特許第6352036号(P6352036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6352036
(24)【登録日】2018年6月15日
(45)【発行日】2018年7月4日
(54)【発明の名称】材料供給装置、及び射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/18 20060101AFI20180625BHJP
   B29C 31/04 20060101ALI20180625BHJP
   B22D 17/02 20060101ALI20180625BHJP
【FI】
   B29C45/18
   B29C31/04
   B22D17/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-90432(P2014-90432)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-208886(P2015-208886A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】面 祐介
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−090613(JP,A)
【文献】 特開2006−315337(JP,A)
【文献】 特開平03−007317(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0046317(US,A1)
【文献】 実開平01−141020(JP,U)
【文献】 実開昭61−177813(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 31/04
B22D 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の射出シリンダの開口部に接続される材料供給装置であって、
射出用の原材料を投入する材料投入口と、該材料投入口から投入された前記原材料を前記射出シリンダに向けて搬送する通路とを有する本体部と、
前記通路の中で前記原材料を前記射出シリンダに向けて搬送する送出機構と、
前記本体部と前記射出シリンダとのに配置され、前記射出シリンダの熱が前記本体部に伝わらないように断熱する断熱材と、
前記断熱材に形成された貫通孔の内周面に設けられ、前記本体部から前記原材料を通過させる通路部材と、
を備え、
前記断熱材は前記開口部の周縁部に設けられ、前記通路部材は前記開口部の内周面に設けられることを特徴とする材料供給装置。
【請求項2】
前記断熱材は、前記原材料の表面硬度以上の表面硬度を有することを特徴とする請求項1に記載の材料供給装置。
【請求項3】
射出成形機の射出シリンダの開口部に接続される材料供給装置であって、
射出用の原材料を投入する材料投入口と、該材料投入口から投入された前記原材料を前記射出シリンダに向けて搬送する通路とを有する本体部と、
前記通路の中で前記原材料を前記射出シリンダに向けて搬送する送出機構と、
前記本体部と前記射出シリンダとのに配置され、前記射出シリンダの熱が前記本体部に伝わらないように断熱する断熱材と、
前記断熱材に形成された貫通孔の内周面に設けられ、前記本体部から前記原材料を通過させる、前記原材料の表面硬度以上の表面硬度を有する被膜と、
を備え、
前記断熱材は前記開口部の周縁部に設けられ、前記被膜は前記開口部の内周面に設けられることを特徴とする材料供給装置。
【請求項4】
射出用に溶融した材料を射出する射出シリンダと、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の材料供給装置と、
を備えることを特徴とする射出成形機。
【請求項5】
前記射出シリンダに接続される金型をさらに備え、前記射出シリンダから前記金型のキャビティ内に材料を射出して成形品を形成することを特徴とする請求項4に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出装置、材料供給装置及び射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、成形型内に射出材料を射出して各種成形品を形成する射出成形装置がよく知られている。先端にノズル(射出口)を有する加熱筒に材料供給装置が接続されている。材料供給装置の内部には材料通路が形成され、材料通路内にはスクリューが挿入されている。材料供給装置に接続された油圧モータや電動機からなる図示しない駆動機構によってスクリューは回転駆動される。
【0003】
材料供給装置には材料を投入する材料投入口が材料通路と略直交して設けられ、材料供給口には材料ホッパが接続される。材料供給口から供給された射出用の原材料は駆動機構によって加熱筒へ送られる。加熱筒の外周面上には加熱ヒータが巻回されており、加熱ヒータによって加熱筒内の原材料が加熱され溶融される。
【0004】
成形動作中において、材料供給装置は常時加熱筒からの熱伝導により加熱される。そのため、材料供給装置内の原材料も加熱溶融される可能性がある。材料供給装置内で原材料が溶融すると材料通路を塞ぎ、材料供給不良を引き起こす可能性がある。そこで通常、材料供給装置内で原材料を溶融させることなく加熱筒内へ搬送するために、材料供給装置の内部に冷却用の通水路を設け、水道水や冷却水等を循環させて材料供給装置内の温度を下げるように構成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願平11−357958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような冷却手段を有する従来の材料供給装置では、熱伝導媒体を循環させる冷却装置及びその制御手段を必要とするため、装置の構成が複雑になり、製品コストが上昇するという問題点がある。
【0007】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、射出機構(射出手段)に材料供給する前の段階で原材料が溶融するのを未然に防止する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる材料供給装置は、射出成形機の射出シリンダの開口部に接続される材料供給装置であって、射出用の原材料を投入する材料投入口と、該材料投入口から投入された前記原材料を前記射出シリンダに向けて搬送する通路とを有する本体部と、前記通路の中で前記原材料を前記射出シリンダに向けて搬送する送出機構と、前記本体部と前記射出シリンダとのに配置され、前記射出シリンダの熱が前記本体部に伝わらないように断熱する断熱材と、前記断熱材に形成された貫通孔の内周面に設けられ、前記本体部から前記原材料を通過させる通路部材と、を備え、前記断熱材は前記開口部の周縁部に設けられ、前記通路部材は前記開口部の内周面に設けられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係わる材料供給装置は、射出成形機の射出シリンダの開口部に接続される材料供給装置であって、射出用の原材料を投入する材料投入口と、該材料投入口から投入された前記原材料を前記射出シリンダに向けて搬送する通路とを有する本体部と、前記通路の中で前記原材料を前記射出シリンダに向けて搬送する送出機構と、前記本体部と前記射出シリンダとのに配置され、前記射出シリンダの熱が前記本体部に伝わらないように断熱する断熱材と、前記断熱材に形成された貫通孔の内周面に設けられ、前記本体部から前記原材料を通過させる、前記原材料の表面硬度以上の表面硬度を有する被膜と、を備え、前記断熱材は前記開口部の周縁部に設けられ、前記被膜は前記開口部の内周面に設けられることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係わる射出成形機は、射出用に溶融した材料を射出する射出シリンダと、上記の材料供給装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、射出機構(射出手段)に材料供給する前の材料が溶融するのを未然に防止することができる。また、冷却機構などの装備が不要となるため、多大なコストの上昇を招くこともない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る材料供給装置を適用した射出成形機の射出機構の一部断面図である。
図2】本発明の射出機構の断熱構造の第1の実施例を示す詳細図である。
図3】本発明の射出機構の断熱構造の第2の実施例を示す詳細図である。
図4】第2の実施例における断熱部材の正面図である。
図5】本発明の射出機構の断熱構造の第3の実施例を示す詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る材料供給装置1を適用した射出成形機(射出成形装置)の射出機構の一部断面図である。本実施形態では本発明を射出成形機の材料供給装置に適用した例を示すが、他の装置にも適用可能である。
【0015】
射出成形機Aは、図1に示す射出機構(射出装置)と、内部に成形部を有し射出機構によって溶融射出された射出材料を成形するキャビティを有する不図示の金型と、金型の開閉及び型締め動作を行う不図示の型締機構(駆動部を含む)とを備える。そして、溶融した射出材料を射出機構によって金型のキャビティ内へ供給することによって成形品を製造する。
【0016】
射出機構は、材料供給装置1が接続され、材料供給機能が付与された射出シリンダ10を備えて構成される。材料供給装置1は、溶融していない射出用の原材料を射出シリンダ10内(射出手段内)に供給する。射出シリンダ10は、内部に射出用の原材料の通路11aを有した円筒状の加熱筒11を備える。材料通路11aは加熱筒11と同心に形成され、加熱筒11の上端から下端までを貫通している。加熱筒11の下部の外周面には加熱筒11を加熱するヒータ13が巻回されており、ヒータ13からの熱により材料通路11aを通過する原材料が加熱され溶融される。
【0017】
加熱筒11の下端にはノズル(射出部)12が設けられており、ノズル12の周囲にもバンドヒータ14が設けられている。加熱筒11の上端には電動のアクチュエータ15が取り付けられている。アクチュエータ15は、本実施形態の場合、通路11aに挿入されたプランジャ16を進退させる。図1は、プランジャ16が後退した状態を示しており、プランジャ16を図1の位置から下方に前進させることで、通路11a内の溶融樹脂がノズル12から不図示の金型内の成形部へ射出されることになる。
【0018】
なお、本実施形態では、プランジャ16を進退させる構成としたが、通路11a内に設けたスクリューを回転させて溶融樹脂を射出するスクリューコンベア形式の構成でもよい。また、アクチュエータ15は電動としたが、プランジャを進退させる動力であれば油圧など何を用いても良い。
【0019】
材料供給装置1は通路形成部材30(本体部)と、材料送り機構3と、ホッパ4とを備えて構成される。通路形成部材30には、通路形成部材30を貫通して断面円形の通路部30a、ホッパ取付部32が形成されている。本実施形態では通路形成部材30とホッパ取付部32とを一体に形成しているが、別体として両者を固定する構成でもよい。
【0020】
ホッパ取付部32(材料投入口)には、その端面に開口した導入通路部30bが形成されている。導入通路部30bは通路部30aと略直交する方向に延設されており、通路部30aと連通している。本実施形態では、導入通路部30bと通路部30aとが直交しているが、導入通路部30bは通路部30aの直交方向から傾いて延設されていてもよい。
【0021】
導入通路部30bの開口端側の端部内周面には、ホッパ4の喉部の周囲に形成されたねじ部(雄ねじ部)と螺合するねじ部(雌ねじ部)が形成されており、これらのねじ部の螺合によりホッパ4は着脱自在にホッパ取付部32に取り付けられる。本実施形態ではねじ構造を利用したが、他の形式の着脱構造でもよい。
【0022】
通路部30a内に導入された射出用の原材料を射出シリンダ10内の通路11aへ供給する送出機構として、通路部30a内に設けられたスクリュー34と、スクリュー34を回転させるモータ40を備える。スクリュー34は一端をモータ40の出力軸に連結されており、もう一端を通路部材36に支持されている。モータ40と通路部材36はスクリューの回転軸を支持するように通路形成部材30の両端に固定されている。
【0023】
通路部材36には、射出用の原材料の通路を成す通路部36aが形成されている。通路部36aの通路面の高さは通路部30aの通路面の高さ以下にする必要がある。これにより通路形成部材30から通路部材36へ射出用の原材料を搬送させるとき、連結部で射出用の原材料が通路部36aの通路面を乗り越えることなく搬送させることが可能となる。同様に、通路部材36から加熱筒11へ搬送させる場合も、通路部36aの高さは材料供給孔11b以上にする必要がある。
【0024】
通路形成部材30の加熱筒11との接触部分には、加熱筒11からの熱を通路形成部材30へ伝導させないようにする断熱材35が配置されている。断熱材35には貫通孔35aが設けられている。言い換えれば、加熱筒11と材料供給装置1とは、その間に断熱材を介在させて相互に連結されている。
【0025】
図2は、本発明の射出機構の断熱構造の第1の実施例を示す詳細図である。
【0026】
断熱材35は加熱筒11と、通路形成部材30及び通路部材36の少なくとも一方と接触するように介在させて組み付けられている。これにより通路形成部材30と通路部材36は、加熱筒11と直接接触せず、加熱筒11の熱は通路形成部材30と通路部材36には伝わらない。そのため、材料通路内で射出用の原材料が溶融することはない。すなわち、射出機構(射出手段)である射出シリンダ10に材料供給する前の材料(原料)が溶融するのを未然に防止することができる。また、冷却機構などの装備が不要となるため、多大なコストがかかることもない。また、断熱材35は、後述するように射出用の原材料と接触しない構造にはなっているが、材料搬送時に起こる材料との摩擦による磨耗を防ぐために少なくとも搬送させる材料の表面硬度以上の硬度を持つ必要がある。磨耗すると断熱材35から出る磨耗粉が射出用の原材料と共に加熱筒へ搬送されて成形され、成形不良を引き起こす可能性がある。
【0027】
通路部材36の通路部36aは断熱材35の幅よりも長く、加熱筒11に形成されている材料供給孔11bの内部まで形成されている。これにより射出用の原材料は断熱材35と接触することなく通路形成部材30から加熱筒11へ供給される。
【0028】
図3は、本発明の射出機構の断熱構造の第2の実施例を示す詳細図である。図4は第2の実施例で用いられる断熱材35の正面図である。
【0029】
断熱材35に形成された貫通孔35a内に通路部材36を固定し、断熱材35と通路部材36を一体化している。一体化した断熱材35を通路形成部材30と加熱筒11の間に介在させ、熱伝導の低減と材料搬送時の断熱材35の磨耗を防いでいる。断熱材35に一体化された通路部材36は加熱筒11と接触させないようにする必要がある。断熱材35と通路部材36の固定方法は圧入や接着など何を用いても良い。
【0030】
図5は、本発明の射出機構の断熱構造の第3の実施例を示す詳細図である。
【0031】
断熱材35に形成された貫通孔35aの内周面に被膜処理(コーティング)を施して被膜処理面35bを構成し、通路形成部材30と加熱筒11の間に介在させている。被膜処理面35bの表面硬度を搬送させる射出用の原材料の表面硬度以上の硬度にすることで、材料搬送時の磨耗を防いでいる。この実施形態では通路部材は必要としない。
【0032】
以上説明したように、上記の実施形態によれば、材料供給部材と加熱筒の間に断熱材を設けるだけの安価な構成で、材料供給装置内で材料を溶融させることなく加熱筒へ供給することが出来る。
【0033】
また、射出用の原材料と断熱材を接触しない構成とする、あるいは断熱材を保護する構成とすることにより、断熱材が磨耗せず、断熱材の削れ粉が射出用の原材料に混ざることや、断熱不良も起きることがない。
【0034】
また、加熱筒から材料供給装置への熱逃げを防止できるので、加熱筒内の射出用の原材料の溶融状態が安定し、成形品の安定化と再現性品位が向上する。
【符号の説明】
【0035】
1 料供給装置
3 材料送り機構
4 ホッパ
10 射出シリンダ
11 加熱筒
11a 通路
11b 料供給孔
12 ノズル
13 ヒータ
14 バンドヒータ
15 アクチュエータ
16 プランジャ
30 通路形成部材
30a 通路部
30b 導入通路部
32 ホッパ取付部
34 スクリュー
35 断熱材
35a 貫通孔
35b 被膜処理面
36 通路部材
36a 通路部
40 モータ
図1
図2
図3
図4
図5