(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表側または裏側から見て、前記絶縁スペーサのうち、前記第一方向に並んで配置される複数の前記第二方向電極の間に相当する部分には、荷重分散抑制溝が配置される請求項5に記載の把持状態検出センサ。
前記荷重分散抑制溝は、表側または裏側から見て、前記絶縁スペーサのうち、前記第二方向電極に相当する部分を、囲んで配置される請求項6に記載の把持状態検出センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、車両の安全性向上の見地から、ステアリングホイールに対する運転者の把持状態を、詳しく検出したいというニーズが高くなっている。すなわち、運転者がステアリングホイールを把持する場合は、まずステアリングホイールに手を近づけ、次にステアリングホイールに手で触れ、最後にステアリングホイールを手で握るという動作を行う。このような、非接触、接触、把持という把持状態を、詳しく認識したいというニーズが高くなっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜3に開示されているステアリングホイールには、いずれも単一種類のセンサ(荷重センサ、または感圧センサ)が配置されているだけである。このため、ステアリングホイールに対する運転者の把持状態を、詳しく検出することができない。
【0007】
例えば、ステアリングホイールに荷重センサだけを配置しても、ステアリングホイールに対する運転者の接近を検出することは困難である。一方、ステアリングホイールに接触センサだけを配置しても、ステアリングホイールに対する運転者の把持を検出することは困難である。
【0008】
そこで、本発明は、ステアリングホイールなどの被把持部に対する運転者の把持状態を、詳しく検出することが可能な把持状態検出センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明の把持状態検出センサは、運転者が把持して操作する乗物の被把持部に配置され、該被把持部に対する該運転者の接近、および該運転者が接近している座標を検出する静電容量型センサである近接センサ部と、該近接センサ部の裏側に配置され、該近接センサ部を介して該運転者から加わる荷重を基に、該被把持部に対する該運転者の押込を検出する荷重センサ部と、を備える把持状態検出センサであって、前記近接センサ部と前記荷重センサ部とが並ぶ方向を表裏方向、該表裏方向に対して直交すると共に互い交差する二方向を第一方向および第二方向、該荷重センサ部の該第二方向中央を通過し該第一方向に延在する仮想線を第二方向中央線として、該荷重センサ部は、絶縁性を有し、該第一方向に延在する第二基材と、該第二基材の該表裏方向の一方側に配置され、導電性を有し、該第一方向に並んで配置され、該第二方向中央線を経由し該第二方向に延在する複数の第二方向電極と、該第二基材の該表裏方向の他方側に配置され、導電性を有し、該第二方向中央線を挟んで該第二方向に並んで配置され、該第一方向に延在する一対の第一方向電極と、を備え、表側または裏側から見て、複数の該第二方向電極と一対の該第一方向電極との間には、複数の重複部が配置されており、前記荷重により、該重複部における該第二方向電極と該第一方向電極との間の電極間距離が短くなり、静電容量が増加することを基に、前記被把持部に対する前記運転者の押込を検出することを特徴とする。
【0010】
ここで、「接近」には、非接触は勿論、接触も含まれる。また、「押込」には、被把持部に対する把持、押圧が含まれる。
【0011】
本発明の把持状態検出センサは、近接センサ部と、荷重センサ部と、を備えている。本発明の把持状態検出センサによると、被把持部に対する運転者の接近、押込、座標を検出することができる。すなわち、被把持部に対する運転者の把持状態を、詳しく検出することができる。また、本構成の把持状態検出センサの荷重センサ部によると、静電容量の変化を基に、押込(具体的には、押込の有無、押込の程度、荷重の有無、荷重の程度、荷重の値など)を検出することができる。
【0012】
また、荷重センサ部は、表裏方向の一方側から他方側に向かって、第二方向電極と、第二基材と、第一方向電極と、を備えている(ただし、隣り合う層の間に他の層が介在していてもよい)。第二方向電極、第二基材、第一方向電極が、樹脂と比較して柔軟な、エラストマー製の場合、荷重センサ部は柔軟である。したがって、把持状態検出センサを被把持部に配置しても、被把持部が本来有している触感を損ねるおそれが小さい。また、柔軟な荷重センサ部は、被把持部の形状に対する追従性が高い。このため、あらゆる形状の被把持部に対して、被把持部の形状に沿うように、把持状態検出センサを配置することができる。したがって、被把持部の形状に対する汎用性が高い。
【0013】
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、前記第二方向電極、前記第一方向電極がエラストマーを含有する場合、エラストマー(導電性フィラーなどの含有物を除くエラストマー単体)のヤング率は、いずれも30MPa以下である構成とする方がよい。本構成によると、荷重センサ部が柔軟になる。このため、把持状態検出センサを被把持部に配置しても、被把持部が本来有している触感を損ねるおそれが小さい。また、被把持部の形状に対する汎用性が高い。
【0014】
なお、本発明の把持状態検出センサの近接センサ部は、荷重センサ部と組み合わせずに、単独で用いることもできる。
【0015】
(1−2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記近接センサ部は、絶縁性を有しエラストマー製の第一基材と、該第一基材の表側に配置され、導電性を有しエラストマー製の複数の第一表側電極と、該第一基材の裏側に配置され、導電性を有しエラストマー製の複数の第一裏側電極と、を備える構成とする方がよい。並びに、前記近接センサ部は、前記運転者の接近に伴い前記第一表側電極と前記第一裏側電極との間の静電容量が増加することを基に、該運転者の接近、座標を検出する構成とする方がよい。本構成によると、自己容量型の静電容量型センサを、近接センサ部として用いることができる。
【0016】
(1−3)好ましくは、上記(1)の構成において、前記近接センサ部は、絶縁性を有しエラストマー製の第一基材と、該第一基材の表側に配置され、導電性を有しエラストマー製の複数の第一表側電極と、該第一基材の裏側に配置され、導電性を有しエラストマー製の複数の第一裏側電極と、を備える構成とする方がよい。並びに、前記第一表側電極、前記第一基材、前記第一裏側電極のエラストマー(導電性フィラーなどの含有物を除くエラストマー単体)のヤング率は、いずれも30MPa以下である構成とする方がよい。本構成によると、近接センサ部が柔軟になる。このため、把持状態検出センサを被把持部に配置しても、被把持部が本来有している触感を損ねるおそれが小さい。また、面方向の座標の検出精度が高い。また、被把持部の形状に対する汎用性が高い。
【0017】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記荷重センサ部は、各々、前記第二方向電極に接続される複数の第二方向配線と、各々、前記第一方向電極に接続される一対の第一方向配線と、を備える構成とする方がよい。
【0018】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、前記荷重センサ部は、前記第二方向電極の前記表裏方向の一方側に配置される一方側絶縁層と、前記第一方向電極の該表裏方向の他方側に配置される他方側絶縁層と、を備える構成とする方がよい。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
(4)好ましくは、上記(1)ないし(3)のいずれか構成において、前記近接センサ部と前記荷重センサ部との間に配置され、導電性を有し接地された中間層を備える構成とする方がよい。本構成によると、近接センサ部と荷重センサ部との間に、中間層が介在している。中間層は導電性を有している。また、中間層は接地されている。このため、近接センサ部と荷重センサ部とが、互いのノイズの悪影響を受けにくい。したがって、近接センサ部、荷重センサ部の検出精度が高くなる。
【0024】
(5)好ましくは、上記(4)の構成において、前記中間層の表裏両側のうち少なくとも一方に配置され、絶縁性を有しエラストマー製の絶縁スペーサを備える構成とする方がよい。
【0025】
本構成によると、近接センサ部と、荷重センサ部と、の間の表裏方向距離(電極間距離)を長くすることができる。このため、近接センサ部と荷重センサ部との間に浮遊容量が発生するのを抑制することができる。したがって、近接センサ部と荷重センサ部との相互干渉を低減させることができ、検出精度が高くなる。
【0026】
(5−1)好ましくは、上記(5)の構成において、前記荷重センサ部は、前記被把持部に対する前記運転者の座標を検出可能であり、前記絶縁スペーサは、前記荷重が面方向に分散するのを抑制する荷重分散抑制機構を有する構成とする方がよい。
【0027】
近接センサ部と荷重センサ部との間における浮遊容量の発生を抑制するためには、絶縁スペーサの表裏方向厚さは、より厚い方が好ましい。しかしながら、絶縁スペーサの表裏方向厚さを厚くすると、運転者から加わる荷重が、絶縁スペーサを伝達する際に、面方向(具体的には、絶縁スペーサの表裏方向に直交する方向。絶縁スペーサの表面または裏面が延在する方向)に分散されやすくなる。このため、絶縁スペーサの裏側の荷重センサ部において、面方向の座標の検出精度が低くなってしまう。
【0028】
この点、本構成の絶縁スペーサは、荷重分散抑制機構を備えている。このため、運転者から加わる荷重が、絶縁スペーサを伝達する際に、面方向に分散されにくい。したがって、面方向の座標の検出精度が高くなる。また、荷重の検出精度が高くなる。
【0029】
(5−2)好ましくは、上記(5−1)の構成において、前記荷重センサ部は、表側または裏側から見て、複数の前記第二方向電極と一対の前記第一方向電極とが重複して形成される複数の重複部を有し、前記荷重分散抑制機構は、表側または裏側から見て、面方向に隣り合う該重複部間に介在している構成とする方がよい。
【0030】
面方向に隣り合う複数の重複部(つまり荷重検出部)のうち、任意の重複部の表側から、絶縁スペーサを介して、荷重が入力される場合を想定する。本構成によると、任意の重複部と、当該重複部の隣りの重複部と、の間に、荷重分散抑制機構が介在している。このため、絶縁スペーサにおいて、荷重が面方向に分散しにくい。したがって、入力された当該荷重が、隣りの重複部に誤伝達されるのを抑制することができる。
【0031】
(5−3)好ましくは、上記(5−1)または(5−2)の構成において、前記荷重分散抑制機構は、前記絶縁スペーサの表面または裏面に凹設される荷重分散抑制溝である構成とする方がよい。
【0032】
絶縁スペーサにおいて荷重分散抑制溝が形成されている部分は、荷重分散抑制溝が形成されていない部分と比較して、表裏方向厚さが薄くなる。このため、面方向のばね定数が小さくなる。したがって、荷重が面方向に分散するのを抑制することができる。
【0033】
(5−4)好ましくは、上記(5−1)または(5−2)の構成において、前記荷重分散抑制機構は、前記絶縁スペーサを表裏方向に貫通する荷重分散抑制孔である構成とする方がよい。
【0034】
絶縁スペーサにおいて荷重分散抑制孔が形成されている部分は、荷重分散抑制孔が形成されていない部分と比較して、面方向のばね定数が小さくなる。このため、荷重が面方向に分散するのを抑制することができる。
【0035】
(6)好ましくは、上記(5)の構成において、表側または裏側から見て、前記絶縁スペーサのうち、前記第一方向に並んで配置される複数の前記第二方向電極の間に相当する部分には、荷重分散抑制溝が配置される構成とする方がよい。
【0036】
【0037】
(7)好ましくは、上記(6)の構成において、前記荷重分散抑制溝は、表側または裏側から見て、前記絶縁スペーサのうち、前記第二方向電極に相当する部分を、囲んで配置される構成とする方がよい。また、好ましくは、上記(1)ないし(7)のいずれかの構成において、前記被把持部は、ステアリングホイールである構成とする方がよい。本構成によると、ステアリングホイールに対する運転者の把持状態を、詳しく検出することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によると、ステアリングホイールなどの被把持部に対する運転者の把持状態を、詳しく検出することが可能な把持状態検出センサを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の把持状態検出センサの実施の形態について説明する。
【0041】
[把持状態検出センサの構成]
まず、本実施形態の把持状態検出センサの構成について説明する。以下の図面においては、ステアリングホイールの周方向をX方向、ステアリングホイールの径方向断面の周方向をY方向、ステアリングホイールの径方向断面の径方向をZ方向と定義する。X方向は、本発明の「第一方向」に対応している。Y方向は、本発明の「第二方向」に対応している。Z方向は、本発明の「表裏方向」に対応している。表裏方向のうち、表側は、本発明の「表裏方向の一方側」に対応している。表裏方向のうち、裏側は、本発明の「表裏方向の他方側」に対応している。
【0042】
図1に、本実施形態の把持状態検出センサが配置されたステアリングホイールの正面図を示す。
図1に示すように、円形のステアリングホイール8には、三つの把持状態検出センサ1が、配置されている。三つの把持状態検出センサ1は、各々、120°に亘ってX方向に延在している。
【0043】
図2に、
図1のII−II方向断面図を示す。
図2に示すように、把持状態検出センサ1は、センサ積層体6と、制御ユニット(図略)と、を備えている。センサ積層体6は、柔軟なシート状を呈している。センサ積層体6は、ステアリングホイール8の芯部80に巻装(一巻き)されている。具体的には、センサ積層体6のY方向両端は、ステアリングホイール8の径方向内端で互いに当接している。また、センサ積層体6のY方向中央は、ステアリングホイール8の径方向外端に配置されている。センサ積層体6の外周面は、ステアリングホイール8の表皮81により覆われている。運転者が直接触れるのは、表皮81である。
【0044】
{センサ積層体6}
センサ積層体6は、近接センサ部2と、荷重センサ部3と、中間部4と、を備えている。荷重センサ部3は、芯部80の外周面を覆っている。近接センサ部2は、荷重センサ部3のZ方向表側(
図2に示す表皮81側)に配置されている。中間部4は、荷重センサ部3と近接センサ部2との間に配置されている。
【0045】
(荷重センサ部3)
図3に、本実施形態の把持状態検出センサのセンサ積層体の荷重センサ部のZ方向透過正面図を示す。
図4に、同荷重センサ部のZ方向分解正面図を示す。
図4の白抜き矢印は積層順を示す。
図4のハッチング矢印は印刷順を示す。
【0046】
図3、
図4に示すように、荷重センサ部3は、Z方向表側からZ方向裏側(
図2に示す芯部80側)に向かって、第二表側絶縁層32と、8つの第二表側配線a1〜a8と、8つの第二表側電極y1〜y8と、第二中間表側絶縁層35と、第二基材30と、第二中間裏側絶縁層36と、2つの第二裏側電極x1、x2と、2つの第二裏側配線b1、b2と、第二裏側絶縁層33と、が積層されることにより、形成されている。第二表側電極y1〜y8は、本発明の「第二方向電極」の概念に含まれる。第二表側配線a1〜a8は、本発明の「第二方向配線」の概念に含まれる。第二裏側電極x1、x2は、本発明の「第一方向電極」の概念に含まれる。第二裏側配線b1、b2は、本発明の「第一方向配線」の概念に含まれる。第二表側絶縁層32は、本発明の「一方側絶縁層」の概念に含まれる。第二裏側絶縁層33は、本発明の「他方側絶縁層」の概念に含まれる。
【0047】
第二基材30は、ウレタンゴム製であって、X方向に長い帯状を呈している。第二基材30は、柔軟であり、絶縁性を有している。
【0048】
第二中間表側絶縁層35は、アクリルゴム製であって、X方向に長い帯状を呈している。第二中間表側絶縁層35は、柔軟であり、絶縁性を有している。第二中間表側絶縁層35は、第二基材30の表面に積層されている。
【0049】
8つの第二表側電極y1〜y8は、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。8つの第二表側電極y1〜y8は、各々、柔軟であり、導電性を有している。8つの第二表側電極y1〜y8は、第二中間表側絶縁層35の表側に配置されている。8つの第二表側電極y1〜y8は、各々、Y方向に長い樽状を呈している。8つの第二表側電極y1〜y8は、X方向に並んで配置されている。8つの第二表側電極y1〜y8は、荷重センサ部3のY方向中央線L2に対して、線対称に配置されている。
図2に示すように、Y方向中央線L2は、ステアリングホイール8の径方向外端に配置されている。
【0050】
8つの第二表側配線a1〜a8は、各々、銀ペースト製である。8つの第二表側配線a1〜a8は、各々、導電性を有している。8つの第二表側配線a1〜a8は、8つの第二表側電極y1〜y8の配線部の表面を覆っている。
【0051】
第二表側絶縁層32は、ウレタンゴム製であって、X方向に長い帯状を呈している。第二表側絶縁層32は、柔軟であり、絶縁性を有している。第二表側絶縁層32は、8つの第二表側配線a1〜a8、8つの第二表側電極y1〜y8を挟んで、第二基材30の表面に積層されている。
【0052】
第二中間裏側絶縁層36は、アクリルゴム製であって、X方向に長い帯状を呈している。第二中間裏側絶縁層36は、柔軟であり、絶縁性を有している。第二中間裏側絶縁層36は、第二基材30の裏面に積層されている。
【0053】
2つの第二裏側電極x1、x2は、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。2つの第二裏側電極x1、x2は、各々、柔軟であり、導電性を有している。2つの第二裏側電極x1、x2は、第二中間裏側絶縁層36の裏側に配置されている。2つの第二裏側電極x1、x2は、各々、X方向に長いラック状(直線鋸歯状)を呈している。2つの第二裏側電極x1、x2は、Y方向に並んで配置されている。2つの第二裏側電極x1、x2は、荷重センサ部3のY方向中央線L2に対して、線対称に配置されている。
【0054】
2つの第二裏側配線b1、b2は、各々、銀ペースト製である。2つの第二裏側配線b1、b2は、各々、導電性を有している。2つの第二裏側配線b1、b2は、2つの第二裏側電極x1、x2の配線部の裏面を覆っている。2つの第二裏側配線b1、b2は、2つの第二裏側電極x1、x2のX方向略全長に亘って、延在している。
【0055】
第二裏側絶縁層33は、ウレタンゴム製であって、X方向に長い帯状を呈している。第二裏側絶縁層33は、柔軟であり、絶縁性を有している。第二裏側絶縁層33は、2つの第二裏側配線b1、b2、2つの第二裏側電極x1、x2を挟んで、第二基材30の裏面に積層されている。
【0056】
第二表側絶縁層32の裏面には、8つの第二表側配線a1〜a8、8つの第二表側電極y1〜y8、第二中間表側絶縁層35が、スクリーン印刷されている。第二裏側絶縁層33の表面には、2つの第二裏側配線b1、b2、2つの第二裏側電極x1、x2、第二中間裏側絶縁層36が、スクリーン印刷されている。
【0057】
表側または裏側から見て、8つの第二表側電極y1〜y8と、2つの第二裏側電極x1、x2と、は表裏方向(荷重伝達方向)に重複している。すなわち、
図3にハッチングで示すように、第二表側電極y1〜y8と第二裏側電極x1、x2との間には、合計16個の重複部αが形成されている。すなわち、重複部αは、X方向に8個並んでいる。また、重複部αは、Y方向に2個並んでいる。
【0058】
(近接センサ部2)
図5に、本実施形態の把持状態検出センサのセンサ積層体の近接センサ部のZ方向透過正面図を示す。
図6に、同近接センサ部のZ方向分解正面図を示す。
図5の一点鎖線は、荷重センサ部3の重複部αの外形線である。
図6の第一表側電極X1、X2を囲む一点鎖線は、荷重センサ部3の第二裏側電極x1、x2の外形線である。
図6の第一裏側電極Y1〜Y8を囲む一点鎖線は、荷重センサ部3の第二表側電極y1〜y8の外形線である。
図6の白抜き矢印は積層順を示す。
図6のハッチング矢印は印刷順を示す。
【0059】
図5、
図6に示すように、近接センサ部2は、Z方向表側からZ方向裏側に向かって、第一表側絶縁層22と、2つの第一表側電極X1、X2と、2つの第一表側配線B1、B2と、第一基材20と、8つの第一裏側配線A1〜A8と、8つの第一裏側電極Y1〜Y8と、第一裏側絶縁層23と、が積層されることにより、形成されている。
【0060】
第一基材20は、ウレタンゴム製であって、X方向に長い帯状を呈している。第一基材20は、柔軟であり、絶縁性を有している。
【0061】
2つの第一表側配線B1、B2は、各々、銀ペースト製である。2つの第一表側配線B1、B2は、各々、導電性を有している。2つの第一表側配線B1、B2は、第一基材20の表面に積層されている。
【0062】
2つの第一表側電極X1、X2は、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。2つの第一表側電極X1、X2は、各々、柔軟であり、導電性を有している。2つの第一表側電極X1、X2は、2つの第一表側配線B1、B2を挟んで、第一基材20の表側に配置されている。2つの第一表側電極X1、X2は、各々、X方向に長いラック状を呈している。2つの第一表側電極X1、X2は、Y方向に並んで配置されている。2つの第一表側電極X1、X2は、近接センサ部2のY方向中央線L1に対して、線対称に配置されている。
図2に示すように、Y方向中央線L1は、ステアリングホイール8の径方向外端に配置されている。2つの第一表側電極X1、X2と、2つの第二裏側電極x1、x2と、は表裏方向に重複している。
【0063】
第一表側絶縁層22は、ウレタンゴム製であって、X方向に長い帯状を呈している。第一表側絶縁層22は、柔軟であり、絶縁性を有している。第一表側絶縁層22は、2つの第一表側電極X1、X2、2つの第一表側配線B1、B2を挟んで、第一基材20の表面に積層されている。
【0064】
8つの第一裏側配線A1〜A8は、各々、銀ペースト製である。8つの第一裏側配線A1〜A8は、各々、導電性を有している。8つの第一裏側配線A1〜A8は、第一基材20の裏面に積層されている。
【0065】
8つの第一裏側電極Y1〜Y8は、各々、アクリルゴムと、導電性カーボンブラックと、を含んで形成されている。8つの第一裏側電極Y1〜Y8は、各々、柔軟であり、導電性を有している。8つの第一裏側電極Y1〜Y8は、8つの第一裏側配線A1〜A8を挟んで、第一基材20の裏側に配置されている。8つの第一裏側電極Y1〜Y8は、各々、Y方向に長い樽状を呈している。8つの第一裏側電極Y1〜Y8は、X方向に並んで配置されている。8つの第一裏側電極Y1〜Y8は、近接センサ部2のY方向中央線L1に対して、線対称に配置されている。8つの第一裏側電極Y1〜Y8と、8つの第二表側電極y1〜y8と、は表裏方向に重複している。
【0066】
第一裏側絶縁層23は、ウレタンゴム製であって、X方向に長い帯状を呈している。第一裏側絶縁層23は、柔軟であり、絶縁性を有している。第一裏側絶縁層23は、8つの第一裏側電極Y1〜Y8、8つの第一裏側配線A1〜A8を挟んで、第一基材20の裏面に積層されている。
【0067】
第一基材20の表面には、2つの第一表側配線B1、B2、2つの第一表側電極X1、X2、第一表側絶縁層22が、スクリーン印刷されている。第一基材20の裏面には、8つの第一裏側配線A1〜A8、8つの第一裏側電極Y1〜Y8、第一裏側絶縁層23が、スクリーン印刷されている。
【0068】
図7に、
図5のX方向左端の2つの重複部α付近の拡大図を示す。
図7に示すように、第一表側電極X1、X2、第一裏側電極Y1には、各々、短手方向幅が広い広幅部β1と、短手方向幅が狭い狭幅部β2と、が交互に並んで配置されている。広幅部β1は、菱形状を呈している。狭幅部β2は、長方形状を呈している。狭幅部β2は、隣り合う広幅部β1同士を連結している。
【0069】
表側または裏側から見て、隣り合う広幅部β1同士は表裏方向(荷重伝達方向)に重複していない。すなわち、
図7にハッチングで示すように、複数の広幅部β1は、第一基材20の表面または裏面が展開する方向に、並んでいる。
図7に点線で示すように、隣り合う広幅部β1間には、電界γが形成されている。
【0070】
(中間部4)
図8に、本実施形態の把持状態検出センサのセンサ積層体のZ方向断面図(詳しくは、
図3、
図7のVIII−VIII方向断面図)を示す。
図2、
図8に示すように、中間部4は、荷重センサ部3と近接センサ部2との間に配置されている。中間部4は、中間層40と、絶縁スペーサ41と、を備えている。
【0071】
中間層40は、近接センサ部2のZ方向裏側に配置されている。中間層40は、外面に金属がコーティングされたポリエステル繊維からなる布製であって、X方向に長い帯状を呈している。中間層40は、柔軟であり、導電性を有している。中間層40は、アース(接地)されている。
【0072】
絶縁スペーサ41は、荷重センサ部3のZ方向表側に配置されている。絶縁スペーサ41は、ウレタンゴム製であって、X方向に長い帯状を呈している。絶縁スペーサ41は、柔軟であり、絶縁性を有している。
【0073】
{制御ユニット}
図9に、本実施形態の把持状態検出センサのブロック図を示す。
図9に示すように、制御ユニット7は、制御部70と、送信部71と、受信部72と、コンピュータ73と、を備えている。
【0074】
(制御部70)
制御部70は、DSP(Digital Signal Processor)700と、SRAM(Static Random Access Memory)701と、を備えている。DSP700は、マイコン(演算部)として用いられる。SRAM701は、記憶部として用いられる。SRAM701には、接近(非接触または接触)、小荷重(弱い把持)、大荷重(強い把持)を判別するためのしきい値(接近しきい値、小荷重しきい値、大荷重しきい値)が格納されている。また、SRAM701には、近接センサ部2における運転者の手HのX方向(
図1参照)、Y方向(
図2参照)の座標を特定するための、マップが格納されている。SRAM701は、DSP700に、電気的に接続されている。
【0075】
(送信部71)
送信部71は、DAC(Digital−Analog Converter)710と、DDS(Direct Digital Synthesizer)711と、マルチプレクサ712と、2つのオペアンプ713と、を備えている。
【0076】
DAC710は、デジタル信号をアナログ信号に変換する。DAC710は、DSP700に電気的に接続されている。DDS711は、正弦波発振器として用いられる。DDS711は、DAC710に電気的に接続されている。アナログのマルチプレクサ712は、DDS711に電気的に接続されている。マルチプレクサ712は、正弦波電流を、2つのオペアンプ713に、順次切り替えながら、走査的に出力する。2つのオペアンプ713は、各々、マルチプレクサ712から入力された電流を、電圧に変換している。すなわち、2つのオペアンプ713は、各々、電流−電圧変換器として用いられる。2つのオペアンプ713は、2つの第一表側配線B1、B2、2つの第一表側電極X1、X2に、電気的に接続されている。
【0077】
(受信部72)
受信部72は、4つのADC(Analog−Digital Converter)720と、4つのローパスフィルタ721と、4つのマルチプレクサ722と、8つのオペアンプ723と、を備えている。
【0078】
8つのオペアンプ723は、8つの第一裏側配線A1〜A8、8つの第一裏側電極Y1〜Y8に、電気的に接続されている。8つのオペアンプ723は、各々、電流−電圧変換器として用いられる。4つのアナログのマルチプレクサ722は、8つのオペアンプ723に電気的に接続されている。4つのマルチプレクサ722は、8つのオペアンプ723に、順次切り替えられながら、接続される。4つのローパスフィルタ721は、各々、電圧の高周波成分をカットしている。4つのローパスフィルタ721は、4つのマルチプレクサ722に電気的に接続されている。4つのADC720は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。4つのADC720は、4つのローパスフィルタ721に電気的に接続されている。また、4つのADC720は、DSP700に電気的に接続されている。
【0079】
(コンピュータ73)
コンピュータ73は、DSP700に電気的に接続されている。コンピュータ73は、アクチュエータ(図略。例えば警報装置など)に、運転者の把持状態(接近、小荷重入力、大荷重入力など)に応じたコマンドを送信する。
【0080】
なお、制御ユニット7は、
図9に示す近接センサ部2同様に、
図3に示す荷重センサ部3にも、電気的に接続されている。すなわち、荷重センサ部3の2つの第二裏側配線b1、b2、2つの第二裏側電極x1、x2には、マルチプレクサを介して、順次、走査的に電圧が供給される。8つの第二表側配線a1〜a8、8つの第二表側電極y1〜y8からは、電流が出力される。
【0081】
[把持状態検出センサ1の近接センサ部2の動き]
次に、本実施形態の把持状態検出センサ1の近接センサ部2の動きについて説明する。
図10(a)に、
図8の枠X内の、手が接近していない状態における拡大図を示す。
図10(b)に、
図8の枠X内の、手が接近している状態における拡大図を示す。
図10(a)に示すように、第一表側電極X1と第一裏側電極Y1との間には、
図9に示す送信部71から供給される電圧により、静電容量Caが発生する。
【0082】
図10(b)に示すように、運転者の手(導電性を有し、人体を介してアースされている。)Hが表皮81に接近すると、第一表側電極X1と手Hとの間に、静電容量Cbが発生する。このため、手Hが接近していない状態(
図10(a))と比較して、手Hが接近している状態(
図10(b))の方が、
図9に示すオペアンプ723に入力される電流が小さくなる。この電流の変化を基に、DSP700は、第一表側電極X1と第一裏側電極Y1との間の、静電容量の変化量を算出する。
【0083】
[把持状態検出センサ1の荷重センサ部3の動き]
次に、本実施形態の把持状態検出センサ1の荷重センサ部3の動きについて説明する。
図11(a)に、
図8の枠XI内の、手が押し込まれていない状態における拡大図を示す。
図11(b)に、
図8の枠XI内の、手が押し込まれている状態における拡大図を示す。
図11(a)に示すように、手が押し込まれていない状態においては、誘電層である第二基材30、第二中間表側絶縁層35、第二中間裏側絶縁層36に、荷重が加わっていない。第二基材30、第二中間表側絶縁層35、第二中間裏側絶縁層36のZ方向厚さは、第二表側電極y1と第二裏側電極x1との間の、電極間距離dに相当する。
【0084】
ここで、
図8に示すように、近接センサ部2を構成する部材、中間部4は、いずれも柔軟である。このため、手が押し込まれると、近接センサ部2、中間部4のうち、手に押圧された部分は、局所的に裏側に没入する。すなわち、近接センサ部2や中間部4が、全面的に下方に変位することはない。
【0085】
図11(b)に示すように、手が押し込まれると、表側から加わる荷重Fにより、第二基材30、第二中間表側絶縁層35、第二中間裏側絶縁層36が局所的に圧縮される。このため、第二表側電極y1と第二裏側電極x1との間の、電極間距離dが短くなる。この電極間距離dの変化を基に、
図9に示すDSP700は、第二表側電極y1と第二裏側電極x1との間の、静電容量の変化量を算出する。
【0086】
[把持状態検出センサ1の接近、小荷重、大荷重の判別方法]
次に、本実施形態の把持状態検出センサ1の接近、小荷重、大荷重の判別方法について説明する。
図12に、本実施形態の把持状態検出センサの制御ユニットが実行する処理のフローチャートを示す。
【0087】
図9に示すように、制御ユニット7は、所定のサンプリング周期で、近接センサ部2の静電容量、荷重センサ部3の静電容量を監視している。すなわち、
図9に示すDSP700は、所定のサンプリング周期で、SRAM701に格納されている小荷重しきい値th1と、荷重センサ部3の静電容量の変化量ΔC2と、を比較している(
図12のS1(ステップ1。以下同様)、S2)。
【0088】
比較(以下、「第一の比較」と称する。)の結果、変化量ΔC2が小荷重しきい値th1よりも小さい場合は、DSP700は、荷重センサ部3に荷重が加わっていないと判別する(
図12のS3)。この場合、
図9に示すDSP700は、SRAM701に格納されている接近しきい値th3と、近接センサ部2の静電容量の変化量ΔC1と、を比較する(
図12のS4、S5)。
【0089】
比較(以下、「第二の比較」と称する。)の結果、変化量ΔC1が接近しきい値th3以上の場合は、DSP700は、近接センサ部2に運転者の手が接近(接触を含む)していると判別する(
図12のS6)。また、DSP700は、手が接近している座標を特定する。DSP700は、手の接近、座標に関する情報を、コンピュータ73に伝送する。コンピュータ73は、DSP700からの情報に対応するコマンドを、アクチュエータに送信する。一方、第二の比較の結果、変化量ΔC1が接近しきい値th3未満の場合は、DSP700は、近接センサ部2に手が接近していないと判別する(
図12のS10)。
【0090】
一方、第一の比較(
図12のS2)の結果、変化量ΔC2が小荷重しきい値th1以上の場合は、
図9に示すDSP700は、SRAM701に格納されている大荷重しきい値th2と、変化量ΔC2と、を比較する(
図12のS7)。
【0091】
比較(以下、「第三の比較」と称する。)の結果、変化量ΔC2が大荷重しきい値th2未満の場合は、DSP700は、手により小荷重が入力されたと判別する(
図12のS8)。また、DSP700は、手が押し込まれている座標を特定する。DSP700は、手の小荷重、座標に関する情報を、コンピュータ73に伝送する。コンピュータ73は、DSP700からの情報に対応するコマンドを、アクチュエータに送信する。一方、第三の比較の結果、変化量ΔC2が大荷重しきい値th2以上の場合は、DSP700は、手により大荷重が入力されたと判別する(
図12のS9)。また、DSP700は、手が押し込まれている座標を特定する。DSP700は、手の大荷重、座標に関する情報を、コンピュータ73に伝送する。コンピュータ73は、DSP700からの情報に対応するコマンドを、アクチュエータに送信する。
【0092】
このように、本実施形態の把持状態検出センサ1は、把持状態検出センサ1に対する手の把持状態に応じて、「把持状態検出センサ1から手が離間していること」、「把持状態検出センサ1に手が接近していること、および接近座標」、「把持状態検出センサ1に手から小荷重が加わっていること、および荷重が加わっている座標」、「把持状態検出センサ1に手から大荷重が加わっていること、および荷重が加わっている座標」を、判別することができる。
【0093】
[作用効果]
次に、本実施形態の把持状態検出センサ1の作用効果について説明する。
図2に示すように、本実施形態の把持状態検出センサ1は、近接センサ部2と、荷重センサ部3と、を備えている。
図10(a)、
図10(b)に示すように、近接センサ部2は、静電容量Caの変化を基に、
図1に示すステアリングホイール8に対する運転者の手Hの接近を検出することができる。また、近接センサ部2は、静電容量Caが変化した座標を基に、運転者の手HのX方向、Y方向の座標を検出することができる。また、
図11(a)、
図11(b)に示すように、荷重センサ部3は、ステアリングホイール8に対する運転者の手Hの押込を検出することができる。このように、本実施形態の把持状態検出センサ1によると、ステアリングホイール8に対する運転者の手Hの接近、押込、座標を検出することができる。すなわち、ステアリングホイール8に対する運転者の把持状態を、詳しく検出することができる。
【0094】
また、
図6、
図8に示すように、近接センサ部2は、Z方向表側(荷重入力側)からZ方向裏側に向かって、第一表側電極X1、X2と、第一基材20と、第一裏側電極Y1〜Y8と、を備えている。第一表側電極X1、X2、第一基材20、第一裏側電極Y1〜Y8は、いずれも、樹脂と比較して柔軟な、エラストマー製である。このため、近接センサ部2は柔軟である。したがって、把持状態検出センサ1をステアリングホイール8に配置しても、ステアリングホイール8が本来有している触感を損ねるおそれが小さい。また、柔軟な近接センサ部2は、運転者の手Hから加わる荷重を、X方向、Y方向に分散しにくい。このため、X方向、Y方向の座標の検出精度が高い。
【0095】
また、柔軟な近接センサ部2は、ステアリングホイール8の形状に対する追従性が高い。このため、あらゆる形状のステアリングホイール8に対して、ステアリングホイール8の形状に沿うように、把持状態検出センサ1を配置することができる。したがって、ステアリングホイール8の形状に対する汎用性が高い。
【0096】
なお、本実施形態の把持状態検出センサ1の近接センサ部2は、荷重センサ部3と組み合わせずに、単独で用いることもできる。
【0097】
また、本実施形態の把持状態検出センサ1の近接センサ部2として用いられているのは、相互容量型の静電容量型センサである。すなわち、
図10(a)、
図10(b)に示すように、近接センサ部2は、運転者の手Hの接近に伴い第一表側電極X1と手Hとの間に静電容量Cbが発生し、第一表側電極X1と第一裏側電極Y1との間の静電容量Caが減少することを基に、ステアリングホイール8に対する手Hの接近、座標を検出している。このため、マルチタッチ(多点同時接触)に対応しやすい。
【0098】
また、
図11(a)、
図11(b)に示すように、本実施形態の把持状態検出センサ1の荷重センサ部3によると、電極間距離dの変化に伴う静電容量の変化を基に、手Hの押込(具体的には、押込の有無、押込の程度、荷重の有無、荷重の程度、荷重の値など)を検出することができる。
【0099】
また、
図4、
図8に示すように、荷重センサ部3は、Z方向表側からZ方向裏側に向かって、第二表側電極y1〜y8と、第二基材30と、第二裏側電極x1、x2と、を備えている。第二表側電極y1〜y8、第二基材30、第二裏側電極x1、x2は、いずれも、樹脂と比較して柔軟な、エラストマー製である。このため、荷重センサ部3は柔軟である。したがって、把持状態検出センサ1をステアリングホイール8に配置しても、ステアリングホイール8が本来有している触感を損ねるおそれが小さい。
【0100】
また、柔軟な荷重センサ部3は、ステアリングホイール8の形状に対する追従性が高い。このため、あらゆる形状のステアリングホイール8に対して、ステアリングホイール8の形状に沿うように、把持状態検出センサ1を配置することができる。したがって、ステアリングホイール8の形状に対する汎用性が高い。
【0101】
また、
図2、
図8に示すように、近接センサ部2と荷重センサ部3との間には、中間層40が介装されている。中間層40は導電性を有している。また、中間層40は接地されている。このため、近接センサ部2と荷重センサ部3とが、互いのノイズの悪影響を受けにくい。したがって、近接センサ部2、荷重センサ部3の検出精度が高くなる。
【0102】
また、
図2、
図8に示すように、近接センサ部2と荷重センサ部3との間には、絶縁スペーサ41が介装されている。このため、近接センサ部2と荷重センサ部3とをZ方向に離間させることができる。したがって、近接センサ部2と荷重センサ部3との間に、浮遊容量が発生するのを抑制することができる。したがって、近接センサ部2と荷重センサ部3との相互干渉を低減させることができ、検出精度が高くなる。
【0103】
また、
図4にハッチング矢印で示すように、第二表側絶縁層32の裏面には、8つの第二表側配線a1〜a8、8つの第二表側電極y1〜y8、第二中間表側絶縁層35が、スクリーン印刷されている。また、第二裏側絶縁層33の表面には、2つの第二裏側配線b1、b2、2つの第二裏側電極x1、x2、第二中間裏側絶縁層36が、スクリーン印刷されている。このため、第二表側配線a1〜a8、第二表側電極y1〜y8、第二中間表側絶縁層35、第二裏側配線b1、b2、第二裏側電極x1、x2、第二中間裏側絶縁層36を、簡単に形成することができる。また、これらの部材の形成と配置とを同時に行うことができる。また、これらの部材の形状設定の自由度が高くなる。また、これらの部材の形状の精度が高くなる。また、これらの部材間の相対的な位置合わせが容易になる。
【0104】
また、
図6にハッチング矢印で示すように、第一基材20の表面には、2つの第一表側配線B1、B2、2つの第一表側電極X1、X2、第一表側絶縁層22が、スクリーン印刷されている。また、第一基材20の裏面には、8つの第一裏側配線A1〜A8、8つの第一裏側電極Y1〜Y8、第一裏側絶縁層23が、スクリーン印刷されている。このため、第一表側配線B1、B2、第一表側電極X1、X2、第一表側絶縁層22、第一裏側配線A1〜A8、第一裏側電極Y1〜Y8、第一裏側絶縁層23を、簡単に形成することができる。また、これらの部材の形成と配置とを同時に行うことができる。また、これらの部材の形状設定の自由度が高くなる。また、これらの部材の形状の精度が高くなる。また、これらの部材間の相対的な位置合わせが容易になる。
【0105】
<その他>
以上、本発明の把持状態検出センサの実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0106】
図13に、その他の実施形態の把持状態検出センサの絶縁スペーサのZ方向正面図を示す。なお、
図3と対応する部位については、同じ符号で示す。
図13に示すように、絶縁スペーサ41の重複部α(一点鎖線ハッチングで示す)に相当する部分の周囲には、荷重分散抑制溝410が配置されている。荷重分散抑制溝410は、絶縁スペーサ41の裏面に凹設されている。本実施形態の荷重センサ部は、運転者の手の座標を検出する。
【0107】
図8に示すように、近接センサ部2と荷重センサ部3との間における浮遊容量の発生を抑制するためには、絶縁スペーサ41のZ方向厚さは、より厚い方が好ましい。しかしながら、絶縁スペーサ41のZ方向厚さを厚くすると、運転者の手から加わる荷重が、絶縁スペーサ41を伝達する際に、X方向、Y方向に分散されやすくなる。このため、絶縁スペーサ41のZ方向裏側の荷重センサ部3において、X方向、Y方向の座標の検出精度が低くなってしまう。
【0108】
この点、本実施形態の把持状態検出センサの絶縁スペーサ41は、荷重分散抑制溝410を備えている。絶縁スペーサ41において荷重分散抑制溝410が形成されている部分は、荷重分散抑制溝410が形成されていない部分と比較して、Z方向厚さが薄くなる。このため、X方向、Y方向のばね定数が小さくなる。したがって、荷重がX方向、Y方向に分散するのを抑制することができる。
【0109】
絶縁スペーサ41に荷重分散抑制溝410を配置すると、運転者の手から加わる荷重が、絶縁スペーサ41を伝達する際に、X方向、Y方向に分散されにくい。したがって、荷重センサ部3において、X方向、Y方向の座標の検出精度が高くなる。また、荷重の検出精度が高くなる。なお、荷重分散抑制溝410の代わりに、絶縁スペーサ41をZ方向に貫通する、荷重分散抑制孔を配置してもよい。
【0110】
上記実施形態においては、車両のステアリングホイール8に把持状態検出センサ1を配置した。しかしながら、飛行機の操縦桿、船舶の舵、自転車やバイクのハンドル、電車のレバーなどに把持状態検出センサを配置してもよい。すなわち、被把持部の種類は限定しない。
【0111】
荷重センサ部3の種類は特に限定しない。電気抵抗の変化(増加、減少)を基に押込を検出する抵抗変化型センサ、ロードセル(歪みゲージ)、導通の有無を基に押込を検出するメンブレンスイッチなどであってもよい。
【0112】
近接センサ部2としては、上述した相互容量型(
図10(a)、
図10(b)に示すように、手の接近に伴い第一表側電極X1と第一裏側電極Y1との間の静電容量Caが減少するタイプ)の静電容量型センサを用いることができる。また、自己容量型(手の接近に伴い第一表側電極X1と第一裏側電極Y1との間の静電容量Caが増加するタイプ)の静電容量型センサを用いることができる。
【0113】
上記実施形態においては、
図12に示すように、把持状態検出センサ1に対する手の状態に応じて、DSP700が、「把持状態検出センサ1に手から小荷重が加わっていること、および荷重が加わっている座標」、「把持状態検出センサ1に手から大荷重が加わっていること、および荷重が加わっている座標」を、判別した。しかしながら、荷重の値そのものを、DSP700が算出してもよい。
【0114】
第一表側電極X1、X2、第一裏側電極Y1〜Y8の配置パターンは特に限定しない。
図7に示すように、Z方向表側またはZ方向裏側から見て、互いの広幅部β1同士が、面方向に並んでいればよい。広幅部β1は、六角形状、八角形状などの多角形状、円形状などであってもよい。
【0115】
第二表側電極y1〜y8、第二裏側電極x1、x2の配置パターンは特に限定しない。
図3に示すように、Z方向表側またはZ方向裏側から見て、第二表側電極y1〜y8と第二裏側電極x1、x2との間に、重複部αが形成できればよい。
【0116】
図4に示すように、上記実施形態においては、第二表側絶縁層32に、第二表側配線a1〜a8、第二表側電極y1〜y8、第二中間表側絶縁層35をスクリーン印刷した。また、第二裏側絶縁層33に、第二裏側配線b1、b2、第二裏側電極x1、x2、第二中間裏側絶縁層36をスクリーン印刷した。しかしながら、第二基材30に、第二表側配線a1〜a8、第二表側電極y1〜y8、第二表側絶縁層32をスクリーン印刷してもよい。また、第二基材30に、第二裏側配線b1、b2、第二裏側電極x1、x2、第二裏側絶縁層33をスクリーン印刷してもよい。
【0117】
図6に示すように、上記実施形態においては、第一基材20に、第一表側配線B1、B2、第一表側電極X1、X2、第一表側絶縁層22をスクリーン印刷した。また、第一基材20に、第一裏側配線A1〜A8、第一裏側電極Y1〜Y8、第一裏側絶縁層23をスクリーン印刷した。しかしながら、第一表側絶縁層22に、第一表側配線B1、B2、第一表側電極X1、X2をスクリーン印刷してもよい。また、第一裏側絶縁層23に、第一裏側配線A1〜A8、第一裏側電極Y1〜Y8をスクリーン印刷してもよい。
【0118】
また、スクリーン印刷の代わりに、インクジェット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、パッド印刷、リソグラフィー、ディスペンサー印刷などを用いてもよい。また、予め成形した各部材を接着することにより、近接センサ部2、荷重センサ部3を作製してもよい。
【0119】
また、第一表側配線B1、B2、第一裏側配線A1〜A8、第二表側配線a1〜a8、第二裏側配線b1、b2は、配置しなくてもよい。
【0120】
第一基材20、第二基材30に用いられるエラストマーの材質は特に限定しない。エラストマーは、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムから選ばれる一種以上を含んでいてもよい。こうすると、第一基材20、第二基材30の比誘電率が高くなる。このため、静電容量を大きくすることができる。
【0121】
第一表側電極X1、X2、第一裏側電極Y1〜Y8、第二表側電極y1〜y8、第二裏側電極x1、x2に用いられるエラストマーの材質は特に限定しない。エラストマーは、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどを含んでいてもよい。なお、「エラストマー製」には、対象物(第一基材20、第二基材30、第一表側電極X1、X2、第一裏側電極Y1〜Y8、第二表側電極y1〜y8、第二裏側電極x1、x2)がエラストマー単体製の場合は勿論、対象物がエラストマー以外の含有物(例えば、対象物に導電性を付与する場合は、導電性フィラー)を有する場合も含まれる。
【0122】
第一表側電極X1、X2、第一裏側電極Y1〜Y8、第二表側電極y1〜y8、第二裏側電極x1、x2に用いられる導電性フィラーの材質は特に限定しない。導電性フィラーは、炭素材料および金属から選ばれる一種以上からなるものであってもよい。金属としては、導電性の高い銀、銅等が好適である。よって、導電性フィラーとして、銀、銅等の微粒子、あるいは表面に銀等のめっきを施した微粒子を使用することができる。また、炭素材料は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、炭素材料からなる導電性フィラーを用いると、把持状態検出センサ1の製造コストを低減することができる。炭素材料としては、例えば、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブの誘導体、グラファイト、導電性炭素繊維などが挙げられる。特に、導電性カーボンブラック、グラファイト、導電性炭素繊維は、導電性が良好で、比較的安価である。このため、これらの材料を用いると、把持状態検出センサ1の製造コストを削減することができる。
【0123】
第一表側絶縁層22、第一裏側絶縁層23、第二表側絶縁層32、第二裏側絶縁層33、第二中間表側絶縁層35、第二中間裏側絶縁層36に用いられるエラストマーの材質は特に限定しない。エラストマーは、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン共重合体ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレンゴムなどを含んでいてもよい。
【0124】
また、中間層40用の導電性繊維としては、前記導電性フィラーを含む繊維を用いてもよい。また、中間層40は、織布製、編布製、不織布製、エラストマー製などであってもよく、これらの外面に導電性塗料を塗布したものでもよい。
【0125】
また、中間層40自体が、例えば第一表側電極X1、X2、第一裏側電極Y1〜Y8、第二表側電極y1〜y8、第二裏側電極x1、x2などに用いられるような、導電性塗料製であってもよい。この場合、中間層40を、第一裏側絶縁層23、絶縁スペーサ41に、塗布(例えばスクリーン印刷など)してもよい。