(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記の少なくとも1つの第1の及び/又は第2の及び/又は第3の及び/又は第4の堆積プロセスが、電子ビーム堆積及び/又はスパッタリング堆積を含む、請求項1に記載の方法。
前記の少なくとも1つの材料は、石英、溶融シリカ、シリコン、ガラス、強化ガラス、PET、ポリマー、プラスチック、紙及び/又は布地を含み、更に、前記少なくとも1つのフレキシブル基板のための前記の材料は、前記少なくとも1つのエッチングプロセスによってエッチング可能ではない、請求項2に記載の方法。
前記少なくとも1つの第1の薄膜は、クロム(Cr)又は少なくとも1つの少なくとも1つの第1の薄膜と少なくとも1つの第2の薄膜との間の弱い結合を形成する任意の材料を含み、更に、前記第1の薄膜のための前記の材料は、前記少なくとも1つのエッチングプロセスによってエッチング可能ではない、請求項1に記載の方法。
前記少なくとも1つの第2の薄膜は、銀(Ag)又は少なくとも1つの少なくとも1つの第1の薄膜と少なくとも1つの第2の薄膜との間の弱い結合を形成する任意の材料を含み、更に、前記第2の薄膜のための前記の材料は、前記少なくとも1つのエッチングプロセスによってエッチング可能である、請求項1に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、より硬い薄膜基板の層をより柔軟なフレキシブル基板上に転写する方法が提供される。特に、本発明は、サファイア薄膜の層を、より柔軟でフレキシブルな基板上に、例えば、PET、ポリマー、プラスチック、紙、さらには布地上に、転写する方法を提供する。この組合せは、純粋なサファイア基板より優れている。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、フレキシブル基板上にサファイア(Al
2O
3)をコーティングする方法であって、
少なくとも1つの第1の薄膜コーティング基板を形成するために、少なくとも1つの第1の薄膜を、少なくとも1つの第1の基板上に堆積させる、少なくとも1つの第1の堆積プロセスと、
少なくとも1つの第2の薄膜コーティング基板を形成するために、少なくとも1つの第2の薄膜を、前記少なくとも1つの第1の薄膜コーティング基板上に堆積させる、少なくとも1つの第2の堆積プロセスと、
少なくとも1つの触媒コーティング基板を形成するために、少なくとも1つの触媒を、前記少なくとも1つの第2の薄膜コーティング基板上に堆積させる、少なくとも1つの第3の堆積プロセスと、
少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)コーティング基板を形成するために、少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜を、前記少なくとも1つの触媒コーティング基板上に堆積させる、少なくとも1つの第4の堆積プロセスと、
少なくとも1つの硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜コーティング基板を形成するために、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)コーティング基板が、300℃からサファイア(Al
2O
3)の融点未満の範囲のアニール温度で有効な時間にわたってアニールされる、少なくとも1つのアニールプロセスと、
少なくとも1つのフレキシブル基板を、前記少なくとも1つの硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜コーティング基板であって、前記少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜上に取り付けるステップと、
前記の少なくとも1つのフレキシブル基板上に、少なくとも1つの第2の薄膜コーティング硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜を形成するために、前記少なくとも1つの硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜を、前記少なくとも1つの第2の薄膜と共に、前記少なくとも1つの第1の薄膜コーティング基板から分離する、少なくとも1つの機械的分離プロセスと、
少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜コーティングされたフレキシブル基板を形成するために、前記少なくとも1つの第2の薄膜を、前記の少なくとも1つのフレキシブル基板上の前記少なくとも1つの第2の薄膜コーティング硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜から除去する、少なくとも1つのエッチングプロセスと、
を含む、方法が提供される。
【0009】
請求項1に記載の方法であって、前記の第1の及び/又は前記のフレキシブル基板が、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜の堆積物のモース値未満のモース値を有する少なくとも1つの材料を含む、方法。
【0010】
本発明の第2の態様の第1の実施形態では、前記の少なくとも1つの第1の及び/又は第2の及び/又は第3の及び/又は第4の堆積プロセスが、電子ビーム堆積及び/又はスパッタリング堆積を含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様の第2の実施形態では、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)コーティング基板、及び/又は少なくとも1つの硬化サファイア(Al
2O
3)コーティング基板、及び/又は前記の少なくとも1つのフレキシブル基板上の少なくとも1つの第2の薄膜コーティング硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜、及び/又は少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜コーティングされたフレキシブル基板が、少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜を含む、方法が提供される。
【0012】
本発明の第2の態様の第3の実施形態では、前記の少なくとも1つの第1の基板の厚さ、及び/又は前記の少なくとも1つのフレキシブル基板の厚さが、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜の厚さより1桁以上大きい、方法が提供される。
【0013】
本発明の第2の態様の第4の実施形態では、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜の厚さが、前記の少なくとも1つの第1の基板の、及び/又は前記の少なくとも1つのフレキシブル基板の厚さの約1/1000である、方法が提供される。
【0014】
本発明の第2の態様の第5の実施形態では、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜が、150nmと600nmの間の厚さを有する、方法が提供される。
【0015】
本発明の第2の態様の第6の実施形態では、前記の有効期間が30分以上である、方法が提供される。
【0016】
本発明の第2の態様の第8の実施形態では、前記の有効期間が2時間以下である、方法が提供される。
【0017】
本発明の第2の態様の第9の実施形態では、前記のアニール温度が850℃と1300℃の間の範囲である、方法が提供される。
【0018】
本発明の第2の態様の第10の実施形態では、前記のアニール温度が1150℃と1300℃の間の範囲である、方法が提供される。
【0019】
本発明の第2の態様の第11の実施形態では、前記の少なくとも1つの材料は、石英、溶融シリカ、シリコン、ガラス、強化ガラス、PET、ポリマー、プラスチック、紙及び/又は布地を含み、更に、前記少なくとも1つのフレキシブル基板のための前記の材料は、前記少なくとも1つのエッチングプロセスによってエッチング可能ではない、方法が提供される。
【0020】
本発明の第2の態様の第12の実施形態では、前記の少なくとも1つのフレキシブル基板と前記の少なくとも1つの硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜との間の前記の付着は、前記の少なくとも1つの第1の薄膜と前記の第2の薄膜との間の結合よりも強い、方法が提供される。
【0021】
本発明の第2の態様の第13の実施形態では、前記少なくとも1つの第1の薄膜は、クロム(Cr)又は少なくとも1つの少なくとも1つの第1の薄膜と少なくとも1つの第2の薄膜との間の弱い結合を形成する任意の材料を含み、更に、前記第1の薄膜のための前記の材料は、前記少なくとも1つのエッチングプロセスによってエッチング可能ではない、方法が提供される。
【0022】
本発明の第2の態様の第14の実施形態では、前記少なくとも1つの第2の薄膜は、銀(Ag)又は少なくとも1つの少なくとも1つの第1の薄膜と少なくとも1つの第2の薄膜との間の弱い結合を形成する任意の材料を含み、更に、前記第2の薄膜のための前記の材料は、前記少なくとも1つのエッチングプロセスによってエッチング可能である、方法が提供される。
【0023】
本発明の第2の態様の第15の実施形態では、前記の少なくとも1つの触媒が、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、銀(Ag)、金(Au)、ゲルマニウム(Ge)、及び少なくとも1つの第1の基板よりも高い融点を有する金属からなる群から選択される金属を含む、方法が提供される。
【0024】
本発明の第2の態様の第16の実施形態では、前記の少なくとも1つの触媒コーティング基板が、少なくとも1つの触媒膜を含み;前記の少なくとも1つの触媒膜が連続しておらず;前記の少なくとも1つの触媒膜が、1nmと15nmの間の範囲の厚さを有し;前記の少なくとも1つの触媒膜が、5nmと20nmの間の範囲の直径を有するナノドットを含む;方法が提供される。
【0025】
当業者であれば、本明細書に記載された本発明は、具体的に記載されたもの以外の変形及び変更が可能であることを理解するであろう。
【0026】
本発明は、そのような全ての変形及び変更を含む。本発明はまた、本明細書において個別に又は集合的に言及され又は指示された全てのステップ及び特徴を含み、且つ、任意の及び全ての組合せ又は任意の2つ以上のステップ又は特徴を含む。
【0027】
本発明の他の態様及び利点は、以下の記載を検討することにより、当業者には明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態のいずれかによって範囲が限定されるものではない。以下の実施形態は、例示のためにのみ提示される。
【0057】
理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、試行、実験及び研究を通じて、より硬い薄膜基板の層を、より柔軟でフレキシブルな基板上に、例えば、PET、ポリマー、プラスチック、紙及びさらには布地上に転写する目的を達成することを見出した。この組合せは、純粋なサファイア基板より優れている。本質的には、材料は硬ければ硬いほど脆くなるので、サファイア基板は傷つきにくいが粉々になりやすく、その逆もまたしばしば真実であって、石英基板は傷つきやすいが、サファイア基板よりも脆くない。したがって、より硬い薄膜基板を、より柔軟でフレキシブルな基板上に堆積することにより、いずれにとっても最良をもたらす。より柔軟でフレキシブルな基板は、脆くなく、良好な機械的性能を有し、コストも低い。耐スクラッチの機能は、より硬い薄膜基板を使用することによって達成される。サファイア(Al
2O
3)薄膜堆積物を硬化するためには、より柔軟な基板の軟化/溶融温度は、アニール温度よりも十分に高くなければならない。石英、溶融シリカなどのほとんどの硬質基板は、この要件を満たすことができる。しかし、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのフレキシブル基板は、この要件を満たすことができない。PETの融点は約250℃であり、アニール温度よりも十分に低い。PETは、最も広く使用されているフレキシブル基板の一つである。Al
2O
3(サファイア)薄膜の基板を、より柔軟なフレキシブル基板上に転写する能力により、ガラス及び金属のような硬質基板から、PET、ポリマー、プラスチック、紙及びさらには布地のようなフレキシブル基板にまで、その用途が大幅に拡大するであろう。転写された基板の機械的特性を改善することができる。したがって、硬質基板からフレキシブル基板へのAl
2O
3薄膜の転写により、フレキシブル基板の融点がしばしば低いというこの問題を克服することができる。
【0058】
本発明の第1の態様によれば、より硬い薄膜基板の層をより柔軟な基板上にコート/堆積/転写する方法が提供される。特に、本発明は、サファイア薄膜の層を、より柔軟なフレキシブル基板上に、例えば、PET、ポリマー、プラスチック、紙及び布地上に、堆積する方法を提供する。この組合せは、純粋なサファイア基板より優れている。
【0059】
本発明の第2の態様によれば、フレキシブル基板上にサファイア(Al
2O
3)をコーティングする方法であって、
少なくとも1つの第1の薄膜コーティング基板を形成するために、少なくとも1つの第1の薄膜を、少なくとも1つの第1の基板上に堆積させる、少なくとも1つの第1の堆積プロセスと、
少なくとも1つの第2の薄膜コーティング基板を形成するために、少なくとも1つの第2の薄膜を、前記少なくとも1つの第1の薄膜コーティング基板上に堆積させる、少なくとも1つの第2の堆積プロセスと、
少なくとも1つの触媒コーティング基板を形成するために、少なくとも1つの触媒を、前記少なくとも1つの第2の薄膜コーティング基板上に堆積させる、少なくとも1つの第3の堆積プロセスと、
少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)コーティング基板を形成するために、少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜を、前記少なくとも1つの触媒コーティング基板上に堆積させる、少なくとも1つの第4の堆積プロセスと、
少なくとも1つの硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜コーティング基板を形成するために、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)コーティング基板が、300℃からサファイア(Al
2O
3)の融点未満の範囲のアニール温度で有効な時間にわたってアニールされる、少なくとも1つのアニールプロセスと、
少なくとも1つのフレキシブル基板を、前記少なくとも1つの硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜コーティング基板であって、前記少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜上に取り付けるステップと、
前記の少なくとも1つのフレキシブル基板上に、少なくとも1つの第2の薄膜コーティング硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜を形成するために、前記少なくとも1つの硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜を、前記少なくとも1つの第2の薄膜と共に、前記少なくとも1つの第1の薄膜コーティング基板から分離する、少なくとも1つの機械的分離プロセスと、
少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜コーティングされたフレキシブル基板を形成するために、前記少なくとも1つの第2の薄膜を、前記の少なくとも1つのフレキシブル基板上の前記少なくとも1つの第2の薄膜コーティング硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜から除去する、少なくとも1つのエッチングプロセスと、
を含む、方法が提供される。
【0060】
請求項1に記載の方法であって、前記の第1の及び/又は前記のフレキシブル基板が、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜の堆積物のモース値未満のモース値を有する少なくとも1つの材料を含む、方法。
【0061】
本発明の第2の態様の第1の実施形態では、前記の少なくとも1つの第1の及び/又は第2の及び/又は第3の及び/又は第4の堆積プロセスが、電子ビーム堆積及び/又はスパッタリング堆積を含む、方法が提供される。
【0062】
本発明の第2の態様の第2の実施形態では、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)コーティング基板、及び/又は少なくとも1つの硬化サファイア(Al
2O
3)コーティング基板、及び/又は前記の少なくとも1つのフレキシブル基板上の少なくとも1つの第2の薄膜コーティング硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜、及び/又は少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜コーティングされたフレキシブル基板が、少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜を含む、方法が提供される。
【0063】
本発明の第2の態様の第3の実施形態では、前記の少なくとも1つの第1の基板の厚さ、及び/又は前記の少なくとも1つのフレキシブル基板の厚さが、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜の厚さより1桁以上大きい、方法が提供される。
【0064】
本発明の第2の態様の第4の実施形態では、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜の厚さが、前記の少なくとも1つの第1の基板の、及び/又は前記の少なくとも1つのフレキシブル基板の厚さの約1/1000である、方法が提供される。
【0065】
本発明の第2の態様の第5の実施形態では、前記の少なくとも1つのサファイア(Al
2O
3)薄膜が、150nmと600nmの間の厚さを有する、方法が提供される。
【0066】
本発明の第2の態様の第6の実施形態では、前記の有効期間が30分以上である、方法が提供される。
【0067】
本発明の第2の態様の第8の実施形態では、前記の有効期間が2時間以下である、方法が提供される。
【0068】
本発明の第2の態様の第9の実施形態では、前記のアニール温度が850℃と1300℃の間の範囲である、方法が提供される。
【0069】
本発明の第2の態様の第10の実施形態では、前記のアニール温度が1150℃と1300℃の間の範囲である、方法が提供される。
【0070】
本発明の第2の態様の第11の実施形態では、前記の少なくとも1つの材料は、石英、溶融シリカ、シリコン、ガラス、強化ガラス、PET、ポリマー、プラスチック、紙及び/又は布地を含み、更に、前記少なくとも1つのフレキシブル基板のための前記の材料は、前記少なくとも1つのエッチングプロセスによってエッチング可能ではない、方法が提供される。
【0071】
本発明の第2の態様の第12の実施形態では、前記の少なくとも1つのフレキシブル基板と前記の少なくとも1つの硬化サファイア(Al
2O
3)薄膜との間の前記の付着は、前記の少なくとも1つの第1の薄膜と前記の第2の薄膜との間の結合よりも強い、方法が提供される。
【0072】
本発明の第2の態様の第13の実施形態では、前記少なくとも1つの第1の薄膜は、クロム(Cr)又は少なくとも1つの少なくとも1つの第1の薄膜と少なくとも1つの第2の薄膜との間の弱い結合を形成する任意の材料を含み、更に、前記第1の薄膜のための前記の材料は、前記少なくとも1つのエッチングプロセスによってエッチング可能ではない、方法が提供される。
【0073】
本発明の第2の態様の第14の実施形態では、前記少なくとも1つの第2の薄膜は、銀(Ag)又は少なくとも1つの少なくとも1つの第1の薄膜と少なくとも1つの第2の薄膜との間の弱い結合を形成する任意の材料を含み、更に、前記第2の薄膜のための前記の材料は、前記少なくとも1つのエッチングプロセスによってエッチング可能である、方法が提供される。
【0074】
本発明の第2の態様の第15の実施形態では、前記の少なくとも1つの触媒が、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、シリコン(Si)、銀(Ag)、金(Au)、ゲルマニウム(Ge)、及び少なくとも1つの第1の基板よりも高い融点を有する金属からなる群から選択される金属を含む、方法が提供される。
【0075】
本発明の第2の態様の第16の実施形態では、前記の少なくとも1つの触媒コーティング基板が、少なくとも1つの触媒膜を含み;前記の少なくとも1つの触媒膜が連続しておらず;前記の少なくとも1つの触媒膜が、1nmと15nmの間の範囲の厚さを有し;前記の少なくとも1つの触媒膜が、5nmと20nmの間の範囲の直径を有するナノドットを含む;方法が提供される。
[定義]
【0076】
明確性及び完全性のために、本開示では以下の用語の定義が使用される。
【0077】
本明細書で使用する場合、用語「サファイア」は、鉱物コランダムの宝石品種としても知られている材料又は基板を指し、前記材料又は基板中に異なる不純物を有する鉱物コランダム、酸化アルミニウム(アルファ−Al
2O
3)、又はアルミナが含まれる。純粋なコランダム(酸化アルミニウム)は無色、又は約0.01%のチタンを含むコランダムである。様々なサファイアの色は、異なる化学的不純物又は微量元素の存在に起因し、それらは以下の通りである:
・ブルーサファイアは、典型的には微量の鉄及びチタン(わずか0.01%)によって着色されている。
・鉄とクロムの組合せにより、黄色又はオレンジ色のサファイアを生成する。
・クロム単独では、ピンク色又は赤色(ルビー)を生成する;深赤色ルビーの場合は少なくとも1%のクロムによる。
・鉄単独では、弱い黄色又は緑色を生成する。
・バイオレット又はパープルサファイアは、バナジウムによって着色されている。
【0078】
本明細書で使用する場合、用語「より硬い」は、別の材料と比較した場合の材料の硬度の相対的な尺度を指す。明確にするために、第1の材料又は基板が第2の材料又は基板よりも硬いと定義される場合、第1の材料又は基板のモース値は、第2の材料又は基板のモース値よりも高い。
【0079】
本明細書で使用する場合、用語「より柔軟な」は、別の材料と比較した場合の材料の硬度の相対的な尺度を指す。明確にするために、第1の材料又は基板が第2の材料又は基板よりも柔軟である(柔らかい)と定義される場合、第1の材料又は基板のモース値は、第2の材料又は基板のモース値よりも低い。
【0080】
本明細書で使用する場合、用語「フレキシブル」は、前記基板を破壊することなく力を用いてその物理的形状が変化するように物理的に操ることができる基板の機械的特性を指す。
【0081】
本明細書で名詞として使用する場合、用語「スクリーン」は、装置のカバーガラス/カバースクリーン/カバーウィンドウ/ディスプレイスクリーン/ディスプレイウィンドウ/カバーサーフェス/カバープレートを指す。明確にするために、多くの場合、所与の装置上のスクリーンは、装置のインターフェースを表示する機能と、装置の表面を保護する機能の二つの機能を有し、そのような場合、良好な光透過率は前記スクリーンにとって必要とされる特徴である;ただしこれは必須ではない。表面保護を提供する機能のみが必要とされる他の場合では、スクリーンの光透過率は必須ではない。
【0082】
本発明の一実施形態では、ゴリラガラスよりも硬くて優れており、且つ純粋なサファイアスクリーンに匹敵する、透明スクリーンを開発する方法が提供され、以下の利点を有する:
・いかなる硬化ガラスよりも硬い;
・純粋なサファイアスクリーンよりも断片化の可能性が低い;
・純粋なサファイアスクリーンより軽量;
・純粋なサファイアスクリーンより高い透明度。
【0083】
本発明の一実施形態では、石英基板上にサファイア薄膜を堆積する方法が提供される。熱アニールなどの堆積後処理を用いて、本発明の一実施形態では、9モースのサファイア単結晶硬度に近い8〜8.5モースまでの上面硬度を達成している。本発明の一実施形態は、本明細書では「石英上のサファイア薄膜」として知られている。
図2は、通常のガラス、ゴリラガラス、石英及び純粋なサファイアと比較した場合の「石英上のサファイア薄膜」の上面硬度を示す。
【0084】
石英基板自体は、ガラスよりも高いモース値を有するSiO
2の単結晶である。また、その融点は1610℃であり、高いアニール温度に耐えることができる。さらに、基板は、本発明の実施形態によってサファイア薄膜を堆積させることができる所望のサイズに切断することができる。堆積したサファイア薄膜の厚さは、石英基板のわずか1/1000である。合成石英結晶のコストは比較的低い(本発明が本明細書において開示された時点ではわずか10米ドル/kgである)。したがって、本発明の実施形態では、純粋なサファイア基板の製造と比較して、製造コストが大幅に低減され、且つ製造時間が大幅に短縮される。
【0085】
[本発明の一実施形態の特徴及び利点]
【0087】
本発明の一実施形態では、開発された石英上のサファイア薄膜は、最大値8.5モースの上面硬度を有する。スマートフォン画面に使用される最近のゴリラガラスは、約6.5モースの硬度値しか得られず、天然石英基板は、7モースの硬度値である。したがって、本発明は、最近の技術と比較して、上面硬度において顕著な改善をしている。石英上のサファイア薄膜の硬度値は8.5モースであって、純粋なサファイアの硬度値9モースに非常に近く、石英上のサファイア薄膜には、製造コストが低く、製造時間が短くて済むというメリットがある。
【0088】
<断片化がより少なく、サファイアよりも軽い>
【0089】
本質的には、材料は硬ければ硬いほど脆くなるので、サファイア基板は傷つきにくいが粉々になりやすく、その逆もまたしばしば真実である。石英は、比較的低い弾性率を有し、サファイアよりはるかに耐衝撃性に優れている。
【0090】
さらに、本発明の一実施形態では、堆積されたサファイア薄膜は、石英基板と比較して非常に薄く、堆積されたサファイア薄膜は、石英基板のわずか1/1000の厚さである。したがって、石英上のサファイア薄膜の全重量は、同じ厚さの純粋なサファイア基板の重量のわずか66.6%(又は2/3)である石英基板の重量とほぼ同じである。これは、石英の密度が2.65g/cm
3であり、サファイアの密度が3.98g/cm
3であり、ゴリラガラスが2.54g/cm
3であるからである。換言すれば、石英基板はゴリラガラスより4.3%だけ重いが、純粋なサファイア基板はゴリラガラス及び石英よりも約1.5倍重い。表1は、石英、ゴリラガラス及び純粋なサファイアの密度の比較を示す。
【0091】
(表1)ゴリラガラス、石英及び純粋なサファイアの密度の比較とそれらの百分率差
【0092】
アップル社によって提出された最近公開された特許、すなわち米国特許出願第13/783,262号は、サファイア及びガラス層を一緒に融合させてサファイア積層ガラスを作製し、重さを有するサファイアの耐久性とガラスの柔軟性の利点を組み合わせる方法を考案したことを示している。しかし、より大きな領域(>6インチ)及び薄い(<0.3mm)サファイア基板を研磨することは非常に困難である。したがって、石英上のサファイア薄膜を使用することが、軽量で、上面硬度がより高く、断片化がより少ない基板を用いるため、スクリーン用に最適な組み合わせである。
【0094】
サファイア結晶、石英結晶及びゴリラガラスの屈折率は、それぞれ1.76、1.54及び1.5であるため、フレネル反射損失により、全光透過率は85%、91%及び92%である。このことは、光透過と耐久性との間には若干のトレードオフがあることを意味している。サファイアは光の透過が少ないので、デバイスが薄暗くなったり、あるいはデバイスのバッテリ寿命が短くなることにつながる可能性がある。より多くの光が透過すると、より多くのエネルギーが節約され、デバイスのバッテリ寿命が長くなる。
図3は、石英、石英上のサファイア薄膜、及び純粋なサファイアの光透過率を示す。
【0095】
サファイア及び石英を含むほとんどの結晶には、複屈折の問題がある。常光線及び異常光線の屈折率(n
0及びn
e)を比較することにより、差Δnの大きさが複屈折によって定量化される。また、本発明の一実施形態のΔnの値もまた小さいので、複屈折の問題は、より薄い基板厚さ(約1mm)を有する用途では深刻ではない。例えば、純粋なサファイアは、アップルのiPhone5sのカメラカバーレンズとして使用され、画像がぼやけるとの報告はされていない。表2は、石英及びサファイアの、常光線及び異常光線の屈折率(n
0及びn
e)並びに複屈折におけるそれらの差Δnを示す。
【0096】
(表2)石英及びサファイアの、常光線及び異常光線の屈折率(n
0及びn
e)並びにそれらの差Δn
【0097】
<純粋なサファイアよりも短い製造時間及び低い製造コスト>
【0098】
最近、合成サファイアと石英単結晶の両方が成長され、市販されている。サファイアは石英よりも高い融点を有するので、サファイアの成長はより困難であり、コストがより高い。さらに重要なことに、サファイアを成長させる時間は石英よりもずっと長い。6インチの生成物よりも大きなサファイアを成長させることも困難であり、限られた数の企業しかこれを達成できない。したがって、それによって生産量が制限され、その結果、サファイア基板の製造コストが石英よりも高くなる。表3は、石英及びサファイアの化学式、融点及びモース硬度値を示す。
【0099】
(表3)石英及びサファイアの、化学式、融点及びモース硬度値。
【0100】
純粋なサファイアの使用におけるもう1つの課題は、9モースの硬度値を有するサファイア結晶は、切断及び研磨することが非常に困難であるということである。これまで、より大きな領域(>6インチ)及び薄い(<0.3mm)サファイア基板を研磨することは非常に困難である。その成功率はそれほど高くはないので、このことが、より多くの数のサファイア結晶成長炉が現在稼働しているにもかかわらず、サファイア基板の価格が大幅に下がることを妨げている。コーニングは、サファイアスクリーンは、ゴリラガラスの10倍のコストがかかると主張している。対照的に、石英は7モースの硬度値を有しており、切断及び研磨が容易である。さらに、合成石英結晶のコストは比較的安価である(本開示の時点では、10米ドル/kg未満のコストにすぎない)。
【0101】
したがって、石英上のサファイア薄膜の追加コストは、石英基板上のサファイア薄膜の堆積、及び石英上のサファイア薄膜の後処理にかかるコストである。本発明の一実施形態では、全ての条件を最適化すると、大量生産のプロセスが高速になり、コストが低くなる。
【0102】
本発明の一実施形態では、より硬いサファイア薄膜を石英基板上に堆積する方法が提供される。その薄膜の厚さは、150nm〜1000nmの範囲にある。500〜1300℃での熱アニールなどの堆積後処理を用いて、本発明のこの実施形態では、9モースのサファイア単結晶硬度に非常に近い8〜8.5モースの硬度を達成している。本発明の別の実施形態では、150nm〜500nmの厚さを有し、8〜8.5モースの硬度値を達成し、且つ低散乱損失で良好な光学性能を有するサファイア薄膜が提供される。アニール温度は1150℃から1300℃であり、サファイア単結晶の硬度の9モースに非常に近い。
図4は、石英、及び、1300℃で2時間アニールした場合としていない場合の石英上の190nmのサファイア薄膜の光透過率を示す。したがって、硬度に関しては、石英上のサファイア薄膜は、純粋なサファイアスクリーンに匹敵し、その重量は、純粋なサファイア基板の重量の約66.6%であるガラス/石英基板の重量とほぼ同じであり、それは、石英の密度がわずか2.65g/cm
3であり、一方でサファイアの密度が3.98g/cm
3であるからである。基板を所望のサイズに切断してからサファイア薄膜を堆積させることができるので、純粋なサファイア基板に比べて製造コストが大幅に低減され、且つ製造時間が大幅に短縮される。
【0103】
実際、電子ビーム堆積によるサファイア薄膜の硬度の値は、それほど高くない。本発明の一実施形態では、その硬度の値は、7モース未満であると測定された。しかし、熱アニールプロセスを行った後、膜の硬度は著しく向上する。本発明の一実施形態では、サファイア薄膜は、1300℃で2時間アニールすると、軟化することがわかった。その場合、膜厚は約10%収縮し、膜硬度は8〜8.5モースに改善された。石英基板は融点が1610℃のSiO
2の単結晶であるため、高いアニール温度に耐えることができる。したがって、石英基板上のアニールされたサファイア薄膜の硬度は、8.5モースに達し得る。
図4は、石英、及び、1300℃で2時間アニールした場合としていない場合の石英上の190nmのサファイア薄膜の透過率を示す。
【0104】
また、本発明の他の実施形態では、サファイア薄膜のアニールプロセスを他の基板上で行った。例えば、1000℃でアニールした溶融シリカ基板上のサファイア薄膜、及び500℃でアニールしたガラス基板上のサファイア薄膜について、それらの硬度を測定した。
【0105】
電子ビーム(E−beam)及びスパッタリング堆積は、石英及び他の関連する基板上にサファイア薄膜を堆積する2つの最も一般的な方法である。本発明の実施形態では、これらの2つの一般的な堆積方法が使用される。
【0106】
<電子ビーム堆積によるサファイア薄膜>
【0107】
電子ビーム堆積による所与の基板上のサファイア薄膜堆積物に関して、以下、要点を示す。
・酸化アルミニウムは非常に高い融点を2040℃で有するので、サファイア薄膜の堆積には電子ビーム蒸着を使用している。純粋な酸化アルミニウムの小さなサイズの白色ペレット又は無色結晶は、電子ビーム蒸着源として使用されている。酸化アルミニウムの高融点はまた、サファイアの融点(例えば、大気圧で2040℃)よりも低いアニール温度を可能にする。
・基板を、蒸着源から450mm離れたサンプルホルダーに垂直に貼り付ける。堆積の際に、サンプルホルダーを1〜2RPMで回転する。
・蒸着チャンバーのベース真空は5×10
−6torr未満であり、堆積の際に、真空は1×10
−5torr未満に維持される。
・基板上に堆積される膜の厚さは、約150nmから1000nmである。堆積速度は約1〜5Å/秒である。堆積中の基板は、外部冷却又は加熱なしである。膜厚はエリプソメトリー法及び/又は走査型電気顕微鏡(SEM)によって測定する。
・室温から1000℃までの高温成膜が可能である。
【0108】
別の基板上のサファイア薄膜の電子ビーム堆積のプロセスに関して、以下、より詳細に説明する。
1)酸化アルミニウムは高い融点を2040℃で有するので、サファイア薄膜の堆積には電子ビーム蒸着を使用している。酸化アルミニウムペレットは、電子ビーム蒸着源として使用されている。酸化アルミニウムの高融点はまた、サファイアの融点(例えば、大気圧で2040℃)よりも低いアニール温度を可能にする。
2)コーティングされた基板を、蒸着源から450mm離れたサンプルホルダーに垂直に貼り付ける。堆積の際に、サンプルホルダーを2RPMで回転する。
3)基板上に堆積される膜の厚さは、約190nmから1000nmである。堆積速度は約1Å/秒である。堆積中の基板は、外部冷却又は加熱なしである。膜厚はエリプソメトリー法によって測定する。
4)基板上にサファイア薄膜を堆積した後、それらを500℃から1300℃の炉でアニールする。昇温速度は5℃/分、降温速度は1℃/分である。特定の熱アニール温度を維持するため、この時間は30分から2時間の範囲である。
5)堆積基板には、石英、溶融シリカ及び(強化)ガラスが含まれる。それらの融点は、それぞれ1610℃、1140℃及び550℃である。それらの上にコーティングされたサファイア薄膜のアニール温度は、それぞれ1300℃、1000℃及び500℃である。
6)石英、及び、1300℃で2時間アニールした場合としていない場合の石英上の190nmのサファイア薄膜の透過率を
図4に示す。400nm〜700nmの全可視領域における光透過率は、86.7%より大きく、550nmで最大91.5%であり、一方、純粋なサファイア基板の場合、光透過率はわずか85〜86%である。より多くの光が透過すると、ディスプレイパネルのバックライト光源からのより多くのエネルギーが節約されるので、デバイスのバッテリ寿命が長くなる。
【0109】
<本発明の実施形態のアニールプロセス>
【0110】
基板上にサファイア薄膜を堆積した後、それらを500℃から1300℃の炉内でアニールする。昇温速度は5℃/分、降温速度は1℃/分である。アニール時間は、特定の熱アニール温度で、30分から2時間の範囲である。上述の範囲内の異なる温度での複数段階のアニールはまた、硬度を高め、薄膜の微小亀裂を低減させるためにも使用される。表4は、電子ビーム堆積によって調製された異なるアニール温度での表面硬度及びXRD特性ピークを示す。この表はまた、膜中に存在するサファイアの様々な結晶相を示す(最も一般的な相はアルファ(α)、シータ(θ)及びデルタ(δ)である)。
【0111】
(表4)電子ビーム堆積によって調製された異なるアニール温度での表面硬度及びXRD特性ピーク
【0112】
表4は、500℃から1300℃まで変化させたアニール温度の関数としてのサファイア薄膜の表面硬度の変化を示す。
実際、アニールをしていない、電子ビーム堆積サファイア薄膜の硬度の初期値は、約5.5モースである。しかし、熱アニールプロセスを行った後に、膜の硬度は著しく向上する。アニール温度が、500℃〜850℃、850℃〜1150℃、及び1150℃〜1300℃の場合、石英上のサファイア薄膜の硬度値は、それぞれ硬度スケールで、6〜7モース、7〜8モース、及び8〜8.5モースである。
【0113】
図5は、750℃、850℃及び1200℃で2時間アニールした、石英上の400nmのサファイア薄膜のXRD結果を示す。アニール温度が850℃を超えると、膜は部分的に結晶化し始める。新しいXRDピークの出現は、酸化アルミニウムのシータ及びデルタ構造相の混合物に対応する。
【0114】
1300℃超でアニールすると、膜は、可視光を著しく散乱させ得る大きな微結晶を形成し始める;これにより、透過強度が低下する。さらに、この大きな微結晶がますます蓄積するにつれて、その膜に亀裂を生じて、いくつかの微小サイズの断片が基板から剥離する。
【0115】
本発明の一実施形態では、石英基板上のサファイア薄膜は、1150℃〜1300℃で0.5時間から2時間以内にアニールすることができることがわかった。その場合、膜厚は約10%収縮し、膜の硬度は8〜8.5モースに改善された。石英基板は融点が1610℃のSiO
2の単結晶であるため、高いアニール温度に耐えることができる。このアニール温度の下で、石英基板上のアニールしたサファイア薄膜の硬度は8.5モースに達した。
【0116】
1200℃で2時間アニールした場合としていない場合の石英上の400nmのサファイア薄膜の光透過率を
図6に示し、石英及びサファイア基板と比較した。400nm〜700nmの可視領域内の石英上のサファイア薄膜の光透過率は、88%より大きく、550nmで最大92%である。干渉パターンは、材料の屈折率と膜厚の違いによるものである。全平均光透過率は約90%であり、一方、純粋なサファイア基板はわずか85〜86%である。さらに、石英基板上のサファイア薄膜の光透過スペクトルは、特定の波長での石英基板の光透過スペクトルと一致するので、光学性能に優れ、低散乱損失であることを示している。干渉パターンの最大強度と最小強度の差は、わずか約4%である。実際の用途では、より多くの光が透過すると、ディスプレイパネルのバックライト光源からのより多くのエネルギーが節約されるので、デバイスのバッテリ寿命が長くなる。
【0118】
石英上の、150〜1000nmの範囲の厚さを有するサファイア薄膜を試験した。本発明の一実施形態では、150nm〜500nmの厚さを有するサファイア薄膜のみが、アニール温度が1150℃から1300℃であるときに、低散乱損失で良好な光学性能を有する。しかし、厚さが600nmを超えると、その膜に亀裂が生じて著しい散乱を引き起こし、透過強度が低下する。
【0119】
1150℃から1300℃でアニールした後の、石英上に堆積した150nm〜500nmの厚さを有するサファイア薄膜の場合、測定された全ての硬度はモーススケールで8〜8.5に達し得る。これはより薄いコーティング膜でも、耐スクラッチ層として作用することを示している。
【0120】
<耐スクラッチコーティングのためのその他の可能な基板>
【0121】
石英基板とは別に、本発明の実施形態では、溶融シリカ及びシリコンなどの異なる基板上へのサファイア薄膜の堆積もまた調査した。30分から2時間以内に850℃のアニール温度に耐えることができる、より高いアニール温度又は溶融温度を有する他の強化ガラス又は透明セラミックス基板もまた、基板として使用することができ、モース硬度スケールで、その表面硬度を7〜8に高めることができる。例えば、Schott Nextrema透明セラミックスは、925℃でより短い(short)加熱温度を持つ;コーニングゴリラガラスは、軟化温度が850℃まで高い。
【0122】
溶融シリカのアニール温度は約1160℃であるため、溶融シリカは、基板としてその適性の調査を開始するのに良い候補である。しかし、溶融シリカ上のサファイア薄膜は、たとえ、石英上のサファイア薄膜と同じ堆積条件で堆積されていたとしても、850℃から1150℃でアニールした石英上のサファイア薄膜と比較して異なる挙動を示す。溶融シリカ上のサファイア膜の密着性は、石英上の場合のように良好ではなく(あるいは膨張係数の差が大きいため)、層間剥離が局在化し、微小サイズの亀裂が溶融シリカ基板上に生じる。しかし、より薄い膜を使用すると、光の散乱につながるこれらの問題が大幅に改善される。
図7は、1150℃で2時間アニールした溶融シリカ上の160nmのサファイア薄膜の透過を示す。400nm〜700nmの全可視領域における溶融シリカ上のサファイア薄膜の透過率は、88.5%より大きく、470nmで最大91.5%である。全平均光透過率は約90%であり、一方、純粋なサファイア基板はわずか85〜86%である。さらに、測定された表面硬度は、モーススケールで8を超えて維持される。
【0123】
シリコンは、その融点を約1410℃で有し、基板として不透明な基板である。同じ堆積条件からみて、シリコン上のサファイア膜は、石英基板と比較して、モース硬度において同様の特性を示し、これはまた2つの温度範囲のグループに分けられる。しかし、シリコンは透明基板ではないので、透明カバーガラス又はウィンドウ用途として使用することができない。したがって、サファイア膜は、シリコン表面をスクラッチから保護するための保護層として、耐スクラッチ性のみを付与することができる。(シリコンはモーススケール硬度が7である)。そのような保護層は、厚いガラス封入(encapsulation)を潜在的に排除することができる。これは、光吸収を向上させ、集光効率を高める。高温処理に耐えることができる他の無機半導体系太陽電池も、その上にサファイア薄膜を同様に堆積させることができる。本明細書に記載された本発明の実施形態から、当業者であれば、本発明を非常にうまく適用して、サファイア薄膜を他の基板上に堆積させることが想定されている。具体的には、サファイア薄膜が、その下にある基板に対する耐スクラッチ保護層として作用し、これらの基板が、適用可能な時間の間、本発明のアニール温度に耐えうることが提供される。
【0124】
[スパッタリング堆積によるアニールされたサファイア薄膜]
【0125】
<スパッタリング堆積によるサファイア薄膜>
【0126】
スパッタリング堆積による所与の基板上のサファイア薄膜堆積物に関して、以下、ステップを示す。
1)サファイア薄膜の堆積は、アルミニウム又は酸化アルミニウムのターゲットを用いたスパッタリング堆積によって行うことができる。
2)基板を、ターゲットから95mm離れたサンプルホルダー上に取り付ける。堆積の際に、サンプルホルダーを回転して(例示速度は10RPMである)、膜厚の均一性を達成する。
3)蒸着チャンバーのベース真空は3×10
−6mbar未満であり、コーティング圧力は約3×10
−3mbarである。
4)基板上に堆積される膜の厚さは、約150nmから600nmである。
5)室温から500℃までの高温成膜が可能である。
【0127】
<本発明の別の実施形態のアニールプロセス>
【0128】
基板上にサファイア薄膜を堆積した後、それらを500℃から1300℃の炉でアニールする。昇温速度は5℃/分、降温速度は1℃/分である。アニール時間は、特定の熱アニール温度で、30分から2時間の範囲である。異なる温度での複数段階のアニールを用いて、硬度を高め、薄膜の微小亀裂を低減する。これを表5に示す。
【0129】
(表5)スパッタリング堆積によって調製した、石英上のサファイア膜の、異なるアニール温度での表面硬度及びXRD特性ピーク
【0130】
表5は、アニール温度を500℃から1300℃まで変化させた場合の、石英上のサファイア薄膜の表面硬度の変化を示す。実際、アニールをしていない、スパッタリング堆積によるサファイア薄膜の硬度の初期値は、電子ビーム堆積によるその値よりもわずかに高く、約6〜6.5モースである。熱アニールプロセスを行った後では、膜の硬度の性能は、電子ビーム堆積による場合の性能と異なる。アニール温度が500℃〜850℃の範囲にある場合、膜の硬度には大きな変化ない。850℃〜1150℃の範囲では、石英上にコーティングされた薄膜は容易に剥離する。しかし、1150℃〜1300℃の範囲では、その膜は硬質膜を形成し、その表面硬度は、厚さ150nm〜300nmの場合に8〜8.5モースであり、厚さ300nm〜500nmの場合に8.5〜8.8モースである。
【0131】
図8Aは、850℃、1050℃及び1200℃で2時間アニールした、石英上の400nmのサファイア薄膜のXRD結果を示す。生じているXRDピークは、酸化アルミニウムのデルタ、シータ及びアルファ構造相の混合に対応する。電子ビーム堆積とは異なり、スパッタリング堆積の場合のXRD結果における酸化アルミニウムのアルファ相の発生は、より硬い表面硬度をもたらし、平均8.7モースを示す。一方、
図8Bは、1150℃で2時間アニールした、石英上の、220nm、400nm及び470nmの厚さを有するサファイア薄膜のXRD結果を示す。アルファ相の発生は約300nmから始まり、サファイア薄膜の厚さが470nmにまで増加すると、元々あった構造相の混合は、ほとんどアルファ相に変換される。表面硬度は、このような条件下で最も硬い。しかし、サファイア薄膜の厚さをさらに厚くすると、膜の層間剥離が生じる。
【0132】
スパッタリング堆積し、1100℃で2時間アニールすることによって調製した、石英上の、220nm、400nm及び470nmのサファイア薄膜の光透過スペクトルを
図9に示し、石英基板と比較した。石英上のアニールされた220nmのサファイア薄膜の場合、散乱損失はわずかであり、光学性能が優れている。400nm〜700nmの全可視領域における透過率は、87%より大きく、520nmで最大91.5%である。全平均透過率は約90.2%である。干渉パターンの最大強度と最小強度の差は、わずか約4.5%である。
【0133】
しかし、サファイア薄膜の厚さが300nmを超えると、特にUV領域で光透過強度が低下し始め、レイリー散乱が支配的となることを示している。レイリー散乱の強い波長依存性は、粒子サイズが1/10波長未満の散乱粒子に適用される。これは、100nm以下の結晶サイズを有するサファイア薄膜中のアルファ相の形成に起因する。したがって、表面硬度はより硬くなるが、透過率はより悪化する。
【0134】
アニールされた石英上の400nm及び470nmのサファイア薄膜の場合、400nm〜700nmの全可視領域における光透過率は、それぞれ81%〜88%及び78%〜87%である。それらの全平均透過率の値は、それぞれ約85.7%及び83.0%である。
【0135】
しかし、サファイア薄膜の厚さが500nmより大きいと、より大きな微結晶が微小亀裂の形態で蓄積し、その膜に亀裂を生じて、いくつかの微小サイズの断片が基板から剥離する。
【0136】
<スパッタリング堆積による溶融シリカ上のサファイア薄膜>
【0137】
石英基板とは別に、溶融シリカのアニール温度は約1160℃であるため、低コストの溶融シリカは、サファイア薄膜コーティング基板の候補となり得る。
【0138】
表6は、アニール温度を750℃から1150℃まで変化させた場合の、溶融シリカ上のサファイア薄膜の表面硬度の変化を示した。実際、アニールをしていない、スパッタリング堆積による溶融シリカ上のサファイア薄膜の硬度の初期値は、石英上のその値よりもわずかに低く、約5.5〜6モースである。850℃〜1150℃の範囲では、硬度はさらに悪く、全ての150nm〜600nmのサファイア薄膜について5モース未満である。しかし、1150℃では、その膜は硬質膜を再び形成し、その表面硬度は、厚さ150nm〜600nmの全てのサファイア薄膜の場合に8〜8.5モースである。
【0139】
(表6)スパッタリング堆積によって調製した、溶融シリカ上のサファイア膜の、異なるアニール温度での表面硬度及びXRD特性ピーク
【0140】
図10は、スパッタリング堆積し、750℃、850℃、1050℃及び1150℃で2時間アニールすることによって調製した、溶融シリカ上の350nmのサファイア薄膜のXRD結果を示す。XRDの結果は、溶融シリカ基板上に共存する酸化アルミニウムのシータ構造相とアルファ構造相との混合を示している。それゆえに、サファイア薄膜は8〜8.5モースの硬質表面を有するが、溶融シリカ基板は5.3〜6.5モースしか示さない。
【0141】
スパッタリング堆積し、1150℃で2時間アニールすることによって調製した、溶融シリカ上の、180nm〜600nmのサファイア薄膜の透過スペクトルを
図11に示し、溶融シリカ基板と比較した。
【0142】
溶融シリカ上のアニールされた180nm及び250nmのサファイア薄膜の場合、散乱損失はわずかであり、光学性能が優れている。400nm〜700nmの全可視領域におけるサファイア薄膜の透過率は、それぞれ88.9%〜93.1%及び84.8%〜92.8%である。それらの全平均透過率の値は、それぞれ約91.3%及び90.7%である。
【0143】
アニールされた溶融シリカ上の340nm及び600nmの厚さのサファイア薄膜の場合、400nm〜700nmの可視領域にわたる透過率は、それぞれ75%〜86%及び64%〜80%である。それらの全平均透過率は、それぞれ約81.7%及び74.1%である。
【0144】
したがって、1150℃でアニールされた、溶融シリカ上の150nm〜300nmの厚さを有するサファイア薄膜は、約91%の透過率で良好な光学性能を有し、8モース超の硬い表面硬度を有する。
【0146】
「強化された」スクリーン材料が現在一般的に使用されているのは、コーニング社のゴリラガラスであり、これは15億を超えるデバイスで使用されている。モーススケールの硬度では、最新のゴリラガラスは6.5〜6.8しか示さず、鉱物のモース値未満にすぎないので、ゴリラガラスは依然として砂によって傷つきやすいものである。したがって、ガラス基板上により硬い薄膜を堆積させるには、別の方向性がある。しかし、一般的に使用されている大部分のカバーガラスの場合、許容される最大アニール温度はわずかに600℃〜700℃の範囲でしかない。この温度範囲では、アニールされたサファイア薄膜のモーススケールの硬度は、ガラス基板自体の硬度に近いわずか6〜7モースにしか達することができない。したがって、アニールされたサファイア薄膜のモース硬度を、700℃未満のアニール温度を用いて、7を超えたものにするための新しい技術が開発されている。
【0147】
本発明の別の実施形態では、我々は、850℃未満の最大アニール温度で、より硬度の低い基板上に、より硬度の高いサファイア薄膜の層又は多層を堆積させることができる。例えば、ゴリラガラス、強化ガラス、ソーダ石灰ガラスなどである。したがって、より硬い耐スクラッチ薄膜を、ガラス上にコーティングすることができる。これは、表面硬度を向上するための、最速で低コストの方法である。
【0148】
本発明のさらに別の実施形態では、Ti及びAgなどの金属のナノ層を適用することにより、より低い温度で、多結晶サファイア薄膜を成長させることができることを示した。ナノ金属触媒を使用しない場合よりも、かなり低い温度で、この触媒的増強(enhancement)をもたらすことができる。この触媒的増強は、堆積した原子を凝集させるのに十分な運動エネルギーがあることが一度確立され、結晶化を可能にすることから生じる。このアニール温度は300℃で開始することができる。低温アニールが300℃から開始した場合の本発明の実施形態を、表7に示す。
【0149】
(表7)アニールなし(室温、すなわちRT)、並びに300℃、400℃及び500℃のアニール温度での、基板/Ti触媒/サファイア膜の構造を有する実施形態
【0150】
図13(A)は、表7の実施形態ごとに異なるアニール条件を用いた異なるサンプルについてのX線反射率(XRR)測定結果を示し、
図13(B)は、表7の実施形態ごとに異なるアニール条件を用いた異なるサンプルについての光透過スペクトルを示す。
【0151】
一実施形態では、我々は、非常に薄い「不連続な」金属触媒及びより厚いサファイア膜を、ガラス基板上に堆積する方法を開発した。600〜700℃での熱アニールなどの堆積後処理を用いて、我々は、7〜7.5モースの硬度を達成し、この硬度はほとんどのガラスの硬度よりも高い。
【0152】
ナノ金属触媒は、電子ビーム蒸着又はスパッタリングなどの堆積システムによって堆積された1〜15nmの厚さを有するべきである。この触媒は、SEMで示されるように連続膜ではない。堆積した金属は、(5〜20nm)直径のナノドット(ND)形状を有してもよい。その金属は、チタン(Ti)及び銀(Ag)を含む。より厚いサファイア膜は、100〜1000nmの範囲にある。
【0153】
実際、電子ビーム又はスパッタリング堆積によるサファイア薄膜の硬度値は、それほど高くない。我々は硬度を測定し、硬度はわずか5.5〜6モースであった。しかし、熱アニールプロセス後、膜の硬度は著しく向上する。ナノ金属触媒なしの場合、膜の硬度は、アニール温度600〜850℃で6〜7モースであった。ナノ金属触媒を添加した後、膜の硬度は、アニール温度600〜700℃で7〜7.5モースに改善し、アニール温度701〜1300℃で8.5から9モースの硬度を達成した。
【0154】
これは、ガラス基板上の表面硬度の大幅な改善であり、特に、このアニール温度でガラス軟化温度未満である。これは、アニール中にガラスが変形しないことを意味する。したがって、金属触媒の役割は、サファイア薄膜とガラス基板との間の接着性を強化するだけでなく、サファイア薄膜の硬化をもたらす。電子ビーム堆積によって調製された、異なるアニール温度範囲でのナノ金属触媒あり及びなしのサファイア薄膜の表面硬度を、表8に示す。
【0155】
(表8)電子ビーム堆積によって調製された、異なるアニール温度範囲でのナノ金属触媒あり及びなしのサファイア薄膜の表面硬度
【0156】
電子ビーム堆積によるガラス基板上のサファイア薄膜堆積物に関して、以下、要点を示す。
1)蒸着チャンバーのベース真空は5×10
−6torr未満であり、堆積の際に、真空は1×10
−5torr未満に維持される。
2)基板を、蒸着源からある距離(例えば450mm)離れたサンプルホルダー上に取り付ける。堆積の際に、サンプルホルダーを1〜2RPMで回転する。
3)高い融点を有するナノ金属(例えば、Ti、Cr、Ni、Si、Ag、Au、Geなど)の堆積は、電子ビーム蒸着及びスパッタリングなどの堆積システムを使用している。基板上に直接堆積される金属触媒の厚さは、QCMセンサーによってモニターされ、約1〜15nmである。ナノ金属触媒の堆積速度は約0.1Å/秒である。堆積中の基板は、外部冷却又は加熱なしである。膜の形態は、SEMの上面図及び断面図によって測定した。
4)非常に高い融点を2040℃で有しているので、サファイア薄膜の堆積には電子ビーム蒸着を使用している。純粋な酸化アルミニウムの小さなサイズの白色ペレット又は無色結晶は、電子ビーム蒸着源として使用されている。酸化アルミニウムの高融点はまた、サファイアの融点(例えば、大気圧で2040℃)よりも低いアニール温度を可能にする。
5)基板上に堆積されるサファイア薄膜の厚さは、約100nmから1000nmである。堆積速度は約1〜5Å/秒である。堆積中の基板は室温であり、活性温度は必須ではない。膜厚はエリプソメトリー法又は他の適切な方法によって、同様に又はよりよい精度で測定することができる。
6)基板上にサファイア薄膜を堆積した後、それらを500℃から1300℃の炉内でアニールする。昇温勾配は緩やか(例えば5℃/分)でなければならず、降温勾配も緩やか(例えば1〜5℃/分)でなければならない。アニール時間は、特定の熱アニール温度範囲内で、30分から10時間の範囲である。上述の範囲内の異なる温度での複数段階のアニールを用いて、硬度を高め、薄膜の微小亀裂を低減することもできる。
【0157】
溶融シリカ、及び、10nmのTi触媒を伴う場合と伴わない場合の溶融シリカ上の、250nmのアニールされたサファイア薄膜(700℃、1150℃で2時間アニールしたもの)の透過を、
図12に示す。700℃のアニールの結果では、400nm〜700nmの可視領域における平均透過率は89.5%より大きく、462nmで最大93.5%であり、一方、溶融シリカ基板は、平均透過率は93.5%である。
【0159】
本発明の別の実施形態では、フリップチップトランスファー(FCT)技術を用いて製造することができる多層フレキシブルメタマテリアルの製造方法及び装置を提供する。そのようなメタマテリアルは、より柔軟なフレキシブル基板上に転写されたより硬い薄膜の基板を含む。この技術は、他の同様の技術、例えば、ナノ構造をフレキシブル基板上に直接製造する金属リフトオフプロセスやナノメートル印刷技術とは異なる。硬質基板上の中間転写層及び3層メタマテリアルナノ構造を最初に接着剤上に転写することができるので、それは、両面光学接着剤を用いた、溶液を含まないFCT技術である。本発明の別の実施形態は、ガラス、石英及び金属などの硬質基板から、プラスチック又はポリマー膜などのフレキシブル基板上に、メタマテリアルを転写することを可能にする製造方法及び装置である。したがって、フレキシブルメタマテリアルは、用いられる元の基板とは独立して製造することができる。
【0161】
多層メタマテリアルの概略的な製造プロセスを、
図14に示す。まず、従来のEBLプロセスを用いて、クロム(Cr)でコーティングされた石英上に多層プラズモン又はメタマテリアルデバイスを作製した。厚さ30nmのCr層を、犠牲層として使用した。次に、それぞれ熱蒸着法及びとRFスパッタリング法を用いて、金/ITO(50nm/50nm)薄膜をCr表面に蒸着した。次に、約300nmの厚さを有するZEP520A(正の電子ビームレジスト)薄膜を、ITO/金/Cr/石英基板の上にスピンコートし、EBLプロセスを用いて、ZEP520A上に二次元のホールアレイを得た。金ナノ構造(ディスクパターン)を得るために、第2の50nmの厚さの金薄膜を、電子ビームでパターン化したレジストの上にコーティングした。最後に、レジスト残渣を除去することによって、二次元の金ディスクアレイナノ構造を形成した。各メタマテリアルパターンの領域サイズは500μm×500μmであり、ディスクアレイの周期は600nmであり、ディスク直径は約365nmである。
【0162】
[フリップチップ転写(FCT)技術]
【0163】
フレキシブル吸収体メタマテリアルの転写プロセスを
図15に示す。両面粘着性の光学的に透明な接着剤(厚さ50μm;例えば、3M社製の市販品)をPET基板(厚さ70μm)に付着させた。このようにして、3層メタマテリアルデバイスを光学接着剤と緊密に接触させ、硬質基板と光学接着剤との間に挟み込んだ。石英基板上のCr薄膜は、RFスパッタリングプロセス後に数時間空気に曝され、Cr表面上に薄い自然酸化膜が存在することに留意されたい。したがって、Crと金との間の界面の接着性は、金/ITO/金ディスク/光学接着剤の結合している界面の接着性よりもはるかに弱い。これにより、3層メタマテリアルナノ構造体を、Crでコーティングされた石英基板から剥離することが可能になる。一旦、メタマテリアルナノ構造がPET基板に転写されると、それは様々な形状に曲げるのに十分な柔軟性を有する。最後に、メタマテリアルナノ構造を、デバイスの上に厚さ300nmのPMMA層をスピンコーティングすることによって封入した(encapsulated)。
【0164】
別の実施形態では、本発明は、PET基板を曲げることによって様々な形状に変形することができる新規のNIRメタマテリアルデバイスを提供する
【0165】
図16(a)は、透明PETとPMMA薄膜によって挟まれたフレキシブルな吸収体メタマテリアルを示す。500μm×500μmの面積を有するいくつかの吸収体メタマテリアルのナノ構造を、フレキシブル基板上に作製した。実際、PET層の柔軟性特性を用いて、吸収体メタマテリアルデバイスは、多くの形状、例えば円筒形状に適合させることができる(
図16(b))。円筒状基板の最小半径は約3mmであり、10回の繰り返し曲げ試験を行った後、メタマテリアルデバイス上には、明らかな欠陥は観察されない。
【0166】
[光学的特性評価及びシミュレーション]
【0167】
上述の3層金属/誘電体ナノ構造は、吸収体メタマテリアルデバイスである。このデバイスの設計は、入射光のエネルギーがITO層に強く局在するような設計である。NIR3層メタマテリアル・アーキテクチャの吸収効果は、局在した表面プラズモン共鳴又は磁気共鳴として解釈することができる。ここで述べる吸収現象は、金属ディスクアレイにおける透過効果の抑制(極薄金属ナノ構造の共鳴異常により入射光が強く吸収される現象)とは異なる。金ディスク/ITO/金吸収体メタマテリアルの光学特性を特徴付けるために、フーリエ変換赤外分光器(FTIR)を用いて吸収体メタマテリアルの反射スペクトルを測定した。赤外顕微鏡とFTIR分光器を組み合わせることにより、微小領域ナノフォトニックデバイスからの透過スペクトル及び反射スペクトルを測定することができる。
図17において、空気/メタマテリアル界面からの反射スペクトル(実験線プロット)を100μm×100μmのサンプリング面積で測定した。約1690nmの波長での吸収ピークでは、反射効率は約14%であり、すなわち、この波長で吸収材メタ材料が作用している。RCWAシミュレーション(シミュレーション線プロット)では、E.D.Palik著、固体の光学定数ハンドブック、Academic Press、New York、1985年における実際の光学定数が使用されている; その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。共鳴波長では、実験と計算が互いによく一致している。
【0168】
フレキシブル吸収体メタマテリアルの反射スペクトルを
図18(a)に示す(0°線プロット)。
図17のFTIR結果と比較すると、フレキシブルメタマテリアルの吸収の凹み(dip)は約1.81μmにレッドシフトしている。このレッドシフトは、主に周囲媒体の屈折率変化に起因する(光学接着剤及びPETの屈折率は約1.44である)。
図18(c)及び
図18(d)では、三次元厳密結合波解析(RCWA)法を用いて吸収体メタマテリアル上の反射スペクトル及び透過スペクトルを計算し、実験的に確認された金、ITO、Cr、SiO
2及びPETの材料のパラメータを使用した。約1.81μmの波長での共鳴吸収も、理論的シミュレーションで観察することができる。しかし、測定された反射スペクトルには、約1.2μm付近に2つの共振凹み(dips)が存在する。RCWA計算(
図18(c))では、2つの凹みは再現され、入射角にあまり敏感ではないので、2つの局部共鳴モードに起因する。角度に依存する計算においては、実験結果に適合するように、TE偏光が使用される(電界は入射平面に対して垂直である)。入射角を0°から45°まで変化させると、入射角が大きい場合に光を効率的に局在化できないため、反射効率が増加傾向を示す。しかしながら、実験(
図18(a))における後方反射効率は、明らかに低下する。これは、現在の実験設定(次項で説明)では、後方反射信号(入射方向と収集方向は互いに同じである)を収集することしかできず、大きな入射角では収集効率が非常に低いためである。
図18(b)では、フレキシブルメタマテリアルの透過スペクトルを同じFTIR設定を用いて測定したが、主な違いは、光が空気/PMMA界面から入射した点である。ファノ型透過ピークが波長約1.85μmで観察される。共鳴波長では、実験による透過効率は、理論的シミュレーションの透過効率よりも高い(
図18(d))。これは、金プレーナー膜及び二次元ディスクアレイ上の欠陥に起因する可能性があり、漏れ放射の効率を高め、測定結果におけるより高い透過効率に寄与する。
【0169】
図19に示すように、PET基板を曲げることにより、異なる曲がり形状の吸収体メタマテリアルの光学応答を測定することができる。曲がったPET基板の形状は、基板端部(A及びB)間の距離を調整することによって制御した。吸収体デバイス上において分解された後方反射の角度は、曲げ条件を変化させることによって測定した。
図19から、入射角(90°−θ)は、メタマテリアルデバイスの位置における曲げ勾配から決定した。
図18(a)から、入射角を0度から45度まで増加させると、後方反射の強度が弱くなり、吸収凹みが浅くなることが観察される。それにもかかわらず、フレキシブル吸収体メタマテリアルの共鳴吸収波長は、光の入射角に対して敏感ではないことを示している。メタマテリアルで作られたデバイスは、高感度のセンサーにすることができる。本発明は、フレキシブル基板上にメタマテリアルデバイスを製造する新規な技術を提供する。柔軟性により、デバイスを曲げたり伸ばしたりすることが可能になり、これによりデバイスの構造が変わる。各デバイスの共振周波数はデバイス構造の関数であるため、共振周波数を、基板の曲げと伸びによって調整することができる。したがって、本発明の別の実施形態は、物理的手段が材料の構造を変化させ、その共振周波数の変化をもたらす、メタ材料である。材料組成を変更する必要はない。本メタ材料の実施形態は、電磁波吸収体として使用されるフレキシブルなプラズモン又はメタマテリアルナノ構造デバイスである。
【0170】
上述した本発明の実施形態では、NIR波長で動作する非常にフレキシブルな3層吸収体メタマテリアルデバイスを報告している。FCT法を用いることにより、光学的に透明な接着剤(例えば、3M社製の市販品)を使用して、3層金ディスク/ITO/金吸収体メタマテリアルを、石英基板から透明なPET基板に転写した。さらに、3層吸収体メタマテリアルは、PMMA薄膜及び光学接着層によって封入され、フレキシブルデバイスを形成した。FTIR実験は、吸収体メタマテリアルが、石英基板と非常にフレキシブルなPET基板の両方に対して、良好に機能することを示した。また、このフレキシブルなメタマテリアルにおいて、角度の影響を受けない吸収効果及びファノ型透過共鳴が観測された。
【0171】
さらに、本発明に記載の、溶液を含まないFCT技術を用いて、他の可視のNIR金属/誘電体多層メタマテリアルを、フレキシブル基板上に転写することもできる。可視のNIR領域で動作するフレキシブルメタマテリアルは、特にメタマテリアル・アーキテクチャが曲面で設計されている場合に、三次元空間における光の操作に多くの利点を示す。本発明の別の実施形態では、本発明のFCT技術を採用して、より硬い薄膜を、より柔軟でフレキシブルな基板上に転写することができる。
【0172】
[フレキシブル基板上に薄膜を転写する実験の詳細]
【0173】
硬質基板からPET基板へのAl
2O
3薄膜の転写に採用される方法は、弱い接着性の金属中間層を用いた転写である。このアプローチは、参照された2012年12月23日に出願した米国特許出願第13/726,172号、及び2012年12月23日に出願した米国特許出願第13/726,183号に基づき、両者は、2011年12月23日に出願した米国仮特許出願第61/579,668号の優先権を主張する。本発明の一実施形態は、透明ポリエステルテープを使用して、機械的応力を加え、犠牲金属層からAl
2O
3薄膜を一緒に分離することである。次に、Al
2O
3薄膜をPET基板に転写し、犠牲金属層を酸によってエッチング除去することができる。
【0174】
まず、薄いクロム(Cr)膜(すなわち、厚さ30〜100nm)を溶融シリカ基板上に堆積し、続いて、薄い銀(Ag)膜(すなわち、厚さ30〜100nm)をCrの上に堆積する。次に、Ti膜(厚さ3〜10nm)などの別の金属の層を堆積し、これをアニールプロセスに供する。次に、Al
2O
3薄膜(例えば、100〜500nm)を金属層上に堆積する。次に、本明細書で先に開示した本発明の低温アニールプロセスの実施形態に沿って300℃〜800℃の温度範囲でアニールを行う。95%より高い光透過率を有するフレキシブルな透明ポリエステルテープをAl
2O
3膜に付着させ、硬化したAl
2O
3薄膜を機械的に引き剥がす。製造構造を
図20に概略的に示す。表面エネルギーが異なるためにCrとAgとの密着性は弱く、そのため応力を加えることによって容易に克服することができる。加えられた応力は、純粋な開応力(opening stress)モードとせん断応力モードの両方からなる。これらの2つのモードは、AgとCrの間に明確な分離があることを確実にする。加えられた応力の下で、硬化したAl
2O
3薄膜を、犠牲Ag層及びフレキシブルな透明ポリエステルテープと一緒に、硬質基板から剥離する(
図21参照)。最後に、犠牲Ag層を、
図21に示すようなアセンブリを浸漬することにより、HNO
3(1:1)などの酸によってエッチング除去する。テープ及びAl
2O
3薄膜は耐酸性であるため、エッチング溶液は、犠牲Ag層のみをより速くエッチング除去する。Ag薄膜が完全にエッチング除去された後、Al
2O
3は、
図22に示すようにPET基板に完全に転写される。
【0176】
図23は、Al
2O
3薄膜の転写のために製造されたサンプルを示す。溶融シリカ基板上に、まず、50nmの典型的な厚さのクロムを、約5nm/分のスパッタリング収率でスパッタリングした。次に、50nmのAgを、電子ビーム蒸着によってその上に堆積した。最後に、厚さ約200nmのAl
2O
3を、電子ビーム蒸着によってそのアセンブリに堆積した。
【0177】
図24は、透明テープを用いて機械的剥離を施した後の、溶融シリカ基板及びCrからのAl
2O
3の剥離を示す。Al
2O
3は、いかなる亀裂も泡も伴うことなく、Ag膜及びテープと共に、完全且つスムーズに硬質基板から剥離する。酸中の犠牲Ag層をエッチング除去した後、Al
2O
3は、フレキシブルPET基板にうまく転写される。
【0178】
当業者に明らかであるような変更及び変形は、本発明の範囲内であるとみなされる。