特許第6351831号(P6351831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351831
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】頭髪用油性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/891 20060101AFI20180625BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20180625BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20180625BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61K8/891
   A61K8/365
   A61K8/31
   A61Q5/06
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-509346(P2017-509346)
(86)(22)【出願日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2016053617
(87)【国際公開番号】WO2016158011
(87)【国際公開日】20161006
【審査請求日】2017年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-66317(P2015-66317)
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-66318(P2015-66318)
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】100137419
【弁理士】
【氏名又は名称】桂田 正徳
(72)【発明者】
【氏名】松尾 真樹
(72)【発明者】
【氏名】岡本 将典
【審査官】 松村 真里
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−17317(JP,A)
【文献】 特開2010−24154(JP,A)
【文献】 特開2009−249610(JP,A)
【文献】 特開2008−303178(JP,A)
【文献】 特開2000−143454(JP,A)
【文献】 H. Tetsuka, K. Isobe,M. Hagiwara,Synthesis and Properties of Addition-Type Poly(norbornene)s with Siloxane Substituents,Polymer Journal,社団法人 高分子学会,2009年 8月10日,第41巻,第8号,第643頁−第649頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)〜成分(D)を含有し、実質的に水を含有しないことを特徴とする頭髪用油性組成物。
成分(A):室温で固形の炭化水素油および/又は室温で固形のロウ
成分(B):(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマー
成分(C):揮発性炭化水素油
成分(D):12−ヒドロキシステアリン酸
【請求項2】
前記成分(A)の含有量が、2〜20質量%である請求項1に記載の頭髪用油性組成物。
【請求項3】
前記成分(B)の含有量が、0.2〜7質量%である請求項1又は2に記載の頭髪用油性組成物。
【請求項4】
前記成分(C)が、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)およびイソドデカンの群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3の何れか一項に記載の頭髪用油性組成物。
【請求項5】
さらに、下記成分(E)を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の頭髪用油性組成物。
成分(E):ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリルおよびトリベヘン酸グリセリルの群から選ばれる少なくとも1種
【請求項6】
さらに、下記成分(F)を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の頭髪用油性組成物。
成分(F):HLB値が2以上8以下の非イオン性界面活性剤
【請求項7】
整髪剤であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の頭髪用油性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪用油性組成物に関する。尚、本発明における室温とは、1〜30℃の温度範囲を表す。
【背景技術】
【0002】
手のひら上で十分に延ばしてから毛髪へ塗布し、整髪を施す化粧料として、油分と水を乳化させて調製したヘアワックス、ヘアクリームなどが汎用されている。しかしながら、これら乳化物は、乳化剤が配合されているため、湿気や汗によって整髪剤が流れ落ちやすく整髪保持力に劣るといった欠点がある。
【0003】
一方、主に固形油と不揮発性油とからなり、水を配合せずに調製した非水系ワックス、所謂、クレイといわれる化粧料がある。クレイのような非水系ワックスは、整髪保持力に優れる。しかしながら、固形油を高配合すると、組成物自体の使用感が重くなり、指や手の平上での延び広がり、頭髪上での延び広がりが悪く、延展性に劣り、塗布後にべたつきが生じるといった欠点がある。また、不揮発性油を高配合すると、延展性は良くなる反面、油剤特有のべたつきが生じ易く、整髪力および整髪保持力に乏しく、何度もヘアスタイルを作り直す必要があるといった欠点がある。加えて、高温域で分離が生じ、製剤の保存安定性が悪くなるといった欠点もある。
【0004】
上記欠点を解決するため、非水系の組成物において、延び広がりを高める試みがなされている。具体的には、例えば、トリグリセリドを主成分とする植物油と、ジメチコノールと、環状シリコーンと、ジカプリリルエーテルとを含有する非水系毛髪化粧料(特許文献1を参照)、油膨潤性粘土鉱物と、特定の界面活性剤と、25℃においてペースト状の油剤と、融点35〜120℃の油剤とを含有する油性固形状毛髪化粧料(特許文献2を参照)などが提案されている。しかしながら、上記試みによってある程度延展性を高めることができるものの、十分な整髪力が得られず、整髪時に思い通りにセットできないといった問題がある。さらに、上記試みでは、油剤特有のべたつきが生じ易くなるといった問題がある。
【0005】
そのため、べたつきを低減し、整髪力を付与する試みもなされている。具体的には、例えば、シリコーン非含有ワックスと、液体状の疎水性油と、シリコーンワックスとを含有し、水を含まないヘアワックス製品(特許文献3を参照)などが提案されている。しかしながら、このような試みによって油剤特有のべたつきを改善し、ある程度整髪力を付与することができるものの、高温領域での分離が生じ易く、保存安定性に劣るといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−207807号公報
【特許文献2】特開2011−229071号公報
【特許文献3】特開2005−213252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、保存安定性に優れた効果を発揮する頭髪用油性組成物を提供することを課題とする。また、本発明は、手の平上や頭髪上での延展性が良好で、優れた整髪保持力を発揮し、整髪後の髪にべたつきが生じない頭髪用油性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、下記成分(A)〜成分(D)を含有し、実質的に水を含有しないことを特徴とする頭髪用油性組成物を提供する。
成分(A):室温で固形の炭化水素油および/又は室温で固形のロウ
成分(B):(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマー
成分(C):揮発性炭化水素油
成分(D):12−ヒドロキシステアリン酸
【0009】
上記成分(A)の含有量は、2〜20質量%であることが好ましい。
【0010】
上記成分(B)の含有量は、0.2〜7質量%であることが好ましい。
【0011】
上記成分(C)は、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)およびイソドデカンの群から選ばれる少なくとも1種の揮発性炭化水素油が好ましい。
【0012】
さらに、上記頭髪用油性組成物は、成分(E):ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリルおよびトリベヘン酸グリセリルの群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0013】
さらに、上記頭髪用油性組成物は、成分(F):HLB値が2以上8以下の非イオン性界面活性剤を含有することが好ましい。
【0014】
上記頭髪用油性組成物は、整髪剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の頭髪用油性組成物は、手の平上や頭髪上での延展性が良好で、優れた整髪力を発揮し、整髪後の髪にべたつきが生じないという効果を奏する。また、本発明の頭髪用油性組成物は、格段に優れた保存安定性を発揮するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の頭髪用油性組成物は、下記成分(A)〜成分(D)を含有し、実質的に水を含有しないことを特徴とする。
成分(A):室温で固形の炭化水素油および/又は室温で固形のロウ
成分(B):(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマー
成分(C):揮発性炭化水素油
成分(D):12−ヒドロキシステアリン酸
【0017】
上記成分(A)は、室温で固形の炭化水素油および/又は室温で固形のロウである。本明細書においては、上記「室温で固形の炭化水素油」を「成分(A1)」と称する場合がある。また、上記「室温で固形のロウ」を「成分(A2)」と称する場合がある。成分(A1)および成分(A2)の群より選ばれる成分(A)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0018】
成分(A1)である室温で固形の炭化水素油の具体例としては、例えば、セレシン、オゾケライト、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、高融点マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、ワセリン、高融点パラフィン、合成ワックスなどが挙げられる。成分(A1)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0019】
成分(A2)である室温で固形のロウの具体例としては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリン、モクロウなどが挙げられる。成分(A2)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0020】
好適な成分(A)としては、整髪力および保存安定性の観点から、高融点マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、高融点パラフィン、合成ワックス、カルナウバロウ、キャンデリラロウを用いることが好ましい。好適な成分(A)の中でも、高融点マイクロクリスタリンワックス、高融点パラフィン、カルナウバロウ、キャンデリラロウを用いることがより好ましい。
【0021】
本発明の頭髪用油性組成物中の成分(A)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、整髪力を付与する観点、さらには、保存安定性を付与する観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、手の平上および頭髪上での延展性の悪化を抑える観点、さらには、軽い使用感にする観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分(A)含有量は、本発明の頭髪用油性組成物中に配合される全ての成分(A)の含有量の合計量である。
【0022】
上記成分(B)は、(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマーである。(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマーとは、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第2巻,2014年,p.2181):NORBORNENE/TRIS(TRIMETHYLSILOXY)SILYLNORBORNENE COPOLYMERで表記される化合物である。
【0023】
本発明では、上記成分(B)を含有することにより、格段に優れた整髪保持力を発揮させることができる。さらには、従来の頭髪用油性組成物と対比して、上記成分(A)の総含有量を低減することができることから、べたつきのない軽い使用感で格段に優れた整髪保持力を発揮させることが可能となる。また、上記成分(A)と併用することにより、離漿による製剤の不安定化を抑制し、優れた保存安定性を発揮させることが可能となる。
【0024】
上記成分(B)は、市販品を用いることができる。成分(B)の市販品としては、例えば、NBN−30−ID(商品名,信越化学工業社製)などが挙げられる。
【0025】
本発明の頭髪用油性組成物中の成分(B)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、格段に優れた整髪保持力を付与する観点、さらには、保存安定性を発揮させる観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、べたつきを抑える観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
上記成分(C)は、揮発性炭化水素油である。本発明において上記成分(C)を含有させることにより、油性組成物であるにもかかわらず、油剤特有のべたつきを抑えて軽い使用感とすることができる。
【0027】
成分(C)の具体例としては、例えば、イソパラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソドデカンなどが挙げられる。成分(C)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。好適な成分(C)としては、延びの軽さの観点から、水添ポリイソブテン、水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)、イソドデカンを用いることが好ましい。
【0028】
上記成分(C)は、市販品を用いることができる。水添ポリイソブテンの市販品としては、例えば、マルカゾールR(商品名,丸善石油化学社製)、IPソルベント1620(商品名,出光興産社製)、パールリームEX(商品名,日油社製)などが挙げられる。水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン)の市販品としては、例えば、SMART5(商品名,日光ケミカルズ社製)などが挙げられる。イソドデカンの市販品としては、例えば、Creasil ID CG(商品名,CIT Sarl社製)などが挙げられる。
【0029】
本発明の頭髪用油性組成物中の成分(C)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、油性組成物とする観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、保存安定性の観点、さらには、整髪力を高める観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、85質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分(C)含有量は、本発明の頭髪用油性組成物中に配合される全ての成分(C)の含有量の合計量である。
【0030】
上記成分(D)は、12−ヒドロキシステアリン酸である。12−ヒドロキシステアリン酸とは、ステアリン酸の12位の炭素に不斉水酸基を有する飽和脂肪酸である。本発明において上記成分(D)を含有させることにより、手の平上および頭髪上での延展性を高める効果を発揮する。また、高温域での保存安定性に格段に優れた効果を発揮する。
【0031】
上記成分(D)は、市販品を用いることができる。成分(D)の市販品としては、例えば、ヒドロキシステアリン(商品名,川研ファインケミカル社製)、12−ヒドロキシステアリン酸(商品名,KFトレーディング社製)などが挙げられる。
【0032】
本発明の頭髪用油性組成物中の成分(D)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、保存安定性を付与する観点、頭髪用油性組成物100質量%中、0.2質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、延展性を高める観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、7質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
また、本発明の頭髪用油性組成物は、実質的に水を含有しない。これにより、格段に優れた整髪保持力を付与することが可能となる。なお、本発明における「実質的に水を含有しない」とは、「別途、水を含有させることはしない」という意味であり、各配合成分に含有される少量の水までを除外するものではない。
【0034】
さらに、本発明の頭髪用油性組成物には、保存安定性をさらに高める観点から、成分(E)として、ベヘン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリルおよびトリベヘン酸グリセリルの群から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。成分(E)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。好適な成分(E)としては、格段に優れた保存安定性を発揮する観点から、ベヘン酸グリセリルを用いることが好ましい。
【0035】
上記成分(E)は、市販品を用いることができる。ベヘン酸グリセリルの市販品としては、例えば、コンプリトール 888 CG(商品名,ガテフォッセ社製)などが挙げられる。ジベヘン酸グリセリルの市販品としては、例えば、コンプリトール E ATO(商品名,ガテフォッセ社製)などが挙げられる。トリベヘン酸グリセリルの市販品としては、例えば、コンプリトール 888 ATO(商品名,ガテフォッセ社製)などが挙げられる。また、本発明においては、上記成分(E)を含む混合原料を用いても良い。
【0036】
本発明の頭髪用油性組成物中の(E)成分の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、保存安定性をさらに高める観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、延展性を高める観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、12質量%以下であることが好ましく、10量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分(E)含有量は、本発明の頭髪用油性組成物中に配合される全ての成分(E)の含有量の合計量である。
【0037】
また、本発明の頭髪用油性組成物には、洗髪時の頭髪からの洗い落ちを高める観点から、成分(F)として、HLB値が2以上8以下の非イオン性界面活性剤を含有させることができる。
【0038】
上記成分(F)としては、例えば、脂肪酸ポリグリセリル、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンなどが挙げられる。成分(F)を構成する前記脂肪酸は、直鎖脂肪酸であっても、分岐脂肪酸であっても、所望の効果が発揮されるのであれば特に限定されないが、洗い落ちの観点から、分岐脂肪酸であることが好ましい。また、成分(F)は、洗い落ちをさらに高める観点から、上記要件に加え多鎖型であることが好ましい。具体的には、多鎖型分岐脂肪酸ポリグリセリル、多鎖型分岐脂肪酸ポリエチレングリコール、多鎖型分岐脂肪酸ポリオキシエチレングリセリル、多鎖型分岐脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンなどが挙げられる。
【0039】
好適な成分(F)の具体例としては、トリイソステアリン酸PEG−3グリセリル(HLB値:2)、ジイソステアリン酸PEG−2(HLB値:3)、ジイソステアリン酸PEG−3(HLB値:3)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2(HLB値:3)、トリイソステアリン酸PEG−4ソルビタン(HLB値:3)、トリイソステアリン酸PEG−5グリセリル(HLB値:3)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2(HLB値:4)、ジイソステアリン酸PEG−4(HLB値:4)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−3(HLB値:5)、ジイソステアリン酸PEG−5(HLB値:5)、トリイソステアリン酸PEG−10グリセリル(HLB値:5)、ジイソステアリン酸PEG−8(HLB値:6)、ジイソステアリン酸PEG−10グリセリル(HLB値:7)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−6(HLB値:8)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−10(HLB値:8)、ジイソステアリン酸PEG−12(HLB値:8)、トリイソステアリン酸PEG−20グリセリル(HLB値:8)などが挙げられる。成分(F)は、1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0040】
本発明の頭髪用油性組成物中の成分(F)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、洗髪時の頭髪からの洗い落ちの観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、整髪保持力および保存安定性の観点から、頭髪用油性組成物100質量%中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。なお、上記成分(F)含有量は、本発明の頭髪用油性組成物中に配合される全ての成分(F)の含有量の合計量である。
【0041】
なお、本発明の頭髪用油性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧料に用いられる成分を配合することができる。他成分としては、例えば、脂肪酸エステル油などの上記油性成分以外の油剤;上記以外の界面活性剤;多価アルコール、低級アルコール、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、着色剤、キレート剤、防腐・殺菌剤、保湿剤、清涼剤、植物抽出液、アミノ酸などの添加剤などが挙げられる。上記他成分は、適宜、その用途、目的に応じて配合することができる。
【0042】
また、本発明の頭髪用油性組成物の使用形態としては、格段に優れた整髪保持力を発揮することから、整髪剤として好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は特記しない限り「質量%」を表し、配合成分は全て純分に換算した。また、評価はすべて23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0044】
実施例および比較例では、下記成分を用いた。
【0045】
(成分(A))
高融点マイクロクリスタリンワックス:商品名「HI−MIC−1090」(日本精蝋社製)
高融点パラフィン:商品名「SP−0165」(日本精蝋社製)
キャンデリラロウ:商品名「精製キャンデリラワックス」(ミツバ貿易社製)
カルナウバロウ:商品名「TOWAX−1F8」(東亜化成社製)
【0046】
(成分(B))
(ノルボルネン/トリス(トリメチルシロキシ)シリルノルボルネン)コポリマー:商品名「NBN−30−ID」(信越化学工業社製)
【0047】
(成分(C))
水添ポリイソブテン:商品名「マルカゾールR」(丸善石油化学社製)
水添(テトラデセニル/メチルペンタデセン):商品名「SMART5」(日光ケミカルズ社製)
イソドデカン:商品名「Creasil ID CG」(CIT Sarl社製)
【0048】
(成分(D))
12−ヒドロキシステアリン酸:商品名「12−ヒドロキシステアリン酸」(KFトレーディング社製)
【0049】
(成分(E))
ベヘン酸グリセリル:商品名「コンプリトール 888 CG」(ガテフォッセ社製)
ジベヘン酸グリセリル:商品名「コンプリトール E ATO」(ガテフォッセ社製)
トリベヘン酸グリセリル:商品名「コンプリトール 888 ATO」(ガテフォッセ社製)
【0050】
(成分(F))
トリイソステアリン酸PEG−20グリセリル:商品名「NIKKOL TGI−20」(日本サーファクタント工業社製)
トリイソステアリン酸PEG−3グリセリル:商品名「EMALEX GWIS−303」(日本エマルジョン社製)
ジイソステアリン酸PEG−10グリセリル:商品名「EMALEX GWIS−210EX」(日本エマルジョン社製)
【0051】
(その他成分)
パルミチン酸エチルヘキシル:商品名「コーヨーPOC」(交洋ファインケミカル社製)
イソノナン酸イソノニル:商品名「サラコス99」(日清オイリオ社製)
トリメチルシロキシケイ酸:商品名「X−21−5595」(信越化学工業社製)
(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー:商品名「KP−550」(信越化学工業社製)
シクロペンタシロキサン:商品名「KF−995」(信越シリコーン社製)
ドデカメチルシクロヘキサシロキサン:「DOW CORNING TORAY DC 246」(東レ・ダウコーニング社製)
ステアリン酸イヌリン:商品名「レオパール ISL2」(千葉製粉社製)
パルミチン酸デキストリン:商品名「レオパール KS2」(千葉製粉社製)
【0052】
(各試料の調製)
表1〜表2に記した組成に従い、実施例1〜10および比較例1〜10の頭髪用油性組成物を調製し、下記評価試験に供した。結果をそれぞれ表1〜表2に併記する。
【0053】
(試験例1:手の平上での延展性評価)
各実施例および各比較例で得られた試料1gを手の平にのせた後、両手で擦り合わせ、擦り合わせときの延びを下記評価基準に従い官能評価した。
なお、評価は、官能評価パネル10名で行い、最も人数の多く得られた評価結果を各試料の成績とした。
【0054】
<手の平上での延展性の評価基準>
○(良好):ダマにならず均一に延び広がる
△(不十分):ややダマが発生するが延び広がる
×(不良):ダマが発生して均一に延び広がらない
【0055】
(試験例2:頭髪上での延展性評価)
ウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)を用い、各実施例および各比較例で得られた試料にて髪に馴染ませるように整髪を施してもらい、整髪時の頭髪上での延びを下記評価基準に従い官能評価した。
なお、評価は、上記同評価パネル10名で行い、最も人数の多く得られた評価結果を各試料の成績とした。
【0056】
<頭髪上での延展性の評価基準>
○(良好):ムラ付きせずに均一に延び広がる
△(不十分):ややムラ付きするが延び広がる
×(不良):ムラ付きして均一に延び広がらない
【0057】
(試験例3:整髪保持力の評価)
試験例2の評価後、頭髪の毛先の方から、握ってくせづける操作を10回行い、60分後のヘアスタイル形状を下記評価基準に従い目視評価した。
なお、評価は、上記同評価パネル10名で行い、最も人数の多く得られた評価結果を各試料の成績とした。
【0058】
<整髪保持力の評価基準>
○(良好):くっきりと握った形状で保持されている
△(不十分):握った形状が崩れ始めている
×(不良):握った形状が崩れて保持されていない
【0059】
(試験例4:べたつきの評価)
試験例3の評価後、ウィッグの頭髪のべたつきを下記評価基準に従い官能評価した。
なお、評価は、上記同評価パネル10名で行い、最も人数の多く得られた評価結果を各試料の成績とした。
【0060】
<べたつきの評価基準>
○(良好):べたつきが無い
△(不十分):ややべたつきがある
×(不良):べたつきがある
【0061】
(試験例5:洗い落ちの評価)
試験例4の評価後、整髪を施したウィッグの頭髪をシャンプー(商品名:ルシード シャンプー,マンダム社製)を用いて洗髪し、40℃のぬるま湯で1分間洗い流しを行い、タオルドライ後の頭髪を下記評価基準に従い官能評価した。
なお、評価は、上記同評価パネル10名で行い、最も人数の多く得られた評価結果を各試料の成績とした。
【0062】
<洗い落ちの評価基準>
○(良好):頭髪にべたつきがなく十分に洗い落ちている
△(不十分):頭髪にややべたつきがあるが洗い落ちている
×(不良):頭髪にべたつきがあり洗い落ちていない
【0063】
(試験例6:保存安定性の評価)
各実施例および各比較例で得られた試料を、30g容の透明ガラス容器に夫々充填し、40℃の恒温槽に1週間保管後の系の状態を目視観察して下記評価基準に従い目視評価した。
なお、評価は、上記同評価パネル10名で行い、最も人数の多く得られた評価結果を各試料の成績とした。
【0064】
<保存安定性の評価基準>
○(良好):製造直後と全く変化が認められない
△(不十分):僅かな分離が認められる
×(不良):明らかな分離が認められる
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1〜表2の結果から、各実施例の頭髪用油性組成物は、各比較例のものと対比して、手の平上や頭髪上での延展性が良好で、優れた整髪保持力を発揮し、整髪後の髪にべたつきが生じないという効果を発揮していることが分かる。また、各実施例の頭髪用油性組成物は、頭髪からの洗い落ちに優れた効果を発揮していることが分かる。さらに、各実施例の頭髪用油性組成物は、格段に優れた保存安定性を発揮していることが分かる。
【0068】
これに対し、本願発明の必須構成成分を充足しない比較例1〜2、比較例5および比較例8では、本願発明の効果を十分に奏し得ないものであることが分かる。特に、比較例1、比較例5および比較例8では、油剤がにじみ出して離漿した状態となり保存安定性が悪く、組成物の均一性が失われるために本願発明の効果を発揮できていないことが分かる。
【0069】
さらに、本願発明の必須成分である成分(B)を他の皮膜形成性成分へ置き換えた比較例3および比較例4、本願発明の必須成分である成分(C)を他の揮発性油剤へ置き換えた比較例6および比較例7、本願発明の必須成分である成分(D)を他のオイルゲル化剤へ置き換えた比較例9および比較例10においても、油剤がにじみ出して離漿した状態となり保存安定性が悪く、組成物の均一性が失われるために本願発明の効果を発揮できていないことが分かる。