特許第6351957号(P6351957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許6351957-流体排出を備える灌注式カテーテル 図000002
  • 特許6351957-流体排出を備える灌注式カテーテル 図000003
  • 特許6351957-流体排出を備える灌注式カテーテル 図000004
  • 特許6351957-流体排出を備える灌注式カテーテル 図000005
  • 特許6351957-流体排出を備える灌注式カテーテル 図000006
  • 特許6351957-流体排出を備える灌注式カテーテル 図000007
  • 特許6351957-流体排出を備える灌注式カテーテル 図000008
  • 特許6351957-流体排出を備える灌注式カテーテル 図000009
  • 特許6351957-流体排出を備える灌注式カテーテル 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351957
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】流体排出を備える灌注式カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20180625BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20180625BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   A61B18/14
   A61M25/00 532
   A61M25/14 512
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-236663(P2013-236663)
(22)【出願日】2013年11月15日
(65)【公開番号】特開2014-100566(P2014-100566A)
(43)【公開日】2014年6月5日
【審査請求日】2016年9月28日
(31)【優先権主張番号】13/679,907
(32)【優先日】2012年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロゲリオ・プラセンシア・ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ディーン・ポンジ
(72)【発明者】
【氏名】アーノルド・トアソン
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−146883(JP,A)
【文献】 特表2000−512526(JP,A)
【文献】 特表2008−503269(JP,A)
【文献】 特開2007−160109(JP,A)
【文献】 特表2012−525933(JP,A)
【文献】 特開2011−72782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/14
A61M 25/00
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸引源とともに使用される焼灼カテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位の遠位区画であって、
焼灼及び潅注に適合される先端電極であって、複数の潅注口を含む、先端電極と、
前記カテーテル本体と前記先端電極との間に延在する多管腔部材であって、少なくとも1つの管腔を有する、多管腔部材と、
前記先端電極の近位の少なくと1つの環電極であって、焼灼に適合される、少なくとも1つの環電極と、
前記少なくとも1つの管腔と吸引連通する、少なくとも1つの排出口と、を備える、遠位区画と、
少なくとも前記カテーテル本体及び前記少なくとも1つの管腔を通じて延在する流体排出経路であって、前記吸引源と前記少なくとも1つの排出口との間に吸引連通を提供するように構成される、流体排出経路と、を備え、
前記少なくとも1つの排出口が、前記先端電極と前記少なくとも1つの環電極との間に配置されている、カテーテル。
【請求項2】
前記少なくとも1つの排出口が、前記多管腔部材内に形成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記流体排出経路が、部分的に、前記カテーテル本体を通じて延在する排出管系によって画定され、前記排出管系が、前記多管腔部材の前記少なくとも1つの管腔内に受容される遠位端を有する、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記カテーテル本体及び前記遠位区画を通じて延在する潅注流体経路を更に備え、前記潅注流体経路が、流体を前記先端電極内に送るように構成される、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記少なくとも1つの排出口は、複数の排出口である、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記複数の排出口が、約2個〜10個の範囲である、請求項に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓組織の焼灼及び電気的活動の検知に特に有用な電気生理学的カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
電極カテーテルは、長年にわたり医療行為で一般的に用いられている。電極カテーテルによる心不整脈の診断及び治療には、心臓組織の電気特性をマッピングすること、及びエネルギーの印加によって心組織を選択的に焼灼することが含まれる。そのような焼灼により、望ましくない電気信号が心臓のある部分から別の部分へと伝播するのを止めるか又は修正することができる。この焼灼処理は、非導電性の損傷部位を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。損傷部位を形成するための様々なエネルギー供給の様式がこれまでに開示されており、心組織壁に沿って伝導遮断部分を形成するためのマイクロ波、レーザー、及びより一般的には高周波エネルギーの使用が挙げられる。
【0003】
マッピングの後に焼灼が続く、2段階の処置では、心臓内部の場所での電気的活動は、典型的には、1つ又は2つ以上の電気センサー(又は電極)を収容するカテーテルを心臓内へと前進させ、複数の場所でのデータを取得することによって、検知及び測定される。次いでこれらのデータが利用されて、焼灼が実施される組織の標的領域が選択される。
【0004】
使用中、電極カテーテルが、例えば、大腿動脈などの主要静脈又は動脈に挿入されると、心室へと案内される。基準電極は、一般に患者の皮膚にテープで貼られて提供されるか、又は焼灼カテーテル若しくは別のカテーテル上に提供される。高周波(RF)電流がカテーテルの焼灼電極に印加され、周囲の媒体、すなわち血管及び組織を通じて、基準電極に向かって流れる。電流の分布は、組織よりも伝導性の高い血液と比較すると、組織と接触する電極表面の大きさに依存する。
【0005】
組織の電気抵抗により組織の加熱が生じる。組織が十分に加熱されると心組織の細胞が破壊され、心組織内に非導電性の損傷部位が形成される。この過程では、加熱された組織から電極自体への伝導によって焼灼電極の加熱も生じる。電極温度が十分に高くなり、おそらくは60℃を超える場合、乾燥した血液の薄い透明な膜を電極の表面上に形成することができる。温度が上昇し続けた場合、この血液の乾燥層は次第に厚くなり、結果として電極表面上に血液凝固を生じ得る。乾燥した生物学的物質は、組織よりも高い電気抵抗を有するため、組織の中に向かう電気エネルギーの流れに対するインピーダンスも増加する。インピーダンスが十分に高くなると、インピーダンス上昇が起こり、カテーテルを身体から除去して先端電極をきれいにしなければならない。
【0006】
RF電流の典型的な印加において、循環血液により、焼灼電極がいくぶんか冷却される。別の方法は、血液によってもたらされるより受動的な生理的冷却に頼る代わりに、焼灼電極を、例えば、室温の生理的食塩水で灌注して、焼灼電極を能動的に冷却することである。この方法では、高周波電流の強さが界面の温度によって制限されることがないため、電流を大きくすることができる。これにより、損傷部位は、通常約10〜12mmとより大きく、かつより半球状になる傾向がもたらされる。
【0007】
焼灼電極を灌注することの臨床的な効果は、電極構造内における流れの分布及びカテーテルを通じた灌注流れの速度に依存する。全体の電極温度を下げ、凝固形成を開始させ得る焼灼電極のホットスポットをなくすことによって高い効果が実現される。流路の数を増やし、流量を大きくすることが、全体の温度及び温度変化、すなわちホットスポットを低減するうえでより効果的である。冷却剤の流量は、患者に注入され得る流体の量、及び、手技の間に注入装置を監視し、場合によっては再充填するのに必要となる臨床的な負担の増加に対して釣り合いのとれたものでなければならない。血液が冷却剤の通路に逆流するのを防止するために、焼灼の間の灌注流れに加えて、典型的にはより低速な流量のメンテナンス用の流れが手技の全体を通じて必要となる。したがって、冷却剤の流れを可能な限り効率的に利用することによって冷却剤の流れを減じることが、望ましい設計目的となる。
【0008】
別の検討事項は、カテーテル先端部の位置と向きを正確に制御する能力である。この能力は重要であり、カテーテルの実用性を大きく左右するものである。カテーテルの遠位端部の場所を判定するための電磁式(EM)3軸場所/位置センサーを、電気生理学的カテーテルに組み込むことが一般に知られている。通常はカテーテルの遠位端部の近くの遠位先端部内にある、カテーテル内のEMセンサーが信号を発生させ、その信号は、身体に対して又は心臓自体に対して外側に固定された基準系に対する装置の位置を判定するために使用される。EMセンサーは能動型であっても受動型であってもよく、また、電場、磁場、若しくは超音波エネルギー場、又は当該技術分野において既知の他の好適な形態のエネルギーを発生させるか、又は受容することによって動作することができる。
【0009】
遠位先端部が灌注される場合、焼灼手技は5時間又は6時間に及ぶ可能性があるので、患者の流体負荷が甚大となる。従来の灌注式先端部電極は、典型的には、約30ワット未満のRF焼灼エネルギーで約17mL/分の流量で、約30ワット以上のRF焼灼エネルギーで約30〜50mL/分の流量で動作する。更に、現在のカテーテルは、患者の流体負荷が更に増える灌注式環電極を含む。心膜の空間は、生理食塩水などの潅注流体で急速に満たされ始める可能性があり、これによって流体の過負荷に起因して、焼灼カテーテルを体内に入れることができる時間の長さ、及び行うことができる焼灼の数が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、カテーテルが、焼灼電極の近くの流体排出口を通して吸引することによって、過剰の流体の除去に適合されることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、組織処置部位から過剰の流体を除去するための、吸引源とともに使用されるカテーテルを目的とする。一実施形態では、カテーテルは、細長いカテーテル本体と、遠位区画と、流体排出経路とを有し、遠位区画は、多管腔部材及び少なくとも1つの排出口を有し、流体排出経路は、吸引源と少なくとも1つの排出口との間に吸引連通を提供するように、多管腔部材内の管腔を通じて延在する。1つ又は2つ以上の排出口は、多管腔部材内に形成されてもよく、又は多管腔部材から遠位に延在する遠位区画の先端電極内に形成されてもよい。
【0012】
別の実施形態では、流体排出経路は、カテーテルに沿って遠位方向及び近位方向を含む双方向流に対して構成される。カテーテルは、2つのモードの動作、すなわち潅注及び排出のために構成される。潅注流体は、組織処置部位に輸送されることができ、また過剰の潅注流体及び/又は体液は、組織処置部位から吸引し、かつ収集チャンバ内に貯蔵することができる。詳細な実施形態では、カテーテルは、流体経路と吸引源との間の流体連通及び吸引連通、又は流体経路と潅注流体源との間の流体連通を可能にするように適合される切り換えを有するバルブを含む。より詳細な実施形態では、バルブは、第1、第2、及び第3の接続を提供し、第1の接続は吸引源との連通に適合され、第2の接続は潅注流体源との連通に適合され、第3の接続は流体経路との連通に適合される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明のこれらの並びに他の特徴及び利点は、添付図面と合わせて考慮するとき、以下の詳細な説明を参照することにより、より十分に理解されるであろう。
図1】本発明の実施形態による、吸引源及び流体収集チャンバとともに使用されるカテーテルの斜視図である。
図2A】第1の直径に沿って取った、カテーテル本体と偏向可能な遠位区画との間の連結部を示す図1のカテーテルの側面断面図である。
図2B】第1の直径に概して垂直な第2の直径に沿って取った、カテーテル本体と偏向可能な遠位区画との間の連結部を示す図1のカテーテルの側面断面図である。
図3】直径に沿って取った、図1のカテーテルの遠位区画の側面断面図である。
図3A】直線A−−Aに沿って取った、図3の遠位区画の端部断面図である。
図3B】直線B−−Bに沿って取った、図3の遠位区画の側面断面図である。
図4】吸引源、収集チャンバ、及び潅注流体源とともに使用される、本発明のカテーテルの代替的な実施形態の斜視図である。
図5図4のカテーテルの遠位区画の側面断面図である。
図5A】直線A−−Aに沿って取った、図5の遠位区画の端部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態では、灌注式先端部及び流体排出適合を有する操縦可能な双方向カテーテルが提供される。図1図3に示すように、カテーテル10は、近位端及び遠位端を有する細長いカテーテル本体12、カテーテル本体12の遠位端における偏向可能な遠位先端部区画14、並びにカテーテル本体12の近位端における制御ハンドル16を備える。
【0015】
図1及び図2Aを参照すると、カテーテル本体12は、単一の軸方向又は中央管腔18を有する細長い管状構成体を備える。カテーテル本体12は、可撓性、すなわち、折り曲げ可能であるが、実質的にねじり剛性を備える。カテーテル本体12は、任意の適切な構造とすることができ、任意の適切な材料で作製することができる。例示した実施形態では、カテーテル本体12は、ポリウレタン又はPEBAXで作製された外壁22を有する。外壁22は、カテーテル本体12のねじり剛性を高めるために、埋め込まれたステンレス鋼などの編組メッシュを備え、これよって制御ハンドル16が回転されるときに、カテーテル10の先端区画14が対応する様式で回転する。
【0016】
リード線と、灌注管と、第2の引張りワイヤーがそれを通じて2方向の偏向のために延在する第2の圧縮コイルもではないにしても、第1の引張りワイヤーがそれを通じて単一方向の偏向のために延在する第1の圧縮コイルと、を含む構成部品が、カテーテル本体12の単一管腔18を通じて延在する。他の構成部品としては、位置センサーのためのケーブルと、熱電対線と、排出管とが挙げられる。カテーテルを回転させるとき、単一管腔本体はより良好な先端調節を可能にすることが見出されたので、単一管腔カテーテル本体は、多くの場合多管腔本体よりも好ましい。単一管腔は、構成部品がカテーテル本体内を自由に浮遊することを可能にする。かかるワイヤー及び管が複数の管腔内で拘束される場合、これらはハンドルが回転されるときにエネルギーを蓄積する場合があり、結果として、カテーテル本体は、例えば、ハンドルを放すと逆回転し、又は曲線状に曲げると、反転する傾向をもたらし、これらはいずれも、望ましくない性能特性である。
【0017】
カテーテル本体12の外径は重要ではないが、好ましくは約8フレンチ以下、より好ましくは7フレンチである。同様に、外壁22の厚さは重要ではないが、中央管腔18が上述の構成部品を収容できるように十分薄い。
【0018】
外壁22の内面は、ポリイミド又はナイロン等の任意の適切な材料から作製されていてもよい補強管20で裏打ちされる。補強管20は、編組された外壁22とともに高いねじれ安定性を提供すると同時に、カテーテルの壁厚を最小化し、したがって中央管腔18の直径を最大化する。補強管20の外径は、外壁22の内径とほぼ同じか、又はそれよりもわずかに小さい。ポリイミド管系は、非常に薄い壁としてもよい一方で、それでも非常に良好な剛性を提供するので、現時点で補強管20のために好ましい。これにより、強度及び剛性を犠牲にすることなく中央管腔18の直径が最大化される。
【0019】
カテーテルの実施形態は、約0.090インチ〜約0.094インチの外径で、約0.061インチ〜約0.065インチの内径の外壁22、並びに約0.060インチ〜約0.064インチの外径、及び約0.051インチ〜約0.056インチの内径を有するポリイミド補強管20を有する。
【0020】
先端区画14を偏向するための少なくとも1つの引張りワイヤー42は、カテーテル本体12を通じて延在する。引張りワイヤーは、その近位端において制御ハンドル16に固定され、かつその遠位端において先端区画14に固定される。引張りワイヤー42は、ステンレス鋼又はニチノールなどの、任意の適切な金属で作製され、好ましくは、Teflon(登録商標)などでコーティングされる。コーティングは、引張りワイヤー42に潤滑性を付与する。引張りワイヤー42は、好ましくは、約0.006インチ〜約0.010インチの範囲の直径を有する。
【0021】
圧縮コイル44は、引張りワイヤー42のそれぞれを取り囲む関係において、カテーテル本体12内にある。圧縮コイル44は、カテーテル本体12の近位端から先端区画14のほぼ近位端まで延在する。圧縮コイル44は、任意の適切な金属、好ましくは、ステンレス鋼で作製される。圧縮コイル44は、可撓性をもたらすため、すなわち、曲がるが圧縮に耐えるように、それ自体緊密に巻かれる。圧縮コイル44の内径は好ましくは、引張りワイヤー42の直径よりもわずかに大きい。引張りワイヤー42上のTeflon(登録商標)コーティングは、それが、圧縮コイル44内を自由に摺動することを可能にする。所望する場合、特に電極リード線が保護シースによって包囲されていない場合、圧縮コイル44の外表面は、圧縮コイル44とカテーテル本体12内の任意の他の配線との間の接触を防止するために、例えば、ポリイミド管系で作製された、可撓性の非導電性のシース39によって被覆することができる。
【0022】
圧縮コイル44は、その近位端において、カテーテル本体12内で糊接合部(図示せず)によって補強管20の近位端に固定され、その遠位端において、先端区画14に糊接合部51によって固定される。両方の糊接合部は、好ましくは、ポリウレタン糊などを含む。糊は、カテーテル本体12の外表面と中央管腔18との間に作成された穴を通じて注射器などの手段によって塗布されてもよい。かかる穴は、例えば、カテーテル本体12の外壁22及び補強管20に穴をあける、十分に加熱して恒久的な穴を形成する針などによって形成されてもよい。次いで、接着材は、穴を通して圧縮コイル44の外表面に導入され、外側の周囲に毛管現象で広がって(wicks around)、圧縮コイル44の全周囲の周りに糊接合部を形成する。
【0023】
図2Bを参照すると、カテーテル10の図示した実施形態は、双方向の偏向のための一対の引張りワイヤー42を有し、それぞれは、カテーテル本体12のほぼ近位端からカテーテル本体12のほぼ遠位端まで、引張りワイヤーを取り囲むそれぞれの圧縮コイル44を有する。
【0024】
カテーテル本体12の遠位の先端区画14は、先端電極17及び複数個の環電極21を保持する。先端区画14は、電磁位置センサー46も保持する。図2A及び図2Bには、カテーテル本体12を先端区画14に付着させるための適切な手段が図示される。先端区画14は、その近位端が、カテーテル本体12の外壁22の内表面を受容する外円周状の切り込み24を備える、多管腔管系19を備える。先端区画14及びカテーテル本体12は、糊などによって付着される。しかしながら、先端区画14とカテーテル本体12とが付着される前に、補強管20は、カテーテル本体12内に挿入される。補強管20の遠位端は、カテーテル本体12の遠位端の近くに、ポリウレタン糊などで糊接合部23を形成することによって固定式で付着される。カテーテル本体12の遠位端と補強管20の遠位端との間に、カテーテル本体12が先端区画14の切り込み24を受容するための空間を許容するために、好ましくは、小さい距離、例えば、約3mm、が提供される。補強管20の近位端に力がかけられ、補強管20は圧縮下にあるが、第1の糊接合部(図示せず)が、例えばSuper Glue(登録商標)などの速乾糊によって、補強管20と外壁22との間に作成される。その後、より遅乾性ではあるが、より恒久的な糊、例えば、ポリウレタンを使用して、補強管20の近位端と外壁22との間に第2の糊接合部(図示せず)が形成される。
【0025】
所望する場合は、カテーテル本体12内の、補強管20の遠位端と先端区画14の近位端との間に、スペーサを位置付けることができる。このスペーサは、カテーテル本体12と先端区画14との間の連結部で可撓性の遷移を提供し、これによりこの連結部が、折り畳まれたり又はよじれたりすることなく滑らかに曲がることが可能になる。かかるスペーサを有するカテーテルは、「Steerable Direct Myocardial Revascularization Catheter」と題される、米国特許出願第08/924,616号に記載され、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
図2A図2B図3A、及び図3Bに示すように、先端区画14の管系19は、複数管腔、例えば、3つ、又は4つ以上の管腔を有する。管系19は、好ましくはカテーテル本体12よりも可撓性である、適切な非毒性材料で作製される。管系19のうちの1つの構成体は、編組ポリウレタン、すなわち、編組ステンレス鋼などの埋め込まれたメッシュをともなうポリウレタンであるが、管系19は、プラスチックのコア、コアを取り囲む内側プラスチック層、内側層を取り囲む編組ステンレス鋼のメッシュ、及び編組メッシュを取り囲む外側プラスチック層を備えることができる。適切な管系は、米国特許第6,569,114号に記載されている。
【0027】
カテーテル本体12の外径と同様に、先端区画14の外径は、好ましくは、約8フレンチ以下であり、より好ましくは7フレンチである。管腔のサイズはさほど重要ではない。一実施形態では、先端区画14は、約7フレンチ(0.092インチ)の外径を有し、管系19は、先端電極17、熱電対線の対41及び45、位置センサー46用ケーブル48用のリード線40Tのための、中央の、軸上管腔30を含む、6つの管腔を収容する。それぞれが引張りワイヤー42それぞれのための一対の正反対側の管腔31、32が提供される。軸外管腔33は、環電極21のためのリード線40Rのために提供される。軸外管腔34は、灌注管系38のために提供される。少なくとも1つの軸外管腔35は、カテーテル10内に提供される少なくとも1つの流体排出経路のために提供される。管腔は、約0.018インチ〜0.029インチの範囲の直径を有してもよい。
【0028】
図3及び図3Bの実施形態に示すように、先端電極17の近位端は、先端区画14の管系19の遠位端内に挿入される。先端電極36の近位端は、管系19の遠位端の内側に嵌合するように円周状に切り込みがついている。切り込みがついている近位端は、ポリウレタン糊などによって管系19に接着されてもよい。先端電極17内に延在する線、ケーブル及び灌注管は、先端電極が先端区画14に付着したままにするのを助ける。
【0029】
環電極21の場所及び数は、所望により異なる場合があることが理解される。環電極は、所望により、単極性及び/又は二極性で構成されてもよい。先端電極17及び環電極21は、プラチナ及び/又はイリジウムを含む任意の適切な材料で作製されてもよい。電極リード線40T、40Rは、制御ハンドル16を通過し、適当なモニター(図示せず)内にプラグ接続されてもよい入力ジャック(図示せず)内のそれらの近位端において終端する。先端区画14の近位端、カテーテル本体12の中央管腔18、及び制御ハンドル16を通って延在するリード線40T、40Rの部分は、任意の好適な材料、好ましくはポリイミドで作製することができる、保護シース(図示せず)内に封入される。保護シースは、ポリウレタン糊などで管腔内に接着することによって、その遠位端において、先端区画14の近位端に固定される。
【0030】
リード線40Tの先端電極17への接続は、例えば、リード線の遠位端を先端電極の近位表面に形成された止り穴80(図3)内に溶接することによって達成される。リード線40Rの環電極21への接続は、例えば、最初に、針を外壁を通して挿入することによって管系19の外壁を通して小さい穴60(図3及び図3B)を形成し、そして十分に針を加熱して恒久的な穴を形成することによって達成される。次に、リード線40Rをマイクロフックなどによって穴を通じて引き込む。リード線40Rの端部は、コーティングを全て剥ぎ取り、環電極21の下側にはんだ付け又は溶接し、次いで、穴を覆う位置へと滑り込ませ、ポリウレタン糊などで定位置に定着させる。
【0031】
先端区画14に提供される温度検知手段はまた、Thermometrics(New Jersey)によって販売されているモデル番号AB6N2−GC14KA143E/37Cなどのサーミスタであってもよい。しかしながら、例示した実施形態の熱電対では、線41は、ナンバー「40」の銅線であり、線45は、ナンバー「40」のコンスタンタン線であり、対線に支持及び強度を与える。対線の線41及び線45は、それらが共に接触しかつ撚られるそれらの遠位端を除いて、互いに電気的に絶縁され、プラスチック管系43、例えば、ポリイミドの短片で覆われ、かつエポキシで覆われる。次いで、プラスチック管系43は、先端電極17の近位表面に形成される止り穴82内にポリウレタン糊などによって付着される。線41及び45は、遠位区画14の管系19の管腔30、カテーテル本体12の中央管腔18、及び制御ハンドル16を通じて延在する。制御ハンドルの近位で、線は、温度モニター(図示せず)に接続可能なコネクタ(図示せず)に接続される。
【0032】
一対の引張りワイヤー42は、双方向偏向のために提供される。引張りワイヤーの近位端は、制御ハンドル16に固定される。引張りワイヤー42は、制御ハンドル16、及びカテーテル本体12の中央管腔18を通じて延在する(図2A)。遠位区画14の管系19では、第1の引張りワイヤー42は、管腔31を通じて延在し、第2の引張りワイヤーは、正反対の管腔32を通じて延在する(図3A)。引張りワイヤーの遠位端は、管系19の遠位端の近くに、管系の側壁内にTバー72によって固定される(図2B)。代替的には、皮下ストックの金属管系は、それぞれの引張りワイヤー42の遠位端の上に捲縮し、先端電極17の近位表面に形成される止り穴の内側にはんだ付けすることができる。
【0033】
電磁センサー46用ケーブル48は、管系19の管腔30を通じて延在する。その遠位端は、ポリウレタン糊などによって、先端電極17の近くの管腔30の内側に固定式で付着されるセンサー46に接続される(図3)。
【0034】
ケーブル48の近位端は、アンビリカルコード(図示せず)内の制御ハンドル16の近位端を出て、回路基板(図示せず)を収容するセンサー制御モジュール(図示せず)まで延在する。ケーブル48は、プラスチックで被覆されたシース内に包まれた複数の線を備える。センサー制御モジュール内では、電磁センサーケーブル48の線は、電磁センサー46から受信した信号を増幅し、コンピューターによって理解可能な形態でそれをコンピューター(図示せず)に伝送する回路基板に接続される。
【0035】
灌注管38の近位端は、制御ハンドル16を通じて延在し、制御ハンドルに近位の場所のルアーハブ84などの中で終端する。実際には、流体はルアーハブ84(図1)を通して灌注管38内に注入され、カテーテル本体12の中央管腔18及び先端区画14の管腔34を通じて延在する、流体流路及び先端電極の横方向の分岐64と流体連通する、灌注管38を通して流れる。ひいては、流体は、流体流路62及び横方向の分岐64を経由して先端電極17内に移動し、そこで先端電極17の遠位端において、又はその近くに提供される灌注口66を経由して先端電極17から出る。
【0036】
本発明のカテーテルは、有利にも、先端区画14内の少なくとも1つの流体排出口86と吸引連通する流体排出経路を提供する。図1の例示した実施形態では、カテーテルは、適切な吸引導管94を経由して相互に吸引連通する、吸引源90及び流体収集チャンバ92とともに使用されるように適合される。吸引源90、例えば、吸引ポンプ又はコンプレッサーは、流体収集チャンバ92内に真空又は負圧を提供する。近位端が収集チャンバ92の接続口100上に載置されるコネクタ98で受容される吸引管96は、流体収集チャンバ92から延在する。吸引管96の遠位端は、カテーテルを通じて延在し、かつ吸引源90と排出口86との間に吸引連通を提供する排出管104の近位端との接続を提供するコネクタ102内に受容される。
【0037】
排出管104は、制御ハンドル16を通じて、カテーテル本体12の中央管腔18を通じて、先端区画14の管腔54内に延在する。一実施形態では、排出管104は、カテーテル本体12と先端区画14との間の、連結部の短い距離遠位で終端するが、遠位端は、先端電極17の近く、又はその中に位置付けられてもよいことが理解される。排出管104は、遠位区画14の管系19の長さにわたって延在する管腔54と液密かつ吸引気密な密封を提供するようにサイズ設定及び形作られる。管腔54と排出口86との間の吸引連通を提供するために、管系19の遠位端の近くで、管系19の側壁に、排出口86と連通して半径方向の排出貫通穴108が形成される。例示した実施形態では、最遠位の環電極21と、隣接する環電極21bとの間に、管系19の周囲に沿って3つの口が形成される。周囲に沿った複数の口は、約1つ〜6つ、好ましくは約3つ〜4つの範囲とすることができる。
【0038】
動作時、カテーテルは組織焼灼部位に潅注を提供する。潅注流体は、ルアーハブ84を経由してカテーテルに入り、制御ハンドル16を通じて延在する灌注管系38、カテーテル本体12、及び遠位区画14内を通過する。流体は、流体流路62を経由して先端電極17に入り、横方向の分岐64を通過し、灌注口66を経由して先端電極の外側に出る。生理食塩水などの潅注流体は、先端電極上のチャーの形成を最小限にするために、焼灼の間に先端電極を冷却するのを補助する。患者に対する流体負荷を低減するために、有利にも、吸引源90が、流体(潅注流体及び他の体液を含む)を組織焼灼部位から引き抜き、その流体を吸引管96を経由して収集チャンバ92内に貯蔵することができるように、排出経路54がカテーテル10内に提供される。排出管104と収集チャンバ92との間の吸引連通及び流体連通は、吸引管96及び排出管104がコネクタ102を経由して接続されるときに確立される。
【0039】
先端電極及び/又は環電極による焼灼の間、潅注流体は、カテーテル10を制御ハンドル16から先端区画14まで、灌注管38を経由して通過し、そして先端電極17(及び/又は、潅注に適合されている場合、環電極21)の灌注口66から出る。吸引源90が起動すると、吸引管96及び排出管104内に吸引を生成する、吸引導管94を経由して収集チャンバ92内に負圧が生成される。カテーテルによって焼灼部位に送達された潅注流体を含む、排出口86に遭遇した流体は、収集チャンバ92内に貯蔵及び収集するために、排出口86及び排出管104を通して引き抜かれる。過剰の流体、特にカテーテルによって導入された潅注流体の除去は、流体の過負荷の危険を低減し、これによりカテーテルが体内にあることができる時間の長さ、及び患者の体内で実行することができる焼灼の数が増える。
【0040】
図4図5、及び図5Aに例示した代替的な実施形態では、カテーテルが潅注モードと排出モードとの間で動作することができるように、カテーテルは、潅注と排出の両方のために経路254を有する。カテーテルの構造は、多くの点で上述の実施形態と同様である。潅注/排出(I/E)管系204は、流体流路262及び横方向の分岐264を経由して、先端電極17で、I/E口266と流体連通及び吸引連通する、その遠位端が管腔234内に受容される場合、制御ハンドル16、カテーテル本体12、及び遠位区画14を通じて延在する。管系204の近位端は、バルブ210、例えば、ルアーフィッティング212及び2つの口をともなう3方バルブに接続され、口214は、潅注流体218を提供する注入ポンプ216と流体連通し、口220は、吸引管96と流体連通及び吸引連通する。
【0041】
動作時、バルブは、注入ポンプとI/E管との間に流体連通があり、吸引源90とI/E管との間には連通がないように配置され、これによりカテーテルは、組織焼灼部位において潅注を提供することによって、潅注モードで動作することができる。潅注流体は、カテーテルに入り、制御ハンドル16、カテーテル本体12、及び遠位区画14を通じて延在するI/E管系204内に流入する。次いで、流体は、流体流路262を経由して先端電極17に入り、横方向の分岐264を通過して、I/E口266を経由して先端電極の外に出る。
【0042】
排出モードで動作するために、バルブは、吸引源とI/E管との間で流体連通及び吸引連通を可能にし、注入ポンプとI/E管との間には連通がないように切り換えられる。吸引源90によって提供される吸引力が、吸引導管94の手段によって組織焼灼部位から流体を引き抜き、その流体を吸引管96を経由して収集チャンバ92内に貯蔵する。
【0043】
潅注モードと排出モードとの間で切り替えるために、操作者は、バルブを適宜に調節する。
【0044】
上記の説明文は、現時点における本発明の好ましい実施形態に基づいて示したものである。当業者であれば、本発明の原理、趣旨及び範囲を大きく逸脱することなく、本願に述べた構造の改変及び変更を実施することが可能であることは認識されるところであろう。図面の縮尺は必ずしも原寸に比例しないことが更に理解される。したがって、上記の説明文は、本願に述べられ、添付図面に示される厳密な構造のみに関係したものとして読み取るべきではなく、むしろ、以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる「特許請求の範囲」と符合し、かつそれらを補助するものとして読み取るべきである。
【0045】
〔実施の態様〕
(1) 吸引源とともに使用される焼灼カテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位の遠位区画であって、
焼灼及び潅注に適合される先端電極と、
前記カテーテル本体と前記先端電極との間に延在する多管腔部材であって、少なくとも1つの管腔を有する、多管腔部材と、
前記少なくとも1つの管腔と吸引連通する、少なくとも1つの排出口と、を備える、遠位区画と、
少なくとも前記カテーテル本体及び前記少なくとも1つの管腔を通じて延在する流体排出経路であって、前記吸引源と前記少なくとも1つの排出口との間に吸引連通を提供するように構成される、流体排出経路と、を備える、カテーテル。
(2) 前記少なくとも1つの排出口が、前記多管腔部材内に形成される、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記少なくとも1つの排出口が、前記先端電極内に形成される、実施態様1に記載のカテーテル。
(4) 前記流体排出経路が、部分的に、前記カテーテル本体を通じて延在する排出管系によって画定され、前記排出管系が、前記多管腔部材の前記少なくとも1つの管腔内に受容される遠位端を有する、実施態様1に記載のカテーテル。
(5) 前記遠位区画が、前記先端電極の近位の少なくとも1つの環電極を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
【0046】
(6) 前記排出口が、前記先端電極と前記少なくとも1つの環電極との間に配置される、実施態様5に記載のカテーテル。
(7) 前記カテーテル本体及び前記遠位区画を通じて延在する潅注流体経路を更に備え、前記潅注流体経路が、流体を前記先端電極内に送るように構成される、実施態様1に記載のカテーテル。
(8) 複数の排出口を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
(9) 前記複数の排出口が、約2個〜10個の範囲である、実施態様8に記載のカテーテル。
(10) 潅注流体源及び吸引源とともに使用される焼灼カテーテルであって、
細長いカテーテル本体と、
前記カテーテル本体の遠位の遠位区画であって、
焼灼に適合される先端電極であって、前記先端電極の内側と外側との間の流体連通のために構成される少なくとも1つの口を有する、先端電極と、
前記カテーテル本体と前記先端電極との間に延在する多管腔部材であって、前記少なくとも1つの口と連通する少なくとも1つの管腔を有する、多管腔部材と、を備える、遠位区画と、
前記カテーテル本体及び前記少なくとも1つの管腔を通じて延在する流体経路であって、前記カテーテルに沿って流体を遠位方向に又は近位方向に送るように適合される、流体経路と、
前記流体経路と前記吸引源との間の流体連通及び吸引連通、又は前記流体経路と前記潅注流体源との間の流体連通を可能にするように適合される切り換えを有するバルブと、を備える、カテーテル。
【0047】
(11) 前記バルブが第1、第2、及び第3の接続を提供し、前記第1の接続が、前記吸引源との連通に適合され、前記第2の接続が、前記潅注流体源との連通に適合され、前記第3の接続が、前記流体経路との連通に適合される、実施態様10に記載のカテーテル。
図1
図2A
図2B
図3
図3A
図3B
図4
図5
図5A