特許第6351965号(P6351965)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サイエンティフィック プラスティック プロダクツ インコーポレイテッドの特許一覧

特許6351965キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ及びキット
<>
  • 特許6351965-キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ及びキット 図000002
  • 特許6351965-キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ及びキット 図000003
  • 特許6351965-キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ及びキット 図000004
  • 特許6351965-キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ及びキット 図000005
  • 特許6351965-キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ及びキット 図000006
  • 特許6351965-キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ及びキット 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351965
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ及びキット
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/26 20060101AFI20180625BHJP
   B01D 29/01 20060101ALI20180625BHJP
   C12M 3/06 20060101ALI20180625BHJP
   C12N 1/02 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 29/90 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 24/42 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 29/92 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 24/44 20060101ALI20180625BHJP
   B01D 29/94 20060101ALI20180625BHJP
   C12M 1/32 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C12M1/26
   B01D29/04 510A
   C12M3/06
   C12N1/02
   B01D61/58
   B01D63/00 510
   B01D63/08
   B01D29/04 530A
   B01D29/42 501A
   B01D29/42 510
   B01D29/42 520
   C12M1/32
【請求項の数】26
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-256206(P2013-256206)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2014-117281(P2014-117281A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2016年10月14日
(31)【優先権主張番号】13/715,666
(32)【優先日】2012年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510251578
【氏名又は名称】サイエンティフィック プラスティック プロダクツ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SCIENTIFIC PLASTIC PRODUCTS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル エイ.エリス
(72)【発明者】
【氏名】キシャン ジー.ヒンゴラニ
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特表平06−507375(JP,A)
【文献】 特開平10−211403(JP,A)
【文献】 米国特許第6605216(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 3/00
B01D 24/00
B01D 29/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生細胞の外部に排出される産物を、前記産物が存在する容器内の液体、増殖培地、及び残屑から分離するために使用されるキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリであって、前記容器が前記容器の開口部を画定する頚部を有し、前記産物が分子量により測定されるサイズを有し、
前記キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリは、前記容器の前記開口部を覆うように構成された第1の部分、排出口、及び前記第1の部分と前記排出口との間に配置されたフィルターアセンブリを有するキャップを含み、
前記キャップは、それを貫通して伸長する通気開口部を更に含み、前記キャップの前記通気開口部を画定する部分に通気管が接続されており、前記通気管が、前記容器を逆さまにした際に前記容器のアレージ内に伸長し、産物が前記容器から前記キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリを通過して流れるように選択された長さを有し、
前記フィルターアセンブリは、
多孔質支持体を有するフィルター筐体であって、前記多孔質支持体の周囲が縁部で囲まれているフィルター筐体と、
フィルターであって、前記縁部内に嵌合し、前記産物が前記フィルターを通過するのに十分であるが前記残屑及び任意にある程度の増殖培地は保持される大きさの細孔径を有する段階的多孔度を有するフィルターと、
前記フィルターの周囲を前記フィルターの外側部に押し付ける締付リングと、
前記多孔質支持体とフリットとの間に前記フィルターを設置するために配置されるフリットであって、使用中に液体が前記フリットを通過して前記フィルターに流れるように前記筺体に封止されているフリットとを備える、
キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項2】
前記フィルターが、異なる多孔度の複数の平面状フィルター、複数のレンズ状フィルター、及び段階的多孔度フィルターを形成するビーズのうちの1つを含む、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項3】
前記締付リングが、前記締付リングの周囲を囲み、使用中に前記フィルターの上流側の表面に当接するように配置された少なくとも1つの環状リブを有し、前記キャップが、前記キャップの周囲を囲み、使用中に前記フィルターの下流側の表面に当接するように配置された少なくとも1つの環状リブを有する、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項4】
前記締付リングが、前記締付リングの周囲を囲み、使用中に前記フィルターの上流側の表面に当接するように配置された少なくとも1つの環状リブを有し、前記キャップが、前記キャップの周囲を囲み、使用中に前記フィルターの下流側の表面に当接するように配置された少なくとも1つの環状リブを有する、請求項2に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項5】
前記フィルターアセンブリが、前記キャップの円柱状側壁により形成された前記キャップの円柱状陥凹部に圧入されている、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項6】
前記フィルターアセンブリが、前記キャップの円柱状側壁により形成された前記キャップの円柱状陥凹部に圧入されており、前記円柱状陥凹部が、前記容器と螺合するように構成されたねじ切りされた裾部の下流に配置されている、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項7】
前記フィルターアセンブリが、前記キャップの円柱状側壁により形成された前記キャップの円柱状陥凹部に圧入されており、前記円柱状陥凹部が、前記容器と螺合するように構成されたねじ切りされた裾部の下流に配置されている、請求項2に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項8】
前記円柱状陥凹部が、平坦な環状外縁と内側部分とを有し、前記内側部分は、内部に排出口が形成された排出口フィッティングに向かって先細りになっている、請求項に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項9】
前記平坦な環状外縁の内側表面が、前記フィルター筐体に当接する、請求項8に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項10】
前記通気開口部が、前記キャップの対向表面から伸長する管状フィッティングを備える、請求項2に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項11】
前記キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリの使用中に、前記容器内部に陽圧を供給するように、前記通気開口部と連通している陽圧供給源を更に備える、請求項2に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項12】
前記フィルターが、各々異なる多孔度を有する複数のフィルターを備える、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項13】
前記フィルターが、下流方向に減少する隙間細孔間隔を有する少なくとも1つの段階的多孔度フィルターを備える、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項14】
前記フリットが、下流方向に減少する隙間細孔間隔を有する段階的多孔度フィルターを備える、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項15】
前記キャップの前記排出口と連通する精製カラムを更に備える、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項16】
前記キャップの前記第1の部分が円柱状フランジであり、前記排出口フィッティングが、前記フィルターアセンブリの縦軸と一致するが、前記円柱状フランジの縦軸からずらされている縦軸を有するチューブである、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項17】
前記キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリの使用中に前記容器中の液体に陰圧を付与するために、前記フィルターアセンブリの下流に減圧口を有し、前記キャップの前記排出口と連通する精製カラムを更に備える、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項18】
前記フィルターが、10,000〜3,000,000MWの分子量を有する産物を通過させるように選択されている、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項19】
前記フィルターが、100〜10,000MWの分子量を有する産物を通過させるように選択されている、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項20】
前記フィルターが、100〜150MWの分子量を有する産物を通過させるように選択されている、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項21】
前記キャップ及びフィルターが、哺乳動物細胞及び増殖培地を含有する容器に締め付けられる、請求項2に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項22】
前記キャップ及びフィルターが、昆虫細胞及び増殖培地を含有する容器に締め付けられる、請求項2に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項23】
前記キャップ及びフィルターが、藻類又はシアノバクテリア細胞及び増殖培地を含有する容器に締め付けられる、請求項2に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項24】
前記キャップ及びフィルターが、生細胞及び増殖培地を含有する容器に締め付けられる、請求項1に記載のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールアセンブリ。
【請求項25】
容器の開口部を画定する頚部を有する前記容器から液体を移送させるためのキットであって、前記容器が、前記容器中の増殖培地に含まれていた生細胞の外部に排出された産物を収容し、前記容器が、それら細胞の断片を更に含有し、前記産物が、分子量により測定されるサイズを有し、
前記キットは、前記容器の前記開口部を覆うように構成された第1の部分、排出口、及び前記第1の部分と前記排出口との間に配置されたフィルターアセンブリを有するキャップを含み、
前記フィルターアセンブリが、
多孔質支持体を有するフィルター筐体であって、前記多孔質支持体の周囲が縁部で囲まれているフィルター筐体と、
フィルターであって、前記縁部内に嵌合し、前記産物が前記フィルターを通過するのに十分であるが残屑及び任意にある程度の増殖培地は保持される大きさの細孔径を有する段階的多孔度を有するフィルターと、
前記フィルターの周囲を前記フィルターの外側部に押し付ける締付リングと、
前記多孔質支持体とフリットとの間に前記フィルターを設置するために配置されるフリットであって、前記フリット及び締付リングが、使用中に液体が前記フリットを通過し、その後前記フィルターを通過して、前記キャップの排出口から流れ出るように、互いに及び前記フィルター筺体に封止されている前記フリットと、
前記キャップを貫通して伸長する通気開口部と、
通気管であって、前記キャップの前記通気開口部を画定する部分に接続されるように構成された第1の端部を有し、前記容器を逆さまにした際に前記容器のアレージ内に伸長し、産物が前記容器から前記キャップを通過して流れるように選択された長さを有する通気管とを含む、
キット。
【請求項26】
連通アセンブリを更に含む請求項25に記載のキットであって、前記連通アセンブリは、
前記キャップの前記排出口に連結するように構成された端部を有する第1の液体移送チューブ、
前記第1のチューブと直接的に又は流体接続を介在させて連通して配置されるように構成された液体流動調節バルブ、及び
前記バルブの下流側端部と直接的に又は流体接続を介在させて連通して配置されるように構成された第1の端部を有し、精製カラムのルアーロック又は入口のうちの1つに連結するように構成された第2の端部を有する第2のチューブを備える、
キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップろ過ツール及び移送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本方法及び装置は、細胞外及び細胞内増殖からの産物の抽出を向上させるために特に有用であり、時間に関して及び回収物質の量に関して抽出効率を向上させるために特に有用である。種々の細胞が増殖培地中で増殖され、細胞産物が抽出されて、各種の用途に使用される。図1を参照すると、細胞は、種々の形状の容器で増殖させることができ、一般的に、細胞は、増殖培地12及び細胞物質36を含有する増殖フラスコ又はバイオ反応器10中で増殖される。1つの例示的な増殖フラスコ10が、特許文献1に記載されている。細胞外増殖が使用される場合、培地12は、細胞壁により増殖され細胞壁を通過して培地に排出される産物38か、又は他の態様で細胞壁を通過して培地に抽出される産物38を抽出するように選択される。抽出産物は、その後の工程で培地及び細胞から分離される。細胞内増殖が使用される場合、細胞壁を破裂させて、後工程で所望の産物を培地及び破裂細胞から分離するために、典型的には、増殖終了後に細胞溶解剤が培地に添加される。いずれの細胞増殖形態の場合も、プロセスは長期にわたり、その結果、産物が失われてしまう場合がある。
【0003】
依然として図1を参照しているが、増殖が終了すると、増殖フラスコ10中の液体は、典型的には保存容器14にデカントされ、キャップ15で密閉され、時間が許す場合は、処理に十分な量が収集されるまで保存してもよく、又は時間が重要である場合は、液体を直ちに処理してもよい。フラスコ10の内容物を保存容器又は他の容器に移すための例示的な従来技術手段には、特許文献2及び特許文献3に開示されているキャップが含まれる。
【0004】
増殖フラスコ10から保存容器14にデカントする際に、液体をろ過して移してもよく、又はろ過せずに移してもよい。ろ過は、増殖培地のより大きな粒子及び細胞を、サイズがより小さく、フィルターを通過する所望の産物及び溶解増殖培地から分離することを目的とする。しかし、ある産物は、フィルターに保持されるか、フィルターの上流側の表面に収集された残屑に保持されるため、産物は移送の際に失われる。典型的には、最大約20%の産物が、このフィルターステップで失われる。
【0005】
保存容器14中の物質又は増殖フラスコ10からの物質は、最終的に遠心分離容器16に配置され、遠心機18の遠心力を使用して、より重い細胞組織及び大型微粒子状増殖培地が、所望の産物及び溶解増殖培地から分離される。上清を遠心分離容器16から取り出して、減圧ろ過移送用フラスコ20に入れる。ある程度の産物が、遠心分離された細胞及び残屑に残留するため、典型的には、最大約20%の産物が遠心機分離で失われる。減圧ろ過移送用フラスコ20は開口部を備える頚部を有し、その開口部は、減圧容器24と連通している減圧フィルターアセンブリ22に連結する。フィルターアセンブリ22の下流側に陰圧を付与して、産物をフィルターアセンブリ22から減圧容器24へと吸引する。フィルターアセンブリは、産物を通過させるが、産物よりもサイズの大きい細胞、細胞断片、及び増殖培地の通過を抑制するように選択される。フィルターが残屑により閉塞された場合、減圧ろ過移送用フラスコ20中の液体物質の残りの容積は、産物の全てが1つ又は複数の減圧容器にろ過されるまで、次のフィルターアセンブリ22を使用してろ過される。減圧フィルターアセンブリ22が使用される度に、最大約10%の産物が失われる。その後、増殖培地をカラムに結合させ、精製産物38をそれから分離させるために、減圧容器のろ過液体を、レジン充填精製カラム26等の精製カラムに通し、その結果生じた液体産物は、産物の性質に応じて種々の目的に使用される。精製カラム26は、無菌カラムであってもよい。増殖培地12及び細胞物質36から分離された精製産物38を、精製カートリッジ26から得るために、最大約20%の産物が精製カラム26で失われる。
【0006】
液体が処理される度に産物の一部が失われ、幾つかの処理ステップが産物の精製に使用されるため、失われる産物の総量は(絶対量又は割合量において)、甚大であり得る。更に、各処理ステップには、流失、取り扱い、異物混入による誤謬、及び各処理ステップに関する他の人為的的又は機械的誤謬が伴う。細胞及びその産物の増殖には多大の時間がかかる場合があり、抽出及び精製工程にも時間がかかるため、その結果、精製産物を得るコストは、時間、労力、及び金額の点で高コストである。したがって、残りの細胞、細胞断片、増殖培地等から細胞産物を分離する、より効率的な方法及び装置の必要性が存在する。
【0007】
従来技術では、非特許文献1(www.pharmatec.comにて入手可能)に記載されているように、接線流フィルター、精密ろ過フィルター、遠心分離、深層ろ過、及び滅菌ろ過を使用して、種々の処理ステップ間で液体の「清澄化」が支援される。しかし、種々のフィルター及び遠心分離を使用しても、多数の処理ステップ中で産物が失われることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,381,559号明細書
【特許文献2】米国特許第7,998,730号明細書
【特許文献3】米国特許第7,709,251号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】D.Yavorsky、R.Blanck、C.Lambalot、及びR.Brunkow、The Clarification of Bioreactor Cell Cultures for Biopharmaceuticals,Pharmaceutical Technology,2003年3月、62〜76頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、残りの細胞、細胞断片、及び所望の産物以外の粒子から細胞産物を分離する、より効率的な方法及び装置及びシステムの必要性が存在する。更に、人間が介在するあらゆるステップには、誤謬がつきものであり、したがって、人間が取り扱うステップ及び人間が介在するステップの数を減らす改良された方法、装置、及びシステムの必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
細胞培養からの精製物質の最大化を可能にし、従来の精製プロセスにおけるステップ数の低減を可能にする実施可能なキャップ及びフィルターアセンブリツールが提供される。キャップ及びフィルターアセンブリツールは、産物、細胞、細胞断片、及び増殖培地が含有されている容器の頚部に配置されるキャップを含んでいてもよい。キャップは、多孔性フリット及び段階的多孔度フィルターを含む陥凹部を有し、したがって、容器の液体は、フリット及びフィルターを通過して、キャップの吐水口から流れ出ざるを得ない。フィルター多孔度は、容器内部の増殖培地中で増殖された細胞性生物から発現された産物を通過させるが、残屑はろ過して取り除くように選択され、用途又は細胞の種類に応じて様々であってもよい。容器アレージ内へと伸長する通気管に接続されたキャップ通気口は、容器アレージの陽圧によるろ過の促進を可能にし、かつ/又は容器内容物の撹拌を低減する。細胞、細胞断片、及び残屑から産物を分離するためのろ過の使用は、遠心分離を使用して分離を達成するのとは異なる分離原理(粒子のサイズ)に作用し、時間のかかる遠心分離ステップを完全に回避することができ、高価な遠心分離装置のコストを低減することができる。その結果生じた産物では、キャップの吐水口及びフィルターアセンブリツールと連通している精製カラムへとろ過液体を通過させることができるように、大きい微粒子の存在量が十分に少ないと考えられ、したがって精製カラムにより、高度に精製された産物を生産することができるであろう。
【0012】
より詳細には、産物が存在する容器内の液体、増殖培地のより大きな粒子、及び残屑から、生細胞の外部に排出される産物を分離するのに使用されるキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールが有利に提供される。容器は、容器の開口部を画定する頚部を有する。産物は、細胞と比較して非常に小さく、産物は、分子量により測定されるサイズを有する。キャップは、容器の開口部を覆うように構成された第1の部分、排出口、及びその間に配置されたフィルターアセンブリを有する。フィルターアセンブリは、多孔質支持体を有するフィルター筐体を含み、多孔質支持体の周囲は縁部で囲まれている。段階的多孔度フィルターは、その縁部内に嵌合し、産物がフィルターを通過するのに十分であるが残屑及び増殖培地の任意のより大きな粒子は保持する大きさの細孔径を有し、フィルターの大きさ及び/又は流動方向の厚さは閉塞を防止するのに十分である。締付リングは、フィルターの周囲をフィルターの外側部に押し付ける。より粗い多孔度のフリットが、多孔質支持体とフリットとの間にフィルターを設置するために配置される。フリットは、筺体に封止されており、したがって液体は、使用中にフリットを通ってフィルターへと流れる。
【0013】
更なるバリエーションでは、キャップは、キャップを貫通して伸長する通気開口部を有し、キャップの通気開口部を画定している部分に通気管が接続されている。通気管は、産物がキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールを通って容器から流れるように容器を逆さまにした際に、容器の空の空間(アレージ)内まで伸長するように選択された長さを有する。通気開口部は、キャップの対向表面から伸長する管状フィッティングの形態を取っていてもよい。通気管により泡の形成が回避され、したがって、ろ過中の内容物の撹拌を防止するだけでなく、液体の流動速度を上昇させる。泡の通過から生じ得る細胞損傷の可能性を軽視するべきではない。Y.Chisti、Animal−cell damage in sparged bioreactors、Tibtech、2000年10月、18巻、420〜432頁を参照されたい。そこには、バイオリアクター内の泡散布から生じる細胞損傷の機序が記載されている。更に、キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールの使用中に容器内部に陽圧を供給し、それにより液体を所定の圧力でフィルターを通過させるように、陽圧の供給源を通気開口部と連通させて配置することができる。
【0014】
締付リングは少なくとも1つの環状リブを有していてもよく、その環状リブは締付リングの周囲を囲み、使用中にフィルターの上流側の表面に当接するように配置される。キャップは、キャップの周囲を囲み、使用中にフィルターの下流側の表面に当接するように配置された少なくとも1つの環状リブを有していてもよい。これらのリブは、液体にフィルターを通過させ、液体がフィルターの外周を迂回して流れることを防止するのを支援する。有利には、フィルターアセンブリは、アセンブリの外周をキャップに密閉し、更に液体がアセンブリの周囲を迂回せず、フィルターを通過するのを強いるように、キャップの円柱状側壁により形成されたキャップの円柱状陥凹部に圧入される。円柱状陥凹部は好ましくはねじ切りされた裾部の下流に配置されており、ねじ切りされた裾部は容器に螺合し、したがってキャップが脱着可能に容器に締め付けられるように構成される。好ましくは、円柱状陥凹部は平坦な環状外縁と、内側部分とを有しており、内側部分は、ろ過産物を排出口フィッティングに流し込み、また排出口フィッティングから流し出すように、内部に排出口が形成された排出口フィッティングに向かって先細りになっている。有利には、平坦な環状外縁の内部表面は、フィルター筐体に当接して、フィルターアセンブリを位置決めし、その周囲を密閉するための台座を提供する。
【0015】
フィルターは、各々が異なる別々の多孔度を有し、一緒に積層されて段階的多孔度フィルターを形成する複数のフィルターを備えていてもよい。更に、同じ多孔度を有するフィルターの積層を使用してもよく、第1の多孔度を有する複数の個別のフィルター及び第2の多孔度を有する複数の個別のフィルターを有するフィルターを使用してもよい。段階的多孔度フィルターが好ましいと考えられ、使用中の流体流動の下流方向に減少する隙間細孔間隔を有していてもよい。
【0016】
キャップの排出口から流出するろ過産物は、有利には、精製カラムへ流れることができるように配置される。任意に、キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールの使用中に容器中の液体に陰圧を付与するために、フィルターアセンブリの下流の減圧口を使用してもよい。好ましくは、減圧口は、フィルターアセンブリの下流側のキャップに形成されるが、精製カラムとキャップとの間に、液体を通過させるように接続させて設置してもよい。
【0017】
フィルターは、好ましくは10,000〜3,000,000MWの分子量を有する産物を通過させるように、より好ましくは約100〜150MWの分子量を有する産物を通過させるように選択される。フィルター及びフリットは、所望のサイズ又は分子量の産物を通過させるように選択されるだけでなく、フィルターは、容器が空になってもフィルターが閉塞しない程度の十分な厚さを有するように選択される。したがって、限度容量のより大きい容器は、面積(例えば、直径)又は深さのいずれかがより大きいフィルター、又は高結合能のフィルターであってもよい。キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールは、哺乳動物細胞又は昆虫細胞を含む任意の生細胞に由来する産物を含む種々の産物をろ過するために使用することができる。
【0018】
また、産物が存在する容器内の液体、増殖培地のより大きな粒子、及び残屑から、生細胞の外部に排出される産物を分離する方法が提供される。産物は、分子量により測定することができるほどの小さなサイズを有し、容器は、通常は容器の開口部を画定する頚部を有する。本方法は、容器の開口部にキャップを締め付けて液密結合を形成するステップ、及び容器中の液体内容物をキャップ中のフィルターアセンブリを通して通過させるステップを含む。フィルターアセンブリは、産物がフィルターを通過するのに十分であるが残屑は保持されるように選択された大きさの細孔径を有する段階的多孔度フィルターの上流にフリットを備える。典型的には、増殖培地はフリットを通過できる程度に小さいが、より大きな粒子はフリットにより通過が制限される。したがって、産物は、フィルターアセンブリの下流に配置されたキャップ排出口を通過する。また本方法は、任意に、フィルターアセンブリ上部に配置された容器のアレージと連通する通気管を通して気体を通過させることを含んでいてもよい。
【0019】
更なるバリエーションでは、通気管を通して気体を通過させるステップは、容器のアレージに陽圧を付与するか、又はフィルターアセンブリの下流に陰圧を付与して、産物をフィルターアセンブリから吸引することを含んでいてもよい。また本方法は、産物を精製クロマトグラフィーカラムに通すことを含んでいてもよい。
【0020】
開口部を画定する頚部を有する容器であって、その容器内の増殖培地に含まれていた生細胞の外部に排出された産物を含有する容器から、液体を移送させるキットを提供することも有利である。容器は、それら細胞の断片を含有する。産物は小さく、分子量により測定されるサイズを有する。キットはキャップを含み、キャップは、容器の開口部を覆うように構成された第1の部分、排出口、及びそれらの間に配置されたフィルターアセンブリを有する。キャップは、キャップを貫通して伸長する通気開口部を有する。キャップの通気開口部を画定する部分に接続されるように構成された第1の端部を有する通気管が提供される。通気管は、産物がキャップを通って容器から流れるように容器を逆さまにした際に、容器のアレージ内へ伸長するように選択された長さを有する。キットに使用されるフィルターアセンブリは幾つかの部品を含む。例えば、周囲を縁部で囲まれ、その縁部内にフィルターフィッティングを有する多孔質支持体と、産物をフィルターに通すのに十分な大きさであるが、残屑及び任意にある程度の増殖培地は保持される大きさの細孔径とを有するフィルター筐体を含む。フィルターは、段階的多孔度フィルターであってもよい。また、フィルターアセンブリは、フィルターの周囲をフィルターの外側部分に押し付ける締付リング、及び多孔質支持体とフリットとの間にフィルターを配置するために設置されたフリットを含んでいてもよい。フリット及び締付リングは、液体が使用中にフリットを通り、その後フィルターを通ってキャップ排出口から流れ出るように、互いにかつフィルター筐体に密閉されている。
【0021】
更なるバリエーションでは、キットは、キャップ及びフィルターアセンブリツールと共に使用して、産物を精製カラムへと移送させるための、本明細書に記載されている上記の特徴のいずれを含んでいてもよい。これらの特徴には、一方の端部がキャップの排出口に連結するように構成された第1の液体移送チューブ、及び、第1の液体移送チューブと直接的に又は流体接続を介在させて連通して配置されるように構成された液体流動調節バルブが含まれていてもよい。これらの特徴には、バルブの下流側端部と直接的に又は流体接続を介在させて連通して配置されるように構成された第1の端部を有し、精製カラムのルアーロック又は入口のうちの1つに連結するように構成された第2の端部を有する第2のチューブが更に含まれていてもよい。
【0022】
本明細書に開示されている種々の実施形態のこれらの及び他の特徴及び利点は、以下の説明及び図面を参照すると更によく理解されるだろう。ここでは、全体にわたって、類似の部材が類似の番号により参照されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来技術の処理順序の流れ模式図である。
図2】キャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールの断面図である。
図3図2のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールの分解組立透視図である。
図4】精製カラムに連結されている図2及び図3のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールの部分断面図である。
図5】精製カラムに連結されており、キャップ上の減圧口及び液体移送チューブを有する図2及び図3のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールの部分断面図である。
図6】精製カラムに連結されており、通気フィッティングの内部に通気管を有する図2及び図3のキャップ及びフィルターを含む工程数減少ツールの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図2〜4を参照すると、キャップ30は、増殖培地12が細胞増殖用に細胞36と共に配置される増殖フラスコ10等の容器32用に提供される。細胞及び培地は、産物38の細胞内増殖又は産物38の細胞外増殖用に選択される。産物38は、細胞36よりも小さく、通常は増殖培地12よりも小さい。細胞物質36は、微生物細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、又は他の生細胞を含んでいてもよく、産物38は、細胞内部で産生されてもよく又は細胞の外部に排出されてもよい。例示的な産物38には、タンパク質、抗体、ペプチド、油類、脂質、及びアミノ酸が含まれる。容器32は、典型的には、液体開口部を形成する頚部40を有し、キャップ30が頚部40に締め付けられている。例示されている実施形態では、頚部の外側のねじ山42aは、キャップの円柱状フランジ44の内側の相手側ねじ42bと脱着可能に係合して、容器32にキャップを脱着可能に締め付ける。
【0025】
キャップ30は第1の上面45を有し、その上面45の外周とつながったフランジ44を有する。階段状ボス48は、第1の上面45から伸長するが、第1の上面45から遠ざかるように伸長する。ボス48は、第2の上面50とともに側壁46を有し、第2の上面50は側壁46により囲まれている。側壁46は、好ましくは円柱状であるが、他の形状であってもよい。第2の上面50は、種々の形態を有していてもよいが、第1の上面45と平行な環状表面50で示されている。そこから、傾斜した好ましくは円錐形の表面52が伸長している。管状排出口フィッティング54が円錐状表面52から伸長しており、キャップ30は、側壁46により形成されるボスの内部に液体を導き、テーパ面52は、その液体を管状排出口フィッティング54に向けて及び管状排出口フィッティング54を通るように導く。好ましくは、管状排出口フィッティング54は、排出口フィッティング54と平行であるがキャップ30及びその裾部又はフランジ44の中心を通る縦軸からずらされている。排出口フィッティング54の外面は、Oリングシール、Dリングシール等の環状シールを受容する1つ又は複数の陥凹部56(図2)を有していてもよい。
【0026】
第2の上面50は、好ましくは円柱状フランジ44からずらされているボス48上に形成されている。キャップ30は、第1の上面45を貫通して伸長する通気フィッティング58を備え、具体的には、第1の上面45の両面から管状通気フィッティング58a、58bが伸長している。有利には、管状通気フィッティング58aはキャップ30の外側にあり、管状通気フィッティング58bはキャップの内側にある。フィッティング58a、58bは、好ましくは、排出口フィッティング54を通る縦軸60(図1、6)と平行な軸に沿って配置されている。有利には、夾雑物の導入を回避するために、フィルター(図示略)が通気フィッティングに取り付けられている。
【0027】
任意に、第1の上面45の内面は、環状密閉リング62を受容するように構成されている(図2)。図示されている密閉リング62は、矩形断面を有するが、他の形態であってもよい。上面45の内側面から環状突出部64が伸長しており、密閉リング62は、突出部64と当接している。容器32の頚部40の縁部は、使用中にキャップ30と容器32との間の液密封止を提供するように密閉リング62と当接し、突出部64は、密閉リング62の移動及び膨張を抑制して、その液密封止を向上させる。通気フィッティング58a、58bは、好ましくは、環状突出部64及び密閉リング62の内側に配置される。
【0028】
細長い通気管が、通気フィッティング58により形成された通路と接続しており、好ましくは内部通気フィッティング58bの内側(図6)又は内部通気フィッティング58bの外側(図4〜5)に適合させることにより接続されている。通気管66は、キャップ30及び排出口フィッティング54を通して頚部40から培地を注ぐために、容器32を傾けて頚部40を下方に配置した際に、管の自由端を増殖培地の液位よりも上に配置するのに十分な長さまで伸長している。通気管66及びフィッティング58bにより形成された通路は、液体を容器32から別の容器に移す際に、容器32の底部と液体培地12との間のアレージに空気が進入することを可能にする。空気は、液体がキャップ30及び排出口フィッティング54内をより迅速に及びより滑らかに流れることを可能にし、空気の通気が可能でなければ生じるであろう泡の除去に役立つ。泡は、培地12、細胞36、及び産物38を撹拌し、細胞36を損傷する場合があるため、泡の低減又は除去はそれらに利点を提供する。
【0029】
図2〜4を再び参照すると、ボス48の内部は、締付リング72により筺体に保持された1つ又は複数のフィルター74を有するフィルター筐体70を含むフィルターアセンブリ、及びフィルターアセンブリの上流にあるフリット76を受容するように構成される。本明細書で使用される場合、相対的な用語である上流及び下流は、フィルター装置及び方法の使用中に、容器32から精製カラム26へと流れる液体の流れに対する方向を指す。フィルター筐体70は、多孔質支持体80の周囲を囲むように配置されている短い円柱状側壁78を有する。支持体80は、好ましくは平面状であるが、図2の中で示されているように、排出口フィッティング54に向かって下流方向にわずかに傾いていてもよい。多孔質支持体80は、容器32からのろ過液体が通り抜ける複数の開口部82を有する。多孔質支持体80の上流端は、好ましくは、フィルターが擦過、断裂、又は破損しないように、フィルター74と接触する部分では、丸みを帯びている。好ましくは、1つ又は複数の環状密閉リブ84が、支持体80におけるフランジ78に隣接する部分に形成されており、突出部はフィルター74に向かって伸長している。密閉リブ84は、液体が、リブ84を横切り径方向外側に向かってフィルター74の周端部と筺体70との間を通過するのを防止するために、フィルター74に対する封止を行う突出部を形成する。フリットは、産物38が使用中にフリット76を通ってフィルター74に向かって流れることを強制し、産物が、フリットと側壁78との間及び側壁78と締付リング72との間を流れることを抑制するように、側壁78又は締付リング72の周囲の縁部の一方又は両方と密閉接触している。密閉接触は、フィルター筐体78及びフリット76を、キャップ30の側壁46により形成される陥凹部に圧入することにより得ることが有利であるが、部品間に挿入される密閉リングの接着、溶解を含む他の密閉手段を使用してもよい。更に、締付リング72及びフリット76は、リング72がフリット76と当接して、フリットの周囲を囲む液密封止を形成するように、互いに大きさが決められることが有利である。
【0030】
フィルター74が平面状フィルター又はシートである場合、フィルター74は、環状保持リング72の形態である保持部により筺体に保持されている。フィルター74がばらばらの顆粒で形成されている場合、保持部は支持体80と同様の、ろ過物質を保持する大きさの開口部を有する多孔質支持体を含むことになる。保持締付リング72という用語は、別様の記載がない限り、環状構造物又は多孔質支持体構造物のいずれかを指すために使用される。
【0031】
保持リング72は、側壁78とのスナップ式結合を形成するように構成された周縁を有する。有利には、側壁78は、その表面が保持リング72を保持し、スナップ式結合を形成するように傾斜している、リング72に面する表面を有するように形作られていてもよい。約5度の傾斜が好適であると考えられる。或いは、側壁78の端部のわずかな突出部を使用して、組立及び使用中に部品を一緒に保持するために、側壁78と保持リング72との間のスナップ式結合を形成してもよい。互いに螺合するねじ山を、脱着可能な結合に使用することもできる。部品の超音波溶接、接着、ステーキング、塑性変形、又は締まり嵌め等の恒久的締付デバイスを使用して、より恒久的な接続を形成することもできる。保持リング72は、フィルター74を多孔質支持体80の適所に保持する。
【0032】
図3を参照すると、保持リング72は、矩形断面を有する環状リングとして示されている。好ましくは、1つ又は複数の環状密閉リブ84が保持リング72上に形成され、使用中にフランジ78に隣接し、リブは、フィルター74に向かって伸長している。密閉リブ84は、液体が、リブ84を横切って径方向外側に向かってフィルター74の周端部と筺体70との間を通過するのを防止するために、フィルター74に対する密閉を行う突出部を形成する。有利には、締付リング72は、多孔質支持体80に配置された2つのリブ84の反対側及びそれらの間でフィルター74と当接するように配置された1つのリブ84を有する。しかしながら、異なる配置を使用してもよい。
【0033】
フリット76は、こうした用途に一般的に用いられるポリマー製又はガラス製フリットであってもよい。厚さ約1.6〜13mm(約1/16〜1/2インチ)のフリットが好適であると考えられるが、厚さは、具体的な用途に応じて様々であろう。フリット76は、好ましくは、フィルター筐体70が歪んで側壁46の内部及び/又は環状表面50の内部との密閉が不完全になることを防止するのに十分な硬さが選択される。筺体70、フィルター74、保持部材又はリング78、及びフリット76は、フィルターアセンブリ88(図3)を形成し、フィルターアセンブリ88は、好ましくは、側壁46により形成される円柱状陥凹部に圧入されることによりキャップ30に保持される。フィルターアセンブリ88は、スナップリング、ねじ山、部材の変形等の、他の機構により保持されていてもよい。フィルターアセンブリ88は、キャップ30に脱着可能に保持されていてもよく、又はフリット76又は筺体70の一方と、隣接する側壁46との間の密閉締まり嵌めのように恒久的にキャップ30に締め付けられていてもよい。
【0034】
フィルター70は、1つ又は複数の個別のフィルターを備えていてもよいが、好ましくは約10個未満のフィルターを有する。ポリプロピレン、ニトロセルロース材料、PVDF、ポリテトラフルオロエチレン、ナイロン、ガラス、又はガラス繊維のフィルター74が好適であると考えられる。好ましくは、複数のフィルターが使用され、各フィルターは、異なる多孔度であり、細孔径又はフィルター部品間の隙間間隔が流れの方向に減少する段階的多孔度フィルターを提供するために、より大きな多孔度フィルターが上流に配置され、より小さな多孔度フィルターは下流に配置されている。図2には、2つのフィルター74a、74bが示されており、フィルター74aは、上流フィルター74bよりも多孔度が小さい下流フィルターであり、図3には、3つのフィルター74a、74b、74cが示されている。したがって、細孔径が流れの方向に減少するデプスフィルターが提供されるが、細孔径が流れの方向に増加していてもよい。特定の多孔度及び細孔変化の組み合わせは、具体的な用途に応じて様々であろう。フィルター74のより小さな細孔径は、産物38が通過するのに十分大きく、細胞36、細胞断片、及び増殖培地12のより大きな粒子を保持するのに十分小さい。単一の段階的多孔度フィルター74を使用してもよく、又は固定されているが異なる多孔度の複数のフィルター74を一緒に積層してもよく、異なる多孔度(大細孔径対小細孔径)を有する可変多孔度フィルターを一緒に積層してもよい。
【0035】
フィルター74の多孔度は、用途に応じて様々であろう。細孔径は、好ましくは容器32の全内容物を1回の使用でろ過できるように、好ましくは数回の使用で、理想的にはわずか2〜3回の使用で(ただし、毎回新しいキャップ30及び/又はフィルター74を用いる)ろ過できるように選択される。
【0036】
最も一般に用いられている細胞36のサイズは、約10マイクロメートルから0.2マイクロメートルまで様々であり得るが、細胞壁が、処理中に意図的に又は偶然に破砕され、小さな細胞壁断片が生成され、それらは産物38から除去されなければならない。産物38は、有利には、分子量により選別又はろ過することができる。したがって、例えば、タンパク質を含む産物38を分離するのに好適なフィルター74は、約100,000〜3,000,000MWの分子の通過を提供することになり、ペプチド又はアミノ酸を含む産物38を分離するのに好適なフィルター74は、約100〜10,000MWの分子の通過を提供することになり、脂質を含む産物38を分離するのに好適なフィルター74は、約100万MW〜1000万MWの分子の通過を提供することになる。油類は、分子量が更に大きく変動する場合がある。それらの範囲内で、特定のフィルター74は、特定の産物38、及びその関連する分子量、又はその特定の産物38に関連する分子のサイズに応じて様々であろう。
【0037】
閉塞により流れが許容できない程度に低減されるまでにフィルター74及びフリット76を通過することができる液体及び産物38の限度容量を増加させるために、広面積のフィルター及びフリットを有することが望ましく、デプスフィルターの場合は、閉塞を防止するために厚さが十分なフィルター及びフリット(流れ方向で測定される)を有することが望ましい。正確な面積及び厚さは、関与する産物38及び細胞36の種類、及びフィルター及びフリットを通過する産物の体積を決定する容器32の容積に応じて様々であろう。同様に、ある残屑は、その残屑サイズに比べて十分に大きい細孔のフリット76又はフィルター74を通過することができるため、多孔度は、ろ過産物38の純度に影響を及ぼす場合がある。更に、フィルター及びフリットは、生産中にある程度のばらつきが生じるため、特定の大きさの細孔又は通路で製作されていない。
【0038】
より大きなフィルター面積を達成するために、容器32の頚部40及び開口部を増大させ、より大きなキャップ及びキャップ30内のフィルターを含む工程数減少ツール88を可能にしてもよい。しかし、通気管58があるため、フィルター及びフリットがキャップの裾部44内の面積全体を占めることはできない。そのため、排出口54の軸60は、キャップ30及びその裾部又はフランジ44の縦軸からずらされる。縦軸60は、好ましくは、ボス48の陥凹部、フィルター74、及びフィルターアセンブリ88の縦軸である。更に、通気フィッティング58は、通気管58と、フィルターアセンブリ88が配置される陥凹部の側壁46との間にわずかな空間が残されるように、通気管66又は管の外側に接続された陽圧管(図示略)を有していてもよい。
【0039】
使用中、細胞36及び増殖培地12は、増殖容器32に配置され、細胞増殖及び細胞36による所望の産物38の産生を引き起こすのに好適な温度及び他の関連環境条件下で維持される。細胞外増殖の場合、産物38は、細胞36から周囲の液体培地12に排出されるか、又は周囲液体培地12中の化学薬品により抽出される。細胞内増殖の場合、産物38は、回収するまで細胞内に残り、回収時に、細胞壁を、例えば溶解により破砕する。その後、キャップ30及びフィルターアセンブリは、好ましくは、容器の開口部を形成するねじ切りされた頚部40にキャップを螺合させることにより、容器32に締め付けられる。
【0040】
その後、容器32及びキャップ30を傾けて、容器内容物をキャップ及びそのフィルターアセンブリ88を通して注ぐ。フリット76は、より大きな粒子を阻止し、フィルター74は、より小さな粒子を阻止するが、産物38は通過させる。フリット76及びフィルター74は、培地12のより大きな粒子、細胞36、及び細胞断片を分離して除去するために、産物38の通過を可能にするが、より大きな粒子を阻止するように構成されている。多孔質支持体80は、産物38の通過を可能にする開口部82を有し、使用中にフィルター74を支持する。産物38は、傾斜壁面52により排出口フィッティング54に向かって導かれる。有利には、フィルターアセンブリ88は、容器32の全内容物を1つのフィルターアセンブリにより、フリット76又はフィルター74を閉塞させずにろ過することができ、細胞壁断片又は培地12のより大きな粒子を含有する残屑等の不要な物質が少ないか又は含まない、高度に純粋な産物38を含有する流出液を依然として生成するように構成される。
【0041】
有利には、キャップ30は、液体がキャップ30を流れる際に容器のアレージに達するのに十分な長さを有するように選択された通気管66を有する。容器32には、典型的には、液体が20〜60%満たされており、容器32を傾けて容器の底部をキャップ30より上にすると、液体はキャップ30に向かって流れ、空気は、以前は容器の底部だったところに向かって移動する。容器32を傾けると、通気管66の端部は空気で満たされた空間に進入し、容器内容物と、今ではキャップ30より上にある容器底部との間のアレージに空気が進入することが可能になる。空気が通気管66を通過可能になることにより、幾つかの利点がもたらされる。液体の容積が空気等の気体と置換されなければ、液体は、壁が硬質な容器からほとんど流れ出てこないであろう。空気が通気管66を通過可能であることにより、液体培地を通過して培地及び細胞を撹拌し得るだけでなく、更に細胞断片を生成し得る泡が除去される。また、液体が、キャップ30及び排出口フィッティング54内をより滑らかに流れることが可能になり、それにより細胞断片及び残屑の生成がより少ないろ過が可能になる。更に、残屑のろ過及び産物38の分離が一段階で可能になり、それにより、時間が著しく短縮されるだけでなく、従来技術で使用される幾つかの処理ステップを排除することにより収率が向上する。好ましくは、通気管66を通過する空気又は他の気体はろ過されており、容器32に進入する前にあらゆる夾雑物が除去されていることが保証されたものであるか、又は夾雑物が含まれていないことが知られている供給源から提供された気体でもよい。
【0042】
通気フィッティング58aは大気に開放されているため、容器32を傾けて液体をキャップ30及びその排出口フィッティング54から注ぐと、ある程度の液体が通気管66に進入する場合があり、容器を傾けると共に更なる液体が通気管66の自由端に進入するため、その液体は、通気フィッティング58から流れ出る場合がある。したがって、脱着可能な蓋90(図2)を外部通気フィッティング58aに設けて通気管のその端部を密閉し、通気管66の開放自由端に進入する液体の体積を低減させることができる。いったん容器32を傾けて、通気管66の自由端が、容器底部と容器中の液体との間の何もない空間にあれば、蓋90を取り外すことができる。蓋90は任意選択である。
【0043】
更に、図4〜6を参照すると、通気フィッティング58に陽圧を付与することにより、容器内容物を、キャップ30、フィルターアセンブリ88、及び排出口フィッティング54を通して強制的に通過させるために、容器と容器内の液体との間の空気空間に陽圧を提供することができる。有利には、夾雑物が容器に進入するのを防止するために、陽圧の供給源と容器32のアレージとの間にフィルター(図示略)を設けるか、又は夾雑物を含んでいないことが知られている気体供給源を使用してもよい。手動で陽圧を付与する場合、注射器フィルターを使用して、除菌空気を通気口58から容器32に供給することができる。フィルターアセンブリ88の上流側の陽圧により、キャップ30及びフィルターアセンブリ88から液体がより迅速に押し出され、それにより容器32の内容物を処理し、産物38を分離する時間が更に低減される。球体又はひだ付きのアコーディオン型ふいご等のふいごを手で圧搾することにより、手動で陽圧を提供してもよい。実際、任意の手動で生成される圧力源を使用することができる。同様に、空気ポンプ、缶入りガス(空気、不活性ガス、又は他のガス)、窒素発生器、及び他の気体供給源を含む、陽圧の他の供給源を使用することができる。
【0044】
圧力がフィルターアセンブリ88を通過する液体を高速に通過させ過ぎて、更なる許容できない残屑を生成させるか、又は産物38の純度の許容できない低減を引き起こすか、又は精製カラム等の下流部品の結合容量を超過させることのないように、陽圧の程度を制御可能にすることは、任意はであるが好ましい。したがって、圧力調節器、圧力計、又は圧力リミッタ92を、陽圧の供給源及び通気入口フィッティング58aと連通するように設けることは、任意ではあるが有利であり得る。
【0045】
図5を参照すると、任意に、減圧口94を有するキャップ30を使用して、フィルターアセンブリ88の下流側に陰圧又は吸引を適用することができ、これにより、フィルターアセンブリ88を通して液体がより迅速に吸引される。ろ過液体及び産物38が減圧口94に吸引されるのを防止するために、バッフル96を、ポート94と、液体がフィルター74から排出口フィッティング54に向かって流出する流動経路との間に介在させる。陰圧は、ろ過液体にかかる重力が、減圧口から受ける力を超過するように選択され、ろ過液体が排出口フィッティング54から流れ出ることを可能にする。
【0046】
排出口フィッティング54は、液体容器又は他の処理装置を含む種々のデバイスと連通していてもよい。図4〜6を参照すると、キャップ30の排出口フィッティング54は、陥凹部56と密閉係合するか又は陥凹部56内に密閉されている脱着可能なコネクタ100に接続され、液密結合を提供する。コネクタ100は、好ましくは、コールダー(Coulder)コネクタ又は他のタイプの締付コネクタを含む。コネクタ100は、第1の管状コネクタ104aのバルブ102に密閉接続されている先細かつフランジ付き端部を備える遠位端を有する。バルブ102は、手動で、電気的に、又は気体を使って作動可能な任意のタイプのバルブでよい。バルブ102は、バルブレバー106により手動で作動する回転式ボールバルブとして示されている。図5に示されているように、液体及び産物38がフィルターアセンブリ88を通過するのを促進するために、減圧口94をキャップ30及び精製カラム26との間に設けてもよい。図5には、バルブ102の下流側端部にある減圧口94が示されているが、他の部品に配置されていてもよく、又はそれ自体の接続部を有していてもよい。必要に応じて、バッフル96(図5には表示されていない)が設けられる。
【0047】
任意のステップダウンコネクタ108が、第2の管状コネクタ104bによりバルブ102の下流側端部に接続されている。ルアーロックフィッティングを有する更なる任意のステップダウンコネクタ110が、第3の管状コネクタ104cによりコネクタ108の下流側端部に接続されていてもよい。ルアーロックフィッティング110は、クロマトグラフィーカラム又は精製カラム26等の更なる精製デバイスの入口フィッティング112に接続している。培地114を含有する管状体及び精製産物38が流れる排出口116を有する精製カラム26が示されている。カラム26は、フラッシュクロマトグラフィーカラムであってもよい。
【0048】
使用中、容器32を上下逆さまにして保持すると(手で又は好適な支持枠により)、容器32の内容物は、重力により及び/又はキャップ30のフィルターアセンブリ88を貫通するチューブ66からの圧力により、排出口フィッティング54から強制的に流れ出る。バルブ102は流れを制御し、好ましくは流速が変わるように調整可能である。必要に応じて、1つ又は複数のステップダウンコネクタ108、110は、精製カラム26の入口フィッティング112へのキャップ排出口54の流体結合に適合する。フィルターアセンブリ88は、単一ろ過ユニットにて不要な細胞36及び培地12のより大きな粒子を除去し、ろ過産物38を1つ又は複数の連通チューブを通して精製カラム26に提供する。カラム26は、増殖培地及び不要な粒子を除去するか又はそれらと結合して、精製カラム26の排出口116から高度に精製された産物38を提供する。カラム26からの精製産物38は、容器32内で生成されている産物38の性質に応じて様々である更なる使用のために収集される。
【0049】
粗フィルター又はフリット76及び下流の段階的多孔度フィルター74を有するろ過アセンブリ88を使用することにより、産物を、容器32内の不要な残屑から、単一ろ過ステップでより効率的に分離することができる。産物38のみを通過させるようにフィルター74の多孔度を選択することにより、及び密度勾配ろ過を使用することにより、フィルターアセンブリ88の閉塞を回避することができる。単一ステップろ過は、各ステップで最大約20%の産物を失う複数のろ過及び移送ステップよりもはるかに効率的である。
【0050】
ろ過時間は、産物38及び増殖培地12の性質に応じて様々であろう。しかし、約1リットルの増殖培地(大腸菌)及び産物(プラスミド+)を保持する2〜5リットルの容器32の場合、直径6.3cm(2.5インチ)及び厚さ0.3cm(1/8インチ)のフィルター74を使用して、約3時間のろ過時間が達成される(管66から陽圧をかけずに)。
【0051】
このろ過プロセス及び方法は、種々の大きさの容器32に適用可能であると考えられる。現行の増殖容器は、約1ミリリットルから200リットルの範囲であり、典型的には、容器容積の20〜60%が増殖培地で満たされる。しかし、フィルターアセンブリ88及びキャップ30は、必要に応じて、種々の大きさ及び形状の容器に適合し、通気管66を通して大気圧又は陽圧(大気圧を超える)を提供するように構成されていてもよい。フィルターアセンブリ88を保持するようにキャップ30を構成することにより、ろ過法に使用される、キャップを使用する単純化された装置が提供される。従来技術の方法では、容器32内の培地12中で産物38を増殖させ、液体をデカントし、それをバルク処理のために貯蔵し(時間が許す場合)、遠心分離し、1回又は複数回減圧ろ過し、その後精製カラム26に流すことが求められていた。本方法は、増殖容器32から精製カラム26へと直結しており、多数のステップを排除し、典型的には、従来技術の方法における各移送ステップに伴う産物38の喪失を排除する。したがって、より単純な方法、より迅速な方法、より効率的な方法、及びより安価な方法が提供される。
【0052】
更に、遠心分離による従来の分離は、遠心速度及び半径に応じて様々である力で細胞残留物を互いに押し付け、それらを圧縮する。重力による流れを用いるフィルターアセンブリは穏やかな分離であり、陽圧又は陰圧をかけてフィルターを通過する流量を増加させる場合でさえ、分離された細胞にかかる力は、遠心分離により加えられる力よりも小さいと考えられる。細胞は、フィルター及びフリットから擦り取って除去することができ、所望の場合には、フィルター及びフリットを通して液体又は気体を逆流させることにより除去することができる。これにより、フィルターアセンブリ88から除去された細胞を回収することができる。回収された細胞は、例えば、細胞断片を使用するプロセスで使用される異なる容器中の増殖培地に置くことにより、再使用することができる。したがって、フリット、フィルター、又はフィルターアセンブリ上の細胞及び細胞断片を収集し、それらを取り出し、所望の場合にはフリット、フィルター、又はフィルターアセンブリを逆洗することにより細胞断片を回収し、細胞及び細胞断片を別のアプリケータでの再使用のために提供する方法及び装置、及びそのような細胞及び細胞断片を再利用するための方法及び装置が提供される。
【0053】
フィルター74及びろ過ユニット88は、単一筺体(キャップ30)に設けられており、好ましくは単回使用の使い捨てのユニットを形成するように設計される。同様に、キャップ30を精製カラム26と連通するように配置させる部品は、好ましくは単一ユニットとして又は別々の部品からなるキットとして、好ましくはキャップ30(及びろ過74及びアセンブリ88)と共に提供されるか、又はキャップの排出口54に予め結合した状態で提供される。
【0054】
本開示及び引用文献を参考にすれば、当業者は、種々の方法に好適なフィルター74及びフィルターアセンブリ88を、過度の実験をせずに考案することができるであろう。その幾つかを以下で考察する。例えば、実質的に平面状のディスク積層型、又はレンズ状積層ディスクカートリッジ型の複数のフィルターは、デプスフィルターアセンブリ88に好適であると考えられる。異なる等級のセルロース系繊維を有するフィルターが好適であると考えられ、任意に、フィルター74又はフィルターアセンブリ88のいずれかの上に膜プレフィルター層を設けてもよい。Yavorsky、Blanck、Lambalot、及びBrunkowによる上記で特定されている文献、表題The Clarification of Bioreactor Cell Cultures for Biopharmaceuticals、Pharmaceutical Technology、2003年3月、62〜76頁には、種々の圧力及び流速を適用する従来技術の用途でのデプスフィルターを選択するための種々の要因が記載されており(この文献の内容は、参照により本明細書に援用される)、これらの要因は、フィルター74及びフィルターアセンブリ88に適用可能な場合がある。米国特許第7,125,434号にはデプス勾配密度フィルターが記載されており、そのフィルターは、約100cm/時以上の流速及び約1.45cm/時/kPa(約10cm/時/psi)を超える初期透水率でさえ、約25μm〜約1μmの粒子を保持する前ろ過領域及び約0.3〜1μmの範囲の粒子を保持する一次ろ過領域を備える。そのようなフィルターは、本明細書に記載の使用に好適であると考えられる。またこの特許には、各々が異なる粒径分布領域(約25μm〜0.2μmの全範囲)の粒子を保持するように構成された3つの領域を有するデプスフィルターが記載されているが、この特許には前濃縮領域デバイスが記載されており、そのようなデバイスは、ろ過液体中の残屑のかなり部分を保持するために、フィルターを繰り返し通過するように液体を再循環させる必要がある。同じフィルター(複数の場合を含む)を繰り返し通過させるこの手法とは対照的に、本明細書に記載の方法、システム、及び装置は、好ましくは単回流動デバイスであり、前濃縮領域はなく、細胞36及び残屑が細胞36及び残屑から完全に分離される領域を有し、さらに精製カラム26により方法及びシステムの終わりで精製産物38が生成される。したがって、本方法、装置、及びシステムは、好ましくは前濃縮工程を使用しない。その代わり、培地12、細胞36、及び産物38は、キャップ30及びそのフィルター74を単回通過して十分に清澄化され、その結果生じた液体を、精製チューブ26を通して通過させ、そこで高度に精製された産物38が生成される。
【0055】
更に、その特許では、高速流動デプスろ過デバイス又は接線流デバイスも使用されている。精製カラム26と連通している場合、本ろ過装置、システム、及び方法における流量は、より制限されることになり、典型的には、最大流は、ろ過カラムの結合係数により、約20〜25cm/時に制限される。
【0056】
米国特許出願公開第2005/0148846号には、離間デプスフィルター積層体が記載されており、このフィルターは、端板により保持され、好ましくは熱可塑性枠に埋包された使い捨てフィルターを形成している。端板により、液体がフィルターアセンブリを出ていく前に1つ又は複数の板を実質的に同時に(つまり、並行して)通過することが引き起こされる。この構造も本明細書に記載の使用に好適であると考えられるが、離間積層フィルターを収容するために長さを増加させると、キャップ30のサイズを、より顕著に増大させることが必要となる場合がある。特許第7,125,434号及び出願公開第2005/0279695号の内容は、参照により本明細書に援用される。これらの開示及び本記載を考慮すると、本明細書に開示されている装置及び方法に好適なフィルター及びフィルターアセンブリは、過度の実験をせずに利用可能であると考えられる。
【0057】
本明細書に記載の装置を使用するのに好適であると考えられる例示的な方法には、キャップ30のフィルターアセンブリ88を使用して精製されるタンパク質を含有する産物38を生成するために増殖培地12を使用することが含まれる。哺乳動物細胞36(例えば、CHO、HEK、HeLa等)を使用して、種々の抗体を含む産物38を産生することができる。CHO細胞36は、タンパク質38を含む産物を細胞から分泌し、得られる産物38に由来する抗生物質には、Avastin(登録商標)及びAransepという商標で市販されている抗生物質製品が含まれる。CHO細胞は、バイオテクノロジー製造業において現在最も広く使用されている哺乳動物細胞であると考えられており、Aranespという商標で市販されているアムジェン社(Amgen Inc.)の貧血治療薬及びAvastin(登録商標)という商標で販売されているロシュ・ホールディング社(Roche Holding AG)の抗がん剤等のよく売れている医薬品を製造するために使用されている。
【0058】
したがって、本明細書に記載の方法及び装置は、バチルス、アスペルギルス、及びトリコデルマ等の真菌を含む細胞36を使用するのに好適であると考えられる。真菌は、種々の酵素を含む産物38を生産する際の使用に好適であると考えられる。1つの望ましい酵素は、デンプン及びグリコーゲン等の大型のα結合性多糖のα結合を加水分解してグルコース及びマルトースを生成する酵素EC3.2.1.1のα−アミラーゼである。α−アミラーゼは、ヒト及び他の哺乳動物に見出される主要な形態のアミラーゼである。α−アミラーゼは、貯蔵栄養分としてデンプンを含有する種子中にも存在し、また、多数の真菌によっても分泌される。α−アミラーゼは、エタノール生産にも使用され、穀物中のデンプンを発酵性糖に分解する。高果糖コーンシロップ生産の第一段階は、α−アミラーゼでコーンスターチを処理して、オリゴ糖と呼ばれるより短鎖の糖を生成することである。したがって、本開示の方法及び装置は、他の酵素の中でもα−アミラーゼの生産に使用するために、及び真菌を使用して種々の産物38を生産するために好適であると考えられる。
【0059】
真菌から作られた酵素は、洗濯用洗剤、パルプ及び紙加工、生体高分子、化学合成、動物飼料、糖還元、ならびに油、ガス及びエタノールの生産にも使用される。したがって、本開示の方法及び装置は、真菌を使用して、これら及び他の消費者製品に使用するのに好適な酵素産物38を生産するのに好適であると考えられる。
【0060】
昆虫細胞(例えば、Sf9、HiFive等)を含む細胞36を使用して、タンパク質、ペプチド、及び種々のワクチンを分泌させることができる。例示的な使用には、米国特許第4,879,236号に記載のように、産物38を生産するために培養昆虫細胞を組換えバキュロウイルスに感染させることが含まれる。この文献の全内容は、参照により本明細書に援用される。同様に、米国特許第4,745,051号に記載のように、昆虫細胞を使用して、宿主昆虫細胞中で目的遺伝子を発現させることが可能な組換えバキュロウイルスを産生することができる。この文献の全内容は、参照により本明細書に援用される。同様に、組換えバキュロウイルスに感染したSF9細胞は、ヒトトランスフェリンタンパク質を発現するのに好適であると考えられる。また、昆虫細胞を使用して、インターロイキン2を生産することができる。バキュロウイルスからの発現を使用して、インフルエンザワクチン(季節性及び汎発性)、ヒトパピローマウイルス、病原体、腫瘍(前立腺がん及び乳がん)及び糖尿病の治療用ワクチン、及びリポタンパク質リパーゼ欠損の遺伝子治療用産物が生産されている。細胞から分泌される他のタンパク質には、本開示の方法及び装置を使用して回収可能であると考えられる産物38として、アミノ酸成分、及びヒトパピローマウイルスワクチンを含むワクチンが含まれる。
【0061】
藻類を含む細胞36を使用して、様々な産物を生産することができる。例えば、種々の油類、炭化水素系産物、脂質、糖、及び乳酸を発現するためにシアノバクテリアを使用することが知られている。組換えアシル−ACPレダクターゼ酵素及び組換えアルカナール脱炭酸モノオキシゲナーゼ酵素を含む組換えシアノバクテリア(これら2つの酵素のうち少なくとも一方は組換えシアノバクテリアに関して異種性である)を、米国特許第8,043,840号により詳しく記載されているように、光及び二酸化炭素の存在下で培養して、n−ペンタデカン等のn−アルカンを生産することができる。この文献の全内容は、参照により本明細書に援用される。これらの藻類を含む細胞36は、本開示の方法及び装置を用いて、なかでも上記で特定されている産物を生産するのに好適であると考えられる。
【0062】
上記の記載は例として示されており、限定のために示されているのではない。上記の開示を考慮すると、当業者は、種々の多孔度のフィルター74及び/又はフリット76を使用して様々な産物38を提供することを含む、本明細書に開示されている本発明の範囲及び趣旨内に含まれる変更例を考案することができる。上記の装置及び方法は、生物の細胞で発現され、細胞、細胞断片、及び通常は細胞が増殖する増殖培地よりも小さいサイズを有する産物の分離に使用するために記載されている。好ましくは、産物は、産物38が生産される容器32中の残屑の小粒子の大部分よりもその最大寸法が少なくとも10倍小さい。しかし、キャップ及びフィルター機構及び関連する使用方法は、同様に、周囲の残屑から他の望ましい小さい産物を分離することに適用可能である。したがって、本方法は、好ましい細胞産物に限定されない。更に、本明細書に開示されている実施形態の種々の特徴は、単独で又は互いの様々な組み合わせで使用することができ、本明細書に記載の特定の組み合わせに限定されることは意図されていない。したがって、特許請求の範囲は、例示されている実施形態により限定されない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6