特許第6352003号(P6352003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6352003変性ポリマーの製造方法及びジエン系ポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352003
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】変性ポリマーの製造方法及びジエン系ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/42 20060101AFI20180625BHJP
   C08F 8/50 20060101ALI20180625BHJP
   C08C 19/25 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   C08F8/42
   C08F8/50
   C08C19/25
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-45303(P2014-45303)
(22)【出願日】2014年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-196487(P2014-196487A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年12月27日
(31)【優先権主張番号】特願2013-45810(P2013-45810)
(32)【優先日】2013年3月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】川合 伸友
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6087176(JP,B2)
【文献】 特開2014−196486(JP,A)
【文献】 特開2014−196485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F8
C08C19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素−炭素二重結合を主鎖に持つポリマーを、前記炭素−炭素二重結合を酸化開裂させることで分解して分子量を低下させたポリマーと、下記式(A)で表されるアルコキシシリル基を構造に有する3官能性分子とを含む系を、酸性の場合は塩基性に、塩基性の場合は酸性になるように酸塩基性を変化させることにより、前記分解したポリマーと3官能性分子とを結合させて、主鎖にアルコキシシリル基が導入された変性ポリマーを得ることを特徴とする変性ポリマーの製造方法。
【化1】
但し、式(A)において、R、R及びRは、それぞれアルデヒド基、カルボキシル基、炭素数1〜5のアルキル基を有するケト基、又は炭素数1〜5のアルキル基を有するエステル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【請求項2】
前記分解したポリマーが、下記式(1)で表される構造を末端に含むことを特徴とする、請求項1に記載の変性ポリマーの製造方法。
【化2】
但し、式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を示す。
【請求項3】
前記式(A)で表されるアルコキシシリル基を構造に有する3官能性分子を、ビニル基を少なくとも1つ有する3官能性分子の炭素−炭素二重結合を酸化開裂させて得ることを特徴とする、請求項1又は2に記載の変性ポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記変性ポリマーが、下記式(2)〜(5)で表される結合構造のうちの少なくとも1種の結合構造を分子内に有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ポリマーの製造方法。
【化3】
但し、式(2)〜(5)において、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【請求項5】
前記炭素−炭素二重結合を、過ヨウ素酸を用いて酸化開裂させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の変性ポリマーの製造方法。
【請求項6】
反応系が水系エマルションであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性ポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記炭素−炭素二重結合を主鎖に持つ前記ポリマーがジエン系ゴムポリマーであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の変性ポリマーの製造方法。
【請求項8】
前記ジエン系ゴムポリマーが天然ゴム又は合成イソプレンゴムであることを特徴とする、請求項7に記載の変性ポリマーの製造方法。
【請求項9】
ポリマー主鎖にアルコキシシリル基を1〜5モル%導入することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の変性ポリマーの製造方法。
【請求項10】
下記式(2)〜(5)で表される結合構造のうちの少なくとも1種を含む連結基を分子内に有し、ジエン系ポリマー鎖が前記連結基を介して連結されてなるジエン系ポリマー。
【化4】
但し、式(2)〜(5)において、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【請求項11】
前記ジエン系ポリマー鎖がジエン系ゴムポリマー鎖であることを特徴とする、請求項10に記載のジエン系ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリマーの製造方法及びジエン系ポリマーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムなどの天然のポリマーや、合成されたポリマーそのものの特性を変化させる技術として、末端構造変性や、側鎖に官能基を直接付加したり、ポリマーをグラフトさせて官能基を付加させたりする技術が用いられる(例えば、下記特許文献1〜5)。しかしながら、溶液重合、乳化重合にかかわらず、主鎖構造に官能基を簡易的に導入する方法は得られていない。また、従来の技術では、意図せずに分子量の低下が起きることがあり、使用する対象によっては物性への悪影響があると考えられる。
【0003】
下記特許文献6には、接着剤、粘着剤、シーリング剤、コーキング剤、可塑剤等として有用な解重合天然ゴムに関し、有機溶剤に溶解した脱蛋白天然ゴムを、金属系触媒の存在下で空気酸化することにより解重合させて、数平均分子量が2000〜50000の液状の解重合天然ゴムを製造することが開示されている。この文献には、主鎖が空気酸化によって分解させることで、一方の末端にカルボニル基を他方の末端にホルミル基を持つ分子鎖を生成した後、ホルミル基がアルドール縮合によって再結合する点が開示されているが、もう一方のカルボニル基を再結合させる点については開示されていない。また、この文献において解重合は有機溶剤の溶液中で行われており、分解したポリマーを含む系を酸性又は塩基性にすることにより再結合させることは記載されていない。また、その製法は、両末端にカルボニル基を持つテレケリック液状ゴムを得るためのものであって、あくまで天然ゴムを低分子量化した液状ゴムを得ることを目的としたものであり、分子量を制御しながら、主鎖構造の組み替えを行うことでポリマーを変性させることを目的とするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−152157号公報
【特許文献2】特開2008−184572号公報
【特許文献3】WO2005/118704号公報
【特許文献4】特開2011−225681号公報
【特許文献5】特開2012−121993号公報
【特許文献6】特開平08−081505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ポリマーの新規な変性方法を提供することを目的とし、より詳細には、ポリマーの主鎖構造にアルコキシシリル基を簡易に導入することができる変性ポリマーの製造方法、及び主鎖構造にアルコキシシリル基が導入された新規なジエン系ポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る変性ポリマーの製造方法は、上記の課題を解決するために、炭素−炭素二重結合を主鎖に持つポリマーを、該炭素−炭素二重結合を酸化開裂させることで分解して分子量を低下させたポリマーと、下記式(A)で表されるアルコキシシリル基を構造に有する3官能性分子とを含む系を、酸性の場合は塩基性に、塩基性の場合は酸性になるように酸塩基性を変化させることにより、上記分解したポリマーと3官能性分子とを結合させて、主鎖にアルコキシシリル基が導入された変性ポリマーを得る方法とする。
【化1】
【0007】
但し、式(A)において、R、R及びRは、それぞれアルデヒド基、カルボキシル基、炭素数1〜5のアルキル基を有するケト基、又は炭素数1〜5のアルキル基を有するエステル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【0008】
上記本発明の変性ポリマーの製造方法では、分解したポリマーが、下記式(1)で表される構造を末端に含むことが好ましい。
【化2】
【0009】
但し、式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を示す。
【0010】
上記式(A)で表されるアルコキシシリル基を構造に有する3官能性分子は、ビニル基を少なくとも1つ有する3官能性分子の炭素−炭素二重結合を酸化開裂させて得ることができる。
【0011】
上記製造方法においては、下記式(2)〜(5)で表される結合構造のうちの少なくとも1種の結合構造を分子内に有する変性ポリマーを得ることができる。
【化3】
【0012】
但し、式(2)〜(5)において、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【0013】
上記本発明の製造法においては、炭素−炭素二重結合を、過ヨウ素酸を用いて酸化開裂させることができる。反応系は水系エマルションとすることが好ましい。
【0014】
また、炭素−炭素二重結合を主鎖に持つ上記ポリマーとしてはジエン系ゴムポリマーを用いることができ、ジエン系ゴムポリマーの例としては天然ゴム又は合成イソプレンゴムが挙げられる。
【0015】
上記本発明の製造方法においては、ポリマー主鎖にアルコキシシリル基を1〜5モル%導入することが好ましい。
【0016】
本発明のジエン系ポリマーは、下記式(2)〜(5)で表される結合構造のうちの少なくとも1種を含む連結基を分子内に有し、ジエン系ポリマー鎖がこの連結基を介して連結されてなるものとする。
【化4】
【0017】
但し、式(2)〜(5)において、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【0018】
上記ジエン系ポリマー鎖はジエン系ゴムポリマー鎖とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、主鎖の二重結合を酸化開裂させることによりポリマーを分解して分子量を一旦低下させた後、分解したポリマーと下記式(A)で表されるアルコキシシリル基を構造に有する3官能性分子とを含む系を、酸性又は塩基性にすることにより結合させることで、ポリマーの主鎖構造中にアルコキシシリル基を容易に組み込むことができる。このように主鎖構造中にアルコキシシリル基を組み込むことにより架橋点が形成されるので、天然ゴムなどのポリマーの硫黄架橋を補填して、その物性を改良することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0021】
本実施形態において、変性対象となるポリマーとしては、炭素−炭素二重結合を主鎖に含むポリマーが用いられ、好ましくはジエン系ポリマーであり、より好ましくはジエン系ゴムポリマーである。ジエン系ポリマーとは、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどの共役ジエン化合物をモノマーの少なくとも一部として用いて得られるポリマーである。これらの共役ジエン化合物は、いずれか1種で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記ジエン系ポリマーとしては、共役ジエン化合物と共役ジエン化合物以外の他のモノマーとの共重合体も含まれる。他のモノマーとしては、アクリロニトリル、アクリル酸エステルなどの各種ビニル化合物が挙げられる。これらのビニル化合物は、いずれか1種でも2種以上を併用してもよい。
【0023】
ジエン系ゴムポリマーとしては、より詳細には、分子内にイソプレンユニット及び/又はブタジエンユニットを有する各種ゴムポリマーが好ましく、例えば、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム等が挙げられる。これらの中でも、天然ゴム、合成イソプレンゴムを用いることが好ましい。
【0024】
変性対象となるジエン系ゴムポリマーとしては、常温(23℃)で固形状であることが好ましいため、数平均分子量が6万以上のものを用いることが好ましい。ここで、固形状とは流動性のない状態をいい、例えばゴムポリマーをそのまま材料として加工する上で、常温において力を加えない状態で塑性変形しないようにするためである。ジエン系ポリマーの数平均分子量は、6万〜100万であることが好ましく、より好ましくは8万〜80万であり、更に好ましくは10万〜60万である。
【0025】
変性対象となる上記ポリマーとしては、溶媒に溶解したものも用いることができるが、プロトン性溶媒である水中にミセル状になった水系エマルション、すなわちラテックスを用いることが好ましい。水系エマルションを用いることにより、ポリマーを分解させた後に、その状態のまま、反応場の酸塩基性を変化させることで3官能性分子との結合反応を生じさせることができる。水系エマルションの濃度(ポリマーの固形分濃度)は、特に限定されないが、5〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量%である。固形分濃度が高すぎるとエマルジョン安定性が低下してしまい、反応場のpH変動に対してミセルが壊れやすくなり、反応に適さなくなる。逆に固形分濃度が小さすぎる場合は反応速度が遅くなり、実用性に欠ける。
【0026】
ポリマーの炭素−炭素二重結合を酸化開裂させるためには、酸化剤を用いることができ、例えば、上記ポリマーの水系エマルションに酸化剤を添加し攪拌することにより酸化開裂させることができる。酸化剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム、酸化マンガンなどのマンガン化合物、クロム酸、三酸化クロムなどのクロム化合物、過酸化水素などの過酸化物、過ヨウ素酸などの過ハロゲン酸、オゾン、酸素などの酸素類などが挙げられる。これらの中でも、過ヨウ素酸を用いることが好ましい。酸化開裂に際しては、コバルト、銅、鉄などの金属の塩化物や有機化合物との塩や錯体などの金属系酸化触媒を併用してもよく、例えば、該金属系酸化触媒の存在下で空気酸化してもよい。
【0027】
2種以上のジエン系ポリマーを酸化開裂させる場合、各ポリマーを別々の系でそれぞれ酸化剤を加えて酸化開裂してもよく、あるいはまた、2種以上のポリマーを予め混合してから混合系に酸化剤を加えることにより一緒に酸化開裂してもよい。
【0028】
上記酸化開裂によりポリマーが分解し、末端にカルボニル基(>C=O)やホルミル基(−CHO)を持つポリマーが得られる。例えば、変性対象となるポリマーが、イソプレンユニットやブタジエンユニットを持つ場合、下記式(1)で表される構造を末端に持つポリマーが生成される。
【化5】
【0029】
式中、Rは、水素原子又はメチル基であり、イソプレンユニットが開裂した場合、一方の開裂末端ではRがメチル基、他方の開裂末端ではRが水素原子となり、ブタジエンユニットが開裂した場合、開裂末端はともにRが水素原子となる。より詳細には、分解したポリマーは、その分子鎖の少なくとも一方の末端に上記式(1)で表される構造を持ち、すなわち、下記式(7)及び(8)に示すように、ジエン系ポリマー鎖の一方の末端又は両末端に、式(1)で表される基が直接結合したポリマーが生成される。
【化6】
【0030】
式(7)及び(8)において、Rは水素原子又はメチル基であり、波線で表した部分がジエン系ポリマー鎖である。例えば、天然ゴムを分解した場合、波線で表した部分はイソプレンユニットの繰り返し構造からなるポリイソプレン鎖である。
【0031】
上記酸化開裂によりポリマーを分解することにより、分子量が低下する。分解後のポリマーの数平均分子量は特に限定されないが、3百〜50万であることが好ましく、より好ましくは5百〜10万であり、更に好ましくは1千〜5万である。なお、分解後の分子量の大きさにより、再結合後のアルコキシシリル基量を調節することができるが、分解時の分子量が小さすぎると、同一分子内での結合反応が生じやすくなる。
【0032】
上記のようにしてポリマーを分解させた後、分解したポリマーと次式(A)で表されるアルコキシシリル基を構造に有する3官能性分子とを含む反応系を、塩基性の場合は酸性に、酸性の場合は塩基性にすることにより再結合させる。
【化7】
【0033】
上記式(A)において、R、R及びRは、それぞれアルデヒド基又はカルボニル基を示し、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。カルボニル基の例としては、カルボキシル基、炭素数1〜5のアルキル基を有するケト基(−C(=O)R'、R'の炭素数:1〜5)、炭素数1〜5のアルキル基を有するエステル基(−C(=O)OR"、R"の炭素数:1〜5)等が挙げられる。
【0034】
式(A)で表されるアルコキシシリル基を構造に有する3官能性分子は、ビニル基を少なくとも1つ有する3官能性分子の炭素−炭素二重結合を酸化開裂させて得ることができる。この酸化開裂反応は上記ポリマーの酸化開裂反応に準じて行うことができ、ポリマーの酸化開裂反応と同時に行うこともできる。ビニル基を少なくとも1つ有する3官能性分子の好ましい具体例としては、トリビニルエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシラザン、トリビニルシランまたはそのビニル基を酸化したアルデヒド誘導体等が挙げられる。
【0035】
上記式(1)の構造は2種類の互変異性をとり、元の炭素−炭素二重結合構造に結合するものと、下記式(2)〜(5)で表される結合構造を形成するものとに分かれる。本実施形態では、反応場のpHを制御することにより、アルドール縮合反応を優先させて、式(2)〜(5)で表される結合構造を含むポリマーを生成することができる。詳細には、反応系、特に水系エマルションの液中には安定化のためpH調節されているものがあり、分解に使用する方法や薬品の種類や濃度により、分解時のpHが酸性か塩基性のどちらかに寄る。そのため、開裂とは逆反応である結合反応が優先的に進行するように、分解時の反応系が酸性になっている場合には、反応系を塩基性にすることが好ましく、反対に分解時の反応系が塩基性になっている場合には、反応系を酸性にすることが好ましい。
【化8】
【0036】
上記式(2)〜(5)において、Rは上記式(A)のRに由来する炭素数1〜10のアルキル基を示す。これらの式におけるケイ素原子には、R、R及びRに由来する炭素原子がそれぞれ結合し、それぞれが式(2)〜(5)に示された結合構造を有している。一つのケイ素原子に結合する上記式(2)〜(5)で表される3つの結合構造は、相互に同じであっても異なっていてもよい。
【0037】
ここで、Rが水素原子である末端構造を持つポリマーとアルデヒド基を有する式(A)で表される3官能性分子とが結合する場合、アルドール縮合反応により式(4)で表される結合構造となり、これから水が脱離することにより式(5)で表される結合構造となる。Rが水素原子である末端構造を持つポリマーとカルボニル基を有する式(A)で表される3官能性分子とが結合する場合、アルドール縮合反応により式(3)で表される結合構造となり、これから水が脱離することにより式(2)で表される結合構造となる。アルコキシシリル基同士が結合すると、次式(6)で表される結合構造となるが生成量は少なく、式(2)〜(5)の結合構造が主として生成される。
【0038】

【化9】
【0039】
但し、式(6)において、Rは上記式(A)のRに由来する炭素数1〜10のアルキル基を示す。
【0040】
なお、例えばRがメチル基である末端構造を持つポリマーとカルボニル基を有する式(A)で表される3官能性分子とが結合する場合など、上記式(2)〜(6)以外の結合構造が生成される場合もあるが、そのような結合構造は微量である。
【0041】
結合反応させる際の反応系のpHは、反応系を塩基性にする場合、7.5〜13であることが好ましく、より好ましくは8〜10である。一方、反応系を酸性にする場合、4〜6.8であることが好ましく、より好ましくは5〜6である。なお、酸性条件にする際、酸性度を上げすぎてしまうと、ラテックスのミセルを破壊してしまうおそれがある。pHの調整は、反応系に酸や塩基を加えることにより行うことができ、特に限定されないが、例えば、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられ、塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0042】
結合反応に際しては、pHの調節に用いられる酸や塩基が結合反応の触媒となり、さらに反応を調節するための触媒として、例えばピロリジン−2−カルボン酸を用いることができる。
【0043】
以上のように結合反応させた後、水系エマルションを凝固乾燥させることにより、常温で固形状の変性ポリマーが得られる。
【0044】
本実施形態によれば、上記のように結合反応させることにより、上記式(2)〜(5)で表される結合構造が主鎖中に導入されて、アルコキシシリル基を主鎖に有する変性ポリマーが得られる。すなわち、実施形態に係る変性ポリマーは、上記式(2)〜(5)で表される結合構造の少なくとも1種を含む連結基を分子内に有し、ジエン系ポリマー鎖がこれらの連結基を介して直接連結された構造を有する。
【0045】
ここで、ジエン系ポリマー鎖とは、上記変性対象であるジエン系ポリマーの分子鎖のうちの一部の分子鎖であり、例えば、共役ジエン化合物の単独重合体の場合、該共役ジエン化合物からなる構成ユニットをAとして、−(A−で表されるAの繰り返し構造である(nは1以上の整数であり、好ましくは10〜10000、より好ましくは50〜1000である)。また、二元共重合体の場合、ジエン系ポリマー鎖は、各構成ユニットをA及びAとして(AとAの少なくとも一方は共役ジエン化合物からなるユニットであり、その他のユニットとしては上記ビニル化合物からなるユニットが挙げられる。)、−(A−(A−で表されるA及びAの繰り返し構造である(これらはランダム型でもブロック型でもよい。n,mはそれぞれ1以上の整数であり、好ましくは10〜10000、より好ましくは50〜1000である)。また、三元共重合体の場合、ジエン系ポリマー鎖は、各構成ユニットをA、A及びAとして(AとAとAの少なくとも1つは共役ジエン化合物からなるユニットであり、その他のユニットとしては上記ビニル化合物からなるユニットが挙げられる。)、−(A−(A−(A−で表されるA、A及びAの繰り返し構造である(これらはランダム型でもブロック型でもよい。n,m,pはそれぞれ1以上の整数であり、好ましくは10〜10000、更に好ましくは50〜1000である)。四元共重合体以上も同様である。
【0046】
より具体的には、例えば、変性対象として天然ゴム又は合成イソプレンゴムを用いた場合、ジエン系ポリマー鎖は、イソプレンユニットの繰り返し構造からなる、下記式(9)で表されるポリイソプレン鎖である。このジエン系ポリマー鎖としては、これらのポリイソプレン鎖やポリブタジエン鎖などのジエン系ゴムポリマー鎖であることが好ましい。なお、式(9)中、nは1以上の整数であり、好ましくは10〜10000、更に好ましくは50〜1000である。
【化10】
【0047】
上記式(2)〜(5)で表される結合構造は、変性ポリマーの1分子中に1つ以上含まれ、通常は1分子中に複数の結合構造が含まれる。複数含まれる場合、上記式(2)〜(5)で表される結合構造のいずれか1種を複数含んでもよく、2種以上のものが含まれてもよい。アルコキシシリル基の導入率、すなわち変性率は、式(2)〜(5)の結合構造の含有量の合計であり、0.1〜20モル%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10モル%、更に好ましくは1〜5モル%である。アルコキシシリル基の導入量が少なすぎると本発明の目的とするゴムの耐劣化性向上効果が得られず、一方、多すぎると架橋点が多くなりすぎ、反応中でゲル化を生じるおそれが生じる。ここで、結合構造の含有率(変性率)は、変性ポリマーを構成する全構成ユニットのモル数に対する結合構造のモル数の比率であり、例えば、天然ゴムの場合、変性ポリマーの全イソプレンユニットと結合構造のモル数の合計に対する結合構造のモル数の比率である。
【0048】
例えば、天然ゴムや合成イソプレンゴムの場合(即ち、ジエン系ポリマー鎖がイソプレンユニットを有する場合)、通常、式(2)〜(5)で表される結合構造が全て含まれるが、式(2)で表される結合構造が主として含まれ、その場合、式(2)で表される結合構造の含有率は0.001〜20モル%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜10モル%、更に好ましくは0.5〜5モル%である。
【0049】
変性ポリマーの数平均分子量は6万以上であることが好ましく、より好ましくは6万〜150万であり、特に好ましくは10万〜120万である。このように変性ポリマーの分子量は、上記の通り3官能性分子を介して再結合させることにより、元のポリマーと同等に設定することが好ましく、これにより、分子量を低下させず、従って物性への悪影響を回避しながら、ポリマーの主鎖にアルコキシシリル基を導入することができる。もちろん、元のポリマーよりも分子量が小さなものを得てもよい。なお、変性ポリマーの重量平均分子量は、特に限定しないが、7万以上であることが好ましく、より好ましくは10万〜200万であり、更に好ましくは30万〜170万である。
【0050】
本実施形態によれば、上記のように、主鎖の二重結合を酸化開裂させることによりポリマーを分解して分子量を一旦低下させた後、分解したポリマーと下記式(A)で表されるアルコキシシリル基を構造に有する3官能性分子とを含む系の酸塩基性を変化させることにより、分解したポリマーと3官能性分子とを結合させて、アルコキシシリル基が導入された変性ポリマーを生成するので、ポリマーの単分散化により、より均一な構造に収束させることができる。すなわち、変性ポリマーの分子量分布を元のポリマーの分子量分布よりも小さくすることができる。これは、酸化開裂により分解したポリマーはより短いものほど反応性が高く、結合しやすいので、短いポリマーが少なくなることで分子量の均一化が図られると考えられる。
【0051】
また、本実施形態によれば、二重結合を解離させる薬剤である酸化剤の種類や量、反応時間などを調整することにより酸化開裂させる反応を制御し、また、再結合させる際のpHや触媒、反応時間などを調整することにより結合反応を制御でき、これらの制御によって変性ポリマーの分子量を制御することができる。そのため、変性ポリマーの数平均分子量を元のポリマーと同等に設定することができ、また元のポリマーよりも低く設定することもできる。
【0052】
また、ポリマー主鎖を分解して再結合させる際に、主鎖とは異なる構造として上記結合構造が挿入され、主鎖構造のセグメントの結合点が官能基化する。すなわち、反応性の高い構造が分子主鎖中に導入され、元のポリマーの特性を変化させることができる。このように、本実施形態の方法は、グラフトでも直接付加でもなく開環でもないポリマーの主鎖構造そのものを変化させるものであり、従来の変性方法とは明確に異なり、主鎖構造にアルコキシシリル基を簡易に導入することができる。また、天然ゴムなどの天然のポリマーに対しても、その主鎖構造を組み替えて新規な構造を持つ変性ポリマーを製造することができ、ポリマーの特性を変化させることができる。
【0053】
本実施形態に係る変性ポリマーは、各種ポリマー組成物におけるポリマー成分として用いることができ、特に限定されないが、ジエン系ゴムを変性してなる変性ジエン系ゴムを得て、この変性ジエン系ゴムを各種ゴム組成物におけるゴム成分として用いることが好ましい。ゴム組成物に用いる場合、ゴム成分としては、この変性ジエン系ゴム単独でもよく、他のジエン系ゴムとブレンドして用いてもよい。また、ゴム組成物には、該ゴム成分とともに、シリカやカーボンブラックなどのフィラーを配合することができ、更に、その他の添加剤として、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤を配合することもできる。ゴム組成物の用途としても特に限定されず、タイヤ用、防振ゴム用、コンベアベルト用などの各種ゴム部材に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例で用いた測定方法等は、以下の通りである。
【0055】
[pH]
東亜ディーケーケー(株)製のポータブルpH計「HM−30P型」を用いて測定した。
【0056】
[数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)での測定により、ポリスチレン換算のMn、Mw及びMw/Mnを求めた。詳細には、測定試料は0.2mgをTHF1mLに溶解させたものを用いた。(株)島津製作所製「LC−20DA」を使用し、試料をフィルター透過後、温度40℃、流量0.7mL/分でカラム(Polymer Laboratories社製「PL Gel3μm Guard」×2)を通し、Spectra System社製「RI Detector」で検出した。
【0057】
[結合構造含有率]
NMRにより、結合構造(2)〜(5)の含有率を測定した。NMRスペクトルは、BRUKER社製「400ULTRASHIELDTM PLUS」により測定した。ポリマー1gを重クロロホルム5mLに溶解し、緩和試薬としてアセチルアセトンクロム塩87mgを加え、NMR10mm管にて測定した。
【0058】
式(2)の結合構造については、13C−NMRにおいてケイ素の隣にあるカーボンのピークが130ppmにある。式(3)の結合構造については、13C−NMRにおいてケイ素の隣にあるカーボンのピークが55ppmにある。式(4)の結合構造については、13C−NMRにおいてケイ素の隣にあるカーボンのピークが204ppmにある。式(5)の結合構造については、13C−NMRにおいてケイ素の隣にあるカーボンのピークが132pmにある。そのため、これら各ピークについてベースポリマー成分との比により構造量(モル数)を決定した。
【0059】
なお、ベースポリマー成分における各ユニットのモル数については、イソプレンユニットでは、二重結合を挟んでメチル基と反対側の炭素及びそれに結合した水素(=CH−)のピーク、即ち13C−NMRによる122ppmのピークに基づいて算出した。また、式(2)〜(5)で表される各構造単位では、シリル基に隣接するカーボン3個それぞれのピークが検出されるため、それらのピークから導出される量の1/3(3分の1)を各結合構造含有率(モル%)とし、アルコキシシリル基含有量としては、式(2)〜(5)の各結合構造含有率の合計量を示した。
【0060】
[実施例1:変性ポリマーAの合成]
変性対象のポリマーとして、天然ゴムラテックス(レジテックス社製、高アンモニア含有天然ゴム「HA−NR」、DRC(Dry Rubber Content)=60質量%)を用いた。この天然ゴムラテックスに含まれる未変性の天然ゴムについて、分子量を測定したところ、重量平均分子量が202万、数平均分子量が51万、分子量分布が4.0であった。
【0061】
DRC30質量%に調節した上記天然ゴムラテックス中のポリマー質量100gに対して、過ヨウ素酸(HIO)1.65gを加え、23℃で3時間攪拌した。このようにエマルジョン状態のポリマー中に過ヨウ素酸を加えて攪拌することにより、ポリマー鎖中の二重結合が酸化分解し、上記式(1)で表される構造を含むポリマーが得られた。得られた分解ポリマーは、重量平均分子量が13500、数平均分子量が5300、分子量分布が2.6であり、また分解後の反応液のpHは6.2であった。
【0062】
これにトリビニルエトキシシラン3.9gに過ヨウ素酸(HIO)0.01gを加えて23℃で1時間撹拌させて得られた反応生成物と、触媒としてピロリジン−2−カルボン酸0.1gを加え、1規定の水酸化ナトリウムを反応液のpHが10になるように加え、23℃で24時間攪拌して反応させた後、メタノール中に再沈させ、水で洗浄後、熱風循環乾燥機により30℃で24時間乾燥させて、常温で固形状の変性ポリマーAを得た。
【0063】
このように酸化分解した反応系に対し、水酸化ナトリウムを加えて、この反応系を強制的に塩基性に変化させたことにより、酸化開裂の際に加えた過ヨウ素酸の効果を中和させつつ再結合反応を優先させることができ、上記式(2)〜(5)で表される結合構造を含む変性天然ゴム(変性ポリマーA)が得られた。なお、上記ではピロリジン−2−カルボン酸を触媒として用いているが、これは反応を促進させるためのものであり、なくても反応は進行する。
【0064】
得られた変性ポリマーAは、下記表1に示す通り、重量平均分子量Mwが152万、数平均分子量Mnが62万、分子量分布Mw/Mnが2.5、上記結合構造の含有率が、式(2)では1.0モル%、式(3)では0.1モル%、式(4)では0.1モル%、式(5)では0.3モル%であり、合計で1.5モル%であった。このように変性ポリマーAは、未変性天然ゴムとほぼ同等の数平均分子量を持つものであった。また、分子量分布が未変性天然ゴムよりも小さく、均一性に優れていた。
【0065】
[実施例2,3:変性ポリマーB,Cの合成]
酸化分解時の反応時間、過ヨウ素酸の添加量、再結合反応時に添加するpH調整剤及びpH、触媒の量を下記表1に示す通りに変更し、その他は実施例1と同様にして、固形状の変性ポリマーB,Cを合成した。得られた変性ポリマーB,Cの、Mw,Mn,Mw/Mn及び各結合構造の含有量を表1に示す。変性ポリマーB,Cについても、アルコキシシリル基を有する上記結合構造が主鎖中に導入され、また、分子量分布が未変性天然ゴムよりも小さく、均一性に優れていた。また、上記条件を変更することにより、分子量を制御することができた。
【0066】
なお、表1中の比較例1は、上記天然ゴムラテックス(レジテックス社製、高アンモニア含有天然ゴム「HA−NR」、DRC=60質量%)を、変性せずにそのまま凝固乾燥させて得られた未変性天然ゴムである。また、比較例2は、同じ天然ゴムラテックスを酸化開裂のみして凝固乾燥させた分解ポリマーである。
【0067】
【表1】
【0068】
[使用例・比較使用例:ゴム組成物の調製及び評価]
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く他の配合剤を添加し混練し、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練して、ゴム組成物を調製した。ゴム成分を除く、表2中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0069】
・シリカ:東ソー・シリカ(株)製「ニップシールAQ」
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・シランカップリング剤:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック・デグサ社製「Si69」
・亜鉛華:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華1種」
・老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック6C」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・プロセスオイル:株式会社ジャパンエナジー製「X−140」
・硫黄:細井化学工業(株)製「ゴム用粉末硫黄150メッシュ」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーCZ」
【0070】
得られた各ゴム組成物について、160℃×20分で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて、耐リバージョン性、耐劣化性を評価し、また動的粘弾性試験を行い、tanδ(0℃)とtanδ(60℃)を測定した。各測定・評価方法は次の通りである。
【0071】
・耐リバージョン性:ALPHA TECHNOLOGIES社製「RHEOMETER MDR2000」にて150℃×90分加硫トルクを測定し、トルクの最高値を示した時間より30分後の数値の変化を計算し、その値の逆数について、各コントロールの値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、トルクの低下が小さく、耐リバージョン性に優れることを示す。
【0072】
・耐劣化性:各ゴムサンプルを加硫後サンプルと、100℃に設定した熱風循環オーブン内で14日間劣化させたにサンプルとで引張試験を行い、その300%モジュラスの低下した数値を測定し、その測定値の逆数について、各コントロールの値を100とした指数で表示した。引張試験としては、JIS K6251に準拠した引張試験(ダンベル状3号形)を行った。指数が大きいほど、M300の低下が小さく耐劣化性に優れる。
【0073】
・tanδ(0℃):USM社製レオスペクトロメーターE4000を用いて、周波数50Hz、静歪み10%、動歪み2%、温度0℃の条件で損失係数tanδを測定し、各比較試験例の値を100とした指数で表示した。0℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、湿潤路面に対するグリップ性能(ウェット性能)の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が大きいほどtanδが大きく、ウェット性能に優れることを示す。
【0074】
・tanδ(60℃):温度を60℃に変え、その他はtanδ(0℃)と同様にして、tanδを測定し、その逆数について、各比較試験例の値を100とした指数で表示した。60℃でのtanδは、タイヤ用ゴム組成物において、低発熱性の指標として一般に用いられているものであり、上記指数が大きいほどtanδが小さく、従って、発熱しにくく、タイヤとしての低燃費性に優れることを示す。
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示す通り、実施例の変性ポリマーを用いた使用例1〜3のゴム組成物は、未変性の天然ゴムや分解ゴムのみで再結合を行っていないゴムを用いた各比較使用例に対して、tanδ等に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る変性ポリマーは、ゴム組成物をはじめとする各種ポリマー組成物に配合するポリマー成分として用いることができる。