(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記先端部の前記先端内壁が前記基部の前記先端内壁と削り出し加工により一体化され、前記溶接部が前記先端部の前記先端外壁と前記基部の前記先端外壁のみを接合している請求項2に記載の液体容器。
前記基部および前記先端部を形成する工程は、前記基部の前記先端内壁と前記先端外壁とを削り出し加工により一体化して形成する請求項6に記載の液体容器の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ターゲット容器の液体容器において、荷電粒子線(陽子ビーム)を照射される先端側は、液体金属の流速を上げることで陽子との核破砕反応を効率良く反応させるため、狭隘流路を有する構造となっている。即ち、液体容器は、先端側が先端内壁と先端外壁とで構成された二重構造となっている。狭隘流路は、例えば、2mm(0,−0.5)の精度が要求され、変形が少ない接合方法の適用が必要となる。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するものであり、荷電粒子線を照射されるターゲット容器における液体容器の先端側において、耐久性を確保しつつ、狭隘流路をなす二重構造を高い精度で形成することのできる液体容器、および液体容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係る液体容器は、高エネルギーの荷電粒子線が照射される液体金属を収容する液体容器であって、前記荷電粒子線が照射される先端側部は、先端外壁と、前記先端外壁との間に前記液体金属が流通する狭隘流路をなす先端内壁とを有し、前記先端側部は、前記先端内壁と前記先端外壁とが前記狭隘流路の開口部を形成しつつ一体化された基部と、前記先端内壁と前記先端外壁とが前記狭隘流路を形成しつつ互いに離隔して設けられて前記荷電粒子線に向けて配置される先端部と、を有しており、前記先端部の少なくとも前記先端外壁が前記基部の前記先端外壁に対して連続する溶接部を介して接合されている。
【0008】
また、本発明の一態様に係る液体容器では、前記基部の前記先端内壁と前記先端外壁とが削り出し加工により一体化されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の一態様に係る液体容器では、前記先端部の前記先端内壁が前記基部の前記先端内壁と削り出し加工により一体化され、前記溶接部が前記先端部の前記先端外壁と前記基部の前記先端外壁のみを接合していることが好ましい。
【0010】
また、本発明の一態様に係る液体容器では、前記基部の前記先端内壁と前記先端外壁とが一体化される接続部の表面に曲面加工が施されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の一態様に係る液体容器では、前記溶接部が前記基部における前記先端内壁と前記先端外壁との接続部の近傍に配置されていることが好ましい。
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係る液体容器の製造方法では、高エネルギーの荷電粒子線が照射される液体金属を収容する液体容器の製造方法であって、前記液体容器は、前記荷電粒子線が照射される先端側部が前記液体金属を流通する狭隘流路をなす先端内壁と先端外壁とを有し、前記先端内壁と前記先端外壁とが前記狭隘流路の開口部を形成しつつ一体化された基部と、前記先端内壁と前記先端外壁とが前記狭隘流路を形成しつつ互いに離隔して設けられて前記荷電粒子線に向けて配置される先端部と、を有しており、前記基部および前記先端部を形成する工程と、前記先端部の少なくとも前記先端外壁を前記基部の前記先端外壁に対して連続する溶接部に沿って溶接により接合する工程と、を含む。
【0013】
また、本発明の一態様に係る液体容器の製造方法では、前記基部および前記先端部を形成する工程は、前記基部の前記先端内壁と前記先端外壁とを削り出し加工により一体化して形成することが好ましい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る液体容器の製造方法では、前記先端部の前記先端内壁を前記基部の前記先端内壁に削り出し加工により一体化して形成し、前記先端部の前記先端外壁と前記基部の前記先端外壁のみを前記溶接部に沿って接合することが好ましい。
【0015】
また、本発明の一態様に係る液体容器の製造方法では、前記先端部と前記基部の接合にあたり、先に電子ビーム溶接により接合する第一接合工程と、前記第一接合工程の上からTig溶接により接合する第二接合工程と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液体容器の外側から連続する溶接部を介して先端部を基部に接合することから、確実かつ容易に溶接施工を実施することができる。このため、荷電粒子線の入射時に瞬間的に生じる圧力、および液体金属、不活性ガス、冷却水の圧力に耐え、狭隘流路の隙間管理を行うことができる。この結果、耐久性を確保しつつ、狭隘流路をなす二重構造を高い精度で形成することができる。しかも、液体容器の外側から連続する溶接部を介して先端部を基部に接合することから、溶接施工の健全性の確認を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0019】
以下の実施形態においては、中性子線照射装置100が、機器または構造物のような検査対象物に中性子線Nを照射して、その検査対象物の内部を非破壊で検査する検査装置に適用される場合で説明する。中性子線照射装置100は、放射線療法に使用することもできる。中性子線照射装置100は、被照射体Sに中性子線Nを照射する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る液体容器が適用される中性子線照射装置の一例を示す模式図である。
図1に示すように、中性子線照射装置100は、荷電粒子を加速して荷電粒子線(例えば、陽子ビーム)Pを射出する加速装置102と、加速装置102から射出された荷電粒子線Pの照射状態を調整する調整装置103と、荷電粒子線Pの照射により中性子線Nを発生するターゲット105と、ターゲット105で発生した中性子線Nを減速する減速装置106と、減速装置106から射出された中性子線Nを平行化するコリメータ107と、を備えている。コリメータ107から射出された中性子線Nが被照射体Sに照射される。
【0021】
加速装置102は、円形加速器または直線加速器を含む。加速装置102は、荷電粒子(陽子、電子、または重粒子)を加速して、荷電粒子線(陽子線、電子線、または重粒子線)Pを生成して射出する。
【0022】
調整装置103は、複数の電磁石を含み、加速装置102から射出された荷電粒子線Pの照射状態を調整する。荷電粒子線Pの照射状態は、荷電粒子線Pの進行方向の調整および荷電粒子線Pの整形を含む。調整装置103は、荷電粒子線Pの発散を抑制し、荷電粒子線Pを集束させる。調整装置103は、加速装置102から射出された荷電粒子線Pを走査装置104に導く。
【0023】
本実施形態において、中性子線照射装置100は、荷電粒子線Pを走査する走査装置104を備える。走査装置104は、荷電粒子線Pを走査し、ターゲット105に対する荷電粒子線Pの照射位置を調整する。また、走査装置104は、ターゲット105に照射される荷電粒子線Pを整形する。なお、走査装置104は無くてもよい。
【0024】
加速装置102から射出され、調整装置103および走査装置104を通過した荷電粒子線Pは、ターゲット105に照射される。ターゲット105は、荷電粒子線Pの照射により、中性子線Nを発生する。ターゲット105を、中性子線発生部材、と称してもよい。ターゲット105は、例えばベリリウム(Be)、リチウム(Li)、またはそれらを含む化合物で形成された液体を含む。ターゲット105については後述する。
【0025】
減速装置106は、ターゲット105で発生した中性子線Nを減速する。減速装置106は、中性子線Nの進路において、ターゲット105と被照射体Sとの間に配置される。ターゲット105は、高エネルギーの高速中性子を発生する。減速装置106は、高速中性子のエネルギーを低減して、低速で低エネルギーの中性子(熱中性子または熱外中性子)を生成する。
【0026】
コリメータ107は、減速装置106から射出された中性子線Nを平行化する。コリメータ107により平行化され、そのコリメータ107から射出された中性子線Nが被照射体Sに照射される。
【0027】
次にターゲット105について説明する。
図2は、本実施形態に係る液体容器が適用される中性子線照射装置の一例を示す模式図である。
図2では、
図1のターゲット105に関係する部分を詳細に示している。
図2に示すようにターゲット105は、ターゲット容器2と、液体金属供給部3と、を備えている。
【0028】
ターゲット容器2は、気密・液密に形成された容器であって、その内部には液体金属L(本実施形態では水銀)が流通している。加速装置102で生成された荷電粒子線Pがターゲット容器2内の液体金属原子(水銀原子)に衝突することで核破砕反応を生じる。ターゲットとして液体金属Lを用いることで、液体金属L自体が冷却材としての役割を果たすため、より大強度の荷電粒子線Pを照射することが可能となり、より高い中性子発生効率を得られる。
【0029】
液体金属供給部3は、ターゲット容器2に接続され、ターゲット容器2に液体金属Lを供給する。液体金属供給部3は、液体金属Lを貯留するタンク4と、タンク4内の液体金属Lをターゲット容器2内に供給する供給流路5と、供給流路5を通じて液体金属Lをターゲット容器2内に圧送するポンプ6と、ターゲット容器2から排出された液体金属Lを回収する回収流路7と、を有する。
【0030】
ターゲット容器2の詳細な構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る液体容器が適用されるターゲット容器の一例を示す斜視図である。
図4は、本実施形態に係る液体容器が適用されるターゲット容器の一例の断面図である。
図5は、
図4のA−A断面図である。
図6は、
図4のB−B断面図である。
【0031】
図2および
図3に示すように、本実施形態に係るターゲット容器2は、平面視で略長方形状の外観を呈している。以降の説明において、ターゲット容器2の長辺が延びる方向を長軸方向と呼び、ターゲット容器2の短辺が延びる方向(長軸方向に平面視で直交する方向)を短軸方向と呼ぶ。さらに、ターゲット容器2の上下方向であって長軸方向および短軸方向に直交する高さ方向を厚さ方向と呼ぶ。さらに、ターゲット容器2の短軸方向および厚さ方向に沿って、長軸方向の周り方向を周方向(長軸方向に直行する断面(例えば、
図5参照)における各容器の外周に沿う方向)と呼ぶ。また、ターゲット容器2の長軸方向において、荷電粒子線Pが照射される側を先端側と呼び、先端側の反対側となり液体金属Lが供給および排出される側を後端側と呼ぶ。即ち、ターゲット容器2は、照射される荷電粒子線Pに長軸方向の先端側を向けて配置されている。
【0032】
ターゲット容器2は、
図3〜
図6に示すように、三重構造の容器である。具体的に、ターゲット容器2は、液体金属Lが流通する液体容器21と、液体容器21を外側から覆う内側保護容器22と、内側保護容器22をさらに外側から覆う外側保護容器23と、を有する。ターゲット容器2は、ステンレス鋼などの固体金属により形成される。なお、
図3においては、ターゲット容器2の各容器21,22,23の肉厚を省略して線にて示している。
【0033】
液体容器21は、液密性・気密性を有して形成され、内部の流通空間Vfに液体金属Lが流通する。液体容器21は、長軸方向における後端側に、上述した液体金属供給部3の供給流路5に繋がる供給口24と、回収流路7に繋がる回収口25と、が形成されている。供給口24および回収口25は、短軸方向の各端寄りに配置されて間隔を空けて設けられ、本実施形態では互いに同じく後端側に向かって開口して形成されている。
【0034】
液体容器21は、さらにビームダンプ26を有している。ビームダンプ26は、流通空間Vf内において後端側に設けられている。ビームダンプ26は中実の部材であり、先端側から液体容器21に入射した荷電粒子線Pが後端側へ漏洩することを抑制するものである。ビームダンプ26は、供給口24と回収口25との間で先端側に向かって延び、その先端側の端部から液体容器21の先端側の端部までの距離を、一例として1m程度空けて配置されている。このビームダンプ26は、液体容器21に対して一体に形成されることが望ましいが、別の部材として設けることも可能である。
【0035】
液体容器21は、さらに案内羽根27を有している。案内羽根27は、流通空間Vf内に液体金属Lの流れを案内するためのものである。案内羽根27は、供給口24および回収口25の短軸方向の内側でビームダンプ26を挟むように一対設けられている。一対の案内羽根27は、後端側から先端側の途中に至り長軸方向に延在し、厚さ方向で液体容器21の上下の内壁に当接して配置されていることで、ビームダンプ26を間において供給口24側と回収口25側とを仕切るように設けられている。また、一対の案内羽根27は、長軸方向で先端側に向かうに従って互いに漸次接近するように形成されている。
【0036】
内側保護容器22は、液体容器21を外側から覆っている。内側保護容器22は、万が一液体容器21から液体金属Lが漏洩した場合でも閉じ込めることができるように、液密性・気密性を有して形成されている。内側保護容器22は、その内面と液体容器21の外面との間に第一空間V1を有するように形成されている。第一空間V1は、不活性ガス(例えば、ヘリウム)が封入される。そして、ターゲット容器2の使用中に不活性ガスの圧力(分圧)を監視することで、不活性ガスの分圧に変化が生じた場合(例えば分圧が低下した場合)に液体容器21から液体金属Lの一部が漏洩していると判断することができる。
【0037】
外側保護容器23は、内側保護容器22を外側から覆っている。外側保護容器23は、液密性・気密性を有して形成されている。外側保護容器23は、その内面と内側保護容器22の外面との間に第二空間V2を有するように形成されている。第二空間V2は、内側保護容器22と外側保護容器23自体で生じる核発熱を冷却するための冷却水が流通する。
【0038】
上述したターゲット容器2において、液体容器21は、
図4〜
図6に示すように、荷電粒子線Pが照射される先端側に、液体金属Lを流通する狭隘流路Vgが形成されている。この狭隘流路Vgをなす部分は、液体容器21において後端側と別に形成されて溶接により接合される先端側部28として形成されている。先端側部28は、椀状に形成された先端内壁29と先端外壁30との二重構造であり、先端内壁29の外面と先端外壁30の内面との間に狭隘流路Vgをなす隙間が形成される。先端内壁29は、液体容器21の後端側には接合されず、後端側の一部が先端外壁30の後端側に接続されている。先端外壁30は、先端内壁29を外側から覆い、かつ液体容器21の後端側に接合される。狭隘流路Vgは、先端内壁29の後端側の端部が先端外壁30に接続されていない一部において流通空間Vf内に通じる開口部Vg1が形成されている。開口部Vg1は、本実施形態では、先端内壁29の後端側の端部が厚さ方向の両側において先端外壁30の後端側に接続されていることで、短軸方向の両側において開口して形成されている。そのため、狭隘流路Vgは、短軸方向の一側から先端側部28(液体容器21)の先端側を経て短軸方向の他側に到り、流通空間Vf内に通じている。従って、流通空間Vf内の液体金属Lは、狭隘流路Vgの一側の開口部Vg1から他側の開口部Vg1に流動し、流速が上がる。冷却特性上、本箇所の流速が上がることが望ましい。なお、図には明示しないが、先端内壁29の後端側の端部が短軸方向の両側において先端外壁30の後端側に接続されていることで、開口部Vg1が厚さ方向の両側に形成されて、これにより狭隘流路Vgが厚さ方向の一側から先端側部28(液体容器21)の先端側を経て厚さ方向の他側に到り、流通空間Vf内に通じて形成されていてもよい。
【0039】
以下、液体容器21における先端側部28の製造について説明する。
図7は、本実施形態に係る液体容器の製造工程を示す斜視図である。
図8および
図9は、本実施形態に係る液体容器の製造工程を示す断面図である。
図8は、
図4と同方向の断面図であり、
図9は、
図6と同方向の断面図である。
図10は、本実施形態に係る液体容器の製造工程を示すフローチャートである。
図11は、液体容器の他の製造方法を示す斜視図である。
【0040】
先端側部28は、
図4および
図6に示すように、基部28Aと、先端部28Bとを接合して形成される。基部28Aは、先端側部28において、
図4および
図6にて一点鎖線で区切る後端側の部分であり、先端内壁29の一部と先端外壁30の一部とが狭隘流路Vgの開口部Vg1を形成するように、先端内壁29の一部と先端外壁30の一部とが筒状に一体化された部分である。先端部28Bは、先端側部28において、
図4および
図6にて一点鎖線で区切る先端側の部分であり、先端内壁29の一部と先端外壁30の一部とが狭隘流路Vgを形成するように互いに離隔して設けられる部分であって、荷電粒子線Pに向けて配置される部分である。先端部28Bは、本実施形態では先端外壁30の一部のみで構成される。従って、本実施形態では、
図7〜
図9に示すように、基部28Aは先端内壁29の全てが含まれ、基部28Aは先端外壁30の一部のみで構成される。なお、先端部28Bは、先端内壁29の一部と先端外壁30の一部とを含んでいる場合、先端内壁29の一部と先端外壁30の一部とが別体で分かれた構成となる。
【0041】
基部28Aは、削り出し加工により一塊にて一体に形成されている。即ち、本実施形態における基部28Aは、
図4、
図6〜
図9に示すように、筒状の先端外壁30の一部に、腕状と筒状が一体の先端内壁29の全てが一塊の部材を削り出して形成されている。この削り出し加工の際、
図4〜
図9に示すように、後端側における先端内壁29と先端外壁30との接続部31は、流通空間Vf内に現れる段差部分の表面に曲面加工が施される。
【0042】
先端部28Bは、削り出し加工により一塊にて一体に形成されている。即ち、本実施形態における先端部28Bは、
図4、
図6〜
図9に示すように、腕状の先端外壁30の一部が一塊の部材を削り出して形成されている。
【0043】
また、基部28Aおよび先端部28Bは、削り出し加工の際、
図7〜
図9に示すように、互いの溶接部32に開先33が形成される。溶接部32は、荷電粒子線Pの照射による液体金属Lとの核破砕反応による応力が、荷電粒子線Pが照射される先端側で高くなることから、先端部28Bにおいて極力後端側に設けることが好ましい。そのため、本実施形態では、
図9に示すように、後端側における先端内壁29と先端外壁30との接続部31の近傍に溶接部32を配置している。
【0044】
液体容器21の製造方法は、
図7〜
図10に示すように、基部28Aおよび先端部28Bを形成する工程(ステップS1)と、先端部28Bの先端外壁30を基部28Aの先端外壁30に対して周方向に基部28Aの先端外壁30の縁の形状に沿って連続する環状の溶接部32に沿って溶接により接合する工程(ステップS2)と、を含む。
【0045】
また、ステップS2の接合する工程においては、先に電子ビーム溶接により接合する第一接合工程(ステップS2a)と、第一接合工程の上からTig溶接により接合する第二接合工程(ステップS2b)と、を含む。
【0046】
このようにして製造される本実施形態の液体容器21は、荷電粒子線Pが照射される先端側部28が液体金属Lを流通する狭隘流路Vgをなすように先端内壁29と先端外壁30との二重構造とされており、先端側部28は、先端内壁29と先端外壁30とが狭隘流路Vgの開口部Vg1を形成しつつ一体化された基部28Aと、先端内壁29と先端外壁30とが狭隘流路Vgを形成しつつ互いに離隔して設けられて荷電粒子線Pに向けて配置される先端部28Bと、を有しており、先端部28Bの少なくとも先端外壁30が基部28Aの先端外壁30に対して周方向に沿って連続する溶接部32を介して接合されている。
【0047】
この液体容器21によれば、液体容器21の外側から連続する溶接部32を介して先端部28Bを基部28Aに接合することから、確実かつ容易に溶接施工を実施することができる。このため、荷電粒子線Pの入射時に瞬間的に生じる圧力および熱応力に耐え、狭隘流路Vgの隙間管理2mm(0,−0.5)を行うことができる。この結果、耐久性を確保しつつ、狭隘流路Vgをなす二重構造を高い精度で形成することができる。しかも、液体容器21の外側から連続する溶接部32を介して先端部28Bを基部28Aに接合することから、溶接施工の健全性の確認を容易に行うことができる。
【0048】
ここで、
図11に示すように、液体容器21の先端側部28を製造するにあたり、先端内壁29と先端外壁30とを完全に独立して形成し、これらを狭隘流路Vgおよび狭隘流路Vgの開口部Vg1をなすように開口部Vg1側から2箇所の溶接部35を介して溶接して接合することが考えられる。しかしながら、
図11に示すような製造においては、溶接部35が複雑に曲がっていることから、溶接施工が容易ではなく健全性の確認も容易ではない。具体的に、溶接部35が複雑に曲がっていることから、入熱が少なく先端側部28の変形が小さい電子ビーム溶接では、ビームを三次元的な軌跡とする必要があるため軌跡に沿ったプログラムによる溶接条件出しが難しく、溶接施工後に欠陥が生じる可能性がある。また、溶接部35が複雑に曲がっていることから、Tig溶接では、入熱が大きく先端側部28の変形が懸念され、かつ変形に伴い狭隘流路Vgの隙間管理が困難である。
【0049】
このような
図11に示す製造に対し、本実施形態の液体容器21によれば、液体容器21の外側から連続する溶接部32を介して先端部28Bを基部28Aに二次元的に接合することから、溶接条件出しが容易であり、電子ビーム溶接を含む溶接施工が可能である。従って、入熱による変形が小さく、狭隘流路Vgの隙間管理を行うことができる。さらに、液体容器21の外側から連続する溶接部32を介して先端部28Bを基部28Aに二次元的に接合することから、健全性の確認が容易になる。
【0050】
また、本実施形態の液体容器21では、基部28Aの先端内壁29と先端外壁30とが削り出し加工により一体化されていることが好ましい。
【0051】
この液体容器21によれば、基部28Aの先端内壁29と先端外壁30とが削り出し加工により一体化されているため、即ち、基部28Aの先端内壁29と先端外壁30とが、
図11に示したように狭隘流路Vgの開口部Vg1をなすように開口部Vg1側から2箇所の溶接部35を介して溶接して接合するような構成ではないため、溶接施工の入熱による変形や、健全性の確認不足や、狭隘流路Vgの隙間管理不足を生じることがない。
【0052】
また、本実施形態の液体容器21では、先端部28Bの先端内壁29が基部28Aの先端内壁29と削り出し加工により一体化され、溶接部32が先端部28Bの先端外壁30と基部28Aの先端外壁30のみを接合していることが好ましい。
【0053】
この液体容器21によれば、入熱による変形がさらに小さくなり、狭隘流路Vgの隙間管理をより確実に行うことができ、健全性の確認がより容易になる。
【0054】
また、本実施形態の液体容器21では、基部28Aの先端内壁29と先端外壁30とが一体化される接続部31の表面に曲面加工が施されていることが好ましい。
【0055】
この液体容器21によれば、基部28Aの先端内壁29と先端外壁30とが一体化される接続部31の表面に曲面加工が施されていることで、接続部31における応力緩和を行うことができる。即ち、荷電粒子線Pの入射時に瞬間的に生じる圧力および熱応力に十分に耐え得ることができる。
【0056】
また、本実施形態の液体容器21では、溶接部32が基部28Aにおける先端内壁29と先端外壁30との接続部31の近傍に配置されていることが好ましい。
【0057】
この液体容器21によれば、基部28Aにおける先端内壁29と先端外壁30との接続部31は、狭隘流路Vgの開口部Vg1をなす部分であり先端側部28の後端側に位置するため、基部28Aと先端部28Bとを溶接により接合する溶接部32を先端側部28の後端側に位置させることになる。このため、荷電粒子線Pが入射する先端側から溶接部32を遠ざけることができ、荷電粒子線Pの入射時に瞬間的に生じる圧力に十分耐え得ることができる。
【0058】
また、本実施形態の液体容器21の製造方法は、基部28Aおよび先端部28Bを形成する工程と、先端部28Bの少なくとも先端外壁30を基部28Aの先端外壁30に対して連続する溶接部32に沿って溶接により接合する工程と、を含む。
【0059】
この製造方法によれば、液体容器21の外側から連続する溶接部32を介して先端部28Bを基部28Aに接合することから、確実かつ容易に溶接施工を実施することができる。このため、荷電粒子線Pの入射時に瞬間的に生じる圧力および熱応力に耐え、狭隘流路Vgの隙間管理2mm(0,−0.5)を行うことができる。この結果、耐久性を確保しつつ、狭隘流路Vgをなす二重構造を高い精度で形成することができる。しかも、液体容器21の外側から連続する溶接部32を介して先端部28Bを基部28Aに接合することから、溶接施工の健全性の確認を容易に行うことができる。
【0060】
また、本実施形態の液体容器21の製造方法では、基部28Aおよび先端部28Bを形成する工程は、基部28Aの前記先端内壁と前記先端外壁とを削り出し加工により一体化して形成することが好ましい。
【0061】
この製造方法によれば、基部28Aが削り出し加工により一体化されているため、即ち、基部28Aの先端内壁29と先端外壁30とが、
図11に示したように狭隘流路Vgの開口部Vg1をなすように開口部Vg1側から2箇所の溶接部35を介して溶接して接合するような構成ではないため、溶接施工の入熱による変形や、健全性の確認不足や、狭隘流路Vgの隙間管理不足を生じることがない。
【0062】
また、本実施形態の液体容器21の製造方法では、先端部28Bの先端内壁29を基部28Aの先端内壁29に削り出し加工により一体化して形成し、先端部28Bの先端外壁30と基部28Aの先端外壁30のみを溶接部32に沿って接合することが好ましい。
【0063】
この製造方法によれば、溶接部32が1箇所のみとなるため、入熱による変形がさらに小さくなり、狭隘流路Vgの隙間管理をより確実に行うことができ、健全性の確認がより容易になる。しかも、溶接部32が1箇所のみとなるため、液体金属Lが漏洩するリスクを低減することができる。
【0064】
また、本実施形態の液体容器21の製造方法では、先端部28Bと基部28Aの接合にあたり、先に電子ビーム溶接により接合する第一接合工程(ステップS2a)と、第一接合工程の上からTig溶接により接合する第二接合工程(ステップS2b)と、を含むことが好ましい。
【0065】
この製造方法によれば、電子ビーム溶接により接合することで、裏波を確保することができ、かつスパッタを抑制することができる。そして、第一接合工程の上からTig溶接により接合することで、細かい仕上げを行うことができる。なお、上述したように、Tig溶接は入熱が比較的大きいが、先に第一溶接工程で電子ビーム溶接により接合することで、全てTig溶接により接合することと比較して入熱を抑えることができる。
【0066】
なお、溶接については、上記第一溶接工程および第二溶接工程に限定されるものではない。例えば、電子ビーム溶接のみ、またはTig溶接のみであってもよく、あるいはレーザビーム溶接を適用してもよい。
【解決手段】高エネルギーの荷電粒子線が照射される液体金属を収容する液体容器21であって、荷電粒子線が照射される先端側部28は、先端外壁30と、先端外壁30との間に前記液体金属が流通する狭隘流路Vgをなす先端内壁29とを有し、先端側部28は、先端内壁29と先端外壁30とが狭隘流路Vgの開口部Vg1を形成しつつ一体化された基部28Aと、先端内壁29と先端外壁30とが狭隘流路Vgを形成しつつ互いに離隔して設けられて荷電粒子線に向けて配置される先端部28Bと、を有しており、先端部28Bの少なくとも先端外壁30が基部29Aの先端外壁30に対して連続する溶接部32を介して接合されている。