(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
頭部内の血流動態の空間分布を表すパフュージョン画像における各画素値と第1の閾値との比較結果に基づいて、前記パフュージョン画像から側副血行路又はバイパス血管の候補となる患部候補領域を抽出する患部候補領域抽出部と、
前記頭部内の血管の空間分布を表す血管画像から前記患部候補領域に対応する第1の血管領域を抽出する第1の血管領域抽出部と、
前記第1の血管領域の各画素についてAUC値を算出するAUC値算出部と、
前記AUC値の空間分布を表すAUC画像を発生するAUC画像発生部と、
前記AUC値と予め設定された第2の閾値との比較結果に基づいて、前記AUC画像から前記第1の血管領域に対応する第2の血管領域を抽出する第2の血管領域抽出部と、
前記AUC画像の健常領域における前記第2の血管領域を対象として造影剤の流れに関する時刻的動態の統計値を算出し、前記算出された統計値に基づいて第3の閾値を算出する閾値算出部と、
前記第2の血管領域の各画素の画素値と前記第3の閾値との比較結果に基づいて、前記患部候補領域から側副血行路又はバイパス血管の候補となる第3の血管領域を抽出する第3の血管領域抽出部と、
前記患部候補領域を前記血管画像とともに表示し、且つ前記血管画像のうちの前記第3の血管領域を強調して表示する表示部と、
を具備する医用診断画像処理装置。
頭部内の血流動態の空間分布を表すパフュージョン画像における各画素値と閾値との比較結果に基づいて、前記パフュージョン画像から側副血行路又はバイパス血管の候補となる患部候補領域を抽出する患部候補領域抽出部と、
前記頭部内における血管の空間分布を表す血管画像から前記患部候補領域に対応する血管領域を抽出する血管領域抽出部と、
前記血管領域に基づいて、前記頭部内の基準部位に血液が流入した時点から当該頭部内の各血管部位に血液が流れるまでの時間を当該血管部位ごとに算出し、前記算出された時間に基づいて前記血管領域から側副血行路又はバイパス血管の候補となる患部血管領域を抽出する患部血管領域抽出部と、
前記患部候補領域を前記血管画像とともに表示し、且つ前記血管画像のうちの前記患部血管領域を強調して表示する表示部と、
を具備する医用診断画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる医用診断画像処理装置について説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。なお本実施形態に係る医用診断画像処理装置とは、X線コンピュータ断層撮像装置、核磁気共鳴イメージング装置、及びワークステーションの何れにも適用可能である。以下の説明では、医用診断画像処理装置をX線コンピュータ断層撮像装置として説明する。
【0011】
図1Aは、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮像装置1の構成を示した図である。
図1Aに示されるように、X線コンピュータ断層撮像装置1は、回転フレーム2、X線管球3、X線検出器4、高電圧発生部5、ホストコントローラ6、架台駆動部7、データ収集部(DAS)8、非接触データ伝送部9、ボリュームデータ再構成部10、画像処理部11、ネットワーク通信部12、入力部13、表示部14、前処理部15、記憶部16、及びスリップリング18を有する。X線コンピュータ断層撮像装置1は、ネットワークを介してワークステーション17に接続されている。
【0012】
X線コンピュータ断層撮像装置1は、架台(ガントリ)を有する。架台は、円環又は円板状の回転フレーム2を回転可能に支持する。回転フレーム2には、撮像領域中に天板に配置された被検体を挟んで対向するようにX線管球3とX線検出器4とが取り付けられている。X線検出器4は、マルチスライス型の場合、チャンネル方向(X軸)に複数のチャンネルを有する検出素子の列をスライス方向(Z軸)に複数配列したものである。2次元アレイの場合、X線検出器4は、チャンネル方向(X軸)とスライス方向(Z軸)との両方向に関して緻密に分布される複数のX線検出素子を有する。X線管球3は、X線を発生する真空管である。X線管球3には、X線の曝射に必要な電力(管電流、管電圧)が高電圧発生部5からスリップリング18を介して供給される。なお高電圧発生部5も回転フレーム2に取り付けられ、高電圧発生部5からX線管球3に直接的に電力が供給されても良い。高電圧発生部5は、ホストコントローラ6からの指示情報に従って、スリップリング18を介してX線管球3に高電圧を印加する。
【0013】
ホストコントローラ6は、図示しないCPU(central processing unit)及びメモリを含んでいる。ホストコントローラ6は、入力部13からの指示に従って、高電圧発生部5と架台駆動部7との動作を制御し、被検体の撮像部位にCTスキャンを施す。高電圧発生部5の制御を行うことにより、回転フレーム2が一定の角速度で連続回転し、X線管球3から連続的又は一定角度毎にX線が発生される。架台駆動部7は、ホストコントローラ6の制御に従って天板保持機構を駆動可能に構成される。本実施形態に係る撮像部位は、頭部であるとする。
【0014】
X線検出器4にはデータ収集部8(DAS:data acquisition system)が接続される。データ収集部8は、X線検出器4の各チャンネルの電流信号を電圧に変換し、増幅し、デジタル信号に変換する。データ収集部8で収集されたデータ(生データ)は、光や磁気を使った非接触型又はスリップリング型の伝送部9を経由して前処理部15に送られる。
【0015】
前処理部15は、生データに対してチャンネル間の感度不均一の補正、また主に金属部によるX線強吸収体による極端な信号強度の低下又は信号脱落の補正等の前処理を行う。前処理部15により補正を受けたデータは投影データと呼ばれている。再構成部10は、投影データに基づいて、撮像時刻の異なる複数のボリュームデータファイル(時系列ボリュームデータファイル)を発生する。ここで、造影剤により造影された血管が描出されたボリュームデータファイルを血管ボリュームデータファイルと呼ぶことにする。
【0016】
画像処理部11は、時系列血管ボリュームデータファイルに血流動態解析を施し、血流動態指標の空間分布を示す機能画像(以下、パフュージョン画像と呼ぶ)を発生する。そして画像処理部11は、パフュージョン画像に本実施形態に係る画像処理を施すことにより患部候補領域を抽出する。また、画像処理部11は、血管ボリュームデータファイルを利用することにより、患部候補領域を臨床的に有用な形態で表示する。本実施形態に係る患部候補領域は、患部血管候補と当該患部血管候補が栄養する脳実質領域とを含む。患部血管としては、例えば、側副血行路やバイパス血管等が挙げられる。側副血行路は、狭窄が生じた血管の血流を補うために自然に発生する血管である。バイパス血管は、血行再建術により外科的に形成された血管である。血行再建術の代表例としては、STA−MCA(浅側頭動脈―中大脳動脈)吻合術が挙げられる。STA−MCA吻合術は、狭窄等による中大脳動脈の血流低下を補うため、当該中大脳動脈に浅側頭動脈を外科的に繋ぎ合せる手技である。中大脳動脈に繋ぎ合された血管がバイパス血管と呼ばれている。
【0017】
画像処理部11は、本実施形態に係る患部候補領域の抽出や表示等のため、機能的に、区分部51、統計値算出部52、健常領域特定部53、閾値設定部54、患部候補領域抽出部55、表示画像発生部56、輪郭抽出部57、マスク領域決定部58、血管領域抽出部59、AUC値算出部60、AUC画像発生部61、及び患部血管領域抽出部62を有している。画像処理部11の各部の動作については後述する。
【0018】
ホストコントローラ6は、医師及び技師等のユーザにより入力部13を介して指令が入力されると、メモリに記憶しているプログラムを実行する。入力部13は、例えば、メインコンソールとシステムコンソールとを含む。通信部12は、各規定に応じた通信制御を行う。通信部12は、電話回線等の電気的通信回線を通じてPACS(医用画像通信保管システム)等に接続することができる機能を有している。記憶部16は、ボリュームデータ等の種々の血管ボリュームデータファイル、表示画像等、様々なデータを記憶する。また、記憶部16は、パフュージョン画像を記憶する。
【0019】
まず、本実施形態に係るパフュージョン画像について説明する。上述のように、パフュージョン画像は、血流動態指標の空間分布を示す機能画像である。血流動態指標としては、TTP値や遅延時間が知られている。
【0020】
図5は、TTP値を説明するための、造影剤が注入された頭部に関する時系列ボリュームデータファイル内の血管部位に関するCT値の時間変化を示すグラフである。
図5のグラフの縦軸はCT値に規定され、横軸は時間に規定される。基準時刻0は、当該血管部位に造影剤が到達した時刻を示す。
図5に示すように、頭部内の任意の血管部位のCT値は、造影剤の流量に伴いCT値が変化する。造影剤の流量がピークになる時点はCT値がピーク値を有する時間である。基準時刻からCT値がピーク値を有する時刻までの時間は、TTP(time to peak)時間と呼ばれている。TTP値の空間分布を示す画像は、
図3Aに示すTTP画像21である。
【0021】
遅延時間は、頭部内の基準血管部位に造影剤が到達してから、頭部内の各血管部位に造影剤が到達するまでの時間差である。遅延時間の空間分布を示す画像は、
図3Bに示す遅延画像である。
【0022】
本実施形態に係る医用診断画像処理装置は、パフュージョン画像から患部候補領域を抽出し、抽出された患部候補領域を種々のレイアウトで表示する。以下、本実施形態の第1実施例乃至第4実施例を説明する。
【0023】
(第1実施例)
図2Aは、ホストコントローラ6の制御のもとに行われる、患部候補領域の表示処理の典型的な流れを示す図である。具体的には、患部候補領域の表示処理は、パフュージョン画像における健常領域から患部候補領域を抽出し画像表示するまでの処理である。まず、画像処理部11は、記憶部16からパフュージョン画像を読み出す。画像処理部11の区分部51は、読み出されたパフュージョン画像に含まれる頭部領域を複数の部分領域に区分する(S11)。一例として、区分部51は、
図3Aに示されるように、TTP画像に中心線213を設定し、中心線213を挟んで左半球を示す画像領域を左半球領域に設定し、右半球を示す画像領域を右半球領域に設定する。中心線213は、ユーザにより入力部13を介して設定又は調整される。
【0024】
画像処理部11の統計値算出部52は、左半球領域と右半球領域との各々について画素値の統計値を算出する(S12)。具体的には、統計値算出部52は、TTP画像の左半球領域と右半球領域との各々について画素値(TTP値)の統計値を算出する。統計値としては、例えば、TTP値の平均値や標準偏差が挙げられる。例えば、
図3Aに示されるようにTTP画像における脳内領域の外側2cm程度の領域(大脳皮質領域)におけるTTPの平均値を左半球領域と右半球領域とについて個別に算出する。なお、統計値は、遅延画像とTTP画像とのうち何れを用いて算出しても良い。
【0025】
画像処理部11の健常領域特定部53は、S12において算出された統計値に基づいて左半球領域と右半球領域とのうちの健常領域を特定する(S13)。例えば、健常領域特定部は、TTP値の平均値に基づいて健常領域を特定する。健常領域特定部53は、左半球領域と右半球領域とのうちのTTP値の平均値の低い方を健常領域221として特定し、TTP値の平均値の高い方を患部半球領域212として特定する。なお、健常領域は、必ずしも、左半球領域と右半球領域とのうちの一方である必要はない。例えば、健常領域は、小脳領域に設定されても良い。
【0026】
画像処理部11の統計値算出部52は、S13において特定された健常領域内の各画素の画素値に基づいて遅延時間の統計値を算出する(S14)。健常領域は、TTP画像の健常領域であっても良いし、遅延画像の健常領域であっても良い。例えば、統計値算出部52は、
図3Bのように表される遅延画像の健常領域222を対象として、遅延時間の平均値と標準偏差とを算出する。TTP画像の場合においても遅延画像の場合と同様に、統計値算出部52は、TTP画像の健常領域(例えば、
図3Aにおける健常半球)におけるTTPの平均値と標準偏差とを算出しても良い。
【0027】
画像処理部11の閾値設定部54は、S14により算出された標準偏差と平均値とに基づいて閾値を設定する(S15)。例えば、閾値設定部54は、以下の(1)式により閾値を算出する。但し、P
meanは、パフュージョン画像における健常領域を対象とする画素値の平均値、P
sdは、パフュージョン画像における健常領域を対象とする画素値の標準偏差である。
【0028】
閾値=P
mean+2×P
sd ・・・(1)
パフュージョン画像として遅延画像を用いる場合、閾値は、以下の(2)式により算出される。但し、D
meanは、遅延画像における健常領域を対象とする遅延時間の平均値、D
sdは、遅延画像における健常領域を対象とする遅延時間の標準偏差である。
【0029】
閾値=D
mean+2×D
sd ・・・(2)
以下、(2)式を用いて閾値を算出したものとして説明する。
【0030】
画像処理部11の患部候補領域抽出部55は、パフュージョン画像に含まれる各画素の画素値をS15において設定された閾値に対して比較し、パフュージョン画像から患部候補領域を抽出する(S16)。例えば、患部候補領域抽出部55は、
図3Bに示される遅延画像の患部半球領域を対象として、患部半球領域から閾値以上の遅延時間値を有する画像領域を抽出する。(2)式の閾値を超えた値を有する領域は、
図3Bに示されるように、側副血行路やバイパス血管の候補となる患部候補領域221である。上述のように、患部候補領域221は、患部血管候補と当該患部血管候補が栄養する脳実質領域とを含む。特定された患部候補領域221は遅延画像から抽出される。患部候補領域のデータは、記憶部16に記憶される。
【0031】
最後に、表示制御部19は、S16において抽出された患部候補領域を表示部14に表示する(S17)。具体的には、画像処理部11の表示画像発生部56は、血管ボリュームデータに投影処理を施して血管の2次元空間分布を示す血管画像を発生し、発生された血管画像に患部候補領域を重畳する。この際、表示画像発生部56は、患部候補領域を血管画像に対して位置合わせした後に重ね合わせると良い。重畳画像は、表示制御部19により表示部14に表示される。なお、表示画像発生部56は、時系列の血管ボリュームデータに投影処理を施して時系列の血管画像を発生し、時系列の血管画像に患部候補領域を重ねても良い。
【0032】
上記の通り、第1実施例に係る医用診断画像処理装置は、パフュージョン画像から患部候補領域を抽出し、患部候補領域が強調された強調画像を表示する。ユーザは、強調画像を観察することにより、側副血行路やバイパス血管を発見することができる。このため、画像診断のスループットや効率が向上する。
【0033】
(第2実施例)
第2実施例においては第1実施例において抽出された患部候補領域の表示の応用例について説明する。概略的には、画像処理部11は、患部候補領域の輪郭を血管画像に重ねた重畳画像を発生する。
【0034】
図2Bは、第2実施例に係る患部候補領域の表示処理の典型的な流れを示す図である。
【0035】
まず、画像処理部11は、血管ボリュームデータファイルと患部候補領域とを記憶部16から読み出す。そして画像処理部11の輪郭抽出部57は、患部候補領域の輪郭を抽出する(S21)。
【0036】
画像処理部11の表示画像発生部56は、S21において抽出された輪郭を、血管画像に重ね合わせた重畳画像を発生する(S22)。具体的には、表示画像発生部56は、血管ボリュームデータに投影処理を施して血管の2次元空間分布を示す血管画像を発生し、発生された血管画像に患部候補領域の輪郭を重畳する。この際、表示画像発生部56は、輪郭を血管画像に対して位置合わせした後に重ね合わせる。
図4Aは、重畳画像I1の一例を示す図である。
図4Aに示すように、重畳画像I1には患部候補領域の輪郭23が合成されている。
【0037】
最後に、表示制御部19は、S22において発生された重畳画像を表示部14に表示する(S23)。重畳画像は、
図4Aに示されるように、表示部14により時系列で表示されても良い。
【0038】
第2実施形態に係る医用診断画像処理装置は、患部候補領域の輪郭が血管画像に重畳された重畳画像を表示する。ユーザは、重畳画像を観察する際、患部候補領域の輪郭内に注意を向けることができるため、より簡便に側副血行路やバイパス血管を発見することができる。このため、画像診断のスループットや効率が向上する。
【0039】
(第3実施例)
第3実施例においては、第1実施例において抽出された患部候補領域の表示の他の応用例について説明する。概略的には、画像処理部11は、血管画像のうちの患部半球領域が強調された強調画像を発生する。
【0040】
図2Cは、第3実施例に係る患部候補領域の表示処理の典型的な流れを示す図である。
【0041】
まず、画像処理部11は、血管ボリュームデータファイルと患部候補領域とを記憶部16から読み出す。そして画像処理部11のマスク領域決定部58は、患部候補領域を利用してマスク領域を決定する(S31)。マスク領域は、血管ボリュームデータファイルの非表示範囲に規定される。具体的には、
図4Bに示されるように、マスク領域は、血管ボリュームデータファイルの患部半球領域について患部候補領域23のみが表示されるように、患部半球領域の患部候補領域23以外の画像領域に設定される。健常領域については、比較のため、マスク領域は設定されなくても良い。
【0042】
画像処理部11の表示画像発生部56は、S31において決定されたマスク領域を血管ボリュームデータファイルに適用し、血管ボリュームデータファイルに含まれる患部候補領域を残留させ、かつ他の領域を当該残留領域より輝度又は明度を低下させた強調画像を発生する(S32)。具体的には、表示画像発生部56は、マスクが適用された血管ボリュームデータファイルに投影処理を適用し、マスク領域以外の画像領域に存在する血管の2次元空間分布を示す強調画像を発生する。
図4Bは、S32により発生された強調画像の一例を示す図である。
図4Bに示すように、強調画像I2は、健常領域R1と患部半球領域R2とを含んでいる。強調画像I2は、健常領域R1については全体を描出し、患部半球領域R2についてはマスク領域以外の画像領域に限定して描出している。
【0043】
表示制御部19は、S32において発生された強調画像を表示部14に表示させる(S33)。表示された強調画像はユーザにより観察される。
【0044】
実施例3に係る医療診断画像処理装置は、マスク領域が適用された範囲を強調画像の画像化範囲から除外する。これにより医療診断画像処理装置は、投影方向に沿って患部候補領域の前後に存在する血管領域を画像化範囲から除外することが可能になるので、患部候補領域を明瞭に描出させることができる。従ってユーザは、強調画像を観察することにより、側副血行路やバイパス血管等の患部候補領域の発見が容易になる。また医療診断画像処理装置は、患部候補領域と健常領域とを並べて表示することができる。これにより、ユーザは、患部候補領域と健常領域との血管走行状態を一画像で容易に比較することができる。
【0045】
なおマスク領域の設定範囲は、患部半球領域内の患部候補領域以外の画像領域に限定されない。例えば、マスク領域は、患部半球領域に相当する健常領域内の画像領域(患部対応領域)以外の画像領域にマスク領域が設定されても良い。これにより、患部半球領域における患部候補領域23と健常領域における患部対応領域との比較が容易になる。また、健常領域を表示する必要が無い場合、健常領域の全体にマスク領域が設定されても良い。これらマスク領域の設定モードは、入力部13により任意に設定可能である。
【0046】
(第4実施例)
第4実施例においては、第1実施例において抽出された患部候補領域から患部血管領域を抽出する方法と抽出された患部血管領域を表示する方法とについて説明する。
【0047】
まず画像処理部11は、血管画像と患部候補領域とを記憶部16から読み出す。そして画像処理部11の血管領域抽出部59は、
図6Aに示すように、患部候補領域を利用して、血管画像24から対応領域Rbb抽出する(S41)。対応領域Rbbは、血管画像に含まれる画像領域であって、パフュージョン画像の患部候補領域に位置が一致する画像領域である。
【0048】
次に画像処理部11のAUC値算出部60は、S41において抽出された対応領域Rbbに含まれる各画素についてAUC(area under the carve)値を算出する(S42)。具体的には、AUC値算出部60は、対応領域Rbbに含まれる各画素について、
図6に示されるような、CT値の時間変化曲線を算出し、時間変化曲線の時間積分値(すなわち、AUC値)を算出する。AUC値は、X軸とY軸とCT値の時間変化曲線とで囲まれた面積により規定される。
【0049】
画像処理部11のAUC画像発生部61は、S42において算出されたAUC値の空間分布を表すAUC画像を発生する(S43)。あるいは、AUC画像発生部61は、全時相の時系列の血管画像を位置合わせ加算することにより、AUC画像を発生しても良い。
【0050】
画像処理部11の血管領域抽出部59は、
図6Aに示すように、S43において発生されたAUC画像25からAUC値を利用して血管領域Rbaを抽出する(S44)。S44においてAUC画像25から抽出された血管領域RbaをAUC血管領域と呼ぶことにする。具体的には、血管領域抽出部59は、AUC画像25に含まれる各画素の画素値を予め定められた閾値に対して比較し、当該閾値よりも大きい画素値を有する画素を抽出する。抽出された複数の画素の集合がAUC血管領域Rbaを構成する。
【0051】
画像処理部11の閾値設定部54は、健常領域に含まれる複数の画素の画素値の時刻的動態の統計値に基づいて閾値を設定する(S45)。具体的には、閾値設定部54は、AUC画像において中心線(面)を軸として、AUC血管領域を健常領域側に折り返す。健常領域側に折り返されたAUC血管領域を折り返し領域と呼ぶことにする。AUC血管領域と折り返し領域とは、中心線を挟んで線対称の関係にある。閾値設定部54は、折り返し領域を対象として、
図5に示されるようなTTP値の平均値(T
mean)と標準偏差(T
sd)とを算出する。その後、閾値設定部54は、算出された平均値(T
mean)と標準偏差(T
sd)とを用いて以下の(3)式により閾値を算出する。
【0052】
閾値=T
mean+2×T
sd ・・・(3)
式(3)により算出された閾値以上の値を有する画素値を有する画素の集合が、側副血行路やバイパス血管の可能性が高い患部血管領域である。
【0053】
画像処理部11の患部血管領域抽出部62は、S44で抽出されたAUC血管領域における各画素の画素値をS45で設定された閾値に対して比較し、血管画像の患部候補領域から患部血管領域を抽出する(S46)。具体的には、患部血管領域抽出部62は、AUC血管領域に含まれる複数の画素のうち、閾値よりも大きい画素値を有する画素を患部血管領域として抽出する。
【0054】
次に、画像処理部11の表示画像発生部56は、S46において抽出された患部血管領域が強調された強調された強調画像を血管画像に基づいて発生する(S47)。具体的には、表示画像発生部56は、
図6Aに示すように、血管画像のうちの患部血管領域Rbcに、他の画像領域とは異なる色値を割り当てることにより強調画像26を発生する。
【0055】
最後に表示制御部19は、S47において発生された強調画像を表示部14に表示する(S48)。表示された強調画像はユーザにより観察される。
【0056】
実施例4に係る医療診断画像処理装置は、患部候補領域の中から患部血管領域を抽出し、抽出された患部血管領域が強調された強調画像を発生する。従ってユーザは、強調画像を観察することにより、側副血行路やバイパス血管等の患部血管の発見が容易になる。
【0057】
上記の説明の通り、本実施形態に係る医療診断画像処理装置は、側副血行路やバイパス血管が存在する可能性が高い領域を抽出し、表示する。これにより、ユーザは、側副血行路やバイパス血管を容易に発見することが可能となる。
【0058】
かくして、本実施形態によれば、ユーザによる画像診断の質を向上可能な医用診断画像処理装置が実現する。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。