特許第6352006号(P6352006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352006
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】マーカーを有する編組拡張リング
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/86 20130101AFI20180625BHJP
【FI】
   A61F2/86
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-48618(P2014-48618)
(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公開番号】特開2014-176655(P2014-176655A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2017年2月17日
(31)【優先権主張番号】13/802,030
(32)【優先日】2013年3月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ファン・エイ・ロレンツォ
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−513748(JP,A)
【文献】 特表2010−537755(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0071964(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
編組ステントであって、
近位端、遠位端、及び内側管腔を有する管状編組ステント本体であって、該管状編組ステント本体は複数の細長い部材から形成され、該複数の細長い部材は編組されてそれらの間に複数の隙間を形成する、管状編組ステント本体と、
前記管状編組ステント本体の前記近位端及び前記遠位端の少なくとも一方に連結された少なくとも1つの拡張リングであって、該少なくとも1つの拡張リングが、複数の細長い分枝フレーム要素を含み、該複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが、該複数の細長い分枝フレーム要素の圧縮を可能とする支点有し、
該複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが、前記管状編組ステント本体の前記近位端及び前記遠位端の少なくとも一方の一部の前記隙間の少なくとも1つに通され、
前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが、前記細長い分枝フレーム要素のそれぞれの一方の側の第1の方向に延びる第1及び第2の有する第1及び第2の脚を含み、前記複数の細長い分枝フレーム要素それぞれの該第1及び第2の脚が接合部分において共に連結されて前記細長い分枝フレーム要素のそれぞれの対向する第2の側においてそれらの間に前記支点を形成し、前記接合部分が対向する第2の方向に延び、
前記複数の細長い分枝フレーム要素の前記第1の脚のそれぞれが前記管状編組ステント本体の前記管腔の内側に延び、前記複数の細長い分枝フレーム要素の前記第2の脚のそれぞれが前記管状編組ステント本体の前記管腔の外側に延びることにより、前記複数の細長い分枝フレーム要素の前記接合部分が前記管状編組ステント本体の前記隙間を通じて前記管状編組ステント本体と係合し、
前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが前記第1及び第2の脚の前記第1及び第2の終端において前記複数の細長い分枝フレーム要素の隣接するものと順次連結されることで前記少なくとも1つの拡張リングを形成し、前記少なくとも1つの拡張リングが、第1の直径を有する圧縮形態と、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する拡張形態とを有する、拡張リングと、
を含む、編組ステント。
【請求項2】
前記管状編組ステント本体が自己拡張性である、請求項1に記載の編組ステント。
【請求項3】
前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが「V」字形状を有する、請求項1に記載の編組ステント。
【請求項4】
前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが「U」字形状を有する、請求項1に記載の編組ステント。
【請求項5】
前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが「W」字形状を有する、請求項1に記載の編組ステント。
【請求項6】
前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが2重「U」字形状を有する、請求項1に記載の編組ステント。
【請求項7】
前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれの前記第1及び第2の脚が、前記接合部分において楕円曲線を形成する、請求項1に記載の編組ステント。
【請求項8】
前記複数の細長い分枝フレーム要素が、ジクザク形状のアセンブリに互いに連結されている、請求項1に記載の編組ステント。
【請求項9】
前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれの前記第1の終端記複数の細長い分枝フレーム要素のうち隣接する細長い分枝フレーム要素の前記第2の終端に隣接し、隣接する前記第2の終端に金属製バンドによって固定されている、請求項1に記載の編組ステント。
【請求項10】
前記金属製バンドが、X線不透過性金属で形成されている、請求項9に記載の編組ステント。
【請求項11】
前記複数の細長い分枝フレーム要素が、超弾性材料、ニッケルチタン合金、非超弾性材料、ニッケル・コバルト・クロム・モリブデン合金、またはばね鋼で形成されている、請求項1に記載の編組ステント。
【請求項12】
前記拡張リングが、前記拡張形態において形状記憶位置を有する形状記憶材料で形成されている、請求項1に記載の編組ステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、脈管構造内の欠陥を治療するための介入的治療処置又は血管手術用の装置に関し、より詳細には、血管疾患の治療用の編組ステントの開放端の拡張リングに関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管内に挿入されることによって血管内部に開放路を与える管状補強材であり、閉塞した心臓動脈の血管内血管形成治療に広く用いられてきた。こうした用途では、ステントは動脈の再狭窄を防止するために血管形成術後に挿入される。これらの用途では、ステントは、膨張式バルーン、又はステントを強制的に開く機械的装置の使用によってしばしば展開され、これにより動脈壁を補強し、血管形成術後に動脈の中心に開放した貫通路を与えることで再狭窄を防止する。
【0003】
このような手術は、血管閉塞装置が用いられる血管手術の特定の局面においては有用でありうるが、脈管構造の弱さ及び神経血管の蛇行のために、神経血管の欠陥を修復するための手術におけるこうしたステントの応用性は制限される。更に、心臓手術においてしばしば有用とされている方式のバルーン又は機械的拡張のような留置技術の使用は、血管閉塞手術、特に脳に見られるような微細な血管を治療しようとする場合には、比較的その有用性は低い。したがって、神経血管の欠陥の近傍において選択的な補強を与える一方で、血管に対する不要な外傷又は破裂のリスクを回避する、神経血管の欠陥の血管閉塞治療における技術と適合性を有するステントに対する必要性は当業者の認識するところであった。
【0004】
編組ステントは、例えば2本以上の金属ワイア、又はポリマー繊維若しくは材料のストランドなどの複数の細長い部材から通常は形成され、神経血管の欠陥の治療において極めて有用でありうる。しかしながら、身体の管腔内において自己拡張型編組ステントを展開する際の問題点の1つとして、最初に拡張する編組ステントの端部、通常は遠位端が完全に開くように作動させることがある。最初に拡張する端部は、自己拡張型編組ステントの残りの長さが最初に拡張する端部を固定点として展開されるように、完全、容易、かつ速やかに開くことが重要である。
【0005】
編組ワイアで形成されたステントはまた、自己拡張型編組ステントが開こうとする内在的な径方向の拡張力に抗する高い内部摩擦も一般的に有しており、これによりこうした自己拡張型編組ステントの固定及び展開における問題を生じうる。従来の自己拡張型編組ステントは、開くためにその材料、寸法、セルの設計、及び内部摩擦のみに依存しているため、一般的に最適とはいえない。このような自己拡張型編組ステントを展開させるには、自己拡張型編組ステントを完全に開かせるように使用者による余分な操作を一般的に必要とし、これにより留置の精度が影響され、手術のリスクが増す。自己拡張型編組ステントの遠位端の展開及び固定は、ステント本体の残りの部分の適正なアラインメント及び位置決めのために必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
治療部位に編組ステントを送達する際に、編組ステントが送達マイクロカテーテルによって拘束されなくなった時点で編組ステントが確実に完全に拡張するように編組ステントの端部に取り付けることが可能な拡張リングが提供されることが望ましい。編組ステントへの拡張リングの取り付けを簡単にする設計を有する拡張リングが提供されることが望ましい。本発明はこれら及び他の要求に応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
簡単かつ一般的な言い方をすると、本発明は、治療部位においてマイクロカテーテルから編組ステント本体が解放される際に編組ステント本体の拡張を促すために編組ステントの一端又は両端に取り付けることが可能であり、編組ステント本体が患者の脈管構造内でいったん展開されると確実に自己拡張するようにすることで、こうした拡張リングを有さない編組ステントと比較して、患者の脈管構造を損傷する可能性を最小化する、自己拡張型編組ステント本体と組み合わせて使用するための拡張リングを提供するものである。
【0008】
したがって、本発明は、拡張リングが複数の細長い分枝フレーム要素から形成された編組ステント用の拡張リングを提供する。複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれは、細長い分枝部材のそれぞれの一方の側の第1の方向に延びる第1及び第2の終端を有する第1及び第2の脚を有し、複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれの第1及び第2の脚が接合部分において互いに連結されてそれらの間に1以上の支点を形成し、複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれの対向する第2の側において細長い分枝フレーム要素の圧縮を可能とし、接合部分が対向する第2の方向に延びることによって、複数の細長い分枝フレーム要素の圧縮を可能とする。複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれは、第1及び第2の脚の第1及び第2の終端において複数の細長い分枝フレーム要素の隣接するものと順次連結されて拡張リングを形成する。本発明の好ましい一態様では、複数の細長い分枝フレーム要素は、第1の幅を有する圧縮形態と、第1の幅よりも大きい第2の幅を有する拡張形態とを有する。
【0009】
本発明の好ましい一態様では、複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれは「V」字形状であるが、複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれの第1及び第2の脚が接合部分において楕円曲線を形成した「U」字形状として複数の細長い分枝フレーム要素を形成してもよく、又は「W」字形状を有するか2重「U」字形状を有するように形成してもよく、複数の支点が細長い分枝フレーム要素の圧縮を可能とする。別の本発明の好ましい態様では、複数の細長い分枝フレーム要素は互いにジグザグ形状のアセンブリに連結される。別の本発明の好ましい態様では、複数の細長い分枝フレーム要素は、例えばニッケルチタン合金などの超弾性材料で形成されるが、複数の細長い分枝フレーム要素は非超弾性材料で形成されてもよい。別の本発明の好ましい態様では、複数の細長い分枝フレーム要素は、例えばニッケル・コバルト・クロム・モリブデン合金、又はばね鋼で形成されてもよい。別の本発明の好ましい態様では、拡張リングは、前記拡張形態において形状記憶位置を有する形状記憶材料で形成される。
【0010】
別の本発明の好ましい態様では、第1の終端は、例えばX線不透過材料で形成することができる複数の金属製バンドによって複数の細長い分枝フレーム要素の隣接するものの隣接する第2の終端に固定される。
【0011】
別の本発明の好ましい態様では、本発明は、それらの間に複数の隙間が形成されるように編組された複数の細長い部材から形成された管状編組ステント本体と、管状編組ステント本体の近位端及び遠位端の少なくとも一方に連結された少なくとも1つの拡張リングとを有する編組ステントを提供する。複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれは、管状編組ステント本体の近位端及び遠位端の少なくとも一方の一部の隙間の少なくとも1つに通される。本発明の好ましい一態様では、複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれは、細長い分枝部材のそれぞれの一方の側の第1の方向に延びる第1及び第2の終端を有する第1及び第2の脚を有し、第1及び第2の脚は接合部分において互いに連結されてそれらの間に1個以上の支点を形成することで細長い分枝フレーム要素のそれぞれの対向する第2の側における細長い分枝フレーム要素の収縮を可能とし、接合部分が対向する第2の方向に延びる。
【0012】
複数の細長い分枝フレーム要素の第1の脚のそれぞれが管状編組ステント本体の管腔の内側に延び、複数の細長い分枝フレーム要素の第2の脚のそれぞれが管状編組ステント本体の管腔の外側に延びることにより、複数の細長い分枝フレーム要素の接合部分が管状編組ステント本体の隙間を通じて管状編組ステント本体と係合する。複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが第1及び第2の脚の第1及び第2の終端において複数の細長い分枝フレーム要素の隣接するものと順次連結されることで少なくとも1つの拡張リングを形成する。別の本発明の好ましい態様では、少なくとも1つの拡張リングは、第1の直径を有する圧縮形態と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する拡張形態とを有する。別の本発明の好ましい態様では、管状編組ステント本体は自己拡張性である。
【0013】
本発明の他の特徴及び利点は、発明の動作を例として示した付属の図面を、以下の好ましい実施形態の詳細な説明と併せ読むことでより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本発明に基づく拡張リングの「V」字形状の細長い分枝フレーム要素の平面図である。
図1B】本発明に基づく拡張リングの「U」字形状の細長い分枝フレーム要素の平面図である。
図1C】本発明に基づく拡張リングの「W」字形状の細長い分枝フレーム要素の平面図である。
図1D】本発明に基づく拡張リングの2重「U」字形状の細長い分枝フレーム要素の平面図である。
図1E】圧縮形態にある図1Aの「V」字形状の細長い分枝フレーム要素の平面図である。
図1F】圧縮形態にある図1Bの「U」字形状の細長い分枝フレーム要素の平面図である。
図1G】圧縮形態にある図1Cの「W」字形状の細長い分枝フレーム要素の平面図である。
図1H】圧縮形態にある図1Dの2重「U」字形状の細長い分枝フレーム要素の平面図である。
図2A】管状編組ステント本体の遠位端及び近位端に挿入された「V」字形状の細長い分枝フレーム要素の概略側面図である。
図2B】管状編組ステント本体の遠位端及び近位端において細長い分枝フレーム要素の各脚に被せられた金属製バンドを示す図2Aと同様の概略側面図である。
図2C】管状編組ステント本体の遠位端及び近位端において細長い分枝フレーム要素の各脚の終端に固定されて拡張リングと管状編組ステント本体との組み合わせを完成して本発明に基づくステントを形成する金属製バンドを示す図2Bと同様の概略側面図である。
図2D図2Cのステントの端面図である。
図2E】送達カテーテル内で圧縮形態にあるステントを示す図2Cと同様の立面図である。
図3A】管状編組ステント本体の遠位端及び近位端に挿入された「W」字形状の細長い分枝フレーム要素の概略側面図である。
図3B】管状編組ステント本体の遠位端及び近位端において細長い分枝フレーム要素の各脚に被せられた金属製バンドを示す図3Aと同様の概略側面図である。
図3C】管状編組ステント本体の遠位端及び近位端において細長い分枝フレーム要素の各脚の終端に固定されて拡張リングと管状編組ステント本体との組み合わせを完成して本発明に基づくステントを形成する金属製バンドを示す図3Bと同様の概略側面図である。
図3D図3Cのステントの端面図である。
図3E】送達カテーテル内で圧縮形態にあるステントを示す図2Eと同様の立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例として与えられる、限定的なものではない図面を参照すると、本発明は、管状編組ステント本体12と組み合わせて使用することで患者の脈管構造15を治療するためのステント14を形成するように設計された拡張リング10を提供する。管状編組ステント本体は、近位端16、遠位端18、及び内腔20を有し、好ましくは、互いに編組されてそれらの間に複数の隙間24を形成する複数の細長い部材22から形成される。複数の細長い部材は、例えば2本以上の金属ワイア、又はポリマー繊維若しくは材料のストランド、又はこれらの組み合わせを含みうる。管状編組ステント本体は好ましくは自己拡張性であり、ステントを留置する際にステントを適正に拡張させて固定することを確実に行うため、1個以上の拡張リングが管状編組ステント本体の近位端及び遠位端の一方又は両方に連結される。
【0016】
それぞれの拡張リングは、それぞれの細長い分枝部材の一方の側36に向かう第1の方向に延びる、第1の終端32及び第2の終端34をそれぞれ有する第1の脚28及び第2の脚30を含む複数の細長い分枝フレーム要素26から好ましくは形成されており、第1の脚と第2の脚とは接合部分38において互いに連結されて、それぞれの細長い分枝部材の反対側の第2の側40においてそれらの間に少なくとも1つの支点を形成するとともに対向する第2の方向に概ね延びることで、複数の細長い分枝フレーム要素を圧縮することが可能となっている。図2A〜3Eに示されるように、細長い分枝部材のそれぞれは、好ましくは管状編組ステント本体の近位端又は遠位端の一部の隙間に通され、複数の細長い分枝フレーム要素の第1の脚のそれぞれが管状編組ステント本体の管腔の内側に延び、複数の細長い分枝フレーム要素の第2の脚のそれぞれが管状編組ステント本体の管腔の外側に延びることにより、複数の細長い分枝フレーム要素の接合部分が管状編組ステント本体の隙間を通じて管状編組ステント本体の細長い部材に引っ掛かって係合する。
【0017】
図1Aを参照すると、本発明の好ましい一態様では、複数の細長い分枝フレーム要素は、各脚が接合部分において例えば鋭角又は斜角などのV字形状の角度を形成した「V」字形状のフレーム要素44として形成することができるが、図1Bに示されるように、複数の細長い分枝フレーム要素は、各脚が接合部分において例えばU字形状、楕円曲線、ループ又は湾曲部を形成した「U」字形状又は楕円状のフレーム要素46として形成されてもよい。図1Cに示されるように、複数の細長い分枝フレーム要素は、各脚が例えば鋭角又は斜角などの2個のV字形状の角度が接合部分において互いに連結されてフレーム要素を圧縮するための3個の支点を形成するW字形状の形態をなした、「W」字形状の細長い分枝フレーム要素48として形成することができるが、図1Cに示されるように、複数の細長い分枝フレーム要素は2個の連結された「U」字形状の楕円状フレーム要素50として形成することもでき、各脚が、例えば接合部分において連結された2個のU字形状、楕円曲線、ループ又は湾曲部分を有する2重「U」字形状の形態を形成して、フレーム要素を圧縮するための3個の支点を形成する。複数の細長い分枝フレーム要素は、図1A〜1Dに示されるような第1の幅を有する拡張形態と、図1E〜1Hに示されるような第1の幅よりも小さい第2の幅を有する圧縮形態とを好ましくは有する。この結果、ステント及び拡張リングは、特にステントが細長いプッシャー部材51などによって、患者の脈管構造内の治療部位にカテーテルを通じて送達するための送達カテーテル49内において拡張しないように拘束されている場合、図2E及び3Eに示される第1の直径を有する圧縮形態を有し、また、ステント及び拡張リングは、圧縮形態の第1の直径よりも大きい第2の直径を有する、図2A〜2C及び3A〜3Cに示されるような拡張形態を有する。
【0018】
図2B〜2E及び3B〜3Eに示されるように、好ましくは、複数の細長い分枝フレーム要素は、好ましくは第1及び第2の脚の第1及び第2の終端において複数の細長い分枝フレーム要素の隣接するものと順次、互いに連結されることにより、ジグザグ状アセンブリ52の形態のような拡張リングを形成する。複数の細長い分枝フレーム要素は、ニッケルチタン合金又はニチノールなどの超弾性材料で形成するか、又は例えばばね鋼すなわちMP35N、重量にして35%のニッケル、35%のコバルト、20%のクロム、及び10%のモリブデンの合金などの非超弾性で形成することができる。1個以上の拡張リングを形成する複数の細長い分枝フレーム要素は、拡張形態において形状記憶位置を有する形状記憶材料で形成することができる。複数の細長い分枝フレーム要素の第1の終端は、第1及び第2の脚の終端に好ましくは溶接されることによって各脚の終端にキャップ56を形成する金属製バンド又はリング54などによって複数の細長い分枝フレーム要素の隣接するものの隣接する第2の終端に好ましくは固定されるが、金属製バンドは、これに代えるか又はこれに加えて例えばはんだ付け又は圧着によって各脚の終端に固定することができる。金属製バンドは、白金又はタンタルなどのX線不透過性金属で好ましくは形成されるが、金属製バンドは例えばステンレス鋼などの非X線不透過性材料で形成することもできる。
【0019】
以上、本発明の具体的な形態を図示及び説明したが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく様々な改変を行うことが可能である点は上記の内容より明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲による以外は、本発明を限定することは意図するところではない。
【0020】
〔実施の態様〕
(1) 編組ステント用の拡張リングであって、
複数の細長い分枝フレーム要素であって、該複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが、該複数の細長い分枝フレーム要素の圧縮を可能とする支点を有し、該複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが、該細長い分枝部材のそれぞれの一方の側の第1の方向に延びる第1及び第2の終端を有する第1及び第2の脚を含み、該複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれの前記第1及び第2の脚が、接合部分において互いに連結されて、それらの間に、該複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれの対向する第2の側に前記支点を形成し、前記接合部分が、対向する第2の方向に延びる、複数の細長い分枝フレーム要素を含み、
前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが、前記第1及び第2の脚の前記第1及び第2の終端において前記複数の細長い分枝フレーム要素の隣接するものと順次連結されて前記拡張リングを形成し、前記複数の細長い分枝フレーム要素が、第1の直径を有する圧縮形態と、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する拡張形態とを有する、
拡張リング。
(2) 前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが「V」字形状を有する、実施態様1に記載の拡張リング。
(3) 前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが「U」字形状を有する、実施態様1に記載の拡張リング。
(4) 前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが「W」字形状を有する、実施態様1に記載の拡張リング。
(5) 前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが2重「U」字形状を有する、実施態様1に記載の拡張リング。
【0021】
(6) 前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれの前記第1及び第2の脚が、前記接合部分において楕円曲線を形成する、実施態様1に記載の拡張リング。
(7) 前記複数の細長い分枝フレーム要素が、ジクザク形状のアセンブリに互いに連結されている、実施態様1に記載の拡張リング。
(8) 前記複数の細長い分枝フレーム要素が超弾性材料で形成されている、実施態様1に記載の拡張リング。
(9) 前記複数の細長い分枝フレーム要素がニッケルチタン合金で形成されている、実施態様1に記載の拡張リング。
(10) 前記複数の細長い分枝フレーム要素が非超弾性材料で形成されている、実施態様1に記載の拡張リング。
【0022】
(11) 前記複数の細長い分枝フレーム要素がニッケル・コバルト・クロム・モリブデン合金で形成されている、実施態様1に記載の拡張リング。
(12) 前記複数の細長い分枝フレーム要素がばね鋼で形成されている、実施態様1に記載の拡張リング。
(13) 前記拡張リングが、前記拡張形態において形状記憶位置を有する形状記憶材料で形成されている、実施態様1に記載の拡張リング。
(14) 前記第1の終端のそれぞれを、前記複数の細長い分枝フレーム要素の隣接するものの隣接する第2の終端に固定する複数の金属製バンドを更に有する、実施態様1に記載の拡張リング。
(15) 前記複数の金属製バンドが、X線不透過性金属で形成されている、実施態様14に記載の拡張リング。
【0023】
(16) 編組ステントであって、
近位端、遠位端、及び内腔を有する管状編組ステント本体であって、該管状編組ステント本体は複数の細長い部材から形成され、該複数の細長い部材は編組されてそれらの間に複数の隙間を形成する、管状編組ステント本体と、
前記管状編組ステント本体の前記近位端及び前記遠位端の少なくとも一方に連結された少なくとも1つの拡張リングであって、該少なくとも1つの拡張リングが、複数の細長い分枝フレーム要素の圧縮を可能とする支点をそれぞれが有する該複数の細長い分枝フレーム要素を有し、該複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが、前記管状編組ステント本体の前記近位端及び前記遠位端の少なくとも一方の一部の前記隙間の少なくとも1つに通され、前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが、前記細長い分枝部材のそれぞれの一方の側の第1の方向に延びる第1及び第2の端部を有する第1及び第2の脚を有し、該第1及び第2の脚が接合部分において共に連結されて前記細長い分枝部材のそれぞれの対向する第2の側においてそれらの間に前記支点を形成し、前記接合部分が対向する第2の方向に延び、前記複数の細長い分枝フレーム要素の前記第1の脚のそれぞれが前記管状編組ステント本体の前記管腔の内側に延び、前記複数の細長い分枝フレーム要素の前記第2の脚のそれぞれが前記管状編組ステント本体の前記管腔の外側に延びることにより、前記複数の細長い分枝フレーム要素の前記接合部分が前記管状編組ステント本体の前記隙間を通じて前記管状編組ステント本体と係合し、前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが前記第1及び第2の脚の前記第1及び第2の終端において前記複数の細長い分枝フレーム要素の隣接するものと順次連結されることで前記少なくとも1つの拡張リングを形成し、前記少なくとも1つの拡張リングが、第1の直径を有する圧縮形態と、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する拡張形態とを有する、拡張リングと、
を含む、編組ステント。
(17) 前記管状編組ステント本体が自己拡張性である、実施態様16に記載の編組ステント。
(18) 前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが「V」字形状を有する、実施態様16に記載の編組ステント。
(19) 前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが「U」字形状を有する、実施態様16に記載の編組ステント。
(20) 前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが「W」字形状を有する、実施態様16に記載の編組ステント。
【0024】
(21) 前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれが2重「U」字形状を有する、実施態様16に記載の編組ステント。
(22) 前記複数の細長い分枝フレーム要素のそれぞれの前記第1及び第2の脚が、前記接合部分において楕円曲線を形成する、実施態様16に記載の編組ステント。
(23) 前記複数の細長い分枝フレーム要素が、ジクザク形状のアセンブリに互いに連結されている、実施態様16に記載の編組ステント。
(24) 前記第1の終端のそれぞれが、金属製バンドによって前記複数の細長い分枝フレーム要素の隣接するものの隣接する第2の終端に固定されている、実施態様16に記載の編組ステント。
(25) 前記金属製バンドが、X線不透過性金属で形成されている、実施態様14に記載の編組ステント。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E