特許第6351839号(P6351839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6351839測定範囲が拡張された統合型の流量測定プローブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351839
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】測定範囲が拡張された統合型の流量測定プローブ
(51)【国際特許分類】
   G01F 7/00 20060101AFI20180625BHJP
   G01F 1/00 20060101ALI20180625BHJP
   G01F 1/68 20060101ALI20180625BHJP
   G01F 1/46 20060101ALI20180625BHJP
   G01F 25/00 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   G01F7/00
   G01F1/00 V
   G01F1/68 B
   G01F1/46
   G01F25/00 Q
【請求項の数】30
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-517109(P2017-517109)
(86)(22)【出願日】2015年9月10日
(65)【公表番号】特表2017-530364(P2017-530364A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】US2015049342
(87)【国際公開番号】WO2016053589
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2017年5月25日
(31)【優先権主張番号】14/501,571
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500360688
【氏名又は名称】ディーテリヒ・スタンダード・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】メスナード,デイヴィッド,ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ストローム,グレゴリー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ケニヨン,ナサニエル,カーク
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0139348(US,A1)
【文献】 特許第3637278(JP,B2)
【文献】 特公昭60−3617(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その長さ方向に沿って配置された複数の上流開口および下流開口を有する平均ピトー管要素、および上流側と下流側との間に延存する少なくとも1つの開口を含み、前記少なくとも1つの開口が複数の上流側開口および下流側開口の少なくとも2つの間に位置する細長プローブと、
前記少なくとも1つの開口部内であって前記細長いプローブ内に配置された熱流測定センサとを含む流量測定プローブ。
【請求項2】
前記熱式流測定センサが上流側開口および下流側開口から隔離されている請求項1の流量測定プローブ。
【請求項3】
前記熱流測定センサは、単一チャンバ内に2つの熱式質量流量センサを備える請求項1の流量測定プローブ。
【請求項4】
前記上流側開口および下流側開口は、平均ピトー管を通過する流体の流れの上流側および下流側から穿孔された管により構成された請求項3の流量測定プローブ。
【請求項5】
前記熱流測定センサは、細長いチューブ内に配置された熱質量流量センサのアレイを含む請求項1の流量測定プローブ。
【請求項6】
前記平均ピトー管要素は、圧力伝達のために管を介して接続された別個の部分を含む請求項1の流量測定プローブ。
【請求項7】
前記熱流量測定センサは、細長いプローブの高さに沿って、その実質的に中心に配置される請求項1の流量測定プローブ。
【請求項8】
請求項1の流量測定プローブに接続されるプロセス変数トランスミッタを含み、
当該プロセス変数トランスミッタが、
熱式質量流量センサおよび差圧センサのそれぞれからの入力に基づいて流量の出力を決定するマイクロプロセッサと、
送信機の構成データを記憶するために前記マイクロプロセッサに接続されたメモリと、
流量の出力信号を出力する出力通信素子とを含む流量計測システム。
【請求項9】
前記マイクロプロセッサは、差圧が測定可能な差圧を超えたときに複数の上流側開口と下流側開口との間の差圧を用いて流量を決定し、前記プロセス変数送信機は、差圧が測定可能な差圧よりも小さいときに、熱式流量測定センサの読取値を用いて流量を決定するように構成される請求項8の流量計測システム。
【請求項10】
前記マイクロプロセッサは、差圧が測定可能な差圧を超えるときに複数の上流側開口部と下流側開口部との間の差圧に基づいて流量を算出することと、差圧が測定可能な差圧よりも小さいときに熱流量測定センサの読取値に基づいて流量を計算することとを切り換える請求項8の流量計測システム。
【請求項11】
前記マイクロプロセッサは、自動的に切り換えるように構成されている請求項10の流量計測システム。
【請求項12】
前記マイクロプロセッサは、選択的に切り替えるように構成されている請求項10の流量計測システム。
【請求項13】
前記マイクロプロセッサは、熱式質量流量センサからの読取値を使用してプロセス流体温度を決定する請求項8の流量計測システム。
【請求項14】
前記マイクロプロセッサは、流量が平均ピトー管および熱式質量流量センサのいずれの動作測定範囲内でもあるときに、平均ピトー管を用いて決定した流量に基づいて熱式質量流量センサを較正する請求項8の流量計測システム。
【請求項15】
差圧が少なくとも規定された測定閾値である場合に、流量測定プローブの細長いプローブ内の平均ピトー管の複数の上流側および下流側の各開口間の差圧を使用して流体の流量を測定するステップと、
前記差圧が前記規定された測定閾値未満である場合に、前記複数の上流側開口および下流側開口の少なくとも2つの間で、前記細長いプローブの上流側と下流側との間に延在する開口内に配置された熱式質量流量センサを用いて前記流体の流量を測定するステップとを含む流体流量測定方法。
【請求項16】
熱式質量流量センサを上流側および下流側の各開口から隔離することをさらに含む請求項15の方法。
【請求項17】
流量が平均ピトー管及び熱質量流量センサのいずれの動作測定の範囲内でもあるときに、上流側及び下流側の開口部によって決定された流量と熱式質量流量センサによって決定された流量とを比較するステップと、
流量が平均ピトー管及び熱質量流量センサのいずれの動作測定の範囲内でもあるときに平均ピトー管測定流量を用いて熱的質量流量センサを較正するステップとを含む請求項15の方法。
【請求項18】
アップセットイベントの後に前記熱式質量流量センサから流体を除去するステップをさらに含む請求項15の方法。
【請求項19】
前記熱式質量流量センサから流体を除去するステップが、当該熱式質量流量センサを通るガスをパージするステップを含む請求項18の方法。
【請求項20】
ガスをパージするステップが、熱式質量流量センサを通って空気または窒素をパージするステップを含む請求項19の方法。
【請求項21】
アップセット後に前記上流側開口部および下流側開口部からデブリを除去することをさらに含む請求項15の方法。
【請求項22】
前記デブリを除去する工程が、前記上流側および下流側の開口部を通ってガスをパージする工程を含む請求項21の方法。
【請求項23】
前記熱式質量流量センサを使用してプロセス流体温度を測定することをさらに含む請求項15の方法。
【請求項24】
前記上流側および下流側の開口部および前記熱式質量流量センサは、前記平均ピトー管の単一の細長いプローブ内に配置される請求項15の方法。
【請求項25】
前記流量の計算結果を統合して、前記平均ピトー管および熱式質量流量センサの各動作測定の流量範囲をカバーする流量範囲の流量を示す単一の信号を形成することをさらに含む請求項15の方法。
【請求項26】
前記差圧が測定可能な差圧を超えた場合に前記複数の上流側開口部と下流側開口部との差圧に基づいて流量を算出することと、前記差圧が測定可能な差圧を下回ったときに前記熱式流量センサの読取値に基づいて流量を算出することとを切り換えることを含む請求項15の方法。
【請求項27】
前記切り換えが、計算された各流量を自動的に切り替えることを含む請求項26の方法。
【請求項28】
前記切り換えるステップは、計算された各流量を選択的に切り替えるステップを含む請求項26の方法。
【請求項29】
流量測定プローブの平均ピトー管要素および熱質量流量センサを監視するステップと、
平均ピトー管要素および熱質量流量センサ要素のうちの1つが故障したときに警告を発するステップとを含む請求項15の方法。
【請求項30】
前記熱流測定センサが2つのセンサを備える請求項2に記載の流量測定プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業プロセスにおけるプロセス流体の流量測定に係り、特に、平均ピトー管および熱式質量センサによる流量測定に関する。
【背景技術】
【0002】
フレアガスの流量測定は、質量バランス、省エネルギ、排出ガスモニタリングおよび規制上の考慮事項を含む多くの理由から重要である。例えば、天然ガスは一般に石油鉱床と関連している。石油の抽出中に石油鉱床からガスが放出することがある。天然ガスを放出するために使用されるシステムは、一般的に比較的低い流速(パージ流状態)で動作するが、比較的高い流速(アップセット状態)で予期せぬ状態を経験することもある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Rosemount Annubar流量計シリーズ (http://www2.emersonprocess.com/ja-jp/brands/rosemount/flow/dp-flow-products/annubar-flowmeters/pages/index.aspx)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平均ピトー管プライマリエレメント(APT:例えば、Emerson Process Managementから入手可能なAnnubar(登録商標)APT)は、アップセット状態においては測定可能な差圧(DP)信号を生成できない可能性がある(非特許文献1)。熱式質量流量センサは、パージフロー条件における流量測定に使用され、アップセット状態の間は正確な流量測定値を生成することができない。流量測定は、超音波機器を使用して行うことができるが、そのような機器は一般的に高価である。
【0005】
天然ガスは、環境への影響を軽減し、労働者の安全を促進するために、その抽出場所で燃焼されることがよくある。フレアシステムでは、推定で年間1,500億立方メートルのガスを燃焼している。石油およびガスの事業者は、毎年発生するガスの量を監視して報告することが求められている。フレア計量アプリケーションは、フレアされたガスの量を正確に報告するために、フレアされるガスの質量流量で±5%の誤差を目標としている。
上記の議論は、一般的な背景情報のために提供されただけであり、請求の範囲の主題の範囲を決定する目的で使用されることを意図しない。請求の範囲の主題は、背景で言及した任意の又は全ての仮題を解決する実施形態に限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により流量測定プローブが提供される。流量測定プローブは、複数の上流側開口および下流側開口を有する平均ピトー管を有する細長いプローブを含む。熱式流流量測定センサが細長いプローブに結合される。
【0007】
本発明によりプロセスにおける流体流量を測定する方法も提供される。この方法は、平均ピトー管の細長いプローブの上流側および下流側の開口部における流体の差圧測定を含む。流量に関するデータは熱式流量センサを使用することによっても収集される。出力は差圧および熱流量に基づいて提供される。プロセス変数トランスミッタも提供される。
【0008】
この要約は、以下の「詳細な説明」でさらに説明する概念の選択を簡略化した形で紹介するために提供される。要約は、主張された主題の重要な特徴または必須の特徴を特定することを意図するものではなく、主張された主題の範囲を決定する助けとして使用されることも意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態に係る典型的な天然ガスフレアシステムの図である。
図2A】熱式質量流量センサ回路の概略図である。
図2B】熱式質量流量センサの平面図である。
図3】本開示の一実施形態による平均ピトー管の正面図である。
図4図3の4-4線に沿った断面である。
図5図3の5-5線に沿った断面である。
図6】本開示の一実施形態によるガス流量測定システムの斜視図である。
図7】本開示の別の実施形態による送信機のブロック図である。
図8】本開示の一実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、代表的な天然ガスフレアシステムを示している。フレアシステム100は、抽出場所から廃棄地点に排出ガスを導くためのガス収集ヘッダ102、廃ガス流から大部分の凝縮液を除去するためノックアウトドラム104、天然ガスのフレアスタックからの逆流を防ぐ液体シール106、質量バランスおよび規制を考慮して廃ガス流の質量流量を測定する流量測定システム108、フレアスタック114への空気の逆流を防止するためのシールバリア110および廃ガスの完全燃焼を確実にするためのフレアチップ112を含む。
【0011】
シールバリア110およびフレアチップ112はスタック114内にある。スタック114は、移行ポイント118においてフレアスタック114へ移行する前に、液体シール106からフレア流量測定システム108を通って延びるパイプシステム116から移行する。一実施形態では、フレアスタック114は実質的に垂直である。後述する流量測定システムは、システム100のような天然ガスフレアシステムと共に使用するのに適している。あるいは、この装置は極端なターンダウンを必要とする液体または気体の流量測定に適用できる。
【0012】
天然ガス処理システムのようなガスシステムは、一般的に、通常動作とアップセット動作の2つのモードで動作する。通常動作では、フレアシステムなどのシステムは、パージフローとして知られる低流量で排ガスを常に放出する。パージフロー動作は、通常、大気圧をわずかに上回る圧力(例えば、0.5ポンド/平方インチゲージ(psig))であり、流速は典型的には毎秒20フィートより低い。
【0013】
周囲温度はパージフローに何らかの影響を与える。石油生産では、アップセットイベントと呼ばれる予期せぬ事象により大量の廃棄ガスが高い流量、高い圧力および高い温度で放出される可能性がある。アップセット動作では、廃ガスの圧力は60psigを超え、温度は500°Fを超え、流速は毎秒600フィートに達する可能性がある。
【0014】
平均ピトー管のような流量測定装置は、頑丈な構造、確かな精度、迅速な時間応答性および低い永久圧力損失のためにアップセット状態での測定に使用できる。しかしながら、平均ピトー管要素はフレアスタックの流れの内に比較的小さな制限しか与えない。したがって、パージフロー下での通常の動作中に正確な流量測定を可能にするのに十分な差圧信号を誘起することが困難である。低流量運転はほぼ一定であるため、通常運転であっても質量流量の累積は有意であり、無視することはできない。
【0015】
熱式質量流量計は、パージフローなどの通常動作に対する信頼性の高い流量測定オプションとして使用できる。典型的な熱式質量流量センサ200のブロック図が図2Aに示され、平面図が図2B示されている。熱式質量流量計センサ200は、熱対流又は分散の原理で動作し、フロー内に露出される2つの温度センサ202,206を含む。温度センサ202のうちの1つには、一般的に抵抗温度検出器203および抵抗加熱要素204を使用する。
【0016】
第2の温度センサ206は、抵抗温度検出器207を使用してフローの周囲温度を測定する基準センサであり、抵抗加熱要素204の質量を平衡させるための質量平衡化要素205を有する。第1のセンサ202の場合、加熱要素を通過するフローは、次式(1)で表されるフーリエの法則によって計算されるように、加熱要素から対流によってエネルギを奪う。
【0017】
q=hc A dT …(1)
【0018】
ここで、
q =単位時間当たりの熱伝達
A =伝熱面の面積
hc =対流熱伝達係数
dT =熱伝達面と流体との温度差
である。
【0019】
熱式質量流量計は、通常、流量計から除去されたエネルギを2つの方法のいずれかで測定する。第1方法は、ヒータ素子204を駆動する定電流を使用する。環境センサ206と加熱されたセンサ202との間の温度差は、機器200における熱エネルギ損失の尺度である。2番目の方法は一定温度を使用する。フィードバックループは、周囲センサ206と加熱されたセンサ204との間の一定温度差を維持するように、加熱センサ202に供給する電流を制御する。一定の温度差を維持するために必要な電流は、器具200内における流れによる熱エネルギの損失に比例する。
【0020】
図2Aは、熱式質量流量センサ200の概略図である。抵抗温度検出器207,203は、検出器207,203間の温度差dTを検出する差動温度モニタ250に接続されている。抵抗加熱要素は、以下に詳述する質量流量エレクトロニクス604によって決定される電流を供給する電流源252に接続される。熱式質量流量エレクトロニクスは、熱式質量流量センサ200の定電流、定温度の動作モードにおいて、電流源252によって供給される電流を監視および制御する。
【0021】
熱式質量流量計は、比較的定常状態での低流量条件下における流量の測定に好適である。したがって、パージフローを正確に測定することができる。しかし、不安定な状態では熱式質量流量計はほとんど機能しない。熱式質量流量計は、液体が混入している状況では一般的に正確ではない。逆流防止装置106のような逆流防止装置から排出された流体および廃ガス流内の液体炭化水素の存在は、アップセット状態の間の熱質量に基づく流量測定精度に悪影響を与える。異なるガスで動作するための流量補償係数は十分に理解されておらず、疑問の余地がある。
【0022】
熱式質量流量計は、キャリブレーションの際に使用を中止する必要がある。しかしながら、ガス流測定装置のような安全関連システムが使用できなくなることは一般的に受け容れられない。熱式質量測定システムは、ガス組成の変動に対して著しい感度を有し、そのような変動はアップセット状態では一般的である。アップセット条件はまた、周囲の温度条件を変化させる傾向があり、熱式質量流量計の信頼性の問題を増大させる。
【0023】
本発明の一実施形態に係る流量測定プローブ300を図3に示す。流量測定プローブ300は、相互に対向してフロー方向に整列する複数の上流側高圧開口部(例えば、衝撃管)および下流側低圧開口部(例えば衝突管)303を有するピトー管要素302ならびに測定センサ304を含む。平均ピトー管要素302および熱式質量流量センサ304は、細長いプローブ本体306内に配置される。フローがプローブ本体306を通過することで、上流側および下流側の各開口部間に差圧が生じる。
【0024】
図3に示したように、一実施形態では、平均ピトー管要素302および熱式流測定センサ304は、長手方向軸308を有する細長いプローブ本体306内に配置される。センサ304は、本体306を通って延在し、流体の流れを可能にするキャビティ311内に配置される。平均ピトー管要素302の複数の上流側開口部303は、長手軸308の方向に細長いプローブ306の長さ方向に沿って分布している。これにより、配管の横断面の圧力の平均をインパルス配管で発生させることができる。一実施形態では、熱式流量測定センサ304は、細長いプローブ306のほぼ中心位置、すなわち流速を測定される流体が流れる導管の対向する各端壁からほぼ等距離の位置に配置される。一実施形態では、平均ピトー管要素302の開口部303は、長手軸308に沿った細長いプローブ306の長さ方向に沿った熱式質量流量センサ304の両側にある。
【0025】
熱式質量流量センサ304では、2つのセンサ素子202,206(図2参照)が、一般に、それらが設置されている導管(例えば、パイプ)の断面内で配向されている。センサ素子202,206は、図4に示すようにセンサ304のキャビティ311内に配置される。電気配線も有するセンサ素子202,206は、図3に示すボア310内に取り付けられている。平均ピトー管要素302の開口部303に関連する内部平均ピトー管インパルス管309(図4および図5)は、一実施形態では、熱式質量流量センサ304に跨って配置され、流量測定値の平均のための平均ピトー管要素302の複数の個々の開口部303を含む。一実施形態では、平均ピトー管要素302は、熱式質量流量センサ304において圧力連通のための管を介して接続された別個の部分を含む。
【0026】
一実施形態では、細長いプローブ306は、図3に示すような高さ312を有する。この高さ312は、流量測定プローブ300が配置される導管の直径に基づいて決定される。センサ304のような熱式質量流量センサは、精度を保証するために、典型的には1つまたは少数の測定センサを有するので、流れ内での各センサの位置が重要となる。導管において、熱式質量流量センサの位置が導管の端部に近すぎる場合、導管内での流体のフロープロファイルからは、正確な流量の読み取りが不可能になるかもしれない。
【0027】
図3に示したように、一実施形態における熱式質量流量センサ304の位置は、その高さ312に沿って流量測定プローブ300の細長いプローブ306の中央またはその近傍にある。この配置は、流量測定プローブ300が導管内に設置されたとき、追加の測定および適切な位置決めの決定を必要とすることなく、正確な測定のために熱式質量流量センサ304が導管の中心に配置されるように熱式質量流量センサ304を位置決めする。
【0028】
別の実施形態では、熱式質量流量センサ304は、キャビティ311などの単一のキャビティ内に2つの熱式質量流量センサまたは熱式質量流量センサアレイを含んだ熱式質量流量センサのペアまたはアレイであり、熱式質量流量センサのペアまたはアレイの結果を平均化することで、パージフロー状態の間に流量を潜在的により正確に測定することができる。熱式質量流量センサ304またはそのペア若しくはアレイは、一実施形態では平均ピトー管要素302の上流側開口303および下流側開口303から隔離されている。
【0029】
図4および図5にさらに詳細に示すように、平均ピトー管要素302の上流側および下流側の各開口部303は、クロス穿孔によって形成することができる。一実施形態では、プラグ402は、流体流と整列していないクロスドリル加工されたチューブに溶接され、フローストリームとの適切な衝撃管の整列を保証する。図4および図5は、それぞれ図3の4-4線および5-5線に沿った断面を示し、図4は、熱式質量流量センサ304からの熱配線のための導管310も示している。一実施形態では、上流側および下流側の各開口部303およびそれらに関連するインパルス管は、熱式質量流量センサ304のチャンバに跨っている。
【0030】
本開示の一実施形態では、図6に示すように、ガス流量測定システム600が設けられている。システム600は、本明細書に記載された流量測定プローブ300などの流量測定プローブを備え、熱式質量流量センサ304と組み合わされた要素302を含む。熱式質量流量センサ304は、システム600の通常のパージフロー状態で正確な測定を提供し、平均ピトー管要素302は、システム600のアップセット状態での正確な流量測定値を提供する。一実施形態では、全ピッチ範囲をカバーする平均ピトー管要素302および熱式質量流量センサ304の出力は、流量を示す単一の信号に統合される。一実施形態では、このような統合はセンサ304に接続された熱質量エレクトロニクス604およびピトー管要素302に接続された差圧測定システム電子機器606からフロー情報を受信するように接続された送信機602によって達成される。あるいは端子ブロックおよび電子回路スタックは2つのセンサの出力を管理するために使用しても良く、一実施形態では、取り付けの複雑さを緩和するために接続ヘッドに含まれる。
【0031】
単一の流量出力を得るために、一実施形態では、センサ304および平均ピトー管要素302の動作情報が使用される。平均ピトー管要素によれば、典型的には高い流速域で流量を決定する際に、熱式質量センサよりも高い精度を得られる。例示的な実施形態では、平均ピトー管要素302により生じる差圧は、これが特定の差圧を超えたときにシステム内の流量を計算するために、例えばプロセス可変トランスミッタ(後述)により使用される。
【0032】
熱式質量流量センサ304からの読取り値は、例えば差圧が測定可能な特定の差圧よりも小さいときに、流量を計算するためのプロセス可変トランスミッタによって使用される。本実施形態では、特定の差圧が検出されると、流量測定システムは平均ピトー管要素302を使用して流量を決定する。指定された差圧が検出されない場合のみ、熱式質量流量センサ304によって流量が決定される。平均ピトー管要素302が流速を測定するために使用されるとき、熱式質量流量センサ304を使用してプロセス流体の温度を測定することができる。
【0033】
一実施形態の送信機ソフトウェアを使用して、平均ピトー管要素および熱式質量流量センサからの2つのセンサ信号を統合し、ユーザに単一の流量出力を提供することができる。これは、1つの実施形態では、ハウジング604内の熱式質量エレクトロニクスおよび差圧測定用絶縁マニホールド607が出力する信号を、2線式の制御ループおよび/または全流量範囲をカバーするデジタル出力によって提供される単相の4-20mAの出力を供給するプロセス可変トランスミッタ602に接続することで実現される。
【0034】
図6に示すように、流量測定プローブ300は、導管(例えば、パイプ)608内に配置される。この構成では、熱式質量流量センサ304が細長い管306の高さに沿って、その中心に配置されているとき、流量測定プローブ300を導管608内に配置することにより、熱質量流量センサ304は、測定または他の配置決定なしに導管608内の流れの所望の位置に配置される。
【0035】
図7を参照してさらに説明するプロセス変数トランスミッタ602は、熱質量エレクトロニクス出力と差圧測定出力とを統合し、全流量範囲で流量を示す単一の信号を形成するアルゴリズムを使用することができる。プロセス変数送信機602は、指示された流量を提供するために、平均ピトー管要素302および熱式質量流量センサ304のいずれのセンサが使用されているかに関する情報も提供することができる。ハウジング604は、熱式質量流量センサ304から導管310を通ってハウジング604まで通る熱配線612用の端子ブロック614(図7参照)を有する。端子ブロック614に基づいて熱流エレクトロニクス616が熱流を決定し、信号が配線618に沿ってプロセス可変トランスミッタ602に送られる。
【0036】
一実施形態では、平均ピトー管要素302への圧力トランスミッタの直接の取り付けは、センサ304のような熱式質量流量センサを平均ピトー管要素302のフランジ付き反対側支持部610に取り付けることによって容易に行える。このフランジ付きの反対側支持部610は、本実施形態では、電子機器604のような熱質量流量エレクトロニクスの代わりの取り付け位置である。
【0037】
図7は、送信機602および流量測定プローブ300の一実施形態のシステムブロック図である。送信機602は、ループ通信回路702、圧力センサ704、熱質量流エレクトロニクス604、測定回路708およびコントローラ710を含む。ループ通信回路702はプロセス制御ループ750に接続可能であり、上述の流量測定プローブ300などの流量測定プローブの複数のセンサの出力に依存する統合流量に基づいて、パイプ608などのパイプ内のガスの流量に関連するプロセス変数出力を通信するように構成される。ループ通信回路702は、有線通信リンクおよび/または無線通信リンクを介して通信するための回路を含むことができる。このような通信は、有線プロトコルおよび無線プロトコルの両方を含む、上述のプロトコルのような任意の適切なプロセス産業の標準プロトコルに準拠することができる。
【0038】
典型的には、トランスミッタ602のようなフィールド機器は、処理施設の遠隔地に配置され、検知されたプロセス変数を中央に位置する制御室に返送する。プロセス変数を伝送するために、有線通信および無線通信の両方を含む様々な技術を使用することができる。1つの一般的な有線通信技術は、送信機602に情報を搬送すると共に電力を提供するために、1対のワイヤを使用する2線式プロセス制御ループ750を使用する。情報を伝送するための1つの技法は、プロセス制御ループ750を通る電流レベルを4mA〜20mAの範囲に制御することによるものである。
【0039】
4?20mAの範囲内の電流値は、プロセス変数の対応する値にマップすることができる。デジタル通信プロトコルの例には、HART(登録商標)(標準の4-20mAアナログ信号に重畳されたデジタル通信信号からなるハイブリッド物理層)、FOUNDATIONTM Fieldbus(1992年にInstrument Society of Americaによって公布された全デジタル通信プロトコル)、Profibus通信プロトコルなどを含む。IEC 62591規格に従ったWireless HART(登録商標)を含む無線周波数通信技術のような無線プロセス制御ループプロトコルも実装することができる。図7のプロセス制御ループ750は、送信機602とユーザインタフェースとの間の通信接続の有線および無線の実施形態のいずれかまたは両方を表す。
【0040】
圧力センサ704は、インパルス配管309を介して平均ピトー管要素302に結合された圧力入力ポートを含む。センサ704は、加えられた圧力の変化に応答して変化する電気的特性を有する任意の装置であり得る。例えば、センサ704は入力ポート間に印加される差圧に応じて静電容量が変化する圧力センサとすることができる。熱式質量流量エレクトロニクス604は、熱式質量流量センサ304からデータを受信する。
【0041】
測定回路708は、センサ704および電子機器604に接続され、各信号に基づいてコントローラ710へセンサ出力を提供するように構成される。測定回路304は、差圧に関連する適切な信号を提供することができる任意の電子回路であり得る。例えば、測定回路はアナログ/デジタル変換器、容量/デジタル変換器または他の適切な回路であってもよい。
【0042】
コントローラ710は、測定回路708およびループ通信回路702に接続される。コントローラ710は、測定回路708から提供されるセンサ出力に関連するプロセス変数出力をループ通信回路702に提供するように構成される。コントローラ710は、プログラマブルゲートアレイデバイス、マイクロプロセッサまたは任意の他の適切なデバイスであってもよい。ループ通信回路702、測定回路708およびコントローラ710は、個別のモジュールであるものとして説明したが、それらは特定用途向け集積回路(ASIC)上などで組み合わせることができると考えられる。例示的な実施形態では、コントローラ710および/または測定回路708を構成するために使用されるコンピュータ可読命令やパラメータ値などを記憶するメモリ707が、コントローラ710に接続される。いくつかのそのような実施形態では、平均ピトー管要素302および熱式質量流量センサ304などのセンサの構成情報がメモリ707に格納される。
【0043】
一実施形態では、コントローラ710は、差圧が少なくとも規定の測定閾値である場合には、差圧センサ704からの入力を使用してプロセスフローの流量を決定し、差圧が所定の測定閾値未満である場合には、熱式質量流量エレクトロニクス604によって決定された質量流量センサからの入力に基づいて流量を決定するように構成されている。熱式質量流量センサおよび差圧センサからの入力は、細長いプローブ内の平均ピトー管要素と一体化された熱式質量流量センサを有する、上述の流量測定プローブ300などの流量測定プローブによって提供される。
【0044】
一実施形態では、プロセス変数送信機は、差圧が測定可能な差圧を超えるときに複数の上流側開口部と下流側開口部との間の差圧に基づいて流量を計算し、差圧が測定可能な差圧よりも小さいときに熱の読取値に基づいて流量を計算する流量測定センサを使用するように構成されている。この切り替えは、特定の閾値が満たされたときのように自動的であってもよいし、ユーザなどによって選択可能であってもよい。
【0045】
さらに、流量を正確には計算できないものの、一方のセンサが利用できない場合には他方のセンサからの測定値を使用して流量計算を行うことができる。送信機700などのプロセス変数送信機は、プローブ300のような流量測定プローブの平均ピトー管要素および熱式質量流量測定センサを監視し、一方の要素が故障した場合または故障を示す読取値を提供し始める場合、プロセス変数送信機は、故障または差し迫った故障の警告を提供することができる。
【0046】
プロセスにおけて流体流量を測定する方法800が、図8にフローチャート形式で示されている。方法800は、一実施形態では、差圧が少なくとも規定の測定閾値である場合に、第1のセンサである平均ピトー管を用いて流体の流量を測定するブロック802の工程と、差圧が規定の測定閾値未満である場合に、第2のセンサである平均ピトー管を用いて流体の流量を測定するブロック804の工程とを含む。一実施形態における第1のセンサによる測定は、平均ピトー管に取り付けられた圧力センサで測定し、第2のセンサによる測定は、平均ピトー管内の熱式質量流量センサで測定することを含む。熱式質量流量センサは周囲温度に敏感なので、一実施形態では、第2のセンサは伝導による信号損失を軽減するために第1のセンサから絶縁される。
【0047】
平均ピトー管要素302のような差圧フロー技術の時間応答性は、センサ304のような熱式質量流量測定技術の時間応答性よりも優れている。したがって、一実施形態では、平均ピトー管要素302からの出力は、測定可能な大きさの差圧が存在する場合に使用される。平均ピトー管要素302および熱式質量流量センサ304のいずれもが流量測定を行うことができる測定範囲の重なりの間、各センサの出力を比較することで、熱式質量流量センサを停止時間なしに較正することができる。
【0048】
伝統的な熱式質量流量計は、較正再認証のためにサービスから取り除かれることが時々あるので、ダウンタイムなしに較正する能力は、厳しい稼働条件を有するフレアフロー測定システムのような安全関連システムに適している。一実施形態における比較は、平均ピトー管要素および熱式質量流量センサのそれぞれの流量が動作測定の範囲内にあるときに平均ピトー管302および熱式質量流量センサ304の出力を比較し、平均ピトー管の読み取り値を使用して質量流量センサをキャリブレーションするように構成する。上述の比較は、一実施形態では診断方法であり、不良なセンサを検出するために使用されてもよい。
【0049】
アップセット現象は、破片、炭化水素などの混入した液体、変化したガス組成ならびに流速や周囲温度の変化などの不純成分をフローストリームに導入することが多い。逆流防止装置から移動した熱式質量流量センサ内の流体およびフロー内の液体炭化水素の存在は、熱式質量流量センサの性能に悪影響を及ぼすことがある。破片は、APTセンサのインパクトチューブ開口部またはインパクトチューブ内に留めることができる。これらの各発生は、APTおよび熱式質量流量センサの一方または両方の動作に影響を及ぼし得る。様々な実施形態において、流体はアップセット現象後に熱式質量流量センサから除去される。様々な実施形態において、破片は、アップセット事象後にAPTセンサの衝撃管開口部および/または衝撃管から除去される。これらの操作の各々は、例えば、適切なセンサを通して空気または窒素のような気体をパージすることによって行うことができる。
【0050】
本明細書に記載されている流量測定システムは、一実施形態では、図1の遷移部118のような遷移部のすぐ上流に位置し、図1のスタック114のような垂直スタックに位置する。この場所は、サービス担当者が容易にアクセスできるようにする。フレアは一般に遠隔地に位置し、パイプの長い部分でシステムの残りの部分に接続される。図2−8を参照して説明したフレアフロー測定システムでは、これらの長いセクションを設けることで、流体がその中を十分に長い間直進することを可能とし、測定ポイントでの安定したフロープロファイルを保証できる。要素は上記の別個の実施形態として図示または説明されているが、各実施形態の一部は上記の他の実施形態のすべてまたは一部と組み合わされてもよい
【0051】
さらに、本明細書では導管内の天然ガスおよびフレアシステムにおけるフレアガスの流量測定を例にしたが、天然ガス以外のプロセス流体の流れは、本明細書に記載の構造および方法を利用して、本開示の範囲から逸脱することなく実施できる。本発明の主題は、構造的特徴および/または方法論的行為に特有の表現で説明されているが、添付の請求の範囲に定義された主題は、必ずしも上記の特定の特徴または行為に限定されないことを理解されたい。むしろ、上述の特有の特徴および動作は、各請求項に係る発明を実現するための例示的な形態として開示されている。
【符号の説明】
【0052】
300…流量測定プローブ,302…平均ピトー管,303…上流側および下流側の開口部,304…熱式質量流量センサ,306…細長いプローブ本体,602…送信機,750…2線式プロセス制御ループ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8