(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の原料は、液化石油ガス、天然ガス、及び灯油のうち少なくとも二つを含み、 前記水性シフト反応の温度は200〜400℃であり、前記水性シフト反応の雰囲気の圧力は0.1〜0.3MPaである
請求項1に記載の水素供給システム。
前記反応器は、前記複数種類の原料それぞれに対して決められた複数の触媒を有し、前記複数の触媒を用いて前記複数種類の原料それぞれを反応させて前記水素含有ガスを生成する
請求項1または2に記載の水素供給システム。
前記複数の原料は、液化石油ガス、天然ガス、及び灯油のうち少なくとも二つを含み、 前記制御部は、前記水蒸気改質反応の温度を600〜900℃の範囲に制御し、前記水蒸気改質反応の雰囲気の圧力を0.5〜1MPaになるよう制御する
請求項1から4のいずれか一項に記載の水素供給システム。
前記複数の原料は、液化石油ガス、天然ガス、及び灯油のうち少なくとも二つを含み、 前記脱硫反応の温度は200〜400℃であり、前記脱硫反応の雰囲気の圧力は0.1〜5MPaである
請求項7に記載の水素供給システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の水素ステーションは、いずれか一種類の原料からしか水素を作ることができないため、例えば災害等のトラブルで原料の供給源が断たれた場合、水素の製造及び供給ができなくなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ある種類の原料の供給源が断たれた場合でも水素を安定して供給することを可能とする水素供給システム及び水素ステーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る水素供給システムは、
複数種類の原料それぞれを個別に反応させることによって前記複数種類の原料それぞれから水素含有ガスを生成する改質器と、
前記改質器内に熱を加える加熱部と、
前記改質器内の圧力を調節する圧力調節部と、
前記改質器内の温度を計測する温度計測部と、
前記改質器内の圧力を計測する圧力計測部と、
前記改質器内の温度が予め設定された温度範囲内になるよう前記加熱部を制御し、前記改質器内の圧力が予め設定された圧力範囲内になるよう前記圧力調整部を制御する制御部と、
を備える。
【0008】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記改質器は、水蒸気改質反応により一つ以上の炭化水素原料それぞれから互いに異なる時刻に前記水素含有ガスを生成し、且つ/または前記水蒸気改質反応とは異なる時刻に、脱水素反応により一つ以上の有機ハイドライドそれぞれから互いに異なる時刻に前記水素含有ガスを生成する。
【0009】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記改質器は、一つの触媒を有し、前記一つの触媒を用いて前記複数種類の原料それぞれを反応させて前記水素含有ガスを生成する。
【0010】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記改質器は、複数種類の原料それぞれに対して決められた複数の触媒を有し、前記複数の触媒を用いて前記複数種類の原料それぞれを反応させて前記水素含有ガスを生成する。
【0011】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記複数の原料は、液化石油ガス、天然ガス、及び灯油のうち少なくとも二つを含み、
前記制御部は、前記水蒸気改質反応の温度を600〜900℃の範囲に制御し、前記水蒸気改質反応の雰囲気の圧力を0.5〜1MPaになるよう制御する。
【0012】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記水蒸気改質反応の触媒は、アルミナ担持ニッケル−ルテニウム触媒である。
【0013】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記複数の燃料は、炭化水素原料を含み、
前記炭化水素原料を脱硫反応させることによって前記炭化水素原料から硫黄分を除去する脱硫部を更に備え、
前記改質器は、前記脱硫反応後の原料を、前記水蒸気改質反応させることによって水素を生成する。
【0014】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記複数の原料は、液化石油ガス、天然ガス、及び灯油のうち少なくとも二つを含み、
前記脱硫反応の温度は200〜400℃であり、前記脱硫反応の雰囲気の圧力は0.1〜5MPaである。
【0015】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記脱硫反応の触媒は、アルミナ担持ニッケル−モリブデン触媒、またはアルミナ担持コバルト−モリブデン触媒である。
【0016】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記改質器が前記水蒸気改質反応により生成した水素含有ガスをシフト触媒で水性シフト反応させることによって一酸化炭素の濃度を低下させたシフト改質ガスを生成する変性部を更に備える。
【0017】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記複数の原料は、液化石油ガス、天然ガス、及び灯油のうち少なくとも二つを含み、
前記水性シフト反応の温度は200〜400℃であり、前記水性シフト反応の雰囲気の圧力は0.1〜0.3MPaである。
【0018】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記水性シフト反応の触媒は、アルミナ担持ニッケル触媒、またはアルミナ担持銅−亜鉛触媒である。
【0019】
本発明の一態様に係る前記水素供給システムにおいて、
前記変性部が生成したシフト改質ガスから不純物を除去して水素ガスを精製する精製部を更に備える。
【0020】
本発明の一態様に係る水素ステーションは、
上記いずれかの前記水素供給システムを備える。
【発明の効果】
【0021】
したがって、本発明に係る水素供給システムによれば、複数種類の原料から水素含有ガスを生成することができるので、災害等のトラブルが発生して、複数種類の原料のうちある種類の原料の供給源が断たれた場合でも、他の原料を使って水素を供給できるため、水素を安定して供給することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る各実施例について図面に基づいて説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る水素ステーション1の構成を
図1を用いて説明する。
【0025】
図1は、第1の実施形態に係る水素ステーション1の構成の一例を示す図である。
【0026】
図1に示すように、第1の実施形態に係る水素ステーション1は、水素を供給する水素供給システムS1と、水素供給システムS1と配管で接続された冷却機11と、冷却機11と配管を介して接続されたディスペンサ(水素供給手段)12とを備える。
【0027】
ここで、冷却機11は、水素を車両13へ急速充填する際に水素温度が高くなるため、充填前に水素を予め冷却して水素温度を低くしておくための設備である。冷却機11は、水素供給システムS1から排出された水素を冷却する。例えば、冷却機11は、水素供給システムS1から排出された水素を設定温度(例えば、−40℃)に冷却し、冷却後の水素をディスペンサ12へ供給する。
【0028】
ディスペンサ12は、冷却機11が冷却した水素を、水素を燃料として使用する車両13に供給する。水素供給システムS1から排出される際の圧力(例えば、80MPa)の方が、車両の燃料タンク(不図示)の圧力(例えば、70MPa)よりも高いので、この差圧で、ディスペンサ12から水素が車両7に供給される。
【0029】
(水素供給システムS1の構成)
続いて、第1の実施形態に係る水素供給システムS1の構成を
図2を用いて、説明する。
図2は、第1の実施形態に係る水素供給システムS1の構成の一例を示す図である。第1の実施形態に係る水素供給システムS1は、一種類の触媒を有し改質器が、この一種類の触媒により複数の原料それぞれから水素を生成するものである。
【0030】
図2に示すように水素供給システムS1は、操作部OP、及び制御部CONを備える。
【0031】
操作部OPは、操作者の操作を受け付ける。例えば、操作部OPは、LPG、天然ガス、またはMCHのうちいずれかの原料を選択する操作を受け付け、この選択が特定される選択信号を制御部CONへ出力する。
【0032】
制御部CONは、水素供給システム全体の制御を行う機能を有しており、例えば電子制御を行うデバイスによって構成されている。ここで、電子制御を行うデバイスは、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を含んで構成されている。
【0033】
制御部CONは、改質器RF内の温度が予め設定された温度範囲内になるよう加熱部HTを制御し、改質器RF内の圧力が予め設定された圧力範囲内になるよう、後述する第4の弁(圧力調整部)B4を制御する。また、制御部CONは、選択信号によって特定される選択に応じて、後述する第1の弁B1、第2の弁B2、第3の弁B3、第5の弁B5、及び第6の弁B6を制御する。
【0034】
更に、
図2に示すように水素供給システムS1は、LPGが液体原料として蓄えられたLPGタンクLT、第1の弁B1、脱硫部DS、及び第2の弁B2を備える。
【0035】
第1の弁B1は、制御部CONの制御に従って、LPGタンクLTから排出されたLPG、または天然ガスラインL1を介して供給された天然ガスのいずれか一方を脱硫部DSへ排出するようにガス流路を切り替える。第1の弁B1は、電気的に駆動する三方弁であり、例えば、三方電磁弁である。
【0036】
脱硫部DSは、第1の弁B1から供給される炭化水素原料を脱硫反応させることによって炭化水素原料から硫黄分を除去する。この硫黄分の除去を脱硫という。本実施形態では、炭化水素原料は一例として、LPGまたは天然ガスである。脱硫部DSは、脱硫反応の触媒(以下、脱硫触媒という)、ヒータ及び圧力調節弁を備え、ヒータは脱硫触媒を所定の温度範囲に加熱し、圧力調節弁は、脱硫部DS内の雰囲気の圧力を所定の圧力範囲に調節する。
【0037】
第2の弁B2は、制御部CONの制御に従って開閉する。第2の弁B2は、電気的に駆動する弁であり、例えば、電磁弁である。第2の弁B2が開くと、脱硫後のガス(具体的には、脱硫後のLPGまたは脱硫後の天然ガス)が改質器RFへ供給される。
【0038】
更に、
図2に示すように水素供給システムS1は、メチルシクロヘキサン(以下、MCHという)が液体原料として蓄えられたMCHタンクMT、気化器CB、及び第3の弁B3を備える。
【0039】
ここで、メチルシクロヘキサンは、有機ハイドライドの一種であり、有機ハイドライドは、製油所で大量に生産されている水素を芳香族炭化水素と反応させた水素化物である。LPG及び有機ハイドライドは、ガソリンなどと同様に液体原料としてローリーなどによって水素ステーション1へ輸送され、MCHタンクMTに充填される。
【0040】
気化器CBは、MCHタンクMTから排出されたMCHを気化する。気化されたMCH(以下、気化MCHという)は、第3の弁B3へ供給される。
【0041】
第3の弁B3は、制御部CONの制御に従って開閉する。第3の弁B3は、電気的に駆動する弁であり、例えば、電磁弁である。第3の弁B3が開くと、気化MCHが改質器RFへ供給される。
【0042】
更に、
図2に示すように水素供給システムS1は、改質器RF、加熱部HT、第4の弁(圧力調整部)B4、第5の弁B5、気液分離部GLS、トルエンタンクTT、温度計測部TM、及び圧力計測部PMを備える。
【0043】
改質器RFは、複数種類の原料それぞれを個別に反応させることによってこれら複数の原料それぞれから水素含有ガスを生成する。具体的には、改質器RFは、複数の炭化水素原料それぞれを個別に水蒸気改質反応させて水素含有ガスを生成するか、または複数の有機ハイドライドそれぞれを個別に脱水素反応させて水素含有ガスを生成するか、または炭化水素原料を及び有機ハイドライドそれぞれを個別に反応させて水素含有ガスを生成する。
【0044】
本実施形態では一例として、複数種類の原料は、炭化水素原料であるLPG及び天然ガスを含み、有機ハイドライドであるMCHを含む。よって、改質器RFは、LPG及び天然ガスそれぞれを個別に水蒸気改質反応させて水素含有ガスを生成し、LPG及び天然ガスとは別にMCHを脱水素反応させて水素含有ガスを生成する。
【0045】
また、本実施形態に係る改質器RFは、一つの触媒を有し、この一つの触媒を用いて複数種類の原料それぞれを反応させて水素含有ガスを生成する。具体的には、改質器RFは、改質反応が行われる改質反応部Hを備え、この改質反応部H内に改質触媒CLが設けられている。そして、改質器RFは、この改質触媒CLによって、LPG、天然ガス及びMCHそれぞれを個別に反応させて水素含有ガスを生成する。
【0046】
加熱部HTは、改質器RF内に熱を加える。例えば、加熱部HTは、改質器RF内の改質触媒を加熱し、水蒸気改質反応に必要な熱量を供給する。
【0047】
第4の弁B4は、制御部CONの制御に従って開閉することにより、改質器RF内の圧力を調節する。第4の弁B4は、電気的に駆動する弁であり、例えば、電磁弁である。第4の弁B4が開くと、水素含有ガスが第5の弁B5へ供給される。
【0048】
第5の弁B5は、制御部CONの制御に従って、第4の弁B4を介して流入した水素含有ガスが、気液分離部GLSまたは第6の弁B6のいずれか一方に流入するようガス流路を切り替える。第5の弁B5は、電気的に駆動する三方弁であり、例えば、三方電磁弁である。
【0049】
気液分離部GLSは、第5の弁B5から供給された水素含有ガスを貯留し、気体である水素ガスと液体であるトルエンを分離する。気液分離部GLSで分離されたトルエンは、トルエンタンクTTで回収されて貯留される。気液分離部GLSで分離された水素ガスは、第6の弁B6へ排出される。
【0050】
温度計測部TMは、改質器RF内の温度を計測し、計測した温度を示す温度信号を制御部CONへ出力する。
【0051】
圧力計測部PMは、改質器RF内の圧力を計測し、計測した圧力を示す圧力信号を制御部CONへ出力する。
【0052】
更に、
図2に示すように水素供給システムS1は、第6の弁B6、変性部DG、精製部PF、圧縮器CP、及び蓄圧器RSを備える。
【0053】
第6の弁B6は、制御部CONの制御に従って、第5の弁B5から流入した水素含有ガスが変性部DGに流入し、気液分離部GLSから流入した水素ガスが精製部PFに流入するようガス流路を切り替える。
【0054】
変性部DGは、改質器RFが水蒸気改質反応により生成した水素含有ガスをシフト触媒で水性シフト反応させることによって一酸化炭素の濃度を低下させたシフト改質ガスを生成する。このシフト改質ガスは、精製部PFへ排出される。
【0055】
精製部PFは、変性部DGが生成したシフト改質ガスから不純物を除去して水素ガスを精製する。例えば、精製部PFは、PSA(Pressure Swing Adsorption)法などの吸着法を用いて水素ガスを精製する。これにより、例えば、純度99.999%の水素ガスが得られる。この精製された水素ガスは、圧縮器CPに排出される。
【0056】
圧縮器CPは、精製部PFが精製した水素ガスを圧縮する。圧縮された水素ガスは、蓄圧器RSに排出される。
【0057】
蓄圧器RSは、圧縮器CPで圧縮された水素ガスを蓄圧する。
【0058】
(水素供給システムS1の動作)
続いて、第1の実施形態に係る水素供給システムS1の動作について説明する。
【0059】
制御部CONは、以下の制御を常に行うものとする。制御部CONは、改質器RF内の温度が予め設定された温度範囲内になるよう加熱部HTを制御し、改質器RF内の圧力が予め設定された圧力範囲内になるよう第4の弁B4を制御する。
【0060】
これにより、改質器RF内の圧力及び温度が、LPG、天然ガス、及びMCHのいずれもが反応できる圧力及び温度に維持される。
【0061】
続いて、操作者がLPGを原料に選択する操作を操作部OPに対して行った場合の水素供給システムS1の動作について説明する。
【0062】
操作部OPは、操作者からLPGを原料に選択する操作を受け付け、この選択が特定される選択信号を制御部CONへ出力する。選択信号を受けた制御部CONは、この選択信号に応じて、第1の弁B1、第2の弁B2、第3の弁B3、第5の弁B5、及び第6の弁B6を制御する。
【0063】
具体的には、制御部CONは、この選択信号からLPGの選択が特定されるため、第1の弁B1を制御してLPGタンクLTと脱硫部DSとの間を開通させ、天然ガスラインL1と脱硫部DSとの間を遮断する。
【0064】
これにより、LPGがLPGタンクLTから脱硫部DSへ流入し、脱硫部DSはLPGから硫黄分を除去し、除去して得た脱硫後のガスを排出する。
【0065】
また、制御部CONは、選択信号からLPGの選択が特定されるため、第2の弁B2を開くとともに第3の弁B3を閉じる。これにより、MCHの改質器RFへの流入が遮断され、脱硫後のガスが脱硫部DSから改質器RFへ流入する。そして改質器RFは、水蒸気改質反応により、脱硫後のガスから水素含有ガスを生成する。
【0066】
また、制御部CONは、選択信号からLPGの選択が特定されるため、第5の弁B5を制御して、第4の弁B4と第6の弁B6との間を開通させるとともに、第6の弁B6を制御して第5の弁B5と変性部DGとの間を開通させる。これにより、水素含有ガスが、改質器RFから第4の弁B4及び第6の弁B6を通って変性部DGへ流入する。
【0067】
変性部DGは、水素含有ガスをシフト触媒で水性シフト反応させることによって一酸化炭素の濃度を低下させたシフト改質ガスを生成する。このシフト改質ガスは、精製部PFへ排出される。
【0068】
次に、精製部PFは、このシフト改質ガスから不純物を除去して水素ガスを精製する。これにより、この精製された水素ガスは、圧縮器CPに排出される。
【0069】
次に、圧縮器CPは、精製部PFが精製した水素ガスを圧縮する。圧縮された水素ガスは、蓄圧器RSに排出される。次に、蓄圧器RSは、圧縮器CPで圧縮された水素ガスを蓄圧する。
【0070】
次に、操作者が天然ガスを原料に選択する操作を操作部OPに対して行った場合の水素供給システムS1の動作について説明する。
【0071】
制御部CONの処理で、LPGを原料に選択した場合と異なる点は、第1の弁B1の制御だけである。すなわち、制御部CONは、操作部OPから入力された選択信号から天然ガスの選択が特定されるため、第1の弁B1を制御して天然ガスラインL1と脱硫部DSとの間を開通させ、LPGタンクLTと脱硫部DSとの間を遮断する。これにより、天然ガスが天然ガスラインL1から脱硫部DSへ流入する。
【0072】
次に、脱硫部DSは天然ガスから硫黄分を除去し、除去して得た脱硫後のガスを排出する。第2の弁B2が制御部CONにより開くので、脱硫後のガスが脱硫部DSから改質器RFに流入する。
【0073】
そして、改質器RFは、水蒸気改質反応により、脱硫後のガスから水素含有ガスを生成する。第4の弁B4以降の処理は、LPGの場合と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
次に、操作者がMCHを原料に選択する操作を操作部OPに対して行った場合の水素供給システムS1の動作について説明する。
【0075】
操作部OPは、操作者からMCHを原料に選択する操作を受け付け、この選択が特定される選択信号を制御部CONへ出力する。選択信号を受けた制御部CONは、この選択信号に応じて、第2の弁B2、第3の弁B3、第5の弁B5、及び第6の弁B6を制御する。
【0076】
具体的には、制御部CONは、選択信号からMCHの選択が特定されるため、第2の弁B2を閉じるとともに第3の弁B3を開く。
【0077】
これにより、脱硫後のガスが脱硫部DSから改質器RFへの流入が遮断され、気化MCHが改質器RFへ流入する。そして改質器RFは、脱水素反応により、気化MCHから水素含有ガスを生成する。
【0078】
また、制御部CONは、選択信号からLPGの選択が特定されるため、第5の弁を制御して、第4の弁B4と気液分離部GLSとの間を開通させる。
【0079】
これにより、水素含有ガスが、改質器RFから第4の弁B4及び気液分離部GLSに流入する。気液分離部GLSは、水素含有ガスから水素ガスとトルエンを分離する。
【0080】
また、制御部CONは、第6の弁を制御して気液分離部GLSと変性部DGとの間を遮断し、且つ気液分離部GLSと精製部PFとの間を開通させることにより、水素ガスが気液分離部GLSから精製部PFへ流入する。第6の弁より下流の処理は、LPGの場合と同様であるので、説明を省略する。
【0081】
以上のように、改質器RFは、一つの触媒を有し、LPG、天然ガス、MCHをこの一つの触媒によって反応させることで、水素含有ガスを生成する。これにより、改質器RFは、一つだけ触媒を有すればよいので、コストを削減することができる。また、改質反応部Hを一つ設ければよいので、原料毎に改質反応部を設けるよりも改質器の大きさを小さくすることができる。
【0082】
ここで、有機ハイドライドの代わりに灯油とし、原料として、LPG、天然ガス、及び灯油の3種類を用いた場合、脱硫反応、水蒸気改質反応、及び水性シフト反応における触媒と反応温度条件の組は、以下のようにする。
【0083】
(脱硫反応における条件)
脱硫反応の触媒は、アルミナ担持ニッケル−モリブデン(Ni−Mo)触媒、またはアルミナ担持コバルト−モリブデン(Co−Mo)触媒である。脱硫反応の温度は200〜400℃であり、脱硫反応の雰囲気の圧力は0.1〜5MPaである。
【0084】
(水蒸気改質反応における条件)
水蒸気改質反応の触媒は、アルミナ担持ニッケル−ルテニウム(Ni−Ru)触媒である。水蒸気改質反応の温度は600〜900℃であり、水蒸気改質反応の雰囲気の圧力は0.5〜1MPaである。この温度条件及び圧力条件を満たすために、制御部CONは、水蒸気改質反応の温度を600〜900℃の範囲に制御し、水蒸気改質反応の雰囲気の圧力を0.5〜1MPaになるよう制御する。
【0085】
(水性シフト反応における条件)
水性シフト反応の触媒は、アルミナ担持ニッケル(Ni)触媒、またはアルミナ担持銅−亜鉛(Cu−Zn)触媒である。水性シフト反応の温度は200〜400℃であり、水性シフト反応の雰囲気の圧力は0.1〜0.3MPaである。
【0086】
上述した温度及び圧力の下限は、反応が活性化する活性点を超える温度及び圧力である。また、温度及び圧力の上限は、これより大きくなった場合に、反応が進みにくくなる温度及び圧力である。
【0087】
なお、上述した脱硫反応、水蒸気改質反応、及び水性シフト反応における触媒と反応温度条件の組は、水素の素となる複数の原料が、液化石油ガス、天然ガス、及び灯油の三種類のときだけに限らず、水素の素となる複数の原料が、液化石油ガス、天然ガス、及び灯油のうち少なくとも二つを含むときにも適用可能である。
【0088】
以上のように、第1の実施形態に係る水素供給システムS1は、複数種類の原料それぞれを互いに異なる時刻に反応させることによって複数の原料それぞれから水素含有ガスを生成する改質器RFを備える。更に、水素供給システムS1は、改質器RF内に熱を加える加熱部HTを備える。更に、水素供給システムS1は、改質器RF内の圧力を調節する第4の弁(圧力調整部)B4を備える。更に、水素供給システムS1は、改質器RF内の温度を計測する温度計測部TMを備える。更に、水素供給システムS1は、改質器RF内の圧力を計測する圧力計測部PMを備える。更に、水素供給システムS1は、改質器RF内の温度が予め設定された温度範囲内になるよう加熱部HTを制御し、改質器RF内の圧力が予め設定された圧力範囲内になるよう第4の弁(圧力調整部)B4を制御する制御部CONを備える(
図2参照)。
【0089】
このような水素供給システムS1によれば、複数種類の原料から水素含有ガスを生成することができる。従って、災害等のトラブルが発生して、複数種類の原料のうちある種類の原料の供給源が断たれた場合でも、他の原料を使って水素を供給できるため、水素を安定して供給することができる。
【0090】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態に係る水素供給システムS1において、改質器が、一つの触媒を有し、一つの触媒を用いて複数種類の原料それぞれを反応させて水素含有ガスを生成した。一方、第2の実施形態に係る水素供給システムS2においては、改質器が、複数種類の原料それぞれに対して決められた複数の触媒を有し、複数の触媒を用いて複数種類の原料それぞれを反応させて水素含有ガスを生成する。
まず、第2の実施形態に係る水素ステーション1の構成を
図3を用いて説明する。
【0091】
図3は、第1の実施形態に係る水素ステーション1の構成の一例を示す図である。
【0092】
図3に示すように、第2の実施形態に係る水素ステーション2の構成は、第1の実施形態に係る水素ステーション1の構成に対して、水素供給システムS1が水素供給システムS2に変更されたものになっている。なお、
図3において
図1の要素と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。
【0093】
続いて、第2の実施形態に係る水素供給システムS2の構成を
図4を用いて説明する。
【0094】
図4は、第2の実施形態に係る水素供給システムS2の構成の一例を示す図である。
【0095】
図4に示すように、第2の実施形態に係る水素供給システムS2の構成は、第1の実施形態に係る水素供給システムS1の構成に対して、第2の弁B2が第2の弁B2bに、改質器RFが改質器RFbに変更されたものになっている。なお、
図4において
図2の要素と共通する要素には同一の符号を付し、その具体的な説明を省略する。
【0096】
改質器RFbは、原料それぞれに応じた触媒を有し、原料それぞれに応じた触媒によって原料それぞれから水素含有ガスを生成する。
【0097】
ここで、改質器RFbは、例えば、
図4に示すように改質反応部H1、改質反応部H1に設けられた第1の改質触媒CL1、改質反応部H2、改質反応部H2に設けられた第2の改質触媒CL2、改質反応部H3、及び改質反応部H3に設けられた第3の改質触媒CL3を備える。
【0098】
第1の改質触媒CL1は、LPGに応じた触媒で、第2の改質触媒CL2は天然ガスに応じた触媒で、第3の改質触媒CL3は、MCHに応じた触媒である。
【0099】
第2の弁B2bは、制御部CONの制御に従って、脱硫部DSから排出された脱硫後のガスを改質反応部H1、改質反応部H2のいずれか一方に流入するようにガス流路を切り替える。第2の弁B2bは、電気的に駆動する三方弁であり、例えば、三方電磁弁である。
【0100】
続いて、第2の実施形態に係る水素供給システムS2の動作のうち、第1の実施形態に係る水素供給システムS1と異なる点について以下説明する。
【0101】
まず、操作者がLPGを原料に選択する操作を操作部OPに対して行った場合の水素供給システムS2の動作について説明する。第2の弁B2bより上流の処理は、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0102】
第2の弁B2bは、制御部CONの制御に従って、脱硫部DSから排出された脱硫後のガスを改質反応部H1へ流入するようにガス流路を切り替える。これにより、脱硫後のガスが改質器RFbの改質反応部H1に流入する。
【0103】
次に、改質器RFbの改質反応部H1は、第1の改質触媒を用いて脱硫後のガスを水蒸気改質反応させることで水素含有ガスを生成する。そして、この生成された水素含有ガスが第4の弁B4に供給される。改質器RFbより下流の処理は、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0104】
次に、操作者が天然ガスを原料に選択する操作を操作部OPに対して行った場合の水素供給システムS2の動作について説明する。第2の弁B2bより上流の処理は、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0105】
第2の弁B2bは、制御部CONの制御に従って、脱硫部DSから排出された脱硫後のガスを改質反応部H2へ流入するようにガス流路を切り替える。これにより、脱硫後のガスが改質反応部H2に流入する。
【0106】
次に、脱硫後のガスが改質器RFbの改質反応部H2に流入する。改質器RFbの改質反応部H2は、第2の改質触媒を用いて脱硫後のガスを水蒸気改質反応させることで水素含有ガスを生成する。そして、この生成された水素含有ガスが第4の弁B4に供給される。改質器RFbより下流の処理は、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0107】
次に、操作者がMCHを原料に選択する操作を操作部OPに対して行った場合の水素供給システムS2の動作について説明する。改質器RFbより上流の処理は、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0108】
次に、気化MCHが改質器RFbの改質反応部H3に流入する。改質器RFbの改質反応部H3は、第3の改質触媒を用いて気化MCHを脱水素反応させることで水素含有ガスを生成する。そして、この生成された水素含有ガスが第4の弁B4に供給される。改質器RFbより下流の処理は、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0109】
以上のように、第2の実施形態に係る改質器RFbは、複数種類の原料それぞれに対して決められた複数の触媒を有し、複数の触媒を用いて複数種類の原料それぞれを反応させて水素含有ガスを生成する。これにより、原料それぞれに応じて最適な触媒を用いることができるので、反応効率を向上させることができる。すなわち、水素の製造効率を向上させることができる。
【0110】
(各実施形態の変形例)
なお、各実施形態では、原料としてLPG、天然ガス、MCHを用いたが、これに限ったものではない。原料は、2種類でもよく、LPG、天然ガス、MCHのうちから選択された2種類の原料のどの組み合わせでもよい。また、原料は4種類以上であってもよい。このように原料は、少なくとも複数種類であればよい。
【0111】
また、各実施形態では、炭化水素原料を2種類、且つ有機ハイドライドを1種類用いたが、炭化水素原料を1種類で有機ハイドライドを2種類用いてもよい。また、炭化水素原料だけを複数種類用いてもよいし、有機ハイドライドだけを複数種類用いてもよい。
【0112】
また、各実施形態において、炭化水素原料は、LPG及び天然ガスに限らず、ナフサまたは灯油等であってもよい。有機ハイドライドは、MCHに限らず、シクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、デカリン、メチルデカリン、ジメチルデカリン、エチルデカリンなどの芳香物炭化水素の水素化物であってもよい。
【0113】
なお、実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。