特許第6351936号(P6351936)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351936
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】麺用冷凍耐性付与剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20180625BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20180625BHJP
【FI】
   A23L7/109 C
   A23L29/00
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-150026(P2013-150026)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-19616(P2015-19616A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中森 慶祐
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寛子
(72)【発明者】
【氏名】高山 洋子
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−196797(JP,A)
【文献】 特開2007−209206(JP,A)
【文献】 特開2003−210126(JP,A)
【文献】 特開昭58−134959(JP,A)
【文献】 特開2008−212090(JP,A)
【文献】 特開平05−252859(JP,A)
【文献】 特表2007−506423(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/105734(WO,A1)
【文献】 特開2003−253263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/FSTA/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺生地を混捏する際に麺生地に添加して用いられる冷凍ゆで麺用冷凍耐性付与剤であって、プロピレングリコール脂肪酸エステル、アスコルビン酸類、タンパク質及びグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを含有することを特徴とする冷凍ゆで麺用冷凍耐性付与剤。
【請求項2】
プロピレングリコール脂肪酸エステルの含有量が20〜70質量%、アスコルビン酸類の含有量が1〜50質量%、タンパク質の含有量が5〜70質量%、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルの含有量が1〜40質量%であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍ゆで麺用冷凍耐性付与剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の冷凍ゆで麺用冷凍耐性付与剤を麺の生地に添加する工程を含むことを特徴とする冷凍ゆで麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺用冷凍耐性付与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
麺を急速凍結して製造される冷凍麺は、長期保存が可能であり、解凍して簡便に調理できることから、近年、その生産量は一層増加する傾向にある。しかし、冷凍麺は、小売店の店頭や一般家庭の冷凍庫での温度変化により水分が昇華し、麺の表面が乾燥するとともに、麺に含まれるでん粉やタンパク質が劣化する現象(いわゆる「冷凍焼け」、「冷凍変性」)が起こることが知られている。冷凍焼けや冷凍変性が生じると、弾力のある食感の低下や外観の白化を引き起こし、麺の商品価値を著しく損なう問題がある。
【0003】
麺の冷凍焼けや冷凍変性を防止する方法としては、例えば、融点が5℃以上30℃以下の範囲にある油脂を必須成分とする冷凍麺の冷凍焼け防止剤(特許文献1)、乳化剤、多価アルコール、水及び油脂を特定の条件で配合した高油分乳化油脂組成物を付着させた電子レンジ解凍済み冷凍麺(特許文献2)、乳化剤を添加してなる油脂を食品に接触処理した後、該食品を冷凍する冷凍食品の製造方法(特許文献3)等が知られている。
【0004】
しかし、上記方法は、いずれも冷凍焼け・冷凍変性防止(即ち、冷凍耐性の付与)に効果のある成分をゆで上げた麺の表面に付着させて使用するため、冷凍麺の製造工程が煩雑になる問題があった。
【0005】
一方、冷凍ゆで麺の食感を改善する方法として、グリセリン有機酸脂肪酸エステル及びレシチンを含有することを特徴とする冷凍ゆで麺用品質改良剤が知られている(特許文献4)。この品質改良剤は、冷凍麺の製造において麺の生地に添加して使用できるため、より簡便に製造できる。しかし、この方法は、冷凍耐性の付与効果が十分ではなく、未だ満足できるものではないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−034445号公報
【特許文献2】特開2010−246466号公報
【特許文献3】国際公開2003/022079号パンフレット
【特許文献4】特開2008−212090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、麺の生地に添加して使用でき、冷凍麺の冷凍耐性の付与及び食感の改良が可能な麺用冷凍耐性付与剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、プロピレングリコール脂肪酸エステルを使用することにより上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする麺用冷凍耐性付与剤、
(2)更に、アスコルビン酸類、タンパク質及びプロピレングリコール脂肪酸エステル以外の乳化剤からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする前記(1)に記載の麺用冷凍耐性付与剤、
(3)前記(1)又は(2)に記載の麺用冷凍耐性付与剤を麺の生地に添加する工程を含むことを特徴とする冷凍麺の製造方法、
からなっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の麺用冷凍耐性付与剤を添加した冷凍麺は、冷凍保存による冷凍焼けや冷凍変性が少なく、好ましい外観と食感が保持される。
本発明の麺用冷凍耐性付与剤は、麺を製造する際に麺の生地に添加して使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、冷凍麺とは、小麦粉、そば粉、米粉等の穀粉と水を主原料として、必要であれば食塩、かん水その他の原材料を混合し、常法により製麺して得られる麺類をそのまま、又はこれら麺類を熱湯中でゆで処理、若しくは蒸し処理等することによって該麺類に含まれるでん粉をα化したものを常法により凍結して得られる麺類をいう。麺類としては、例えばうどん、きしめん、沖縄そば、中華麺、日本そば、稲庭うどん、ひやむぎ、そうめん、冷麺、スパゲッティー、マカロニ類、米粉麺、大麦麺、春雨、餃子の皮、焼売の皮、ワンタンの皮、春巻きの皮等が挙げられる。
【0012】
本発明の麺用冷凍耐性付与剤の第1の態様は、プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする。
【0013】
本発明で用いられるプロピレングリコール脂肪酸エステルは、プロピレングリコールと脂肪酸のエステル化生成物であり、自体公知のエステル化反応等により製造される。該エステルはモノエステルであってもジエステルであっても良いし、あるいはそれらの混合物であっても良い。好ましくはモノエステルであり、混合物であればモノエステルを約90%以上含むものが良い。
【0014】
プロピレングリコール脂肪酸エステルの原料として用いられる脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を基原とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6〜24の直鎖の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)又は不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、α−リノレン酸、アラキドン酸、リシノール酸、縮合リシノール酸等)が挙げられ、とりわけパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸又はオレイン酸を50%以上、より好ましくは70%以上含有する脂肪酸混合物を用いるのが好ましい。
【0015】
プロピレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えばプロピレングリコールパルミチン酸エステル(商品名:リケマールPP−100;理研ビタミン社製)、プロピレングリコールステアリン酸エステル(商品名:リケマールPS−100;理研ビタミン社製)、プロピレングリコールベヘン酸エステル(商品名:リケマールPB−100;理研ビタミン社製)、プロピレングリコールオレイン酸エステル(商品名:リケマールPO−100;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0016】
本発明の麺用冷凍耐性付与剤の第1の態様の具体例としては、上記プロピレングリコール脂肪酸エステルそのものを麺用冷凍耐性付与剤としても良く、また上記プロピレングリコール脂肪酸エステルを含有する製剤を調製しても良い。該製剤100質量%中のプロピレングリコール脂肪酸エステルの含有量は、通常1〜90質量%、好ましくは15〜50質量%である。また、該製剤の形態としては、例えば粉末、油剤、乳化製剤及び可溶化製剤等が挙げられ、好ましくは粉末である。
【0017】
本発明の麺用冷凍耐性付与剤の第2の態様は、プロピレングリコール脂肪酸エステルに加えて、更にアスコルビン酸類、タンパク質及びプロピレングリコール脂肪酸エステル以外の乳化剤からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする。その1種又は2種以上としては、アスコルビン酸類が好ましく、アスコルビン酸類及びタンパク質がより好ましく、アスコルビン酸類、タンパク質及びプロピレングリコール脂肪酸エステル以外の乳化剤が最も好ましい。
【0018】
上記アスコルビン酸類としては、食品に用いられうるアスコルビン酸、その塩又はそれを生成しうる化合物(例えばアスコルビン酸−2又は3−リン酸エステル等のアスコルビン酸エステル等)であれば特に制限はなく、例えばL−アスコルビン酸又はその塩(例えば、L−アスコルビン酸ナトリウム)等が挙げられる。また、アスコルビン酸類として、アスコルビン酸類がアスコルビン酸オキシダーゼにより酸化されることで生じるモノデヒドロアスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸等を上記アスコルビン酸類と共に又は上記アスコルビン酸類に替えて用いても良い。これらアスコルビン酸類は、1種類で用いても良いし、2種類以上を任意に組み合わせて用いることができ、好ましくはL−アスコルビン酸又はL−アスコルビン酸ナトリウムである。
【0019】
上記タンパク質としては、動植物由来で食用可能なものであれば特に制限はなく、例えば全卵、卵白、卵黄等の卵タンパク、脱脂粉乳、ホエータンパク等の乳タンパク、大豆タンパク、小麦タンパク、えんどうタンパク、とうもろこしタンパク等の植物性タンパク、ゼラチン等の動物性タンパク等が挙げられる。これらタンパク質は、1種類で用いても良いし、2種類以上を任意に組み合わせて用いることができ、好ましくは小麦タンパクである。
【0020】
小麦タンパクとしては、小麦粉に水を加えて練り、そのドウ(dough)を水洗することにより得られるガム状の塊(ウエットグルテン)を乾燥した活性グルテン、該ウエットグルテンにアルカリ処理等の化学処理又は酵素処理等を施して調製した変性グルテン等が挙げられ、好ましくは活性グルテンである。
【0021】
活性グルテンとしては、例えば上記ウエットグルテンを細かく裁断しながら打ち粉を混合し、気流中で乾燥して得られる粉末状のグルテン、上記ウエットグルテンに酸やアルカリを入れ、pH調製をして低粘度の分散液を調製し、この液を噴霧乾燥して得られる粉末状のグルテン及び上記ウエットグルテンを真空乾燥又は真空凍結乾燥して得られる粉末状のグルテン等が挙げられ、いずれも好ましく用いることができる。
【0022】
上記プロピレングリコール脂肪酸エステル以外の乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン又はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。ここで、グリセリン脂肪酸エステルには、グリセリンと脂肪酸とのエステルの他、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル及びポリグリセリン縮合リシノール酸エステル等が含まれる。またレシチンには、分別レシチン、酵素分解レシチン及び酵素処理レシチン等が含まれる。これら乳化剤は、1種類で用いても良いし、2種類以上を任意に組み合わせて用いることができ、好ましくはグリセリン有機酸脂肪酸エステルである。
【0023】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、グリセリン酢酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル等が挙げられ、好ましくはグリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルである。
【0024】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルは、通常グリセリンモノ脂肪酸エステル(別称:モノグリセライド)とジアセチル酒石酸若しくはジアセチル酒石酸の酸無水物との反応、又はグリセリンとジアセチル酒石酸と脂肪酸との反応により得ることができる。
【0025】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、エルカ酸等の群から選ばれる1種あるいは2種以上の混合物が挙げられ、ステアリン酸を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する脂肪酸混合物である。
【0026】
グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンジアセチル酒石酸ステアリン酸エステル(商品名:ポエムW−10;理研ビタミン社製)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0027】
本発明の麺用冷凍耐性付与剤の第2の態様の具体例としては、上記プロピレングリコール脂肪酸エステルそのもの並びにアスコルビン酸類、タンパク質及びプロピレングリコール脂肪酸エステル以外の乳化剤からなる群から選択される1種又は2種以上そのものを麺用冷凍耐性付与剤としても良く、また、これら各成分を含有する製剤を調製しても良い。該製剤100質量%中の各成分の含有量に特に制限はないが、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステルが通常1〜90質量%、好ましくは20〜70質量%、アスコルビン酸類が通常1〜90質量%、好ましくは1〜50質量%、タンパク質が通常1〜90質量%、好ましくは5〜70質量%、プロピレングリコール脂肪酸エステル以外の乳化剤が通常1〜60質量%、好ましくは1〜40質量%となるように調製するのが好ましい。
【0028】
本発明の麺用冷凍耐性付与剤には、目的とする製剤が必要とする性質を損なわない範囲で、糖類(増粘多糖類を含む)、でん粉、でん粉に各種の処理を施した化工でん粉又は油脂等を配合することができる。
【0029】
本発明の麺用冷凍耐性付与剤は、前述のような諸原料を用いてなるものであり、その製造方法に特に制限はなく、自体公知の方法にて製造することができる。
【0030】
例えば、第1の態様の製剤は、プロピレングリコール脂肪酸エステルの粉末と粉末化剤(糖類、でん粉、化工でん粉等)とを混合し、粉末製剤を得る方法、プロピレングリコール脂肪酸エステルと粉末化剤を水に分散又は溶解し、得られた水溶液を乾燥して粉末製剤を得る方法等により製造することができる。水溶液を乾燥する方法としては、例えば噴霧乾燥法、真空乾燥法及び真空凍結乾燥法等が挙げられる。また、プロピレングリコール脂肪酸エステルを食用油脂に溶解することにより、或いはプロピレングリコール脂肪酸エステルを糖類、グリセリン等を溶解した水に分散し、乳化液又は可溶化液とすることにより、液状の製剤を製造することができる。
【0031】
また、第2の態様の製剤は、例えばプロピレングリコール脂肪酸エステル(以下、A成分ともいう)の粉末とアスコルビン酸類、タンパク質及びプロピレングリコール脂肪酸エステル以外の乳化剤からなる群から選択される1種若しくは2種以上(以下、B成分ともいう)の粉末とを混合し、粉末製剤を得る方法、A成分の粉末、B成分の粉末及び粉末化剤を混合し、粉末製剤を得る方法、A成分及びB成分を水に分散又は溶解し、得られた水溶液を乾燥して粉末製剤を得る方法、A成分、B成分及び粉末化剤を水に分散又は溶解し、得られた水溶液を乾燥して粉末製剤を得る方法等により製造することができる。水溶液を乾燥する方法としては、例えば噴霧乾燥法、真空乾燥法及び真空凍結乾燥法等が挙げられる。
【0032】
本発明の麺用冷凍耐性付与剤の使用方法に特に制限はないが、通常麺生地を混捏する際に麺生地に添加して用いられる。本発明の麺用冷凍耐性付与剤を麺生地に添加する工程を含む冷凍麺の製造方法及び該製造方法を採ることによる麺の冷凍耐性付与方法も本発明に含まれる。
【0033】
本発明の麺用冷凍耐性付与剤の使用量は、小麦粉等の穀粉100質量部に対して通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.2〜5質量部である。
【0034】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0035】
[麺用冷凍耐性付与剤の調製]
(1)原材料
1)プロピレングリコールステアリン酸エステル(商品名:リケマールPS−100;理研ビタミン社製)
2)プロピレングリコールオレイン酸エステル(商品名:リケマールPO−100;理研ビタミン社製)
3)プロピレングリコールパルミチン酸エステル(商品名:リケマールPP−100;理研ビタミン社製)
4)プロピレングリコールベヘン酸エステル(商品名:リケマールPB−100;理研ビタミン社製)
5)グリセリンステアリン酸エステル(商品名:エマルジーMS粉末;理研ビタミン社製)
6)グリセリンオレイン酸エステル(商品名:エマルジーOL−100H;理研ビタミン社製)
7)高純度粉末レシチン(商品名:レシオンP;理研ビタミン社製)
8)グリセリンジアセチル酒石酸ステアリン酸エステル(商品名:ポエムW−10;理研ビタミン社製)
9)L−アスコルビン酸ナトリウム(商品名:L−アスコルビン酸Na;BASF社製)
10)小麦タンパク(商品名:エマソフトM−1000;活性グルテン;理研ビタミン社製)
11)コーンスターチ(商品名:精製乾燥殺菌コーンスターチ;松谷化学工業社製)
【0036】
(2)製剤の配合
上記原材料を用いて調製した麺用冷凍耐性付与剤(No.1〜15)の配合組成を表1に示した。この内、No.1〜9は本発明に係る実施例であり、No.10〜15はそれらに対する比較例である。
【0037】
【表1】
【0038】
(3)製剤の調製方法
表1に示した原材料の配合に基づいて、所定の原材料を500mL容量のポリエチレン製の袋に入れて良く混合し、粉末状の製剤各100gを調製した。
【0039】
[試験例]
(1)冷凍ゆでうどんの作製
1)準強力粉(商品名:特ナンバーワン;日清製粉社製)700g、中力粉(商品名:金すずらん;日清製粉社製)100g、化工でん粉(商品名:あさがお;松谷化学工業社製)200g及び麺用冷凍耐性付与剤(No.1〜15)各10gを2L容量のポリエチレン製の袋に入れて良く混合し、配合粉とした。該配合粉を万能小型麺機(商品名:MODEL−MG−77;スズキ麺工社製)のミキサーに入れ、120rpmでかき混ぜながら、予め水400gに食塩20gを溶解して調製した食塩水(液温約25℃)を加え、80rpmで10分ミキシングした。捏ねあがった生地をロールを通して厚さ約4.5mmの麺帯とし、更に麺帯を圧延ロールにかけて厚さ約2.5mmまで薄くし、次に切り出し機(12番切刃使用)にかけて麺線とし、長さ25cmに切断した。
2)1)で得た生うどん100gを熱湯1L中で8分間ゆで、次にゆでうどんを流水に30秒間、次に氷水に30秒間浸漬し、冷却した。
3)2)で得たゆでうどんを水切りした後整形し、常法により急速凍結した。
4)凍結したゆでうどんをポリスチレン製容器に入れ、該容器をポリエチレン製の袋に入れてシールした。これを−20℃の冷凍庫で7日間保存してから−5℃の冷凍庫で1日間(24時間)保存した後、再度、−20℃の冷凍庫で7日間保存してから−5℃の冷凍庫で1日間(24時間)保存した。
5)同時に、麺用冷凍耐性付与剤を添加しないもの(対照)も同様に作製した。
【0040】
(2)冷凍耐性の評価
(1)で作製した冷凍ゆでうどんを20℃の恒温槽内に3時間静置し、解凍した。解凍したうどんの冷凍焼けによる白化の程度について表2に示す評価基準に従い15名のパネラーで評価を行い、評点の平均点を求め、以下の基準に従って記号化した。
◎:極めて良好 平均点3.5以上
○:良好 平均点2.5以上、3.5未満
△:やや悪い 平均点1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均点1.5未満
【0041】
【表2】
【0042】
(3)食感の評価
(1)で作製した冷凍ゆでうどんを熱湯10L中で1分間加熱し、解凍した。解凍したゆでうどんを流水にて約30秒間浸漬し、その後ざるに空けて水切りした。得られたゆでうどんについて、表3に示す評価基準に従い15名のパネラーで評価を行い、評点の平均点を求め、以下の基準に従って記号化した。
◎:極めて良好 平均点3.5以上
○:良好 平均点2.5以上、3.5未満
△:やや悪い 平均点1.5以上、2.5未満
×:悪い 平均点1.5未満
【0043】
【表3】
【0044】
(4)総合評価
(2)及び(3)の冷凍耐性及び食感の各評価の結果について、「◎」を3点、「○」を2点、「△」を1点、「×」を0点とし、これらの評価の合計点を求め、以下の基準に従って記号化した。
◎:極めて良好 合計点5〜6
○:良好 合計点3〜4
△:やや悪い 合計点1〜2
×:悪い 合計点0
【0045】
(5)結果
(2)〜(4)の評価結果を表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
表4の結果から明らかなように、本発明の麺用冷凍耐性付与剤(No.1〜9)を添加した冷凍ゆでうどんは、冷凍耐性及び食感の総合評価がいずれも「○」以上であった。これに対し、比較例の麺用冷凍耐性付与剤(No.10〜15)を添加した冷凍ゆでうどん及び対照の冷凍ゆでうどんは、冷凍焼けによる白化が著しく、総合評価がいずれも「△」未満であり、本発明のものに比べて劣っていた。