(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
<塗料組成物>
以下に、本発明の塗料組成物を詳細に説明する。本発明の塗料組成物は、樹脂成分及び
顔料を含む塗料組成物であって、不揮発分のガラス転移温度以下の温度における線膨張係
数が3.2×10
−5/K以下であることを特徴とする。本発明の塗料組成物によれば、
不揮発分のガラス転移温度以下の温度における線膨張係数を3.2×10
−5/K以下に
することで、塗膜の剥離を大幅に防ぐことができる。なお、ガラス転移温度以下の温度に
おける線膨張係数を線膨張係数α
1ともいう。
【0030】
このように、本発明の塗料組成物により形成される塗膜は、耐久性に優れるため、補修
に適しており、例えば、屋外に建築・建設された構造物の補修、特には橋梁等の鋼構造物
の補修のために使用されることが好ましい。そして、屋外構造物の補修に適応する観点か
ら、本発明の塗料組成物は、常温乾燥型塗料組成物や2液反応型塗料組成物であることが
好ましい。
【0031】
また、本発明の塗料組成物により形成される塗膜は、膜厚が大きいほど、剥離防止効果
も大きくなるため、本発明の塗料組成物は、厚膜塗装にも優れるが、特に、繰り返し補修
を行う際に、旧塗膜を除去せずに、旧塗膜の上から好適に塗装を行うことができる。この
ように繰り返し補修を行う場合、1回の補修では例えば膜厚25〜500μm、好ましく
は25〜150μmの塗膜の形成であっても、旧塗膜の上から繰り返し補修を行うことで
、旧塗膜を含めた塗膜全体の膜厚が500μmを超えるような厚膜を形成しても、本発明
の塗料組成物による繰り返し補修であれば、顕著な剥離防止効果が発揮できることになる
。このため、本発明の塗料組成物は、塗り替え補修のために使用されることが好ましい。
【0032】
本発明の塗料組成物において、不揮発分とは、水や有機溶剤等の揮発する成分を除いた
成分を指し、最終的に塗膜を形成することになる成分である。当然ながら、樹脂成分や顔
料は不揮発分である。なお、本発明においては、揮発分が残存すると線膨張係数が高く出
るので塗料組成物を150℃で10時間乾燥させた際に残存する成分を不揮発分として取
り扱う。
【0033】
上記不揮発分の線膨張係数α
1が低いほど、塗膜の内部応力も低くなることから、本発
明の塗料組成物において、上記線膨張係数α
1の下限は特に制限されるものではないが、
例えば、線膨張係数α
1を下げるために多量に顔料を添加すると、防食性、塗装作業性お
よび塗膜の外観などが低下するという理由から、1.5×10
−5/K以上であることが
好ましく、1.8×10
−5/K以上であることが更に好ましい。また、例えば、経年劣
化により塗膜の付着性が著しく低下した構造物において、超長期にその塗膜の付着性を確
保するという観点から、上記線膨張係数α
1は、3.2×10
−5/K未満であることが
好ましく、2.5×10
−5/K以下であることが更に好ましく、2.0×10
−5/K
以下であることがより更に好ましい。
【0034】
また、剥離防止効果をより向上させる観点から、不揮発分のガラス転移温度以上の温度
における線膨張係数は3.0×10
−5/K以下であることが好ましく、2.0×10
−
5/K以下であることがより好ましい。なお、ガラス転移温度以上の温度における線膨張
係数を線膨張係数α
2ともいう。また、不揮発分のガラス転移温度以上の温度における線
膨張係数が低いほど、塗膜の内部応力も低くなることから、本発明の塗料組成物において
、上記線膨張係数α
2の下限は特に制限されるものではないが、例えば、線膨張係数α
2
を下げるために多量に顔料を添加すると、防食性、塗装作業性および塗膜の外観などが低
下するという理由から、1.0×10
−5/K以上であることが好ましい。
【0035】
本発明の塗料組成物において、不揮発分の線膨張係数は、以下のように測定される。
参考文献1:島津熱機械分析装置TMA−60/60H取扱説明書 島津製作所、201
4年5月
参考文献2:島津熱分析ワークステーションTA−60WS取扱説明書 島津製作所、2
014年2月
線膨張係数測定方法
表面が清浄なブリキ板(0.3mm×75mm×150mm)に測定する塗料を塗装し
、塗膜を作製する。この作業を乾燥膜厚が約6mm以上になるまで1日1回行う。その際
、均一な塗膜を作製するため、塗装する方向は1回ごとに交差させる。
乾燥膜厚が6mm以上に達した塗膜をブリキ板から剥がし、約6mm×6mm×20m
mの角柱になるよう紙やすり等を用いて整形した後、その質量を精秤する。その後、15
0℃の恒温槽に10時間加温養生した後再び精秤して、150℃恒温槽に10時間加温養
生した前後の質量減量率を次式により算出する。加温養生前後の質量減少率が1%以内に
なるまで加温養生を繰り返す。
【数3】
加温養生した約6mm×6mm×20mmの角柱を、紙やすり(#240)を用いて、
4mm×4mm×15mmの角柱に整形する。この際ノギス等を用いて計測しながら研磨
作業を行い、測定用試料の誤差を4mm±0.5mm、15mm±1mm以内とする。
線膨張係数の測定は島津製作所製の島津熱機械分析装置TMA−60で行った。−50
℃からの測定を行うため、低温炉LTB−60を付属品として使用した。−50℃から+
120℃までの試料の温度上昇に伴う試料長の変化(線膨張量)をサンプリング間隔1秒
で測定する。得られたグラフから、温度上昇と膨張率の間に比例関係が認められる区間に
おいて2点を指定し、その区間の勾配からα
1およびα
2を得る。
なお、本発明に記載するガラス転移温度は勾配がα
1である直線領域と勾配がα
2であ
る直線領域の交点となる温度をいう。
【0036】
なお、本発明の塗料組成物において、不揮発分のガラス転移温度は、例えば30〜12
0℃であるものの、屋外構造物の補修に適応する観点から、好ましくは40〜80℃であ
る。
【0037】
本発明の塗料組成物においては、樹脂成分の種類や顔料の種類にかかわらず、不揮発分
中に占める顔料の割合を増加させることで、不揮発分のガラス転移温度以下の温度での線
膨張係数を低下させることができる。この理由としては、塗料組成物に使用される樹脂と
顔料を比較すると、顔料の線膨張係数の方が樹脂よりも小さいことが挙げられる。以下に
、不揮発分中に占める顔料の割合と線膨張係数α
1の関係について、表1に示す。
【0039】
表1から分かるように、不揮発分中に占める顔料の割合を増加させることで、不揮発分
の線膨張係数α
1を低下させることができる。また、線膨張係数α
1は顔料の種類にも影
響されることがわかる。即ち、顔料形状が球状よりも麟片状の方が少量で線膨張係数α
1
を低下させる効果が大きく、更に同じ麟片状顔料の場合でも、粒径の大きい方が線膨張係
数α
1を低下させる効果が大きいことが分かる。
なお、線膨張係数α
2も同様の手法により低下させることが可能であるが、線膨張係数
α
1と比べて、顔料の粒径の影響が大きい。このため、粒径の大きな顔料による線膨張係
数α
2を低下させる効果は、線膨張係数α
1を低下させる効果よりも大きい。
【0040】
本発明の塗料組成物において、不揮発分中に占める樹脂成分と顔料の合計含有量は、9
5質量%以上であることが好ましく、98〜100質量%であることが更に好ましい。不
揮発分中に占める樹脂成分と顔料の合計含有量が95質量%以上であれば、不揮発分の線
膨張係数の調整が容易である。
【0041】
本発明の塗料組成物中において、不揮発分の含有量は特に制限されるものではないが、
塗装作業性や塗膜の仕上がり外観を向上させる観点から、不揮発分の含有量は40〜10
0質量%であることが好ましく、50〜85質量%であることが更に好ましい。
また、塗膜の仕上がり外観を向上させる観点からは、更に不揮発分中に占める顔料の平
均粒子径が50μm以下であることが好ましい。50μm以下であれば塗膜の平滑性が得
られやすくなる。
【0042】
本発明の塗料組成物において、樹脂成分には、樹脂そのものの他、塗装時の硬化により
樹脂を形成する物質も含まれる。例えば、塗料組成物が1液型であれば、多くの場合、後
述するような樹脂それ自体を含む塗料組成物が使用されるが、2液型の塗料組成物には、
ポリオール化合物を含む主剤と、イソシアネート化合物を含む硬化剤とから構成される塗
料組成物であって、塗装時の硬化によりウレタン樹脂を形成する塗料組成物等も知られて
いる。このような塗料組成物においては、ウレタン樹脂を形成する物質であるポリオール
化合物及びイソシアネート化合物が、塗装時の硬化により樹脂を形成する物質に相当する
。また、紫外線硬化型塗料組成物には、アクリレートモノマーやオリゴマーを含む塗料組
成物であって、塗装時の硬化によりアクリル樹脂を形成する塗料組成物等も知られている
。このような塗料組成物においては、アクリル樹脂を形成する物質であるアクリレートモ
ノマーやオリゴマーが、塗装時の硬化により樹脂を形成する物質に相当する。
【0043】
本発明の塗料組成物において、樹脂成分として使用できる樹脂や塗装時の硬化により樹
脂成分から形成される樹脂としては、特に限定されるものではなく、水系、溶剤系、無溶
剤系を問わず、塗料業界において通常使用されている樹脂を例示することができ、具体的
には、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、スチレンアクリル共重
合樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノ
ール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、キ
シレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、マレイン酸樹脂、
フマル酸樹脂、ビニル樹脂、アミン樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を
一種単独で用いても良く、二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、エポキ
シ樹脂や、水酸基を複数有するアクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂及びポリエステル
樹脂(水酸基を複数有する樹脂をポリオール樹脂とも称する)が好ましい。具体的には、
樹脂成分としてエポキシ樹脂とアミン化合物とを含む反応硬化型の塗料組成物や、樹脂成
分として上述のようなポリオール樹脂とイソシアネートとを含む反応硬化型の塗料組成物
が好ましい。
【0044】
エポキシ樹脂としては、例えば、JER1001、JER1004、JER1007、
JER806、JER807、JER1001×75、JER168V70、JER15
2、JER154、JERW2801、JERW1155R55、JER−W3435R
67(三菱ケミカル社製)、エポトートYD―127、エポトートYDPN―638(新
日鉄住金化学社製)、EPICLON830、EPICLON840、EPICLON8
50、EPICLON1050、EPICLON1055、EPICLON HP―72
00、EPICLON HP―7200L、EPICLON HP―4770、EPICL
ON HP―820、EPICLON 5500―60、EPICLON 5900−60
、EPICLON N−680、EPICLON N―770 (DIC社製)、アデカレジン
EP−4100、アデカレジンEP−4500、アデカグリシロールED−502、アデ
カグリシロールED−505、アデカレジンEM−101−50(ADEKA社製)、ハリポー
ルEP-450、ハリポールEP-497、ハリポールEP-528(ハリマ化成社製)、エポジール748
、エポジール759(エアプロダクツアンドケミカルズ社製)、カードライトNX476
4(カードライト社製)、カージュラE10(HEXION Specialty Chemicals社製)、エポ
ルジョンEA1、2、3、7、12、20、55及びHD2(ヘンケルジャパン社製)、
ユカレジンKE−002、KE−116、E−1022、KE−301C(吉村油化学社
製)、Beckpox EP2381(オルネクス社製)、EPI−REZ6530−W
H−53(モメンティブ社製)等が使用できる。
【0045】
更に好ましくは、旧塗膜の上に塗装した場合にも旧塗膜のリフティングを発生させるこ
との無い、脂肪族炭化水素系溶剤および高沸点芳香族炭化水素系溶剤などの弱溶剤にも溶
解可能な変性エポキシ樹脂とアミン樹脂とを含む塗料組成物が好ましい。このような弱溶
剤に溶解可能な変性エポキシ樹脂としては、アルキルフェノール変性エポキシ樹脂、脂肪
酸変性エポキシ樹脂、アルキルグリシジルエーテル等が挙げられる。
このような変性エポキシ樹脂の市販品名としては、エピコート168V70(三菱ケミ
カル社製)、エピクロン5900−60、エピクロンHP−820(DIC社製)、エポジ
ール748、エポジール759(エアプロダクツアンドケミカルズ社製)、カードライト
NX4764(カードライト社製)、ハリポールEP−450、ハリポールEP−497
(ハリマ化成グループ社製)、カージュラE10(HEXION Specialty Chemicals社製)、
アデカグリシロールED−502、アデカグリシロールED−503、アデカグリシロー
ルED−505(ADEKA社製)等を挙げることができる。
また、旧塗膜の上に塗装した場合にも旧塗膜のリフティングを発生させることが無く、
更にVOC等の環境問題を考慮する場合には、水性エポキシ樹脂を含む水系塗料組成物が
好ましい。
上記エポキシ樹脂のうち、水系塗料に適用できるものとしては、JERW2801、J
ERW1155R55、JER−W3435R67、エポルジョンEA1、2、3、7、
12、20、55及びHD2、ユカレジンKE−002、KE−116、E−1022、
KE−301C、アデカレジンEM−101−50、Beckpox EP2381;E
PI−REZ6530−WH−53等が挙げられる。
一方、アミン樹脂の市販品名としては、ラッカマイドWN−405、ラッカマイドWN
−620、ラッカマイドWH−614、ラッカマイドF4、ラッカマイドWH−650(
DIC社製)、トーマイド215−70X、トーマイド225−X、トーマイドTXS−5
3−C、トーマイドTXS−674−B、トーマイドTXS−685−A、トーマイドT
XS−694、フジキュアーFXI−919、フジキュアーFXH−927、フジキュア
ーFXH−935、フジキュアー4011、フジキュアー4025、フジキュアー403
0(T&K TOKA社製)、バーサミン340 1N、バーサミン551、バーサミン
552(BASFジャパン社製)、サンマイド150−65、サンマイドWH―910、
アンカミン2280、アンカミン2643、アンカマイド350A、(エアープロダクツ
アンドケミカルズ社製)、JERキュアXD#639、JERキュアST11、JERキ
ュアST12、JERキュアST13、JERキュアSL11、JERキュアWD11M
60(三菱ケミカル社製)、アデカハードナーEH−235R−2、アデカハードナーE
H−4163X(商品名、ADEKA社製)、ベジケムグリーンV115、ベジケムグリーン
V125、ベジケムグリーンV140、ベジケムグリーンG747(築野食品工業製)、ジ
ェファーミンD-230、ジェファーミンT−403(ハンツマン社製)、ニューマイド5
11−55、ニューマイド3510(ハリマ化成製)、ダイトクラールI−5986、ダイ
トクラールI−6020、ダイトクラールX−5663H、ダイトクラールX−6102
(大都産業社製)、ベッコポックスEH613W/80WA、ベッコポックスEH623
W/80WA(サーフェース・スペシャリティージャパン社製)等を挙げることができる
。上記アミン樹脂のうち、弱溶剤系塗料に使用できるものとしては、JERキュアXD#
639、アデカハードナーEH−235R−2等がある。また、上記アミン樹脂のうち、
水系塗料に適用できるものとしては、トーマイドTXS−53−C、トーマイドTXS−
674−B、トーマイドTXS−685−A、トーマイドTXS−694、フジキュアー
FXI−919、フジキュアーFXH−927、フジキュアーFXH−935、サンマイ
ドWH―910、JERキュアWD11M60、アデカハードナーEH−4163X、ダ
イトクラールI−5986、ダイトクラールI−6020、ダイトクラールX−5663
H、ダイトクラールX−6102、ベッコポックスEH613W/80WA、ベッコポッ
クスEH623W/80WA等が挙げられる。
【0046】
また、防食性を高める観点、又は外観の良好な塗膜を得る等の観点から、変性された樹
脂を用いることが好ましい。変性された樹脂を用いる場合、顔料の分散安定性が向上する
傾向があり、顔料の濡れを改善し、塗膜の緻密性及び塗膜の外観を向上させることができ
る。また、変性された樹脂は、線膨張係数α
1及びα
2を下げる効果を付与することもで
きる。尚、エポキシ樹脂やポリオール樹脂の変性例としては、例えば、アルキル変性、ア
ルキルエーテル変性、アルキルフェノールノボラック変性、アクリル変性、脂肪酸変性、
ウレタン変性、アミノ変性、イソシアネート変性、シリコーン変性、その他アリル基を利
用したグラフト変性等が挙げられる。また、アミン化合物、イソシアネートの変性例とし
ては、例えば、エポキシ変性、フェノール変性、マンニッヒ変性、アクリルポリオール変
性、ポリエーテルポリオール変性、ポリエステルポリオール変性、ポリエステルポリオー
ル変性等が挙げられる。
また、上記変性樹脂を用いる方法とは別に、2種類以上の樹脂をブレンドして用いても
よい。例えば、上記エポキシ樹脂やポリオール樹脂に炭化水素樹脂をブレンドすることが
好ましい。
例えば、炭化水素樹脂としては、キシレン樹脂等の芳香族系炭化水素樹脂や脂肪族系炭
化水素樹脂が使用できる。また、フェノール等で変性された炭化水素樹脂も使用すること
ができる。炭化水素樹脂としては、例えば、ニカノールL、ニカノールLL、ニカノール
LLL、ニカノールY−50、ニカノールY−100(フドー社製)、Necires
EPX−L、Necires EPX−L2 (Nevcin社製)、Hirenol PL−10
00S (KOLONケミカル社製)、日石ネオポリマーE−100、日石ネオポリマーE
−130、日石ネオポリマー130S (JX日鉱日石エネルギー社製)等が使用できる。
【0047】
本発明の塗料組成物中において、樹脂成分の含有量は、例えば5〜70質量%であるこ
とが好ましい。また、本発明の塗料組成物中において、防食性を高める観点、又は外観の
良好な塗膜を得る等の観点から、変性された樹脂を1〜70質量%含むことがより好まし
い。
【0048】
本発明の塗料組成物に用いる顔料は、特に限定されるものではなく、塗料業界において
通常使用されている顔料を使用できる。具体例としては、二酸化チタン、酸化鉄、カーボ
ンブラック等の着色顔料、シリカ、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の
体質顔料、亜鉛、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、メタホウ酸バリ
ウム、ハイドロカルマイト等の防錆顔料、アルミニウム、ニッケル、クロム、錫、銅、銀
、白金、金、ステンレス等の光輝顔料や、ガラスフレーク、黒鉛等の鱗片状顔料、その他
針状、繊維状の顔料等が挙げられる。用いる顔料は塗膜の線膨張係数αを低くする顔料が
好ましく、同じ組成であれば粒径の大きい顔料の方が好ましい。これら顔料は、一種単独
で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の塗料組成物にお
いて、顔料は、防食性の観点から、防錆顔料や鱗片状の顔料であることが好ましい。この
ため、屋外構造物の補修に適応する観点から、本発明の塗料組成物に用いる顔料は、防錆
顔料及び鱗片状の顔料の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0049】
上記防錆顔料としては、例えば、Heucophos ZPA、Heucophos Z
PO、Heucophos ZMP、Heucophos ZAPP、Heucophos
SAPP、Heucophos SRPP、Heucophos ZAMplus、He
ucophos ZCPplus(Heubach社製)、K−WHITE#82、K−W
HITE#84、K−WHITE#84S、K−WHITE#85、K−WHITE#1
05、K−WHITE#140W、K−WHITEG105、K−WHITE#450H
、K−WHITECa650(テイカ社製)、LFボウセイZP−DL、LFボウセイP
−WF、LFボウセイZP−50S、 LFボウセイZP−SB、LFボウセイZP−H
S、LFボウセイCP−Z、LFボウセイMZP−500、LFボウセイPMG、LFボ
ウセイMP−620、LFボウセイZP−600、LFボウセイM−PSN、LFボウセ
イMC−400WR、LFボウセイPM−300、LFボウセイPM−300C、 LF
ボウセイPM−308(キクチカラー社製)等を使用できる。
【0050】
上記体質顔料としては、例えば、タルクにクラウンタルクP、クラウンタルクR、クラ
ウンタルクSC、クラウンタルクC、クラウンタルクZ、クラウンタルクHS、クラウン
タルク3S(松村産業社製)、Pタルク、PSタルク、TTKタルク、TTタルク、Tタ
ルク(竹原化学工業社製)KHP−25、KHP−25B、KHP−20、KHP−20
B、KHP−125、KHP−125B、KHP−400、KHP−400B(林化成社
製)、タルクML110、タルクML112、タルクML115、タルクMG113、タ
ルクMG115、タルクMS410、タルクMS412、タルクRL119、タルクRL
217、タルクRG319、タルクRH415、タルクRS415、タルクRS515、
タルクRS613(富士タルク工業社製)、タルク85、タルク83、タルクH、タルクD
(山陽クレー工業社製)、マイカに100M、300M、1000M(大阪マイカ工業社
製)、マイカA−21S、マイカAB−25S、マイカA−41S、マイカYM−21S
、マイカYM−31S、マイカSYA−21R、マイカSB−061R(ヤマグチマイカ
社製)、Suzoraite350−PO、Suzoraite 325−PO、Suzo
raite325−HK、Suzoraite325−S、Suzoraite80−S
F、Suzoraite200−PO、Suzoraite200−S、Suzorai
te200−HK、Suzoraite150−NY、Suzoraite150−PO
、Suzoraite150−S(イメリススペシャリティーズジャパン社製)、MIC
A WG−160、MICA WG−325、4−K MICA、MICA C−1000、
MICA C−3000、MICA C−4000(Kings Mountain Min
erals社製)、レプコマイカS−200HG、レプコマイカS−325、レプコマイ
カS−400、レプコマイカM−200、レプコマイカM−325、レプコマイカM−4
00(レプコ社製)、ミクロマイカMK−200、ミクロマイカMK−200K、ミクロマ
イカMK−300、ミクロマイカMK−300K、ミクロマイカKM(片倉コープアグリ
社製)を使用できる。カオリンにEckalite1、EckaliteED(イメリス
スペシャリティーズジャパン社製)、ASPG90、ASP170、ASP200、AS
P400P、ASP600(BASF社製)を使用できる。燐片状酸化鉄にAM−200
P、BM−200P(チタン工業社製)、MIOX SG、MIOX Micro50、M
IOX Micro40、MIOX Micro30、MIOX Micro20、MIO
X Micro15、MIOX Micro10(カントナー社製)、アルミニウムペースト
にアルペースト1950M、アルペースト1100M、アルペーストHS−2、アルペー
スト1100MA、アルペースト1700NL、アルペースト1200M(東洋アルミニ
ウム社製)等を使用できる。
【0051】
炭酸カルシウムに、「スーパーS」、「スーパーSSS」、「ナノコートS−25」、
「MCコートS−10」(以上、商品名、丸尾カルシウム社製、)、「ネオライトSS」
、「ネオライトSA−200」(以上、商品名、竹原工業社製)を使用することができる
。硫酸バリウムに「硫酸バリウム100」、「バリタBF−1」(以上、商品名、堺化学
工業社製)を使用できる。ガラスフレークとしては、たとえば「RCF−600」、「R
CF−160」、「RCF−015」、「RCF−2300」(以上、商品名、日本板硝
子社製)、 ECR Type Glass flake GF750シリーズ、ECR
Type Glass flake GF500シリーズ、ECR Type Gla
ss flake GF300シリーズ、ECR Type Glass flake
GF200シリーズ、ECR Type Glass flake GF100シリーズ
、ECR Type Glass flake GF300M、ECR Type Gl
ass flake GF750nmシリーズ、ECR Type Glass fla
ke GF500nmシリーズ、ECR Type Glass flake GF35
0nmシリーズ、ECR Type Glass flake GF100nmシリーズ
、Type Glass flake GF750Cシリーズ(GLASS FLAKE
社製)等を使用できる。
【0052】
着色顔料としては、たとえば、「A−190」、「A−197」、「R−25」、「R
−21」、「R−32」、「R−7E」、「R−5N」、「GTR−100」、「R−6
2N」、「R−650」、「D−918」、「D−2667」、「D−970」、「R−
42」、「R−45M」、「R−38L」(以上、商品名、堺化学工業社製)、「CR−
50」、「CR−50−2」、「CR−63」、「CR−57」、「CR−58」、「C
R−58−2」、「CR−Super70」、「CR−80」、「CR−90」、「CR
−90−2」、「CR−93」、「CR−95」、「CR−97」、「CR−953」、
「R−630」、「R−780」、「R−780−2」「R−820」、「R−830」
、「R−930」、「R−980」、「UT771」、「PF−736」(以上、商品名
、石原産業社製)、「JR−301」、「JR−403」、「JR−405」、「JR−
600A」、「JR−605」、「JR−600E」、「JR−603」、「JR−70
1」(以上、商品名、テイカ社製)、「ベンガラ100ED」、「ベンガラ120ED」
、「ベンガラ130ED」、「ベンガラ140ED」、「ベンガラ160ED」、「ベン
ガラ180ED」、「ベンガラ190ED」、「KN−R」、「KN−V」、「ベンガラ
130R」、「ベンガラ515R」、「「ベンガラ580R」、「ベンガラTSY−1」
、「ベンガラTSY−2」、「ベンガラTSY−3」、「ベンガラTSY−4」、「ベン
ガラY−50N」、「ベンガラTSY−1H」、「ベンガラKN−370」、「ベンガラ
HR−390H」(以上、商品名、戸田工業社製)、「#2650」、「#2350」、
「#1000」、「#970」、「MA8」、「MA100」、「MA230」、「#2
5」、「#10」、「#5」、「MA220」(以上商品名、三菱ケミカル社製)等が使
用できる。
【0053】
本発明の塗料組成物に用いる顔料は、例えば、平均粒径が1〜1500μmの範囲内の
顔料を使用することができる。ここで、平均粒径が1〜500μmの場合においては、平
均粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定し、その結果得られた50
%平均粒径(体積基準で累計50%となる粒子径、メジアン値)を意味する。尚、平均粒
径が1〜500μmの場合における鱗片状の顔料の平均粒径は、レーザー回折・散乱法に
よる球相当径で表される。
平均粒径が500μmを超え1500μm以下の場合においては、光学顕微鏡で顔料を
観察し、任意の粒子50個の粒径の平均値を求め、平均粒径とする。尚、平均粒径が50
0μmを超え1500μm以下の場合における鱗片状の顔料の平均粒径は、任意の粒子5
0個の長径の平均値を求め、平均粒径とする。
【0054】
本発明の塗料組成物に用いる顔料は、例えば、アスペクト比が1〜750の範囲内の顔
料を使用することができる。ここで、顔料のアスペクト比は、平均粒径(D)と平均厚み
(T)との比(D/T)で求められる。顔料の平均厚み(T)は、SEM(走査電子顕微
鏡)又は光学顕微鏡を用いて顔料の厚みを測定し、任意の50個の粒子を対象にして平均
値を求めることにより得られる。
【0055】
本発明の塗料組成物中において、顔料の含有量は、例えば5〜75質量%であることが
好ましい。
【0056】
本発明の塗料組成物には、上記樹脂成分および顔料成分以外に、水、有機溶剤、乾燥剤
、酸化防止剤、反応触媒、分散剤、消泡剤、脱水剤、レベリング剤、沈降防止剤、ダレ止
め剤、シランカップリング剤等の付着性付与剤、防藻剤、防カビ剤、防腐剤、紫外線吸収
剤、光安定剤等を必要に応じて適宜配合してもよい。本発明の塗料組成物は、必要に応じ
て適宜選択される各種成分を混合することによって調製できる。
【0057】
有機溶剤としては、弱溶剤系塗料の調製においては脂肪族炭化水素系溶剤および高沸点
芳香族炭化水素系溶剤が好ましいが、具体例としてはVM&Pナフサ、ミネラルスピリッ
ト、ソルベント灯油、芳香族ナフサ、ソルベントナフサ、などの比較的溶解力の小さな脂
肪族系又は芳香族系炭化水素類;n−ブタン、n−ヘキサン、n−オクタン、イソノナン
、n−デカン、n−ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの脂
肪族炭化水素類などが用いられる。
市販品名としては、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」、「スワゾール
1800」(以上商品名、丸善石油社製)、「ミネラルスピリットA」、「T−SOL1
00」、「T−SOL150」、「T−SOL−3040」、「T−SOL AN45」
(以上商品名、JXTGエネルギー社製)、「エッソナフサNo.6」、「エクソールD
30」及び「ペガゾール3040」(以上商品名、エクソンモービル化学社製)、「IP
ソルベント」、「イプゾール100」、「イプゾール150」、「イプゾールTP」(以
上商品名、出光興産社製)、「リニアレン10」及び「リニアレン12」(以上、出光石
油化学社製)等が挙げられる。
また、水系塗料については、塗膜の成膜性を高めるために、水の他に有機溶剤を配合す
ることも可能である。このような有機溶剤の例を挙げると、エチレングリコールモノn−
ブチルエーテル、エチレングリコールモノi−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ
n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノi−プロピルエーテル、ジエチレングリ
コールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノi−ブチルエーテル、ジエチ
レングリコールモノn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノi−プロピルエー
テル、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノi
−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレング
リコールモノi−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル及びジエチ
レングリコールジブチルエーテル等のグリコールエーテル類、2,2,4−トリメチルペ
ンタンジオールモノイソブチレート及び2,2,4−トリメチルペンタンジオールジイソ
ブチレート等がある。これらは、単独もしくは複数種を組み合わせて使用される。
【0058】
分散剤としては、例えば、ANTI−TERRA−U、ANTI−TERRA−U10
0、ANTI−TERRA−204、DISPERBYK−101、DISPERBYK
−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−106、DISPERB
YK−108、DISPERBYK−110、DISPERBYK−111、DISPE
RBYK−142、DISPERBYK−145、DISPERBYK−164、ANT
I−TERRA−U250、DISPERBYK、DISPERBYK−102、DIS
PERBYK−180、DISPERBYK−184、DISPERBYK−185、D
ISPERBYK−187、DISPERBYK−190、DISPERBYK−191
、DISPERBYK−192、DISPERBYK−193、DISPERBYK−1
94N、DISPERBYK−2010、DISPERBYK−2012、DISPER
BYK−2015、DISPERBYK−2060、DISPERBYK−2061、D
ISPERBYK−2096、DISPERBYK−2013、DISPERBYK−2
055、DISPERBYK−2152、DISPERBYK−P104、DISPER
BYK−P104S、DISPERBYK−P105、DISPERBYK−9076、
DISPERBYK−9077 (ビックケミージャパン社製)、フローレンDOPA−1
5B、フローレンDOPA−15BHFS、フローレンDOPA−17HF、フローレン
DOPA−22、フローレンDOPA−35、フローレンG−600、フローレンG−7
00、フローレンG−700AMP、フローレンG−700DMEA、フローレンWK−
13E、フローレンGW−1500、フローレンG−1604(共栄社化学社製)、ソルス
パース20000、ソルスパース27000、ソルスパース41090(以上、アビシア
社製),TEGO Dispers 610、TEGO Dispers 628、TEGO
Dispers 630、TEGO Dispers 655、TEGO Dispers
670、TEGO Dispers 685、TEGO Dispers 700 ,TEG
O Dispers 715W,TEGO Dispers 740W,TEGO Disp
ers 750W,TEGO Dispers 755W,TEGO Dispers 75
7W,TEGO Dispers 760W,TEGO Dispers 761W,TEG
O Dispers 765W(エボニック社製)、ディスパロン1850、ディスパロンD
A−1401、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンA
Q−320、ディスパロンAQ−340、ディスパロンAQ−360、ディスパロンAQ
−380(楠本化成社製)、SNディスパーサント4215、SNディスパーサント20
10、SNディスパーサント5034(サンノプコ社製)、EFKA−1501、EFK
A−4540、EFKA−4550(BASF社製)等を使用できる。沈降防止剤にディ
スパロン4200−20、ディスパロンPF−911、ディスパロンPF−930、ディ
スパロン4401−20、ディスパロンAQ−607、ディスパロンAQ−610、ディ
スパロンAQ−630、ディスパロンAQ−870、ディスパロンAQH−800(楠本
化成社製)、ターレン7200−20、ターレンM−1021B、フローノンRCM−2
10、フローノンRCM−220、フローノンSA−300H、フローノンSD−700
(共栄社化学社製) 等が使用でき、たれ止め剤にディスパロン6900−20X、ディス
パロンA603−20X、ディスパロンA670−20M、ディスパロン6810−20
X、ディスパロン6820−20M、ディスパロン6700(楠本化成社製)、A−S−
A T250F、A−S−A T−380−20BS、A−S−A TS−823 (伊藤製
油社製)、BYK−405、BYK−410、BYK−415、BYK−420、BYK
−425、BYK−430、BYK−431、TIXOGEL MP、CLAYTON E
40(ビックケミージャパン社製)、ターレンVA−750B、ターレンBA−600、タ
ーレン1450、チクゾールK−130B,チクゾールK−502、チクゾールW−30
0,チクゾールW−310P,チクゾールW−400LP(共栄社化学社製)等が使用でき
る。
【0059】
また、良好な塗膜外観の観点から、アクリルポリマー系、ポリエーテルポリマー系、ポ
リエステルポリマー系、ウレタンポリマー系、不飽和カルボン酸系、ポリエステル酸塩系
、変性シリコーン系の分散剤や、アクリルポリマー系、アルキル変性シリコーン系、ポリ
エーテル変性シリコーン系、ポリエステル変性シリコーン系などの表面調整剤を用いるこ
とが好ましい。また、良好な塗装作業性の観点から、アクリルポリマー系、ポリエーテル
ポリマー系、ポリエステルポリマー系、ウレタンポリマー系、不飽和カルボン酸系、ポリ
エステル酸塩系、変性シリコーン系の分散剤や、アクリルポリマー系、ビニルエーテルポ
リマー系、ブタジエンポリマー系、オレフィンポリマー系、シリコーン系、ふっ素変性シ
リコーン系などの消泡剤を用いることが好ましい。
【0060】
表面調整剤としては、ポリフローNo.36、ポリフローNo.56、ポリフローNo
.85HF、ポリフローKL−400HF、ポリフローKL−402、ポリフローKL−
406,ポリフローWS,ポリフローWS−314,ポリフローKL−100,ポリフロ
ーKL−401,ポリフローKL−403,ポリフローKL−404,ポリフローKL−
900(共栄社化学社製)、BYK−300、BYK−302、BYK−306、BYK−
307、BYK−310、BYK−320、BYK−322、BYK−323、BYK−
325、BYK−330、BYK−331、BYK−333、BYK−342、BYK−
345、BYK−350、BYK−354、BYK−370、BYK−377、BYKE
TOL−OK(BYK社製)、ディスパロン1970、ディスパロンLF−1980、ディ
スパロンLF−1982(楠本化成社製),TEGO Flow 300,TEGO Fl
ow 370,TEGO Flow 425,TEGO Flow ATF2,TEGO Gl
ide 100,TEGO Glide 110,TEGO Glide 130,TEGO
Glide 406,TEGO Glide 410,TEGO Glide 415,TE
GO Glide 440,TEGO Glide 450,TEGO Glide 482,
TEGO Glide ZG 400(エボニック社製)等が使用できる。
【0061】
消泡剤、抑泡剤としては、ダッポーSN−348、ダッポーSN−352、ダッポーS
N−359、ダッポーSN−368(サンノプコ社製)、フローレンAC−202、フロ
ーレンAC−262H、フローレンAC−300、フローレンAC−300HF、フロー
レンAC−326F、フローレンAC−901、フローレンAC−901HF、フローレ
ンAC−902、フローレンAC−903、フローレンAC−903HF、フローレンA
C−950、フローレンAC−1160、フローレンAC−1160HF、フローレンA
C−2000、フローレンAC−2000HF、フローレンAC−2200HF、フロー
レンAO−82、フローレンAO−98、フローレンAO−108,アクアレン8020
、アクアレン8021N,アクアレンSB−520、アクアレンSB−630、アクアレ
ンHS−01,フローレンAO−5(共栄社化学社製)、BYK−051N、BYK−0
52N、BYK−055、BYK−065、BYK−077、BYK−081、BYK−
088、BYK−354、BYK−1752、BYK−011、BYK−012、BYK
−014、BYK−017、BYK−021、BYK−022、BYK−024、BYK
−025、BYK−044、BYK−093、BYK−1610、BYK−1640、B
YK−1650、BYK−1785(BYK社製)、ディスパロンOX−880EF、デ
ィスパロンOX−70、ディスパロンOX−77EF、ディスパロンOX−710、ディ
スパロンOX−66、ディスパロンOX−66EF、ディスパロン1952、ディスパロ
ン1958、ディスパロン1930N、ディスパロン1934(楠本化成社製),TEG
O Airex 910,TEGO Airex 920,TEGO Airex 931,T
EGO Airex 940,TEGO Airex 950,TEGO Airex 901
W,TEGO Airex 902W,TEGO Airex 904W、TEGO Foa
mex 800,TEGO Foamex 815N,TEGO Foamex 840,T
EGO Foamex 1488,TEGO Foamex 1495,TEGO Foam
ex 8030(エボニック社製)等が使用できる。
【0062】
また、乾燥後の塗膜の被塗物に対する付着性を向上させる観点から、アミノ基、ビニル
基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、ウレイド基、イソシアネート基、イソシアヌ
レート基、スチリル基、エポキシ基、メルカプト基などの官能基をもつシランカップリン
グ剤を使用することが好ましく、中でもアミノ基、エポキシ基、メルカプト基をもつシラ
ンカップリング剤を使用することがより好ましい。シランカップリング剤として、例えば
、Z−6610、Z−6011、Z−6020、Z−6094、Z−6040、Z−60
43、Z−6044、Z−6062、Z−6883、Z−6032、Z−6075、Z−
6300、Z−6519、Z−6825、Z−6030、Z−6033、Z−6062(
以上商品名、東レ・ダウコーニング社製)、KBM−1003、KBE−1003、KB
M−1403、KBM−303、KBM−402、KBM−403、KBE−402、K
BE−403、KBM−502、KBE−502、KBM−503、KBE−503、K
BM−5103、KBM−602、KBM−603、KBM−903、KBE−903、
KBE−9103、KBM−573、KBM−9659、KBE−585、KBM−80
2、KBM−803、KBE−9007(以上商品名、信越化学工業社製)、GENIO
SIL GF 91、GENIOSIL GF 95、GENIOSIL GF 80、GEN
IOSIL GF 82(以上商品名、旭化成ワッカーシリコーン社製)等が市販されてい
る。
【0063】
また、塗料の特性として、塗料の各物性値、塗装時の乾燥前の各物性値、および硬化塗
膜の各物性値を調整することで、外観、防食性、作業性等を調整、改善することができる
。
上記の物性値としては、塗料粘度、塗料密度、Ti値、PVC、鉛筆硬度、引張強度、引張
弾性率、伸び率等があげられる。
【0064】
各物性値の好ましい範囲を具体的にあげると、塗料粘度1〜8Pa・s(23℃)、塗料
密度1.2〜1.6グラム/mL(23℃)、Ti値3.0〜6.0、PVC 25〜40%、
鉛筆硬度2B〜3H、引張強度5.0〜20.0 N/mm
2、引張弾性率500〜1500N
/mm
2、伸び率0.1〜5.0%であることが望ましい。
【0065】
本発明の塗料組成物の塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、スプレ
ー塗装、ローラー塗装、刷毛塗装、コテ塗装、ヘラ塗装等が利用できる。
【0066】
<塗膜>
次に、本発明の塗膜を詳細に説明する。本発明の塗膜は、樹脂及び顔料を含む塗膜であ
って、該塗膜のガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が3.2×10
−5/K以
下であることを特徴とする。本発明の塗膜によれば、該塗膜のガラス転移温度以下の温度
における線膨張係数を3.2×10
−5/K以下にすることで、塗膜の剥離を大幅に防ぐ
ことができる。
【0067】
このように、本発明の塗膜は、耐久性に優れるため、補修に適しており、例えば、屋外
に建築・建設された構造物の補修、特には橋梁等の鋼構造物の補修のために使用されるこ
とが好ましい。また、本発明の塗膜は、膜厚が厚いほど、剥離防止効果も大きくなるため
、本発明の塗膜で繰り返し補修を行うと、本発明の塗膜の膜厚が厚くなり、剥離防止効果
も補修を繰り返す度に良くなる。また、厚膜用塗膜として適応することも剥離防止の観点
で好ましく、繰り返し補修を行う際に、旧塗膜を除去せずに、旧塗膜の上に形成させるこ
とができる。
【0068】
また、本発明の塗膜は、上述した本発明の塗料組成物により形成できる塗膜であり、本
発明の塗膜中に含まれる樹脂及び顔料と、必要に応じて含まれ得る配合剤は、上述した本
発明の塗料組成物の説明において記載されたとおりである。また、本発明の塗膜における
ガラス転移温度及び線膨張係数も、上述した本発明の塗料組成物における不揮発分のガラ
ス転移温度及び線膨張係数と同様に測定できる。
【0069】
本発明の塗膜は、上述した本発明の塗料組成物における不揮発分の線膨張係数α
1と同
様の理由から、上記線膨張係数α
1が1.5×10
−5/K以上であることが好ましく、
1.8×10
−5/K以上であることが更に好ましい。また、本発明の塗膜は、上述した
本発明の塗料組成物における不揮発分の線膨張係数α
1と同様の理由から、上記線膨張係
数α
1が3.2×10
−5/K未満であることが好ましく、2.5×10
−5/K以下で
あることが更に好ましく、2.0×10
−5/K以下であることがより更に好ましい。
【0070】
また、本発明の塗膜は、上述した本発明の塗料組成物における不揮発分の線膨張係数α
2と同様の理由から、該塗膜のガラス転移温度以上の温度における線膨張係数α
2が3.
0×10
−5/K以下であることが好ましく、2.0×10
−5/K以下であることがよ
り好ましい。また、本発明の塗膜は、上述した本発明の塗料組成物における不揮発分の線
膨張係数α
2と同様の理由から、上記線膨張係数α
2が1.0×10
−5/K以上である
ことが好ましい。
【0071】
本発明の塗膜中において、樹脂と顔料の合計含有量は、95質量%以上であることが好
ましく、98〜100質量%であることが更に好ましい。樹脂と顔料の合計含有量が95
質量%以上であれば、塗膜の線膨張係数の調整が容易である。また、塗膜を形成する観点
から、塗膜中における樹脂の含有量は5質量%以上であることが望ましい。
【0072】
また、本発明の塗膜は、1回の塗装工程で得られる膜厚が25〜500μmの範囲内で
あることが好ましい。本発明の塗膜によれば、膜厚が大きいほど、剥離防止効果も大きく
なるため、その塗装工程を繰り返すことによって500μmを超える厚さを持つ塗膜であ
っても好適である。
【0073】
<塗装方法>
次に、本発明の塗装方法を詳細に説明する。本発明の塗装方法は、被塗装物を、樹脂成
分及び顔料を含む塗料組成物で塗装し、ガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が
3.2×10
−5/K以下である塗膜を形成させる工程を含むことを特徴とする。本発明
の塗装方法によれば、ガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が3.2×10
−5
/K以下である塗膜を形成させることで、塗膜の剥離を大幅に防ぐことができる。
【0074】
このように、本発明の塗装方法により形成される塗膜は、耐久性に優れるため、補修塗
装に適しており、例えば、屋外に建築・建設された構造物の補修、特には橋梁等の鋼構造
物の補修塗装のために使用されることが好ましい。そして、屋外構造物の補修に適応する
観点から、本発明の塗装方法に用いる塗料組成物は、常温乾燥型塗料組成物や2液反応型
塗料組成物であることが好ましい。
【0075】
また、本発明の塗装方法により形成される塗膜は、膜厚が大きいほど、剥離防止効果も
大きくなるため、本発明の塗装方法は、厚膜塗装にも優れるが、特に、繰り返し補修を行
う際に、旧塗膜を除去せずに、旧塗膜の上から好適に塗装を行うことができる。このよう
に繰り返し補修塗装を行う場合、1回の補修塗装では例えば膜厚25〜150μmの塗膜
の形成であっても、旧塗膜の上から繰り返し補修塗装を行うことで、旧塗膜を含めた塗膜
全体の膜厚が500μmを超えるような厚膜を形成しても、顕著な剥離防止効果が発揮で
きることになる。このため、本発明の(補修)塗装方法は、塗り替え補修塗装のために使
用されることが好ましい。
【0076】
本発明の塗装方法に用いる塗料組成物は、樹脂成分及び顔料を含む塗料組成物であるが
、塗装後に形成される塗膜のガラス転移温度以下の温度における線膨張係数が3.2×1
0
−5/K以下であるため、上述した本発明の塗料組成物を用いることができる。このた
め、本発明の塗装方法に用いる塗料組成物中に含まれる樹脂成分及び顔料と、必要に応じ
て含まれ得る配合剤は、上述した本発明の塗料組成物の説明において記載されたとおりで
ある。
【0077】
本発明の塗装方法により形成される塗膜は、ガラス転移温度以下の温度における線膨張
係数が3.2×10
−5/K以下である塗膜であり、上述した本発明の塗膜の説明におい
て記載されたとおりである。このため、本発明の塗装方法により形成される塗膜は、ガラ
ス転移温度以下の温度における線膨張係数α
1が、1.5×10
−5/K以上であること
が好ましく、1.8×10
−5/K以上であることが更に好ましく、一方で、線膨張係数
α
1は、3.2×10
−5/K未満であることが好ましく、2.5×10
−5/K以下で
あることが好ましく、2.0×10
−5/K以下であることが更に好ましい。
【0078】
また、本発明の塗装方法により形成される塗膜は、上述した本発明の塗膜の説明におい
て記載されたように、ガラス転移温度以上の温度における線膨張係数α
2が3.0×10
−5/K以下であることが好ましく、2.0×10
−5/K以下であることがより好まし
く、一方で、線膨張係数α
2は1.0×10
−5/K以上であることが好ましい。
【0079】
本発明の塗装方法において、被塗装物は特に制限されるものではないが、本発明の塗装
方法により形成される塗膜が耐久性に優れ、補修に適していることから、本発明の塗装方
法は、被塗装物が、屋外に建築・建設された構造物(建築物及び構築物)である場合に有
用である。なお、本発明において、建築物とは、人間が居住又は滞在する目的で建築され
た構造物を意味し、例えば住宅やビル、工場等が挙げられ、構築物とは、人間が居住又は
滞在する目的以外のために建設された構造物を意味し、例えば橋梁、タンク、プラント配
管、煙突等が挙げられる。特に、本発明の塗装方法は、被塗装物が、橋梁等の鋼構造物で
ある場合に有用である。
【0080】
本発明の塗装方法において、塗装手段は、特に限定されず、既知の塗装手段、例えば、
スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗装、コテ塗装、ヘラ塗装等が利用できる。
【0081】
本発明の塗装方法において、塗膜の乾燥や硬化の手段は特に制限されるものではなく、
使用する塗料組成物の種類に応じて適宜選択される。例えば、加熱による乾燥や、加熱又
は紫外線照射等による硬化を行ってもよいし、また、自発的に硬化反応が進む塗料組成物
(例えば2液型塗料組成物)や自然乾燥が可能な塗料組成物(例えば揮発性溶剤系塗料組
成物)であれば特別な乾燥や硬化手段を採用しなくてもよい。
【0082】
本発明の塗装方法において、上記特定した範囲内にある線膨張係数α
1を有する塗膜を
形成する工程(以下、塗膜形成工程ともいう)は、補修塗装の度に繰り返し行うことが好
ましい。なお、塗膜形成工程を行う際に既に被塗装物上に形成されている塗膜(旧塗膜)
や、亜鉛めっき処理等の防食処理部分については、ケレン作業等の除去作業を行ってもよ
いが、本発明の塗装方法によれば、形成される塗膜の膜厚が大きいほど剥離防止効果も大
きくなるため、旧塗膜や防食処理部分が残ったままの状態で塗膜形成工程を行うことも可
能である。なお、旧塗膜についても、上記塗膜形成工程から形成された塗膜であることが
好ましい。
【0083】
上記塗膜形成工程において形成される塗膜は、1回あたりの塗装で乾燥膜厚が25〜5
00μm、好ましくは25〜150μmの範囲内であることが好ましい。上記塗膜形成工
程において形成される塗膜は、膜厚が大きいほど、剥離防止効果も大きくなるため、旧塗
膜の膜厚が500μmを超えるような非常に厚い剥離しやすい塗膜であっても、上記塗膜
形成工程を補修の度に繰り返し行うことで、顕著な剥離防止効果が発揮できることになる
。
【実施例】
【0084】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら
限定されるものではない。
【0085】
実施例1〜9(実−1〜実−9)、比較例1〜8(比−1〜比−8)のエポキシ樹脂塗
料組成物の配合を表2に示す。各配合は、標準配合として参考文献3に記載されている「
鋼構造物用厚膜形変性エポキシ樹脂塗料下塗基準塗料」を比較例1とし、それに含まれる
タルクを種々の対象顔料に置換えた。
参考文献3:鋼構造物塗装設計施行指針 2006 (財)鉄道総合技術研究所
【0086】
各エポキシ樹脂塗料組成物の製造は以下の方法で行った。主剤については、ガラスフレ
ークおよびマイカを除く各成分を表2の配合比率に従って混合した後、ガラスビーズ充填
のもと、卓上サンドミルを用いて十分に分散させ製造した。ガラスフレーク及びマイカを
含む塗料については、卓上サンドミルで十分に分散したベースに表2の配合比率に従って
ガラスフレーク及びマイカを加え、ディスパー分散機により均一に撹拌混合して製造した
。
得られた主剤を表2に示した配合比率で硬化剤と混合して、各エポキシ樹脂塗料組成物
を製造した。
【0087】
【表2】
【0088】
(注1)JER1001X75:商品名 三菱ケミカル社製 ビスフェノールA型液状エポ
キシ樹脂、不揮発分75質量%、エポキシ当量450〜500g/eq
(注2)JER168V70:商品名 三菱ケミカル社製 変性ビスフェノールA型液状エ
ポキシ樹脂、不揮発分70質量%、エポキシ当量420〜480g/eq
(注3)JER828:商品名 三菱ケミカル社製 ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂
、不揮発分100質量%、エポキシ当量184〜194g/eq
(注4)ニカノールLLL:商品名、フドー社製 キシレン樹脂
(注5)K−WHITE#82:商品名、テイカ社製 縮合リン酸アルミニウム、平均粒径
:3.5μm
(注6)クラウンタルク3S:商品名、松村産業社製 タルク、平均粒径:11.9μm
(注7)RCF−015:商品名、日本板硝子社製、ガラスフレーク顔料、粒径小(平均粒
径:15μm)
(注8)RCF−160:商品名、日本板硝子社製、ガラスフレーク顔料、粒径中(平均粒
径:160μm)
(注9)RCF−600:商品名、日本板硝子社製、ガラスフレーク顔料、粒径大(平均粒
径:600μm)
(注10)FB−20D/5D:商品名、デンカ社製、球状溶融シリカ、FB−20D(平
均粒径:22.5μm)、FB−5D(平均粒径:4.9μm)、FB−20D/5D=
9/1(質量比)に混合
(注11)マイカB−82:商品名、ヤマグチマイカ社製、マイカ、粒径大(平均粒径:1
80μm)
(注12)ベンガラ130R:商品名、戸田工業社製 酸化鉄、平均粒径:0.2μm
(注13)ディスパロンD4200−20X:商品名、楠本化成社製、分散剤
(注14)ディスパロンOX−66:商品名、楠本化成社製、消泡剤
(注15)KBM403:商品名、信越化学社製、シランカップリング剤
(注16)サンマイド150−65:商品名、エアープロダクツアンドケミカルズ社製、変
性脂肪族ポリアミドアミン、不揮発分65質量%、アミン価 62mgKOH/g
(注17)JERキュアXD#639:商品名、三菱ケミカル社製、変性脂肪族ポリアミド
アミン、不揮発分99質量%、アミン価 220 mgKOH/g
(注18)アンカマイド350A:商品名、エアープロダクツアンドケミカルズ社製、ポリ
アミドアミン、不揮発分100質量%、アミン価 380mgKOH/g
【0089】
実施例1〜9及び比較例1〜8により得られた各エポキシ樹脂塗料組成物について以下
の試験に供した。
(1)線膨張係数(α
1・α
2)の測定
実施例1〜9及び比較例1〜8により得られた各エポキシ樹脂塗料組成物の線膨張係数
(α
1・α
2)の測定は、上記「線膨張係数測定方法」に記載した方法で行った。塗膜の
作製方法について、具体的には、表面が清浄なブリキ板(0.3mm×75mm×150
mm)に測定する塗料を刷毛で塗装し、23℃で硬化養生させた。この作業を乾燥膜厚が
約6mm以上になるまで1日1回行った。その際、刷毛塗りする方向は1回ごとに交差さ
せた。乾燥膜厚が約6mm以上に達した塗膜を、ブリキ板ごと50℃に保持した恒温槽内
で1昼夜養生を行い、測定用塗膜を準備した。測定結果を表2に示す。
(2)ヒートサイクル剥離試験
ヒートサイクル付着試験は下記の方法で行った。結果を表2に示す。
表面を溶剤脱脂した磨き鋼板[JIS G 3141 (SPCC〜SD) 冷間圧延鋼板 3.2mm×
70mm×150mm]に予めメチルイソブチルケトン77質量部に塩化ビニル樹脂粉末
(ソルバインC:塩ビ/酢ビ=87/13(質量比)の共重合物、日信化学工業社製)2
3質量部を溶解したクリヤー塗料液を、塗付量95g/m
2で1回目の刷毛塗りを行い、
23℃で3時間養生する。次いで塗付量143g/m
2で2回目の刷毛塗りを行い、23
℃で1昼夜養生する。
供試塗料中の溶剤で塗装した塩化ビニル膜が影響を受けないように組成中の溶剤が弱溶
剤である弱溶剤系変性エポキシ樹脂塗料下塗(エポオールスマイル:大日本塗料社製)を
塩化ビニル塗膜の上に塗付量130g/m
2で1回刷毛塗りする。試験片端部からの溶剤
の影響を防止するよう、端部も塗装する。23℃で1昼夜養生した後、50℃で15時間
加温養生し、23℃にて放冷する。
放冷した試験片に実施例1〜9及び比較例1〜8により得られた各エポキシ樹脂塗料組
成物を表2に規定の膜厚になるように塗装する。1回で規定膜厚に達しない場合には、2
3℃で1昼夜養生して重ね塗りを行う。塗装は刷毛で行い、規定膜厚に必要な塗付量は下
式で求めた理論塗付量を用いた。
【数4】
各エポキシ樹脂塗料組成物を規定の膜厚に塗装した後、23℃で2日間養生を行い、試
験片の中央部上下2箇所にPカッターを用いて、素地(鋼板面)に達する#型(一辺20
mm、中心部10mm×10mmの正方形)の切傷を入れる。その後23℃で更に3日間
養生を行う。
養生が終了した試験片をヒートサイクル剥離試験に供する。試験片を50℃に設定した
恒温槽に入れ2時間保持する。その後恒温槽から取り出して23℃で1時間放置し、−3
0℃の低温槽に2時間保持する。その後低温槽から取り出し、23℃で1時間放置する。
このサイクルを1サイクルとし、繰り返し実施する。夜間および休日では、−30℃の条
件で保持する。
ヒートサイクル剥離試験の評価は#型に切傷を入れた部位からの塗膜のわれ、はがれ、
ふくれ(総称して塗膜の欠陥という)を観察して行い、
図1を基準にして評価点をつける
。塗膜の欠陥が基準図の間にある状態では、例えば「4〜3」の様に評価点をつける。各
評価点の切傷からの塗膜の欠陥の程度は下記の通りである。
評価点5:まったく変化が無い。
評価点4:#型切傷からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれの幅が1mm未満
評価点3:#型切傷からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれの幅が2mm未満
評価点2:#型切傷からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれの幅が4mm未満
評価点1:#型切傷からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれの幅が10mm未満
評価点0:#型切傷からの塗膜のわれ、はがれ、ふくれの幅が10mm以上
ヒートサイクル試験50サイクルを行った後の評価点が3以上であれば、本発明の目的
とする耐久性を備える品質である。
【0090】
(考察)
表2の結果より、本発明の効果について以下に考察する。
まず、実施例1〜9と比較例1〜8で作製した塗料の内容について、説明する。
比較例1は、一般的な強溶剤系変性エポキシ塗料であり、比較例2は弱溶剤系変性エポ
キシ塗料であり、線膨張係数α
1を約5.5×10
−5/Kとした塗料である。
比較例3は、比較例1の変性エポキシ塗料で一般的に配合されるタルクを平均粒子径が
比較的小さいガラスフレーク(以下ガラスフレーク小と略す)に置き換えて配合し、線膨
張係数α
1を約5.5×10
−5/Kとした塗料である。
比較例4は、比較例3のガラスフレーク小を平均粒子径が比較的大きいガラスフレーク
(以下にガラスフレーク中と略す)に置き換えて配合し、線膨張係数α
1を約4.5×1
0
−5/Kとした塗料である。
比較例5は、比較例4のガラスフレーク小を球状シリカに置き換えて配合し、線膨張係
数α
1を約4.5×10
−5/Kとした塗料である。
比較例6は、比較例1のタルクの配合量を増量し、線膨脹係数α
1を約4.5×10
−
5/Kとした塗料である。
比較例7は、比較例1のタルクを粒径の大きいマイカ(以下マイカ大と略す)に置き換
えて配合し、線膨張係数α
1を約5.5×10
−5/Kとした塗料である。
比較例8は、比較例7よりマイカ大の配合量を増量し、線膨張係数α
1を約3.5×1
0
−5/Kとした塗料である。
一方、実施例1は、平均粒子径が大きいガラスフレーク(以下ガラスフレーク大と略す
)の配合量を増量し、線膨張係数α
1を約2.0×10
−5/K以下とした塗料である。
実施例2は、比較例4のガラスフレーク中の配合量を増量し、線膨張係数α
1を約2.
5×10
−5/K以下とした塗料である。
実施例3は、実施例2のガラスフレーク中の配合量をさらに減量し、線膨張係数α
1を
約3.0×10
−5/K以下とした塗料である。
実施例4は、実施例1のガラスフレーク大の配合量を減量し、線膨張係数α
1を約3.
2×10
−5/K以下とした塗料である。
実施例5は、実施例3のガラスフレーク中の配合量をさらに減量し、線膨張係数α
1を
約3.2×10
−5/K以下とした塗料である。
実施例6は、比較例3のガラスフレーク小の配合量を大幅に増量し、線膨張係数α
1を
約3.2×10
−5/K以下とした塗料である。
実施例7は、比較例5の球状シリカの配合量を大幅に増量し、線膨張係数α
1を約3.
2×10
−5/K以下とした塗料である。
実施例8は、比較例2の弱溶剤系変性エポキシ塗料の配合系を用い、タルクをガラスフ
レーク中に置き換えて配合し、線膨張係数α
1を約3.0×10
−5/K以下とした塗料
である。
実施例9は、実施例2で用いた強溶剤系変性エポキシ塗料より柔軟性に劣るピュアーエ
ポキシ塗料の配合系を用い、線膨張係数α
1を約3.0×10
−5/K以下とした塗料で
ある。
【0091】
以上のように配合設計された塗料による50サイクルのヒートサイクル試験結果より、以下の事が言える。
線膨脹係数α
1が3.2×10
−5/Kより大きい比較例1〜8では、従来から知られているように、60μm塗装したテストピースの結果より、
300μm塗装したより厚膜のテストピースの方が、剥離し易い結果となっているのに対し、線膨張係数α
1が3.2×10
−5/K以下である本発明の実施例1〜9では、60μm塗装したテストピースの結果より、
300μm塗装したより厚膜のテストピースの方が、剥離し難い結果となっている。このことより、線膨張係数α
1を3.2×10
−5/K以下とする事により、厚く塗装すればする程、塗膜の剥離性がむしろ向上するという、これまででは知られていない結果が得られている。
【0092】
次に、実施例2〜4を比較すると、同種の顔料を配合する場合、その顔料を多く配合し
た方が、線膨張係数α
1は小さくなり、線膨張係数α
1が小さくなる程、剥離し難くなる
傾向がある。また、実施例1、3及び比較例3を比較すると、ガラスフレーク顔料の配合
量は近似しているが、線膨張係数α
1の値に差があり、その結果剥離試験結果にも顕著な
差が見られる。ガラスフレークは麟片状の異方性材料であるため、平均粒径が大きいほど
アスペクト比が大きくなり、アスペクト比の大きい顔料ほど少量の配合で線膨脹係数α
1
を小さくすることが可能である。この同種の顔料で線膨張係数α
1が小さい程剥離し難く
なる傾向は、比較例1と比較例6、ならびに、比較例7と比較例8の比較においても、同
様な事が言える。
【0093】
実施例5〜7および実施例9を比較すると、いずれも強溶剤系変性エポキシ塗料という
同じ配合設計系であるが、顔料の種類が異なっていても、その線膨張係数α
1が同等あれ
ば、剥離し易さもほぼ同等であることが判る。この線膨張係数α
1が同等ならば、顔料の
種類が変わっても剥離し易さは同等であるという結果は、比較例1と比較例3、ならびに
、比較例5〜7および実施例9の比較においても、同様な事が言える。
しかし、実施例5と実施例6および実施例7の比較において、いずれも線膨張係数α
1
は3.2×10
−5であるが、実施例6及び実施例7の線膨張係数α
2は6.0×10
−
5以上と大きいのに対し、実施例5は2.7×10
−5と小さく、α
2が3.0×10
−
5より小さい実施例5の方が剥離し難い傾向にある。実施例4と実施例5の比較において
も、α
1が同じでも、α
2が1.7×10
−5とさらに小さく、α
2が2.0×10
−5
より小さい実施例4の方が、剥離し難い傾向にある。塗膜の内部応力の観点からはα
2の
影響は小さいと考えられるが、耐剥離性においては、α
2の影響が認められ、α
1が同じ
でも、α
2が小さい方が剥離し難くなる傾向がある。耐剥離性において、α
1が支配的に
影響するが、α
2も若干の影響を与えていることが分かる。
【0094】
なお、実施例5〜7において、配合された顔料の種類とその配合量に着目すると、ガラ
スフレークは麟片状の異方性材料であるため、ガラスフレーク中は、ガラスフレーク小に
比べ、平均粒子径が大きい分、アスペクト比が大きくなっており、さらに球状シリカは等
方性材料であるためアスペクト比が最も小さい。これらの長辺サイズの異なる顔料で線膨
張係数α
1を同等とするためには、アスペクト比が大きい程、少量の配合で線膨脹係数α
1を小さくすることが可能である。
【0095】
実施例3と実施例8と実施例9を比較すると、各配合設計系が強溶剤系エポキシ塗料、
弱溶剤系エポキシ塗料、ピュアーエポキシ塗料と異なっても、その線膨張係数α
1が同等
であれば、剥離し易さも同等であることが判る。この線膨張係数α
1が同等ならば、塗料
の配合設計系が変わっても剥離し易さは同等であるという結果は、比較例1と比較例2の
比較においても、同様な事が言える。
【0096】
(実施例10,11)
実施例10〜11(実−10〜実−11)、比較例1(比−1)のエポキシ樹脂塗料組
成物の配合を表3に示す。各配合は、標準配合として参考文献3に記載されている「鋼構
造物用厚膜形変性エポキシ樹脂塗料下塗基準塗料」を比較例1とし、それに含まれる樹脂
や顔料を種々の対象原料に置換えた。
各エポキシ樹脂塗料組成物の製造は実施例1〜9と同様の方法で行い、得られた主剤を
表3に示した配合比率で硬化剤と混合して、各エポキシ樹脂塗料組成物を製造した。
【0097】
【表3】
【0098】
(注19) エピクロン5900−60:商品名 DIC社製、アルキルフェノールノボラック
型エポキシ樹脂のミネラルスピリット溶液、不揮発分60質量%、エポキシ当量640〜
700g/eq
(注20)アデカグリシロールED502:商品名 ADEKA社製 アルキルグリシジルエー
テル、不揮発分100質量%、エポキシ当量320g/eq
(注21)マイカA−41S:商品名 ヤマグチマイカ社製、白雲母、平均粒径:47μm
、アスペクト比:80(平均)
(注22) トーマイド225−X:商品名 T&K TOKA社製、ポリアミノアミド、
アミン価:340
(注23)アデカハードナーEH235R−2:商品名 ADEKA社製 ケチミン系硬化剤、
不揮発分100質量%、アミン価 290mgKOH/g
【0099】
実施例10、実施例11及び比較例1により得られた各エポキシ樹脂塗料組成物につい
て以下の試験に供した。
(1)線膨張係数(α
1・α
2)の測定
実施例1〜9及び比較例1〜8により得られた各エポキシ樹脂塗料組成物と同様の方法
で測定し、評価した。
(2)ヒートサイクル剥離試験
実施例1〜9及び比較例1〜8により得られた各エポキシ樹脂塗料組成物と同様の方法
で測定し、評価した。
(3)塗膜の外観
JIS K 5551:2008に準拠する方法にて評価した。具体的には、塗料組成
物を塗ってから48時間放置し,目視によって観察した。
○:つぶ,しわ,むら,割れ,膨れ,穴及びはがれが認められない。
×:つぶ,しわ,むら,割れ,膨れ,穴及びはがれのいずれか、あるいは複数が認めら
れる。
(4)塗装作業性(刷毛塗り)
表面が清浄なブリキ板(0.3mm×75mm×150mm)に塗料組成物を乾燥膜厚
が60μmとなるように刷毛で1回塗装した際の作業性評価とその後、10分間立てかけ
て保持し、10分後の塗膜状態を目視によって評価した。比較例1と比較して以下の水準
で評価を行った。
◎:比較例1よりも良好な作業性および仕上がりである
○:比較例1と同等の作業性および仕上がりである
×:比較例1よりも悪い作業性あるいは悪い仕上がりである
(5)防食性(CCT)
JIS K 5551:2008の7.16(サイクル腐食性)に準拠して試験片を作
製した。但し、乾燥膜厚は60μmとした。そして、作製した試験片に対して、JIS
K 5600−7−9:2006の7.5(切り込みきずの付け方)に準じて、素地に達
する交差状の切り込みきずを付け、JIS K 5600−7−9「サイクル腐食試験方
法」に規定されるサイクル腐食性試験(サイクルDにて120サイクル(720時間))
に供した。
試験後の一般部(カット部以外の部分)及びカット部について、下記の基準により目視
評価した。
<一般部>
○:錆の発生が認められない。
×:錆の発生が認められる。
<カット部>
◎:切り込みきずからの塗膜変状幅が2.0mm未満
○:切り込みきずからの塗膜変状幅が2.0〜4.0mm
×:切り込みきずからの塗膜変状幅が4.0mmを超える。
【0100】
本発明を、例えば、耐剥離性に優れた防食塗料として適用する場合、耐剥離性だけでは
なく、防食性、塗装作業性、外観(美粧性)等にも優れていることが要求されることから
、本明細書に示されるような各種材料を用いて、本明細書に示されるような好ましい範囲
の特性値を満たすように適宜、配合設計することにより、耐剥離性に優れ、防食塗料用途
に適用できる塗料組成物を調製した。弱溶剤系塗料として実施例10を、強溶剤系塗料と
して実施例11を、その一例として示した。一般的な防食塗料の配合例として位置付けら
れる比較例1に比べ、防食性(CCT)、外観、塗装作業性ともに劣る事無く、耐剥離性
を向上させることが可能であることが分かる。