特許第6351960号(P6351960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351960
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】親水化処理剤
(51)【国際特許分類】
   C08F 293/00 20060101AFI20180625BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20180625BHJP
   C09D 153/00 20060101ALN20180625BHJP
   C09D 133/14 20060101ALN20180625BHJP
   C09D 7/63 20180101ALN20180625BHJP
【FI】
   C08F293/00
   C09K3/00 112Z
   C09K3/00 R
   !C09D153/00
   !C09D133/14
   !C09D7/63
【請求項の数】8
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2013-247535(P2013-247535)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105313(P2015-105313A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】圖司 紘和
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 正洋
(72)【発明者】
【氏名】境原 由次
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503332(JP,A)
【文献】 特表2009−508542(JP,A)
【文献】 特開2012−031400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F293
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性不飽和単量体由来の繰返し単位を含む不飽和単量体由来の重合体セグメントA−1と、スルホベタイン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位を含む不飽和単量体由来の重合体セグメントA−2とを有し、重合体セグメントA−1の含有量が0.05質量%以上、30質量%以下であるブロック重合体A、からなる親水化処理剤。
【請求項2】
ブロック重合体Aにおける疎水性不飽和単量体由来の繰返し単位が、一般式(1)で表される構成単位である、請求項1に記載の親水化処理剤。
【化1】

〔式中、
1〜R3:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基
4:炭素数1以上、22以下の炭化水素基
1:O又はNR11であり、R11は水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基
を示す。〕
【請求項3】
ブロック重合体Aにおけるスルホベタイン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位が、一般式(2)で表される構成単位である、請求項1又は2に記載の親水化処理剤。
【化2】

〔式中、
5〜R7:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基
8:炭素数1以上、4以下のアルキレン基
9、R10:同一又は異なって、炭素数1以上、4以下の炭化水素基
1:O又はNR11であり、R11は水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基
2:水酸基を有してもよい炭素数2以上、4以下のアルキレン基
を示す。〕
【請求項4】
ブロック重合体Aの重量平均分子量が2500以上、500000以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の親水化処理剤。
【請求項5】
ブロック重合体Aが、下記ブロック重合体A’を4級化する工程を有する製造方法により得られるブロック重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の親水化処理剤。
ブロック重合体A’:重合体セグメントA−1と、重合体セグメントA−2の前駆重合体セグメントであってアミノ基を有する重合体セグメントとを有するブロック重合体
【請求項6】
ブロック重合体Aが、下記工程1及び工程2を含む製造方法により得られるブロック重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の親水化処理剤。
工程1:下記一般式(1’)で表される不飽和単量体を重合した後、下記一般式(2’)で表される不飽和単量体を重合させてブロック重合体A’を得る工程。
【化3】


〔式中、
1〜R3:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基
4:炭素数1以上、22以下の炭化水素基
1:O又はNR11であり、R11は水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基
を示す。〕
【化4】


〔式中、
5〜R7:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基
8:炭素数1以上、4以下のアルキレン基
9、R10:同一又は異なって、炭素数1以上、4以下の炭化水素基
1:O又はNR11であり、R11は水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基
を示す。〕
工程2:ブロック重合体A’と、下記一般式(B1)で表される化合物又は下記一般式(B2)で表される化合物とを反応させて、ブロック重合体Aを得る工程。
【化5】


Z−X2−SO3M (B2)
(式中、ZはCl又はBr、X2は水酸基を有してもよい炭素数2以上、4以下のアルキレン基、MはNa又はKを表す。)
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の親水化処理剤と水を含有する親水化処理剤組成物。
【請求項8】
更に界面活性剤を含有する、請求項7に記載の親水化処理剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親水化処理剤及び親水化処理剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体表面に防汚性を付与する方法としては、撥水化処理と親水化処理の相異なる方法が知られている。
撥水化処理は、ガラス、金属、繊維等の固体表面に撥水性を持たせる表面処理を行い、水に含まれる汚れを付着させないようにする技術である。例えば、衣類を洗濯後、柔軟仕上げ剤で処理したり、スキーウェア等に撥水剤をスプレーして防水効果を持たせたり、自動車の塗装面をワックス掛けしたりすることが広く行われている。
しかしながら、撥水化処理では、表面を完全に撥水化させることは難しく、度重なる水との接触により、水に含まれる汚れが固体表面に蓄積するため、十分な防汚効果を発揮することが難しい。
【0003】
一方、固体表面の親水化処理、すなわち、固体表面の水に対する接触角を低下させ、固体表面を水に対して濡れ易くする処理をすると、当該処理後に固体表面に付着した汚れが洗浄時に落ち易くなったり、汚れの再汚染防止効果が期待できる他、ガラス・鏡等の防曇効果、帯電防止、熱交換器のアルミニウムフィンの着霜防止、浴槽及びトイレ表面等の防汚性付与等が期待できる。
【0004】
固体表面の親水化処理剤及び方法としては、いくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、両性高分子電解質を含有する水性防汚組成物が開示されている。特許文献2には、界面活性剤及び特定のポリベタインを含有する洗浄用又は、すすぎ洗い用の組成物が開示されている。特許文献3には、特定のベタイン構造を有する重合性不飽和モノマーと特定の重合性不飽和モノマーとを共重合して得られるアクリル樹脂、親水性架橋重合体粒子及び架橋剤を含有する親水化処理剤組成物が開示されている。特許文献4には、両親媒性ブロックコポリマーを含む組成物を支持体に適用する段階を含み、両新媒性ブロオックコポリマーが特定の構造の親水性ブロックとエチレン性不飽和疎水性モノマーから形成される疎水性ブロックを含有する疎水性支持体の湿潤性/親水性を改良する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−181601号公報
【特許文献2】特表2006−514150号公報
【特許文献3】特開2012−25820号公報
【特許文献4】特表2009−545642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかるに、親水化技術を応用した商品は意外なことに少なく、広く一般に普及しているとは言いがたい。これは十分満足できる効果を有する親水化剤がないことに起因している。
本発明は、優れた親水化能力を発揮する親水化処理剤及びそれを含有する親水化処理剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、疎水性不飽和単量体由来の繰返し単位を含む不飽和単量体由来の重合体セグメントA−1と、スルホベタイン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位を含む不飽和単量体由来の重合体セグメントA−2とを有し、重合体セグメントA−1の含有量が0.05質量%以上、75質量%以下であるブロック重合体A、からなる親水化処理剤に関する。
また、本発明は、上記本発明の親水化処理剤と水を含有する親水化処理剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の親水化処理剤を含有する親水化処理剤組成物は親水化性能(以下、本発明の効果ともいう)に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<親水化処理剤>
本発明の親水化処理剤は、特定のブロック重合体Aからなる。
ブロック重合体Aは、疎水性不飽和単量体由来の繰返し単位を含む不飽和単量体由来の重合体セグメントA−1と、スルホベタイン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位を含む不飽和単量体由来の重合体セグメントA−2とを有し、重合体セグメントA−1の含有量が0.05質量%以上、75質量%以下である。
【0010】
[重合体セグメントA−1]
(重合体セグメントA−1の含有量)
ブロック重合体A中の重合体セグメントA−1の含有量は、親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、0.05質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上であり、同様の観点から、75質量%以下であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より好ましくは11質量%以下、より好ましくは8質量%以下、より好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.8質量%以下である。
【0011】
(重合体セグメントA−1の構成)
重合体セグメントA−1は疎水性不飽和単量体由来の繰返し単位を含む。疎水性不飽和単量体は、親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、好ましくは20℃における水100gに対する溶解量が10g以下であり、より好ましくは1g以下であり、さらに好ましくは0.1g以下である。
【0012】
疎水性不飽和単量体由来の繰返し単位は、親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、一般式(1)で表される構成単位が好ましい。
【0013】
【化1】
【0014】
〔式中、
1〜R3:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基
4:炭素数1以上、22以下の炭化水素基
1:O又はNR11であり、R11は水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基
を示す。〕
一般式(1)で表される構成単位は、下記一般式(1’)で表される不飽和単量体(以下、不飽和単量体aともいう)を重合することにより誘導される構成単位であり、一般式(1)及び一般式(1’)中におけるR1、R2、R3、R4及びY1は、すべて同義である。
【0015】
【化2】
【0016】
式(1)及び式(1’)において、不飽和単量体の入手性の観点、単量体の重合性の観点及び親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、R1及びR2は水素原子が好ましい。R3は、同様の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Y1は、同様の観点から、Oが好ましい。R4は、同様の観点から、炭素数1以上、18以下の炭化水素基が好ましく、炭素数1以上、12以下の炭化水素基がより好ましく、炭素数1以上、7以下の炭化水素基がより好ましい。R4の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、ベンジル基が挙げられる。R4としては、炭素数1以上、22以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、ベンジル基が挙げられ、好ましくは炭素数1以上、12以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、ベンジル基であり、より好ましくは炭素数1以上、6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ベンジル基である。
【0017】
不飽和単量体aとしては、具体的に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル及び(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステルや、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0018】
不飽和単量体aは、親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、及び(メタ)アクリル酸ベンジルから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、及び(メタ)アクリル酸n−ブチル、及び(メタ)アクリル酸ベンジルから選ばれる1種又は2種以上である。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、メタクリル又はそれらの両方を意味する。
【0019】
重合体セグメントA中には、本願の効果を損なわない範囲で、不飽和単量体a以外の単量体由来の構成単位を含有してもよい。不飽和単量体a以外の単量体としては、スルホベタイン基を有する不飽和単量体以外の不飽和単量体が好ましく、スチレン等の疎水性不飽和単量体がより好ましい。
【0020】
重合体セグメントA−1を構成する不飽和単量体中の不飽和単量体aの含有量は、親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、よりさらに好ましくは95質量%以上であり、よりさらに好ましくは実質的に100質量%であり、よりさらに好ましくは100質量%である。
なお、実質的に100質量%とは、本発明の重合体セグメントA−1中に不飽和単量体a由来の繰り返し単位以外の構成単位が不可避的に混入する場合を含む意味である。
【0021】
重合体セグメントA−1の重量平均分子量は、親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、好ましくは1500以上、より好ましくは2000以上であり、配合性(配合物の粘度増加の抑制等)の観点から、好ましくは50000以下、より好ましくは10000以下、より好ましくは8000以下、より好ましくは6000以下である。この重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0022】
[重合体セグメントA−2]
(重合体セグメントA−2の構成)
重合体セグメントA−2はスルホベタイン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位を含む。スルホベタイン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位は、親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、一般式(2)で表される構成単位が好ましい。
【0023】
【化3】
【0024】
〔式中、
5〜R7:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基
8:炭素数1以上、4以下のアルキレン基
9、R10:同一又は異なって、炭素数1以上、4以下の炭化水素基
1:O又はNR11であり、R11は水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基
2:水酸基を有してもよい炭素数2以上、4以下のアルキレン基
を示す。〕
【0025】
式(2)において、不飽和単量体の入手性の観点、単量体の重合性の観点及び親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、R5及びR6は水素原子が好ましい。R7は、同様の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。X1は、同様の観点から、Oが好ましい。R8は、同様の観点から、炭素数2又は3のアルキレン基が好ましく、炭素数2のジメチレン基がより好ましい。R9、R10は、同様の観点から、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。X2は、親水化処理剤の親水化性能を高める観点及び4級化反応の容易性の観点から、水酸基を有してもよい炭素数3又は4のアルキレン基が好ましく、プロピレン基、ブチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基がより好ましく、プロピレン基、2−ヒドロキシプロピレン基がより好ましい。
【0026】
重合体セグメントB中には、本願の効果を損なわない範囲で、スルホベタイン基を有する不飽和単量体以外の単量体由来の構成単位を含有してもよい。スルホベタイン基を有する不飽和単量体以外の単量体としては、不飽和単量体a以外の不飽和単量体が好ましく、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、オキシエチレン鎖を有するアクリレート、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド等の親水性不飽和単量体がより好ましい。
【0027】
重合体セグメントA−2中のスルホベタイン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位の含有量は、親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、よりさらに好ましくは95質量%以上であり、よりさらに好ましくは実質的に100質量%であり、よりさらに好ましくは100質量%である。
なお、実質的に100質量%とは、本発明の重合体セグメントA−2中にスルホベタイン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位以外の構成単位が不可避的に混入する場合を含む意味である。
【0028】
[ブロック重合体A]
ブロック重合体Aの重量平均分子量は、親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、好ましくは2500以上、より好ましくは3500以上、より好ましくは6000以上、より好ましくは10000以上、より好ましくは25000以上、より好ましくは50000以上であり、配合性の観点から、好ましくは500000以下、より好ましくは400000以下、より好ましくは300000以下、より好ましくは200000以下、より好ましくは150000以下である。この重量平均分子量は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0029】
ブロック重合体の構造としては、重合体セグメントAを「A」、重合体セグメントBを「B」で表すと、A−B、A−B−A、B−A−Bの構造、又はA−B−A−B−A−B・・・の繰り返し構造が挙げられ、製造容易性の観点から、A−Bのブロック体の構造が好ましい。
【0030】
(ブロック重合体Aの製造方法)
本発明において使用されるブロック重合体Aの製造方法は、特に制限されず、公知の方法により製造することができるが、たとえば、モノマーをリビング重合で重合させ、ブロック重合体とすることができる。リビング重合としてはリビングラジカル重合、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合等が挙げられるが、重合操作の簡便性の観点からリビングラジカル重合が好ましい。
リビングラジカル重合法としては、原子移動ラジカル重合(ATRP)法、ヨウ素移動ラジカル重合法、ニトロキシラジカルを用いる重合(NMP)法、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)法、可逆連鎖移動触媒重合(RTCP)法、可逆的錯体形成媒介重合(RCMP)法等を用いることができ、触媒の入手性、重合制御の観点から、ATRP法、RAFT法、RTCP法、RCMP法が好ましい。
ATRP法については、Chemical Reviews,2001、101、2921−2990に記載されている。RAFT法については、文献Chemical Reviews,2009、109、5402−5436に記載されている。RTCP法については、特許文献WO2010/027093に記載されている。RCMP法については、特許文献WO2011/016166に記載されている。
【0031】
2種類のブロックからなるブロック重合体の場合、例えば、第1のブロックを重合する工程と、第2のブロックを重合する工程とを包含する方法によりブロック重合体を得ることができる。より具体的には例えば、第1のブロックを重合した後、得られた第1のポリマーの存在下に、第2のブロックの重合を行うことにより、ブロック重合体を得ることができる。第1のポリマーは、単離精製した後に、第2のブロックの重合に供することもできるし、第1ポリマーを単離精製せず、第1のポリマーの重合の途中または完結時に、第1の重合に第2のモノマーを添加することにより、ブロックの重合を行うこともできる。単離精製は周知の方法、例えば重合溶液をポリマーの貧溶媒に添加してポリマーを析出させた後、ろ過、乾燥により行うことができる。
【0032】
本発明のブロック重合体Aとしては、下記ブロック重合体A’を4級化する工程を有する製造方法により得られるブロック重合体が挙げられる。
ブロック重合体A’:重合体セグメントA−1と、重合体セグメントA−2の前駆重合体セグメントであってアミノ基を有する重合体セグメントとを有するブロック重合体
【0033】
本発明のブロック重合体の製造法としては、一般式(1)の繰り返し単位を含む重合体セグメントA−1を先に製造し、下記一般式(2−1)の繰り返し単位を含む重合体セグメント(重合体セグメントA−2の前駆重合体セグメント)を製造し、4級化する方法(製造方法(1))と、一般式(2−1)の繰り返し単位を含む重合体セグメント(重合体セグメントA−2の前駆重合体セグメント)を先に製造し、重合体セグメントA−1を製造し、4級化する方法(製造方法(2))が挙げられ、親水化処理剤の親水化性能を向上させる観点から、製造方法(1)が好ましい。
【0034】
【化4】
【0035】
〔式中、
5〜R7:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基
8:炭素数1以上、4以下のアルキレン基
9、R10:同一又は異なって、炭素数1以上、4以下の炭化水素基
1:O又はNR11であり、R11は水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基
を示す。〕
【0036】
製造方法(1)は、具体的には、下記工程1及び工程2を含む製造方法が挙げられる。従って、本発明のブロック重合体Aとしては、前記工程1及び工程2を含む製造方法により得られるブロック重合体が挙げられる。
【0037】
工程1:下記一般式(1’)で表される不飽和単量体を重合、好ましくはリビング重合した後、下記一般式(2’)で表される不飽和単量体を重合、好ましくはリビング重合させてブロック重合体A’を得る工程。
【0038】
【化5】
【0039】
〔式中、
1〜R3:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基
4:炭素数1以上、22以下の炭化水素基
1:O又はNR11であり、R11は水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基
を示す。〕
【0040】
【化6】
【0041】
〔式中、
5〜R7:同一又は異なって、水素原子又は炭素数1もしくは2のアルキル基
8:炭素数1以上、4以下のアルキレン基
9、R10:同一又は異なって、炭素数1以上、4以下の炭化水素基
1:O又はNR11であり、R11は水素原子又は炭素数1以上、4以下の炭化水素基
を示す。〕
【0042】
工程2:ブロック重合体A’と、下記一般式(B1)で表される化合物又は下記一般式(B2)で表される化合物とを反応させて、ブロック重合体Aを得る工程。
【0043】
【化7】
【0044】
Z−X2−SO3M (B2)
(式中、ZはCl又はBr、好ましくはCl、X2は水酸基を有してもよい炭素数2以上、4以下のアルキレン基、好ましくは2−ヒドロキシプロピレン基、MはNa又はKを表す。)
【0045】
式(2’)において、不飽和単量体の入手性の観点、単量体の重合性の観点及び親水化処理剤の親水化性能を高める観点から、R5及びR6は水素原子が好ましい。R7は、同様の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。X1は、同様の観点から、Oが好ましい。R8は、同様の観点から、炭素数2又は3のアルキレン基が好ましく、炭素数2のジメチレン基が好ましい。R9、R10は、同様の観点から、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(2’)で表される不飽和単量体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0046】
工程1では、公知の方法でブロック重合体A’を得ることができる。例えば、前記のリビング重合法を採用できる。
溶媒としては、単量体や重合体を溶解するものであれば、特に制限はない。溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的にはアニソール、エタノール等が挙げられる。
【0047】
工程2は、ブロック重合体A’の側鎖のアミノ基と、一般式(B1)又は(B2)の4級化剤とを反応させてスルホベタイン基に変えてブロック重合体Aを得る工程である。
アミノ基を4級化剤と反応させてスルホベタイン基に変える製造方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、特表2006−514150号公報に記載されている方法が挙げられる。
【0048】
4級化剤としては、反応性の観点から、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン及び3−クロロ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウムから選ばれる1種以上が好ましい。
溶媒としては、ブロック重合体A’を溶解するものであれば、特に制限はない。溶媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。具体的には2,2,2-トリフルオロエタノール等が挙げられる。
【0049】
<親水化処理剤組成物>
本発明の親水化処理剤組成物は、本発明の親水化処理剤及び水を含有する。親水化処理剤は1種又は2種以上を用いることができる。
親水化処理剤組成物中の親水化処理剤の含有量は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、増粘により均一な処理が抑制され、親水化性能が低下するのを防止する観点から、好ましくは5質量%以下、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0050】
[界面活性剤]
本発明の親水化処理剤組成物は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤を用いることにより、親水化処理剤組成物が固体表面に濡れ広がりやすくなり、親水化性能が向上する。また、固体表面に汚れ物質、特に疎水性の高い例えば油性の汚れ物質が付着している場合には、界面活性剤を用いることにより、界面活性剤により疎水性の高い汚れ物質が除去され、固体表面の親水化性能が向上する。
親水化処理剤組成物中の界面活性剤の含有量は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましく0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、ブロック重合体Aの固体表面への吸着が阻害され、親水化性能が低下するのを防止する観点から、好ましくは30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。さらに抑泡の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%未満、さらに好ましくは0.3質量%以下、よりさらに好ましくは0.1質量%以下である。
【0051】
用いられる界面活性剤としては、通常液体洗浄剤に用いられる界面活性剤であれば特に限定はない。界面活性剤としては陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤は、前述の観点から、疎水性部位としてアルキル基又はアルケニル基を有することが好ましく、その炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは炭素数10以上であり、その上限は、好ましくは20以下、より好ましくは16以下である。
【0052】
(陰イオン性界面活性剤)
陰イオン性界面活性剤としては、疎水性部位を有する硫酸エステル塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、リン酸エステル塩、及びアミノ酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
具体的には、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の疎水性部位を有する硫酸エステル塩;スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、アルカンスルホン酸塩、内部オレフィンスルホン酸塩、アシルイセチオネート、アシルメチルタウレート等の疎水性部位を有するスルホン酸塩;炭素数8以上16以下の高級脂肪酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩等の疎水性部位を有するカルボン酸塩;アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等の疎水性部位を有するリン酸エステル塩;アシルグルタミン酸塩、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体等の疎水性部位を有するアミノ酸塩等が挙げられる。
【0053】
これらの陰イオン性界面活性剤の中では、親水化処理剤組成物の親水化性能を向上させる観点から、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(ラウレス−2硫酸ナトリウム)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム(ラウレス−4,5酢酸ナトリウム)等のポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ラウレス−2スルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸アルキルエステル塩、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム(ココイルグルタミン酸ナトリウム)等のアシルグルタミン酸塩、アシルイセチオネート、及びアシルメチルタウレートから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩及び高級脂肪酸塩から選ばれる1種または2種以上がより好ましい。
【0054】
(非イオン性界面活性剤)
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型非イオン性界面活性剤と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
これらの非イオン性界面活性剤の中では、親水化処理剤組成物の親水化性能を向上させる観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、及びアルキルグリコシドから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルキルグルコシドから選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
【0055】
(両性界面活性剤)
両性界面活性剤としては、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、スルホベタイン等のベタイン系界面活性剤、及びアルキルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。
これらの両性界面活性剤の中では、親水化処理剤組成物の親水化性能を向上させる観点から、イミダゾリン系ベタイン、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、及びアルキルヒドロキシスルホベタインから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ラウリン酸アミドプロピル−N,N−ジメチル−酢酸ベタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタインがより好ましい。
【0056】
(陽イオン性界面活性剤)
陽イオン性界面活性剤としては、アミド基、エステル基又はエーテル基で分断されていてもよい炭素数12以上、28以下、好ましくは炭素数16以上、22以下の炭化水素基を有する第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、又は3級アミンの鉱酸又は有機酸の塩が挙げられる。
具体的には、セチルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ベヘニルトリメチルアンモニウム塩、オクダデシロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等の長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩;ステアリルジメチルベンジルアンモニウム塩等の長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジイソテトラデシルジメチルアンモニウム塩等のジ長鎖アルキルジメチルアンモニウム塩;ステアリルジメチルアミン、ベヘニルジメチルアミン、オクタデシロキシプロピルジメチルアミンの酸塩等のモノ長鎖アルキルジメチルアミン塩が挙げられる。
これらの陽イオン性界面活性剤の中では、親水化処理剤組成物の親水化性能を向上させる観点から、長鎖アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩が好ましい。
【0057】
[その他の成分]
本発明の親水化処理剤組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、アジピン酸、セバシン酸、リンゴ酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリp−スチレンスルホン酸等の多価カルボン酸;エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等の溶剤;NaCl等の親水化処理剤の水への溶解性を向上させる塩;トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、尿素等の可溶化剤;粘土鉱物、水溶性高分子化合物等の粘度調整剤(但し、ブロック重合体Aを除く);方解石、珪石、リン酸カルシウム、ゼオライト、炭酸カルシウム、ポリエチレン、ナイロン、ポリスチレン等の水不溶性研磨剤;グリセリン、ソルビトール等の保湿剤;カチオン化セルロース等の感触向上剤(但し、ブロック重合体Aを除く);炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム等のアルカリビルダー;酵素、色素、香料、防腐・防かび剤等を添加することができる。
【0058】
[親水化処理剤組成物の製造]
本発明の親水化処理剤組成物は、ブロック重合体A、水及び必要に応じて前述した界面活性剤や多価有機酸等のその他の成分を加えて、公知の方法により攪拌、混合することにより得ることができる。
親水化処理剤組成物は、固体表面の種類や処理目的に応じて、適宜組成割合を調整することができる。また、濃厚溶液を調製しておき、使用時に希釈して用いることもできる。
【0059】
得られる親水化処理剤組成物の20℃におけるpHは、取扱いの安全性、及び固体表面の損傷防止の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。pH調節剤としては、塩酸、硫酸等の無機酸や、前述の有機酸等の酸剤;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩等の無機アルカリ化合物、アンモニアやその誘導体、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ化合物等のアルカリ剤が挙げられる。また、酸剤とアルカリ剤を組み合わせて緩衝剤系として用いることもできる。
【0060】
<親水化処理方法>
本発明の固体表面の親水化処理方法は、固体表面を本発明の親水化処理剤組成物に接触させる。
ここで「固体表面」の「固体」とは、特に制限はなく、ガラス、陶器、磁器、琺瑯、タイル、セラミックス;アルミニウム、ステンレス、真鍮等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、FRP等の合成樹脂;木綿、絹、羊毛等の天然繊維;ポリエステル、ナイロン、レーヨン等の合成繊維;毛髪、爪、歯等の固体を意味する。
本発明方法を適用しうる好適な固体表面としては、疎水性硬質表面、更にセラミックス、金属、合成樹脂から選ばれる1種又は2種以上の疎水性硬質表面が挙げられる。ここで、疎水性硬質表面とは、水に対する静止接触角が70°以上であることを意味し、親水性硬質表面とは70°未満であることを意味する。なお、静止接触角は、実施例に記載の方法で測定することができる。
また、親水化処理剤組成物は、取扱いの安定性の観点から、水溶液であることが好ましい。
【0061】
固体表面と親水化処理剤組成物の接触方法は、特に限定されない。例えば、次の(i)〜(iii)の方法等が挙げられる。
(i)親水化処理剤組成物に固体を浸漬させる方法
(ii)親水化処理剤組成物を固体表面に噴霧又は塗布する方法
(iii)親水化処理剤組成物で常法に従い固体表面を洗浄する方法
固体表面を親水化処理剤組成物で親水化処理する温度は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点、処理方法の容易性の観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。
前記(i)の方法において、浸漬する時間は、親水化処理剤組成物の親水化性能を高める観点及び経済性の観点から、好ましくは0.5分以上、より好ましくは1分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは50分以下である。
前記(ii)の方法において、親水化処理剤組成物を固体表面に噴霧又は塗布する方法は、硬質表面の広さ(面積)等に応じて適宜選択できる。親水化処理剤組成物を固体表面にスプレー等で噴霧した後、乾燥する方法が好ましい。必要に応じて、噴霧した後、水ですすいでもよい。また、噴霧した後、スポンジ等を用いて薄く塗りのばしてもよい。
固体表面に噴霧又は塗布する親水化処理剤組成物の量は、例えば、ブロック重合体Aの含有量が0.5質量%の親水化処理剤組成物の場合、好ましくは10cm2あたり0.01mL以上0.1mL以下である。
前記(iii)の方法において、ブロック重合体A及び界面活性剤を含有する洗浄剤組成物の形態で使用し、固体表面と接触させることが好ましい。かかる洗浄剤組成物の形態とする場合、取扱いの安全性、及び固体表面の損傷防止の観点から、そのpHは4以上が好ましく、そして、10以下が好ましく、8以下がより好ましい。
界面活性剤としては、前述したものを使用することができる。
【0062】
また、本発明の親水化処理剤組成物により親水化処理された固体表面の水に対する静止接触角が、好ましくは50°以下、より好ましくは40°以下、より好ましくは30°以下、より好ましくは25°以下である。
また、本発明の親水化処理剤組成物により親水化処理された固体表面は、親水化性能を高める観点から、均一に処理されていることが好ましい。表面処理の均一性は、処理後の固体表面を目視で観察することにより判断できる。
【実施例】
【0063】
以下の製造例、実施例及び比較例において、「%」は「質量%」を意味する。各種物性等の測定は以下の方法により行った。
【0064】
(1)重合体セグメントA−1の重量平均分子量
ゲル浸透クロマトグラフィー(ポリスチレン換算)で測定した。
カラム:K-804L(昭和電工(株)製)を2本直列に連結して使用した。
カラム温度:40℃
溶離液:1mmol/Lジメチルラウリルアミン/CHCl3(ジメチルラウリルアミン:ファーミンDM2098:花王(株)製)
流量:1.0ml/分
検出器:示差屈折率計
【0065】
(2)ブロック重合体の重量平均分子量
SLS(静的光散乱法)による分子量測定を行った。重量平均分子量(Mw)は光散乱光度計「DLS−7000」(大塚電子(株)製)を用いて、下記の条件で静的光散乱を測定し、Zimm−plotを作製することで算出した。また、分子量の算出に必要な屈折率増分は、示差屈折率計「DRM3000」(大塚電子(株)製)を用いて測定した。
波長:632.8nm(ヘリウムーネオンレーザー)
散乱角:30°から150°まで10°おきに測定した。
平均温度:25°
溶媒:トリフルオロエタノール
【0066】
(3)ブロック重合体中の重合体セグメントA−1の含有量
前記(1)及び(2)で求めた重合体セグメントA−1の重量平均分子量、ブロック重合体の重量平均分子量を用いて、下記の式より求めた。
ブロック重合体中の重合体セグメントA−1の含有量(%)=重合体セグメントA−1の重量平均分子量/ブロック重合体の重量平均分子量×100
【0067】
製造例1(ポリマーA1の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸メチル(和光純薬工業(株)製)30g、2−ブロモイソ酪酸エチル1.169g(東京化成工業(株)製)、4,4’−ジノニル−2,2’−ジピリジル(シグマアルドリッチ製)3.67g、アニソール45gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)(和光純薬工業(株)製)0.297g、塩化銅(II)(和光純薬工業(株)製)0.201gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。3時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、水200mL、メタノール600mLの混合液を撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル(和光純薬工業(株)製)20g、上記で得られたポリマー固体0.85g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン(シグマアルドリッチ製)0.07g、アニソール8.6gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.028gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。14時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン1Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール(シグマアルドリッチ製) 12gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン(和光純薬工業(株)製)2.4gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながら、ポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーA1の固体を得た。
【0068】
製造例2(ポリマーA2の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸メチル15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル1.46g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル4.6g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.371g、塩化銅(II)0.252gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。2.5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、ヘキサンを撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル5g、上記で得られたポリマー固体0.636g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.11g、アニソール11.67gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.0314gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。8時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン1Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 12gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン2.3gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながら、ポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーA2の固体を得た。
【0069】
製造例3(ポリマーA3の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸メチル15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル1.46g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル4.6g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.371g、塩化銅(II)0.252gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。2.5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、ヘキサンを撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル5g、上記で得られたポリマー固体1.06g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.183g、アニソール11.67gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.0524gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。3時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン1Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー2g、2,2,2-トリフルオロエタノール 8gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン1.5gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながら、ポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーA3の固体を得た。
【0070】
製造例4(ポリマーA4の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸メチル15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル1.46g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル4.6g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.371g、塩化銅(II)0.252gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。2.5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、ヘキサンを撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル5g、上記で得られたポリマー固体2.12g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.37g、アニソール20.0gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.105g、塩化銅(II)0.0285gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。3.8時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン1Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー1.36g、2,2,2-トリフルオロエタノール 5.4gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン0.8gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながら、ポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーA4の固体を得た。
【0071】
製造例5(ポリマーA5の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸メチル15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル1.46g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル4.6g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.371g、塩化銅(II)0.252gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。2.5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、ヘキサンを撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル2g、上記で得られたポリマー固体1.6g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.274g、アニソール8gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.0787g、塩化銅(II)0.0427gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。1.5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン1Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー1.205g、2,2,2-トリフルオロエタノール 4.9gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン0.55gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながら、ポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーA5の固体を得た。
【0072】
製造例6(ポリマーA6の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸メチル15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル1.46g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル4.6g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.371g、塩化銅(II)0.252gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。2.5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、ヘキサンを撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル1.5g、上記で得られたポリマー固体1.6g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.292g、アニソール8.5gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.0787g、塩化銅(II)0.0534gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。2時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン1Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー1.205g、2,2,2-トリフルオロエタノール 4.9gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン0.3gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながら、ポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーA6の固体を得た。
【0073】
製造例7(ポリマーB1の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸n-ブチル(和光純薬工業(株)製)30g、2‐ブロモイソ酪酸エチル0.823g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル2.58g、アニソール45gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.209g、塩化銅(II)0.141gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。6時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、イオン交換水500mL、メタノール1500mLの混合液を撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、デカンテーション、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル30g、上記で得られたポリマー固体2.83g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.146g、アニソール30gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.0629gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。7.5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン2Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 12gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン2.2gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながらポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーB1の固体を得た。
【0074】
製造例8(ポリマーB2の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸n-ブチル15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル1.03g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル3.23g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.261g、塩化銅(II)0.177gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。4時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、イオン交換水500mL、メタノール1500mLの混合液を撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、デカンテーション、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル30g、上記で得られたポリマー固体0.174g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.0293g、アニソール12.9gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.0126gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。27時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン2Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 27gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン2.6gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながらポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーB2の固体を得た。
【0075】
製造例9(ポリマーB3の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸n-ブチル15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル1.03g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル3.23g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.261g、塩化銅(II)0.177gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。4時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、イオン交換水500mL、メタノール1500mLの混合液を撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、デカンテーション、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル30g、上記で得られたポリマー固体1.73g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.293g、アニソール70gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.126gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン2Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 12gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン2.5gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながらポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーB3の固体を得た。
【0076】
製造例10(ポリマーB4の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸n-ブチル15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル1.03g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル3.23g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.261g、塩化銅(II)0.177gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。4時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、イオン交換水500mL、メタノール1500mLの混合液を撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、デカンテーション、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル15g、上記で得られたポリマー固体1.74g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.293g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.063gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。2.5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン1Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 12gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン2.3gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながらポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーB4の固体を得た。
【0077】
製造例11(ポリマーB5の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸n-ブチル15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル1.03g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル3.23g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.261g、塩化銅(II)0.177gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。4時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、イオン交換水500mL、メタノール1500mLの混合液を撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、デカンテーション、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル10g、上記で得られたポリマー固体2.32g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.39g、アニソール40gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.084gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。2.5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン1Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 12gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン2.0gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながらポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーB5の固体を得た。
【0078】
製造例12(ポリマーB6の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸n-ブチル5.0g、ヨウ素(I2)(和光純薬工業(株)製)0.45g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製)0.58g、シクロヘキサジエン(和光純薬工業(株)製)0.035g、エタノール5.0g、スターラーチップを入れ、三方コックと還流管を取り付けた。15分間窒素バブリングを行なった後、80℃に加熱しメタクリル酸n-ブチルの重合を開始した。次に別のナスフラスコに、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル49.8g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル0.072g、エタノール49.8gを入れ、15分間窒素バブリングを行った。メタクリル酸n-ブチルの重合を開始してから4時間後に、上記のメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル溶液をメタクリル酸n-ブチル重合溶液に添加した。更に5時間反応させた後、重合溶液を氷冷し重合を終了した。ヘキサン5Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 12gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン2.5gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながらポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーB6の固体を得た。
【0079】
製造例13(ポリマーC1の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸ラウリル(和光純薬工業(株)製)15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル0.575g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル1.81g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.146g、塩化銅(II)0.099gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。8時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、メタノール1500mLを撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、デカンテーション、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル10g、上記で得られたポリマー固体0.539g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.0488g、アニソール10gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.021gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。5.3時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、イオン交換水1Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 12gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン2.7gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながらポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーC1の固体を得た。
【0080】
製造例14(ポリマーD1の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸ベンジル(和光純薬工業(株)製)15g、2‐ブロモイソ酪酸エチル0.83g、4,4’‐ジノニル‐2,2’‐ジピリジル2.61g、アニソール35gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.211g、塩化銅(II)0.143gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、62℃に加熱し重合を行った。6時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、イオン交換水500mL、メタノール1500mLの混合液を撹拌しながら重合溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。次にナスフラスコにメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル30g、上記で得られたポリマー固体2.15g、1,1,4,7,10,10-ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.293g、アニソール70gを入れ、三方コックで栓をし、15分間窒素バブリングを行ない、モノマー溶液を調製した。次に、別のナスフラスコにスターラーチップ、塩化銅(I)0.126gを入れ、三方コックで栓をして窒素置換した後、モノマー溶液を添加した。10分間窒素バブリングを行った後、70℃に加熱し重合を行った。5時間反応させた後、重合溶液を空気にさらしながら氷冷し、重合を終了した。次いで、活性アルミナカラム処理により銅錯体を除去後、ヘキサン2Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 12gを入れポリマーを溶解させた。三方コックで栓をして50℃に加熱しながら1,3プロパンスルトン2.5gを滴下した。5時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながらポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーD1の固体を得た。
【0081】
製造例15(ポリマーE1の製造)
(工程1)
ナスフラスコにメタクリル酸n-ブチル5.0g、ヨウ素(I2)0.45g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)0.58g、シクロヘキサジエン0.035g、エタノール5.0g、スターラーチップを入れ、三方コックと還流管を取り付けた。15分間窒素バブリングを行なった後、80℃に加熱しメタクリル酸n-ブチルの重合を開始した。次に別のナスフラスコに、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル49.8g、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル0.072g、エタノール49.8gを入れ、15分間窒素バブリングを行った。メタクリル酸n-ブチルの重合を開始してから4時間後に、上記のメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル溶液をメタクリル酸n-ブチル重合溶液に添加した。更に5時間反応させた後、重合溶液を氷冷し重合を終了した。ヘキサン5Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマー固体を得た。
(工程2)
ナスフラスコに得られたポリマー3g、2,2,2-トリフルオロエタノール 12g、イオン交換水6g、3-クロロ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(シグマアルドリッチ製)4.2gを入れた。三方コックで栓をして80℃に加熱した。24時間反応させた後冷却し、メタノール500mLを撹拌しながらポリマー溶液を滴下してポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーE1の固体を得た。
【0082】
製造例16(ポリマーF1の製造)
冷却還流管、滴下ロート、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、ジメチルアミノエチルメタクリレート49g、t-ブチルメタクリレート(和光純薬工業(株)製)1.9g、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(和光純薬工業(株)製)0.31g、エタノール100gを仕込み、窒素を吹き込みながら80℃で4時間反応を行った。得られた重合反応液にエタノール/水(=50/50質量比)70gに3-クロロ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸ナトリウム67.5gを溶解した液を加えて、十分に撹拌した後、80℃に加熱した。24時間反応させた後冷却し、ろ過して沈殿物を除き、乾燥によりポリマーF1の固体を得た。
【0083】
製造例17(ポリマーF2の製造)
冷却還流管、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、N,N-ジメチル-N-(3-スルホナトプロピル)-2-(メタクリロイルオキシ)エタン-1-アミニウム(シグマアルドリッチ製)28.39g、メタクリル酸n-ブチル1.61g、トリフルオロエタノール67.48gを入れ、均一に混合し窒素雰囲気下で30分間攪拌した。この溶液を約70℃まで昇温した後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業(株)製)0.28g、トリフルオロエタノール2.52gを加え、6時間保持して重合を行った。次いで、メタノール4Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーF2の固体を得た。
【0084】
製造例18(ポリマーF3の製造)
冷却還流管、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、N,N−ジメチル−N−(3−スルホナトプロピル)−2−(メタクリロイルオキシ)エタン−1−アミニウム24.63g、メタクリル酸n−ブチル5.37g、トリフルオロエタノール67.18gを入れ、均一に混合し窒素雰囲気下で30分間攪拌した。この溶液を約70℃まで昇温した後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.31g、トリフルオロエタノール2.82gを加え、6時間保持して重合を行った。次いで、メタノール4Lを撹拌しながらポリマー溶液を滴下し、ポリマーを析出させ、ろ過、乾燥によりポリマーF3の固体を得た。
【0085】
得られたポリマーA1〜A6、ポリマーB1〜B6、ポリマーC1、ポリマーD1、ポリマーE1及びポリマーF1〜F3の重合体セグメントA−1の重量平均分子量及び含有量、並びにブロック重合体Aの重量平均分子量を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
*1 ポリマー中の一般式(1)で表される構成単位の含有量
【0088】
実施例1〜15、比較例1〜3
上記製造例で得られたポリマーを用いて、表2の組成になるように親水化処理剤組成物を調製し、実施例1〜15及び比較例2、3の親水化処理剤組成物を得た。比較例1は水以外何も配合しなかった。なお、水はイオン交換水を用いた。
実施例1〜15の親水化処理剤組成物、比較例1の水、比較例2及び3の親水化処理剤組成物を用いて、以下の評価を用いた。
【0089】
[試験方法(親水表面化の評価)]
予め清浄にしたテストピース「塩化ビニルテストピース」((株)エンジニアリングテストサービス製、材質:硬質ポリ塩化ビニル、25mm×75mm)を水平に固定し、親水化処理剤組成物1mLを滴下して5分間静置した後、イオン交換水約200mLで軽くすすいで風乾した。
このテストピースの処理部分表面のイオン交換水に対する静止接触角を、自動接触角計「DM−500」(協和界面科学株式会社製)を用いて、添加量10μL、添加6秒後の条件にて測定した。
測定は、2枚のテストピースを用いて、1枚のテストピース当たり5回行い、10回の測定値の平均値を用いた。
接触角が小さいほど、親水化性能に優れる。結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
*1 ポリマー中の一般式(1)で表される構成単位の含有量
表中、単量体の記号は以下の意味である(以下同様)。
・SBMA:N−(3−スルホプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N、N−ジメチルアンモニウムベタイン
・SB(OH)MA:N−(3−スルホ−2−ヒドロキシプロピル)−N−メタクリロキシエチル−N、N−ジメチルアンモニウムベタイン
・MMA:メタクリル酸メチル
・BMA:メタクリル酸n-ブチル
・LMA:メタクリル酸ラウリル
・BzMA:メタクリル酸ベンジル
・tBMA:t-ブチルメタクリレート
【0092】
表2から明らかなように、実施例1〜15の親水化処理剤組成物は、比較例2及び3の親水化処理剤組成物に比べて、接触角を下げることができ、表面の親水化性能に優れている。
【0093】
実施例16〜27、比較例4〜6
上記製造例で得られたポリマーを用いて、表3の組成になるように親水化処理剤組成物を調製し、実施例16〜27、比較例4〜6の親水化処理剤組成物を得た。
親水化処理剤組成物の調製に用いた界面活性剤、溶剤は、以下のものである。
界面活性剤:炭素数12〜16の直鎖アルキル基、エチレンオキサイド平均付加モル数4.0のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩
溶剤:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
【0094】
実施例16〜27、比較例4〜6の親水化処理剤組成物を用いて、実施例1と同様に親水表面化の試験を行った。結果を表3に示す。
【0095】
【表3】
【0096】
*1 ポリマー中の一般式(1)で表される構成単位の含有量
【0097】
表3から明らかなように、実施例16〜27の親水化処理剤組成物は、比較例4〜6の親水化処理剤組成物に比べて、接触角を下げることができ、表面の親水化性能に優れている。
【0098】
実施例28、比較例7、8
ポリマーB3、ポリマーF3を用いて、表4の組成になるように親水化処理剤組成物を調製し、実施例28及び比較例8の親水化処理剤組成物を得た。
親水化処理剤組成物の調製に用いた界面活性剤、溶剤は、実施例16と同じものである。
【0099】
実施例28、比較例7及び比較例8の親水化処理剤を用いて、ガラス基板使用時のみポリマー溶液を2mL滴下した以外は、上記と同様に親水表面化の試験を行った。 試験に用いた基板は以下のとおりである。
ステンレス:「ステンレステストピース」((株)エンジニアリングテストサービス製、材質:JIS G 4305 SUS304、25mm×75mm)
ガラス:「ガラステストピース」(あけぼの商会、材質:ガラス板(四辺角削り加工)、60mm×60mm)
PMMA:「PMMAテストピース」((株)エンジニアリングテストサービス製、材質:ポリメタクリル酸メチル、25mm×75mm)
PET:「PETテストピース」((株)エンジニアリングテストサービス製、材質:ポリエチレンテレフタレート、25mm×75mm)
FRP:「FRPテストピース」((株)エンジニアリングテストサービス製、材質:繊維強化プラスチック、25mm×75mm)
塩化ビニル:「塩化ビニルテストピース」((株)エンジニアリングテストサービス製、材質:硬質ポリ塩化ビニル、25mm×75mm)
結果を表4に示す。
【0100】
【表4】
【0101】
*1 ポリマー中の一般式(1)で表される構成単位の含有量
【0102】
表4から明らかなように、実施例28の親水化処理剤組成物は、比較例7及び比較例8の親水化処理剤組成物に比べて、接触角を下げることができ、親水化性能に優れている。