【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明1)
本発明に係る製品液体窒素の製造方法は、
所定の不純物が除去された原料空気の少なくとも一部を第一温度まで冷却し、予冷原料空気とする予冷工程と、
前記予冷工程で冷却された前記原料空気の少なくとも一部を第一温度よりも低い第二温度まで冷却し、低温原料空気とする冷却工程と、
前記予冷工程で冷却された原料空気の他の一部を膨張冷却させ、第一低温空気とする第一膨張工程と、
前記原料空気の少なくとも一部を膨張冷却させ、第二低温空気とする第二膨張工程と、
第一精留部を有する精留塔の前記第一精留部
の位置よりも下部に、前記冷却工程で冷却された前記原料空気を膨張させて導入する第一導入工程と、
前記精留塔の塔上部に配置される凝縮部おいて、前記精留塔
の下部に貯留された酸素富化液との熱交換を行うことにより、前記精留塔内部のガスの少なくとも一部を凝縮させる凝縮工程と、
前記精留塔の塔上部に配置される凝縮部から取り出された廃ガス(リサイクル空気)を分流し、分流された前記排ガスの一方を圧縮するリサイクル空気圧縮工程と、
分流された前記廃ガスの他方を、前記原料空気および前記予冷原料空気のうち少なくともいずれかと熱交換させる廃ガス熱交換工程と、
前記精留塔の
前記第一精留部
の位置よりも下部に、前記リサイクル空気圧縮工程で圧縮された圧縮リサイクル空気を導入する第二導入工程と、
前記精留塔から製品液体窒素を取り出す製品液体窒素取出工程と、
を含む。
前記予冷工程および前記冷却工程において、前記第一低温空気および/または第二低温空気と、前記原料空気との熱交換が行われる。
【0008】
圧縮され、所定の不純物を除去された原料空気は、主熱交換器における予冷工程および冷却工程により冷却されて低温原料空気となる。低温原料空気は原料空気膨張弁で膨張された後に、精留塔へ導入される。
低温原料空気の一部は主熱交換器内で液化される。液化する低温原料空気の量は、例えば低温原料空気中の5重量%以上90重量%以下であり、好ましくは7重量%以上75重量%以下である。このときの液化量は、精留塔で製造される液体窒素量に比例する。したがって、大量の液体窒素を製造する場合には、必要とされる原料液化空気の量が大幅に増大する。原料液化空気の量が増大すると、相対的に液化しない低温原料空気の量が減少するため、精留塔における低温原料空気の精留のために必要なガス流が不足する結果となる。また、液化量を増大させるには、原料空気の冷却に大きなエネルギーが必要であるため、エネルギー効率が悪い。
【0009】
そこで本発明では、精留塔上部に配置された凝縮部で蒸発されたガス(廃ガス)の少なくとも一部をリサイクル空気として圧縮するリサイクル空気圧縮工程を設けた。廃ガスの少なくとも一部とは、例えば廃ガス中の20重量%以上90重量%以下であり、好ましくは40重量%以上80重量%以下である。リサイクル空気圧縮工程において圧縮された廃ガスを精留塔に供給することにより、精留に必要とされるガス流を確保することができる。また、廃ガスをリサイクル空気として再度精留することにより、窒素の回収率を向上させることができる。
【0010】
さらに本発明では、原料空気の一部を、主熱交換器の前段で膨張させて冷却し、膨張されなかった残りの原料空気を主熱交換器内部で予冷するための寒冷として利用する。原料空気の一部とは、例えば原料空気中の1重量%以上50重量%以下であり、好ましくは3重量%以上40重量%以下である。
また、主熱交換器内部で予冷された原料空気の一部を主熱交換器外部へ取り出して膨張させて冷却し、膨張されなかった残りの予冷された原料空気を主熱交換器内部で冷却するための寒冷として利用する。主熱交換器内部で予冷された原料空気の一部とは、例えば主熱交換器内部で予冷された原料空気中の1重量%以上40重量%以下であり、好ましくは5重量%以上30重量%以下である。
このように原料空気の一部を寒冷として利用することにより、原料空気を大量に液化させる場合におけるエネルギー効率を向上させることができる。
【0011】
主熱交換器内で液化されなかった原料空気および膨張弁で減圧された際に気化した原料液化空気は、ガスとして精留塔へ導入される。ガスとして導入された低温原料空気は精留塔の塔頂部に供給される液体窒素と接触し、精留され、酸素富化液と窒素ガスに分離される。精留塔下部に貯留された酸素富化液は、精留塔に供給された原料液化空気ととともに凝縮部に冷媒として供給される。
窒素ガスは精留塔の塔頂部から凝縮部に供給され、液化される。得られた液体窒素の一部は還流液として精留塔の塔頂部に供給され、他の一部は液体窒素取出工程において製品液化窒素として窒素製造装置から取り出される。液体窒素の一部とは、例えば液体窒素中の1重量%以上60重量%以下であり、好ましくは4重量%以上50重量%以下である。
取り出された製品液体窒素をさらに冷却するため、製品液体窒素の一部を減圧して冷媒として使用しても良い。製品液体窒素の一部とは、例えば製品液体窒素中の1重量%以上30重量%以下であり、好ましくは5重量%以上25重量%以下である。減圧させることにより冷却された液体窒素は、サブクーラにおいて、減圧されていない液体窒素との熱交換を行う。これにより製品液体窒素はさらに冷却されるのである。サブクーラにおいて、製品液体窒素と、第一膨張タービンから導出される第一低温空気とを熱交換させ、製品液体窒素を冷却しても良い。
冷媒とする一部の液体窒素と、他の液体窒素とを主熱交換器を通じて熱交換させても良い。
凝縮部に冷媒として供給された酸素富化液と原料液化空気の混合液は、窒素ガスとの熱交換によって蒸発される。蒸発されたガス(廃ガス)の一部は、リサイクル空気としてリサイクル空気圧縮機に供給されて圧縮され、精留塔の下部に供給される。
本発明により製造される製品液体窒素は、例えば純度が99%以上であり、好ましくは99.9999%以上である。
【0012】
(発明2)
本発明に係る窒素製造装置は、
所定の不純物が除去された原料空気を冷却する主熱交換器(1)と、
前記原料空気を前記主熱交換器
(1)において冷却させることにより得られた低温原料空気を膨張させて、低温原料空気の一部を原料液化空気とする原料空気膨張弁(4)と、
膨張された前記低温原料空気が導入される、第一精留部(18)を有する精留塔(5)と、を備える窒素製造装置(100;101;102;103;104)であって、
前記原料空気を、前記主熱交換器(1)を経由して、前記精留塔(5)に供給する主原料空気供給ライン(28)と、
前記主原料空気供給ライン(28)から前記主熱交換器
(1)の内部で分岐された第一分岐ライン(25)と、
前記第一分岐ライン(25)から供給された第一分流原料空気を膨張させて第一低温空気とする第一タービン(2)と、
前記第一低温空気を前記主熱交換器(1)に導入する第一低温空気導入ライン(26)と、
前記主原料空気供給ライン(28)から、前記主熱交換器(1)より前段で分岐された第二分岐ライン(23)と、
前記第二分岐ライン(23)から供給された第二分流原料空気を膨張させて、前記第一低温空気よりも温度が低い第二低温空気とする第二タービン(3)と、
前記第二低温空気を前記主熱交換器(1)に導入する第二低温空気導入ライン(24)と、
前記精留塔
(5)の塔上部に配置される凝縮部(9)と、
前記精留塔(5)
の下部から酸素富化液の少なくとも一部を導出し、前記凝縮部
(9)に冷媒として前記酸素富化液を導入する酸素富化液導入ライン(31)と、
前記凝縮部(9)のある位置から廃ガス(リサイクル空気)の少なくとも一部を取り出すリサイクル空気取出ライン(34)と、
前記リサイクル空気取出ライン(34)から供給された前記廃ガスの少なくとも一部を圧縮するリサイクル空気圧縮機(12)と、
前記リサイクル空気圧縮機(12)から導出された圧縮リサイクル空気を前記精留塔
(5)の第一精留部(18)の位置よりも下部から前記精留塔
(5)に導入するリサイクル空気導入ライン(36)と、
前記凝縮部(9)から前記廃ガスの一部を取出し、前記主熱交換器
(1)に導入する廃ガスライン(43
;432)と、
前記精留塔
(5)から液体窒素を取り出す製品液体窒素取出ライン(37)と、
を備える。
なお、本明細書にカッコ書きで記載された符号は一実施形態を示すものであって、これに限られるものではない。
【0013】
原料空気圧縮機により圧縮され、所定の不純物を除去された原料空気は、主熱交換器において予冷、冷却されて低温原料空気となる。低温原料空気は原料空気膨張弁で膨張された後に、精留塔へ導入される。
低温原料空気の一部は主熱交換器内で液化される。ここでの液化量を、高いエネルギー効率を維持しながら増加させるため、本発明にかかる窒素製造装置は、第一タービン及び第二タービンを有する。液化する低温原料空気の量は、例えば低温原料空気中の5重量%以上90重量%以下であり、好ましくは7重量%以上75重量%以下である。
【0014】
第一タービンは、主熱交換器外部へ取り出された、主熱交換器内部で予冷された原料空気の一部を膨張して、冷却させる。第一タービンにより冷却された原料空気は主熱交換器の冷端に供給され、第一タービンで膨張されなかった原料空気を主熱交換器内部で冷却させるための寒冷として利用される。主熱交換器内部で予冷された原料空気の一部とは、例えば主熱交換器内部で予冷された原料空気中の1重量%以上40重量%以下であり、好ましくは5重量%以上30重量%以下である。
第二タービンは、主熱交換器の前段で分流された原料空気の一部を膨張させ、冷却させる。第二タービンにより冷却された原料空気は、主熱交換器の中間に供給され、第二タービンで膨張されなかった原料空気を主熱交換器内部で予冷させるための寒冷として利用される。主熱交換器の前段で分流された原料空気の一部とは、例えば原料空気中の1重量%以上50重量%以下であり、好ましくは3重量%以上40重量%以下である。
このように原料空気の一部を寒冷として利用することにより、原料空気を大量に液化させる場合におけるエネルギー効率を向上させることができる。
【0015】
さらに本発明にかかる窒素製造装置は、精留塔上部に配置された凝縮部で蒸発されたガス(廃ガス)の少なくとも一部を圧縮するリサイクル空気圧縮機を有する。廃ガスの少なくとも一部とは、例えば廃ガス中の20重量%以上90重量%以下であり、好ましくは40重量%以上80重量%以下である。リサイクル空気圧縮機により圧縮された圧縮リサイクル空気は精留塔に供給され、精留される。圧縮リサイクル空気は、精留塔に供給される前に主熱交換器に導入され、冷却されても良い。原料空気にくわえて、リサイクル空気も精留塔に導入することにより、精留に必要とされるガス流を確保することができる。また、廃ガスをリサイクル空気として再度精留することにより、窒素の回収率を向上させることができる。
【0016】
凝縮部において蒸発した廃ガスのうち、リサイクル空気圧縮機へ導入されない部分は、廃ガスラインから主熱交換器へと導入され、主熱交換器内部で原料空気との熱交換を行うための寒冷として利用される。
このように廃ガスを寒冷として利用することにより、本発明にかかる窒素製造装置のエネルギー効率を向上させることができる。
【0017】
(発明3)
上記発明のいずれかに記載の窒素製造装置の凝縮部(9)は、第二凝縮器(6)と第一凝縮器(7)を備えてもよい。該窒素製造装置において、前記リサイクル空気取出ライン(34)は、前記第一凝縮器(7)で蒸発するガスの少なくとも一部を前記リサイクル空気圧縮機(12)に導入するように凝縮部に配置される。前記廃ガスライン(43
;432)は、前記第二凝縮部(6)で蒸発するガスの少なくとも一部を前記主熱交換器(1)に導入するように配置しても良い。
【0018】
(発明4)
上記発明のいずれかにおいて、酸素富化液が、前記酸素富化液導入ライン(31)を経由して前記第一凝縮器(7)に供給された後に、前記第二凝縮器(6)に供給されてもよい。
【0019】
第二凝縮器と、第一凝縮器との蒸発側圧力は同等でもよいが、異なっていても良い。蒸発側圧力が異なる場合、第二凝縮器から蒸発するガスは廃ガスとして主熱交換器に供給し、第一凝縮器から蒸発するガスをリサイクル空気圧縮機に供給しても良い。
酸素富化液は、酸素富化液導入ライン(31)を経由して、精留塔(5)底部から凝縮部へと導入される。このとき、酸素富化液はまず、第一凝縮器に導入された後に、第二凝縮器に導入しても良い。このように酸素富化液を導入することにより、第一凝縮器と第二凝縮器とは異なる蒸発圧力を有するようにすることができる。
比較的高い蒸発側圧力を有する第一凝縮器から排出される廃ガスは、リサイクル空気として、圧縮し、再度精留塔で精留される。比較的低い蒸発側圧力を有する第二凝縮器から排出される廃ガスは主熱交換器において寒冷として利用された後に排出される。このように圧力の比較的高い廃ガスを圧縮する構成とすることにより、効率的に圧縮を行うことが可能となる。
主熱交換器に供給された排ガスは、主熱交換器内部で原料空気との熱交換を行うための寒冷として利用される。このように廃ガスを寒冷として利用することにより、本発明にかかる窒素製造装置のエネルギー効率を向上させることができる。
リサイクル空気圧縮機に供給されたガスは、圧縮されて、リサイクル空気として精留塔に供給され、精留される。原料空気にくわえて、リサイクル空気も精留塔に導入することにより、精留に必要とされるガス流を確保することができる。また、廃ガスをリサイクル空気として再度精留することにより、窒素の回収率を向上させることが可能となる。
【0020】
(発明5)
上記発明のいずれかに記載の窒素製造装置は、前記廃ガスライン(43
;432)から前記主熱交換器(1)を経由して供給された前記廃ガスを膨張させて低温廃ガスとする第三タービン(13)をさらに備え、前記第三タービン(13)の軸端は、前記リサイクル空気圧縮機(12)の軸端に接続されてもよい。
【0021】
第三タービンには、主熱交換器内部で、原料空気との熱交換を行うことにより寒冷を放出した廃ガスが導入される。第三タービンでは導入された廃ガスを膨張させ、冷却させることにより低温
廃ガスとする。得られた低温廃ガスを再度主熱交換器へ導入させ、原料空気との熱交換を行う寒冷として利用することができる。また、第三タービンをリサイクル空気圧縮機に連結し、第三タービンで得られた動力をリサイクル空気の圧縮に使用することにより、エネルギー効率を向上させることが可能となる。このように寒冷を利用することにより、窒素
製造装置のエネルギー効率を向上させることが可能となる。
【0022】
(発明6)
上記発明のいずれかに記載の窒素製造装置はさらに、前記圧縮リサイクル空気を前記主熱交換器(1)で冷却させる圧縮リサイクル空気冷却ライン(42)を備える。
【0023】
リサイクル圧縮機から導出される圧縮リサイクル空気を直接精留塔へ導入することもできるが、主熱交換器で冷却させてから精留塔へ導入しても良い。主熱交換器で冷却させることにより、主熱交換器へ導入される寒冷を有効に利用することが可能となり、窒素製造装置のエネルギー効率を向上させることが可能となる。
【0024】
(発明7)
窒素製造装置の精留塔
(5
)は、前記第一精留部(18)の下方に配置される第二精留部(19)を備えてもよい。かかる窒素製造装置において、
低温原料空気は、前記第一精留部(18)位置よりも下部であって前記第二精留部(19)位置よりも上部に導入され、前記圧縮リサイクル空気は、前記第二精留部(19)位置よりも下部に導入される。
【0025】
リサイクル空気中の酸素濃度は、原料空気中の酸素濃度よりも高い。したがって、精留塔に導入する際にリサイクル空気を原料空気よりも下方に導入すると、さらに精留の効率を高めることが可能となる。
【0026】
(発明8)
本発明にかかる窒素製造装置は、原料空気圧縮機
(61)により圧縮され、除去部において所定の不純物を除去された原料空気をさらに圧縮する第一圧縮機(14)と、
前記第一圧縮機(14)から導出された原料空気を冷却する第一冷却器(16)と、
前記第一冷却器(16)から導出された原料空気をさらに圧縮する第二圧縮機(15)と、
前記第二圧縮機(15)から導出された原料空気を冷却する第二冷却器(17)と、をさらに備えてもよい。
【0027】
第二タービン(3)の軸端は、第一圧縮機(14)および/または第二圧縮機(15)の軸端に接続される。同様に第一タービン(2)の軸端は、第一圧縮機(14)および/または第二圧縮機(15)の軸端に接続される。これにより第一タービン
(2)の動力を第一圧縮機(14)および/または第二圧縮機(15)における原料空気の圧縮に利用することが可能となる。同様に、第二タービン
(3)の動力を第一圧縮機(14)および/または第二圧縮機(15)における原料空気の圧縮に利用することが可能となる。このため、エネルギー効率をさらに高めることができる。
第一圧縮機(14)の後段には、第一圧縮機
(14)で圧縮された原料空気を冷却する第一冷却器
(16)が配置されても良い。第二圧縮機(15)の後段には、第二圧縮機
(15)で圧縮された原料空気を冷却する第二冷却器(17)が配置されても良い。
なお、第一タービン
(2)、第二タービン
(3)、および第三タービン
(13)の軸端は、それぞれ独立してリサイクル空気圧縮機
(12)、第一圧縮機
(14)、および第二圧縮機
(15)のいずれか少なくとも1つの軸端に接続されていても良い。
【0028】
(発明9)
本発明に係る窒素製造装置はまた、
外部より取り入れた空気を圧縮する原料空気圧縮機(61)と、
前記原料空気圧縮機
(61)で圧縮された前記空気から所定の不純物を除去して原料空気とする除去部(62)と、をさらに含んでも良い。
【0029】
以上に述べた窒素製造装置によれば、窒素製造装置によって回収される窒素の一部または全部を液体窒素として取り出すことが可能となる。このため、ガス窒素を液化するための液化装置が不要となり、より簡便で安価な機器により液体窒素を製造することが可能となる。また、窒素を作動流体とした冷凍サイクルで寒冷を発生させる場合と比較して、上記の発明では窒素ガスを圧縮する必要がなく、空気のみを圧縮することから、エネルギー効率を向上させることが可能となる。