上層側に折り返すとともに、この折り返した二重シート部分にそれぞれ弾性部材15〜17を配置し、中空部10の肌側面12となる部分及び起立部11となる部分をそれぞれ形成する(図10(B))。次に、図10(B)に示されるように、肌側面12となる部分を更に上層側に折り返した後、同図10(C)に示されるように、起立部11となる部分を先に折り返した肌側面12となる部分の上層側に折り返し、この起立部11となる部分の折り返し基端側と肌側面12となる部分との積層部分であって、中間部弾性部材16の配置位置までの間を接着剤によって接着し、立体ギャザーGが完成する(図10(D))。
【0056】
次に、図7に示される2段ギャザーの折り畳み手順について説明すると、図11(A)に示されるように、ギャザー形成用不織布7の両側部をそれぞれ上層側に折り返すとともに、この折り返した二重シート部分にそれぞれ弾性部材15〜18を配置し、中空部の肌側面12となる部分及び起立部11となる部分をそれぞれ形成する(図11(B))。次に、図11(B)に示されるように、前記肌側面12となる部分を更に上層側に折り返すとともに、起立部11となる部分の弾性部材18の配置位置又はその近傍を基点として、それより先端部分を下層側に折り返す(図11(C))。しかる後、図11(C)に示されるように、起立部11となる部分を先に折り返した肌側面12となる部分の上層側に折り返し、この起立部11となる部分の折り返し基端側と、肌側面12となる部分との積層部分であって、中間部弾性部材16の配置位置までの間を接着剤によって接着し、立体ギャザーGが完成する(図11(D))。
【0057】
〔他の形態例〕
(1)上記形態例では、起立部11は、中空部10の肌側面12を起立基端として肌側の斜め外方に向けて起立するように形成しているが、図12に示されるように、中空部10の肌側面12を起立基端として肌側の斜め内方に向けて起立するように形成してもよい。
(2)上記形態例では、接着領域20及び接着部21は、各領域の幅方向のほぼ全面に亘って接着剤が塗布されるようにしたが、少なくとも幅方向の両端部に接着剤が塗布されていれば、その中間部は接着剤が塗布されない間欠部としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…軽失禁パッド、2…不透液性裏面シート、3…透液性表面シート(表面シート)、4…吸収体、7…ギャザー形成用不織布、10…中空部、11…起立部、12…肌側面、13…側面、14…底面、15…側部弾性部材、16…中間部弾性部材、17・18…弾性部材、20…接着領域、21…接着部、G…立体ギャザー
図1
図2
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図12