(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351840
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ソリッドモデルの積層造形用のサポート材構造
(51)【国際特許分類】
G06F 17/50 20060101AFI20180625BHJP
G06T 17/10 20060101ALI20180625BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20180625BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20180625BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20180625BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20180625BHJP
【FI】
G06F17/50 608A
G06F17/50 622B
G06F17/50 622C
G06F17/50 626G
G06T17/10
B29C64/40
B33Y50/00
B33Y80/00
B33Y10/00
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-517208(P2017-517208)
(86)(22)【出願日】2015年6月11日
(65)【公表番号】特表2017-523540(P2017-523540A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】US2015035230
(87)【国際公開番号】WO2015191798
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2017年2月13日
(31)【優先権主張番号】62/011,932
(32)【優先日】2014年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/554,483
(32)【優先日】2014年11月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504438288
【氏名又は名称】シーメンス プロダクト ライフサイクル マネージメント ソフトウェアー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Siemens Product Lifecycle Management Software Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マーク アール. バーホップ
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィット メイドレイ
(72)【発明者】
【氏名】スラジ ムスヴァティ
(72)【発明者】
【氏名】エルハン アリソイ
(72)【発明者】
【氏名】エドワード スラヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ハサン バンク
【審査官】
平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0124151(US,A1)
【文献】
特開2002−073705(JP,A)
【文献】
特開2003−344042(JP,A)
【文献】
特開2003−136605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/50
G06T 17/10
B29C 64/40
B33Y 10/00
B33Y 50/00
B33Y 80/00
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理システム(100)により実施される方法であって、以下のステップを含む、すなわち、
・複数の境界表現(b−rep)表面(620)を含む、製造すべき物理的実体に関するソリッドモデル(600)を受け取るステップ(305)と、
・可能性のあるサポート材ロケーション(622)に対するポイントサンプル(624)を生成するために、前記境界表現表面(620)を分析するステップ(310)と、
・サポート材ロケーション(622)を最適化するステップと、但し、当該最適化するステップは、サポート材ロケーション(622)を生成するために、前記ポイントサンプル(624)の少なくともいくつかに対応する、前記ソリッドモデル上の複数のポイントをクラスタリングするステップ(315)を含み、当該クラスタリングするステップは、可能性のある線状のサポート材のための1つの線上にある、生成された複数の前記ポイントサンプル(624)を含むクラスタを同定し、これにより、同定されたクラスタの複数の同定された前記ポイントサンプル(624)のうちのただ1つのみが支柱サポート材(604)のための1つのサポート材ロケーション(622)として用いられる、ステップを含み、
・前記サポート材ロケーション(622)のところで本来のソリッドモデル(600)とつながる支柱サポート材(604)を、前記ソリッドモデルに生成するステップ(320)と、
・前記支柱サポート材(604)を含め、前記ソリッドモデル(600)を記憶するステップ(330)と
を含む、
データ処理システム(100)により実施される方法。
【請求項2】
前記データ処理システム(100)はユーザとのインタラクションも行い、前記ソリッドモデル(600)における前記支柱サポート材を編集する(325)、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記データ処理システム(100)は、前記ソリッドモデル(600)における変更に従い、前記支柱サポート材(604)の自動的な調節も行う、
請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記支柱サポート材(604)を、製造すべき前記物理的実体の表面を擦傷または損傷することなく、製造すべき前記物理的実体から簡単に除去できるよう、前記支柱サポート材(604)は、前記サポート材ロケーション(622)のところで前記ソリッドモデル(600)と最小限の接触を有する形状である、
請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ソリッドモデル(600)およびコンタクトビルドプレート(610)との衝突を最小限に抑えるように設計されたロケーションおよび角度で、前記支柱サポート材(604)を生成する、
請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記データ処理システムは、前記物理的実体を作成するため、3Dプリンタと通信することにより、前記ソリッドモデル(600)のプリントも行う(335)、
請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記支柱サポート材(604)のうちの少なくとも1つは、第1の錐体と円柱と第2の錐体の組み合わせとして形成されている、
請求項1記載の方法。
【請求項8】
データ処理システム(100)であって、該データ処理システム(100)は、プロセッサ(102)とアクセス可能メモリ(108)とを含み、特に以下のように構成されている、すなわち、
・複数の境界表現(b−rep)表面(620)を含む、製造すべき物理的実体に関するソリッドモデル(600)を受け取り(305)、
・可能性のあるサポート材ロケーション(622)に対するポイントサンプル(624)を生成するために、前記境界表現表面(620)を分析し(310)、
・サポート材ロケーション(622)を最適化し、但し、当該最適化は、サポート材ロケーション(622)を生成するために、前記ポイントサンプル(624)の少なくともいくつかに対応する、前記ソリッドモデル上の複数のポイントをクラスタリングすること(315)を含み、当該クラスタリングは、可能性のある線状のサポート材のための1つの線上にある、生成された複数の前記ポイントサンプル(624)を含むクラスタを同定し、これにより、同定されたクラスタの複数の同定された前記ポイントサンプル(624)のうちのただ1つのみが支柱サポート材(604)のための1つのサポート材ロケーション(622)として用いられる、ことを含み、
・前記サポート材ロケーション(622)のところで本来のソリッドモデル(600)とつながる支柱サポート材(604)を、前記ソリッドモデルに生成し(320)、
・前記支柱サポート材(604)を含め、前記ソリッドモデル(600)を記憶する(330)、
データ処理システム(100)。
【請求項9】
前記データ処理システム(100)はユーザとのインタラクションも行い、前記ソリッドモデル(600)における前記支柱サポート材を編集する(325)、
請求項8記載のデータ処理システム。
【請求項10】
前記データ処理システム(100)は、前記ソリッドモデル(600)における変更に従い、前記支柱サポート材(604)の自動的な調節も行う、
請求項8記載のデータ処理システム。
【請求項11】
前記支柱サポート材(604)を、製造すべき前記物理的実体の表面を擦傷または損傷することなく、製造すべき前記物理的実体から簡単に除去できるよう、前記支柱サポート材(604)は、前記サポート材ロケーション(622)のところで前記ソリッドモデル(600)と最小限の接触を有する形状である、
請求項8記載のデータ処理システム。
【請求項12】
前記ソリッドモデル(600)およびコンタクトビルドプレート(610)との衝突を最小限に抑えるように設計されたロケーションおよび角度で、前記支柱サポート材(604)を生成する、
請求項8記載のデータ処理システム。
【請求項13】
前記データ処理システムは、前記物理的実体を作成するため、3Dプリンタと通信することにより、前記ソリッドモデル(600)のプリントも行う(335)、
請求項8記載のデータ処理システム。
【請求項14】
前記支柱サポート材(604)のうちの少なくとも1つは、第1の錐体と円柱と第2の錐体の組み合わせとして形成されている、
請求項8記載のデータ処理システム。
【請求項15】
実行可能な命令によってコーディングされた非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体(126)であって、前記命令が実行されると、1つまたは複数のデータ処理システム(100)は以下を実行する、すなわち、
・複数の境界表現(b−rep)表面(620)を含む、製造すべき物理的実体に関するソリッドモデル(600)を受け取り(305)、
・可能性のあるサポート材ロケーション(622)に対するポイントサンプル(624)を生成するために、前記境界表現表面(620)を分析し(310)、
・サポート材ロケーション(622)を最適化し、但し、当該最適化は、サポート材ロケーション(622)を生成するために、前記ポイントサンプル(624)の少なくともいくつかに対応する、前記ソリッドモデル上の複数のポイントをクラスタリングすること(315)を含み、当該クラスタリングは、可能性のある線状のサポート材のための1つの線上にある、生成された複数の前記ポイントサンプル(624)を含むクラスタを同定し、これにより、同定されたクラスタの複数の同定された前記ポイントサンプル(624)のうちのただ1つのみが支柱サポート材(604)のための1つのサポート材ロケーション(622)として用いられる、ことを含み、
・前記サポート材ロケーション(622)のところで本来のソリッドモデル(600)とつながる支柱サポート材(604)を、前記ソリッドモデルに生成し(320)、
・前記支柱サポート材(604)を含め、前記ソリッドモデル(600)を記憶する(330)、
コンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項16】
前記データ処理システム(100)はユーザとのインタラクションも行い、前記ソリッドモデル(600)における前記支柱サポート材を編集する(325)、
請求項15記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項17】
前記データ処理システム(100)は、前記ソリッドモデル(600)における変更に従い、前記支柱サポート材(604)の自動的な調節も行う、
請求項15記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項18】
前記支柱サポート材(604)を、製造すべき前記物理的実体の表面を擦傷または損傷することなく、製造すべき前記物理的実体から簡単に除去できるよう、前記支柱サポート材(604)は、前記サポート材ロケーション(622)のところで前記ソリッドモデル(600)と最小限の接触を有する形状である、
請求項15記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項19】
前記ソリッドモデル(600)およびコンタクトビルドプレート(610)との衝突を最小限に抑えるように設計されたロケーションおよび角度で、前記支柱サポート材(604)を生成する、
請求項15記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項20】
前記データ処理システムは、前記物理的実体を作成するため、3Dプリンタと通信することにより、前記ソリッドモデル(600)のプリントも行う(335)、
請求項15記載のコンピュータ読み取り可能媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2014年6月13日に出願された米国特許仮出願第62/011,932号の出願日の利益を請求するものであり、ここで参照したことによりその開示内容全体を本明細書の一部とする。
【0002】
技術分野
本発明は、全般的に言えば、コンピュータ支援による設計、視覚化および製造システム("CAD/CAM system")、製品ライフサイクルマネージメント("PLM")システム、ならびに製品および他の項目のデータを管理する同等のシステム(これらをまとめて「製品データ管理」システムまたはPDMシステムと称する)に関する。
【0003】
発明の背景
サポート材構造は、熱溶解積層法(Fused Deposition Modeling FDM)または光造形法(ステレオリソグラフィ)といった技術を用いて、部品の積層造形を確実に成功させるために必要とされる付加的なスキャフォールド型構造である。ある1つの部品は一般に、コンピュータ支援設計(CAD)システムにおいてソリッドモデルを用いて定義され、コンピュータ支援製造(CAM)システムを用いて製造するために準備される。現在市販されているCAD/CAMシステムは、ソリッドモデルの積層造形用のサポート材構造を生成するために十分な機能を備えていない。したがって、改善されたシステムが望まれる。
【0004】
発明の概要
本発明による種々の実施形態には、市販のCAD/CAMシステムのユーザが、部品の幾何要素を定義して製造オペレーションを生成するために用いられる同じシステム内で、サポート材構造を生成および変更できるようにするための方法およびシステムが含まれる。この場合、ソリッドモデルに直接、サポート材を生成することができ、これによってデータまたは幾何要素の変換が不要となる。Siemens Product Lifecycle Management Software Inc. (Plano, Texas)から販売されているようなNX CAD/CAMシステムのユーザ定義フィーチャ機能を用いて、サポート材を生成することができ、これによりCAD/CAMシステム自体の中で、容易に変更および保管できるようになる。
【0005】
他の実施形態には、ソリッドモデルの積層造形用のサポート材構造のためのシステムおよび方法が含まれる。方法には、複数の境界表現(b−rep)表面を含む、製造すべき物理的実体に対するソリッドモデルを受け取るステップが含まれる。この方法には、可能性のあるサポート材ロケーションのためのポイントサンプルを発生させるために、b−rep表面を分析するステップが含まれる。この方法には、サポート材ロケーションを生成するために、少なくともいくつかのポイントサンプルに対応する、ソリッドモデル上のポイントをクラスタリングするステップが含まれる。この方法にはさらに、サポート材ロケーションのところで本来のソリッドモデルとつながる支柱サポート材を、ソリッドモデルに生成するステップが含まれる。さらにこの方法には、支柱サポート材を含め、ソリッドモデルを記憶するステップが含まれる。
【0006】
これまでの記載は、以下の詳細な説明を当業者がよりよく理解できるよう、本発明の特徴および技術的な利点をどちらかと言えば大雑把に略述したものである。各請求項の要旨を成す本発明のその他の特徴および利点については、以下で述べることにする。当業者であれば理解できるように、当業者は開示された着想や特定の実施形態を、本発明と同じ目的を成し遂げるための変更または異なる構造設計のベースとして、ただちに使用することができる。さらに当業者であれば、かかる等価の構造が最も広い形態で開示した本発明の着想および範囲を逸脱しないことを理解するであろう。
【0007】
以下の発明の詳細な説明に入る前に、本明細書全体を通して用いられるいくつかの用語や表現について、ここで定義しておくのがよいと思われる。「を含む」および「を有する」なる表現ならびにそれらの派生語は、制限のない包含を表す。「または」なる表現は、「および/または」の意味も含む。「と関連する」および「それと関連する」ならびにそれらの派生語は、「含む」、「の中に含まれる」、「と相互接続する」、「を含有する」、「の中に含有される」、「に接続する」または「と接続する」、「に結合する」または「と結合する」、「と連携可能である」、「と共働する」、「をはさむ」、「に並置する」、「のすぐ近くにある」、「に結び付けられる」または「と結び付けられる」、「を有する」、「の所有物である」等を意味する場合もある。さらに「コントローラ」なる用語は、ハードウェアで実装されていようと、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらのうち少なくとも2つの組み合わせで実装されていようと、少なくとも1つのオペレーションを制御する何らかのデバイス、システムまたはそれらの一部分を表す。さらにここで留意しておきたいのは、いずれかの特定のコントローラと結び付けられた機能を、ローカルであろうとリモートであろうと、集中させてもよいし分散させてもよい、ということである。いくつかの用語および表現に対する定義は、本明細書全体にわたって規定されるものであり、当業者であれば理解できるように、かかる定義は、大部分の事例ではないにしても数多くの事例において、ここで定義した用語および表現の以前の使用にも将来の使用にも適用される。いくつかの用語は、幅広い種類の実施形態を含むことができるけれども、添付の特許請求の範囲では、それらの用語が特定の実施形態に明確に制限されてもよい。
【0008】
本発明およびその利点について、いっそう完全に理解できるようにする目的で、添付の図面を参照しながら本発明について以下で説明する。なお、図中、対象が同じであれば同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】1つの実施形態を実現可能なデータ処理システムを示すブロック図
【
図2A】本発明の実施形態に従って積層造形すべき本来の幾何要素の一例を示す図
【
図2B】積層造形すべき本来の幾何要素の一例を、本明細書で開示されるサポート材構造を含めて示す図
【
図3】本発明の実施形態によるプロセスを示すフローチャート
【
図4】本発明の実施形態に従い、複数の支柱サポート材により支持された小さいテストプレートを示す図であって、それらの支柱サポート材が各々ただ1つのポイントでプレートと接触していることを示す図
【
図5A】本発明の実施形態による種々のサポート材構造形状を示す図
【
図5B】本発明の実施形態による種々のサポート材構造形状を示す図
【
図5C】本発明の実施形態による種々のサポート材構造形状を示す図
【
図6】本発明の実施形態による衝突回避の一例を示す図
【
図7】本発明の実施形態による衝突回避投影パターン探索の一例を示す図
【
図8A】本発明の実施形態に従い、外側のサポート材ロケーションの角度を外側に向かわせて、ソリッドモデルの幾何要素から逸らすことができる様子を示す図
【
図8B】本発明の実施形態に従い、外側のサポート材ロケーションの角度を外側に向かわせて、ソリッドモデルの幾何要素から逸らすことができる様子を示す図
【0010】
詳細な説明
本発明の基本原理を説明するために、以下で説明する
図1〜
図8Bおよび種々の実施形態が用いられているが、これらは例示の目的で用いたにすぎず、いかなる点においても本発明の範囲の限定を意図したものではない。当業者であれば理解できるように、本発明の基本原理を、適切に構成された任意の装置において実現することができる。本発明の数多くの革新的な着想について、具体例として挙げた非限定的な実施形態を参照しながら説明する。
【0011】
積層造形(本明細書では"AM"または「3Dプリンティング」とも称する)は、ソリッドな物理的実体を一般的にはビルドプレートから積層により階層状に構築していく製造技術である。「ビルドプレート」のことを、本明細書ではプリンタの台座、台板、またはコンタクトビルドプレートとも称する。したがってこれらのシステムは理想的には、構築方向とは反対向きの自立領域を支持する手段を有する。これらの構造に対しては、何らかの構造的な歪みを避けるため、製造プロセス中、ある1つの部品のすべてのフィーチャを所定の位置に保持する、という要求も課される。このことは、付加的なスキャフォールド型構造である「サポート材構造」を使用することにより行われ、このような構造によって上述の領域が支持されて、FDMまたは光造形法(ステレオリソグラフィ)などの技術を用いた部品の積層造形が確実に成功するようになる。1つの部品は一般に、CADシステムにおけるソリッドモデルを用いて定義され、CAMシステムを用いた製造のために準備される。現在市販されているCAD/CAMシステムは、ソリッドモデルの積層造形用のサポート材構造を生成するために十分な機能を備えていない。
【0012】
たいていの場合、ソリッドモデルは、サポート材幾何要素を生成する別個のソフトウェアパッケージにエクスポートされる。その際、エクスポート中または別個のソフトウェアパッケージ内で、ソリッドが最初にポリゴンメッシュに変換される可能性があり、その結果、積層造形技術のエンドユーザにとって、精度の損失およびデータ変換の問題が発生し、さらにワークフローの複雑さが増すことになる。本明細書において特に説明するのは、市販のCAD/CAMシステムのユーザが、部品の幾何要素を定義して製造オペレーションを生成するために用いられる同じシステム内で、サポート材構造を生成および変更できるようにした実施形態である。この場合、ソリッドモデルにおいて直接、サポート材を生成することができ、これによってデータまたは幾何要素の変換が不要となる。
【0013】
1つの実施形態によれば、CAD/CAMシステムの「ユーザ定義フィーチャ」機能を用いてサポート材が生成され、それによりCAD/CAMシステム自体の中で、容易に変更および保管できるようになる。ユーザ定義フィーチャは、CADアプリケーション内の1つのエンティティであり、このエンティティは標準フィーチャを生成できるものであり、このような標準フィーチャは、容易にパラメータ化可能であり、かつ設計にあたり再利用可能であり、かつライブラリとして組織化して管理可能である。図示されている実施形態によれば、製造中に部品の重量を適切に支えること、および製造終了後に容易に除去できること、という(ときとして相反する)二面性の目的を満たすサポート材構造が生成される。これらに加えこのアプローチによれば、他の利点もある中で特に、CAD/CAM環境における他の幾何要素のように、サポート材幾何要素のパラメータ化による生成後、ユーザはそれらのサポート構造をさらに精密化することができ、さらにそれらを編集することができる。しかも、ユーザ定義フィーチャを用いることにより、サポート材幾何要素を以下のようにルールに従い生成できるようになり、すなわち、部品の幾何要素が変形されたならば、サポート材幾何要素をそれらのルールとパラメータ化とに基づき、そのような部品の変形に適合させることができるようになり、これは本発明によるアプローチに特有の特徴である。
【0014】
図1には、1つの実施形態を実現することのできるデータ処理システムのブロック図が示されている。これはたとえば、特に以下で述べるプロセスを実行するためのソフトウェアまたは他の手段によって構築されたPDMシステムとして実現可能であり、特に、以下で説明するように、相互接続され通信を行う複数のシステムのうちの1つとして実現可能である。図示されているデータ処理システムには、レベル2キャッシュ/ブリッジ104と接続されたプロセッサ102が含まれており、キャッシュ/ブリッジ104自体はローカルシステムバス106と接続されている。たとえばローカルシステムバス106を、PCI(peripheral component interconnect)アーキテクチャのバスとすることができる。図示の実施例ではローカルシステムバスにさらに、メインメモリ108とグラフィックアダプタ110も接続されている。グラフィックアダプタ110を、ディスプレイ111と接続することができる。
【0015】
ローカルエリアネットワーク(LAN)/ワイドエリアネットワーク/ワイヤレス(たとえばWiFi)アダプタ112などといった他の周辺機器を、ローカルシステムバス106と接続することもできる。拡張バスインタフェース114によって、ローカルシステムバス106が入出力(I/O)バス116と接続されている。I/Oバス116は、キーボード/マウスアダプタ118、ディスクコントローラ120、およびI/Oアダプタ122と接続されている。ディスクコントローラ120を記憶装置126と接続することができ、この記憶装置126を、機械で使用可能または機械で読み取り可能な任意の適切な記憶媒体とすることができ、このような記憶媒体には、以下に限定されるわけではないが、リードオンリーメモリ(ROM)など不揮発性で変更不可能な媒体、または消去可能であり電気的にプログラミング可能なリードオンリーメモリ(EEPROM)、磁気テープ媒体、ユーザが記録可能なタイプの媒体たとえばフロッピーディスク、ハードディスクドライブ、およびコンパクトディスク型リードオンリーメモリ(CD−ROM)、またはディジタル多用途ディスク(DVD)、さらに他の周知の光学的、電気的または磁気的な記憶デバイスが含まれる。
【0016】
図示されているこの実施例では、I/Oバス116にオーディオアダプタ124も接続されており、サウンド再生のためにこのアダプタにスピーカ(図示せず)を接続することができる。キーボード/マウスアダプタ118によって、マウス、トラックボール、トラックポインタ、タッチスクリーンなどポインティングデバイス(図示せず)のための接続が提供される。
【0017】
当業者であれば理解できるように、
図1に描かれているハードウェアを個々の実現形態に合わせて変更できる。たとえば、図示されているハードウェアに加えて、またはその代替として、光ディスクドライブなどのような他の周辺機器を使用してもよい。図示されている実施例は、例示目的で示されているにすぎず、本発明に関して構造上の制限を意図したものではない。
【0018】
本発明の1つの実施形態によるデータ処理システムには、グラフィックユーザインタフェースを用いるオペレーティングシステムが含まれている。このオペレーティングシステムによれば、同時に複数のディスプレイウィンドウをグラフィックユーザインタフェースとして表示させることができ、各ディスプレイウィンドウによって、それぞれ異なるアプリケーションに対するインタフェースが提供され、または同じアプリケーションの異なるインスタンスに対するインタフェースが提供される。ユーザはポインティングデバイスによって、グラフィックユーザインタフェースのカーソルを操作することができる。その際、カーソルのポジションを変更することができ、および/または、望ましいレスポンスを生じさせるために、マウスボタンのクリックなどのイベントを発生させることができる。
【0019】
適切に変更を加えれば、様々な市販のオペレーティングシステムのうちの1つを採用することができ、たとえば, Washington州RedmondのMicrosoft社の製品であるMicrosoft Windows(登録商標)の1つのバージョンを採用することができる。オペレーティングシステムは、ここで説明する本発明に従って変更または作成される。
【0020】
LAN/WAN/ワイヤレスアダプタ112を(データ処理システム100の一部ではない)ネットワーク130に接続することができ、このネットワークを、当業者に周知のように、公用または専用のデータ処理システムネットワークあるいは複数のネットワークの組み合わせとすることができ、これにはインターネットが含まれる。データ処理システム100は、ネットワーク130を介してサーバシステム140と通信することができ、このサーバシステムもデータ処理システム100の一部ではないが、たとえば別個の異なるデータ処理システム100として実装してもよい。
【0021】
製造プロセス中、積層造形しようとする幾何要素の部品が理想的に支えられ、またはそうでなければ所定の位置に保持される。積層造形デザインは最初、材料が取り付けられる台板またはビルドプレートによって支持される。先行する層に、それよりもあとの層が取り付けられる。
【0022】
幾何要素によっては、台板または先に生成された幾何要素の層に取り付けることができない場合もあるので、ある種のタイプのサポート材を構築しておくことが必要とされる場合もある。このようなサポート材は、最終デザインが完成した後に除去される。
【0023】
図2Aには、積層造形すべき本来の幾何要素200の一例が示されている。ここで留意したいのは、この幾何要素を一般的な技術を用いて底部から頂部に向かってプリントする場合、本来の幾何要素200には底部の大部分についてサポート材がなく、したがってこの幾何要素をうまく製造することができない、という点である。
【0024】
図2Bには、積層造形すべき本来の幾何要素200の一例が、本明細書で開示されるサポート材構造202を含めて示されている。サポート材構造202も底部から上へ向かってプリントされ、プリントすべき幾何要素200のためのサポート材を提供する。ここで留意したいのは、サポート材構造202は各々、本来の幾何要素200と接触するポイントに向かって狭幅しており、これによってそれらを簡単に取り外すことができ、幾何要素200の底部表面に対しできるかぎり僅かな変形しか引き起こさないようにすることができる、という点である。
【0025】
本発明の種々の実施形態によれば、最終デザインに付加または堆積させたときに材料を所定の位置に保持することができるサポート材を定義および構築するために、多種多様なソリッドモデリング幾何要素が用いられる。これらのサポート材は、製造完了後に事後処理ステップとして、簡単に除去することができる。本明細書で開示するサポート材は、部品の擦傷またはその他の損傷を回避するために、部品との接触を最低限に抑えることができ、また、サポート材における材料の使用を最小量にすることができ、さらに部品構築時間を最小限にすることができる。
【0026】
幾何学的表現および幾何学的計算によって、Siemens Product Lifecycle Management Software Inc. (Plano, Texas)から入手可能なSiemens Parasolid geometric kernelに見られるような、高度に精密な境界表現(b−rep)のソリッド幾何要素を用いることができる。
【0027】
図3には、本発明の実施形態によるプロセスのフローチャートが示されている。このフローチャートは、データ処理システム100などのようなデータ処理システム(以下では総称的に「システム」と呼ぶ)によって実施可能な方法300を示している。
【0028】
システムは、製造すべき物体のために、複数のb−rep表面を含むソリッドモデルを受け取る(305)。本明細書において用いられる「受け取る」という表現には、記憶装置からのロード、他のデバイスからの受け取り、ユーザとのインタラクションを介した受け取り、またはその他のものを含めることができる。
【0029】
システムは、可能性のあるサポート材ロケーションのためのポイントサンプルを発生させるために、B−Rep表面を分析する(310)。この分析の一部としてシステムは、B−Rep表面の曲率と角度を調べて、1つまたは複数のサポートポイントを配置するのに最良な場所を決定する。
【0030】
システムは、サポート材ロケーションを生成するために、少なくともいくつかのポイントサンプルに対応する、ソリッドモデル上のポイントをクラスタリングする(315)。本明細書で用いられる「クラスタリング」とは、サポート材ロケーション各々について1つまたは複数のポイントが同定される、ということを意味しており、複数のポイントサンプルが互いに接近して存在しているいくつかのケースでは、複数のポイントのこの「クラスタ」に対し、ただ1つのサポート材ロケーションが用いられる。
【0031】
システムは、サポート材ロケーションのところで本来のソリッドモデルとつながる支柱サポート材を、ソリッドモデルに生成する(320)。種々の実施形態によれば、ソリッドモデルにおける変更に応じて、システムは支柱サポート材を自動的に調節することができる。種々の実施形態によれば、生成される支柱サポート材は、サポート材ロケーションのところでソリッドモデルと最低限の接触を有するように形成されており、その際、必要とされる重量を支柱サポート材によって支持することができ、かつ製造すべき物体の表面を擦傷または損傷することなく簡単に除去することができる。システムは、ソリッドモデルおよびコンタクトビルドプレートとの衝突を最小限に抑えるように設計されたロケーションおよび角度で、支柱サポート材を生成することができる。さらにシステムは、支柱サポート材の撓みおよび破断をコントロールして、支柱サポート材に関するソリッドモデルの応力集中が最大および最小になるように、支柱サポート材を生成することができる。
【0032】
システムは、ユーザとのインタラクションを行って、サポート材を編集および精密化することができる(325)。
【0033】
システムは、支柱サポート材を含めてCADモデルを記憶する(330)。
【0034】
システムは、ソリッドモデルをプリントして、物理的実体を生成することができる(335)。これをたとえば、ソリッドモデルをプリントする3Dプリンタと通信するシステムによって実施することができる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、ソリッドモデルとサポート材構造との間の接触を最小限に抑えようとしており、その一方では、接触ポイントにおける横応力、直接応力およびねじり応力集中を考慮している。
【0036】
積層造形ツールのユーザは、製造に続いて、サポート材の材料の容易な除去を要求する場合もある。本発明の実施形態によれば、サポート材が部品と接触しているロケーションに任意の撓みまたは破断を生じさせる応力集中を生成することができる。サポート材構造ごとにただ1つのポイントにサポート材を設けることで、最大の応力集中がもたらされ、これによって任意の方向にねじれおよび撓みを生じさせることができる。線状の接触は、より大きいレベルの支持をもたらすものであるが、1つの方向だけにしか曲げることができないし、幾何要素が「フラットな」ロケーションを提供している場合にしか用いることができない。
【0037】
図4には、9つの「支柱サポート材」410によって支持された小さいテストプレート402が示されており、これらの支柱サポート材は各々、ただ1つのポイント412でプレートと接触している。モデルと各サポート材との間にただ1つの接触ポイントだけしか存在しないのは、サポート材の除去にとって理想的である。ただし、サポート材幾何要素を複数のポイントに及んで配置すれば、回転自由度が少なくなり、何らかの方向に応力集中を生じさせる能力にも影響が及ぼされる。この理由から、各ポイントを各々固有の支柱で支持することによって、(1つの線上にない)付加的な複数のポイントよりも良好な2つのポイントを用いて、最適な解決策がもたらされる。
【0038】
システムは、最適な解決策のために、個々の単一ポイントの支柱サポート材に対する要望と他の要求とのバランスをとることができる。支柱の物理的なサイズが制限されているかもしれないし、または材料の総使用量を少なくするために支柱数を減らす必要性があるかもしれない。このシステムによって生成される支柱を、要求に応じて融合または「ブーリアン演算」することができる。
【0039】
積層造形ハードウェアの制限に応じて、支柱を任意の方向に構築することができる。理想的には、支柱は機械の台板に垂直に下ろされる(またはいくつかの機械では上に向かって垂直に伸ばされる)。ただし、AM方式の機械によっては、最大の角度で異なる方向が必要とされる場合がある。たとえばFDM方式の機械は一般に、サポート材を必要とすることなく45度までの張り出しを含む幾何要素を生成することができる。この場合、支柱サポート材自体を、45度の角度まで構築することができる。
【0040】
本発明の実施形態は、任意の形状の支柱をサポートすることができる。たとえば、支柱サポート材410は、円錐、円柱または他の錐体の支柱として形成され、さらに上述の基準を満たす様々な形状の多数の支柱が考えられる。
【0041】
本発明の実施形態によれば、初期段階の錐体を、支持すべきポイントで部品表面に接触させる。その後、錐体基部からプリンタの台座またはビルドプレートに向かって、円柱を突出させる。基部との接着力を最大にするため、基部が押し出し部分および台板と同一平面にある第2の錐体を生成し、支柱と「ブーリアン演算」する。支柱サポート材410によって描かれているように、この第2の錐体は、円柱の半径よりも大きい基部半径を有している。
【0042】
図5A〜
図5Cには、種々のサポート材構造形状が示されている。
図5Aは、半球512によって表された基部のところで取り付けられた支柱510を示している。
【0043】
図5Bは、もっと小さい基部522を有する支柱520を示している。これにより基部のところに応力集中が発生し、それによってプリンタプラットフォームからの基部の破断が著しく容易になる。この例はおそらく、プリンタプラットフォームから最も「剥がれやすく」なるものであろう。
【0044】
図5Cに示されている支柱サポート材530は、底部上の「パッド」532のように、円柱基部とのブーリアン演算により得られた錐体形状を有している。このような形状により、パッドがプリンタの台座と接触する個所に生じる応力が小さくなる。これについては2つの例外がある。いくつかのケースでは、第1の錐体の高さは実際には、サポートポイントから台板までの距離よりも大きい。このケースでは、必要とされる錐体の一部だけが使用され、円柱または第2の錐体は生成されない。2つめの例外は、サポート材基部がモデルに取り付けられ、プリンタ台板には取り付けられない場合である。このケースでは、第2の錐体は使用されず、(より大きい基部ではなく)より小さい基部を代わりとして用いることができる。この目的は、サポート材を簡単に除去できるようにする応力集中を生じさせるためである。
【0045】
本発明の実施形態によれば、サポート材構造が生成されるときに、衝突回避を実施することもできる。既存の幾何要素の頂部に構築されるサポート材は、いくつかのケースにおいて問題となる可能性がある。たとえば、あるサポート材構造によれば、製造プロセス中に外れないよう十分に強くモデルと接続されることが要求される。しかしながらこのように接続が強化されると、モデル完成後にそれらを除去するのも難しくなる。さらにモデルとの接触によって、モデル表面を擦傷したり、または他のかたちで損傷するおそれがあったりし、その結果、モデルの魅力が劣化し、さらに事後処理の時間が長くなる。
【0046】
これらの理由からしばしば望まれるのは、プリンタプラットフォームとの接続強度を最大にし、プリントすべき実際の幾何要素との接続強度を最小にするサポート材を生成することである。
【0047】
図6には、衝突回避の一例が示されており、この場合、マグのソリッドモデル600の取っ手602のためにサポート材が必要とされる。取っ手底部のための支柱サポート材604を、プリンタプラットフォームまたはコンタクトビルドプレート610に向かってまっすぐに伸ばすことができる。しかしながら、取っ手頂部に設けられる支柱サポート材606の角度は、取っ手底部との衝突を回避するため、外側に向かわされている。このため、取っ手頂部のサポート材606は、マグの取っ手602の底部との衝突を回避している。さらにこの例は、b−rep表面620と、b−rep表面620上の(誇張された円として示された)ポイントサンプル624を説明するためにも用いられる。これらのポイントサンプル624は、クラスタリングしてサポート材ロケーション622として使うことができる。
【0048】
支柱が他の幾何要素と交差するか否かを判定するために、支柱の2D断面を空間を通して投影することによって、理想的な方向の識別を行うことができる。ここで開示する1つの技術によれば、サポート材ロケーションからプリンタの台座へ「まっすぐ下に向かって」1つの支柱を投影し、ソリッドモデルまたは他のサポート材構造との衝突についてテストすることから始められる。ついでシステムは、そこから「螺旋状に」外側に向かって各方向で支柱を投影し、ソリッドモデルまたは他のサポート材構造との衝突についてテストする。
【0049】
図7には、本発明の実施形態による衝突回避投影パターン700の探索の一例が示されている。中心702が最初に試みられ、これに付随して、この中心から螺旋状に外側に向かう他のすべての試みが、たとえば投影パターン700として行われる。衝突しない支柱サポート材の投影が見つかったならば、このことは結果として、幾何要素にぶつからない(垂直に下ろした方向から)最小の角度が得られた、ということになる。衝突しない支柱サポート材の投影が見つかれば、パターン探索を停止することができるので、一般的なケースによれば、実際には、例示したパターンにおいて考えられるすべてのポイントで投影が行われることにはならない。
【0050】
図8Aおよび
図8Bには、ソリッドモデル800の幾何要素から逸らすために、外側のサポート材ロケーションの角度を外側に向かわせることできることが例示されている。この例によれば、外側のサポート材802の角度が外側に向けられて、ソリッドモデルの基部804と衝突することなく、プリンタの台座820に到達している。
【0051】
図8Bには、
図8Aの領域830がさらに詳細に示されている。
図8Bに示されているように、内側のサポート材808は、角度が大きくなりすぎてしまうことからプリンタの台座820には到達できないという理由で、システムはその代わりに、内側のサポート材808をソリッドモデル800の「ステム」810に取り付けることができる。
【0052】
システムは、サポート材のポイントロケーションを決定するために、ソリッドモデルのb−rep幾何要素を分析する。サポート材を生成するための幾何要素におけるロケーションは、プリントすべき幾何要素を構成するB−rep表面の分析に基づく。幾何要素の面すべてに対応する表面が分析される。その際、構築方向によって規定される所定の角度範囲内に表面法線がある領域が抽出される。抽出された領域において、複数の代表的なポイントロケーションが計算される。支柱サポート材構造の頂部錐体が、これらのロケーションにおいて表面と接触することになる。
【0053】
これらのポイントロケーションは、複数の係数に基づき最適化され、たとえば各ポイントの間隔、表面の曲率、表面勾配の局所的な最小値および最大値、ならびに「線状のサポート材」のために1つの線上に配置されたポイントのように、類似するポイントのクラスタリングに対する要求、などに基づき最適化される。
【0054】
当業者に自明のとおり、オペレーションシーケンスにより特に指示または要求がなされないかぎり、上述のプロセスにおけるいくつかのステップを省略してもよいし、同時に実施しても逐次実施してもよく、あるいは異なる順序で実施してもよい。
【0055】
さらに当業者に理解できるとおり、簡単かつ明瞭にするため、本発明による使用に適したあらゆるデータ処理システムの構造およびオペレーションを、本明細書においてすべて描いたまたは説明したわけではない。そうではなく、データ処理システムのうち、本発明に特有のところだけを、または本発明の理解に必要なところだけを描いて説明したにすぎない。データ処理システム100の構造およびオペレーションのその他の部分は、この分野で周知の現在行われている様々な実装形態および実施手法の任意のものに適合させることができる。
【0056】
ここで特に述べておきたいのは、本発明には、完全に機能的なシステムに関連した説明が含まれているけれども、当業者に自明であるとおり、本発明におけるメカニズムは少なくとも部分的には、機械で使用可能な媒体、コンピュータで使用可能な媒体、またはコンピュータで読み取り可能な媒体に記憶された命令として、任意の種類の形態で配布可能なものであること、さらに本発明は、特定のタイプの命令、信号担体または記憶媒体が使用されようとも、そのような配布物を実際に実行するために等しく適用されることである。機械で使用可能/読み取り可能な媒体、またはコンピュータで使用可能/読み取り可能な媒体の例として、以下のものが含まれる:リードオンリーメモリ(ROM)など不揮発性で変更不可能にコーディングされたタイプの媒体、または消去可能であり電気的にプログラミング可能なリードオンリーメモリ(EEPROM)、ならびにユーザが記録可能なタイプの媒体たとえばフロッピーディスク、ハードディスクドライブ、およびコンパクトディスク型リードオンリーメモリ(CD−ROM)、またはディジタル多用途ディスク(DVD)。
【0057】
これまで本発明の実施例について詳しく説明してきたが、当業者であれば理解できるように、最も広い形態で開示した本発明の着想および範囲を逸脱することなく、様々な変更、置き換え、変形ならびに本明細書で開示した改善を行うことができる。
【0058】
本願の記載内容のいずれも、何らかの特定の部材、ステップまたは機能が特許請求の範囲に含まれなければならない必須の要素である、という趣旨で読まれるべきではない。本発明の範囲は、特許付与された請求項によってのみ定められるものである。しかも、厳密な語「〜のための手段」の次に分詞が続かないのであれば、これらの請求項のいずれも、米国特許法第112条(f)が適用されることを意図したものではない。