【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも1つの実施形態に係る長尺材に自由曲面を加工する方法は、
前記長尺材は、長手方向に関して一端領域及び他端領域を有し、
前記方法は、
前記一端領域及び前記他端領域を把持するステップと、
前記一端領域及び前記他端領域を把持した状態で前記長尺材に自由曲面を加工する第1加工ステップと、
前記一端領域の把持を解放するステップと、
前記第1加工ステップでの自由曲面の加工に起因する変形量を前記一端領域の把持を解放
することによって補正した状態の前記一端領域の位置
に対して、前記長尺材の自重による前記長尺材の変形量
のみで補正した位置である再把持位置を決定するステップと、
前記再把持位置で前記一端領域を再把持するステップと、
前記一端領域を再把持した後、前記長尺材に自由曲面を加工する第2加工ステップと
を備える。
【0007】
上記(1)の方法によると、第1加工ステップ時に発生する長尺材の歪みと、長尺材の自重による長尺材の変形に付随する応力とを解放した状態で第2加工ステップを行えるので、長尺材に自由曲面を加工した製品の最終仕上がり状態の精度を向上することができる。
【0008】
(2)いくつかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記長尺材の自重による前記長尺材の変形量は、解析又は実験によって予め決定しておき、
前記再把持位置を決定するステップにおいて、前記一端領域の把持を解放した状態の前記一端領域の位置に対して、前記変形量の分だけずらした位置を前記再把持位置と決定する。
【0009】
上記(2)の方法によると、再把持位置を決定するステップにおいて長尺材の自重による長尺材の変形量を個々に決定する必要がないので、長尺材に自由曲面を加工する方法を迅速に行うことができる。
【0010】
(3)いくつかの実施形態では、上記(1)又は(2)の方法において、
前記変形量は、前記長尺材を水平方向に向けた状態での前記他端領域に対する前記一端領域の位置と、前記長尺材を鉛直方向に向けた状態での前記他端領域に対する前記一端領域の位置との差である。
【0011】
上記(3)の方法によると、長尺材の自重による長尺材の変形量を正確かつ容易に得ることができる。
【0012】
(4)いくつかの実施形態では、上記(1)の方法において、
前記一端領域の把持を解放するステップ後に、前記一端領域の把持を解放した前記長尺材を鉛直方向に向けるステップをさらに備え、
前記再把持位置を決定するステップにおいて、前記一端領域の把持を解放した前記長尺材を鉛直方向に向けたときの前記他端領域に対する前記一端領域の位置を前記再把持位置と決定する。
【0013】
上記(4)の方法によると、長尺材ごとにそれ独自の自重による変形を考慮した再把持位置が決定されるので、長尺材に自由曲面を加工した製品の最終仕上がり状態の精度をさらに向上することができる。
【0014】
(5)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(4)いずれかの方法において、
前記第2加工ステップの後、前記一端領域の把持を解放するステップから前記第2加工ステップまでを少なくとも1回繰り返す。
【0015】
上記(5)の方法によると、自由曲面を加工するステップを繰り返す場合でも、自由曲面の加工時に発生する歪み及び自重による変形に付随する応力を解放した状態で自由曲面を再度加工できるので、長尺材に自由曲面を加工した製品の最終仕上がり状態の精度を向上することができる。
【0016】
(6)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(5)いずれかの方法において、
前記第2加工ステップの後に、前記自由曲面に表面加工処理を行うステップをさらに備える。
【0017】
上記(6)の方法によると、長尺材に自由曲面を加工した製品の機械的性質を向上させることができる。
【0018】
(7)いくつかの実施形態では、上記(6)の方法において、
前記表面加工処理により発生する残留応力による前記長尺材の変形量を予め予測し、その予測値を考慮して前記第2加工ステップにおいて前記自由曲面の加工を行う。
【0019】
上記(7)の方法によると、自由曲面が加工された長尺材に、表面加工処理で発生する歪みが加わることで、長尺材に自由曲面を加工した製品の最終仕上がり状態が希望通りになるので、長尺材に自由曲面を加工した製品の最終仕上がり状態の精度を向上することができる。
【0020】
(8)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(7)いずれかの方法において、
前記長尺材の前記一端領域に、前記一端領域から突出する凸部を有し、前記一端領域を把持する場合、前記凸部を把持する。
【0021】
上記(8)の方法によると、凸部は一端領域から突出しているので把持しやすくなり、また、加工も簡単である。
【0022】
(9)いくつかの実施形態では、上記(1)〜(8)いずれかの方法において、
前記長尺材に自由曲面を加工した製品は回転機械の翼である。
【0023】
上記(9)の方法によると、最終仕上がり状態の精度を向上した回転機械の翼を提供することができる。
【0024】
(10)いくつかの実施形態では、上記(9)の方法において、
前記翼の翼先端側においてコード方向が鉛直方向に向くように前記一端領域及び前記他端領域が把持される。
【0025】
翼は、翼根側の厚さよりも翼先端側の厚さが薄いことから、翼先端側で面外方向(コード方向に対して直交方向)の力を受けると変形しやすい傾向がある。しかし、上記(10)の方法によると、一端領域の把持を解放して他端領域のみを片持ち支持したとき、翼の自重に基づく力が翼先端側にて翼の面内方向(コード方向)に作用することになり、翼の自重による変形が抑制される。翼の自重による変形が抑制されると、翼の個体差による一端領域の再把持位置のばらつきが低減されるので、一端領域の再把持時に長尺材の自重による変形に付随する応力を効果的に解放することができる。