特許第6352020号(P6352020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352020
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】ハイブリッド梁
(51)【国際特許分類】
   E04C 3/293 20060101AFI20180625BHJP
【FI】
   E04C3/293
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-69402(P2014-69402)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190239(P2015-190239A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】シング ラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−196324(JP,A)
【文献】 特開2010−065449(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0225927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00 − 3/46
E04B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する柱間に架け渡された鉄骨の両端部を鉄筋コンクリートで覆い、前記鉄骨の中央部を鉄骨梁部とし、両端部を鉄筋コンクリート梁部とし、前記鉄筋コンクリート梁部は複数の梁主筋とそれら梁主筋を囲む複数の横補強筋とを備えるハイブリッド梁であって、
前記鉄筋コンクリート梁部に前記鉄骨を貫通して設備用孔が貫通形成され、
前記複数の梁主筋は、前記鉄骨の上方の前記鉄筋コンクリート梁部の上部と、前記鉄骨の下方の前記鉄筋コンクリート梁部の下部において、水平方向に並べられて設けられ、
前記横補強筋は、前記柱側の前記鉄筋コンクリート梁部の端部と前記設備用孔との間の前記鉄筋コンクリート梁部の箇所と、前記鉄骨梁部側の前記鉄筋コンクリート梁部の端部と前記設備用孔との間の前記鉄筋コンクリート梁部の箇所で、前記前記鉄筋コンクリート梁部の上部と前記鉄筋コンクリート梁部の下部においてそれぞれ並べられた複数の梁主筋のうちの両端を囲むように配置されると共に、前記鉄骨の両側で前記並べられた複数の梁主筋のうちの内側に位置する2本の前記梁主筋を囲むように配置され、
さらに、前記柱側の前記鉄筋コンクリート梁部の端部と前記鉄骨梁部側の前記鉄筋コンクリート梁部では、前記横補強筋の配筋を密にした集中補強筋として配置され、
前記鉄筋コンクリート梁部を構成するコンクリートは、前記ハイブリット梁に作用する荷重や前記設備用孔の大きさなどに応じて決定された使用量の補強繊維を含み前記鉄筋および前記鉄骨で補強されたコンクリートと同等またはそれ以上の性能を有する繊維補強コンクリートで構成され、
前記繊維補強コンクリートは、地震のエネルギーを吸収し、かつ、前記設備用孔周辺の鉄筋コンクリート梁部の箇所に作用するせん断力を負担する、
ことを特徴とするハイブリッド梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部が鉄筋コンクリート造で中央が鉄骨造のハイブリッド梁(複合梁)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の一部または全部を大スパン化する建物の梁躯体として、鉄筋コンクリート(RC)と鉄骨(S)造とで構成された複合構造の梁(以下、複合梁またはハイブリッド梁とも称する)が採用されてきている。このような構造の梁は、両端部をRCで覆った鉄骨が、RC造等の柱間に架け渡されて接合されたものである。以下、ハイブリッド梁のうち、S造である中央部を鉄骨梁部、RCで覆われた両端部を鉄筋コンクリート梁部(RC梁部)と称する。
ハイブリッド梁の鉄筋コンクリート梁部においては、一般的に複数の梁主筋と、それら複数の梁主筋および鉄骨の周囲を囲む複数の横補強筋とが配筋され、鉄筋コンクリート梁部全体に渡り埋設されている。この横補強筋は、鉄筋コンクリート梁部の柱側の端部及び鉄骨梁部側の端部の配筋を密にした集中補強筋も含んでいる。
ハイブリッド梁は、中央部がS造であることから梁自重が軽減され、梁せいが減少するために梁のロングスパン化を可能とした建物が得られる新しい構法として注目されている。
【0003】
一方、ハイブリッド梁において、従来、鉄筋コンクリート梁部に設備用貫通孔を設けた例はない。
ハイブリッド梁の鉄筋コンクリート梁部は一般的なRC造として設計されており、一般的なRC造の梁に貫通孔を設けた場合、貫通孔の補強は、開孔補強筋(リング状のもの)や座屈補強筋(串形もの)などを用いて行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−24462
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハイブリッド梁の鉄筋コンクリート梁部を、開孔補強筋(リング状のもの)や座屈補強筋(串形もの)などを用いて補強する場合、開孔補強筋や座屈補強筋などの補強筋が過密となる。
そして、それら補強筋が過密となると、鉄筋コンクリート梁部にはもともと梁主筋と横補強筋が密に配筋されていることから、配筋するのに手間がかかり、施工性が悪くなる。
また、既往の研究例から一般的なRC造の梁の開孔を補強した場合、地震を経験したあとの開孔周りのせん断ひび割れが目立ち、梁の損傷度合いも顕著である。
この発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、設備用孔が貫通形成された鉄筋コンクリート梁部の補強の施工性を向上でき、また、地震の際の損傷度合を軽減する上で有利なハイブリッド梁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため本発明は、対向する柱間に架け渡された鉄骨の両端部を鉄筋コンクリートで覆い、前記鉄骨の中央部を鉄骨梁部とし、両端部を鉄筋コンクリート梁部とし、前記鉄筋コンクリート梁部は複数の梁主筋とそれら梁主筋を囲む複数の横補強筋とを備えるハイブリッド梁であって、前記鉄筋コンクリート梁部に前記鉄骨を貫通して設備用孔が貫通形成され、前記複数の梁主筋は、前記鉄骨の上方の前記鉄筋コンクリート梁部の上部と、前記鉄骨の下方の前記鉄筋コンクリート梁部の下部において、水平方向に並べられて設けられ、前記横補強筋は、前記柱側の前記鉄筋コンクリート梁部の端部と前記設備用孔との間の前記鉄筋コンクリート梁部の箇所と、前記鉄骨梁部側の前記鉄筋コンクリート梁部の端部と前記設備用孔との間の前記鉄筋コンクリート梁部の箇所で、前記前記鉄筋コンクリート梁部の上部と前記鉄筋コンクリート梁部の下部においてそれぞれ並べられた複数の梁主筋のうちの両端を囲むように配置されると共に、前記鉄骨の両側で前記並べられた複数の梁主筋のうちの内側に位置する2本の前記梁主筋を囲むように配置され、さらに、前記柱側の前記鉄筋コンクリート梁部の端部と前記鉄骨梁部側の前記鉄筋コンクリート梁部では、前記横補強筋の配筋を密にした集中補強筋として配置され、前記鉄筋コンクリート梁部を構成するコンクリートは、前記ハイブリット梁に作用する荷重や前記設備用孔の大きさなどに応じて決定された使用量の補強繊維を含み前記鉄筋および前記鉄骨で補強されたコンクリートと同等またはそれ以上の性能を有する繊維補強コンクリートで構成され、前記繊維補強コンクリートは、地震のエネルギーを吸収し、かつ、前記設備用孔周辺の鉄筋コンクリート梁部の箇所に作用するせん断力を負担することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、設備用孔周辺の鉄筋コンクリート梁部に作用するせん断力を、鉄筋、鉄骨で補強されたコンクリートと同等またはそれ以上の性能を有する繊維補強コンクリートが負担する。したがって設備用孔周りの鉄筋コンクリート梁部のせん断ひび割れや損傷度合いが改善される。
また、繊維補強コンクリートが設備用孔の周辺を補強するため、鉄筋の配筋がもともと過密なハイブリッド梁の鉄筋コンクリート梁部を、開孔補強筋を用いて補強する場合に比べ、簡単に迅速に確実に補強でき、施工性が改善され、工期の短縮化、コストダウンを図る上で有利となる。
また、繊維補強コンクリートで地震のエネルギーを吸収し、地震の際の損傷度合を軽減する上で有利となる。
また、設備用孔周辺の鉄筋コンクリート梁部の箇所に作用するせん断力を、鉄筋、鉄骨で補強されたコンクリートと同等またはそれ以上の性能を有する繊維補強コンクリートが負担するので、横補強筋の本数を削減可能であり、場合によっては省略することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】鉄筋コンクリート梁部の正面図である。
図2】設備用孔部分の鉄筋コンクリート梁部の断面図である。
図3】ハイブリッド梁の概略図である。
図4】ハイブリッド梁の鉄筋コンクリート梁部付近における詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
まず、図3図4を参照して本発明が適用される一般的なハイブリッド梁10について説明すると、ハイブリット梁10は、対向する柱12間に架け渡されたI鋼やH鋼等の鉄骨Sの両端部を鉄筋コンクリートで覆う構造のものである。
鉄骨Sの中央部は鉄骨梁部10Aとされ、両端部は鉄筋コンクリート梁部10Bとされ、鉄骨Sは内法スパン(柱フェースまでの長さ)とし柱12には貫通されておらず、図1において符号11Aはスタッドボルト、符号11Bは床スラブを示している。
【0010】
鉄筋コンクリート梁部10Bは、あらかじめ工場で製作したプレキャストコンクリート製でもよく、現場打ちコンクリートで製作されてもよい。あるいはハーフプレキャストコンクリート製でもよく、この場合には、コンクリートを現場で後打ちする。
鉄筋コンクリート梁部10Bは、複数の梁主筋14、それら梁主筋14を囲む複数の横補強筋16により補強され、梁主筋14の柱梁接合部への定着は、定着金物あるいは折り曲げ定着により行われる。
また、鉄筋コンクリート梁部10Bの柱12側の端部と鉄骨梁10A側の端部に相当する部分においては、特に横補強筋16の配筋を密に配した集中補強筋16Aとしている。このように鉄筋コンクリート梁部10Bの柱12側の端部と鉄骨梁10A側の端部に相当する部分に集中補強筋16Aを設けることで、鉄筋から鉄筋コンクリート梁部10Bへの応力の伝達が図られている。
【0011】
図1図2に示すように、設備用孔20は、柱梁接合部寄りの鉄筋コンクリート梁部10Bに設けられ、鉄骨Sを貫通して鉄筋コンクリート梁部10Bを水平に貫通している。
そして、設備用孔20が貫通形成された鉄筋コンクリート梁部10Bの箇所を補強するため、鉄筋コンクリート梁部10Bに用いるコンクリートに繊維補強コンクリート24を用いている。
繊維補強コンクリート24は、コンクリートに補強繊維を複合したものであり、このような補強繊維として、設備用孔20周辺の鉄筋コンクリート梁部10Bの箇所を補強し、設備用孔20周辺の鉄筋コンクリート梁部10Bの箇所に作用するせん断力を負担できるものであればよく、例えば、鋼繊維や炭素繊維、アラミド繊維など従来公知の様々な繊維が採用可能である。補強繊維の使用量は、適用されるハイブリット梁10に作用する荷重や、設備用孔20の大きさなどに応じて適宜決定される。
【0012】
本実施の形態によれば、次の効果A〜Dが発揮される。
効果A:鉄筋コンクリート梁部10Bを構成する繊維補強コンクリート24自体が設備用孔20周辺の鉄筋コンクリート梁部10Bの箇所を補強するため、設備用孔20周りの鉄筋コンクリート梁部10Bのせん断ひび割れや損傷度合いが改善される。
効果B:鉄筋コンクリート梁部10Bに用いるコンクリートを利用して設備用孔20周辺の鉄筋コンクリート梁部10Bの箇所を補強するため、鉄筋の配筋がもともと過密なハイブリッド梁10の鉄筋コンクリート梁部10Bを、開孔補強筋を用いて補強する場合に比べ、簡単に迅速に確実に補強でき、施工性が改善され、工期の短縮化、コストダウンを図る上で有利となる。
効果C:鉄筋コンクリート梁部10Bを構成する繊維補強コンクリート24で地震のエネルギーを吸収でき、地震の際の損傷度合を軽減する上で有利となる。
効果D:設備用孔20周辺の鉄筋コンクリート梁部10Bの箇所に作用するせん断力を繊維補強コンクリート24で負担できるので、横補強筋16の本数を削減可能であり、場合によっては省略することも可能となる。
【符号の説明】
【0013】
10……ハイブリッド梁
10A……鉄骨梁部
10B……鉄筋コンクリート梁部
14……梁主筋
16……横補強筋
20……設備用孔
24……繊維補強コンクリート
図1
図2
図3
図4