特許第6351937号(P6351937)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351937
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ミーリング工具及び切削インサート
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/06 20060101AFI20180625BHJP
   B23C 5/20 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B23C5/06 A
   B23C5/20
【請求項の数】25
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-163204(P2013-163204)
(22)【出願日】2013年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-50948(P2014-50948A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】1251004-6
(32)【優先日】2012年9月7日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100133008
【弁理士】
【氏名又は名称】谷光 正晴
(72)【発明者】
【氏名】ウルリック サンビウス
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/110009(WO,A1)
【文献】 特開平09−225724(JP,A)
【文献】 特開平11−090723(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/062840(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第102500806(CN,A)
【文献】 特表平08−505813(JP,A)
【文献】 特開平09−207007(JP,A)
【文献】 特表2010−522087(JP,A)
【文献】 特表2008−543598(JP,A)
【文献】 特表2009−537335(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/134561(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0103905(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/056840(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/00−29/34
B23C 1/00−9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方において前、後端部を有する本体(1)と、他方において円形の基本形状を有する複数の片面型の割り出し可能な切削インサート(2)と、を有するミーリング工具であって、前記前、後端部の間には包絡面(6)とその周りで前記本体が回転可能な中心軸(C1)とが延び、個々の切削インサートは、上部(9)と、下部(10)と、前記上、下部間に延びると共に少なくとも上部(9)に近接しかつ下部(10)向かって収斂するクリアランス面(11)と、を有し、以て前記クリアランス面(11)と前記上部(9)に含まれるチップ面(19)の間に位置する刃先(12)に正の切削幾何学形状を与え、その刃先は、前記クリアランス面(11)に対して外側境界線(23)によって境界が定められかつチップ面(19)に対しては内側境界線(24)によって境界が定められた補強面取り面(22)を備え、前記切削インサート(2)の前記上、下部(9、10)の基準位置は、各々が仮想上の円筒形(CY)の中心軸(C2)に対して垂直に延びる上方、下方基準面(URP、LRP)によって決定され、前記仮想円筒形は上部(9)外周に外接することで前記切削インサートの円形基本形状を成すものであり、個々の切削インサート(2)は、前記本体(1)の前端部(5)と前記本体の前記包絡面(6)の間の移行部に形成された台座(4)に固定され、より正確には、一方で締め付けデバイス(3)と、他方では本体の台座と切削インサートの双方に設けられた協働ロック手段によって、切削インサートの回転に対抗するように固定され、切削インサートは、本体内に傾斜した空間位置であって軸方向チップピング・イン角度(α)と径方向チッピング・イン角度(β)によって決められた空間位置に位置するようなミーリング工具であって、
前記切削インサート(2)には、接線方向に隔置されかつ交互に使用可能な複数の刃先(12)が形成され、各刃先は、切削インサートの前記上方基準面(URP)に近接する第1の端部(20)から最低点(BP)に向かってアーチ状に降下し、最低点から第2の端部(21)に向かって上昇し、前記面取り面(22)の前記内側境界線(24)は、刃先の前記第1の端部(20)からその前記第2の端部(21)に向かう方向において前記面取り面の幅が増加するように前記外側境界線(23)から分岐することを特徴とするミーリング工具。
【請求項2】
前記切削インサート(2)の個々の刃先(12)は、その第1の端部(20)においてワイパーエッジ(25)に変化するチップ除去主要エッジを形成し、該ワイパーエッジは、切削インサートの上側からの平面視において、前記主要エッジの半径(r2)よりも大きな半径(r1)を有し、これは面取り面の外側境界線(23)によって決まることを特徴とする請求項1に記載のミーリング工具。
【請求項3】
各切削インサート(2)の個々の刃先(12)には、例えばチップ面(19)とクリアランス面(11)の間の角度によって定義されるような、前記第1の端部(20)から第2の端部(21)に向かう方向で減少する切り込み角度(η)が付いていることを特徴とする請求項1又は2に記載のミーリング工具。
【請求項4】
前記刃先(12)の公称すくい角(ε)は、前記第1の端部(20)から第2の端部(21)に向かって増加する一方、そのクリアランス角(ζ)が実質上一定であることを特徴とする請求項3に記載のミーリング工具。
【請求項5】
前記刃先(12)の前記面取り面(22)は、分界線(28)によって分割された2つの部分面(26、27)を含むことにより分割され、前記分界線から前記外側境界線(23)と前記内側境界線(24)が、刃先の前記第1の端部(20)から第2の端部(21)に向かう方向に分岐し、半径方向外側の部分面(26)は、前記上方基準面(URP)に対し前記内側境界線(27)よりも大きな負の角度(τ)を成すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のミーリング工具。
【請求項6】
前記刃先(12)の前記面取り面(22)は、その最小幅の少なくとも2倍の最大幅(W)を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のミーリング工具。
【請求項7】
前記面取り面(22)の外側の前記部分面(26)は、前記刃先の第1の端部(20)に近接する断面で、内側の前記部分面(27)の幅よりも大きい幅(W1)を有する一方で、前記第2の端部(21)により近い断面で、内側の部分面(27)の幅(W2)よりも小さい幅(W1)を有することを特徴とする請求項5に記載のミーリング工具。
【請求項8】
前記刃先(12)の面取り面(22)は、各刃先(12)が前記切削インサートの360°外周を占める全アーク長の少なくとも75%のアーク長(b2)を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のミーリング工具。
【請求項9】
前記切削インサートの上方基準面(URP)の外側の部分面(26)の角度(τ)は、前記刃先の第1の端部(20)から第2の端部(21)に向かう方向において増加することを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のミーリング工具。
【請求項10】
前記切削インサート(2)を本体の個々の台座(4)に回転方向固定する前記ロック手段は、一方では、個々の台座の底部(8)に形成されかつ放射状に配向された複数の隆起部(16)と隆起部間の沈み部(17)を備えた第1の接続面と、他方では、切削インサートの下部に形成されかつ同様に隆起部と沈み部を備えた第2の接続面とを有し、該第2の接続面の先出の隆起部は、第2の接続面の後出の沈み部が前記第1の接続面の隆起部を受容すると同時に、第1の接続面の沈み部に係合することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のミーリング工具。
【請求項11】
前記個々の切削インサートの包絡面には、接線方向に隔置された複数の側部接触面が形成され、その内の2つは、台座にある夫々の側部支持面に対して押し付けられることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のミーリング工具。
【請求項12】
前記個々の切削インサートの包絡面には、接線方向に隔置された複数の側部接触面が形成され、その内の2つは、台座にある夫々の側部支持面に対して押し付けられ、
前記側部接触面は、前記切削インサートの前記包絡面に形成され、前記切削インサートの前記下部に形成された前記各隆起部の上側に位置することを特徴とする請求項10に記載のミーリング工具。
【請求項13】
前記切削インサート(2)の作動する刃先(12)は、本体(1)の後端部からの軸方向距離がその第2の端部(21)よりも大きな軸方向距離をもって位置する第1の端部(20)を有し、切削インサート(2)の作動する刃先(12)は、本体(1)の中心軸(C1)からの半径方向距離がその第2の端部(21)よりも小さな半径方向距離をもって位置する第1の端部(20)を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のミーリング工具。
【請求項14】
上部(9)と、下部(10)と、前記上、下部間に延びかつ少なくとも上部(9)に近接すると共に下部(10)向かって収斂するクリアランス面(11)とを有し、以て前記クリアランス面(11)と前記上部(9)に含まれるチップ面(19)の間に位置する刃先(12)に正の切削幾何学形状を与える、円形の基本形状を有する片面型の割り出し可能な切削インサートであって、その刃先は、前記クリアランス面(11)に対して外側境界線(23)によって境界が定められかつチップ面(19)に対しては内側境界線(24)によって境界が定められた補強面取り面(22)を備え、前記上、下部の位置は、各々が仮想上の円筒形(CY)の中心軸(C2)に対して垂直に延びる上方、下方基準面(URP、LRP)によって定められ、前記仮想円筒形は上部(9)外周に外接することで前記切削インサートの円形基本形状を成すものであり、切削インサートは同インサートを回転方向固定するロック手段を備えるような切削インサートであって、
前記切削インサートには、接線方向に隔置されかつ交互に使用可能な複数の刃先(12)が形成され、各刃先は、前記上方基準面(URP)に近接する第1の端部(20)から最低点(BP)に向かってアーチ状に降下し、最低点から第2の端部(21)に向かって上昇し、前記面取り面の前記内側境界線(24)は、刃先の前記第1の端部(20)からその前記第2の端部(21)に向かう方向において前記面取り面(22)の幅が増加するように前記外側境界線(23)から分岐することを特徴とする切削インサート。
【請求項15】
前記刃先は、その第1の端部(20)においてワイパーエッジ(25)に変化するチップ除去主要エッジ(12)を形成し、該ワイパーエッジは、切削インサートの上側からの平面視において、前記主要エッジの半径(r2)よりも大きな半径(r1)を有し、例えばこれは面取り面の外側境界線(23)によって決まることを特徴とする請求項14に記載の切削インサート。
【請求項16】
各切削インサート(2)の個々の刃先(12)には、例えばチップ面(19)とクリアランス面(11)の間の角度によって定義されるような、前記第1の端部(20)から第2の端部(21)に向かう方向で減少する切り込み角度(η)が付いていることを特徴とする請求項14又は15に記載の切削インサート。
【請求項17】
前記刃先(12)の公称すくい角(ε)は、前記第1の端部(20)から第2の端部(21)に向かって増加する一方、そのクリアランス角(ζ)が実質上一定であることを特徴とする請求項14〜16のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項18】
個々の前記面取り面(22)は、分界線(28)によって分割された2つの部分面(26、27)を含むことにより分割され、前記分界線から前記外側境界線(23)と前記内側境界線(24)が、刃先の前記第1の端部(20)から第2の端部(21)に向かう方向に分岐し、半径方向外側の部分面(26)は、前記上方基準面(URP)に対し前記内側境界線よりも大きな負の角度(τ)を成すことを特徴とする請求項14〜17のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項19】
前記刃先(12)の前記面取り面(22)は、その最小幅の少なくとも2倍の最大幅(W)を有することを特徴とする請求項14〜18のいずれか一項に記載の切削インサート
【請求項20】
前記面取り面(22)の外側の前記部分面(26)は、前記刃先の第1の端部(20)に近接する断面で、内側の前記部分面の幅(W2)よりも大きい幅(W1)を有する一方で、前記第2の端部(21)により近い断面で、内側の部分面(27)の幅よりも小さい幅を有することを特徴とする請求項18に記載の切削インサート。
【請求項21】
前記面取り面(22)のアーク長は、各刃先が前記上部の360°外周を占める全アーク長の少なくとも75%となることを特徴とする請求項14〜20のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項22】
前記上方基準面(URP)に対する外側の部分面(26)の角度(τ)は、前記刃先の第1の端部(20)から第2の端部(21)に向かう方向において増加することを特徴とする請求項18又は20に記載の切削インサート。
【請求項23】
前記ロック手段は、前記下部に形成されかつ放射状に配向された複数の隆起部と隆起部間の複数の沈み部を備えた接続面であることを特徴とする請求項14〜22のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項24】
前記個々の切削インサート(11)の包絡面には、接線方向に隔置された複数の側部接触が形成されることを特徴とする請求項14〜23のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項25】
前記個々の切削インサート(11)の包絡面には、接線方向に隔置された複数の側部接触面が形成され、前記側部接触面は、前記切削インサートの前記包絡面に形成され、前記切削インサートの前記下部に形成された前記各隆起部の上側に位置することを特徴とする請求項23に記載の切削インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一態様において、一方において前、後端部を有する本体と、他方において円形の基本形状を有する複数の片面型の割り出し可能な切削インサートと、を有するタイプのミーリング工具に関し、前記前、後端部の間には、包絡面とその周りで前記本体が回転可能な中心軸とが延び、個々の切削インサートは、上部と、下部と、前記上、下部間に延びると共に少なくとも前記上部に近接しかつ前記下部に向かって収斂するクリアランス面と、を有し、以て前記クリアランス面と前記上部に含まれるチップ面の間に位置する刃先に正の切削幾何学形状を与え、その刃先は、前記クリアランス面に対して外側境界線によって境界が定められかつチップ面に対しては内側境界線によって境界が定められた補強面取り面を備え、前記切削インサートの前記上、下部の場所は、各々が仮想上の円筒形の中心軸に対して垂直に延びる上方、下方基準面によって定められ、前記仮想円筒形は上部外周に外接することで前記切削インサートの円形基本形状を成すものであり、個々の切削インサートは、前記本体の前端部と前記本体の前記包絡面の間の移行部に埋め込まれた台座に固定され、より正確には、一方で締め付けデバイスと、他方では本体の台座と切削インサートの双方に設けられた協働ロック手段によって、切削インサートの回転に対抗するように固定され、切削インサートは、本体内に傾斜した空間位置であって軸方向チップピング・イン角度と径方向チッピング・イン角度によって決められた空間位置に位置するような、前記ミーリング工具に関するものである。
【0002】
本発明は、第2の態様において、切削インサートそれ自体にも関係し、言い換えれば円形の基本形状を有した片面型の割り出し可能な切削インサートに関するものである。
【背景技術】
【0003】
フライス加工目的のための円形切削インサートは、脆弱な角部がないという点で、直線状の刃先を持った多角形切削インサートに比較して利点がある。このため、同切削インサートは、フライス盤が、生成面の表面シール性に対しかなりの要求なしにワークから大量の材料を切削又は除去できなければならないような用途において、好適に使用される。アーチ状の刃先を持つことで円形切削インサートは生成面に波形を生じさせるという事実は、ワークから深い材料層を除去する切削インサートの能力と比較して、それ相応に偶発的な事柄である。この円形切削インサートは、片面型だけでなく両面型実施形態においても使用され、前者の片面型切削インサートでは上部に沿ってのみ刃先が形成され、従って“正”のインサートマクロ幾何学形状を付与することが可能である一方、後者の両面型切削インサートのインサートマクロ幾何学形は、刃先が上部や下部に沿って形成されるため“負”である。
【0004】
本発明は、それ自体、初めに述べたタイプの切削インサート、即ち円形の基本形状でかつ正のインサートマクロ幾何学形状を持った片面型の割り出し可能な切削インサートに関係するだけである。
【0005】
一般に、正のインサートマクロ幾何学形状を持った切削インサートは、せん断加工時、刃先の前にチップを押し出すというよりはむしろ、ナイフや楔のようにチップを持ち上げて切断するようにチップの下側に刃先が導入されるため、両面型のネガティブな切削インサートよりも、生じた切削力に関係して切削がより平易である。とはいっても、片面型の円形切削インサートもまた、切削深さの増加と共にチップの厚さが増えることの結果として、数ある中でもかなりの切削力にさらされる。細い端部から、チップの厚さは最大値へと増加し、その絶対値は幾つかの要因に依存するが、とりわけフライス盤本体における切削インサート当たりのフライス盤の送り速度に依存する。
【0006】
一般に切削インサートの刃先を強化するため、同インサートのクリアランス面とチップ面の間の移行部には通常、面取り面が形成されている。基本形状が円形の既知切削インサートでは、前記補強面取り面は上部全周(即ち、360°)に沿って幅が一定である。これに関しては例えば特許文献1(米国特許出願公開第2009/0290946号)を参照されたい。このことは、刃先は、切削深さにかかわりなく、故に生成されたチップの形状に関係なく、その全動作アーク長に亘って同一の幾何学形状と強度を持っていることを意味している。刃先は、チップが薄い領域でおいても厚い領域においても同様になまくらな状態にある。このため、切削力は、刃先の摩耗が不均一になるのに加え、不必要な大きさになる。このため、公知の円形切削インサートは、円周方向において円錐形のクリアランス面全体に亘って同一の公称クリアランス角を持ってしまうという現実を招くことにもなり、それは切削インサートが本体に取り付けられた際に機能的なクリアランス角が変化し、ワークの猛烈に暑い材料からの実際のクリアランスがかなり小さくなるようなセグメントでは局部的に温度が上昇することを意味している。このため、公称クリアランス角が同じである結果、切削インサートの耐用年数は少なくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0290946号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の狙いは、円形の片面切削インサートによって既知のミーリング工具の上述した欠点を未然に防ぐこと、及び改善した工具と切削インサートを夫々提供することにある。従って、本発明の主な目的は、できる限り平易な切削性を有する切削インサートであって、その刃先は動作状態において、生成されるチップの性質の観点から最適化されるような切削インサートを提供することにある。もう1つの目的は、小さい切削深さや大きな切削深さに対しても推奨された最大深さまで有効に作用する切削インサートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、少なくとも主要目的は、接線方向に隔置された複数の刃先を形成した切削インサートであって、個々の刃先は、上部の基準面に最も近い第1の端部から最低地点にかけてアーチ状に降下し、最低地点から第2の端部に向かって上昇し、さらに刃先の前記第1の端部からその第2の端部に向かう方向において面取り面の幅が増加するように、面取り面の内側境界線が外側境界線から分岐するような前記切削インサートによって達成される。このようにして、切削インサートは、一方で側方から見た場合、刃先が円弧形状である結果、また他方でその切削深さが小さくチップが薄くなるような領域において刃先が比較的薄く鋭くなることの結果、平易な切削性を有しつつも、チップが厚い場合には、詳しくは面取り面の幅が刃先の一方の端部から他方の端部にかけて増加することで、増加した切削深さと共に一層鈍角で強固になる。
【0010】
専門用語解説
本発明を詳細に説明する前に、発明概念を明瞭にするために、発明理解に不可欠な特定基本概念を明確にする必要がある。1つの特徴が“名目的なもの”として記述される際には、同特徴は切削インサートそれ自体に関係するだけであって、工具の本体と結びつけるものではなく、1つの特徴が“機能的なもの”として命名される場合、同特徴は工具が組み付けられた状態、即ち切削インサートが本体の台座に据え付けられた状態に関係している。さらに“ゼロ地点”という概念は、工具の本体から軸方向最も遠く隔てられた活性刃先に沿った地点に対して使用される。前記ゼロ地点では、チップ除去を被るワークのアーチ面は、ほぼ平面である生成面又は露出面に変化する。
【0011】
これに関連し、加工処理中の本発明の切削インサートを示した図19を参照する。図において、S1はワークの未加工面を示し、S2はチップ除去後に残された生成面を示している。矢印Fはフライス盤の進行方向を示し、aPは問題の切削深さを示している。
【0012】
発明の予想される実施形態の簡単な説明
本発明の一実施形態において、切削インサートの個々の刃先は、その第1の端部においてワイパーエッジに変化するチップ除去主要エッジを形成しても良く、ワイパーエッジは切削インサートを上側から平面視した際、前記主要エッジの半径よりも大きくかつ面取り面の外側境界線によって決まるような半径を有する。切削インサートにワイパーエッジ(その半径は∞に近づくかもしれない)を形成することにより、生成面S2に沿って表面ワイピング効果が得られる。そのようにして、切削インサートは、ワークから大量の材料を除去するためだけでなく、良好な表面仕上げの生成面を提供するために使用することができる。言い換えれば、そのようにして多用途に有用なミーリング工具が提供され、同工具を表面仕上げが求められる正面フライス加工にも使用することができる。
【0013】
更なる実施形態において、切削インサートは、刃先に沿うその公称クリアランス角が、面取り面の幅が最も小さくなるその第1の端部から第2の端部に向けて減少するように形成されるかもしれない。そのようにすれば、切削深さに関係なく、刃先の能動的アーク長にわたり、ワークに対しほぼ均一な機能的クリアランスが得られる。
【0014】
さらに一実施形態において、刃先の公称すくい角は、第1の端部から第2の端部に向かう方向において増加する。そのようにして、すくい角は、刃先の最も強い部分、即ち面取り面の幅が最大となる部分に向かって徐々に大きくなる(当業者であるならば、“さらなる正”と呼ぶだろう)。面取り面の幅が大きい場合、満足すべき刃先強度が得られ、それは耐久性のある刃先を提供するためにすくい角を小さくする必要性を減じることにもなり、これによって、発生する切削力を減少するために、より大きくかつ“さらなる正”のすくい角を用いることができる。
【0015】
組み合わされた実施形態において、刃先に沿った任意断面におけるチップ面とクリアランス面との角度によって定義されるような刃先の切り込み角度は、そのようにして、クリアランス角の上述した低減効果と刃先のすくい角の増加を組み合わせるように、刃先の第1の端部からその第2の端部に向かう方向において減少するかもしれない。
【0016】
一実施形態において、個々の面取り面は分割線によって分離される2つの部分面を備え、その分割線からは外側境界線と内側境界線とが刃先の第1の端部から第2の端部に向かう方向において分岐することになるかもしれない。そのようにすれば、面取り面の合計幅が最も大きくなる刃先のそれらのセグメントに沿ってもチップ除去が容易となる。この実施形態は、切削力(及び、ある程度の熱発生)が、単一の連続した面取り面を使用するもっともらしい実施形態と比べて減少するといった良い効果を伴うものである。
【0017】
さらに一実施形態において、刃先に含まれる面取り面は、その最小幅の少なくとも2倍あるような最大幅を有するかもしれない。そのようにすると、刃先の最も露出した部分に対して良好な強度が保証される。
【0018】
面取り面を分断した際、その外側の部分面の幅は、刃先の第1の端部に最も近い断面において、内側の部分面の幅よりも大きくなる一方で、第2の端部に最も近い断面では内側の部分面の幅よりも小さくなるかもしれない。このような場合、刃先の異なるセグメントにおいて最適な強度が最適なチップ除去能力と組み合わされる。
【0019】
さらに一実施形態において、問題の面取り面のアーク長は、各刃先が上部の360°外周を占める全アーク長の少なくとも75%になるかもしれない。このような場合、切削インサートは、同インサートの半径の半分よりもかなり大きな推奨最大切削深さをもって作動することが可能となる。
【0020】
さらに、分割された面取り面の外側部分面に関しては、上方基準面に対する角度が、刃先の第1の端部からその第2の端部に向かう方向において増加するかもしれない。このようにすると、刃先と材料との最初の接触が刃先の最も外側の脆弱な領域、即ちクリアランス面とチップ面の交差部から発生するという事実により、刃先のチップ除去能力と刃先に沿った異なるセグメントの強度との最適な組み合わせが達成される。
【0021】
さらに一実施形態において、工具本体に付属する台座に切削インサートを回転方向固定する目的を持つロック手段は、切削インサートの上部に形成された接続面であって、放射状に配向された複数の隆起部とそれらの間の沈み部を有するかもしれない。そのような接続面は、割り出しやインサート交換を繰り返した後でも、工具本体に対して切削インサートが正確な空間位置に配置されることを保証するものである。
【0022】
さらに、接線方向に隔置されかつ平坦な複数の側部接触面が、個々の切削インサートの包絡に形成されるかもしれない。本体の台座に複数の相補的な側部支持面を形成することに加え、切削インサートにそのような側部接触面を形成することにより、ネジが切削インサート固定のための締め付けデバイスを構成する場合において、作動中にネジにかかる応力の圧力軽減が達成される。
【0023】
最後に述べた実施形態においては、切削インサートの側部接触面が、切削インサートの接続面の隆起部と同じ放射面内に好適に配置されるかもしれない。そのような方法で、側部接触面が、切削インサートの厚さが最大となって最強となるようなワイパーエッジ下方領域に配置されるかもしれない。これらの領域内には個々の刃先の端部も配置され、そのことは側部接触面が刃先の最低地点(通常、中心)、即ちチップの大きな厚みのために側面摩耗量が大きい地点から分離されることを意味している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】下から見た本発明によるミーリング工具を示すとともに、付属の切削インサートと工具本体にある台座から隔置されて示された固定ネジを有する分解斜視図である。
図2】工具の側面図である。
図3】同工具下側からの平面図である。
図4】本体に含まれる台座と、その下側及び上から見た分解切削インサートとを示した拡大分解斜視図である。
図5】切削インサートだけの鳥瞰図である。
図6】同切削インサートを下側から見た図である。
図7】同切削インサートの側面図である。
図8】切削インサートの下部を示す平面図である。
図9】切削インサートの上部を示す平面図である。
図10】切削インサートの基本的な幾何学的事実を示した概略的側面図である。
図11】切削インサートの上側部分の扇形拡大図である。
図12】切削インサートに含まれるクリアランス面の上方部分を示す、拡大した詳細側面図である。
図13a図11の断面Aにおいて切削インサートの刃先の断面形状を示した(異なる縮尺の)拡大詳細断面図である。
図13b図11の断面Aにおいて切削インサートの刃先の断面形状を示した(異なる縮尺の)拡大詳細断面図である。
図14a図11の断面D〜Eの類似した詳細断面図である。
図14b図11の断面D〜Eの類似した詳細断面図である。
図15a図11の断面D〜Eの類似した詳細断面図である。
図15b図11の断面D〜Eの類似した詳細断面図である。
図16a図11の断面D〜Eの類似した詳細断面図である。
図16b図11の断面D〜Eの類似した詳細断面図である。
図17a図11の断面D〜Eの類似した詳細断面図である。
図17b図11の断面D〜Eの類似した詳細断面図である。
図18】切削インサートの上側の拡大された扇状部分を示す追加の詳細図である。
図19】運転中の切削インサートを示す図である。
図20a】刃先に沿った不均一な面取り面を有する切削インサートのチップ形成状態を示す概略図である。
図20b】刃先に沿った不均一な面取り面を有する切削インサートのチップ形成状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図4に、円形の切削インサートを有し、本発明により形成されたミーリング工具(milling tool)が示されている。この工具は、切削カッターヘッドの形態の本体1と複数の切削インサート2を備えている。その工具には、ネジ3の形の締め付けデバイス3も含まれており、同デバイスは切削インサートを本体1にある多数の台座4に固定する目的を有する。本体は前・後端部を備え、その間に中心軸C1が延び、それを中心に本体が回転可能となっている。2つの端部の内、前方の端部は番号5で示す。台座4は、本体の前端部5と、番号6で示し中心軸C1に関して回転方向に対称な包絡面との間の周辺移行部の中に形成される。各台座4の前方には、回転方向Rで示したように、各切削インサートのためのチップ溝7もある。
【0026】
図2及び図3において、個々の切削インサート2は、本体内で傾斜した空間位置であってかつ2つの異なる角度α、β、即ち角度αは切削インサートの軸方向チップピング・イン角度であり、他方角度βは径方向チッピング・イン角度である、2つの異なる角度α、βによって決まるような前記空間位置に配置される。本例では、この軸方向チップピング・イン角度αは、その平面が中心軸Cに対して斜め上方/後方に傾斜しているという点で「正」である一方、径方向チッピング・イン角度βは「負」である。図示実施形態では、αは、当業者にとっては穏やかな角度として考えられる約+5°であり、それはこの角度によって切削インサートの使用中の刃先に沿って機能的なクリアランスを断念したことの理由なしに、切削インサートが台座4に含まれる底部支持面8に対し良好な支持部を獲得したことを伴うものである。実際には、αは上下に変動するかもしれない。しかしながら、同角度は+15°を超えてはならない。同角度はまた、緩やかに「負」であって、即ち回転方向において斜め上方/前方に傾斜するものでも良い。しかしながら、起こり得る「負」の傾斜は−5°又は/〜−10°よりも大きいものであってはならない。
【0027】
径方向チッピング・イン角度βは常に「負」であって0°を超えてはいけない。本例ではβは−5°である。実際には、βは0°と−15°の間で変動しても良い。
【0028】
切削インサート2の特徴をより詳しく図示した図5図10を参照する。切削インサートの基本的特徴は、同インサートが上部9、下部10及び外周方向のクリアランス面11を備えることにあり、クリアランス面はおおよそ中心軸C2に関して回転対称であると共に、上部、下部間に延びている。少なくとも上部9に最も近く、その全体が番号11で示されるクリアランス面は下部に向かって収斂し、おおよそ番号12で示される刃先のポ正のインサートマクロ幾何学形状を与え、それは従来の方法では、上部と側方のエンドレスなクリアランス面11との間の移行部分に形成される。図10に示すように、切削インサートにおける上・下部9、10の場所は、夫々URP、LRPで示された上方・下方基準面によって定められる。これらの面は、中心軸C2に対して垂直に延びることで互いに対し平行になっている。後者のそれは、仮想円筒CYの中心軸であり、同円筒は上側の外周周りに境界線を引くことで切削インサートの円形基本形状を規定している。図10に関連して留意すべきことは、上方基準面URPは、上側で最も高い位置にある多くの水準点に接するものであり、同様に下方基準面LRPは、切削インサートで最も低い位置にある多くの点に接するものであるということである。
【0029】
図1図4を参照するに、注目すべきは本体1は全部で5つの台座を備えており、工具の振動に対抗するために、差別化された間隔を以て設置されているということである。即ち、本例においては、ピッチ角度δ1は73°、δ2は71°、δ3は72°、δ4は73.5°、そしてピッチ角度δ5は70.5°となる。さらに注目すべきことは、ネジ3の雄ネジのための雌ネジを持った孔13が台座3の底支持面8内で開口することである。
【0030】
切削インサートを付属の台座に固定するにあたっては、クランプなどの異なるタイプの締め付けデバイスを使用しても良いが、当該例ではネジが用いられている。この理由としては、切削インサートには貫通孔14が形成されており、その中心軸は切削インサートの中心軸C2に一致していることが挙げられる。前置きとして記述したように、切削インサートは、自身を台座に回転方向固定するロック手段を備えている。図示した例では、この手段は、切削インサートの下部10に形成された接続面15である。前記接続面は、沈み部又は谷部17を介して互いに分離された複数の隆起部16を備え、前述した隆起部は雄型係合部材を成し、後述した谷部は雌型係合部材を成している。図6及び図8に明確に示すように、隆起部16と谷部17は孔14に隣接する内方端から、切削インサートの下側とクリアランス面11の間にある外周移行面18に隣接する外方端に向かう方向において放射状に延びている。
【0031】
切削インサートの上部9と外周クリアランス面11の間の移行部には、複数、より正確には4つの刃先12が形成され、それらは互いに対して接線方向に隔置され、その夫々は上部の360°外周の4分の1を占める。換言すれば、刃先間の間隔はこの場合、90°となる。
【0032】
刃先12のデザインをより詳細に示した図11図18を参照する。図11には拡大された切削インサートの上部の扇状部分であって、さらに正確に言えば上方からの平面視が示されている。図では、刃先が第1端部20と第2端部20の間で延びているのがわかる。上部9に含まれるチップ面19と外周クリアランス面11の間に形成された刃先12には、その全体を番号22で示した面取り面が含まれており、それはクリアランス面11に対して外側境界線23によって境界が定められ、かつチップ面19に対しては内側境界線24によって境界が定められている。
【0033】
2つの大きな特徴が刃先12を特徴付けている。即ち、それは第1の端部20から最低地点又は底点BPへと円弧状に下降し、そこから刃先は再度第2の端部21に向かって上昇すること、及び面取り面22の内側境界線24は、刃先の第1の端部20から第2の端部21に向かう方向において面取り面に増加する幅を与えるように、外側境界線からそれるということである。既に切削インサートの円形基本形状の結果として、外側境界線23は、図11による平面図で示されるように弓なりに曲がっている。また、側面(図12による)から見て、境界線は刃先の端部20、21間でアーチ状に延びている。言い換えれば、境界線23−刃先12それ自体は−2つの異なる座標方向にアーチ状となる。
【0034】
端部20、21間の異なるセグメントでの刃先と面取り面の断面形状は、後述する数多くの詳細断面に示されている。しかしながらその前に指摘しておきたいことは、第1の端部20での刃先12は2番目のエッジ又はワイパーエッジ25に姿を変え、それはフライス加工時において生じた面をぬぐい取るか平滑化する目的を持っているということである。即ち、図示例においては、刃先12が主要なエッジを構成してチップ除去を請負い、片や第2エッジ25は生じた底面S2(図19参照)をぬぐい取るか平滑化するワイパーエッジを構成している。
【0035】
図18に示すように、第2のエッジ25は主要な刃先12のアーク長b2の一部分を構成するしかないアーク長b1を有する。さらに、第2エッジ25の半径r1は刃先12の半径r2よりもかなり大きい。後述の半径r2は実質上、切削インサートの直径の半分である一方、r1は実際には∞に近づくかもしれない。換言すれば、第2のエッジ25はほぼストレートな形状(しかしながら完全にストレートにはならない形状)を有するかもしれない。
【0036】
ここで、第2エッジ25の断面形状のみならず、端部20、21間で断面を異ならせた主要な刃先12の変化する形状を示した図13a〜17bを参照する。これら異なる図面において、εはすくい角、すなわちチップ面19が上方基準面URPとなす角度を示し、他方、ζはクリアランス面11が幾何学的円筒CYの垂直基準線に対してなすクリアランス角を表している。すくい角εもクリアランス角ζと同様に、切削インサートの外周に沿って変化する。
【0037】
本発明の範囲内で、境界面23、24間で境界を定められた面取り面22を単一の連続した面として形成することは可能だが、本例ではこの面に割れた形状を与えることが選ばれた。即ち、面取り面22は、分割線28によって分離された2つの部分面26、27(図11参照)を含み、この分割線から外方境界線23と内方境界線24とが、より詳しくは刃先の第1の端部20から第2の端部21に向かう方向において分岐する。これに関して特に指摘しなければならないことは、ワイパーエッジ25もまた、2つの部分面26a、27a(図13b参照)に分割される補強面取り面22aを含んでいるということである。
【0038】
断面Bは刃先12の第1の狭い端部20に位置する一方、断面C、D及びEは反対側の端部21の近傍に位置する。より正確に言うなら、断面Dは底点BPの近傍に位置する一方、断面Eは端部21に対しより近くに配置されるが、同端部からは時計回り方向に隔置される。面取り面22の半径方向外側の部分面26は(ワイパーエッジ25に沿う対応部分面26aも同様)、基準面URPに対し“τ”で示した角度を成す。当業者により、前記角度は“負のベベル角度”と命名されている。
【0039】
以下に、本発明のプロトタイプ実施形態であって、より正確には12mmのIC測定値(即ち、直径)を有する切削インサートで分かった異なる断面A−Eの具体的角度の一覧表を掲げる。更に、刃先に沿った面取り面22の変化する幅(W)と2つの部分面の幅(W1、W2)も一覧表に含める。
断面 ε[°] ζ[°] η[°] γ[°] W[mm] W1[mm] W2[mm]
A 7.42 12.04 70.54 5.08 0.054 0.031 0.023
B 7.76 11.58 70.66 4.58 0.054 0.030 0.024
C 12.02 13.00 64.98 8.47 0.539 0.257 0.264
D 14.04 12.89 63.07 10.67 0.227 0.107 0.120
E 13.99 11.99 64.02 10.02 0.292 0.126 0.136
【0040】
上の一覧表から、例えばチップ面19とクリアランス面11の間の角度によって定義されるような刃先の切り込みηは、第1の端部20から第2の端部21への方向において減少していることがわかる。切り込み角度のこの減少は断面B、即ち第1の端部20で始まり、断面Dを過ぎ、即ち最低点BPを過ぎる距離まで続く。切り込み角度の上記減少は、とりわけ、クリアランス角ζが本質的に一定のまま(12°と13°の間)であると同時に、すくい角εの増加によってもたらされる。さらに一覧表からは、面取り面22の外側部分面26は幅W1を有し、それは刃先の第1の端部20に最も近い断面で、内側の部分面27の幅W2よりも大きいことがわかる。しかしながら断面C、D間の領域においては、この関係は変化し、外側部分面26の幅W1は、その断面が端部21に近くなればそれだけ、内側部分面の幅よりも連続して小さくなる。例示した実施形態においては、面取り面は、その最大幅Wが最小幅(断面B、Cの値参照)の約10倍以上となる。そのような関係が変わる可能性があることは現実だが、ともあれ最大幅は最小幅の少なくとも2倍なければならない。その面取り面は断面C、D間領域において最大幅をもつ。
【0041】
図18では、端部20、21間にある刃先のアーク長b2は4つの刃先の各々が上部の360°外周の各部を占める90°部分の主要部分を占有することがわかる。その例では、刃先は利用可能な90°部分の約90%を占める。その広い上方端部21では、刃先21は先細の移行部分30を介して隣接ワイパーエッジへと変化する。移行部分の幾何学的形状に関しては、切削インサートのこの部分においてチップ除去がなされないため、重要性を欠いている。また更に、協働するワイパーエッジ25は利用可能な90°部分の特定部分を占める。しかしながら、いずれにしてもチップ除去刃先22のアーク長は利用可能なアークの75%以下になるべきではない。
【0042】
図4から、台座4の底面8は、切削インサートの接続面15と同様に、谷部17aによって取り囲まれた隆起部16を備えた接続面を形成していることがわかる。これらの隆起部と谷部は、切削インサートの接続面にある隆起部と谷部とに協働するように配置された雄、雌部材を夫々構成し、より正確には、切削インサートの個々の隆起部16が台座の接続面8の谷部17aに係合する一方、台座の接続面の隆起部16aは切削インサートの谷部17に係合するようになっている。ここで留意すべきことは、この場合、2つの接続面は実質上リング状であり、台座と切削インサートの孔13、14を夫々取り囲んでいるということである。底部として作用する接続面8に加えて、2つの側部支持面30もまた台座4に含まれ、それらは平面であって、かつ切削インサートのクリアランス面11の1組の平坦な側部接触面31に協働することを目的としている。切削インサートは4つの刃先を備え、4箇所で割り出し可能でなければならないため、切削インサートは4つの側部接触面31を備えており、その内の2つだけ、割り出し位置に応じて側部支持面30に対して圧迫された状態に保持される。そもそも接続面8、15の雄、雌部材は、切削インサートの回転に対抗する一方で、側部支持面30と側部接触面31の間の接触は、締め付けネジ3が荷重を受けて変形しないように同ネジにかかる圧力を解放する目的を持つものである。
【0043】
図4図7に示すように、切削インサートの側部接触面31は、クリアランス面11の上方部分によって区切られた刃先の下方に収納できるように、その高さが制限されている。本発明の好ましい実施形態によれば、側部接触面31は接続面15の隆起部16と同じ放射面内に配置される。その隆起部と側部接触面31と同一の放射面内には、ワイパーエッジ25も位置している。この結果、側部接触面31は切削インサートにおいて最大厚さを有するこれらの部分内に形成されることになる。従って、2番目のエッジ25と、それを取り囲む刃先22との接続部は、切削インサートの、上方基準面URPに接する最も高い位置にある点となる。そのワイパーエッジから、主要な刃先は上方基準面に対して降下し、類似した形で下方接続面15の外周が上昇し、例えばこれは隆起部16間に位置する領域、即ち谷部17が位置する領域にある移行面18によって表される。言い換えれば、切削インサートは2つの側部接触面31間のほぼ中間の領域で厚さが最小となる。
【0044】
発明の機能及び利点
ミーリング工具に含まれる切削インサートの加工中の機能を概略的に示した図19を参照する。図において、Fはフライス盤の送り方向を示している。所定の送りに対し、動作する刃先22はチップ33a、33b、33cを除去し、その形状/厚さは選択された切削深さapによって変化する。仮に切削深さが小さいならば、チップ(33a参照)は、その厚さは一端から他端へと増加するものであっても比較的薄いものとなる。増加する切削深さに伴い、チップ(33b、33c)の厚さは、最大推奨切削深さに対応する最大厚さへと連続的に増加する。この推奨最大深さはそれ自体、様々な用途において変化する可能性がある。しかしながら切削深さapが切削インサートの半径rの3分の2を超えるべきではない。
【0045】
図19において、OPはゼロ地点(6時の位置)であり、ここではワイパーエッジ20を介した刃先22のチップ除去作用が、生成面S2に沿う表面ワイピング作用に変化する。
【0046】
上述した方法で個々の刃先を形成することにより、そのチップ除去能力は選択した切削深さとは別個に最適化される。仮に切削深さが小さいならば、ワイパーエッジに最も近くに位置する刃先の先の容易切削部分だけが機能し始める。このような状況において、切削力は制限され、従って刃先の前記部分は、切削インサートを摩耗したり損傷しがちな如何なる大きな切削力にさらされることはない。仮に、切削深さが増えた結果として、チップの厚さが増加したならば、刃先はより大きな切削力にさらされ、特に切削深さが最大となり、チップも最大厚となる。このような状況においても、刃先の面取り面はワイパーエッジから刃先の上端にかけてより広くなるため、刃先は耐久性がある。しかしながら、刃先はその平易切削能力を失わない。何故なら、切削インサートの上方基準面に対する刃先のアーチ状のたるみにより、刃先の機能的軸方向角度が増加し、それによって緩やかな軸方向チッピング・イン角度を補うのが確実となるからである。
【0047】
図20a及び図20bには、その面取り面22が連続する刃先と、分割線を有する刃先、即ち説明した実施形態に従って互いに対し鋭角で方向付けられた2つの部分面26、27を備えた面取り面を持った刃先との比較が図示されている。最初に述べたケース(図20a)では、除去されたチップは刃先から前方に折り曲げられる。このことは、切削力が図20bに示したケースのそれよりも大きくなることを意味している。内側の部分面27は外側の部分面26に対し下方/後方に角度付けされているという事実により、チップは切削インサートの中心に向かってより内方(図20bでは上方)にガイドされることになる。そのような方法で、チップは刃先に沿ってより簡単にスライドすることとなり、これにより切削力が減少する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14a
図14b
図15a
図15b
図16a
図16b
図17a
図17b
図18
図19
図20a
図20b