特許第6351794号(P6351794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351794
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】内視鏡装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20180625BHJP
   A61B 1/05 20060101ALI20180625BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20180625BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61B1/045 630
   A61B1/05
   A61B1/06 612
   A61B1/045 611
   G02B23/24 B
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-113412(P2017-113412)
(22)【出願日】2017年6月8日
(62)【分割の表示】特願2013-106777(P2013-106777)の分割
【原出願日】2013年5月21日
(65)【公開番号】特開2017-196429(P2017-196429A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2017年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】丹内 克哉
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−135756(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0112247(US,A1)
【文献】 特開2003−046870(JP,A)
【文献】 特開2005−131129(JP,A)
【文献】 特開2005−211231(JP,A)
【文献】 特開2010−142288(JP,A)
【文献】 特開2010−187903(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0045792(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
G02B 23/24 −23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、前記撮像素子から出力される画素信号を電流増幅する出力バッファとを有し、内視鏡先端側に設けられる撮像部と、
信号ケーブルを介して前記撮像部から送られてくるアナログ画素信号を処理するアナログ信号処理回路と、
被写体への照明光の光量を調整する明るさ調整部と、
前記撮像部に供給される電流を制御することにより、画素信号の出力振幅を調整する画素信号出力調整部とを備え、
前記画素信号出力調整部が、画素信号が劣化する熱を生じない許容最大光量以下の照明光量であるときの電流値を、許容最大光量を超える照明光量であるときの電流値よりも大きくすることを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
記画素信号出力調整部が、許容最大光量以下の照明光量であるときの前記アナログ信号処理回路におけるゲイン処理のゲイン値を、許容最大光量を超える照明光量であるときのゲイン値よりも小さくすることを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記画素信号出力調整部が、電流値とゲイン値との対応関係を示すテーブルに基づいて、電流値およびゲイン値を定めることを特徴とする請求項2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記画素信号出力調整部が、前記アナログ信号処理回路内に設けられた定電流回路を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項5】
撮像素子と、前記撮像素子から出力される画素信号を電流増幅する出力バッファとを有し、内視鏡先端側に設けられる撮像部と、
前記撮像部に供給される電流を制御することにより、画素信号の出力振幅を調整する画素信号出力調整部とを備え、
前記画素信号出力調整部が、被写体への照明の光量が所定量を超える場合、基準となる電流値を設定する一方、照明光量が所定量以下の場合、基準となる電流値を増加させて出力振幅を大きくすることを特徴とする内視鏡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器官内壁などの被写体を撮像する内視鏡装置に関し、特に、撮像素子において生じる画素信号の出力処理に関する。
【背景技術】
【0002】
電子内視鏡装置では、ビデオスコープの先端部にCMOS、CCDなどの撮像素子(イメージセンサ)を備え、イメージセンサから読み出される画素信号に基づいて画像信号を生成し、被写体像をモニタに表示する。イメージセンサから出力される画素信号は、スコープ先端部に設けられる出力バッファ(出力アンプ)によって低インピーダンスに変換された後、伝送ケーブルを介してスコープコネクタ部もしくはプロセッサ内のアナログ信号処理回路に送られる。
【0003】
CCDの発熱量が高くなると、暗電流が増加し、画質が低下する。また、内視鏡先端部から射出する照明光による熱がCCD出力信号に影響を与え、画質を低下させる。このような熱による信号劣化を防ぐため、例えば、CCD傍の出力バッファに対する供給電力を制御し、CCD出力信号が読み出されているときだけ電源ONに設定し、それ以外の出力信号が読み出されない期間では供給電力を停止する(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2579372号公報
【特許文献2】特開2009−302850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CCD側の出力バッファに対して供給電力を制御すると、制御信号の出力および出力バッファのON/OFF動作が頻繁に行われることになり、プロセッサ側へ伝送される画素信号にノイズが生じる恐れがある。特に、内視鏡装置の場合、ビデオスコープ内に配設された信号伝送ケーブルを介して制御信号を送信するため、スイッチング動作によって、画素信号が内視鏡内に設けられた信号ケーブルを伝送する過程でノイズが生じやすい。
【0006】
したがって、熱による信号劣化を防ぐとともにノイズ発生を抑えながら、画素信号をプロセッサ側へ伝送し、信号処理することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内視鏡装置は、撮像素子と、前記撮像素子から出力される画素信号を電流増幅する出力バッファとを有し、内視鏡先端側に設けられる撮像部と、信号ケーブルを介して前記撮像部から送られてくるアナログ画素信号を処理するアナログ信号処理回路と、被写体への照明光の光量を調整する明るさ調整部と、前記撮像部に供給される電流を制御することにより、画素信号の出力振幅を調整する画素信号出力調整部とを備える。
【0008】
そして、画素信号出力調整部は、画素信号が劣化する熱を生じない許容最大光量以下の照明光量であるときの電流値を、許容最大光量を超える照明光量であるときの電流値よりも大きくする。別の言い方をすれば、照明光量が許容最大光量以下の場合、電流値を増加させ、そうでない場合には基準となる電流値に設定する。電流量増加によって画素信号の出力振幅が広がる。これによって、信号劣化の少ない画素信号が獲得される。
【0009】
画素信号出力調整部は、様々な回路構成で電流値を制御することが可能である。プロセッサ側で電流値を調整することを考慮すれば、アナログ信号処理回路内に定電流回路を設け、アナログ信号処理回路内に設けられた電流抵抗に流れる電流量が変わるように定電流回路を制御することが可能である。
【0010】
アナログ信号処理回路にゲイン処理回路が設けられている場合、出力振幅が大きいことから、ゲイン値を抑えることができる。画素信号出力調整部は、許容最大光量以下の照明光量であるときのゲイン値を、許容最大光量を超える照明光量であるときのゲイン値よりも小さくすることが可能である。電流値増加に伴ってゲイン値を減少させればよい。
【0011】
例えば、画素信号出力調整部が、電流値とゲイン値との対応関係を示すテーブルをあらかじめ設定し、そのテーブルに基づいて、電流値およびゲイン値を定めることが可能である。電流量増加に比例してゲイン値を減少させてもよい。
【0012】
本発明の他の態様における内視鏡装置は、撮像素子と、撮像素子から出力される画素信号を電流増幅する出力バッファとを有し、内視鏡先端側に設けられる撮像部と、撮像部に供給される電流を制御することにより、画素信号の出力振幅を調整する画素信号出力調整部とを備え、画素信号出力調整部が、被写体への照明の光量が所定量を超える場合、基準となる電流値に設定する一方、照明光量が所定量以下の場合、基準となる電流値を増加させて出力振幅を大きくする。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、内視鏡装置において、信号劣化およびノイズ発生を抑え、ながら、高画質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態である電子内視鏡装置のブロック図である。
図2】アナログ画素信号の出力経路およびアナログ信号処理回路を示したブロック図である。
図3】システムコントローラによって実行される電流制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照して本実施形態である電子内視鏡装置について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態である電子内視鏡装置のブロック図である。図1を用いて、電子内視鏡装置の動作について説明する。
【0017】
電子内視鏡装置は、その挿入部分が体内へ挿入されるビデオスコープ10と、プロセッサ20とを備え、ビデオスコープ10はプロセッサ20に着脱自在に接続される。プロセッサ20には、モニタ60が接続されている。
【0018】
プロセッサ20は、白色光を放射する光源46を備え、光源46から放射された光は、集光レンズ44を介してビデオスコープ10内に設けられたライトガイド11に入射する。ライトガイド11に入射した光は、配光レンズ13を介してビデオスコープ10の先端部から射出し、被写体(観察部位)に照射される。
【0019】
被写体で反射した光は、ビデオスコープ10の先端部に設けられた対物レンズ14によって結像し、被写体像がイメージセンサ12の受光面に形成される。ここでは、イメージセンサ12としてCCDが用いられる。イメージセンサ12の受光面上には、Cy、Ye、G、Mgから成る色フィルタ要素をモザイク状に配列させた補色フィルタ(図示せず)が配設されている。
【0020】
イメージセンサ12では、CCD駆動回路32から送られてくる駆動信号に従い、1フィールド/フレーム分の画像信号が所定の時間間隔で読み出される。例えば、NTSC方式の場合、1/60秒間隔で読み出され、PAL方式の場合、1/50秒間隔で読み出される。読み出された画素信号は、出力バッファ15において電流増幅処理された後、プロセッサ20へ送られる。
【0021】
プロセッサ20のアナログ信号処理回路22では、アナログ画素信号に対して増幅処理およびゲイン処理が行われる。そして、前段信号処理回路24では、アナログ画素信号に対し、デジタル化処理、さらには、ホワイトバランス処理(ゲイン処理)、ガンマ補正処理などの様々な信号処理が施される。これにより、カラー画像信号が生成される。カラー画像信号は、メモリ26、後段信号処理回路28を経てモニタ60に出力され、カラー画像がモニタ60に表示される。
【0022】
CPU、ROM等を含むシステムコントローラ30は、タイミングコントローラ34、光源電源48、フロントパネルスイッチ36などへ制御信号を出力し、プロセッサ20全体の動作を制御する。絞り42は、ライトガイド11の入射端と集光レンズ44との間に配置されており、モータ40による開閉動作によって照明光量を増減させる。システムコントローラ30は、自動調光処理を実行し、輝度信号に基づいてモータドライバ38へ制御信号を送る。モータドライバ38は、制御信号に基づいてモータ40を駆動する。
【0023】
図2は、アナログ画素信号の出力経路およびアナログ信号処理回路を示したブロック図である。図2を用いて、電流値の調整について説明する。
【0024】
イメージセンサ12から出力される画素信号は、スコープ先端側の出力バッファ15からプロセッサ側のアナログ信号処理回路22までの信号処理範囲APにおいてアナログ信号処理される。出力バッファ15は、エミッタフォロア接続のトランジスタ16から構成されており、イメージセンサ12から出力される画素信号を電流増幅し、低インピーダンスに変換する。電流増幅された画素信号は、同軸ケーブルである伝送ケーブルCBを介してアナログ信号処理回路22へ送られる。
【0025】
アナログ信号処理回路22は、定電流回路53、抵抗52、54、コンデンサ56、増幅回路57、ゲイン処理回路58を備えている。入力した画素信号は、抵抗52、コンデンサ56、抵抗54を介して増幅回路57へ送られる。抵抗52には、出力バッファ15を線形動作させるために直流バイアス電流が流れる。
【0026】
増幅回路57を経てゲイン処理回路58に入力した画素信号に対し、ゲイン処理が施される。ゲイン値は、システムコントロール回路30からの制御信号に基づいて定められる。順次ゲイン処理された1フィールド/フレーム分の画素信号は、アナログ信号処理回路22から出力される。
【0027】
イメージセンサ出力端と出力バッファ15には、定められた電源電圧がプロセッサ20の電源回路(図示せず)から供給されている。一方、イメージセンサ12から出力される画素信号の出力振幅は、電流抵抗52側へ流れる電流量に依存する。この電流量は、イメージセンサ12、出力バッファ15へ供給される電流量に対応していることから、抵抗52側へ流れる電流量を増減させると、それに応じてイメージセンサ12へ供給される電流も増減する。
【0028】
信号ケーブルCBと抵抗52との間に設けられた定電流回路53は、信号処理範囲APにおいて流れる定電値を設定、変更可能であり、イメージセンサ12へ供給される電流値、すなわち抵抗52側へ流れる電流の電流値を大きくすることによって、イメージセンサ12から出力される画素信号の振幅値(出力波形)を大きくすることができる。
【0029】
画素信号の振幅値を大きくすることにより、ゲイン処理回路58におけるゲイン値をその分比較的小さく設定することができる。これは、出力された画素信号に含まれる情報をなるべくそのまま利用して観察画像信号を生成することとなり、高画質の観察画像を得ることができる。
【0030】
しかしながら、絞りの開度が比較的大きく、照明光量が多くなることでイメージセンサ12が温度上昇しやすい観察作業状況では、電流量増加によって発生する熱との相互作用に伴い、あらかじめ規格されたスコープ先端部の許容温度を超え、画素信号が劣化する恐れがある。
【0031】
そこで本実施形態では、熱の影響が少ない観察状況になると、電流値を増加させて画素信号出力振幅を大きくし、それ以外の観察状況では、熱発生による影響が生じないように電流値を抑える。
【0032】
図3は、システムコントローラ30によって実行される電流制御処理を示したフローチャートである。
【0033】
システムコントローラ30は、所定時間間隔(ここでは1/60秒)で自動調光処理を実行しており、それに合わせて電流制御処理がサブルーチンとして所定時間間隔(例えば、同じ時間間隔)で実行されている。
【0034】
ステップS101では、絞り42の開度(絞り値)Aがあらかじめ定められた許容最大開度T0以下であるか否かが判断される。絞り値AがT0以下の場合、ステップS102へ進み、画素信号の輝度値Yが許容最少輝度値Y0以上であるか否かが判断される。
【0035】
許容最大開度T0は、照明光量の熱がイメージセンサ12の温度上昇に影響しない最大開度を表す。また、許容最少輝度値Y0は、被写体像を観察するのに適切な明るさの最少輝度値を表す。開度A、輝度値Yが上記条件を満たす場合、被写体がスコープ先端部と近接し、僅かな照明光量によっても適切な明るさの被写体像を表示できる観察状況であると判断する。
【0036】
開度Aが許容最大開度T0以下であり、画素信号の輝度レベルYが許容最少輝度値Y0以上である場合、定電流回路53を制御することによって電流値を増加させ(S103)、増加電流値に応じてゲイン値を補正する(S104)。
【0037】
電流値とゲイン値との対応関係は、あらかじめルックアップテーブル(LUT)として設定されており、増加した電流値の増加分(増加割合)に応じてゲイン値の減少分(減少割合)が定められる。ここでは、電流増加量に比例してゲイン値が減少する。
【0038】
一方、開度Aが許容最大値T0より大きく、あるいは、画素信号の輝度値Yが許容最少輝度値Y0より小さい場合、照明光量が比較的多く、熱の影響によって画質が劣化する可能性が高く、電流値を増加可能な観察状況ではないと判断し、電流値、ゲイン値を基準値に設定する(S105、S106)。基準値は、あらかじめ製造時、使用開始時などに定められている。
【0039】
このように本実施形態によれば、イメージセンサ12から出力されるアナログ画素信号を出力バッファ15において電流増幅し、伝送ケーブルCBを通じてプロセッサ20のアナログ信号処理回路22へ送信する。そして、絞り42の開度が比較的小さく、かつ、画素信号の輝度値が比較的大きい場合、照明光量の熱による影響が少ないと判断し、画素信号の出力振幅を大きくするため、定電流回路53を制御してイメージセンサ12へ供給する電流量を増加させる。そして、電流量増加に伴い、ゲイン処理回路58におけるゲイン値を小さくする。
【0040】
電流量増加の判断に関しては、絞り開度だけで観察状況を判断してもよい。また、定電流回路以外の回路を設けて電流値を制御してもよい。イメージセンサとしては、CMOSセンサなどCCD以外の構成にしてもよい。照明光量調整では、絞り以外の構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
10 ビデオスコープ
12 イメージセンサ(撮像素子)
15 出力バッファ
22 アナログ信号処理回路
30 システムコントローラ(画素信号出力調整部)
42 絞り
53 定電流回路(画素信号出力調整部)
CB 伝送ケーブル(信号ケーブル)
図1
図2
図3