特許第6351981号(P6351981)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6351981
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】低光沢離型紙用基材
(51)【国際特許分類】
   D21H 19/38 20060101AFI20180625BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20180625BHJP
   D21H 19/44 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   D21H19/38
   D21H27/00 A
   D21H19/44
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-5278(P2014-5278)
(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公開番号】特開2015-132031(P2015-132031A)
(43)【公開日】2015年7月23日
【審査請求日】2016年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】登坂 昌也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義雄
【審査官】 堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−116643(JP,A)
【文献】 特開平05−169817(JP,A)
【文献】 特開2008−088565(JP,A)
【文献】 特開2010−229576(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0062913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00− 1/38
D21C 1/00− 11/14
D21D 1/00− 99/00
D21F 1/00− 13/12
D21G 1/00− 9/00
D21H 11/00− 27/42
D21J 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の少なくとも一方の面に、顔料、及び接着剤を含有する目止め低光沢層を備え、前記顔料中に体積分布平均粒子径が3〜10μmである炭酸カルシウムを顔料全体で100重量部に対して50〜100重量部含有し、前記接着剤が前記顔料100重量部に対して固形分で20〜50重量部となるように含有された低光沢離型紙用基材。
(但し、接着剤としてカゼイン、スチレン−ブタジエンラテックス、及び、次のA〜Cの3種類の樹脂成分のいずれかを含有する場合を除く。
A:ポリアクリル酸系樹脂成分
B:ポリビニルアルコール系樹脂成分
C:ポリアクリル酸−ポリビニルアルコール共重合体)
【請求項2】
前記低光沢離型紙用基材表面の光沢度が2.7%以下である、請求項1に記載の低光沢離型紙用基材。
【請求項3】
前記低光沢離型紙用基材の王研式透気抵抗度が30000sec以上である、請求項1又は2に記載の低光沢離型紙用基材。
【請求項4】
接着剤が合成樹脂ラテックスのエチレン−酢酸ビニル系共重合体及び/又はポリビニルアルコールである、請求項1〜3の何れか1項に記載の低光沢離型紙用基材。
【請求項5】
前記の低光沢層の塗工量が5〜20g/mである、請求項1〜4の何れか1項に記載の低光沢離型紙用基材。
【請求項6】
前記の炭酸カルシウムが軽質炭酸カルシウムである、請求項1〜5の何れか1項に記載の低光沢離型紙用基材。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の低光沢離型紙用基材の上に、剥離層を設けてなる工程紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型紙用基材及び離型紙用基材を使用した工程紙に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、合成皮革やセラミックグリーンシートなどの製造工程中にキャリアーとして使われる工程紙、及びそれに用いられる離型紙用基材や、粘着ラベル、粘着シートなどに使用する剥離紙に用いられる剥離紙原紙等の離型紙用基材に関し、特に、従来にはない低光沢で、優れた漆黒性を有する合成皮革を製造でき、剥離剤の目止め性に優れた離型紙用基材に関する。
【0003】
ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙、クレーコート紙、プラスチックフィルムなどの基材に、シリコーン系樹脂やアルキッド系樹脂などの剥離層を設けた離型紙は、塩化ビニルレザーやポリウレタンレザーなどの合成皮革、セラミックシートおよび炭素繊維プリプレグなどの製造工程に使用される工程紙や、粘着ラベル、粘着シート、および粘着テープ等の剥離紙、食品分野ではベーキングペーパーやベーキングトレーなど、様々な用途に使用されている。このような離型紙の原紙に求められる品質としては、シリコーン系樹脂などの剥離剤の目止め性以外にも、耐溶剤性、耐熱性および寸法安定性などが求められる。
【0004】
工程紙は、塩化ビニルレザーやポリウレタンレザー等の合成皮革やセラミックシート、シリコンゴム、およびマーキングフィルム等の製造工程において、ウレタンペーストや塩化ビニルペーストなどをキャスティングする際に使用する剥離用シートとして用いられる。従ってこのような工程紙は、クラフト紙、上質紙、コート紙、またはプラスチックフィルム等の基材表面に、シリコーン系樹脂、アルキッド系樹脂、またはポリプロピレン系樹脂等の剥離層を有している。
【0005】
工程紙の用途の一つとして、合成皮革用の工程紙が挙げられる。合成皮革は、工程紙上にウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、またはポリアミド樹脂などの合成樹脂を塗工し乾燥・固化させた後に、必要に応じて接着剤を介して前記固化させた合成樹脂層と基布とを貼合し、最終的に合成皮革を工程紙から剥がすことによって造られる。
【0006】
工程紙の基材としては、上質紙、コート紙、およびキャストコート紙の他に、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチックフィルム、合成紙、あるいは金属箔なども使用されるが、リサイクル性に優れる点や、合成皮革の加工適性として重要である耐熱性に優れる点から、天然パルプを使用した紙基材を使用することが好まれている。この場合、合成皮革の面状は工程紙の面状を転写することによって得られるため、高級感のあるエナメル調の合成皮革を製造する際には、高い光沢度と鏡面を有するキャスト塗工紙が基材として使用されている(特許文献1〜3)。しかしながら、近年市場では低光沢タイプの合成皮革が、エナメル調と対比されるものとして需要が増してきている。具体的に合成皮革の面が75°光沢度で2.2%以下であり、漆黒性のある面が求められている。
【0007】
低光沢度タイプの合成皮革は、剥離層に電子線や紫外線などの放射線硬化型の剥離剤を使用し、あるいは更にマット化剤を配合した工程紙を使用したり(特許文献4、5)、ポリプロピレン(PP)系離型シートを用いPP樹脂を該離型シート上に溶融押し出し塗工する際、マット調のクーリングロールに接触させることによって製造されてきた。しかしながら、日本では熱硬化性の剥離剤を使用することが主流であるため、既存の塗工設備では製造できず、放射線照射設備を新たに導入しなければならないという欠点があり、PP系離型シートを使用する場合には、前記したように、紙基材と比較して耐熱性およびリサイクル性に劣るという欠点があった。
【0008】
また、平均粒子径が3〜20μmでアスペクト比が10以上であるカオリン等の板状の顔料と合成樹脂ラテックスの組み合わせ(特許文献6)により、低光沢度で、剥離剤の目止め性に優れた離型紙用基材が提案されているが、板状の顔料では、基材の表面が均一な凹凸ではないので、合成皮革の面にムラができ、漆黒性に劣る。また、合成皮革面の光沢度も3%以上となり、求められている低光沢にはならない。
【0009】
更に顔料もシリカを用いて白紙光沢度を下げること(特許文献7)を提案されているが、多孔質の構造で白紙光沢度は下がるが剥離剤の目止め性に劣るため、剥離層のシリコーン系樹脂が基材内部へ浸み込み、剥離性に劣る。また、シリコーン系樹脂を増やすことで剥離性を改善できるものの合成皮革面の光沢度も高くなる。
【0010】
なお、工程紙はシリコーン系樹脂などの剥離剤を基材に塗工することによって得られるが、剥離剤が基材表面に残ることによって剥離効果が発揮されるため、剥離剤が基材内部へ浸み込まないようにするための目止め性が重要である。目止め性が不十分である場合、合成皮革製造時に工程紙を繰り返し使用することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−47476号公報
【特許文献2】特開2001−98495号公報
【特許文献3】特開2005−97781号公報
【特許文献4】特開2003−182006号公報
【特許文献5】特開2000−328464号公報
【特許文献6】特開2008−88565号公報
【特許文献7】特開2013−181255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、剥離層を塗布・形成する際に十分な剥離剤の目止め性に優れ、2.7%以下の低光沢である離型紙用基材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1.原紙の少なくとも一方の面に、顔料、及び接着剤を主成分とする目止め低光沢層を備え、前記顔料中に体積分布平均粒子径が3〜10μmである炭酸カルシウムを顔料全体で100重量部に対して50〜100重量部含有し、前記接着剤が前記顔料100重量部に対して固形分で20〜50重量部となるように含有された低光沢離型紙用基材。
2.前記離型紙用基材表面の光沢度が2.7%以下である、1に記載の低光沢離型紙用基材。
3.前記剥離紙用基材の王研式透気抵抗度が30000sec以上である、1〜2に記載の低光沢離型紙用基材。
4.接着剤が合成樹脂ラテックスのエチレン−酢酸ビニル系共重合体及び/又はポリビニルアルコールである、1〜3に記載の低光沢離型紙用基材。
5.前記の低光沢層の塗工量が5〜20g/m2である、1〜4の何れかに記載の低光沢離型紙用基材。
6.前記の炭酸カルシウムが軽質炭酸カルシウムである、1〜5の何れかに記載の低光沢離型紙用基材。
7.1〜6の何れかに記載の低光沢離型紙用基材の上に、剥離層を設けてなる工程紙。
【発明の効果】
【0014】
本発明の低光沢離型紙用基材は、その目止め低光沢層の表面が低光沢度を有し、さらにその表面に形成した剥離層に対する目止め性に優れるので、剥離層を塗布・形成することで低光沢かつ優れた剥離性を有する工程紙を製造できる。
また、上記記載の工程紙は合成皮革製造工程にて使用されることにより、確実に剥離させるので、接着剤を含有する塗工液により形成された塗工層である目止め低光沢層の転移による合成皮革の外観不良の発生を抑制することができる上、再生可能であるという利点を有する。更に合成皮革面の光沢度は2.7%以下、好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2.2%以下の低光沢で、かつ漆黒性に優れる合成皮革を、粘着シートの離型紙として使用される際には粘着シートを確実に剥離させることができる。
更に剥離性に優れるので、塗工層の転移による合成皮革の外観不良の発生を抑制することができる上、再生可能であるという利点を有する。
なお、低光沢離型紙用基材の目止め性の簡易評価として、透気抵抗度で評価し、王研式透気抵抗度で30000sec以上、かつ表面に欠陥がなければ、良好な目止め性を有する。また、漆黒性については、良好な目止め性を有し、かつ表面にムラがないことが重要である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(顔料)
目止め低光沢層用の塗工液を塗工することにより形成された、本発明の低光沢離型紙用基材の目止め低光沢層で使用される顔料としては、体積分布平均粒子径が3〜10μmの炭酸カルシウムを配合することが必須である。また、その配合量は、全顔料分に対して50重量部以上であることが必須であり、好ましくは70重量部以上である。
また、体積分布平均粒子径が3μm未満では白紙光沢度が高くなり過ぎ、10μmを超えるとブレード塗工の際に大粒子径の粒で、ストリークやスクラッチなどが発生し易くなる。また、特に体積分布平均粒子径を4〜8μmとすることが塗工適性や塗工層の均一性を更に向上させる点において好ましい。
また、体積分布平均粒子径が3〜10μmの顔料を配合した場合であっても、その配合量が全顔料分に対して50重量部未満の場合には、光沢度、剥離剤の目止め性、塗工性などのすべての性能を満足させることができなくなる。
また、炭酸カルシウムの種類として、粒子径や形状を調整し易い軽質炭酸カルシウムが好ましい。
なお、低光沢の観点から紙表面に微細な凹凸を持ち、漆黒性の観点から紙表面は均一であることが好ましい。そのことから、顔料の形状はアスペクト比が小さく、均一に揃えることが重要となる。
【0016】
本発明においては、上記の炭酸カルシウムの他に公知の顔料を混合して使用してもよい。例えば、クレー、コロイダルシリカ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの無機顔料;アクリル系或いはメタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−イソプレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の樹脂からなる有機顔料、澱粉などが挙げられ、これらの顔料を炭酸カルシウムと1種以上混合して用いてもよい。炭酸カルシウム以外の顔料の含有率は、塗工層用顔料全体を100重量部とした際、0〜50重量部未満とすることで性能を維持できる。炭酸カルシウム以外の顔料の含有率のより好ましい範囲は0〜30重量部である。
【0017】
目止め低光沢層の剥離剤に対する目止め性を向上させるため、なかでも板状の顔料が効果的であることは一般的に知られているが、配合量を多くすると、均一な凹凸にならず、光沢度が高くなる。なお、板状の顔料としては、カオリン、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0018】
(接着剤成分)
本発明の低光沢離型紙用基材の目止め低光沢層には、接着剤として、顔料100重量部に対して固形分で20〜50重量部となるように配合することが必須である。また、さらに顔料100重量部に対して固形分で22〜40重量部となるように、より好ましくは24〜35重量部となるように配合することが、塗工層の均一性や離解性の点において好ましい。
20重量部未満の場合には、剥離剤層の目止め効果が悪化し、合成皮革の製造において合成皮革を工程紙から剥離する際の剥離性に劣る。一方、50重量部より多い場合には顔料の凹凸が小さくなり、合成皮革の光沢度が高くなることで目的とする低光沢ではなくなる。また、使用した後に紙として再利用の際、パルパーによる離解性が劣るため製紙原料として再利用することが困難になる。
【0019】
接着剤としては、合成樹脂ラテックス、カゼイン、大豆蛋白や合成蛋白、ポリビニルアルコール、酸化澱粉、エステル化澱粉等の澱粉類、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、スチレン−アクリル系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、尿素系樹脂、アルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエチレン等の中から適宜選択して使用することができる。例えば、これらの接着剤の1種または2種以上を併用することもできる。
【0020】
上記の接着剤の中で、低光沢度、目止め性の品質及び塗工性の観点から、合成樹脂ラテックス、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。その中でも合成樹脂ラテックスのエチレン−酢酸ビニル系共重合体を用いることがより好ましい。また、ポリビニルアルコールは、配合することにより、低光沢で、高い目止め性を有する目止め低光沢層が得られるが、配合量が多いと塗料濃度が低下し、乾燥負荷が大きくなり、生産性が悪化する。配合量は、生産性とのバランスを考慮しながら決定することが必要となる。
【0021】
(粘度調整)
低光沢度化には、目止め低光沢層用塗工液の粘度を高めにすることが好ましく、塗工方式にもよるが塗工適性も含めるとB型粘度計で300〜3000mPa・secにすることが好ましい。
上記のB型粘度計で300mPa・sec未満では、塗工液が原紙に沈み込むので、光沢度及び目止め性に劣る。そのため、品質確保には塗工量アップが必要となるので生産性に劣る。一方、B型粘度で3000mPa・secより高くなると塗工液の流動性が乏しくなり、塗工液をコータータンクに送液することが困難となる。なお、上記の粘度調整には、増粘剤を配合し調整することが好ましい。
【0022】
ただし、本発明における目止め低光沢層を形成するための各材料自体が分散液や溶液の形態で使用されるときに、目止め低光沢層を形成するための組成物には、各材料に由来する溶媒が含有される。そのため、各材料を選択する際には、それぞれの材料が既に有する溶媒成分の量が多くなりすぎたり、少なすぎたりすることがないようにする必要がある。
更に、本発明における塗工層に、分散剤、離型剤、保水剤、消泡剤、防腐剤、耐水化剤等の通常使用される各種助剤を含有させても良い。
【0023】
(原紙)
本発明で使用される原紙は、工程紙等に使用される原紙でよく、木材パルプを主体とするものが用いられる。木材パルプとしては、針葉樹クラフトパルプ、広葉樹クラフトパルプ、サルファイトパルプ等の化学パルプ、ストーングラインドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ、リファイナーグラインドパルプ等の機械パルプ、及び、新聞用紙、コート紙、上質紙等から得られる再生パルプなどを、適宜配合して得ることができる。
また、必要に応じてケナフ、麻、竹等の非木材系のパルプ、ガラス繊維、ポリエチレン繊維等の合成樹脂繊維など、セルロース繊維以外の繊維材料を配合することも可能である。
【0024】
上記原紙の抄造に関しては、必要に応じてサイズ剤、紙力増強剤、定着剤、歩留り向上剤、染料などの内添薬品、及び、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタン、タルク、水酸化アルミニウム、ホワイトカーボンなどの内添填料を添加したり、抄紙工程中で澱粉、ポリビニルアルコールなどの紙力向上剤、表面サイズ剤、及び染料等をサイズプレスコーター、ゲートロールコーター等を用いて塗布することにより、適宜表面処理を行うことも可能である。
【0025】
本発明で使用する原紙の坪量は50〜200g/m2が好ましい。坪量が50g/m2未満では、紙腰、強度が低下するため、使用時に断紙やシワが発生し易くなる。一方、200g/m2を超えると、抄造時の乾燥負荷が増加することにより生産性が低下するので好ましくない。
【0026】
目止め低光沢層は、原紙の片面当たり固形分で3〜20g/m2の範囲で形成するのが好ましい。3g/m2未満の場合は、原紙表面のパルプ繊維間の空隙を完全に目止めすることができないため、剥離剤の浸透を抑えることができない。一方、20g/m2を超えても目止め低光沢層の塗工量の増加に伴う品質の向上が期待できず、不経済である。前記目止め塗工層は、目止め効果を向上させるために片面だけでなく両面に形成してもよい。両面に目止め低光沢層を形成する場合には、それぞれの面について上記の通り固形分で3〜20g/m2の範囲である形成するのが好ましい。
【0027】
原紙に目止め低光沢層を形成するための塗工方式としては、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、コンマコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、バーコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等の公知の塗工機を用いた方法の中から適宜選択することができる。
【0028】
本発明の低光沢離型紙用基材の白紙光沢度は、75°光沢度計で2.7%以下であることが好ましく、さらに好ましくは2.5%以下である。2.7%以下であれば、剥離層を設けた工程紙に転写された合成皮革の光沢度が2.2%以下の低光沢が得られる。
【0029】
(剥離層)
本発明の低光沢離型紙用基材を工程紙の基材として使用する場合、目止め低光沢層上に剥離剤を塗被して剥離層を設ける。剥離剤としては、光沢度の低いシリコーン系樹脂が好ましい。その塗工量は特に限定されるものではないが、0.5〜2.0g/m2であることが好ましい。0.5g/m2より少ないと剥離性が不足し、合成皮革から工程紙や粘着剤層を剥がす時、紙むけや断紙が起こる。一方2.0g/m2より多い場合には、原紙の凹凸が減少し、光沢度が高くなる。また、剥離性が過剰になり、工程中に目止め低光沢層の浮きや剥がれが発生する。
【0030】
本発明の低光沢離型紙用基材は、工程紙用の基材として適しているが、一般印刷用途、袋用途、粘着ラベル用途等、その他の用途にも利用することができる。工程紙の中でも特に合成皮革製造用の工程紙の基材に好適に用いられるが、セラミックグリーンシート、炭素繊維プリプレグなどの工程紙の基材にも利用できる。
【0031】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に示すが、本発明はこれらによって何等制約を受けるものではない。
実施例において、顔料の体積分布平均粒子径、光沢度、剥離剤目止め性、離解性、塗工適性については、下記の方法により評価した。
【0032】
<顔料の体積分布平均粒子径>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定器(マルバーン(株)製、機器名:マスターサイザーS)を用いて顔料粒子の体積粒度分布を測定し、50%の粒径を体積分布平均粒子径とした。
【0033】
<B型粘度>
JIS Z8803に準じて、B型粘度計(BM型VISCOMETER:TOKIMEC INC.製)を用いて行った(測定条件:温度30℃、回転数60rpm)
【0034】
<光沢度>
JIS P 8142:2005に従い測定した。
【0035】
<透気抵抗度>
王研式透気抵抗度(JIS P 8117:2009)に従い測定した。
【0036】
<塗工層の均一性>
染色液として1%のオイルレッドのトルエン溶液を作成した。この染色液を離型紙用基材の塗工面に均一に塗布し、5秒後にガーゼなどで拭き取った後、目止め低光沢層のムラ、ピンホールやストリークなどの欠陥を観察して評価した。
評価基準
○:ムラ、欠陥がほとんどなし
△:ムラもしくは欠陥が若干あり
×:ムラもしくは欠陥が多い
【0037】
<離解性>
Tappi標準の離解機を用い、離型紙用基材を濃度1.5%、容量2.0リットル、時間30分間とした場合における、離型紙用基材の離解の程度を評価した。
評価基準
○:離解性良好
△:一部未離解物が残る
×:離解不能
【0038】
<塗工適性>
ブレード塗工時のストリーク、スクラッチ、塗布ムラの発生度合いを評価した。
評価基準
○:発生しない
△:若干発生する
×:多く発生する
【実施例1】
【0039】
顔料は自製の軽質炭酸カルシウムA((体積分布平均粒子径:5.0μm)(固形分73重量%))を固形分が100重量部、バインダーはラテックス{BE7000:中央理化工業社製、エチレン・酢酸ビニル系共重合体(固形分55重量%)}を固形分で25重量部となるように、さらに増粘剤及び分散剤、消泡剤、潤滑剤を適宜微量配合して、固形分68重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製した。この塗工液を用い、坪量130g/m2の上質紙の片面に塗工量が10g/m2になるように塗工液をブレードコーターで塗工して目止め低光沢層を設け、離型紙用基材を製造した。この離型紙用基材について光沢度、透気抵抗度、塗工層の均一性、離解性の評価を行った。
【実施例2】
【0040】
顔料を軽質炭酸カルシウムA((体積分布平均粒子径:5.0μm)(固形分73重量%)を固形分で55重量部、カオリン(KCS、イメリス社製、体積分布平均粒子径:1.4μm)(固形分70重量%)を固形分で45重量部使用し、固形分67重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製した以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
【実施例3】
【0041】
顔料を自製の軽質炭酸カルシウムB((体積分布平均粒子径:3.0μm)(固形分71重量%))に変更した以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
【実施例4】
【0042】
顔料を自製の軽質炭酸カルシウムC((体積分布平均粒子径:9.0μm)(固形分74重量%))に変更した以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
【実施例5】
【0043】
バインダーとして、ラテックスを固形分で20重量部配合し、固形分69重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製した以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
【実施例6】
【0044】
バインダーとして、ラテックスを固形分で50重量部配合し、固形分65重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製した以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
【実施例7】
【0045】
バインダーとして、PVA((PVA117、クラレ製)(固形分13重量%)を固形分で20部配合し、固形分38重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製し、塗工量を8g/m2とした以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
【0046】
[比較例1]
顔料を自社製の軽質炭酸カルシウムD((体積分布平均粒子径:2.5μm)(固形分70重量%))に変更し、固形分66重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製した以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
[比較例2]
顔料を自製の軽質炭酸カルシウムE(体積分布平均粒子径:12μm)(固形分75重量%)に変更し、固形分69重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製した以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
[比較例3]
顔料を合成非晶質シリカ(ミズカシルP-50 水澤化学製、体積分布平均粒子径:10μm)(固形分20重量%)に変更し、固形分23重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製し、塗工量を5g/m2としたこと以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
[比較例4]
顔料を軽質炭酸カルシウムA:40部、カオリン:60部に変更し、固形分67重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製したこと以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
[比較例5]
バインダーとして、ラテックスの配合量を15部配合し、固形分69重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製したこと以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
[比較例6]
バインダーとして、ラテックスの配合量を60部配合し、固形分65重量%の目止め低光沢層用塗工液を調製したこと以外は実施例1と同様に離型紙用基材を得た。
【0047】
実施例1〜7、比較例1〜6で製造した離型紙用基材の品質評価結果を表1に示した。
【表1】
【0048】
本発明に沿った例である実施例1〜7によれば、光沢度が低く、透気抵抗度、塗工性の均一性、離解性、塗工適性に優れるが、体積分布平均粒子径が3μm未満の比較例1によると光沢度が高くなり、逆に10μmを超える比較例2によれば塗工層の均一性に劣り、塗工適性も悪くなる。
炭酸カルシウムに代えてシリカを採用した比較例3によると光沢度は低くなるが透気抵抗度、塗工層の均一性が悪くなる。更に塗料濃度が低くなるため、乾燥負荷が大きく、塗工量の確保も困難となってくる。
炭酸カルシウムよりカオリンの比率を多くした比較例4によると光沢度が高くなる。
合成樹脂ラテックスの含有量が少ない比較例5では、透気抵抗度、塗工層の均一性に劣り、逆に含有量が多い比較例6によると、白紙光沢度が高く、離解性に劣る結果となった。