【文献】
芦沢武男,フェロキシル試験についての考察,金属表面技術,日本,1958年,Vol.9/No.10,PP.383-387
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
炭素材料含有スラリー中の鉄分を検出する方法であって、炭素材料含有スラリーを基板に塗布乾燥した試験片の炭素材含有物塗布面に、呈色液を含ませたろ紙で覆い、板で挟むことを特徴とする検出方法。
炭素材料含有スラリー中の鉄分を検出する方法であって、炭素材料含有スラリーを基板に塗布乾燥した試験片から、電気化学的に鉄分を溶媒に溶解し、その溶媒を呈色液と混合することを特徴とする検出方法。
炭素材料含有スラリー中の鉄分を検出する方法であって、炭素材料含有スラリーと鉄分のイオン化剤とを混合し、遠心分離した後、上澄み溶液と呈色液を混合することを特徴とする検出方法。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が大きく、寿命が長いなどの特徴を有しているため、ビデオカメラ等の家電製品や、ノート型パソコン、携帯電話機等の携帯型電子機器、パワーツールなどの電動工具などの電源として広く用いられており、最近では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などに搭載される大型電池へも応用されている。
リチウムイオン電池は、充電時には正極からリチウムがイオンとして溶け出して負極へ移動して吸蔵され、放電時には逆に負極から正極へリチウムイオンが戻る構造の二次電池であり、その高いエネルギー密度は正極活物質の電位に起因することが知られている。
【0003】
この種のリチウムイオン電池は、正極、負極、及びこの両電極に挟まれたイオン伝導層から構成され、当該イオン伝導層には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質フィルムからなるセパレータに非水系の電解液を満たしたものが用いられている。
セパレータは、電池の中で正極と負極を隔離し、かつ電解液を保持して正極と負極との間のイオン伝導性を確保する役割を果たす部材である。例えばリチウムイオン電池のセパレータとしては、空孔内に電解液を保持して電極間のリチウムイオン伝導の通路を形成し得る、電気化学的に不活性な多孔質体(多孔質膜を含む)が使用されており、一般的にはポリエチレンやポリプロピレンなどからなる微多孔性ポリオレフィンフィルムが使用されている。
【0004】
負極を構成する負極活物質には、リチウムをイオン状態で可逆的にインターカレートする材料が用いられる。負極活物質としてはカーボン材料、酸化ケイ素系化合物、チタン酸リチウム、或いはスズ合金、或いはこれら負極材料の混合物を主体とするものが多用されており、例えば黒鉛質炭素材料、ピッチコークス、繊維状カーボンなどが知られている。
正極を構成する正極活物質としては、LiCoO2、LiNixMnyCo1−x−yO2、LiNiO2、などの層状岩塩型リチウム金属酸化物のほか、LiMn2O4、LiNi0.5Mn0.5O4などのマンガン系のスピネル型リチウム金属酸化物、LiFePO4などのオリビン型が知られている。
【0005】
ところで、リチウムイオン電池は、充放電回数が進むに連れ、負極においてデンドライトが成長して電極間で短絡を起すという課題が指摘されている。このようなデンドライトの成長には様々な原因が考えられるが、正極活物質に含まれる鉄などの異物が寄与していると言われている。すなわち、正極材料中に混入している鉄やステンレス鋼などの異物が充放電を繰り返すうちに溶出し、負極等に析出してデンドライトを生成すると言われている。鉄は、様々な原因により正極材料中に混入することが考えられる。特に、カーボンブラック等の炭素材料の製造は、鉄やステンレス鋼などの金属からなる燃焼炉が用いられるので、炭素材料の製造過程においてすでに、鉄分が混入することを避けることはほとんど不可能に近いと考えられる。
【0006】
そこで従来、材料から鉄等を除去すべく、材料を、所定の強度の磁場を通過させて鉄分の除去を図る方法が提案されている(特許文献1、特許文献2参照)。
また、炭素材料や炭素材料を含有するスラリー中の鉄等の異物の管理には、磁場により除去された異物の量の測定や工程中の半製品を硝酸や塩酸、王水等により分解処理し蛍光X線分析装置や原子吸光分析装置や誘導結合プラズマ発光分光分析装置により鉄分を定量することが一般的である(原子吸光分析装置や誘導結合プラズマ発光分光検出装置による分析方法について特許文献3、蛍光X線分析装置による分析方法について特許文献4、特許文献5参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように、リチウムイオン電池に使用する材料中への鉄等の異物混入防止のための対策は採られているが、工程管理には依然として蛍光X線分析装置や原子吸光分析装置や誘導結合プラズマ発光分光分析装置等の検出機器以外の有効な方法は提案されていない。ここで、蛍光X線分析装置や原子吸光分析装置や誘導結合プラズマ発光分光分析装置による鉄分の測定にはまず、サンプルを酸溶解やアルカリ融解する必要があり、この処理に多くの時間がかかるため、工程検査としての採用には問題がある。また、蛍光X線分析装置や原子吸光分析装置や誘導結合プラズマ発光分光分析装置の分析装置自体非常が高価なことから、これらの分析方法は費用対効果を考えても工程検査としての採用は困難である。
【0010】
本発明は、蛍光X線分析装置や原子吸光分析装置や誘導結合プラズマ発光分光分析装置による分析方法に代わり、工程検査として導入できるように、鉄分を早く、安く検出できる検出方法を確立することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、呈色反応を利用した工程管理を行うことを試み、その結果、意外にも、簡易な方法で、鋭敏な検出が可能となることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、
(化1)
反応式:Fe2++K3〔Fe(CN)6〕=KFeIIIFeII(CN)6↓+3K+
の反応により、フェリシアン化カリウムが2価の鉄イオンと反応して、青色沈殿ができることを応用した発明であり、炭素材混合物中の鉄分を、薬品や電気化学的な方法を用いて、鉄分を鉄イオンにしたのちに、呈色液を用いて鉄分を検出する検出方法である。またこのような本発明の検出方法を用いて管理されたリチウムイオン電池の製造方法であり、デントライトの成長を抑えたリチウムイオン電池を効率的に得ることができるものである。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1)炭素材料中の鉄分を検出する方法であって、呈色液を含ませたろ紙上に炭素材料を乗せ、板で挟むことを特徴とする検出方法、
(2)炭素材料含有スラリー中の鉄分を検出する方法であって、炭素材料含有スラリーを基板に塗布乾燥した試験片の炭素材料含有物塗布面に、呈色液を含ませたろ紙で覆い、板で挟むことを特徴とする検出方法、
(3)炭素材料含有スラリー中の鉄分を検出する方法であって、炭素材料含有スラリーを基板に塗布乾燥した試験片を、電気化学的に鉄分を溶媒に溶解し、その溶媒を呈色液と混合することを特徴とする検出方法、
(4)炭素材料含有スラリー中の鉄分を検出する方法であって、炭素材料含有スラリーと鉄分のイオン化剤を混合し、遠心分離した後、上澄み溶液と呈色液を混合することを特徴とする検出方法、
(5)上記(1)から(4)のいずれかの検出方法であって、呈色液が、(i)鉄分のイオン化剤と、(ii)フェリシアン化カリウム及び/又はフェロシアン化カリウム、とを含む溶液であることを特徴とする検出方法、
(6)上記(1)から(5)のいずれかの検出方法を用いて鉄分含有量を管理する工程を含む炭素材料含有スラリーの製造方法、
(7)炭素材料含有塗布膜中の鉄分を検出する方法であって、呈色液を含ませたろ紙を炭素材料含有塗布膜に接触させ、板で挟むことを特徴とする検出方法、
(8)上記(7)の検出方法を用いて鉄分含有量を管理する工程を含むリチウムイオン電池の製造方法、
にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、炭素材料中の鉄分の検出が簡易かつ鋭敏に行うことが可能となり、炭素材料の製造や炭素材料を用いた電池の製造の工程管理に容易に導入することが可能であり、ひいてはデンドライトの生成の抑えられた電池の製造を効率的に行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体的に説明する。
〔炭素材料〕
本発明の対象となる炭素材料は特に限定されない。
例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブ、カーボン繊維等の炭素材料が挙げられる。粉末、粒状、針状その他、形状は問わない。
【0016】
〔炭素材料含有スラリー〕
少なくとも炭素材料と溶媒を含む液状のものである。その他、活物質、バインダー、分散剤、添加剤を含んでいても問題ない。例えば、前記の特許文献1や特許文献2に記載のものも用いることができる。
【0017】
〔本発明の検出方法〕
本発明は、(i)炭素材料を検出する方法、(ii)炭素材料含有スラリーを検出する方法、(iii)炭素材料含有塗布膜を検出する方法、を提供するものである。(i)には以下の「ろ紙法1」、(ii)には以下の「ろ紙法2」又は「遠心法」、(iii)には以下の「ろ紙法2」又は「電気化学的溶解法」を用いことができる。
いずれの方法においても、鉄分のイオン化剤を用いて鉄分のイオン化溶液を作り、これとフェリシアン化カリウムもしくはフェロシアン化カリウムのうち1つ以上とを含む液を、呈色液として用い、この呈色液を炭素材料と接触させて、炭素材料中の鉄分を検出する。
【0018】
〔鉄分のイオン化剤〕
鉄分のイオン化剤は鉄分をイオン化させる材料であれば特に限定されないが、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩酸が適している。
【0019】
〔鉄分のイオン化剤溶液〕
鉄分のイオン化剤を含む溶液である。
以下に鉄分のイオン化溶液の一例を示す。
ガラス瓶にイオン交換水97重量%に塩化カリウム3重量%を配合し密栓しタッチミキサーで充分攪拌し未溶解物がないことを確認し、鉄分のイオン化剤溶液としたもの。
【0020】
〔呈色液〕
鉄分のイオン化剤とフェリシアン化カリウム、もしくはフェロシアン化カリウムを含む溶液である。
以下に、呈色液の一例を示す。
ガラス瓶にイオン交換水95重量%にフェリシアン化カリウム2重量%と塩化カリウム3重量%を配合し密栓しタッチミキサーで充分攪拌し未溶解物がないことを確認し、呈色液としたもの。
【0021】
〔使用した試薬〕
後述する実施例では、以下の試薬を使用した。
フェリシアン化カリウム K3〔Fe(CN)6〕 試薬特級 ナカライテスク
塩化カリウム KCl 試薬特級 ナカライテスク
【0022】
〔ろ紙法1〕
ガラス板上に、呈色液を含ませたろ紙を気泡が入らないように密着させ、そのろ紙の上に適量の炭素材を散布し、その上からガラス板で挟み、その時にろ紙が青色に変色することを確認することで鉄分の有無を検出する検出方法である。
この時、ガラス板を使用しているのはろ紙の変色が挟んだ状態で確認できるために使用しているが、板に鉄分が含まれていない板であればガラス板に限定されない。
呈色液は鉄分のイオン化剤は鉄分をイオン化するものであれば特に限定されるものではないが、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩酸が特に適している。
【0023】
〔ろ紙法2〕
ガラス板上に、炭素材含有スラリーを塗布乾燥し、炭素材含有の塗布膜を形成する。この時、塗布膜の形成が困難な場合はバインダー成分を混合し、塗布膜を形成させても良い。この塗布膜上にろ紙を気泡が入らないように密着させ、さらにその上からガラス板で挟み、その時にろ紙が青色に変色することを確認することで鉄分の有無を検出する検出方法である。
【0024】
〔電気化学的溶解法〕
アルミ箔上に炭素材含有スラリーを塗布乾燥し、炭素材含有の塗布膜を形成する。炭素材含有の塗布膜を作用極にし、対極を白金電極、参照極を銀、リチウムイオン電池用電解液で電気化学セルを組み立て、電気化学セルに電流を流すことで、炭素材含有の塗膜中に含まれる鉄分を溶出させる。その後リチウムイオン電池用電解液を取り出し、呈色液と混合し、混合液が青色に変色することを確認することで鉄分の有無を検出する検出方法である。
リチウムイオン電池用電解液はリチウムイオン電池に使用できる電解液であれば特に限定されない。
呈色液はすでに鉄イオンとなっているため特に鉄分のイオン化剤は必要ないが、あっても支障はない。
電流の流し方は鉄分を溶媒に溶解できれば特に限定されない。
対極を白金電極、参照極を銀としているが、リチウムイオン電池に近い条件とするならば対極及び参照極を金属リチウムとする。
【0025】
〔遠心法〕
炭素含有スラリーと鉄分のイオン化剤を充分混合し、遠心分離機により、溶媒と炭素材料含有物を分離し、溶媒と呈色液を混合しその混合液が青色に変色することを確認することで鉄分の有無を検出する検出方法である。
【0026】
〔検出感度〕
後述する実施例で明らかなように、1ppmの鉄イオンを含む塩化第2鉄の溶液2gに呈色液1gを混合した時に、イオン交換水2gに呈色液1gを混合した参照溶液と比較することで、青色に変色していることが確認された。1ppmの鉄イオンの感度が確認された。
これに対し、ICPやXPSでは検出感度は1ppmであるので、意外にも、ICPやXPSと比較して、同等であり、低コストで短時間に鉄分の確認ができることが判明した。
【0027】
〔本発明の方法を利用したリチウムイオン電池の製造工程管理方法〕
本発明の検出方法を利用して、炭素材料含有スラリーを製造し、あるいはリチウムイオン電池を製造する方法は、特に限定されず、以上説明した、炭素材料中の鉄分を検出する方法、炭素材料含有スラリー中の鉄分を検出する方法、のいずれか1つ以上を用いて、鉄分含有量を管理する工程を含む、炭素材料含有スラリーや、これを用いたリチウムイオン電池を製造することができる。例えば、図−1に示すように、炭素材料にろ紙法1を適用したり、炭素材料含有スラリーにろ紙法2を適用したり、炭素材料スラリーを用いて作成した電極板に、ろ紙法2や電気化学的溶解法を適用することが、好適である。これらの1つ又は2つ以上を採用してもよい。
【0028】
〔炭素材料含有スラリー作製〕
リチウムイオン電池の製造に利用する場合の1例を挙げるが、目的とするリチウムイオン電池の炭素材料含有スラリーが得られれば、途中の工程は限定されない。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
【実施例1】
【0030】
炭素材料(「デンカブラック粉状」(商品名。電気化学工業(株)製カーボンブラック))1gに鉄粉(ナカライテスク(株)製)0.1gを充分混合したものを「ろ紙法1」用サンプルとし、ガラス板(15cm×15cm)上に、呈色液を含ませたろ紙(5C)を気泡が入らないように密着させ、そのろ紙上に1gのろ紙法1用サンプルを散布し、その上からガラス板(15cm×15cm)で挟んでろ紙の青色への変色の有無を確認した。
より詳細には以下の操作を行った。
・炭素材料1gに鉄粉0.1gをポリエチレン袋に入れ密封する。
・炭素材料と鉄粉が入ったポリエチレン袋を良く振る。⇒ろ紙法1用サンプル
・ガラス板(15cm×15cm)上にろ紙をのせる。
・ろ紙上を呈色液でぬらす。
・ろ紙上にろ紙法1用サンプルを散布する。
・その上からガラス板をのせはさむ。
・ろ紙の青色への変色の有無を確認する。
【実施例2】
【0031】
炭素材料(「アセチレンブラック粉状」(商品名。電気化学工業(株)製)アセチレンブラック)1gと鉄粉(ナカライテスク(株)製)0.1gと溶媒(N−メチル−2−ピロリドン 三菱化学(株)製)14gとPVDF溶液(「KFポリマー#7208」(商品名。クレハ(株)製) )0.5gを「あわとり練太郎」(商品名。株式会社シンキー製、自転・公転ミキサー)」で5分撹拌し、ろ紙法2用サンプルとした。「ろ紙法2」用サンプルをPETフィルム上にアプリケーター10milで塗布し、温風乾燥機(「ST−120」商品名。エスペック社製)100℃で20分間乾燥し、塗布膜を形成した。この塗布膜上に呈色液を含ませたろ紙を気泡が入らないように密着させ、さらにその上からガラス板で挟んでろ紙の青色への変色の有無を確認した。
【実施例3】
【0032】
炭素材料(「アセチレンブラック粉状」(商品名、電気化学工業(株)製アセチレンブラック))20gと鉄粉(ナカライテスク(株)製)2gと分散剤(「PVP K−15」商品名、ISP社製)2gと溶媒(N−メチル−2−ピロリドン 三菱化学(株)製)76gと0.5mmジルコニアビーズ(「YTZ」商品名、ニッカトー社製)を用い分散機(ペイントシェーカー 浅田鉄工社製)で2時間分散し、分散液を作製した。作製した分散液5gに、PVDF溶液(KFポリマー#7208 クレハ製)5gを「あわとり練太郎」(商品名。株式会社シンキー製、自転・公転ミキサー)で撹拌し、「ろ紙法2」用サンプルとした。「ろ紙法2」用サンプルをガラス板上にスピンコーター1000rpm×10秒で塗布した。温風乾燥機で100℃、20分で乾燥し、塗布膜を形成する。この塗布膜上にろ紙を気泡が入らないように密着させ、さらにその上からガラス板で挟んでろ紙の青色への変色の有無を確認した。
【実施例4】
【0033】
1cm×1cmの大きさの旗型アルミ箔上に、炭素材料含有スラリーを塗布乾燥し炭素材含有の塗布膜を形成した。炭素材料含有の塗布膜を作用極にし、対極を白金電極、参照極を銀、リチウムイオン電池用電解液(1M LiPF6 (EC:DEC=1:1)キシダ化学社製)10gで電気化学セルを組み立て、電気化学セルに通電した。試験管にリチウムイオン電池用電解液2gを取り出し、呈色液1gと混合し、混合液の青色への変色の有無を確認した。
通電装置は、POTENTIOSTAT/GALVANOSTAT(HA−151 北斗電工社製)を用いた。電気化学セルの概略は、図−12に示す。電極は、概略を図−11に示す旗型電極である。通電条件は、1mA/s×30分である。
炭素材料含有スラリーの製造、塗布膜の製造を含む詳細は、以下の通りである。
・炭素材料20g+鉄粉2g+分散剤2g+溶媒76g+0.5mmジルコニアビーズ300gをポリ容器に入れる。
・分散機(ペイントシェーカー)で2時間分散する。⇒炭素含有スラリー(1)
・活物質96g+PVDF溶液10g+炭素含有スラリー(1)10gを練太郎で5分攪拌する。⇒炭素材料含有スラリー(2)
・炭素材料含有スラリー(2)を旗型アルミ箔上にディッピング法で塗布する。
・塗布旗型アルミ箔を温風乾燥機で乾燥条件100℃×20分で乾燥させる。⇒電気化学的溶解法用サンプル
・電気化学セルを組み立てる。
作用極:電気化学的溶解法用サンプル、対極:白金、参照極:銀
リチウムイオン電池用電解液(1M LiPF6 (EC:DEC=1:1)キシダ化学社製)10g
・電気化学セルに通電する。
通電装置:POTENTIOSTAT/GALVANOSTAT(HA−151 北斗電工社製)
通電条件:1mA/s×30分
・試験管にリチウムイオン電池用電解液2gと呈色液1gと混合する。
・混合液の青色への変色の有無を確認する。
【実施例5】
【0034】
通電装置、通電条件を以下の通りとした以外は実施例4と同様にして行った。
通電装置:POTENTIOSTAT/GALVANOSTAT(VERSASTAT4 東陽テクニカ社製)
通電条件:10mV/s×3サイクル 0V〜1.5V
炭素材料含有スラリーの製造、塗布膜の製造を含む詳細は、以下の通りである。
・炭素材料20g+鉄粉2g+分散剤2g+溶媒76g+0.5mmジルコニアビーズ300gをポリ容器に入れる。
・分散機(ペイントシェーカー)で2時間分散する。⇒炭素材料含有スラリー(1)
・活物質96g+PVDF溶液10g+炭素材料含有スラリー(1)10gを練太郎で5分攪拌する。⇒炭素材料含有スラリー(2)
・炭素材料含有スラリー(2)を旗型アルミ箔上にディッピング法で塗布する。
・塗布旗型アルミ箔を温風乾燥機で乾燥条件100℃×20分で乾燥させる。⇒電気化学的溶解法用サンプル
・電気化学セルを組み立てる。
作用極:電気化学的溶解法用サンプル、対極:白金、参照極:銀
リチウムイオン電池用電解液(1M LiPF6 (EC:DEC=1:1)キシダ化学社製)10g
・電気化学セルに通電する。
通電装置:POTENTIOSTAT/GALVANOSTAT(VERSASTAT4 東陽テクニカ社製)
通電条件:10mV/s×3サイクル 0V〜1.5V
・試験管にリチウムイオン電池用電解液2gと呈色液1gと混合する。
・混合液の青色への変色の有無を確認する。
【実施例6】
【0035】
炭素含有スラリー40gと鉄粉0.4g鉄分のイオン化剤溶液10gを「あわとり練太郎」(型番AR−100、株式会社シンキー社製)で混合し、その得られた混合液10gを遠心分離機(トミー精工社製)で溶媒と沈殿物に分離した。分離した溶媒2gと呈色液1gを混合し、混合液の青色への変色の有無を確認した。
より具体的には以下のように行った。
・炭素含有スラリー40g+鉄粉0.4g+0.5規定塩酸20gを練太郎(AR−100)で1分攪拌する。
・混合液を遠心分離器(GRX−220 トミー精工社製)10000rpm×5分で遠心分離する。
・上澄みをメンブレンフィルター(PTFEタイプ 孔径1.00μm)でろ過する。
・ろ液2gと呈色液1gを混合する。
・混合液の青色への変色の有無を確認する。
【0036】
ガラス板(15cm×15cm)上に、呈色液を含ませたろ紙(5C)を気泡が入らないように密着させ、その上からガラス板(15cm×15cm)で挟んでろ紙の青色への変色の有無を確認した。
【0037】
リチウムイオン電池用電解液(1M LiPF6 (EC:DEC=1:1)キシダ化学社製)2gと呈色液1gと混合し、混合液の青色への変色の有無を確認した。
【0038】
0.5規定塩酸2gと呈色液1gを混合し、混合液の青色への変色の有無を確認した。
【0039】
〔実施例1〜6と比較例1〜3の結果〕
呈色の有無を、表−1に示す。本発明の方法により、簡易に炭素材料中の鉄分が検出できることがわかった。
【0041】
図−3〜5に、実施例1〜3での「ろ紙法1」と「ろ紙法2」により得られた、青変した部分のあるろ紙の写真を示す。いずれも、炭素材料中に鉄分が含まれていることにより、青変し、検出可能であることがわかった。
図−6及び7に、実施例4及び5での電気化学的溶解法による結果を示す。炭素材料中の鉄分により、青変しており、検出可能であることがわかった。
図−8に、比較例1の結果を示す。青変部分はなく、実施例1〜3の「ろ紙法」の結果の青変が、炭素材料由来であることがわかり、この方法により炭素材料中の鉄分の検出ができることがわかった。
図−9に、比較例2の結果を示す。青変部分はなく、実施例4及び5の青変が、炭素材料由来であり、この方法により炭素材料中の鉄分の検出ができることがわかった。
【0042】
〔実施例6と比較例3の結果〕
実施例6と比較例3の結果を図−10に示す。実施例6では、比較例3より濃い緑色を呈しており、鉄分の存在により青変していることがわかった。